説明

物質の付加又は変更なしに一つ以上の本来ある製品特徴から得られるデジタル署名を使用する製品トレーサビリティの方法

物質の付加又は変更なしに、一つ以上の本来ある肉眼的な製品特徴から得られるデジタル署名を使用する製品トレーサビリティの方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品追跡及び銘柄保護の技術分野に関する。
【0002】
製品を保護し、追跡するために開発された技術が数多く存在する。
【0003】
本質的に、そのような技術は、目に見えるしるし又は隠蔽されたしるしを製品に組み込むことからなる。
【0004】
これらの解決手段は、ロジスティックス、すなわち物流及び在庫の管理に関する問題に対応する、又は並行市場における販売と戦い、模造品の販売及び流通に対抗するためのものである。
【0005】
もっとも簡単な解決手段は、用いられる様々な包装(一次、二次など)に番号、バーコード又はマトリックスデータを印刷することからなる。もっとも洗練された解決手段は、RFIDマイクロチップの内蔵、ガラスの内壁に対するレーザ彫刻(たとえばガラス容器の場合)及び人造DNA、ナノテクノロジーなどの組み込みを含む。
【0006】
しかし、現在の追跡又は認証手段の大きな欠点は、並行ネットワーク及び偽造者によって破壊又は損傷されるおそれがあるということである。これらのネットワークは、現在の追跡手段に対抗するため、多量に投資する能力がある。これらの手段はすべて短い期間内に破壊されるか、読み取り不能にされてきた。
【0007】
出願FR2,870,376は、たとえば紙タイプの繊維状媒体を、試験される繊維状製品のデジタル署名と本物の繊維状媒体から生成されたデジタル署名との比較に基づいて認証する方法を提案している。この方法では、本物の製品すべてに共通であるが、試験物に特有のデジタル署名とは共通でないデジタル署名が使用されている。そのうえ、この文献に実際に記載されている署名は、製品の微視的特徴から得られた署名である。
【0008】
米国特許第5,673,338号ならびにWilkesらの文献(Materials World,Institute of Metals,London,12,1994)及びBuchananらの文献(Nature 436,2005,p475)もまた、この物体の微視的特徴から得られたデジタル署名の使用に基づく物体認証方法に関する。したがって、これらの方法は、物体の一部の微視的画像を所与の倍率で取得することを含み、顕微鏡計測及び合焦操作を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、信頼性が高く、使いやすく、付加されたしるしに依存せず、製品そのものを損傷させずには破壊しにくい、製品追跡の方法及び技術の必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすことを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、事実、一部には、各製品の一つ以上の微視的特徴からの各製品に固有のデジタル署名の判定に基づく、製品、特に小瓶又は包装を追跡するための新たな方法に関する。
【0011】
本発明は、指紋が人間に対するごとく、製品に対するものである。
【0012】
本発明は、各製品に固有の一つ以上の肉眼的特徴を使用して、各製品を唯一無二的に識別し、追跡する。これは、製品を信頼しうるやり方で識別することを可能にする。
【0013】
本発明の目的は、しるしを付加したり、物質を付加したり、物質を変化させたりすることなく、製品の少なくとも一つの本来ある肉眼的な物理的又は幾何学的特徴から得られるデジタル署名の使用を説明することである。
【0014】
特定の製品又は工芸品は、全体的又は部分的に、複製に適さず、不正改造しにくい、ランダムで無秩序で特有で安定した複雑な形状で提供される。
【0015】
製品の特徴は、全体的又は部分的に、壁の厚さ、たとえば内部形状もしくは外部形状、抵抗率又は製品のスケールでの特に異なる他の肉眼的な物理的特徴であることができる。
【0016】
たとえば、化粧品用の小瓶又は一次包装を製造する様々な方法があるが、これらの方法のいずれも、厳密に同一である小瓶又は一次包装を製造することはできない。
【0017】
これらの製造方法のせいで、小瓶又は一次包装はすべて異なる。これらの違いは場合によっては肉眼で検出可能である。
【0018】
これらの小瓶は、香水産業で非常に広く使用され、本質的にガラスからなるか、ガラス及び金属又はプラスチック組成でできている。
【0019】
そのうえ、選択される材料要素は時間を経ても比較的不変性がある。
【0020】
したがって、所与の個別製品のデジタル署名の複数回の読み取りが同一のデジタル署名を生成する。
【0021】
本発明は、付加が不要であり、取得手段が飲料又は化粧品にとって破壊的ではないため、飲料又は化粧品と完全に適合性がある。
【0022】
本発明は、付加が不要であるため、製品の美観を完全に尊重する。
【0023】
本発明はまた、実質的に無限数の特有の署名を生成することができる。
【0024】
本発明は、生産及びロジステイックスチェーンを妨害することなくそれらに容易に適合する。本発明は、包装チェーンの変更なしに設置することができる遠隔取得システムを設置するために使用される。
【0025】
したがって、本発明の一つの目的は、しるし又は物質の付加なしに、全体的又は部分的に製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から得られる、その製品に固有の少なくとも一つのデジタル署名の使用を特徴とする製品追跡方法に関する。
【0026】
一つの特定の態様で、追跡方法は、全体的又は部分的に製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から事前に得られた、その製品のランダムで特有で安定な構造を説明する、製品に固有のデジタル署名を読み取る段階を含む。
【0027】
本発明の方法の好ましい有利な変形態様にしたがって、追跡読み取りを阻止することはできない。したがって、方法は、有利には、全体的又は部分的に製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴からデジタル署名を取得する段階を含み、読み取りを阻止するために必要な変更が、その製品の販売又はその破壊を阻止するのに十分なほどの外観の損傷を生じさせる。
【0028】
本発明は、いかなるタイプの製品にも適用可能であり、特に、小瓶(たとえば香水用)、ボトル、ボックス、チューブ、包装(たとえば化粧品の一次包装)などに適用可能である。特に、化粧品の分野の製品のために設計されている。
【0029】
デジタル署名は、様々な方法で得ることができ、特に、光学、音声、レーザ及び/又はX線手段によって得ることができる。
【0030】
本発明の一つの特定の主題は、以下の段階、
a)製品上のデジタル署名の取得のためのゾーンを決定する段階、
b)前記取得ゾーンのレベルで製品の幾何学的及び/又は物理的特徴を取得する段階
c)b)で得られた特徴からデジタル署名を取得する段階、
d)追跡手順に関して後で読み取ることを考慮してデジタル署名を記憶する段階
を含む方法に関する。
【0031】
本発胴のもう一つの主題は、製品を唯一無二的に識別し、追跡することを可能にするための、製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から得られた、製品に固有のデジタル署名の使用に関する。有利には、デジタル署名は、物質の付加又は他の変更なしに得られる。
【0032】
特定の態様では、肉眼的特徴は、製品の壁の厚さ、その外郎形状又は内部形状及びその抵抗率から選択される。
【0033】
本発明のもう一つの目的は、唯一無二的な製品の識別を可能にする、各製品の少なくとも一つの肉眼的特徴からデジタル署名を取得するためのシステムを含むことを特徴とする、製品製造施設に関する。
【0034】
本発明のもう一つの主題は、唯一無二的な製品の識別を可能にする、製品の少なくとも一つの肉眼的特徴からデジタル署名を取得する段階を含むことを特徴とする、製品製造方法に関する。
【0035】
本発明のもう一つの主題は、全体的又は部分的に製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から製品に固有の少なくとも一つのデジタル署名を決定し、その署名を事前に記録された署名と比較したのち、それを使用して製品の出所を証明する段階を含むことを特徴とする、製品出所識別方法に関する。
【0036】
本発明の他の態様及び利点は、添付図面を参照しながら本発明の実施態様に関する以下の説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】香水産業の製品を直接撮影し、異なるフィルタによって処理した画像を表す図である。
【図2】香水産業の製品を直接撮影し、異なるフィルタによって処理した画像を表す図である。
【図3】本発明の方法の段階を示す図である。
【図4】香水産業の製品を直接撮影し、異なるフィルタによって処理した画像を表す図である。二つの異なる小瓶の同期化内部輪郭の間の角度差の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図3に記載する方法は、通常、以下の段階に分割される。
【0039】
1.製品のタイプごと及び選択した特徴ごとに、方法及び取得ゾーンを決定する。
【0040】
選択基準は多数あり、選択される特徴、取得及び分析の容易さ、摂動などを含む。工業製品に関する場合、取得ゾーンの選択において包装チェーンの構成が決定的になることがある。ゾーンのすべてが常にチェーン中で容易に見えるわけではない。
【0041】
2.少なくとも一つのデジタル署名を生成するために、少なくとも一つの特徴の検出及び取得の段階が実行される。この特徴は、たとえば以下のようないくつかの方法で取得することができる。
−製品の内面又は外面の輪郭の直接的な光学撮影、
−たとえば小瓶の背後に標的を置き、製品を通して変形した信号を回収することによって得られる光学撮影、
−音声放出及びリターン信号の回収、
−各製品に固有の壁の厚さを計測するために使用されるレーザシステム、
−X線画像、及び/又は
−製品の特徴に関連する他の物理的計測。
【0042】
3.少なくとも一つのデジタル署名を抽出するための生「画像」の処理。
【0043】
この処理は、光学、電子又は他のタイプの信号を解析し、処理するための様々な公知の従来方法によって達成することができる。
【0044】
すべてのタイプのデジタル又はアナログフィルタが使用可能である。
【0045】
例として、非限定的に、
−フーリエ変換。
−いわゆるウェーブレットによる変換
がある。
【0046】
データの解析及び抽出は、好ましくは、製品の部品又は取得ゾーンの変更がデジタル署名の生成を生じさせるよう、十分な信頼性又は十分な冗長性を有しなければならない。
【0047】
4.署名は、好ましくはデジタル形態で記憶されるが、他の形態を排除するわけではない。その場合、ベースの管理が追跡手段に対して適当である。
【0048】
製品の再読み取りは同じ方法で実施され、そのデジタル署名がベースのデジタル署名と比較される。
【0049】
製品のモニタリングは従来の方法で実施される。本発明に適したチェックシステムは固定されてもよく、その場合、小瓶がサイトに持ち込まれる。
【0050】
しかし、ポータブルバージョンは、現場での製品の読み取りを可能にする。
【0051】
本発明は、従来の技術に対して多くの利点を有する。したがって、一つ以上の肉眼的なランダム又は確率論的特徴を使用する原理は、大部分の現在の解決手段の弱点である「人が成し得たものはすべて人が元に戻す又はやり直すことができる」という原則を乗り越えることができるため、非常に有用である。
【0052】
加えて、本発明は、デジタル署名の破壊に伴う危険を回避させる、又は減らす。事実、製品の一部の変更は、信頼しうるやり方での製品の識別に十分である特有の署名の生成を妨げない。
【0053】
本発明のもう一つの態様は情報の保護を扱う。一つ以上のデジタル署名を得るためのデジタル処理による本来ある特徴の使用は、情報を直接アクセス不可能又は変換不可能にする。事実、署名を生成するためには、選択された特徴及び使用された処理を知る必要がある。
【0054】
しかし、使用中それをアクセス可能にする必要があると思われるが、本発明によって生成された電子署名を繰り返すことにより、又は後でデータベースで相関される別の署名により、本発明によって生成された情報を製品及び/又は包装に結合することができる。
【0055】
その場合、本発明の取得システムは、それ自体が追跡されるとき、二次包装における配置にできるだけ近づけられ、それにより、データベース内の一次及び二次のデジタル署名の間での相関を可能にする。
【0056】
図1、図2及び図4は、香水産業で使用される製品の肉眼的特徴から得られたデジタル署名の例を表す。この例では、画像は直接撮影され、異なるフィルタによって処理されている。これは第3段階の始まりであり、デジタル署名を生成することを可能にする。
【0057】
本発明は、特に香水用の小瓶の場合に特に適用可能である。本発明の方法は、本発明の技術にとって使用しやすい内部形状をこれらに提供する。これらの小瓶の生成を誘導する美的リサーチが、本発明の方法にとって好ましい複雑さの増大に向けてそれらの形状を誘導する。
【0058】
それは、たとえば製品の前面又は小瓶の底又は面の一つの特定区域に関することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
しるし又は物質の付加なしに、全体的又は部分的に製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から得られる、前記製品に固有の少なくとも一つのデジタル署名の使用を特徴とする製品追跡方法。
【請求項2】
全体的又は部分的に前記製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から事前に得られた、前記製品のランダムで特有で安定な構造を説明する、前記製品に固有のデジタル署名を読み取る段階を含む、請求項1記載の製品追跡方法。
【請求項3】
追跡読み取りを阻止することができず、全体的又は部分的に前記製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴からデジタル署名を取得する段階を含み、読み取りを阻止するために必要な変更が、前記製品の販売を阻止する、又は前記製品を破壊するのに十分なほどの外観の損傷を生じさせる、請求項1又は2記載の製品追跡方法。
【請求項4】
前記製品が、小瓶、ボトル、チューブ又は包装、好ましくは香水小瓶又は化粧品一次包装である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記肉眼的特徴が、前記製品の壁の厚さ、前記製品の外部形状又は内部形状及び前記製品の抵抗率から選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル署名が光学、音声、レーザ及び/又はX線手段によって得られる、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
以下の段階、
a.前記製品上のデジタル署名の取得ゾーンを決定する段階、
b.前記取得ゾーンのレベルで前記製品の幾何学的及び/又は物理的特徴を取得する段階
c. b)で得られた特徴からデジタル署名を取得する段階、
d.追跡手順に関して後で読み取ることを考慮して前記デジタル署名を記憶する段階
を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記製品を唯一無二的に識別し、追跡することを可能にするための、前記製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から得られた、前記製品に固有のデジタル署名の使用。
【請求項9】
前記デジタル署名が、物質の付加又は変更なしに得られる、請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記肉眼的特徴が、前記製品の壁の厚さ、前記製品の外部形状又は内部形状及び前記製品の抵抗率から選択される、請求項9又は10記載の使用。
【請求項11】
唯一無二的な製品の識別を可能にする、前記製品の少なくとも一つの肉眼的特徴からデジタル署名を取得するためのシステムを含むことを特徴とする、製品製造施設。
【請求項12】
唯一無二的な製品の識別を可能にする、前記製品の少なくとも一つの肉眼的特徴からデジタル署名を取得する段階を含むことを特徴とする、製品製造方法。
【請求項13】
全体的又は部分的に前記製品の少なくとも一つの本来ある幾何学的及び/又は物理的な肉眼的特徴から前記製品に固有の少なくとも一つのデジタル署名を決定し、前記署名を事前に記録された署名と比較したのち、それを使用して製品の出所を証明する段階を含むことを特徴とする、製品出所識別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−540714(P2009−540714A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514862(P2009−514862)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051432
【国際公開番号】WO2007/144541
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508367005)
【氏名又は名称原語表記】POIZAT,Guillaume
【Fターム(参考)】