説明

物質の保存及び分配システム

本発明は、物質を保存及び分配するシステムと、その空気を含まずに充填する方法とを対象とする。システムは、所定の量の物質を保存する少なくとも1つの区画を備え、前記区画は、物質の充填する後側末端部と、物質を分配する前側末端部とを有する。システムは、通気孔、可動の前側プラグ、及び後側末端部において区画を封止する変位可能なピストンを備え、区画は、前記ピストンの下流の区画内において、通気孔と可動の前側プラグとの間に所定の容積部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質、好ましくは流動性物質を保存及び分配するシステムと、正確な所定量の物質の空気を含まない充填及び保存を可能にする方法とを対象とする。本発明の保存及び分配システムは、分配システムの取り扱いにおいて広範な利便性を提供する、自己開放機能を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
標準的な注射器形体が、投与量分配又は送達システムとして一般に使用されている。標準的な注射器形体は、所望の物質がユーザによって充填されるか、或いは予め充填されている。標準的な注射器の手動での充填は、正確な充填容量がユーザの取り扱い技術に依存しており、技術のばらつきによって容量のばらつきにつながるという欠点を有する。注射器が予め充填されるとき、充填の許容誤差は典型的には充填装置に依存し、充填がより正確な装置ほどより高価である。歯科分野に使用されるような、充填容量が比較的低い小型容器の場合、混合物の品質のために成分の正確な混合比が必須である二成分又は多成分の組成物の場合に特に、必要な容量の正確な充填が必須である。
【0003】
標準的な予め充填された注射器形体の更なる欠点は、空隙又は空泡なしに物質を封入するのが困難なことである。空隙又は泡の量が低減されて正確に充填された容積の物質は、例えば、注射器が薬剤に使用される場合、患者の血流に注入される空気を減らす。更に、混合物中の空隙又は泡の量が低減された、二成分又は多成分の組成物の正確に充填された容積は、混合組成物の強度及び耐久性を向上させる。
【0004】
米国特許第6,261,094号は、注射器によって超高濃度の複合歯科用修復材料を分配するカプセル構造を対象としており、カプセルは、リザーバを形成する本体部分、及び本体部分の軸線に対して角度を成して配置された接続ノズルを包含する。リザーバを形成する本体部分は、ノズル及び放出オリフィスの内径に等しいか、又はそれよりも僅かに大きな内径を有する。カプセルの一端に封止キャップが提供され、超高濃度材料をカプセルから押し出すため、他端に二方向ピストンが提供される。カプセルの内側表面は、それによって分配される超高濃度複合材料と適合性のある潤滑液でコーティングされてもよい。
【0005】
米国特許第3,603,310号は、注射器カニューレと接触しないように分離された、液体入りの区画を有する使い捨て分配注射器に関する。液体入りの区画は、孔あけ可能な内側ピストンと外側ピストンの間に提供される。保存中、内側ピストンは、二方向注射器カニューレの内側末端部によって部分的に孔あけされる。内側ピストンは、封止位置から、カニューレの内側末端部が内側ピストンを孔あけし、液体を区画から分配できるようにする分配位置まで、軸方向に可動である。
【0006】
典型的な分配システムは、材料成分を保存し、後で混合するシステムを有さず、したがって、使用の直前に混合されなければならない材料成分で作られた物質を分配する場合に不便なことがある。この場合、材料成分は、最初に混合され、次に分配システムに充填されなければならず、これが、望ましくない空隙及び泡の存在につながる恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、最小限の労力で的確な量の物質の改善された泡のない充填及び保存を提供する、改善された保存及び分配システム、並びに方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、物質を保存する少なくとも1つの区画を含み、区画が、物質を充填する後側末端部と物質を分配する前側末端部とを有する、物質を保存及び分配するシステムを提供する。区画は、更に、好ましくは後側末端部付近に通気孔と、通気孔の下流で区画内に可動の前側プラグとを含む。区画は、後側末端部において変位可能な後側プラグ又はピストンを用いて閉止可能であり、区画は、通気孔と可動の前側プラグとの間に所与の容積部を形成する。
【0009】
第2の態様によれば、本発明は、前側末端部及び後側末端部を有する少なくとも1つの区画、前側プラグ、並びに変位可能な後側ピストンを含む、物質を保存及び分配するシステムを提供する。前側プラグ及び後側ピストンは、区画内で間隔を空けて、区画内の容積部を形成するように適合されるとともに、区画内で軸方向又は長手方向に可動であるように更に適合される。区画は、好ましくは後側末端部付近の通気孔を更に含み、通気孔とその初期の位置にある前側プラグとの間のチャンバの容積部は、所定の容積部を形成する。
【0010】
第3の態様によれば、本発明は、前側末端部及び後側末端部を有する少なくとも1つの区画、前側プラグ、並びに変位可能な後側ピストンを含む、物質を保存及び分配するシステムを提供する。前側プラグ及びピストンは、区画内で間隔を空けて、区画内の容積部を形成するように適合されるとともに、区画内で軸方向に可動であるように更に適合される。区画は、後側末端部付近に環状通気溝を更に含み、通気溝と及び前記前側末端部の間で初期の位置に配置された前側プラグとの間のチャンバ内の容積部は、所定の容積部を形成する。
【0011】
本発明の通気孔は、好ましくは、区画の後側末端部付近の環状溝として形成される。通気孔は、また、長手方向の、即ち区画の長手方向軸にほぼ平行な溝として形成されてもよい。あるいは、通気孔は、区画の後側末端部における先細部分として形成されてもよい。通気孔は、また、幅広になった部分、及び/又は後側末端部における少なくとも1つの段差を有する階段状の形体として形成されてもよい。
【0012】
チャンバの充填容積部は、いずれかの材料で、例えば、液体、粘性又は高粘性物質、薬剤、歯科用流体薬剤(酵素虫歯除去溶液など)、ペースト、又は、好ましくは干渉する気泡なしに保存され分配される他のあらゆる物質(1つ又は複数)で充填されてもよい。
【0013】
前側プラグは、好ましくは、円形断面を有する円筒形である。しかしながら、区画の形状に一致するプラグの他の断面形状(例えば、正方形、多角形など)も、本発明に包含される。好ましくは、前側プラグは少なくとも1つの封止突出部を含む。更により好ましくは、プラグは、図1aに示されるプラグのように、プラグの前側末端部及び後側末端部にそれぞれ隣接して、少なくとも第1及び第2の封止突出部を含む。ピストンが、ピストンの前側末端部及び後側末端部にそれぞれ隣接して、第1及び第2の封止突出部を含むことも好ましい。プラグ及び/又はピストンは、類似の又は同一のディスク形状の末端部分を有する中央の円筒形本体部分を含んでもよい。好ましくは、区画チャンバの内部に向いた後側ピストンの末端部分は、ピストンが挿入されたとき、区画チャンバから空気を逃がすのを助ける形状のものである。具体的には、末端部分は、凸状及び半球形、楕円形、又は他のあらゆる曲線状又は弓状のものであってもよい。プラグ及びピストンは、類似の又は等しい形状を有してもよく、また、プラグ及びピストンそれぞれの両方の末端部分は、類似の又は等しい形状であってもよい。ピストンの第1及び第2の封止突出部は互いに間隔を空けているので、容積部内に(所定の容積部を越えて)充填された余分な量の物質があれば、それを少なくとも部分的に、2つの突出部、ピストンの中央本体、及び区画の間に形成された空間内に収容することができる。したがって、所定の容積部を越える物質があれば、それをピストンの第1及び第2の封止突出部の間に保持してもよい。ピストンの中央本体及び2つの突出部は、区画の壁部と共に、そのような余分な物質を収容する環状空間を形成する。
【0014】
好ましくは、前側プラグは、後側ピストンよりも僅かに移動しにくいので、空気及び余分な材料を除去するために後側ピストンが押された場合、空気及び余分な材料が逃げるまで、前側プラグは移動しない。例えば、前側末端部において僅かにより高い摩擦が提供されるように、区画は、前側末端部に向かって僅かに先細になっている。この場合、前側プラグ及び後側ピストンは同じ直径を有することができる。あるいは、前側プラグの直径は、後側ピストンの直径よりも僅かに大きい。更なる代替の方法としては、前側プラグ及び後側ピストンは異なる材料(例えば、異なるショアー硬度を有する材料)で作られる。
【0015】
本発明のシステムは、例えば、可動の前側プラグがその初期の位置から区画の前側末端部に向かって移動されたとき、区画とオフィリスの間に流体連通経路が提供されるように、自己開放機能を備えてもよい。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも2つの物質を保存及び分配するシステムを提供する。それに加えて、システムはまた、少なくとも2つの物質の混合を助けてもよい。この態様によれば、システムは、少なくとも2つの別個の区画を含み、各区画は、上述したようなプラグ及びピストンを含む。システムは、物質を混合及び分配する出口を更に含み、各区画は、それぞれの区画と出口の間に流体連通経路を提供するオリフィスを含む。プラグが、それらの初期の位置から区画の前側末端部に向かって移動され、プラグがオリフィスを通過したとき、各区画と出口の間に流体連通経路が作られて、両方の区画の物質が出口に向かって流れることを可能にする。好ましくは、区画及び出口は一体形成される。システムは、出口内の静止ミキサーなどのミキサーを更に含んでもよい。あるいは、物質を即座に混合することが望ましくない場合に、2つの区画は個々の出口を含むことができる。
【0017】
本発明のシステムは、好ましくは、ピストンに圧力を印加するプランジャを各区画に含む。必ずしも必須ではないが、好ましくは、プランジャ及びピストンは一体形成される。
【0018】
更に、本発明は、所定の充填容積部内に的確な量の物質を保存するシステムを、ガス又は空気を含まずに充填及び封止する方法を対象とする。この方法は、i)区画内部の初期の位置にプラグを有する区画を提供する工程と、ii)少なくとも通気孔まで、後側末端部から区画を物質で充填する工程であって、プラグの初期の位置と通気孔が所定の容積部を形成する工程と、iii)ピストンを区画内の後側末端部内に配置する工程と、iv)所定の容積部がピストンとプラグの間に空気を含まずに封止されるまで、ピストンを更に前進させる工程とを含む。好ましくは、工程iii)と工程iv)の間に、ピストンと物質の充填レベルとの間の残りの空気が圧縮される。
【0019】
通気孔を越えて充填された余分な物質が、通気孔内に、又は通気孔を通して逃げることができることによって、ピストンとプラグの間に物質の所定の容積部が密閉される。通気孔の設計に応じて、余分な物質は、システムから除去可能であるか、或いはシステム内に維持される。好ましくは、余分な物質は、上述したようなピストンの第1及び第2の封止突出部の間に封止される。
【0020】
更に、本発明は、本発明による保存及び分配システムによって、少なくとも2つの物質を混合する方法であって、前記方法が、a)区画の前側末端部に向かってピストン(1つ又は複数)を変位させ、同時に、力の液体伝達によって、区画内に保存された物質を介してプラグを変位させる工程と、(b)プラグがそれらの区画それぞれの前側末端部に近付くと、オリフィスを開き、その結果、区画と出口の間に流体連通を提供する工程と、ピストンを更に前進させ、その結果、区画から出口内に物質を押し出す工程とを含む、少なくとも2つの物質を混合する方法を対象とする。
【0021】
本発明は、システムによって、複雑な又は高価な機械装置又はプロセスを必要とせずに、物質の保存及び分配システムの空気又はガスを含まない充填が可能になる点で有利である。本発明は、充填許容誤差が比較的大きな充填装置と共に使用したときであっても、区画内の正確な所定の容積部を提供する点で更に有利である。したがって、本発明は、歯科分野に使用されるような比較的低い充填容量の小型容器に、正確な容量の物質を提供する点でも有利である。本発明は、正確な充填機械装置に関連する高額の費用なしで、正確な容量の物質を提供する点でも有利である。
【0022】
本発明は、自己開放機能を提供する点で更に有利であり、それは、使用前に注射器を開ける(例えば、キャップを除去する、チップを組み立てるなど)ための別個の動作又は工程が不要であることを意味する。注射器は、プランジャが所定の地点まで前進すると自動的に開き、正確に制御可能な物質の分配を提供する。
【0023】
本発明は、特に二成分又は多成分組成物の、成分の正確な混合比を提供する点で更に有利である。本発明は、空隙又は空泡がほぼない状態で物質の材料成分を予め充填し、分配システムに保存し、次に、使用前又は使用中にシステム内で自動的に混合することができる点で有利である。また、本発明の送達システムは使い捨てなので、使用後にシステムを清浄にする労力が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1a及び図2a〜2eに示されるような本発明の好ましい一実施形態では、分配システム42は、一般に、例えば物質を保存する区画を通して軸方向に延びるチャンバの形態の、1つの区画20を有するカートリッジ10を含む。区画は、物質を充填する後側末端部22と、物質を分配する前側末端部21とを有する。前側末端部21において区画を封止するため、可動の前側プラグ31が区画20に挿入され、前側プラグ31の位置は、より詳細に後述されるように、区画の所定の充填容積部を部分的に形成する。
【0025】
本発明の第1の実施形態によるカートリッジ10は、後側末端部22付近に環状通気溝50を更に含み、それによってシステムのほぼ空気を含まない充填が可能になる。通気溝により、空気が区画内に捕捉されることが排除されるか、又は少なくとも低減される。カートリッジは、後側末端部22においてピストン32によって封止される(図2c〜2eを参照)。好ましい実施形態のピストン32は、一般に、中央の円筒形本体部分320を有し、ピストンの前側末端部及び後側末端部にそれぞれ、第1の封止突出部321及び第2の封止突出部322を含む。あるいは、ピストンは、それぞれの頂点で互いに接合された2つの切頭錐体の形態に形作られる。ピストン32は対称的に設計されてもよいが、他の設計も可能である。可動の前側プラグ31はピストン32に類似の設計を有してもよい。1つの封止突出部のみを有する設計も包含される。好ましくは、可動の前側プラグ31及びピストン32は、製造コストを低減するため、同一の設計及びサイズを有してもよい。ピストン32及びプラグ31は、区画20の中ににぴったり嵌まり、滑動可能なように設計され、区画とプラグ及びピストンとが対応する形状を有するのであれば、いずれかの所望の断面形状(正方形又は長方形を包含する)を有することができる。図2eで分かるように、ピストン32及びプラグ31はそれぞれ、それらの前側末端部及び後側末端部に2つの突出部321、322、及び311、312を有して、区画20の前側及び後側末端部に緊密な封止を形成する。ピストン32及びプラグ31は、好ましくは、比較的柔軟な弾性材、例えば、ゴム(EPDM、NBRなど)又は熱可塑性エラストマー類(例えば、TPE−U=熱可塑性ポリウレタン類、TPE−S=スチレンブロックコポリマー類、TPE−O=熱可塑性ポリオレフィン類、TPE−V=熱可塑性加硫ゴム)で作られる。ピストン32は、突出部321及び322と共に一体成型することができる。あるいは、又はそれに加えて、別個に形成された突出部を(例えば、Oリングを使用して)プラグに取り付けることができる。好ましくは、突出部は、区画を緊密に封止するのに適したより柔軟な材料で作られる。
【0026】
分配システム42のカートリッジ10は、好ましくは比較的剛性の材料、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリオキシメチレンで作られた本体を有する。本体は射出成型されてもよい。
【0027】
図1bは、通気孔の第2の実施形態を示し、通気孔は、区画20の後側末端部における先細部分51として設計される。図1cは、通気孔の第3の実施形態を示し、通気孔は、区画の後側末端部における1つの段差を有する階段状の形体52として設計される。通気孔の設計に応じて、余分な物質は、システムから直接除去可能である(図1b及び図1c)か、或いはシステム内に(最初は)維持される(図1a、図3a及び3bを参照)。好ましくは、余分な物質は、ピストンの第1及び第2の封止突出部と区画の内壁との間に封止される。
【0028】
次に図2a〜2eを参照して、本発明によるカートリッジの充填プロセスが詳細に記載される。図2aに示されるように、第1のプラグ31は、カートリッジ10の区画20の初期の位置内に配置される。第1のプラグ31、カートリッジ10、及び通気孔50は、プラグ31の初期の位置によって決まる所定の容積部を有する区画20を形成する。図2dから分かるように、所定の容積部は、プラグ31の上側末端部と通気孔50の下側縁部との間にある区画内の容積部である。換言すれば、所定の容積部は、プラグ31を的確に配置することによって達成されるが、これは、充填不足が起こらないものと仮定して、通気孔を越えて上昇するチャンバ内のいずれかの追加材料があれば、それがピストンによって所定の容積部から除外されるためである。したがって、所定の容積部の許容誤差は、カートリッジの許容誤差及びプラグ31の位置付けのみによって決まる。これに関連して、前側プラグ31を、充填装置が的確な充填容量を、特に1mL未満の少ない充填容量を制御できるよりも更に的確に(即ち、より小さな許容誤差内で)配置することができることに留意されたい。図2bに示されるように、区画20は、物質25、例えば歯科用材料で充填される。最小充填レベルは通気溝50の下側縁部である。充填容量の許容誤差により、より高い充填レベルが得られる。充填装置の充填容量は、毎回チャンバが少なくとも通気溝の下側縁部まで充填されるように、毎回所定の容積部が完全に材料で一杯になるように、調整されるべきである。
【0029】
次の工程では、図2cに示されるように、ピストン32が区画内に配置されるため、区画が閉止される。ピストン32を挿入する間、区画内の空気80は、ピストン32の第1の封止突出部321が通気溝に達し、空気が逃げることができるまで圧縮される。図2d及び2eに示されるように、ピストン32は、通気溝50の下側縁部において、又はその下で、第1の封止突出部321と共に区画20を封止するまで更に前進して、ピストン32とプラグ31の間に空気を含まない物質の所定の容積部を密閉する。この配置内では、通気溝50の下側縁部の上にある余分な材料81は全て、他の材料から分離され、ピストンの突出部321、322及び区画20によって形成された環状空間に変位される。十分な量の材料を収容する空間を得るため、ピストン32は、封止突出部321及び322の間に窪んだ領域を有する。あるいは、又はそれに加えて、環状通気溝50によって十分な空間を形成することができる。余分な材料81は、ピストンの封止突出部321及び322の間に緊密に密閉され、保存の間、並びに最終的に廃棄するまでずっと、分配システム内に留まることができる。図3a及び3bは、図2d及び2eに対応する拡大図である。
【0030】
区画の要件に応じて、図4a〜4cに示されるピストンの「保存位置」に対する選択肢がある。
【0031】
環状溝の代わりの選択肢として、図4cに示されるような長手方向の溝53を使用することができる。この場合、プラグを挿入する間の空気の圧縮を回避することができる。しかしながら、環状溝は、区画が封止された後、余分な材料が区画から逃げることができないという利点を提供する。
【0032】
次に図9a〜9cを参照して、本発明による単一の区画を有するカートリッジの分配プロセスが詳細に記載される。図9aに示されるように、第1のプラグ31は、カートリッジ10の区画内の初期の位置に配置される。第1のプラグ31及びピストン32は、区画の容積部内に所定の量の物質25を封止する。本発明は、図9b及び9cに示されるような自己開放機能を提供する点で有利である。別個の動作又は工程を何も必要としない「自己開放」手段は、使用前に注射器を開放する(例えば、キャップを除去する、チップを組み立てるなど)。したがって、材料が区画を出ることができるように十分にピストン32が前進される(図9bに矢印で示される)と、注射器は自動的に開き物質の制御可能な分配を提供する。ピストン32を区画の前側末端部に向かって前進させると、区画内に保存された物質を介して、液体伝達によって前進力がプラグ31に伝達される。可動のプラグ31が区画の前側末端部に向かって変位することにより、カートリッジの区画と出口61の間に流体連通経路が提供される。換言すれば、プラグ31が前側末端部に変位することで、物質25が、プラグ31からオリフィス60を通って出口61内に通過することが可能になる。ピストン32を更に前進させることで、物質が区画から出口61内に押し出される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態では、図5〜8に示されるように、分配システム42は、一般に、2つの成分又は物質を保存する2つの区画20a及び20bと、物質を混合する出口61と、混合される物質の制御された充填、保存、及び分配を可能にする、ピストン32a、32bに関連付けられた、材料区画20a、20bに対応するロッド71、72を有するプランジャ70とを有するカートリッジ10を含む。区画又はチャンバ20a及び20bは、分配システム内の別個の領域に物質又は材料成分を保存する空間を提供する。これにより、システムを予め充填し、使用まで材料又は物質成分を別個に保存することが可能になり、これは、1つの成分として触媒を包含する材料を混合する場合に有用である。図5〜8には2つの物質区画のみが示されるが、異なる物質成分を収容する2つを超える材料区画が、必要に応じて提供されてもよい。作動されると、各材料区画20a、20bは、オリフィス60a及び60bを介して、カートリッジ10の出口61と流体連通し、材料成分が出口61に移動される。出口61に、材料成分が装置から押し出されるときにそれらを受動的に混合する静止ミキサーを含んでもよい。
【0034】
この実施形態の充填プロセスは、図2a〜2eに関して上述したプロセスに類似する。しかしながら、図5a〜5d及び8に示される区画は、図2a〜2eに関して記載したような環状溝50ではなく、少なくとも1つの長手方向の溝53、即ち、カートリッジ10の軸方向の溝を有する通気孔を含む。しかしながら、螺旋状の通気溝など、他の通気孔形状を代わりに使用することができ、所望するならば1つを超える通気孔(長手方向又は螺旋状の通気孔のように)を設けることができる。
【0035】
好ましくは、出口61は、オリフィス60a及び60bを介して両方の区画20a及び20bと流体連通している1つのチャネルとして設計されるので、物質成分が区画から同時に押し出されると、共に流れることができる。しかしながら、あるいは、下流の工程において材料を別個の状態で維持するため、又は単一の成分として使用するため、カートリッジは、2つの別個のチャネルを有する出口を含む。
【0036】
好ましくは、2つの区画20a及び20bを有するカートリッジ10は、一体形成される。任意選択の分離壁11は2つの区画20a及び20bを分離する。分離壁11は、カートリッジ10の前側末端部付近に開口を有するので、オリフィス60a及び60bが形成され、2つの区画20a及び20bの間の、且つ出口との流体連通が提供される(例えば、図8を参照)。
【0037】
上述したように、物質25a、25bは、区画20a及び20b内で、ピストン32a、32bとプラグ31a、31bとの間に封入される。材料をカートリッジから押し出すため、ピストン32a、32bは前方に押される。材料は、好ましくは比較的非圧縮性なので、これにより、前側プラグ31a、31bを同様に前方に移動される。プラグ31a、31bが開口又はオリフィス60a及び60bを通過するとすぐに、両方の区画20a及び20bと出口61との間の流体連通が作られる。これにより、両方の区画の物質が出口61内に流れることが可能になる。出口は静止ミキサー(図示なし)を収容してもよい。
【0038】
休止位置からの各ピストン及びプラグの移動を開始するのに必要な静的な力は、すべて同時に印加されるので、2つのピストン及び2つのプラグを同時に移動させるには、比較的高い初期の力が必要ことがあることが観察されている。ピストン及びプラグ、並びにカートリッジの材料に応じて、且つ部品が組み立てられた状態で保存されていた時間に応じて、この開始力は、通常、プラグとピストンが動き始めるとそれらに生じる動的(滑動)摩擦よりも相当に高い。このことは、ピストン及びプラグのより容易な初期の移動を可能にする解決策が好ましいことを意味する。
【0039】
一実施形態によれば、環状の窪み521は、図6に示されるように、区画の後側末端部に組み込まれる。したがって、この実施形態の8つの封止突出部の2つは窪み部分において僅かしか圧縮されないので、必要な開始力はより低い。このようにして、両方のプラグ及び両方のピストンを同時に移動させなければならないとき、開始力をその値の25%まで低減することができる。更なる実施形態は、区画の前側末端部にも窪みを包含してもよい。例えば、図6に示されるような階段状の形体が、区画の前側末端部にも提供されてもよいので、前側プラグ31a、31bの前側末端部における封止突出部311の圧縮が、前側プラグ31a、31bの後側末端部の封止突出部312よりも少なくなる。
【0040】
図7aに示される別の実施形態によれば、二重プランジャ70の2つのロッド71及び72は異なる長さを有する。基準線「A」に留意されたい。このようにして、分配プロセスの最初には1つの区画のピストン32bのみが移動され、それによって、両方の区画のプラグを同時に移動させるのに比べて、約50%低い開始力が提供される。別の実施形態が図7bに示され、二重ピストンの2つのロッド71及び72は同じ長さを有し、2つの区画20a及び20b内に異なる階段状の形体が設けられる。換言すれば、変位されたピストン32a及び32bによって、所望の差異が提供される。好ましくは、これらの2つの代替例は組み合わされる。
【0041】
本発明は、特定の例証された実施形態に限定されない。更に、本発明は、特許請求の範囲の特徴及びその任意の明白な修正によって実現される。
【0042】
(符号の説明)
10 カートリッジ
11 分離壁
20 区画
21 区画の前側末端部
22 区画の後側末端部
25 物質
31 前側プラグ
32 後側ピストン
311 前側プラグの第1の封止突出部
312 前側プラグの第2の封止突出部
321 後側ピストンの第1の封止突出部
322 後側ピストンの第2の封止突出部
42 分配システム
50 通気溝
51 先細部分
52 階段状の形体
521 環状の窪み
53 長手方向の溝
60 オリフィス
61 出口
70 プランジャ
71 ロッド
72 ロッド
80 空気
81 余分な材料
本発明の好ましい実施形態の以下の説明及び図面から、更なる利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1a】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図1b】本発明の第2の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図1c】本発明の第3の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図2a】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階におけるカートリッジの断面図。
【図2b】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階におけるカートリッジの断面図。
【図2c】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階におけるカートリッジの断面図。
【図2d】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階におけるカートリッジの断面図。
【図2e】本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階におけるカートリッジの断面図。
【図3a】図2dにしたがった部分拡大断面図。
【図3b】図2eにしたがった部分拡大断面図。
【図4a】物質の保存中の異なるプラグ位置を示す、本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図4b】物質の保存中の異なるプラグ位置を示す、本発明の第1の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図4c】本発明の第4の実施形態による通気孔を有するカートリッジの断面図。
【図5a】本発明の一実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図5b】本発明の一実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図5c】本発明の一実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図5d】本発明の一実施形態による通気孔を有するカートリッジの空気を含まない充填を示す、充填段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図6】溝と区画の間に追加の任意の幅広領域を有する、図5a〜5dによるカートリッジシステムの部分拡大断面図。
【図7a】本発明の一実施形態による通気孔を有する、プランジャの異なる段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図7b】本発明の一実施形態による通気孔を有する、プランジャの異なる段階における2つの区画を有する分配システムの断面図。
【図8】図5a〜5dに示されるカートリッジシステムの前側末端部の断面斜視図。
【図9a】本発明の一実施形態による通気孔を有する、分配段階における1つの区画を有する分配システムの断面図。
【図9b】本発明の一実施形態による通気孔を有する、分配段階における1つの区画を有する分配システムの断面図。
【図9c】本発明の一実施形態による通気孔を有する、分配段階における1つの区画を有する分配システムの断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を保存及び分配するシステムであって、前記システムが
物質を保存する少なくとも1つの区画であって、該区画が前記物質を充填する後側末端部と分配する前側末端部とをそれぞれ有する区画と、
通気孔と、
可動の前側プラグと、
前記後側末端部における変位可能なピストンとを含み、
前記区画が、前記変位可能なピストンの下流の前記区画内において、前記通気孔と前記可動の前側プラグとの間に所定の容積部を形成する、物質を保存及び分配するシステム。
【請求項2】
物質を保存及び分配するシステムであって、前記システムが
前側末端部及び後側末端部を有する少なくとも1つの区画と、
前記区画内で間隔を空けて、前記区画内に容積部を形成するように適合されるとともに、前記区画内で軸方向に可動であるように更に適合された、前側プラグ及び変位可能なピストンと、
前記後側末端部付近の通気孔とを含み、
前記通気孔及び前記前側プラグが、その初期の位置において所定の容積部を形成する、物質を保存及び分配するシステム。
【請求項3】
物質を保存及び分配するシステムであって、前記システムが、
前側末端部及び後側末端部を有する少なくとも1つの区画と、
前記区画内で間隔を空けて、前記区画内に容積部を形成するように適合されるとともに、前記区画内で軸方向に可動であるように更に適合された、前側プラグ及び変位可能な後側プラグと、
前記後側末端部付近の環状通気溝とを含み、
前記通気溝、及び、前記通気溝と前記前側末端部との間で初期の位置に配置された前記前側プラグが、所定の容積部を形成する、物質を保存及び分配するシステム。
【請求項4】
該通気孔が環状通気溝を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
該通気孔が、前記区画の前記後側末端部において先細部分を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
該通気孔が、前記後側末端部において少なくとも1つの段差を有する階段状の形体を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
該プラグ及び/又は該ピストンが、該プラグ及び/又はピストンの前側末端部及び後側末端部それぞれに隣接して、少なくとも第1及び第2の環状封止突出部を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
該ピストンの該第1及び第2の封止突出部が、互いから間隔を空けて空間を形成することによって、該容積部内の余分な物質を少なくとも部分的に該空間内に収容する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
該所定の容積部が物質で充填される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
該物質が薬剤である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
該薬剤が歯科用流体薬剤である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
該歯科用流体薬剤が酵素虫歯除去溶液である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
該所定の容積部を超える該物質が、該ピストンの前記第1及び第2の封止突出部の間に封止される、請求項9〜12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
該プラグがその初期の位置から前記区画の前記前側末端部に向かって所定の距離を移動したとき、前記区画とオリフィスとの間に流体連通経路が提供される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、2つの個々の区画及び該物質を混合し分配する出口を含み、各区画が、前記プラグがそれらの初期の位置から前記区画の前記前側末端部に向かって移動したとき、該区画と該出口の間に流体連通経路を提供するオリフィスを備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記プラグが前方に移動し、前記プラグが前記オリフィスを通過したとき、両方の区画と前記出口の間に流体連通経路が作られて、両方の区画の前記物質が前記出口まで流れることを可能にする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記区画及び前記出口が一体形成される、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムが前記出口内に静止ミキサーを更に備える、請求項の1〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムが、前記ピストン(1つ又は複数)に圧力を印加するために、各区画にプランジャを備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記プランジャ及び前記ピストン(1つ又は複数)が一体形成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
保存及び分配するシステムを充填し封止する方法であって、前記方法が、
i)区画内部の初期の位置にプラグを有する区画を提供する工程と、
ii)少なくとも通気孔まで、前記後側末端部から前記区画を物質で充填する工程であって、前記プラグの前記初期の位置と前記通気孔が所定の容積部を形成する工程と、
iii)ピストンを前記区画内の後側末端部に配置する工程と、
iv)前記物質の前記所定の容積部が前記ピストンと前記プラグの間に封止されるまで、前記ピストンを更に前進させる工程とを含み、前記前進の少なくとも一部の間、前記通気孔を通して空気が逃げることができる、保存及び分配するシステムを充填し封止する方法。
【請求項22】
工程iii)と工程iv)の間に、前記ピストンと前記物質の前記充填レベルとの間の残りの空気が圧縮される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程iii)と工程iv)の間に、前記通気孔を越えて充填された余分な前記物質が前記通気孔を通して逃げることができることによって、前記ピストンと前記プラグとの間に前記物質の前記所定の容積部が密閉される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
余分な物質が、前記ピストンの第1及び第2の封止突出部の間に封止される、請求項21、22、又は23に記載の方法。
【請求項25】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の保存及び分配システムによって、少なくとも2つの物質を混合する方法であって、前記方法が、
i)前記カートリッジの前記前側末端部に向かって前記ピストン(1つ又は複数)を変位させる工程と、
ii)力の液体伝達によって、前記区画内に保存された前記物質を介して前記プラグを同時に変位させる工程と、
iii)前記プラグがそれらの区画の前側末端部に近付くと、経路を開き、その結果、前記区画と前記出口の間に流体連通を提供する工程と、
iv)前記ピストンを更に前進させ、その結果、前記区画から前記出口内に前記物質を押し出す工程とを含む、少なくとも2つの物質を混合する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【公表番号】特表2009−506798(P2009−506798A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514870(P2008−514870)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021325
【国際公開番号】WO2006/132932
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】