説明

物質の試料を採取するための器具及び方法

試料捕捉機器は中空軸及び多孔質媒質を備える。中空軸は近位端部と、遠位端部と、該近位端部と該遠位端部の間に延在する側壁とを備える。中空軸の側壁は、中空軸の遠位端部に隣接する複数の開口部を備える。多孔質媒質は、中空軸の遠位端部に取り付けられ、多孔質媒質の少なくとも一部が複数の開口部上に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年8月2日に出願された米国仮出願第60/705,140号の利益を主張するものであり、該仮出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
綿棒のような試料捕捉機器は、一般に、試料源から物質の試料を採取するために多くの業界で使用されている。試料捕捉機器は、遠位端部と近位端部とを備えた中空軸、及び中空軸の遠位端部に取り付けられた多孔質媒質を備えてもよい。通常、遠位端部及び近位端部は、開口しているか、又は開口部を備えている。医療産業においては、試料捕捉機器は、鼻、耳、咽喉、又は他の試料源(例えば、創傷)から生体物質の試料を集めるために用いられる場合がある。特に、中空軸は、鼻、耳、咽喉、又は他の試料源に接触する多孔質媒質を位置づけるために取り扱われる場合がある。外食産業においては、試料捕捉機器の中空軸は、食品調整表面、食品容器等に接触する多孔質媒質を位置づけるために取り扱われる場合がある。試料捕捉機器により採取された試料は、その後生物体(検体)の存在について分析される場合がある。分析には、アッセイを組み込むことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
試料の分析に先立ち、試料は通常、試料を分析条件におくために、多孔質媒質から移される。ある方法においては、少なくともいくつかの試料を多孔質媒質からスライドガラス又は他の実験器具へ移すために、多孔質媒質は、スライドガラス又は他の実験装置と接触して定置される場合がある。他の方法においては、緩衝溶液のような流体は、試料捕捉機器の中空軸の近位端部に取り込まれる場合がある。流体は、次いで、中空軸を通って流れ、遠位端部の開口部を通って出て、多孔質媒質に接触する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一様態において、本出願は、中空軸と多孔質媒質とを備える試料捕捉機器を開示する。中空軸は、近位端部と、遠位端部と、該近位端部と遠位端部間に延在する側壁とを備える。開示された実施形態においては、側壁は遠位端部に近接する複数の開口部を備える。多孔質媒質は中空軸に取り付けられ、ここで多孔質媒質の少なくとも一部は複数の側壁開口部上に位置する。
【0005】
物質の試料採取方法が開示されている。方法は、試料捕捉機器の多孔質媒質を試料源に接触させることと、流体を該試料捕捉機器の中空軸の近位端部に取り込むことと、該中空軸の側壁に沿った複数の開口部を通る流動を介して試料捕捉機器から試料を溶出することと、を含む。
【0006】
上記の要約は、本発明の開示された各実施形態、又はあらゆる実施を記載することを意図するものではない。次の図面及び発明を実施するための最良の形態は、実例となる実施形態をより具体的に例示するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、複数の開口部を備えた側壁を備える中空軸と、少なくとも多孔質媒質の一部が該複数の開口部上に位置する、中空軸に取り付けられた多孔質媒質とを備えた試料捕捉機器である。本発明においては、複数の放射状開口部が、試料捕捉機器の中空軸の側壁に沿って位置する。ある実施形態においては、中空軸は遠位端部並びに、側壁に沿った複数の放射状開口部を備える。中空軸は、近位端部と、遠位端部と、該近位端部と該遠位端部の間に延在する側壁とを備える。側壁における複数の開口部は、中空軸の遠位端部に隣接する。ある実施形態においては、複数の開口部の大きさは均一であるが、他の実施形態においては、複数の開口部のうち少なくとも2つの開口部の大きさが異なる。中空軸の近位端部は開口部(近位開口部)を備え、ある実施形態においては、中空軸の遠位端部は少なくとも1つの開口部(遠位開口部)を備える。中空軸が遠位開口部を備える実施形態においては、多孔質媒質は遠位開口部上に位置する。
【0008】
本発明の試料捕捉機器の中空軸は、ポリカーボネート又は他の類似のプラスチック類を含む、任意の好適な材料で形成され得る。例えば、プラスチック材料を利用した射出成形製法を用いて、中空軸を形成することができる。多孔質媒質は、レーヨン繊維、ダクロン繊維(Dacron fibers)、又はこれらの組み合わせから成る繊維質芽のような、任意の好適な多孔質媒質であり得る。本発明は繊維質芽に関して記載しているが、他の多孔質媒質も検討されており、当業者は、本明細書に記載されている試料捕捉機器で好適な多孔質媒質に置換することが可能である。例えば、他の実施形態においては、多孔質媒質は繊維質芽よりもむしろ剛毛(bristles)を含んでもよい。
【0009】
本発明の試料捕捉機器を用いて、ヒトの鼻、耳、若しくは咽頭、又は食品調整表面のような、試料源から物質の試料を採取することができる。特に、技術者は機器の中空軸を操作して、試料源に多孔質媒質を接触させることができる。試料は、次いで、試料捕捉機器の多孔質媒質内、又は該媒質上で、(又は該媒質に付着して)採取される。試料の採取後、試料は、生物体の存在を検出するために分析される場合がある。「背景技術」の章で記載したように、ある環境においては、試料は多孔質から溶出されなければならない。本発明は、新規の試料捕捉を提供し、場合によっては、多孔質媒質から溶出される試料の割合(つまり、回収率)を向上させることが可能である。
【0010】
本発明の試料捕捉機器は、多孔質媒質の少なくとも一部が開口部上に位置する、該機器の中空軸の側壁に沿った開口部を備える。流体は、通常、少なくともいくらかの試料を多孔質媒質から溶出するために、中空軸の近位端部に取り込まれる。中空軸の側壁上の開口部は、流体が多孔質媒質の側部に沿って出るのを可能にし、従って多孔質媒質の側部に沿って採取された試料、並びに多孔質媒質の端部に沿って採取された試料を溶出するのに役立つ。側部は、一般に、中空軸の側壁に接触する部分であり、一方、多孔質媒質の端部は、中空軸の遠位端部に接触する部分である。流体が中空軸の側壁に沿った開口部から出る場合、流体が遠位端部からのみ出ることが可能な形状の試料捕捉機器と比べて、側部からより多くの試料を溶出するのに役立つことができる。これは、試料が多孔質媒質の側部から採取された際、有利である場合がある。溶出は、図に関連してさらに詳細に記載される。
【0011】
ある実施形態においては、本発明の試料捕捉機器は、試料捕捉機器と流体を保持する液だめとを備える試料捕捉アセンブリに組み込まれる。液だめは、試料捕捉機器の中空軸の近位端部に取り付けることができ、又は該液だめは試料捕捉機器の技術者(つまり、機器を使用する任意の人物)により中空軸の近位端部に手動で位置づけられ得る。液だめは、好ましくは、試料捕捉機器の中空軸と選択的流体連通する。「選択的流体連通」とは、バルブ、プランジャ(例えばシリンジにおける)、又は、技術者が稼働させる、液だめに配置された流体を試料捕捉機器の中空軸に取り込むための他の手段が存在することを示す。特に記述する場合、技術者が、本発明の試料捕捉アセンブリ中の液だめに含まれる流体の分配を制御できることが好ましい。
【0012】
液だめは、容器の内容物を選択的に放出する手段を含む、任意の好適な容器であってよい。例えば、液だめは、「検体試験ユニット(SPECIMEN TEST UNIT)」と表題された、米国特許第5,266,255号に記載のような、技術者によって手動で圧縮される変形可能な圧縮バルブ、又はシリンジ型容器であってもよい。下記のように、液だめの種類の選択は、必要とされる又は望ましい放出圧の量によってもよい。「放出圧」は、流体の液だめから放出による圧力である。
【0013】
試料捕捉機器の多孔質媒質内、又は該媒質上で試料が収集された後、液だめ内に保持された流体は、中空軸に取り込まれ、少なくともいくらかの試料が多孔質媒質から溶出され得る。特に、流体は中空軸を通って移動し、多孔質に接触する、ある意味で、多孔質媒質から少なくともいくらかの試料が「流れる」。流体が多孔質媒質から少なくともいくらかの試料を溶出するために、少なくともいくらかの流体が多孔質媒質と接触しなければならない。このため、試料捕捉機器の中空軸が少なくとも1つの開口部を備えることが重要である。先行技術の試料捕捉機器においては、開口部は試料捕捉機器の中空軸の遠位端部に位置する。
【0014】
遠位端部を1つ有する試料捕捉機器においては、流体が端部に接触するのと同程度に、流体が多孔質媒質下の中空軸の側部に接触しない可能性もある。結果的に、側部から溶出された試料の量は、端部から溶出された試料の量よりも少ない可能性がある。これは、十分な量の試料が多孔質媒質から溶出されず、後に試料分析の精度に影響を与える可能性があるため、特定の用途において問題となる場合がある。これは、大量の試料が多孔質媒質の側部に付着する場合に(例えば、試料を採取する技術の結果として)、特にあてはまる。
【0015】
図1は、先行技術の実施形態、試料捕捉機器10を図示する。図のように、試料捕捉機器10は、側壁12Cを有する中空軸12を備える。中空軸12は、それぞれ開口部16及び18を有する、近位端部12Aと遠位端部12Bの間に延在する伸び長さを有する。図のように、多孔質媒質14は、中空軸12の遠位端部12Bに取り付けられ、遠位開口部18を被覆する。試料は、多孔質媒質14上で採取される。流体は、開口部16を通って中空軸12のチャネルに取り込まれる。流動は、チャネルを通り、開口部18から出る。図のように、多孔質媒質14は、側部14Aと端部14Bを備える。
【0016】
図2A及び2Bは、本発明による試料捕捉機器20の実施形態を図示する。図2Aは、本発明の試料捕捉機器20の代表的な実施形態の側面図である。図2Bは、図2Aの試料捕捉機器20の略断面図である。試料捕捉機器20は、近位端部22Aと、近位端部22Aの反対側の遠位端部22B(破線で示された)と、近位端部22Aと遠位端部22Bの間に延在する側壁22Cとを有する中空軸22を備える。多孔質媒質24は、遠位端部22Bに近接するように取り付けられる。ある実施形態においては、多孔質媒質24は繊維質芽である。中空軸22は、円筒状であり、近位端部22Aに近位開口部26を備える。代表的な実施形態においては、遠位端部22Bは遠位開口部を備えない。しかしながら、別の実施形態においては、遠位端部22Bは、単一の遠位開口部、又は複数の開口部を備えてもよい。
【0017】
ある実施形態においては、側壁22Cは側方域において円形であり、中空軸22の遠位端部22Bに隣接する複数の放射状開口部28(破線で示す)を備える。開口部28は、開口部28が側壁22Cの周囲に位置し、中空軸22の中心を通る中心線から等距離であるという意味で、放射状である。繊維質芽24は、複数の放射状開口部28上に位置し、中空軸22の周囲に繊維を巻きつける等の、任意の好適な手段を用いて中空軸に取り付けられる。少なくとも繊維質芽24の一部は、セルロース系、ポリエステル、レーヨン、ポリウレタン又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない天然及び合成高分子材料のような任意の好適な材料から形成することができる。
【0018】
代表的な実施形態においては、複数の開口部28の開口部の大きさは等しい。別の実施形態においては、複数の開口部28のうち少なくとも2つの開口部の大きさが異なる。例えば、ある実施形態では、近位端部22Aに最も近接する放射状開口部28が、遠位端部22Bに最も近接する放射状開口部28よりも大きく、逆もまた同様であるように、放射状開口部28は段階的であってもよい。種々の大きさの開口部28は、開口部28を通る流体圧力を増大又は低減させる、及び/又は、別の方法で開口部28を通る流動を制御するのに役立つ場合がある。当業者は開口部28の大きさを適宜に変更することが可能である。さらに、開口部28は円形であるように示されているが、別の実施形態では、開口部28は任意の好適な形状であってもよい。
【0019】
技術者は、試料源に繊維質芽24を接触させるための取っ手として中空軸22を用いることができる。試料が繊維質芽24に付着した後、試料は分析のために繊維質芽24から溶出される。試料を繊維質芽24から溶出する方法を用いる場合、流体は近位開口部26に取り込まれる。その後、流体は中空軸22を通って流れ、複数の放射状開口部28を通って出る。複数の開口部28は中空軸22の側壁22Cに沿って位置するため、流体は中空軸22の側壁22Cを通って出て、繊維質芽24の側部24Aに接触するであろう。流体が繊維質24の側部24Aに接触し、側部24Aに付着する物質の試料を溶出するであろう確率は増加する。開口部28はまた、流体が繊維質芽24の端部24Bに接触することを可能にする。これは、特定の状況下で、溶出される試料の割合を高める。この理由並びに他の理由のため、試料を主に繊維質芽24の側部24Aで収集するのに、本発明の試料捕捉機器20を使用することは有利である可能性がある。
【0020】
本発明の試料捕捉機器は、全て2005年8月2日に出願された、「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,088号(代理人整理番号 61044US002)、「検体を検出するための器具アセンブリ及び方法(Apparatus Assembly and Method for Detecting an Analyte)」と表題された米国特許出願第60/705,118号(代理人整理番号61114US002)、「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,089号(代理人整理番号 61095US002)、及び「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,090号(代理人整理番号 61106US002)に記載されているもののような試料処理器具に取り込まれてもよい。
【0021】
表1は、どれ程、高い割合の試料が本発明の試料捕捉機器20から溶出され得るかを示す。特に、表1は、制御された量の試料が試料捕捉機器の多孔質媒質に付着する実験の結果を示す。試料は、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923、ロックヴィル、メリーランド州)及びPBS−L64緩衝溶液から成る。PBS−L64緩衝溶液は、0.20モルのNaPO及び、pHは7.5であり、0.2%(重量/容積)のプルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤(ニュージャージー州、マウントオリーブ(Mount Olive)のBASF社(BASF Corporation)より市販されている)を含有する、0.15モルのNaClを含むリン酸緩衝溶液である。PBS−L64緩衝溶液は、次いで、シリンジを用いて、試料捕捉機器の中空軸の近位端部に取り込まれる。2列目は、遠位開口部を1つのみ有する試料捕捉機器からの試料の平均回収率(10試験中)、及び10回の試験の標準偏差を示す。3列目は、複数の放射状開口部を有する試料捕捉機器からの試料の平均回収率(10試験中)、及び10回の試験の標準偏差を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1: 緩衝液を用いた溶出による、試料捕捉機器からの黄色ブドウ球菌回収率(10試験の平均)
表1が示すように、放射状開口部を有する中空軸を備えた試料捕捉機器(例えば、図2A及び2Bの試料捕捉機器20)の回収率(%)は113%であり、1つのみ遠位開口部を有する中空軸を備えた試料捕捉機器(例えば、図1の試料捕捉機器10)の回収率(59%)のほぼ2倍である。黄色ブドウ球菌はともに凝集する生物であり、黄色ブドウ球菌が試料捕捉機器の多孔質媒質から溶出された後、少なくともいくらかの凝集塊が溶出後にバラバラになり、もともと試料が含有していたよりも多くの凝集塊をもたらすため、放射状開口部を有する中空軸を備えた試料捕捉機器は、100%を超える回収率を有する。
【0024】
図3は、図2A及び2Bの試料捕捉機器20、シリンジ32、及び試料捕捉機器20を囲む筺体34を備えた、本発明の試料捕捉アセンブリ30の略断面図を示す。試料捕捉機器20及びシリンジ32は、(例えば、製造段階で)予め取り付けられてもよく、現場で(例えば、試料源の部位で)技術者が同じように取り付けてもよい。試料捕捉機器20及びシリンジ32は、ルアースリップ接続具又はルアーロック接続具(図示せず)のようなルアー接続具を用いて取り付けられる。しかしながら、別の実施形態においては、試料捕捉機器20及びシリンジ32を取り付ける任意の好適な手段が用いられる場合もある。シリンジ32及び筺体34は、機械的接合方式を含む、任意の好適な手段を用いて取り付けられる。
【0025】
シリンジ32は、当該技術分野において公知の任意の好適なシリンジであってよい。代表的な実施形態においては、シリンジ32は、プランジャ部材36、チャンバ38、及び脆弱膜40を備える。チャンバ38は、試料捕捉機器20の多孔質媒質又は繊維質芽24から試料を溶出するための、緩衝溶液のような流体が予め充填されてもよい。別の実施形態では、技術者がチャンバ38に流体を充填する。用いられ得る緩衝溶液の例としては、ニュージャージー州マウントオリーブ(Mount Olive)のBASF社(BASF Corporation)により市販されているプルロニック(PLURONIC)L64界面活性剤、及びカナダ、ブリティッシュコロンビア州(British Columbia)、バーナビー(Burnaby)のレスポンスバイオメディカル社(Response BioMedical Corp.)により市販されている業務用RAMP希釈剤が挙げられる。チャンバ38内に保持される緩衝溶液の種類は、用いられる試験工程、及び検出されようとしている検体の種類によってもよい。
【0026】
脆弱膜40は、チャンバ38の一部を形成し、チャンバ38内に保持される流体が、早まって(つまり、技術者がシリンジ32を目的をもって作動させる前)試料捕捉機器20の中空軸22に放出されないことを保証するのを補助する。例えば、脆弱部材38はアルミニウムシールであってもよい。別の実施形態では、シリンジ32は、シリンジ32が早まって作動するのを阻止する他の手段、又は、技術者が目的をもって作動させるまでプランジャ部材36が作動し得ないようにシリンジ32をロックする手段を備えてもよい。予め取り付けられたシリンジとともに、チャンバ38内に保持された流体が試料採取中に試料源に混入するのを阻止するのを補助するために、ロック機器が必要な場合がある。
【0027】
プランジャ部材36は、チャンバ38内に保持された流体を放出するために、脆弱膜40を突き破るような形状に定められている。特に、技術者は、プランジャ部材36の先端部36Aを下方向に押して、プランジャ部材36を凹部42に押し下げてもよい。このようにして、チャンバ38は試料捕捉機器20の中空軸と選択的流体連通する。凹部42は、プランジャ部材36を受容するような形状に定められている。試料捕捉アセンブリ30の代表的な実施形態では、凹部42及びプランジャ部材36は同様の断面図を共有し、ともにかみ合う。プランジャ部材36の第一状態を図3に示す。第二状態においては、プランジャ部材36が押し下げられた後、プランジャ部材36は凹部42と密着する。
【0028】
筺体34は、吹込成形プラスチックを含む任意の好適な材料で形成される。筺体34は、試料捕捉機器20に適合し、シリンジ32に嵌合する(機械的接合要素によるような)ような形状である。本発明の試料捕捉機器20又はアセンブリ30は、無菌ユニットとして消費者に提供されてもよい。これは、医療用途に望ましい特性である場合がある。筺体34は、試料捕捉機器20の無菌性を維持するのに役立ち得る。
【0029】
筺体34は、フィルター又は他の取得媒体を備え、試料捕捉機器20の繊維質芽24から溶出された物質の試料から検体を分離することができる。筺体34は出口44を備え、それは例えば滴下先端(drip tip)であってもよい。出口44は、全て2005年8月2日に出願された、「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,088号(代理人整理番号 61044US002)、「検体を検出するための器具アセンブリ及び方法(Apparatus Assembly and Method for Detecting an Analyte)」と表題された米国特許出願第60/705,118号(代理人整理番号61114US002)、「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,089号(代理人整理番号 61095US002)、及び「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,090号(代理人整理番号 61106US002)に記載されているもののような試料処理器具と一体となるような形状である。
【0030】
試料が試料捕捉機器20に捕捉された後、筺体34は一般に試料捕捉機器20を囲むように位置してもよい。シリンジ32のチャンバ38内に含有されている流体は、次いで、プランジャ部材36を押し下げることにより放出されてもよい。流体は、次いで、試料捕捉機器20の中空軸22に取り込まれ、繊維質芽24に接触し、それにより繊維質芽24から少なくともいくらかの物質の試料が溶出される。流体及び試料は、次いで、筺体34内に集まり、出口44を通って筺体34から出る。いくつかの実施形態では、流体及び試料は出口44を通って出るのに先立ち、筺体34内に配置された取得媒体を通過してもよい。出口44が試料処理器具と一体となる場合、流体及び試料は出口44を通って試料処理装置に取り込まれる。
【0031】
試料捕捉アセンブリ30が液だめとしてシリンジ32を備える一方、本発明の試料捕捉アセンブリの別の実施形態は任意の好適な液だめを備えてもよい。例えば、液だめは変形可能な圧縮バルブ(squeeze bulb)又はアコーディオンプリーツバルブであってもよい。シリンジ32又はその等価物は、検出に多くの量を必要とする特定の生物体の存在を試験する工程に有益である場合がある。試験工程の精度を高めるために、繊維質芽24からできる限り多くの試料を溶出することが望ましい場合がある。シリンジ32は例えば変形可能な圧縮バルブよりも高圧で流体を放出する。放射状開口部28に加えて、高圧は繊維質芽24からより多くの試料を溶出するのを促進し得る。
【0032】
別の実施形態では、筺体34は試料捕捉アセンブリ30から除去することができ、試料捕捉機器20は、全て2005年8月2日に出願された、「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,088号(代理人整理番号 61044US002)、「検体を検出するための器具アセンブリ及び方法(Apparatus Assembly and Method for Detecting an Analyte)」と表題された米国特許出願第60/705,118号(代理人整理番号61114US002)、及び「検体を検出するための器具及び方法(Apparatus and Method for Detecting an Analyte)と表題された、米国特許出願第60/705,089号(代理人整理番号 61095US002)に記載されているもののような試料処理器具に直接取り込まれ得る。
【0033】
検体検出工程中、検体(物質の試料から分離されている、いないに関わらず)は通常試薬に曝される。試薬は、試料捕捉機器又はアセンブリの保管中、試薬を安定型に保つため、脱水されてもよい。本発明においては、脱水試薬は試料捕捉機器又は試料捕捉アセンブリ内に配置されてもよい。例えば、試料捕捉機器において、試薬は中空軸(例えば図2A及び2Bの中空軸)内に配置されてもよい。試料捕捉アセンブリにおいて、試薬はシリンジ(例えばシリンジ32の凹部42内)、筺体(例えば図3に示された筺体34)、又は出口(例えば図3に示された出口44)内に配置されてもよい。
【0034】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱しない形態及び詳細の変更を行えることが、当業者であれば理解できるであろう。
【0035】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参考として組み込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【0036】
本発明は、以下に記載した図面に関してさらに説明されるが、そこにおいて、同じ構造体が種々の図にわたって同じ数字によって示される。
【0037】
上記の特定された図が、本発明の代表的な実施形態を記載する一方、他の実施形態もまた本発明の範囲内である。すべての場合において、本開示は、代表例によって本発明を表しており、限定を意味するものではない。多数の他の修正例及び実施形態が当業者によって考案でき、それらは本発明の原理の範囲及び精神の範囲内にあることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】先行技術の試料捕捉機器の側面図。
【図2A】中空軸の遠位端部に隣接する複数の放射状開口部を備える中空軸、及び複数の放射状開口部上に位置する多孔質媒質を備える、本発明の試料捕捉機器の代表的な実施形態の側面図。
【図2B】図2Aの試料捕捉機器の略断面図。
【図3】シリンジに取り付けられた図2A及び2Bの試料捕捉機器を備え、出口を備える筺体に囲まれた、本発明の試料捕捉アセンブリの略断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部と、
遠位端部と、
該近位端部と該遠位端部の間に延在し、該遠位端部に近接する複数の開口部を備える側壁と、
を備える中空軸と、
該中空軸に取り付けられ、少なくとも一部が複数の開口部上に位置する多孔質媒質と、
を備える試料捕捉機器。
【請求項2】
前記中空軸の前記遠位端部が、遠位開口部を備え、前記多孔質媒質が、前記遠位開口部上に位置する、請求項1に記載の試料捕捉機器。
【請求項3】
前記多孔質媒質が、繊維質芽である、請求項1又は2に記載の試料捕捉機器。
【請求項4】
前記繊維質芽が、レーヨン繊維、ダクロン繊維(Dacron fibers)、及びレーヨン繊維とダクロン繊維の組み合わせから成る群から選択される材料を含む、請求項3に記載の試料捕捉機器。
【請求項5】
前記側壁における前記複数の開口部のうち少なくとも2つが、異なる大きさである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の試料捕捉機器。
【請求項6】
前記中空軸の前記近位端部に取り付けられ、それと選択的流体連通する液だめをさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の試料捕捉機器。
【請求項7】
前記液だめが、
流体を保持するチャンバと、
流体を搾り出すために、第一状態と第二状態間を可動するプランジャ部材と、
を備えるシリンジである、請求項6に記載の試料捕捉機器。
【請求項8】
ルアースリップ接続具及びルアーロック接続具から成る群から選択される取り付け具を使用して、前記シリンジを前記中空軸の前記近位端部に取り付ける、請求項7に記載の試料捕捉機器。
【請求項9】
前記液だめが緩衝溶液を含む、請求項7に記載の試料捕捉機器。
【請求項10】
前記試料捕捉機器の前記中空軸の前記近位端部と選択的流体連通して位置決めされたシリンジと組み合わせた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の試料捕捉機器。
【請求項11】
前記試料捕捉機器を取り囲む筺体をさらに備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の試料捕捉アセンブリ。
【請求項12】
物質の試料を採取する方法であって、
試料捕捉機器の多孔質媒質を試料源に接触させることと、
流体を、前記試料捕捉機器の中空軸の近位端部に取り込むことと、
前記中空軸の側壁に沿った複数の開口部を通る流動を介して試料捕捉機器から試料を溶出することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記流体が、液だめから放出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
流体を取り込む工程が、
第一ポジションから第二ポジションにシリンジのプランジャを移動させ、チャンバから前記中空軸の前記近位端部に流体を放出することを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
チャンバに含まれる流体の放出に先立ち、
シリンジを前記試料捕捉機器の前記中空軸の前記近位端部に取り付けることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料捕捉機器の遠位開口部を通る流動を介して、前記試料捕捉機器から試料を溶出する工程、をさらに含む、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−503550(P2009−503550A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525149(P2008−525149)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/030065
【国際公開番号】WO2007/016618
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】