説明

物質を投与するための子宮内電子カプセル

電子カプセル(200)は貯槽(204)を特徴とし、子宮又は子宮頚部のような生殖器官内での配置のために構成される。そこに配置される間、カプセルは、貯槽から、器官内から効果的に投与される生殖ホルモン、精液、酸緩衝剤、受精能医薬又は他の医薬のような物質を計量分配する(208)。一部の実施態様において、電子カプセルは、搭載センサ(238,244)と、物質を投与する決定及びタイミングのために自動的に或いは臨床医又は使用者によって案内されて機能する外部プロセッサと無線通信する制御回路構成とを有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体器官内への配置のための電子カプセルに関し、より具体的には、生殖器官内への配置のための並びに生殖器官内からの物質の計量分配のための電子カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
不妊、又は、カップルが子供を懐妊し得ないことは、米国内の730万人の女性及びその相手、生殖可能年齢人口の約12%に影響を及ぼしている(情報源:家族の成長の国勢調査、CDC2002)。治療アプローチは、排卵に関する人体信号を監視することから試験管受精のような補助生殖技術まで広範に及んでいる。多様な治療アプローチを用いてさえも、多くのカップルは子供を生むのに依然として困難を有している。不明な(突発性の)不妊は、懐妊したことがなく且つ標準的な診断が如何なる異常をも検出しないカップルに行われる除外診断である。それは女性の不妊の約40%及びカップルにおける不妊の8〜28%を占める。後期治療は極めて高額であり得る。典型的な周期の試験管受精費用は約12400ドルであり、数回の周期が必要であり得る。
【0003】
Drinan et al.に対する米国特許第7,044,911号は、子宮内又は膣内の配置のためのセンサ支持カプセルに言及している。センサは排卵、よって、性交が懐妊をもたらす可能性が最も高いときを示す温度変化を検出し得る。カプセルは使用者に警告信号を電子的に送信する。そのようなときを示すホルモンレベルも検出し得る。
【0004】
警告は、妊娠を達成し或いは妊娠を迅速に達成するために、特に劣化不妊の者に役立つが、多くの他の要因及び偶発性が満足されず或いは解決されない。
【0005】
ここで提案することは、従来技術の1つ又はそれよりも多くの欠点に取り組むことを意図する。
【0006】
不妊問題は明確な原因を有さないことが多く、様々な解決策が試行されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
侵襲性、煩わしさ、費用が最も少ない効果的な解決策を選択することが一般的な目標である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つのアプローチは、排卵のときを監視し且つ予測することである。代替的に、ホルモンレベルのために尿サンプルを監視することはより正確である。
【0009】
これらのプロセスを自動化することは患者にとってより便利であり、誤りに晒されることはより少ない。また、データを容易に且つ正確に医者と共用し得る。
【0010】
しかしながら、しばしば、排卵に関する問題があり、従って、排卵を誘発するために、医薬が付与される。多数の卵子の放出を引き起こす過剰刺激は、多数の妊娠の蓋然性を上昇させる。多数の妊娠は、望ましくない結果である。何故ならば、それらは発達問題のより大きな危険性、母への妊娠困難性、及び、より高い費用と強く関連付けられるからである。
【0011】
医薬の投与は、患者の周期と合わせられなければならず、それは何らかの監視及びスケジューリングを必要とする。ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(hCG)、ヒト閉経婦人尿性腺刺激ホルモン(hMG)、及び、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)のような多くのホルモン医薬は、注射によって付与される。
【0012】
注射は、外来診療又は自己投与のための訓練を必要とする投与の不便な方法である。
【0013】
注射は、清潔度及び無菌性のためのより高い要件も有する。
【0014】
治療に使用される殆どの医薬は全身的に利用可能である。全身医薬は、局部的又は局所的な供給とは対照的に、副作用の傾向が概してより大きい。
【0015】
医薬刺激排卵が人工的な子宮内受精(IUI)と共に頻繁に実施される。IUIは外来診療を必要とし、患者の排卵スケジュールの時間的枠組に従って行われなければならない。
【0016】
最後に、これらのアプローチが失敗するならば、試験管内アプローチが推薦される。この処置は極めて高額であり、侵襲的であり、且つ、患者に対する要求が高くあり得る。
【0017】
本発明の1つの特徴において、電子カプセルは貯槽を特徴とし、生殖器官内での配置のために構成される。生殖器官内に配置されている間、カプセルは、貯槽から、生殖器官内から効果的に投与される物質を計量分配する。
【0018】
他の特徴において、カプセルは、ホルモンのレベルを測定するバイオセンサを有し、測定されたレベルに基づき計量分配するために構成される。
【0019】
二次的な特徴において、測定することは、エストラジオール、黄体形成ホルモン、及び、卵胞刺激ホルモンの1つ又はそれよりも多くのためである。
【0020】
更なる特徴として、カプセルは器官が子宮であるよう構成される。
【0021】
上記の二次的な特徴において、カプセルは、カプセルから子宮頚部内に延びる紐を有する。
【0022】
更に他の特徴において、カプセルは器官が子宮頚部であるよう構成される。
【0023】
異なる特徴において、計量分配することは、カプセルのホストの生殖周期に合わせられる。
【0024】
一部の変形において、カプセルはpHセンサを含み、計量分配することがセンサの出力に応答するよう構成される。
【0025】
特定の特徴において、カプセルは物質が精子を運ぶ流体を含むよう構成される。
【0026】
一般的な特徴において、カプセルは、周囲環境から、効果的な投与のためのときを感知するために、並びに、そのときでの物質の計量分配のために構成される。
【0027】
1つの他の特徴において、カプセルは物質がプロゲステロンを含むよう構成される。
【0028】
代替的な特徴において、カプセルは物質が医薬を含むよう構成される。
【0029】
一層更なる特徴において、カプセルは子宮腺筋症を管理するためにホルモンレベルを管理するために計量分配することのために更に構成される。
【0030】
1つの具体的な特徴において、カプセルは器官を含む体から放出されないような寸法とされる。
【0031】
具体的な二次的な特徴において、カプセルは、放出を防止するために外部キャリアの必要がないような寸法とされる。
【0032】
代替的なバージョンによれば、貯槽の計量分配孔が取り外し可能なオイルの栓を有する。
【0033】
特定の特徴として、カプセルは、摩擦を減少するために横方向板の上に支持されるネジ山付きシャフトを有するモータを含む。
【0034】
更なる代替的な特徴において、カプセルのモータ区画は、圧力均衡のために、カプセルの周囲環境への孔を有する。
【0035】
ここで提案する方法は、更に追加的な特徴において、貯槽を含む電子カプセルを生殖器官内に挿入することを含む。電子カプセルは、器官内での配置のために構成される。本方法は、電子カプセルが器官内に配置されている間に、貯槽から、器官から効果的に投与される物質を計量分配することを更に含む。
【0036】
二次的な特徴において、計量分配することは、pH読取りに応答して酸緩衝剤を計量分配することを含む。
【0037】
追加的な二次的な特徴において、計量分配することは、排卵を誘発するために、物質を計量分配することを含む。
【0038】
更に1つの更なる特徴において、貯槽を有し且つ生殖器官内に配置される電子カプセルを作動するコンピュータソフトウェア製品は、コンピュータプログラムを具現するコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含む。コンピュータプログラムは、電子カプセルが器官内に配置されている間に、貯槽から、器官内から効果的に投与される物質を計量分配するよう、プロセッサによって実行可能な命令を含む。
【0039】
更に他の実施態様では、製造の物品が機械アクセス可能な媒体を含み、機械アクセス可能な媒体は、貯槽を有する電子カプセルが生殖器官内に配置されている間に、プロセッサが、貯槽から、器官内から効果的に投与される物質を計量分配することを可能にするために、その上に符号化される命令を有する。
【0040】
原寸では描写されていない以下の図面の助けを得て、新規な電子的子宮内物質投与カプセル又は知的なiPillを以下に更に示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】電子カプセルがどのように生殖器官内に配置されるか例示的に示す概略図である。
【図1B】電子カプセルがどのように生殖器官内に配置されるか例示的に示す概略図である。
【図2】電子カプセルを示す側面図及び底面図である。
【図3】月経周期の間の時間の経過に亘るホルモンレベルを示すグラフであり、計量分配機構をいつ作動させるかを一例によって示している。
【図4A】電子カプセルの状況及び活動を示すフローチャートである。
【図4B】電子カプセルの状況及び活動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、子宮104内に配置された電子カプセル100を示している。哺乳類被験者又は患者112、即ち、カプセルのホストが妊娠した後にカプセル100を除去するために、紐108が選択的に取り付けられる。紐108は子宮頚部116内を下って延び、指で容易に把持し得るよう、例えば、2インチだけ、更に延び得る。同様に示されているのは、卵子が生成される卵巣120と、受精が起こる卵管124である。放出又は「排卵」される卵子128は、受精に典型的な場所内の受精卵132として後に示される。精子136は膣140から上方に進み、頚管粘液144を越え、子宮104内に至る。卵子を受精させるのに成功した精子136は卵管124を通じて進み、卵子と直面し且つ卵子を受精させる。典型的には、カプセル100は、ジグザグ線148によって示されるように、遠隔配置されるプロセッサと電子的に通信し、プロセッサは殆どの計算を実行し、外部的に利用可能な情報に対するアクセスを有する。カプセル100は、子宮頚部116を通じて進んで膣140を通じて出るというように、人体によって放出されるのを防止するような大きさ及び形状、即ち、寸法とされる。
【0043】
図1Bのカプセル150は、より大きな支持体154内にそれ自体が配置されている。カプセル150は、ホルモン、酸緩衝剤、薬品、又は、精液のような物質150を計量分配している状態で示されている。
【0044】
図2は、例示的且つ非限定的な実施例によって、ここで提案しているものに従った電子カプセル200を描写している。図2の上方部分は、カプセル200の側面図を描写し、下方部分は、底面図、即ち、上向きの方向にカプセルを90°回転するならば見えるであろうものを描写している。
【0045】
カプセルは、生体適合材料から成るハウジング202内の4つの別個の区画で構成されている。
【0046】
投与されるべき物質158を貯蔵する貯槽204が、計量分配孔208を通じて、カプセル200の直接的な周囲環境206と連絡している。この区画204は可撓なローリングソックシール(rolling sock seal)212によってモータ区画210から分離されている。シール212の材料は、薬事等級ポリエチレン/ポリクロロトリフルオロエチレン(PE/PCTFE)可撓膜のようなポリマ基の積層材(ラミネート)であり得る。計量分配孔208の内周から突出するスタッド又はアイレット214に紐108を締結し得る。
【0047】
カプセル200の内側の圧力をカプセルの外側の圧力と全く同じに維持するために、ステップモータ218を収容するモータ区画210は、多数の小さな大きさの孔220を通じて直接的な周囲環境206と連絡する。ステップモータ218は緩く固定される。具体的には、ピストン222が前方に移動すると、ネジ山付きシャフト224は、その軸方向において固定されたままであるよう、小さな横方向の金属板226の上で自分自身を支持する。これはピストン222が荷重される場合に摩擦を減少するために行われる。ローリングソックシール212に沿うピストン222の球形状は、圧力を広く分配し、その上、摩擦を減少する。ピストン222のネジ山付きインサート227は、ネジ山付きシャフト224と係合する。シャフトの回転がインサートを前方に駆動し、従って、インサートに固定されるピストンを前方に駆動する。スイッチを電池に接続するための始動コイル228が含められる。
【0048】
電子区画230内で、全ての電子構成部品232がプリント回路板として働く可撓箔234の上に取り付けられ、それらの電子構成部品は、他の構成部品の中でも、とりわけ、電池、制御及びデータ記憶装置、タイミング回路(図示せず)、1つ又はそれよりも多くのアンテナ233を含む。可撓箔234はKapton(TM)のようなポリイミド基板で構成される。電子構成部品232を溶接によって取付け得る。構成部品の数を有利に削減する構成部品の可撓箔統合は、同一譲受人に譲渡されたDijksman et al.に対する「Ingestible Electronic
Capsule and In Vivo Drug Delivery or Diagnostic System」という名称の国際公開WO2008/062333A2内により詳細に記載されており、その全文をここに参照として援用する。
【0049】
構成部品232の取付け後、可撓箔234は折り畳まれ、ハウジング202内に配置され、例えば、周囲環境206の内容物が電子構成部品232に達し得ないよう、成形可能な樹脂235内に埋め込まれる。イオン選択型電界効果トランジスタ(ISFET)238の測定表面236が環境206と直接的に連絡する。ISFETは、例えば、pHレベルを測定するために利用可能である。連絡はハウジング202内のオリフィス240による。他のオリフィス242がホルモンレベルを測定するバイオセンサ244のために存在する。通路246が2つのオリフィス240,242を接続する。バイオセンサ244の生体認証素子(図示せず)の動作及び通路246の存在は、周囲環境から素子を越え、そして、ISFET測定表面236を越える流体の流れをもたらす。生体認証素子を電気的に又は電磁的に移動し得る。適切なバイオセンサは同一譲受人に譲渡されたDen Toonder et al.に対する「Biosensor Device」という名称の米国出願公開2008/0311679に開示されており、その全文の参照としてここに援用する。
【0050】
基準電極構成部品248は、ISFET238のための基準電極250を含む。基準電極250は、塩化銀で覆われた短い銀線から成り、4.5モル毎リットルKClを備えるゲル252内に配置される。フリット窓254が内側のゲル252を封止し、基準電極250をカプセル200の外側とイオン連絡させる手段をもたらす。
【0051】
長い貯蔵寿命のために、小さな漏洩電流が電池内の電力を消費することを防止するよう、電子制御回路は電気又は他の電源から完全に切り離される。結合を活性化するために起動回路を使用し得る。回路は始動コイル228によって受け取られる誘導放射(inductive radiation)によって外側から電力供給される。
【0052】
ハウジング202は、第一部分256と、第二部分258とを含む。第一部分256は、第二部分258に固定される。ローリングソックシール212は第一部分256と第二部分258との間に締め付けられ、それによって、投与されるべき物質からモータ218を確実に封鎖する。図2に見られるように、第一部分256及び第二部分258は、突起/陥凹構造において接合される。このようにして、ローリングソックシール212の封止長は拡張され、それはシールの封止強度を増大し、故に、装置20の信頼性を増大する。突起と接合する陥凹との間のシール212の接着のために生体適合接着材を使用することによって、封止性を更に強化し得る。代替的に、超音波摩擦加熱又はレーザ溶接を適用し得る。
【0053】
例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート等のような、生物学的に安全なポリマ材料からハウジング202を加工し得る。ペースメーカリード線や、人工心臓、心弁、大動脈内バルーン、及び、心室補助装置のような心臓人工器官を含む移植可能な装置を加工するために使用される材料から、ハウジング202を製造し得る。選択的に、生体適合性を保証するために、適切な塗膜が装置の表面に塗布される。
【0054】
動作中、ピストン222は前方に移動し、可撓なローリングソックシール212を圧迫する。これは移動を引き起こし、この移動は物質158を計量分配孔208に通じさせる。ステップモータ218のステッピング作用によって、計量分配される量を精密に制御し得る。計量分配孔208の加工及び動作の単純性のために、計量分配孔208は単に開放窓である。即ち、薬剤区画を外部環境から分離するために機械弁は使用されない。医薬の望ましくない放出を防止するために、取り外し可能な栓、例えば、オイル液滴を解放窓に塗布し得る。望ましくない拡散を満足できるレベルまで減少するよう窓の形状及び大きさを選択し得る。
【0055】
圧力を創成するためのピストン222の使用は、ガスを使用するよりも安全である。また、貯槽204を密封的に封止するために、ピストン222は厳格な公差に従う必要はなく、代わりに、ローリングソックシール212がその機能を果たす。
【0056】
重要な提案によれば、患者112の生殖周期内の時間地点を決定するために、測定、監視、及び、分析が使用される。妊娠の成功のための周期及び条件を強化するために、医薬供給が使用される。医薬供給のタイミングは、移植される装置200と外部機器との間で通信されるデータ及び分析と共に、装置200の内部にあるプログラムによって制御される。
【0057】
カプセル200は、無線周波数(RF)リンクによるように、本体112の外側の受信システムと無線接触する。受信システムは、センサ238,244からの測定値のようなカプセル200によって報告されるデータを記録し得る。温度センサのような他のセンサをカプセル200に搭載し得る。同様に、そのようなセンサの1つだけ又は全てよりも少ない数のセンサを搭載し得る。これらの測定値は患者112の状態についての情報をもたらし得る。同じカプセル200からの医薬158の供給のような行動を取るために、コンピュータプログラム又は観察者によるデータの分析を知能入力として使用し得る。
【0058】
成功裏の胎児着床がいつ起こり、よって、カプセル200がいつ除去されるべきかを決定するために、ホルモンレベル、例えば、hCGレベルの監視、他の化学的マーカ、又は、例えば、超音波による検査を使用し得る。装置を更に検討することは、1〜数ヶ月の一定期間に亘って存することが意図され、キャリアの材料は、それが時間の経過と共に腐食するか或いは剛性がより少なくなるようであり得る。これは装置の取外しに役立ち、除去中の子宮頚部116及び子宮104に対する外傷は最小限であり得る。
【0059】
装置の1つの機能は、排卵のときを決定するために、患者112の状態を原位置で監視することである。この目的のために、カプセル200は温度センサを含み得る。温度センサは基礎体温を周期的に記録する。装置は無線通信手段を追加的に含む。例えば、RF無線チップが装置上に含められる。装置は測定値からのデータを外部ユニットに送信する。外部ユニットは測定値を記憶し且つ/或いはパーソナルコンピュータのような計算装置に中継し得る。外部ユニット又はパーソナルコンピュータは、手動の基礎体温(BBT)チャートが使用されるのと同じ方法で体温を図に印す時間スタンプと共に温度データを使用する。この場合、測定、チャート化、及び、分析は自動であり、患者からの動作は要求されない。追加的な情報をもたらすために、彼女がベッドから起きる正確な時間を印すよう、患者からの手動入力を記録するようにシステムを設計し得る。
【0060】
温度及びBBTチャートは排卵の良好に表示するものであるが、それは懐古的であり、干渉的な影響に晒される。より良好な表示は、ホルモンレベルを監視することである。よって、カプセル200は、ホルモンレベルを測定する生化学センサ又はバイオセンサを含み得る。検体の候補は、エストラジオール、黄体形成ホルモン、及び、卵胞刺激ホルモンを含む。
【0061】
図3は、測定周期中の時間の経過に亘るホルモンレベルを表示しており、一例によって、計量分配機構をいつ作動し得るかを示している。エストラジオール310、黄体形成ホルモン320、卵胞刺激ホルモン330、及び、プロゲステロン340のレベルが示されている。排卵350より前の時間期間は、卵胞期360及び月経370であり、その後の時間期間は、黄体期380である。図3から分かるように、他のホルモン320,330,340に顕著な上昇があるが、エストラジオール310は、排卵の開始を特に効果的に予測する。
【0062】
エストラジオール310及び黄体形成ホルモン320のレベルは、上記で議論したバイオセンサ244を用いてのように、子宮環境内で検出可能である。再び、測定値は外部ユニットに報告され、記録され、且つ、分析される。外部ユニット又は計算装置でのデータ分析は、妊娠に最適なときがいつであるかを患者112及び/又は医者に示す。排卵開始390に起こるのが好ましい自然受精又は人工受精を計画するために、データ分析を使用し得る。
【0063】
代替的に或いは追加的に、カプセル200をpHセンサ238と共に構成し得る。子宮頚部及び子宮環境のpHは、月経周期と共に変化する。酸性のpHは、精子136に有害である。pHは、排卵350のときの近くで増大する傾向がある。よって、pHの監視は、妊娠にとって好ましい状態か否かについて情報をもたらし得る。周期予測、最適以下の状態を診断すること、及び/又は、pHを増大し且つ緩衝する物質の放出のような矯正動作が望ましいか否かを表示することのために、その情報を使用し得る。
【0064】
貯槽204から計量分配される物質158は、ホルモン、ホルモン類似体、又は、局所的な作用を伴う大分子医薬のような、排卵を刺激し或いは補助する医薬であり得る。子宮内での局所的な投与はより効果的である。何故ならば、それは作用の現場又は現場付近にあるからである。更に、ホルモン又は大分子は、経口的には生物学的に利用可能ではないのが典型的である。カプセル200から医薬を放出することによって、注射による投与の必要は排除される。その上、医薬は局所的に活性であるので、体循環に達する医薬の量は、医薬の副作用と共に一層減少される。医薬の供給は、一部の実施態様では、患者の生殖周期に適切に合わせられる。例えば、卵胞からの成熟卵128の放出を誘発するために、黄体形成ホルモン320は排卵350のときに必要とされる。医薬供給のタイミング及び量は、搭載データ並びに外部データ及び分析からの入力を使用して行動を取る装置エレクトロニクス232の制御の下にある。タイミングトリガを含む外部データは、外部ユニットからカプセル200に無線通信される。医薬供給の投与量及び期間を個人112の特質に適合させ得る。自然なホルモン生成の欠乏に対する補助であり得るので、所望の投与量及び期間を決定するために、実際の体レベルからのデータを使用し得る。例えば、数日に亘り得る供給の過程に亘って、上記データを適合し得る。
【0065】
適切な排卵を促進することの代替として、或いは、適切な排卵を促進することに加えて、装置は、子宮内膜、即ち、子宮104の内側を覆う細胞への受精卵132の着床の成功ための条件を促進する1つ又はそれよりも多くの医薬を供給し得る。受精の成功が着床の失敗に帰するのは希ではない。空の卵胞は子宮内膜を準備するプロゲストロン340を生成する。このプロセス又は適切なレベルにおける欠陥は、妊娠成功の可能性を低減する。この場合、カプセル200はプロゲストロン340を供給する。理想的には、プロゲストロン340は局所的に活性であり且つ子宮104に供給されるとき、システムはこのモードに配される。カプセル200による局所的な供給は、経口供給によってプロゲストロン340の不十分な生物学的な利用可能性に関する問題を解決し、或いは、膣浣腸によって供給の不便性に関する問題を解決する。加えて、プロゲストロン供給は、追加的な副作用を保有し得るプロゲスチンのような合成類似体の投与よりも好ましい。
【0066】
更に他の実施態様において、供給される物質158は、精子136を運ぶ流体、例えば、精液(又は精子を含む精漿)であり得る。これは一種の人工的な子宮内受精である。移植カプセル200による供給の利点は、受精が最適なときに起こることが可能であり、排卵のときを避けてスケジュールされる必要のある追加的な外来診療が不要であることである。ここでは、受精のための最適なときを計算するためにシステム監視及び予測機能が使用され、トリガ信号がカプセル200に無線で供給される。次に、カプセル200は、適切なとき390に、活性精子136を運ぶ精液395を放出する。
【0067】
システムは、不妊以外の領域、即ち、他の産婦人科用途、特に、測定、監視、及び、医薬供給の組み合わせが利益をもたらす用途においても有用性を見出す。一例は子宮腺筋症(エンドメトリオーシス)の治療である。子宮腺筋症は子宮膜からの組織が(子宮頚部、膣、腸等のような)体内の器官に付着し且つ成長し始めるときに起こる。炎症、痛み、及び、不妊を引き起こし得る。一般的な治療は、排卵、及び、子宮腺筋症を痛みの伴うものにする子宮内膜組織の関連する成長、脱落、及び、出血を停止する受胎調整ホルモンを含む。月経周期を全く停止するよりもむしろ、痛みを伴う子宮腺筋症に至る組織膨張の量を低減するために、ホルモンレベルを管理する医薬を供給するよう、知的な電子カプセルに基づく療法を使用し得る。子宮腺筋症を治療し或いは防止するために、例えば、エストロゲンレベルを低下し得る。より自然なバランスを獲得することで、プロゲスチン又はDanozol(TM)のような従来的な医薬療法に伴う副作用がより少ないことが予期される。副作用は、不規則な子宮出血、体重増加、保水、乳房圧痛、頭痛、吐き気、及び、気分変化、具体的には、鬱病を含む。
【0068】
子宮104又は子宮頚部116への配置の代わりは、カプセル200を埋設又は着床させることである。例えば、カプセル200を皮下に移植することである。この実施態様では、移植を容易にするために、カプセル200はより小さくあるよう設計される。更に、望ましい機能と大きさとの間の妥協(トレードオフ)又は移植の困難性に依存して、例えば、厳格にモニタ装置及びシステムであるよう、カプセル200の機能を減少し得るし、或いは、減少された機能を備えたカプセルを構成し得る。
【0069】
最後に、カプセル200は、汎用医薬供給システムとして働き得る。特定の用途では、膣組織又は子宮組織を通じて医薬をより効果的且つ便利に吸収し得る。用途は必ずしも受精能、不妊、又は、産婦人科に限定されない。例えば、不十分に吸収され、劣化され、或いは、腸管を介してその他の方法で不十分に生物学的に利用可能である大分子医薬、タンパク質、ペプチド、又は、他の医薬を、肺、口、又は、目のような他の器官を通じてより効果的に供給し得る。包含されるのは、女性のための膣経路又は子宮経路である。この領域は厚い血管網を有し、それは、医薬供給のために、この経路の有用性を増大する。カプセル200は子宮頚部116又は子宮104内に存し、これらの器官を通じて吸収される医薬を供給する。これは例えば注射又は注入による供給よりも好ましい。加えて、標的器官が子宮104又は子宮付近にあるならば、減少された合成医薬レベルで効果的な療法が可能であり、より少ない副作用をもたらす。局所的な投与は初回通過メタボリズムも回避する。何故ならば、医薬を付近の組織内に直接的に灌流し得るからである。療法のうちで、子宮供給又は膣供給が有益であり得る領域は、ホルモン置換療法、尿失禁、子宮腺筋症、膣殺菌剤、膣予防接種、及び、鎮痛剤である。
【0070】
図4A及び4bは、一例によって、電子カプセル200の状態及び活動を概念的に実証している。
【0071】
計量分配プロセス400において、先ず、カプセル200を生殖器官内に配置する(ステップS405)。外部信号が制御回路構成を起動する(ステップS410)。これらの2つのステップを逆の順序で遂行し得る。次に、カプセル200は周囲環境206を感知し、読取りを行う(ステップS415)。1つ又はそれよりも多くの計量分配のときを決定するために、外部源から受け取る読取り及び/又は情報をカプセル200及び/又は外部プロセッサによって使用する(ステップS420)。貯槽204内の物質158の計量分配が起こる(ステップS425)。カプセル200が依然として器官内に存在するならば(ステップS430)、処理はステップS415に戻り、さもなければ、処理は終了する。
【0072】
監視プロセス450において、妊娠を検出するために、ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(hCG)のためのようなホルモンレベルが監視する(ステップS455)。被験者112が妊娠しておらず(ステップS460)、カプセル200が消費期限切れでないならば(ステップS465)、処理はステップS455に戻る。他方、被験者112が妊娠しているか(ステップS460)、或いは、カプセル200が消費期限切れであるならば(ステップS465)、カプセル200を配置した器官からカプセル200を取り除く(ステップS470)。監視プロセス450は初期的に休止状態であってよいが、カプセル寿命の切れる幾らか前又は受精の幾らか後に、自然に或いは貯槽204から計量分配される精液を用いて、監視プロセス450を開始し得る。
【0073】
電子カプセルは貯槽を特徴とし、子宮又は子宮頚部のような生殖器官内への配置のために構成される。そこに配置されている間、カプセルは、貯槽から、器官内から効果的に投与される生殖ホルモン、精液、酸緩衝剤、受精能医薬又は他の医薬のような物質を、計量分配する。一部の実施態様において、カプセルは、搭載センサと、物質を投与する決定及びタイミングのために自動的に或いは臨床医又は使用者によって案内されて外部プロセッサと無線通信する制御回路構成とを有する。
【0074】
カプセル200は健康関連治療において適用される。具体的には、子宮滞留、監視、及び、適合可能な制御は、それを受精能、不妊、又は、産婦人科用途のために良く適したものにする。より一般的には、システムを注射又は注入による供給よりも好ましい医薬供給システムとして使用し得る。
【0075】
上述の実施態様は発明を限定するというよりもむしろ例示するものであること、並びに、当業者は付属の請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替的な実施態様を設計し得ることが付記されなければならない。例えば、電子カプセル200は、画像センサと、子宮腺筋症の局所的な存在を検出し或いは測定するために、それ自体の向きを変更し或いは他の方法で移動させる能力とを備え得る。請求項において、括弧の間に配置される如何なる参照符号も請求項を制限するものと解釈されてはならない。「含む」という動詞及びその活用形の使用は、請求項中に述べられる以外の素子又はステップの存在を排除しない。ある素子に先行する不定冠詞は、そのような素子が複数存在することを排除しない。幾つかの別個の素子を含むハードウェアを用いて並びにンピュータ読取り可能な媒体を有する適切にプログラムされたコンピュータを用いて本発明を実施し得る。特定の手段が相互に異なる従属項において引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽を含む電子カプセルであって、
当該カプセルは、生殖器官内での配置のために構成され、前記器官内に配置されている間、前記貯槽から、前記器官内から効果的に投与される物質を計量分配する、
電子カプセル。
【請求項2】
ホルモンのレベルを測定するバイオセンサを更に含み、前記測定されるレベルに基づき前記計量分配を行うために更に構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項3】
前記測定は、エストラジオール、黄体形成ホルモン、及び、卵胞刺激ホルモンの1つ又はそれよりも多くのためである、請求項2に記載の電子カプセル。
【請求項4】
前記器官が子宮であるよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項5】
紐が当該電子カプセルから子宮頚部内に延びる、請求項4に記載の電子カプセル。
【請求項6】
前記器官が子宮頚部であるよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項7】
前記計量分配は、当該電子カプセルのホストの生殖周期と合わせられる、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項8】
pHセンサを含み、前記計量分配が前記pHセンサの出力に応答するよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項9】
前記物質が精液を運ぶ流体を含むよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項10】
周囲環境から、効果的な投与のための時間を感知するために、並びに、前記時間での前記物質の前記計量分配のために構成される、請求項9に記載の電子カプセル。
【請求項11】
前記物質がプロゲステロンを含むよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項12】
前記物質が医薬を含むよう構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項13】
当該カプセルは、子宮腺筋症を管理するためにホルモンレベルを管理するために前記計量分配することのために更に構成される、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項14】
当該カプセルが前記器官を含む体から放出されないよう更に寸法取られる、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項15】
放出を防止するために外部キャリアの必要がないような大きさとされる、請求項14に記載の電子カプセル。
【請求項16】
前記貯槽の計量分配孔が取り外し可能なオイルの栓を有する、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項17】
摩擦を減少するために横方向板の上に支持されるネジ山付きシャフトを有するモータを含む、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項18】
圧力均衡のために、当該カプセルの周囲環境への孔を備えるモータ区画を含む、請求項1に記載の電子カプセル。
【請求項19】
貯槽を含む電子カプセルを生殖器官内に挿入することを含み、前記電子カプセルは、前記器官内での配置のために構成され、
前記電子カプセルが前記器官内に配置されている間に、前記貯槽から、前記器官から効果的に投与される物質を計量分配することを含む、
方法。
【請求項20】
前記計量分配することは、pH読取りに応答して酸緩衝剤を計量分配することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記計量分配することは、排卵を誘発するために物質を計量分配することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
貯槽を有し且つ生殖器官内に配置される電子カプセルを作動するコンピュータソフトウェア製品であって、
当該コンピュータソフトウェア製品は、複数の行為を遂行するためにプロセッサによって実行可能な命令を含むコンピュータプログラムを具現するコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含み、
前記複数の行為は、前記電子カプセルが前記器官内に配置されている間に、前記貯槽から、前記器官内から効果的に投与される物質を計量分配する行為を含む、
コンピュータソフトウェア製品。
【請求項23】
製造の物品であって、
貯槽を有する電子カプセルが生殖器官内に配置されている間に、プロセッサが、前記貯槽から、前記器官内から効果的に投与される物質を計量分配することを可能にするために、その上に符号化される命令を有する機械アクセス可能な媒体を含む、
物品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2013−505804(P2013−505804A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531527(P2012−531527)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054269
【国際公開番号】WO2011/039680
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】