説明

物質合成方法及び物質合成装置

【課題】どのような液体、例えば、水を用いても、所望の物質を合成することのできる物質合成方法及び物質合成装置を提供することである
【解決手段】液体中に気体を溶解させて気体溶存液Wgdを生成する気体溶存液生成ステップ(10)と、前記気体溶存液Wgd中に前記気体の微細バブルを発生させて前記気体溶存液Wgdをバブル含有液Wbにするバブル含有液化ステップ(40)と、前記バブル含有液Wbに高エネルギーを供給して該バブル含有液Wb中でプラズマを発生させるプラズマ発生ステップ(20)とを有し、前記バブル含有液Wb中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に高いエネルギーを供給することにより当該液体中でプラズマを発生させてその液体に含まれる成分を原料とした物質を合成する物質合成方法及び物質合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液中でプラズマ(液中プラズマ)を発生させて液体を構成する元素に基づいた物質を合成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この物質合成方法では、炭素元素を含む液体、例えば、メタノール(CH3OH)を主成分とする液体にマイクロ波による高エネルギーを供給してその液中に蒸発気泡を発生させ、マイクロ波が更にその気泡に照射されてプラズマが発生する。そして、そのプラズマのエネルギーによって気泡中に含まれる炭素成分を原料とした物質、例えば、炭素の単結晶であるダイヤモンド等が合成される。
【0003】
このような物質合成方法によれば、比較的低温に維持された液体中にてプラズマを発生させるので、その液体を保持できる程度の簡易な容器であれば、その容器内にプラズマを閉じ込めることができ、気相プラズマのようなプラズマを閉じ込めるための困難さを改善することができる。また、プラズマの発生する反応場への原料(バブル中に含まれる気体成分)の供給密度を高くすることができ、それによって、反応速度が速くなり、粒径、形状が比較的均一な物質粒子を合成し易いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−150246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の物質合成方法では、例えば、合成されるダイヤモンドの原料となる成分である炭素(C)を含む液体であるメタノール等、合成される物質の原料となる成分を含む液体を用いなければならず、合成できる物質の種類が限定的であるとともに、扱い難い、あるいは、扱いに危険が伴う液体(例えば、メタノールは、引火性の高い液体である)を用いなければならない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、どのような液体、例えば、水を用いても、所望の物質を合成することのできる物質合成方法及び物質合成装置を提供するものである。なお、本発明における「合成」とは、単に2種類以上の元素から化合物をつくることだけでなく、一または複数の元素から新たな物質をつくることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物質合成方法は、液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成ステップと、前記気体溶存液中に前記気体の微細バブルを発生させて前記気体溶存液をバブル含有液にするバブル含有液化ステップと、前記バブル含有液に高エネルギーを供給して該バブル含有液中でプラズマを発生させるプラズマ発生ステップとを有し、前記バブル含有液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する構成となる。
【0008】
このような構成により、生成される気体溶存液中に溶解した気体の成分を原料とした物質が合成されるようになるので、前記気体溶存液を生成する際に前記液体に溶解させるべき気体を選択することにより、所望の物質を合成することができる。
【0009】
より効率的に物質を合成することができるという観点から、前記気体溶存液は、気体が過飽和状態あるいはそれに近い状態で液体に溶解しているものであることが好ましい。
【0010】
前記液体として、物質の合成に寄与する成分を含む液体(例えば、炭素を成分として含むアルコールや油等)を用いれば、バブル含有液に高エネルギーを供給した際に、その液体の成分の気泡が生成し得る。この場合、バブル含有液中には気体溶存液に溶解している気体の微細バブルとともに当該液体(バブル含有液)から発生した気泡が含まれることになるので、そのバブル含有液中で発生するプラズマによって前記気体の成分とともに前記液体の成分を原料とした物質を合成し得る。
【0011】
本発明に係る物質合成方法において、前記バブル含有液化ステップ及び前記プラズマ発生ステップは、前記気体溶存液に高エネルギーを供給するプラズマ発生装置内でなされる構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、プラズマ発生装置内において、気体溶存液が、供給される高エネルギーによって微細バブルの発生したバブル含有液となり(バブル含有液化ステップ)、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有象液中にプラズマが発生する(プラズマ発生ステップ)。
【0013】
また、本発明に係る物質合成方法において、前記バブル含有液化ステップは、前記プラズマ発生ステップのなされるプラズマ発生装置外でなされ、前記バブル含有液化ステップにて得られた前記バブル含有液が前記プラズマ発生装置に供給される構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、微細バブルを含有するバブル含有液を予めつくって、そのバブル含有液をプラズマ発生装置に供給するので、プラズマ発生装置内でのプラズマ発生ステップによってより確実に微細バブルの気体の成分を原料とした物質を合成することができるようになる。
【0015】
また、本発明に係る物質合成方法において、前記プラズマ発生ステップがなされる前に、前記バブル含有液中に固体物質が配された状態を形成するステップを有し、前記バブル含有液中で発生するプラズマによって前記気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質を合成する構成とすることができる。
【0016】
このような構成により、固体物質の配されたバブル含有液中でプラズマが発生され、そのプラズマの高エネルギーによって微細バブルの気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質が合成できるようになるので、より多彩な物質を合成できるようになる。
【0017】
前記固体物質として、前記物資を合成する際の核となり得る微小固体物質を用いることができ、また、前記固体物質は、前記プラズマ発生ステップで前記プラズマを発生させるための電極を形成する金属物質とすることもできる。
【0018】
更に、本発明に係る物質合成方法において、前記気体溶存液を冷却して固化させて気体溶存固体を生成するステップを有し、該気体溶存固体を前記バブル含有液化ステップ及び前記プラズマ発生ステップがなされる前記プラズマ発生装置内に供給する構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、気体溶存液を冷却して得られる気体溶存固体が、プラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって液化して気体溶存液になり、その気体溶存液が、更に供給される高エネルギーによって微細バブルの発生したバブル含有液となり(バブル含有液化ステップ)、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有液中にプラズマが発生する(プラズマ発生ステップ)。冷却して得られる気体溶存固体が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。その結果、高温化での処理にともなう危険性を回避することができる。
【0020】
また、本発明に係る物質合成方法において、前記バブル含有液化ステップにて得られたバブル含有の液を冷却して固化させてバブル含有固体を生成するステップを有し、該バブル含有固体を前記プラズマ発生ステップがなされるプラズマ発生装置内に供給する構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、微細バブル含有するバブル含有液を冷却して得られるバブル含有固体の供給されるプラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって当該バブル含有固体中に分散分布する微細バブルでプラズマが発生して、そのバブル含有固体が液化されつつ微細バブルの気体の成分を原料とした物質が合成され得る。冷却して得られる微細バブル含有のバブル含有固体が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。また、バブル含有固体中に動き難い状態で比較的密度高く存在し得る微細バブルでプラズマが発生し得るので、より効率的に物質を合成することが可能になる。
【0022】
更に、本発明に係る物質合成方法において、前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水である構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、取り扱いの容易である水を用いて、それに溶解させた気体の成分を原料とする物質を合成することができる。
【0024】
また、本発明に係る物質合成方法において、前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水であり、前記気体溶存固体は、前記気体を含む氷であり、該氷を前記プラズマ発生装置内に供給する構成とすることができる。
【0025】
このような構成により、気体溶存液を冷却して得られる氷が、プラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって液化して気体溶存液(水)になり、その気体溶存液(水)が、更に供給される高エネルギーによって微細バブルの発生したバブル含有液となり(バブル含有液化ステップ)、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有液中にプラズマが発生する(プラズマ発生ステップ)。気体溶存液を冷却して得られる氷が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。
【0026】
更に、本発明に係る物質合成方法において、前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水であり、前記バブル含有固体は、前記微細バブルを含有する氷であり、該氷を前記プラズマ発生装置内に供給する構成とすることができる。
【0027】
このような構成により、微細バブル含有するバブル含有液を冷却して得られる氷がプラズマ発生装置に供給され、そのプラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによってその氷中に分散分布する微細バブルでプラズマが発生して、その氷が液化されつつ微細バブルの気体の成分を原料とした物質が合成され得る。冷却して得られる微細バブル含有の氷が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理がなされる。また、氷中に動き難い状態で比較的密度高く存在し得る微細バブルでプラズマが発生し得るので、より効率的に物質を合成することが可能になる。
【0028】
本発明に係る物質合成装置は、液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成機構と、処理対象液として供給される前記気体溶存液に高エネルギーを供給して前記気体の微細バブルを発生させた処理対象液中でプラズマを発生させるプラズマ発生装置とを有し、前記処理対象液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する構成となる。
【0029】
このような構成により、気体溶存液生成機構によって生成される気体溶存液をプラズマ発生装置に供給すると、そのプラズマ発生装置において前記気体溶存液に溶解した気体の成分を原料とした物質が合成されるようになるので、前記気体溶存液発生機構において前記気体溶存液を生成する際に前記液体に溶解させるべき気体を選択することにより、所望の物質を合成することができるようになる。
【0030】
また、本発明に係る物質合成装置は、液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成機構と、前記気体溶存液中に前記気体の微細バブルを発生させて前記気体溶存液をバブル含有液にするバブル含有液化機構と、処理対象液として供給される前記バブル含有液に高エネルギーを供給して該被処理液中でプラズマを発生させるプラズマ発生装置とを有し、前記処理対象液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する構成となる。
【0031】
このような構成により、気体溶存液生成機構によって生成される気体溶存液をバブル含有液化機構が微細バブル含有のバブル含有液にして、そのバブル含有液を処理対象液としてプラズマ発生装置に供給すると、そのプラズマ発生装置において前記処理対象液(バブル含有液)中の微細バブルの気体の成分を原料とした物質が合成されるようになるので、前記気体溶存液発生機構において前記気体溶存液を生成する際に前記液体に溶解させるべき気体を選択することにより、所望の物質を合成することができるようになる。
【0032】
本発明に係る物質合成装置において、前記処理対象液中でプラズマを発生させた後の処理済み液を前記プラズマ発生装置から液槽に回収する回収機構を有する構成とすることができる。
【0033】
このような構成により、合成された物質を含み得る処理済み液を処理済み液槽内に回収することができる。
【0034】
また、本発明に係る物質合成装置において、前記処理済み液槽に回収された前記処理済み液を、前記気体を溶解させるべき液体として前記気体溶存液生成機構に戻す循環機構を有する構成とすることができる。
【0035】
このような構成により、合成された物質を含む処理対象液を用いて更に物質を合成する処理が繰り返しなされ得るようになるので、より多く量の物質を合成することができるようになる。
【0036】
更に、本発明に係る物質合成装置において、前記プラズマ発生装置は、高電界を発生する電界発生部を有し、前記気体溶存液生成機構または前記バブル含有液化機構からの前記処理対象液を前記処理済み液槽に前記電界部を通して導く送通管を有する構成とすることができる。
【0037】
このような構成により、前記気体溶存液生成機構からの処理対象液としての気体溶存液または前記バブル含有液化機構からの処理対象液としてのバブル含有液が、送通管を通って処理済み液槽に移動する過程で、プラズマ発生装置における高電界部から発生する高電界を受けるようになるので、その送通管を移動する処理対象液(気体溶存液またはバブル含有液)中でプラズマが発生し、そのプラズマによって合成される物質を含む処理済み液がそのまま処理済み液槽に回収されるようになる。
【0038】
また、本発明に係る物質合成装置において、前記処理対象液が供給されるプラズマ発生装置内に、固体物質が設けられ、前記プラズマによって前記気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質を合成する構成とすることができる。
【0039】
このような構成により、プラズマ発生装置内において固体物質の配された処理対象液中でプラズマが発生され、そのプラズマの高エネルギーによって微細バブルの気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質が合成できるようになるので、より多彩な物質を合成できるようになる。
【0040】
更に、本発明に係る物質合成装置において、前記気体溶存液生成機構にて生成される前記気体溶存液を冷却して固化させて気体溶存固体を生成する冷却機構を有し、前記気体溶存固体を前記プラズマ発生装置に供給する構成とすることができる。
【0041】
このような構成により、冷却機構によって気体溶存液を冷却して得られる気体溶存固体が、プラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって液化して気体溶存液になり、その気体溶存液が、更に供給される高エネルギーによって微細バブルの発生したバブル含有液となり、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有液中にプラズマが発生する。冷却して得られる気体溶存固体が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。
【0042】
また、本発明に係る物質合成装置において、前記バブル含有液化機構にて得られる前記微細バブル含有液を冷却して固化させてバブル含有固体を生成する冷却機構を有し、前記バブル含有固体を前記プラズマ発生装置に供給する構成とすることができる。
【0043】
このような構成により、冷却機構によって微細バブル含有のバブル含有液を冷却して得られるバブル含有固体の供給されるプラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって当該バブル含有固体中に分散分布する微細バブルでプラズマが発生して、そのバブル含有固体が液化されつつ微細バブルの気体の成分を原料とした物質が合成され得る。冷却して得られる微細バブル含有のバブル含有固体が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。また、バブル含有固体中に動き難い状態で比較的密度高く存在し得る微細バブルでプラズマが発生し得るので、より効率的に物質を合成することが可能になる。
【0044】
また、本発明に係る物質合成装置において、前記気体溶存液生成機構は、水に前記気体を溶解させて前記気体溶存液を生成する構成とすることができる。
【0045】
このような構成により、取り扱いの容易である水を用いて、気体溶存液生成機構によりその水に溶解させた気体の成分を原料とする物質を合成することができる。
【0046】
更に、本発明に係る物質合成装置において、前記気体溶存液生成機構は、水に前記気体を溶解させて前記気体溶存液を生成し、前記冷却機構は、前記気体溶存液を冷却して前記気体溶存液固体としての氷を生成する構成とすることができる。
【0047】
このような構成により、冷却機構によって気体溶存液を冷却して得られる氷が、プラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによって液化して気体溶存液(水)になり、その気体溶存液(水)が、更に供給される高エネルギーによって微細バブルの発生したバブル含有液となり、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有液中にプラズマが発生する。気体溶存液を冷却して得られる氷が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。
【0048】
また、本発明に係る物質合成装置において、前記気体溶存液生成機構は、水に前記気体を溶解させて前記気体溶存液を生成し、前記冷却機構は、前記バブル含有液を冷却して前記微細バブルを含有した氷を生成する構成とすることができる。
【0049】
このような構成により、冷却機構によって微細バブル含有のバブル含有液を冷却して得られる氷がプラズマ発生装置に供給され、そのプラズマ発生装置内で、供給される高エネルギーによってその氷中に分散分布する微細バブルでプラズマが発生して、その氷が液化されつつ微細バブルの気体の成分を原料とした物質が合成され得る。冷却して得られる微細バブル含有の氷が用いられるので、より低温環境において物質の合成処理がなされる。また、氷中に動き難い状態で比較的密度高く存在し得る微細バブルでプラズマが発生し得るので、より効率的に物質を合成することが可能になる。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係る物質合成方法及び物質合成装置によれば、前記気体溶存液を生成する際に前記液体に溶解させるべき気体を選択することにより、所望の物質を合成することができるようになるので、どのような液体、例えば、水を用いても、所望の物質を合成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の第9の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の第10の実施の形態に係る物質合成装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0053】
本発明の第1の実施の形態に係る物質合成装置は、図1に示すように構成される。
【0054】
図1において、この物質合成装置は、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20及び処理済み液槽30を有している。気体溶存液生成装置10は、液体、例えば、水Wを貯留する貯液槽11と加圧槽16とが送通管12によって連結され、この送通管12にポンプ15が設けられた構造となっている。そして、貯液槽11からの水Wが通る送通管12の貯液槽11とポンプ15との間に、ガス供給器13からの気体が開閉弁14を介して供給されている。ガス供給器13は、この物質合成装置において合成すべき物質の原料を成分として含む気体、例えば、炭素を合成する場合、その炭素の原料となる炭素を成分として含む気体、例えば、二酸化炭素CO2を供給する(以下、ガス供給器13が二酸化炭素CO2を供給するものとする)。
【0055】
ポンプ15によって貯液槽11から加圧槽16に向けて送通管12内を圧送される水Wにガス供給器13から供給される二酸化炭素CO2が混ざり、その二酸化炭素CO2が混在した気体含有液Wgが加圧槽16に一時的に貯められる。加圧槽16では、貯留される気体含有液Wgが加圧され、その気体含有液Wgに含まれる二酸化炭素CO2が溶解して、液中の溶存ガス濃度が上昇し、過飽和あるいはそれに近い状態となった気体溶存液Wgdが生成される。なお、加圧槽16内の圧力は、圧力調整器17によって調整することができる。
【0056】
プラズマ発生装置20は、液中プラズマを発生させることのできる公知の構造を有しており、高エネルギーの供給源となるマイクロ波発振器21と、処理対象液中でプラズマを発生させる場所となる反応槽22とを有している。前述した気体溶存液生成機構10の加圧槽16にて生成される気体溶存液Wgdが処理対象液として送通管18を通してプラズマ発生装置20の反応槽22に供給される。マイクロ波発振器21から出力されるマイクロ波は、導波管21aを通して反応槽22内の処理対象液(気体溶存液Wgd)に集中的に照射されるようになっている。プラズマ発生装置20の反応槽22には、処理済み液槽30に延びる送通管23が結合されている。反応槽22において処理対象液(気体溶存液Wgd)中でプラズマの発生した後の処理済み液Wpが送通管23を通って処理済み液槽30に回収されるようになっている(回収機構)。
【0057】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽22において、気体溶存液生成機構10にて生成される二酸化炭素CO2の溶解した水である気体溶存液Wgdに対してマイクロ波発振器21からのマイクロ波が集中的に照射される。この集中的なマイクロ波の照射による高エネルギーによって、二酸化炭素CO2が過飽和状態あるいはそれに近い状態で溶解した気体溶存液Wgd中でその二酸化炭素CO2の微細バブルが発生し、その気体溶存液Wgdがバブル含有液Wbになる。そして、そのバブル含有液Wbに引き続き供給されるマイクロ波による高エネルギーによって当該バブル含有液Wb中の微細バブルでプラズマが発生する。このプラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした、例えば、炭素の微粒子が生成される。
【0058】
そして、その炭素の微粒子を含む処理済み液Wpが反応槽22から送通管23を通って処理済み液槽30に回収される。このようにして処理済み液槽30に回収された処理済み液Wpから炭素の微粒子が抽出される。この抽出された炭素の微細粒子は、所望の用途、例えば、プリンタに用いられる黒インクの原料として利用することができる。
【0059】
このような物質合成装置によれば、二酸化炭素CO2と水Wとを用いて気体溶存液生成機構10で生成される気体溶存液Wgをプラズマ発生装置20に処理対象液として供給することにより、プラズマ発生装置20において、その気体溶存液Wgに溶解した二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした物質(例えば、炭素の微粒子)を合成することができるようになる。このように、プラズマ発生装置20に供給される液体そのもの、例えば、水Wに合成すべき物質の原料となるべき成分(炭素)が含まれていなくても、その成分を含む気体(例えば、炭素を含む二酸化炭素CO2)を選択してその液体(水W)に溶解させることにより、所望の物質(例えば、炭素)を合成することができるようになる。また、液体として特に危険を伴うこともなくまた扱いも容易である水Wを用いて所望の物質を合成することができる。
【0060】
本発明の第2の実施の形態に係る物質合成装置は、図2に示すように構成される。この物質合成装置は、処理済み液Wpが処理済み液槽30から気体溶存液生成機構10の貯液槽11に戻す機構を有する点で、前述した第1の実施の形態に係る物質合成装置と異なる。なお、図2において、図1に示す部分と同じ部分には同じ参照番号が付されている。
【0061】
図2において、この物質合成装置は、第1の実施の形態の場合(図1参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20及び処理済み液槽30を有している。更に、処理済み液槽30から戻し送通管31が気体溶存液生成機構10の貯液槽11まで延びている。戻し送通管31には循環ポンプ32が設けられており、処理済み液槽30内の処理済み液Wpが循環ポンプ32によって戻し送通管31を通って貯液槽11に戻されるようになっている(循環機構)。貯液槽11に戻された処理済み液Wpは、もともと貯められている水Wとともにポンプ15によって加圧槽16に圧送され、その過程で、ガス供給器13からの二酸化炭素C02が混ぜられる。この場合、気体溶存液生成機構10にて生成される二酸化炭素CO2が溶解した気体溶存液Wgdには、それ以前の処理にて合成された炭素の微粒子が含まれており、その炭素の微粒子を含む気体溶存液Wgdがプラズマ発生装置20の反応槽22に処理対象液として供給される。
【0062】
プラズマ発生装置20の反応槽22において、炭素の微粒子(固体物質)を含み、二酸化炭素CO2の溶解した気体溶存液Wgdに対してマイクロ波発振器21からのマイクロ波が集中的に照射される。この集中的なマイクロ波の照射による高エネルギーによって、気体溶存液Wgd中で二酸化炭素CO2の微細バブルが発生し、その気体溶存液Wgdが炭素の微粒子の混ざったバブル含有液Wbになる。このバブル含有液Wbでは、微細バブルが炭素の微粒子の周りに付着した状態となり、そのバブル含有液Wbに引き続き供給されるマイクロ波による高エネルギーによって当該バブル含有液Wb中の微細バブルでプラズマが発生する。そして、このプラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2から新たな炭素の微粒子が生成されるとともに、そのバブル含有液Wbに含まれる炭素の微粒子とその周り付着した微細バブルの二酸化炭素CO2とが反応してその微粒子を核としたより大きい炭素の粒子が生成される。そして、その炭素の微粒子を含む処理済み液Wpが反応槽22から送通管23を通して処理済み液槽30に回収され、更に、戻し送通管31を通して気体溶存液生成機構10の貯液槽11に戻される。
【0063】
本発明の第2の実施の形態に係る物質合成装置によれば、合成された物質である炭素の微粒子を含む処理対象液Wpを用いて更にその炭素の微粒子を合成する処理が繰り返しなされるようになるので、より多く量の炭素の微粒子を合成することができるようになる。
【0064】
本発明の第3の実施の形態に係る物質合成装置は、図3に示すように構成される。この物質合成装置は、バブル含有液Wbをプラズマ発生装置20外で生成し、そのバブル含有液Wpをプラズマ発生装置20に供給している点で、前述した第1の実施に係る物質合成装置と異なる。なお、図3において、図1及び図2に示す部分と同じ部分には同じ参照番号が付されている。
【0065】
図3において、この物質合成装置は、第1の実施の形態(図1参照)及び第2の実施の形態(図2参照)の場合と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20及び処理済み液槽30を有している。更に、気体溶存液生成機構10とプラズマ発生装置20との間にバブル発生機構40が設けられている。バブル発生機構40の入力口には気体溶存液生成機構10の加圧槽16から延びる送通管18が結合され、加圧槽16からの加圧状態の気体溶存液Wgdがバブル発生機構40に送通管18を通して供給される。
【0066】
バブル発生機構40は、例えば、加圧槽16から加圧状態で供給される気体溶存液Wgdがオリフィスを通る構造となっている。その気体溶存液Wgdがオリフィスを通る際に減圧開放され、二酸化炭素CO2が過飽和状態あるいはそれに近い状態で溶解した気体溶存液Wgd中に二酸化炭素CO2の微細バブルが発生し、その気体溶存液Wgdが微細バブル(その大きさに応じてマイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブル等と呼ばれる)を含むバブル含有液Wbになる。バブル発生機構40の出力口に接続される送通管41がプラズマ発生装置20の反応槽22まで延びている。これにより、バブル発生機構40にて生成されたバブル含有液Wbが処理対象液としてプラズマ発生装置20の反応槽22に供給される。
【0067】
第3の実施の形態に係る物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽22において、バブル発生機構40からの二酸化炭素CO2の微細バブルを含有するバブル含有液Wbに対してマイクロ波発振器21からのマイクロ波が集中的に照射される。この集中的なマイクロ波の照射による高エネルギーによって、当該バブル含有液Wb中の微細バブルでプラズマが発生する。これにより、第1の実施の形態の場合と同様に、そのプラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が生成される。
【0068】
このように二酸化炭素CO2の微細バブルを含有するバブル含有液Wbを用いる場合、その気体を液中に溶解させる場合に比べてより多くの気体(二酸化炭素CO2)を液中に含めさせることができるので、より多くの量の物質(炭素)を生成することができるようになる。また、液体に溶け難い気体であっても、その液体に含めることができ、気体に溶け難い気体の元素から固体物質を合成することもできるようになる。
【0069】
このような物質合成装置によれば、二酸化炭素CO2を含むバブル含有液Wbをプラズマ発生装置20に供給することにより、プラズマ発生装置20において、その微細バブルの二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした物質(例えば、炭素の微粒子)が合成することができるようになるので、第1の実施の形態の場合と同様に、プラズマ発生装置20に供給される液体(水W)そのものに合成すべき物質の原料となるべき成分(炭素)が含まれていなくても、その成分を含む気体(例えば、炭素を含む二酸化炭素CO2)を選択してその液体に溶解させて、その気体の微細バブルを予め発生させておくことにより、所望の物質(例えば、炭素)を合成することができるようになる。また、微細バブルを含有するバブル含有液Wbを予めつくって、そのバブル含有液Wbをプラズマ発生装置20の反応槽22に供給するので、反応槽22においてより確実に微細バブルの二酸化炭素CO2の成分(炭素)である炭素を原料とした炭素の微粒子を合成することができるようになる。
【0070】
本発明の第4の実施の形態に係る物質合成装置は、図4に示すように構成される。この物質合成装置は、プラズマ発生装置の構造が図1乃至図3に示す物質合成装置におけるプラズマ発生装置20のものとは異なる。なお、図4において、図1乃至図3に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0071】
図4において、この物質合成装置は、第3の実施の形態の場合(図3参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20、バブル発生機構40及び処理済み液槽30を有している。プラズマ発生装置20は、反応槽25と、反応槽25内に設けられた電極対25aと、その電極対25aに高電圧を印加して電極間に高電界を発生させる電界発生装置24とを備えている。
【0072】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽25において、電極対25aの電極間にあるバブル含有液Wbに対して、電界発生装置24によって形成される高電界がかけられる。その高電界による高エネルギーによって、当該バブル含有液Wb中の微細バブル(二酸化炭素CO2のバブル)でプラズマが発生する。その結果、第3の実施の形態の場合と同様に、そのプラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が生成される。
【0073】
この第4の実施の形態に係る物質合成装置よれば、第3の実施の形態の場合と同様に、プラズマ発生装置20に供給される液体(水W)そのものに合成すべき物質の原料となるべき成分(炭素)が含まれていなくても、その成分を含む気体(例えば、炭素を含む二酸化炭素CO2)を選択してその液体に溶解させて、その気体の微細バブルを予め発生させておくことにより、所望の物質(例えば、炭素)を合成することができるようになる。更に、電極対25aを構成する各電極を適当な金属物質(例えば、アルミニウム)にて形成すると、それら電極間のバブル含有液Wbで発生するプラズマにより、その金属物質と微細バブル(例えば、気体として窒素ガスN2を液体(水)に溶解させて生成した微細バブル)とが反応して、微細バブルに含まれる気体(窒素ガスN2)とともにその金属物質(アルミニウム)の成分を原料とした新たな物質(例えば、窒化アルミ)を合成することができるようになる。
【0074】
本発明の第5の実施の形態に係る物質合成装置は、図5に示すように構成される。この物質合成装置は、プラズマ発生装置20の構造が更に前述した第4の実施の形態に係る物質合成装置(図4参照)に用いられるものと異なる。なお、図5において、図4に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0075】
図5において、この物質合成装置は、第4の実施の形態の場合(図4参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20、バブル発生機構40及び処理済み液槽30を有している。プラズマ発生装置20は、電極対26と、その電極対26に高電圧を印加してその電極間に高電界を発生させる電界発生装置24とを備えている。そして、バブル発生機構40から延びる送通管42がプラズマ発生装置20における電極対26の電極間を通って処理済み液槽30まで延びている。
【0076】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20において、バブル発生機構40からのバブル含有液Wbが送通管42を通って処理済み液槽30に移動する過程で、送通管42の電極対26の電極間に位置する部分でバブル含有液Wbに高電界がかけられる。その高電界による高エネルギーによって送通管42内の当該バブル含有液Wb中の微細バブル(二酸化炭素CO2のバブル)でプラズマが発生する。その結果、前記プラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が生成される。そして、その炭素の微粒子を含む処理済み液Wpがその送通管42を通ってそのまま処理済み液槽30に回収される。
【0077】
第5の実施の形態に係る物質合成装置によれば、バブル発生機構40からのバブル含有液Wbが送通管42を通って処理済み液槽30まで移動する間に炭素の微粒子が合成されて、その炭素の微粒子を含む処理済み液Wpが処理済み液槽30に回収されるようになるので、合成された物質(炭素の微粒子)を効率的に回収することができるようになる。
【0078】
本発明の第6の実施の形態に係る物質合成装置は、図6に示すように構成される。この物質合成装置は、プラズマ発生装置によって合成される物質の回収する仕組みが前述した第4の実施形態に係る物質合成装置(図4参照)と異なる。なお、図6において、図4に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0079】
図6において、この物質合成装置は、第4の実施の形態の場合(図4参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20、バブル発生機構40及び処理済み液槽30を有している。プラズマ発生装置20は、反応槽27と、反応槽27内に設けられた電極対27aと、その電極対27aに高電圧を印加してその電極間に高電界を発生させる電界発生装置24とを備えている。そして、反応槽27内の電極対27aの近傍にその電極対27aの隙間に対向して成膜基板33が配置されている。この成膜基板33として、例えば、ガラス基板、シリコン基板、セラミックス基板等を用いることができる。
【0080】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽27において、電極対27aの電極間にあるバブル含有液Wbに対して、電界発生装置24によって形成される高電界がかけられる。その高電界による高エネルギーによって、当該バブル含有液Wb中の微細バブル(二酸化炭素CO2のバブル)でプラズマが発生する。その結果、そのプラズマによる高密度なエネルギーにより微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が生成される。その過程で、電極対27aの隙間からバブル含有液Wbにおいて飛散する炭素の微粒子が成膜基板33の表面に付着して、成膜基板33の表面に炭素の膜が形成される。そして、成膜基板33の表面に付着できなかった炭素の微粒子は、処理済み液Wpとともに反応槽27から送通管23を通って処理済み槽30に回収される。
【0081】
第6の実施の形態に係る物質合成装置によれば、反応槽27内に配置される成膜基板33の表面に合成された炭素の微粒子の膜が形成されるようになるので、表面に合成物質(炭素の微粒子)の膜の形成された基板を得ることができるようになる。
【0082】
本発明の第7の実施の形態に係る物質合成装置は、図7に示すように構成される。この物質合成装置は、反応槽内に配置される成膜基板の位置が前述した第6の実施の形態に係る物質合成装置(図6参照)と異なる。即ち、図7に示す物質合成装置では、プラズマ発生装置20における反応槽27に設けられた電極対27aの隙間に成膜基板34が配置されている。
【0083】
このような物質合成装置でも、前述した第6の実施の形態に係る物質合成装置と同様に、電極対27aの電極間にあるバブル含有液Wb中の微細バブル(二酸化炭素CO2)で発生するプラズマによって炭素の微粒子が生成され、その炭素の微粒子が電極対27aの隙間に配置された成膜基板34の表面に付着する。その結果、表面に炭素の膜(合成物質の膜)の形成された基板を得ることができる。
【0084】
第8の実施の形態に係る物質合成装置は、図8に示すように構成される。この物質合成装置は、前述した第3の実施の形態に係る物質合成装置(図3参照)と似た構造となるが、プラズマ発生装置20における反応槽に微細粒子(固体物質)を供給する構造を有する点で異なる。図8において、図3に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0085】
図8において、この物質合成装置は、第3の実施の形態に係る物質合成装置(図3参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20、バブル発生機構40及び処理済み液槽30を有している。更に、バブル発生機構40の出力口に接続されてプラズマ発生装置20の反応槽22に続く送通管41にプラズマ発生装置20内での物質の合成に寄与する物質の微細粒子を供給する微細粒子供給部50が設けられている。微細粒子供給部50は、微細粒子が拡散した液体(例えば、水)を送通管41内に供給する。
【0086】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽22において、微細粒子供給部50から供給される微細粒子(固体物質)が二酸化炭素CO2の微細バブルを含むバブル含有液Wb中に混ざり、微細バブルが微細粒子の周りに付着した状態となる。このような状態で、バブル含有液Wbに対してマイクロ波発振器21からのマイクロ波が集中的に照射されると、バブル含有液Wb中の微細バブルでプラズマが発生する。そして、このプラズマによる高密度なエネルギーによりそのバブル含有液Wbに含まれる微細粒子とその周り付着した微細バブルの二酸化炭素CO2とが反応する。その結果、二酸化炭素CO2の成分である炭素と前記微細粒子の成分とを原料とした物質を合成することができる。
【0087】
例えば、微細粒子供給部50から炭素の微粒子を供給するようにすれば、その炭素の微粒子と微細バブルに含まれる気体、二酸化炭素CO2の成分である炭素とが反応して、前記炭素の微粒子を核として更に大きい炭素の粒子を合成することができる。
【0088】
本発明の第9の実施の形態に係る物質合成装置は、図9に示すように構成される。この物質合成装置は、気体溶存液Wgdを冷却して固化させた氷をプラズマ発生装置20に供給する点で、第1の実施の形態に係る物質合成装置(図1参照)と異なる。なお、図9において、図1に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0089】
図9において、この物質合成装置は、第1の実施の形態に係る物質合成装置(図1参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20及び処理済み液槽30を有している。更に、気体溶存液生成機構10とプラズマ発生装置20との間にクラッシュアイス生成機構60を有している。そして、気体溶存液生成機構10の加圧槽16から延びる送通管18がクラッシュアイス生成機構60の入力口に接続され、また、クラッシュアイス生成機構60の出力口から延びる送通管61がプラズマ発生装置20の反応槽22に接続されている。クラッシュアイス生成機構60は、送通管18を通して気体溶存液生成機構10の加圧槽16から供給される気体溶存液Wgd(二酸化炭素CO2が溶解した水)を冷却して固化して得られる氷を細かく砕く。クラッシュアイス生成機構60は、このようにして細かく砕かれた状態の二酸化炭素CO2を含む氷Igd(以下、適宜クラッシュアイスという)をプラズマ発生装置20の反応槽22に送通管61を通して供給する。
【0090】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽22において、二酸化炭素CO2の溶解したクラッシュアイスIgdに対してマイクロ波発生器21からのマイクロ波が集中的に照射される。この集中的なマイクロ波の照射による高エネルギーによって、クラッシュアイスIgd(氷)が融けて(液化)、二酸化炭素CO2の溶解した気体溶存液(水)になり、その気体溶存液が更に供給される高エネルギーによって二酸化炭素CO2の微細バブルの発生したバブル含有液になる。そして、そのバブル含有液に引き続き供給される高エネルギーによって当該バブル含有液中の微細バブルでプラズマが発生する。そのプラズマによって、微細バブル中の二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が合成される。この炭素の微粒子を含む処理済み液Wpは、送通管23を通して処理済み槽30に回収される。
【0091】
この第9の実施の形態に係る物質合成装置によれば、気体溶存液を冷却して得られる氷を砕いたクラッシュアイスIgdが用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。
【0092】
本発明の第10の実施の形態に係る物質合成装置は、図10に示すように構成される。この物質合成装置は、気体溶存液に代えて微細バブルを含むバブル含有液を冷却して固化させた氷をプラズマ発生装置20に供給する点で、第9の実施の形態に係る物質合成装置(図9参照)と異なる。なお、図10において、図9に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0093】
図10において、この物質合成装置は、第9の実施の形態に係る物質合成装置(図9参照)と同様に、気体溶存液生成機構10、プラズマ発生装置20、処理済み液槽30及びクラッシュアイス生成機構60を備えている。更に、気体溶存液生成機構10とクラッシュアイス生成機構60との間にバブル発生機構40が設けられている。バブル発生機構40は、第3の実施の形態に係る物質合成装置(図3参照)等で用いられたものと同様であり、気体溶存液生成機構10の加圧槽16から加圧状態で送通管18を通して供給される二酸化炭素CO2の溶解した気体溶存液Wgdから圧力開放によって微細バブル(二酸化炭素CO2)を含むバブル含有液Wbを生成する。バブル発生機構40にて生成されるバブル含有液Wbはクラッシュアイス生成機構60に送通管41を通して供給される。クラッシュアイス生成機構60は、供給される微細バブルを含むバブル含有液Wbを冷却して固化して得られる氷を細かく砕いて微細バブル(CO2)の閉じ込められたクラッシュアイスIgdを生成する。そして、クラッシュアイス生成機構60から微細バブルの閉じ込められたクラッシュアイスIgdが送通管61を通してプラズマ発生装置20の反応槽22に供給される。
【0094】
このような物質合成装置では、プラズマ発生装置20の反応槽22において、二酸化炭素CO2の微細バブルが閉じ込められたクラッシュアイスIgdに対してマイクロ波発生器21からのマイクロ波が集中的に照射される。この集中的なマイクロ波の照射による高エネルギーによって、クラッシュアイスIgd中に分散分布する微細バブルでプラズマが発生し、そのクラッシュアイスIgdが融けて液化されつつ微細バブルに含まれる二酸化炭素CO2の成分である炭素を原料とした炭素の微粒子が合成される。この炭素の微粒子を含む処理済み液Wpは、送通管23を通して処理済み液槽30に回収される。
【0095】
第10の実施の形態に係る物質合成装置によれば、バブル含有液Wbを冷却して得られる氷を砕いたクラッシュアイスIgdが用いられるので、より低温環境において物質の合成処理が可能になる。また、クラッシュアイスIgd(氷)中で動き難い状態で比較的密度高く存在し得る微細バブルでプラズマが発生するので、より効率的に物質(炭素の微粒子)を合成することができるようになる。
【0096】
前述した各実施の形態に係る物質合成装置では、液体に溶解させる気体として二酸化炭素CO2を用いたが、この液体に溶解させる気体(二酸化炭素CO2)は、合成される物質(炭素)の原料となるべき成分(炭素)を含む気体に決めることができる。従って、各実施の形態に係る物質合成装置において、液体(例えば、水W)を変えなくても、その液体に溶解させる気体を変えることにより、合成される物質を変えることができる。
【0097】
なお、第1の実施の形態(図1参照)及び第2の実施の形態(図2参照)に係る物質合成装置では、気体溶存液生成機構10にて生成される気体溶存液Wgdがプラズマ発生装置20に供給されるようになっているが、第3の実施の形態(図3参照)等と同様に、気体溶存液Wgdを微細バブルの含有されたバブル含有液Wbにして、そのバブル含有液Wbをプラズマ発生装置20に供給することも勿論可能である。
【0098】
また、逆に、第3の実施の形態(図3参照)、第4の実施の形態(図4参照)、第5の実施の形態(図5参照)、第6の実施の形態(図6参照)、第7の実施の形態(図7参照)及び第8の実施の形態(図8参照)に係るそれぞれの物質合成装置において、第1の実施の形態(図1参照)と同様に、気体溶存液生成機構10で生成される気体溶存液Wgdをバブル含有液Wbにすることなくプラズマ発生装置20に供給することも勿論可能である。
【0099】
第3の実施の形態(図3参照)、第4の実施の形態(図4参照)、第5の実施の形態(図5参照)、第6の実施の形態(図6参照)、第7の実施の形態(図7参照)、第8の実施の形態(図8参照)、第9の実施の形態(図9参照)及び第10の実施の形態(図10参照)に係るそれぞれの物質合成装置において、第2の実施の形態(図2参照)に係る物質合成装置と同様に、処理済み液槽30から気体溶存液生成機構10の貯液槽11に延びる戻し送通管31とその戻し送通管31に設けられた循環ポンプ32とによって構成されるような循環機構を設けることもできる。
【0100】
前述した各実施の形態に係る物質合成装置では、気体を溶解させる液体として物質の合成に寄与する成分を含まない水(H2O)を用いたが、アルコール等の物質の合成に寄与する成分を含む液体を用いることもできる。この場合、その液体中のバブル(気体)と液体とがプラズマのもとで反応し、液体の成分及び気体の成分を原料とする物質(固体)を合成することができる。更に、バブル含有の液体中に微細粒子等の固体物質を配した状態で当該液体中の微細バブルでプラズマを発生させれば、液体の成分、気体の成分、更に、固体物質の成分を原料とする新たな物質を合成することも可能となり得る。
【符号の説明】
【0101】
10 気体溶存液生成機構
11 貯液槽
12、18、23、41 送通管
13 ガス供給器
14 開閉弁
15 ポンプ
16 加圧槽
17 圧力調整器
20 プラズマ発生装置
21 マイクロ波発生器
22、25、27 反応槽
24 電界発生装置
25a、26、27a 電極対
30 処理済み液槽
31 戻し送通管
32 循環ポンプ
33、34 成膜基板
40 バブル発生機構
50 微細粒子供給部
60 クラッシュアイス生成機構
61 送通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成ステップと、
前記気体溶存液中に前記気体の微細バブルを発生させて前記気体溶存液をバブル含有液にするバブル含有液化ステップと、
前記バブル含有液に高エネルギーを供給して該バブル含有液中でプラズマを発生させるプラズマ発生ステップとを有し、
前記バブル含有液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する物質合成方法。
【請求項2】
前記バブル含有液化ステップ及び前記プラズマ発生ステップは、前記気体溶存液に高エネルギーを供給するプラズマ発生装置内でなされる請求項1記載の物質合成方法。
【請求項3】
前記バブル含有液化ステップは、前記プラズマ発生ステップのなされるプラズマ発生装置外でなされ、
前記バブル含有液化ステップにて得られた前記バブル含有液が前記プラズマ発生装置に供給される請求項1記載の物質合成方法。
【請求項4】
前記プラズマ発生ステップがなされる前に、前記バブル含有液中に固体物質が配された状態を形成するステップを有し、
前記バブル含有液中で発生するプラズマによって前記気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質を合成する請求項1乃至3のいずれかに記載の物質合成方法。
【請求項5】
前記固体物質として、前記物資を合成する際の核となり得る微小固体物質を用いる請求項4記載の物質合成方法。
【請求項6】
前記固体物質は、前記プラズマ発生ステップで前記プラズマを発生させるための電極を形成する金属物質である請求項4記載の物質合成方法。
【請求項7】
前記気体溶存液を冷却して固化させて気体溶存固体を生成するステップを有し、
該気体溶存固体を前記バブル含有液化ステップ及び前記プラズマ発生ステップがなされる前記プラズマ発生装置内に供給する請求項2記載の物質合成方法。
【請求項8】
前記バブル含有液化ステップにて得られたバブル含有液を冷却して固化させてバブル含有固体を生成するステップを有し、
該バブル含有固体を前記プラズマ発生ステップがなされるプラズマ発生装置内に供給する請求項3記載の物質合成方法。
【請求項9】
前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水である請求項1乃至6のいずれかに記載の物質合成方法。
【請求項10】
前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水であり、
前記気体溶存固体は、前記気体を含む氷であり、
該氷を前記プラズマ発生装置内に供給する請求項7記載の物質合成方法。
【請求項11】
前記気体溶存液生成ステップにて前記気体を溶解させるべき液体は、水であり、
前記バブル含有固体は、前記微細バブルを含有する氷であり、
該氷を前記プラズマ発生装置内に供給する請求項8記載の物質合成方法。
【請求項12】
液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成機構と、
処理対象液として供給される前記気体溶存液に高エネルギーを供給して前記気体の微細バブルを発生させた処理対象液中でプラズマを発生させるプラズマ発生装置とを有し、
前記処理対象液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する物質合成装置。
【請求項13】
液体中に気体を溶解させて気体溶存液を生成する気体溶存液生成機構と、
前記気体溶存液中に前記気体の微細バブルを発生させて前記気体溶存液をバブル含有液にするバブル含有液化機構と、
処理対象液として供給される前記バブル含有液に高エネルギーを供給して該被処理液中でプラズマを発生させるプラズマ発生装置とを有し、
前記処理対象液中で発生するプラズマによって少なくとも前記気体の成分を原料とした物質を合成する物質合成装置。
【請求項14】
前記処理対象液中でプラズマを発生させた後の処理済み液を前記プラズマ発生装置から処理済み液槽に回収する回収機構を有する請求項12または13記載の物質合成装置。
【請求項15】
前記処理済み液槽に回収された前記処理済み液を、前記気体を溶解させるべき液体として前記気体溶存液生成機構に戻す循環機構を有する請求項14記載の物質合成装置。
【請求項16】
前記プラズマ発生装置は、高電界を発生する電界発生部を有し、
前記気体溶存液生成機構または前記バブル含有液化機構からの前記処理対象液を前記処理済み液槽に前記電界部を通して導く送通管を有する請求項14または15記載の物質合成装置。
【請求項17】
前記処理対象液が供給されるプラズマ発生装置内に、固体物質が設けられ、前記プラズマによって前記気体の成分とともに前記固体物質の成分を原料とした物質を合成する請求項12乃至16記載の物質合成装置。
【請求項18】
前記気体溶存液生成機構にて生成される前記気体溶存液を冷却して固化させて気体溶存固体を生成する冷却機構を有し、
前記気体溶存固体を前記プラズマ発生装置に供給する請求項12記載の物質合成装置。
【請求項19】
前記バブル含有液化機構にて得られる前記微細バブル含有液を冷却して固化させてバブル含有固体を生成する冷却機構を有し、
前記バブル含有固体を前記プラズマ発生装置に供給する請求項13記載の物質合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−528(P2012−528A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134838(P2010−134838)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】