説明

特に自動車のためのヘッドレスト

本発明は、車両シート、特に自動車シートのためのヘッドレストに関する。ヘッドレストは、着座者の頭部に面するクッション部分と、本体と、快適性調整デバイスとを有し、ヘッドレストの使用状態において、クッション部分は快適性調整デバイスによって、本体に対して、着座者の頭部からさらに離れた第1位置から、着座者の頭部の近くに設けられた第2位置まで調整することができ、クッション部分(4)はまた、快適性調整デバイスによって第2位置から第1位置の方向に調整され、これには、クッション部分の前極端位置の調整が必要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のためのヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
車両シート用ヘッドレストが特許文献1に開示されている。ここでは、着座者の頭部に面する、ヘッドレストの少なくとも一部のコンポーネントが、事故の結果、駆動デバイスの作動により使用位置から当該着座者の頭部に向かって安全位置に変位される。類似のヘッドレストはまた、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に開示されている。
【0003】
車両シート用ヘッドレストはまた、特許文献5にも開示されている。ここでは、快適性調整オプションが設けられる。
【0004】
多くの場合、当該快適性調整デバイスの快適性調整及び/又は変更の動作には、例えばプッシュボタン等の操作要素の動作が必要である。これは、運転している状態では安全性の低減につながり、快適性が損なわれることにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/097545(A2)号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第10047406(A1)号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102006046975(A1)号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1491394(A1)号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10202598(A1)号明細書
【発明の概要】
【0006】
したがって本発明の目的は、従来技術と比較して、使用中の向上した機能、向上した有用性、及びさらには向上した安全性を有する車両シートのためのヘッドレストを与えることにある。
【0007】
本発明は、上述の特許文献1に記載のヘッドレストと組み合わせて使用することができる。繰り返しを避けるべく当該開示の全体を参照することとする。
【0008】
当該目的は、車両シートのための、特に自動車シートのためのヘッドレストによって達成される。ヘッドレストは、着座者の頭部に面するクッション部分と、本体と、快適性調整デバイスとを有する。ヘッドレストの使用状態においてクッション部分は、快適性調整デバイスによって、本体に対して、着座者の頭部からさらに離れた第1位置から、当該着座者の頭部の近くに設けられた第2位置まで調整され得る。クッション部分はまた、快適性調整デバイスによって、第2位置から第1位置の方向に調整され得る。これには、クッション部分の前極端位置の調整が必要である。
【0009】
その結果、前極端位置へのクッション部分の容易な調整によって、クッション部分の調節機能を単純な態様で達成することができる。これにより、クッション部分をさらに後部(すなわち乗員の頭部からさらに離れたところ)へ配置する(第1)調整、クッション部分を前部(すなわち乗員の近く)へ配置する(第2)調整から開始することができるだけではなく、クッション部分をさらに前部(すなわち乗員の頭部の近く)へ配置する(第2)調整、クッション部分を後部(すなわち乗員の頭部からさらに離れたところ)へ配置する(第1)調整から開始することもできる。これは、操作要素を動作させることなく、クッション部分が(前)極端位置(及びオプションとして引き続いての付加的な(後)極端位置)に動いた後に所望の調整位置に調整されることのみによる。
【0010】
本発明によれば、快適性調整デバイスが、ロック位置に及びロック解除位置に調整される制御要素を有するのが特に好ましい。制御要素をロック位置に調整することにより、クッション部分を第1位置から第2位置に直接動かすことができる。クッション部分の動きは反対方向においてブロックされている。しかしながら、制御要素をロック解除位置に調整することにより、クッション部分を第1位置から第2位置に及び第2位置から第1位置に直接動かすことができる。
【0011】
その結果、本発明によれば、クッション部分の位置をロックする制御が単純な手段によって、さらなる操作要素を動作させる必要なしに可能となる。
【0012】
本発明によれば、快適性調整を目的とするクッション部分の動きは、当該クッション部分の、実質的に水平に延びる回転軸まわりの回動であることがさらに好ましい。その結果、クッション部分の片手操作の調整が単純な態様で可能となる。
【0013】
本発明によればまた、クッション部分をその第1位置から第2位置への方向に動かすのに必要な調整力が極端位置領域において大きく与えられること、及び/又はクッション部分が複数のラッチ位置に調整されることが好ましい。クッション部分をその第1位置から第2位置への方向に動かすのに必要な調整力は、最終ラッチ位置の後であって極端位置の前において大きく与えられる。
【0014】
その結果、本発明によれば有利なことに、クッション部分の最終ラッチ位置及び/又は係合位置をユーザが、ロック解除の前において安全かつ明確に識別することができる。その結果、有利なことに、快適性調整が最初に操作される場合であっても、特に単純な態様で、ロック解除の前(すなわちクッション部分の極端位置の前)において最終ラッチ位置を安全に調整することができる。さらに有利なことに、クッション部分の快適性調整機構は不意に(及び/又は自動的に)ロック解除されることがない。特に、その結果、快適性の程度が大きくなり及び安全性の程度が大きくなる。予測されるように、例えば、自動車の運転者の注意が運転状態からそらされることが少なくなる。
【0015】
本発明のさらなる好ましい展開によれば、調整力を増大させるべく板ばね及び/又は渦巻ばね及び/又は緩衝機能が与えられる。当該緩衝機能は特に、ゴム材料により及び/又は発泡材料により及び/又は線形ダンパー要素により及び/又は回転軸まわりの回転ダンパー要素により与えられる。
【0016】
本発明の純粋に例示的な実施例が、添付図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るヘッドレストの模式的な断面図を示す。
【図2】図1についての本発明に係るヘッドレストの2つの詳細な図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、快適性調整機構5を有するヘッドレスト1、及び/又は自動車シートのために本発明により設計されたヘッドレスト1の模式的な断面図を示す。
【0019】
図2は、本発明に係るヘッドレスト1の2つの詳細な図を模式的に示し、以下で図1とともに説明される。
【0020】
ヘッドレスト1は本体2を有する。本体2は、車両シートのバックレスト(図示せず)に固く接続され、オプションとして一対の保持ロッド(図示せず)を介しての高さ調整もできる。本体2はクッション部分4に接続される。クッション部分4は、本体2に対して前部へ、すなわち乗員の頭部の後に向かって(図1による図示では右側へ)、及び/又は後部へ、すなわち乗員の頭部の後から離れて(図1による図示では左側へ)変位することができる。クッション部分4は安全デバイス3を有する。安全デバイス3は、クッション部分4の支承面の、着座者の頭部に向かう方向における付加的な変位を行う。これは、特定の状態、例えば事故状態(すなわち、いわゆる後部衝撃状態(後部衝突))が存在する場合に行われる。この場合、クッション部分4の支承面と着座者の頭部との間の距離が大きすぎると、安全デバイスにより防止されることが意図される当該衝撃により、いわゆるむち打ちが生じる。
【0021】
本発明によれば、特に、快適性を目的として行われる本体2に対するクッション部分4の変位が、回転軸55まわりの回転及び/又は回動により与えられる。その結果、本発明に係るヘッドレスト1の快適性調整オプションの、特に単純かつ直観的な操作が可能となる。本発明によれば、特に好ましい態様において、回転軸55はほぼ水平に延びる。さらに特に好ましくは、当該ヘッドレスト及び/又は本体2の上領域において延びる。
【0022】
快適性調整デバイス5は、ヘッドレスト1内においてクッション部分4と本体2との間に設けられる。クッション部分4は、快適性調整デバイス5によって変位される。この目的のため、快適性調整デバイス5は制御要素51を含む。制御要素51は、ロック位置に及びロック解除位置に調整される。図1において、クッション部分4は、極端位置(着座者の頭部から最も離れた位置)で示される。制御要素51がロック解除位置に調整されているのが示される。快適性調整デバイス5は、例として図示されるように、制御要素51がロック位置にある場合に制御要素51と係合するラッチ歯54(図1に図示せず)を含む。これは、図1に示される調整に対して、(さらなる回転軸56まわりに)約20°から40°左に回転させて描く必要がある。
【0023】
クッション部分4の極端位置において(図1に図示)、制御要素51のロック解除位置への調整は、2つの第2支承面53の接触により(及び/又互いに対する打撃により)行われる。当該接触により及び/又は当該打撃により、第2支承面53は、制御要素51の右への(さらなる回転軸56まわりの)回転を有効にする。これにより、制御要素51のロック解除位置が調整される。制御要素51のロック解除位置において、クッション部分4は、着座者の頭部の方向(一般に前部への方向)及び対向方向すなわち一般に後部への方向の双方に任意の態様で動く。本発明によれば、クッション部分4の後部位置へのプリテンションが与えられるのが好ましい。すなわち、プリテンションスプリング又は他の機械的若しくは電気的エネルギーの蓄積によるのが好ましい。その結果、本発明によれば、クッション部分が定義されない調整状態にあることを防止するのが好ましい。
【0024】
クッション部分がさらなる極端位置に(完全に後部へ)調整されると、2つの第1支承面52が接触する(及び/又は互いに打撃する)。これにより、制御要素51は、(図1の図示によれば、さらなる回転軸56まわりの左への回転により)ロック位置に調整される。制御要素51の当該ロック位置において、制御要素51は、クッション部分4の後部への(すなわちユーザの頭部から離れる)動きに対してラッチ歯54にラッチされ(すなわち当該方向に動くことができない)、クッション部分4の前部への(すなわちユーザの頭部に向かう)動きに対してはラッチされない(すなわち、クッション部分4は異なる調整位置に漸進的ステップで調整される)。本発明によれば特に、制御要素51はクッション部分4とともに動き、ラッチ歯54は本体2に接続される。しかしながら、代替的に、これを逆に与えてもよい。
【0025】
本発明によれば、クッション部分4をその第1位置から第2位置への方向に動かすのに必要な調整力が、(前)極端位置の領域において大きく与えられるのが好ましい。特に、クッション部分4が複数のラッチ位置に調整できるのが好ましい。この場合、クッション部分4の第1位置から第2位置への方向における調整に必要な力は、(前)極端位置の前であって最終ラッチ位置(ラッチ可能な態様で調整可能)の後において大きく与えられるのが好ましい。その結果、本発明によれば有利なことに、ユーザが安全かつ明確にロック解除を識別する前におけるクッション部分の最終ラッチ位置及び/又は係合位置が可能となる。これにより、快適性調整が最初に操作される場合でも、最前のラッチ可能調整位置に安全に到達することができる。極端位置領域において大きな調整力を実現するには、図2による詳細図において、当接部61及びスプリング62(図2による左詳細図)及び/又は停止端におけるスプリングの支承63(図2による右詳細図)が示される。本発明によれば、調整力を増大させるべく、例えば、板ばね及び/又は渦巻ばね及び/又は緩衝機能が一般に与えられる。当該緩衝機能は特に、ゴム材料により及び/又は発泡材料により及び/又は線形ダンパー要素により及び/又は回転軸55まわりの回転ダンパー要素により与えられる。
【符号の説明】
【0026】
1 ヘッドレスト
2 本体
3 安全デバイス
4 クッション部分
5 快適性調整デバイス
51 制御要素
52 第1停止面
53 第2停止面
54 ラッチ歯
55 回転軸
56 さらなる(制御要素の)回転軸
61 当接部
62 スプリング
63 停止端におけるスプリングの支承

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シート、特に自動車シートのためのヘッドレスト(1)であって、
前記ヘッドレスト(1)は、着座者の頭部に面するクッション部分(4)と、本体(2)と、快適性調整デバイス(5)とを有し、
前記ヘッドレスト(1)の使用状態において、前記クッション部分(4)は前記快適性調整デバイス(5)によって、前記本体(2)に対して、前記着座者の頭部からさらに離れた第1位置から、前記着座者の頭部の近くに設けられた第2位置まで調整することができ、前記クッション部分(4)はまた、前記快適性調整デバイス(5)によって前記第2位置から前記第1位置の方向に調整され、これには、クッション部分(4)の前極端位置の調整が必要であるヘッドレスト(1)。
【請求項2】
前記快適性調整デバイス(5)は、ロック位置及びロック解除位置に調整される制御要素(51)を有し、
前記制御要素(51)をロック位置に調整することにより、前記クッション部分(4)を前記第1位置から前記第2位置に直接動かすことが可能となり及び前記クッション部分(4)の動きが反対方向においてブロックされるが、前記制御要素(51)をロック解除位置に調整することにより、前記クッション部分(4)を前記第1位置から前記第2位置に及び前記第2位置から前記第1位置に直接動かすことが可能となる、請求項1に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項3】
快適性調整を目的とする前記クッション部分(4)の動きは、前記クッション部分(4)の、実質的に水平に延びる回転軸(55)まわりの回動である、請求項1又は2に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項4】
前記クッション部分(4)をその第1位置から第2位置への方向に動かすのに必要な調整力が、前記極端位置の領域において大きく与えられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項5】
前記クッション部分(4)は複数のラッチ位置に調整され、
前記クッション部分(4)の前記第1位置から前記第2位置への方向における調整に必要な調整力が、最終ラッチ位置の後であって前記極端位置の前において大きく与えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項6】
前記調整力を増大させるべく板ばね及び/又は渦巻ばね及び/又は緩衝機能が与えられ、
前記緩衝機能は特に、ゴム材料により及び/又は発泡材料により及び/又は線形ダンパー要素により及び/又は前記回転軸(55)まわりの回転ダンパー要素により与えられる、請求項4又は5に記載のヘッドレスト(1)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−521177(P2013−521177A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555311(P2012−555311)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000093
【国際公開番号】WO2011/107182
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】