説明

特に自動車補修におけるパテの自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツール

【課題】ツール加工部接触部の移動軌跡の点又は線接触での研削から、非研削面の所要の面形状の接触での自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールを提供することにある。
【解決手段】y軸方向又はxy軸方向へ繰り返し摺動させることで非加工面を精密加工する自由曲面精密加工ツールであって、研削板に弾性力が一定な弾性体と、しなりを持つ研削材保持板を有し、下端部の該研削材保持板に接着、螺着等の手段により、面ファスナー等が貼着されている研削材保持体に、研削材が接着された他方の面ファスナー(この場合、被係合側)を圧接により装着したものを備え、これにより研削材が接触して被加工面の形状に弾性変形をしながら自由曲面精密研削(20〜30μで2〜3cmのスロープでの研削)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下端部に非研磨面の適宜の形状に変形する弾性体を有し自由曲面を所要の形状に研削するための自由曲面研削における自由曲面精密生産加工方式および自由曲面精密研削ツールに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来のパテ研削における平滑性の確認は、作業者の経験と勘の世界でなされており、平滑性の判断基準は手の触感が主で、判断は作業者本人の判断に委ねられている。
【0003】
図6は、従来の面研削ツールによる自由曲面の加工(除去加工)を摸式的に示している。従来の面研削ツール1は、平面研削材保持板を有し、下端部の研削材保持板に接着、螺着等の手段により、面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持板に、研削材が接着された他方の面ファスナー(この場合、被係合側)を圧接により装着したものを作業者がz軸を任意に傾けて、押圧力を調節しながら、y軸方向又はxy軸方向へ繰り返し摺動させることでパテ3を所要の形状に研削することにより、自動車等の自由曲面を面研削ツール1で削成することができる。
【0004】
上記の面研削ツールの該面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)は、厚さ2.07〜2.14mmで、所要の圧力を加えると、収縮長さは約1mmあり、研削材保持板に研削材をいかに同一平面に圧接しようとしても、研削面表面には研削時に約1mmの歪みができてしまう。
【0005】
また、自由曲面の研磨時に押圧力や形成時の角度調節が平面研磨保持板よりも簡単にできる面加工ツールとして、特許文献1が既に開示されている。
特許文献1の「研磨具」は研磨材保持板下端部の外側を斜めに傾けての研磨作業用が容易な平面加工ツールであって、折り曲げ可能な環状の溝を入れた平面研磨材保持板と、該平面研磨材保持板を支持する弾性体とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2005−28507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自由曲面に線レーザーを任意の方向へ直線移動させ、該自由曲面被塗物に15度〜45度の傾斜角度(塗装面に垂直に反射する光ではなく、吸収光、透過光で確認をするため。)にし線レーザーを照射し該自由曲面の歪みを確認したところ、2μまで歪みの確認ができた。そこで、鋭角な塗膜の段差に対して、どれだけのスロープをとれば段差を確認できなくなるのか実証したところ、20〜30μで2〜3cmのスロープ(斜めにエッジをとる)をとった場合、線レーザーでの確認をしても、歪みを確認することはできなかった。上記より、20〜30μで2〜3cm以内の段差(スロープ)が自由曲面精密研削をする上で必要な要素となる。
【0008】
図6に示した平面加工ツール1は、その軸心zを中心に研削する場合、軸心の位置以外では、加工面と接地がゼロ(0)となるため、軸心以外は加工の死点となる。
【0009】
そのため、従来は平面加工ツール1の軸心zを任意に傾けて加工が必要であった。しかし、作業は複雑・困難であるばかりでなく、高度な技術が要求されるため、精密加工をするには熟練した作業者が時間をかけての作業が必要で、熟練した作業者の育成にも時間等の問題点があった。以下に上述した問題点を精密研削作業を行う場合について更に詳しく説明する。
【0010】
図7は加工部分の図解であり、パテの膨らみ量c(加工高さ)が大きい場合は送り方向x(ツール移動方向)は、押圧力と摺動量で接触面gは広がる。この場合は、非加工面の平坦は大きくなるが、主に粗加工を目的とするため問題とはならない。
【0011】
しかし、膨らみ量cが小さい場合、図8すなわち、精密研削において接触面gは幾つもの線の集合により平滑面を研削しなくてはならず、非加工面の粗度は小さくなるが、上記した自由曲面精密研削(20〜30μで2〜3cmのスロープでの研削)には、押圧力や接触面の角度等の非常に熟練者の技術や経験が必要となる問題がクローズアップされてくる。
【0012】
本発明は、上述した種々の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ツール加工部接触部の移動軌跡の点又は線接触での研削から、非研削面の所要の面形状の接触での研削の可能と、変動の少ない押圧力と角度の調節を必要としないことで、自由曲面研削精度維持と持続が図れるので、自由曲面を効率よく、精密研削できる自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成する本発明の自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールは、下端部が接触して被研削面を精密研削する自由曲面精密研削ツールであって、研削材保持体に弾性体を備え、弾性力が一定な該弾性体と、しなりを持つ研削材保持板を有し、下端部の該研削材保持板に接着、螺着等の手段により、面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持体に、研削材が接着された他方の面ファスナー(この場合、被係合側)を圧接により装着したものを備え、これにより該自由曲面精密研削ツールの下端部に圧接により装着した研削材が接触して被加工面の形状に弾性変形をしながら精密研削することを特徴とする自由曲面精密加工ツールが提供される。
【0014】
このような目的を達成する本発明の好ましい実施形態によれば、前記面ファスナーは厚さ0.46〜0.49mmで圧力を加えた場合の収縮長さが0.01mm以下の面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持体が設定されており、これにより研削材を平滑に装着することが可能となり、自由曲面を平滑に研削できることを特徴とする自由曲面精密研削ツールが提供される。
【0015】
このような目的を達成する本発明の自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールの好ましい実施形態によれば、図1および図2の自由曲面精密加工ツール4の集塵穴13、集塵および弾性力調節穴12および集塵開口9から図3の吸引装置接続口15を通り流体を吸引装置に吸引する流路を備え、該自由曲面精密研削ツールをy軸又はxy軸に摺動させることでパテを所要の形状に研削する。
別の好ましい実施形態によれば、前記自由曲面精密研削ツールを電気又は圧縮空気の供給で駆動する研削装置に対し装着してなることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記自由曲面精密研削ツールを図1および図2の自由曲面精密加工ツール4の集塵穴13、集塵および弾性力調節穴12および集塵開口9から図3の吸引装置接続口15を通り流体を吸引装置に吸引を行うことにより、該自由曲面精密研削ツールの研削面が非研削面に吸着し、研削面の形状が非研削面に適宜し、y軸又はxy軸に摺動させることで下端部に圧接により装着した研削材が接触してパテを精密研削する自由曲面精密研削ツールであって、これにより、自由曲面精密研削(20〜30μで2〜3cmのスロープでの研削)する。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、前記自由曲面精密研削ツールを図1および図2の自由曲面精密加工ツール4の集塵穴13、集塵および弾性力調節穴12および集塵開口9から図3の吸引装置接続口15を通り流体を吸引装置に吸引を行うことにより、研削面が非研削面に吸着し、研削面の形状が非研削面に適宜し研削することができる。従って、作業者はツール加工部接触面の変動の一定の押圧力と同等と考えられる吸引力と作業者の一定の移動速度・駆動トルクにより非研磨面の形状研削精度維持と持続が図れるので、自由曲面を効率よく、精密加工できる
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自由曲面精密加工ツールの斜視図であり、本発明の実施形態に相当する。
【図2】自由曲面精密加工ツールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1の自由曲面精密加工ツールを研削装置に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】自由曲面精密加工ツールの作用を説明する図である。
【図5】自由曲面精密加工ツールの作用を説明する別の図である。
【図6】従来の自由曲面加工ツールの摸式図である。
【図7】従来の自由曲面加工ツールの加工形態の摸式図である。
【図8】従来の自由曲面加工ツールの加工形態の別の摸式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、自由曲面精密加工ツールの好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0020】
図6は自由曲面精密加工ツールの斜視図であり、面研磨ツール1は、ツール本体は軸心zのy軸又はxy軸に摺動させることで下端部が接触してパテ3を加工するようになっている。なお、以下の実施形態では、パテ3が自由曲面精密加工ツール4が装着された研削装置14の下方に位置し、この自由曲面精密加工ツール4の下端部で加工する場合について説明するが、自由曲面精密加工ツール4の水平または上向きに用いてその水平端部または上端部で加工することもできる。
【0021】
自由曲面加工ツール4は研削板5に弾性体6を備え、弾性力が一定な該弾性体6と、しなりを持つ研磨材保持板8を備える。この弾性体6はこの図で研削板5に接着され、研削材保持板7は弾性体6に接着されている。また、この研削材保持板7は被加工面と接触して加工するための研削材を圧接する研削材保持体8を有する。この自由曲面加工ツールは円錐状、矩形状等のさまざまな形状を有する。
【0022】
研削材保持板8は、この例での圧接材は面ファスナーであり、厚さ0.46〜0.49mmで圧力を加えた場合の収縮長さが0.01mm以下の面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持体が設定されており、これにより研削材を平滑に装着することが可能となり、被加工面に接触して効率よくこれを加工するようになっている。なお、圧着材は面ファスナーの代わりに、これと同等のものでもよい。
【0023】
また、この例において、自由曲面精密加工ツール4は図1および図2の自由曲面精密加工ツール4の集塵穴13、集塵および弾性力調節穴12および集塵開口9から図3の吸引装置接続口15を通り流体を吸引装置に吸引を行いながら研削するようになっている。流体はこの例では、パテの研削屑および圧縮空気である。
【0024】
上述した図1および図2では、上記構成によれば、前記自由曲面精密研削ツール4を図1および図2の自由曲面精密加工ツール4の集塵穴13、集塵および弾性力調節穴12および集塵開口9から図3の吸引装置接続口15を通り流体を吸引装置に吸引を行うことにより、研削面が非研削面に吸着し、研削面の形状が非研削面に適宜し研削することができるようになっている。この構成により、ツールのy軸又はxy軸の摺動量が最小化され、被加工材と該加工ツールの干渉による制約もなく、加工軌跡の自由度も高いので、自由曲面を精密加工することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 面研削ツール
2 自由曲面(自動車におけるパネル)
3 パテ
4 自由曲面精密加工ツール
5 研削板
6 弾性体(均一の弾性力を持ったもの)
7 研削材保持板
8 研削材保持体
9 集塵穴
10 ネジ穴
11 サンダーローター素子回避孔
12 集塵および弾性力調整穴
13 集塵穴
14 研削装置
15 吸引装置接続口
x x軸
y y軸
z z軸(軸心)
g パテと研削面との接触点または接触線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
y軸方向又はxy軸方向へ繰り返し摺動させることで下端部が接触して非加工面を精密加工する自由曲面精密加工ツールであって、研削板に弾性体を備え、弾性力が一定な該弾性体と、しなりを持つ研磨材保持板を有し、下端部の該研削材保持板に接着、螺着等の手段により、面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持体に、研削材が接着された他方の面ファスナー(この場合、被係合側)を圧接により装着したものを備え、これにより該自由曲面精密研削ツールの下端部に圧接により装着した研削材が接触して被加工面の形状に弾性変形をしながら自由曲面を自由曲面精密研削(20〜30μで2〜3cmのスロープでの研削)することを特徴とする自由曲面精密生産加工方式および自由曲面精密研削ツールに関する発明である。
【請求項2】
請求項1記載の自由曲面精密研削ツールの集塵穴より吸引(吸引率0.1〜0.7メガパスカルの圧力で、排出量、毎分180〜1040ミリリットル)を行うことにより、該自由曲面精密研削ツールの研削面が非研削面に吸着し、研削面の形状が非研削面に適宜し、y軸又はxy軸に摺動させることで下端部に圧接により装着した研削材が接触してパテを所要の形状に精密研削する自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールに関する発明である。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の自由曲面精密研削ツールにおいて、研削材保持板は、この例での圧接材は面ファスナーであり、厚さ0.46〜0.49mmで圧力を加えた場合の収縮長さが0.01mm以下の面ファスナー(ベルクロマジック(登録商標)またはモルトマジック(登録商標)と称される)等が貼着されている研削材保持体が設定されており、これにより研削材を平滑に装着することが可能となることを特徴とする自由曲面精密研削生産加工方式および自由曲面精密研削ツールに関する発明である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−30345(P2012−30345A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182605(P2010−182605)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(305021786)株式会社ウエノコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】