説明

特定のメラトニン誘導体を使用する処置方法

メラトニン誘導体を使用して、不安障害、情動障害、肥満、頭蓋内損傷、脊髄損傷、神経変性障害、硬化症、片頭痛、線維筋痛症および脳血管疾患を処置するための方法が開示される。開示される方法において使用するための特定のメラトニン誘導体は、β−メチル−6−クロロメラトニン(その他、(R)−N−[2−(S−クロロ−B−メトキシ−1H−インドール−S−イル)プロピル]アセトアミドと呼ばれる)である。さらに、本発明のメラトニン誘導体は、好ましい処置投与量(一日あたり、20mg〜100mgの活性成分)において毒性を有さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年3月31日に出願された、米国仮特許出願第60/666,954号(Zemlan)(参考として本明細書に援用される)に関し、そしてこの仮特許出願からの優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、本明細書に規定される数種の病状(medical condition)を処置するための、メラトニン誘導体の使用に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、不安障害、情動障害、肥満、頭蓋内損傷、脊髄損傷、アルツハイマー型の認知症、パーキンソン病、硬化症、片頭痛、線維筋痛症および脳血管疾患から選択される病状を処置する方法に関し、この方法は、このような処置を必要とする患者に:
【0004】
【化2】

から選択されるメラトニン誘導体の安全かつ有効な量を投与することによるものであり、ここで、
は、水素、C−CアルキルまたはC−Cアルコキシであり;
は、水素、またはC−Cアルキルであり;
は、水素、C−Cアルキル、フェニルまたは置換フェニルであり;
は、水素、ハロアセチル、C−Cアルカノイル、ベンゾイル、または、ハロもしくはメチルで置換されたベンゾイルであり;
およびRは、各々別個に水素またはハロであり、;そして
は、水素、またはC−Cアルキルであり;
ただし、R、RおよびRが各々水素である場合、Rは、C−Cアルキルでなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明に使用されるメラトニン誘導体は既知である。一群(1997年8月5日に発行された米国特許第5,654,325号(Flaugh)(参考として本明細書に援用される)に記載される)は、以下:
【0006】
【化3】

の式を有し、ここで、
は、水素、C−CアルキルまたはC−Cアルコキシであり;
は、水素、またはC−Cアルキルであり;
は、水素、C−Cアルキル、フェニルまたは置換フェニルであり;
は、水素、ハロアセチル、C−Cアルカノイル、ベンゾイル、または、ハロもしくはメチルで置換されたベンゾイルであり;
およびRは、各々別個に水素またはハロであり、;そして
は、水素、またはC−Cアルキルであり;
ただし、R、RおよびRが各々水素である場合、Rは、C−Cアルキルでなければならない。
【0007】
一実施形態において、特許請求される処置方法において使用するための化合物としては、RがC−Cアルキル(特に、メチル)であり、Rが水素またはC−Cアルキル(特に、メチル)であり、かつRが水素である、化合物が挙げられる。このような化合物のうち、別の実施形態としては、RおよびRが、各々別個にC−Cアルキル(好ましくは、メチル)である化合物が挙げられる。このような化合物の例としては、N−[2−メチル−2−(5−メトキシ− 6−フルオロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド、N−[2−エチル−2−(5−メトキシ−6−クロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド、N−[2−メチル−2−(5−メトキシ−6,7−ジクロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド、およびN−[2−メチル−2−(5−メトキシ−6−クロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド、ならびにこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0008】
本発明において使用するための具体的な化合物は、β−メチル−6−クロロメラトニン(その他、(R)−N−[2−(6−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)プロピル]アセトアミドと呼ばれる)である。
【0009】
これらの化合物は周知であり、当該分野で開示されている方法によって製造することができる。これらの化合物の調製を教示する代表的な刊行物としては、1978年5月2日に発行された米国特許第4,087,444号(Flaughら);1986年9月30日に発行された米国特許第4,614,807号(Flaugh);および1991年3月5日に発行された米国特許第4,997,845号(Flaugh)(これらの全ては、参考として本明細書に援用される)が挙げられる。
【0010】
本明細書に記載されるメラトニン誘導体は、以下の状態を処置するために使用され得る(これらの全ては、American Psychiatric Association,Washington,DC,2000によって公開されたDiagnostic and Statistical Manual、第4版(DSM−IV)、または、世界保健機関(WHO),Geneva,1992によって公開されたThe ICD−10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelinesに記載されている):
不安障害−パニック発作、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害を含む;
情動障害−双極性障害、うつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害を含む;
頭蓋内損傷−外傷性脳損傷(traumatic brain injury)、閉鎖性頭部外傷、開放性頭部外傷を含む;
脊髄損傷;
肥満−病的肥満を含む;
神経変性(neurodegenerative)疾患−アルツハイマー型の認知症(アルツハイマー病を含む)およびパーキンソン病を含む;
硬化症−筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症を含む;
片頭痛−古典的片頭痛、普通片頭痛、群発性頭痛、神経痛を含む;
線維筋痛症;ならびに
脳血管疾患−クモ膜下出血、脳内出血、脳梗塞、脳卒中、および大脳動脈瘤を含む。
【0011】
本明細書に記載されるように、本発明は、具体的に規定されるメラトニンアナログを使用して、特定の精神障害および中枢神経系障害を処置する方法を提供する。特許請求されるメラトニンアナログは、メラトニンレセプターに対して顕著な親和性を示す。例えば、本発明の一化合物であるβ−メチル−6−クロロメラトニンは、メラトニンレセプターへの高い親和性結合を示す(Mulchaheyら、2004)。本発明の処置方法は、上記の障害を処置する、公知である以前の方法よりも、効能、作用の持続時間および副作用に関してより有効であると考えられている。さらに、本発明のメラトニンアナログは、好ましい処置投与量(一日あたり、20mg〜100mgの活性成分)において毒性を有さないと考えられており、それゆえ、上記の障害の処置において、有意な改善を示す。例えば、一日あたり、20mg〜100mgの本発明の化合物(β−メチル−6−クロロメラトニン)によるヒトの処置は、プラシーボ措置と比較して、有意な副作用はもたらさなかった(Zemlanら、2005)。
【0012】
(参考文献)
【0013】
【化4】

(肥満)
メラトニンは、肥満に対して有効な処置である(Barrenetxeら、2004)。ヒト食事誘発性肥満の前臨床モデルにおいて、毎日のメラトニン投与は、高脂肪食を与えた被験体において有意に体重を減少させた(Pruet−Marcassusら、2003)。この有意な体重の減少は、毎日のメラトニン処置の開始から5日目には早くも観察され、メラトニン処置の経過の全てにわたって継続した。食事誘発性肥満を処置することにおけるメラトニンの効能に加え、メラトニンはまた、中年性肥満を処置することにおいても有効である(Wolden−Hansonら、2000)。例えば、メラトニンによる毎日の処置は、中年性肥満の前臨床モデルにおいて有意に体重を減少させた(Rasmussenら、1999)。重要なことに、このメラトニン誘導性の中年性肥満の減少は、除脂肪体重ではなく、脂肪含量(fat content)の有意な減少に起因し、肥満の処置のためのメラトニンの効果をさらに示した。本明細書に記載されるメラトニン誘導体は、肥満を処置するために有効である。
【0014】
(参考文献)
【0015】
【化5】

(片頭痛)
メラトニンは、片頭痛および他の型の頭痛に対する有効な処置であることが示されている(Gagnier、2001;Peres、2005)。例えば、前兆を伴うか、または伴わない片頭痛を有すると診断された患者が、メラトニンを使用して毎日処置された(Peresら、2004)。この研究において、メラトニン処置は、頭痛の頻度において有意な減少および頭痛の強度において減少をもたらし、片頭痛の処置に関してメラトニンの効能を明確に示した。本明細書に記載されるメラトニン誘導体は、片頭痛の処置に関して同様に有効である。
【0016】
(参考文献)
【0017】
【化6】

(線維筋痛症)
メラトニンは、線維筋痛症に対する有効な処置であることが示されている。最近の研究において、線維筋痛症と診断された20人の患者が、30日間メラトニンで処置されている(Citeraら、2000)。線維筋痛症の中心的な症状(core symptom)において有意な改善(疼痛の重症度および圧痛点の数における改善、ならびに、臨床上の改善についてのより肯定的な患者の評価および医師の評価を含む)が、観察された。同様な研究において、線維筋痛症患者は、メラトニンによって毎日処置された(Acuna−Castroviejoら、2006)。処置の終了時に、この研究における全ての患者が、有意な改善(疼痛および疲労(線維筋痛症の2つの主症状)の欠如が挙げられる)を報告した。本明細書に記載されるメラトニン誘導体は、同様に線維筋痛症の処置に対して有効である。
【0018】
(参考文献)
【0019】
【化7】

(情動障害および不安障害)
本発明の化合物は、情動障害(うつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害および双極性障害)および不安障害(全般性不安障害、パニック発作、強迫性障害および心的外傷後ストレス障害)を処置することにおいて有効である。本発明の化合物の効能は、感情障害(情動障害および不安障害を含む)の十分認められている前臨床モデルである、オープンフィールド試験を使用して実証された(RamosおよびMormede、1998)。図1および2に示されるように、イミプラミン(ヒトにおける情動障害の処置に関して米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている)のような化合物は、オープンフィールド試験(Physicians’ Desk Reference、2006)において、立ち上がり挙動(rearing behavior)を有意に減少させ、かつ静止挙動(increase immobility)を有意に増大させる。したがって、オープンフィールド試験において、立ち上がり挙動を減少させ、かつ静止挙動を増大させる化合物は、この前臨床モデルにおいて、情動障害および不安障害に対する有効な処置であると考えられている。(RamosおよびMormede、1998)。本発明の一化合物の効能は、以下のプロトコールにしたがって実証された。
【0020】
被験体は、体重250〜300gの雄性Sprague−Dawleyラットであり、これらを、12時間:12時間の明暗サイクルで、温度および湿度管理された動物施設に収容し、食料および水を適宜に利用可能にさせた。挙動試験(behavioral testing)を、照明を消して2時間後に行った。被験体を、以下の3つの処置に無作為に割り当てた:β−メチル−6−クロロメラトニン、FDAに認可されている抗うつ薬イミプラミン、またはビヒクルコントロール。β−メチル−6−クロロメラトニンを、2つの用量(10および100mg/kg i.p.)で投与し、イミプラミンは、10mg/kg i.p.で投与、そして同等の容積でビヒクルをi.p.投与した。全ての投与は、オープンフィールド試験の1時間前に行った。全ての処置(処置あたり8匹の動物)は、1匹の動物に対し1回投与した(薬物の反復投与はしない)。
【0021】
オープンフィールド試験の手順は、先に記載されている(Hermanら、2003)。簡潔に述べると、オープンフィールド装置(open field apparatus)は、等しい大きさの36個の正方形に区切られた、36インチ×36インチの白色PLEXIGLAS(登録商標)囲い(enclosure)である。動物を、この装置内に置き、5分間この環境を探索させる。セッションを、ビデオテープに録画し、処置条件について判別不能にした(blinded)試験者により挙動に関してスコア付けする。挙動は、2つの主要な結果の尺度(立ち上がりおよび静止)、および毛づくろい;鎮静の二次的な尺度:全体的な移動度および四分円の横断(quadrant crossing)についてスコア付けする。
【0022】
オープンフィールド挙動に対する、β−メチル−6−クロロメラトニン(オープンフィールド試験の1時間前に、10および100mg/kg、i.p.)、イミプラミン(オープンフィールド試験の1時間前に、10mg/kg、i.p.)およびビヒクルコントロールの効果を測定した。立ち上がりおよび静止は、抗うつ活性の信頼できる尺度であるとみなされている(すわなち、ヒトにおけるうつ病の処置に関してUSFDAに認可されている薬物は、立ち上がりを増大させ、かつ静止を減少させる)(図1および2)。この研究において、10および100mg/kgの両方のβ−メチル−6−クロロメラトニン用量が、ビヒクルコントロールと比較して、立ち上がり挙動を有意に増大させた(両方に関してP=0.006、図1)。同様に、FDAに認可されている抗うつ薬イミプラミンは、立ち上がり挙動を有意に増大させた(P=0.005)。静止に関して、10および100mg/kgの両方のβ−メチル−6−クロロメラトニンは、コントロールと比較して静止を有意に減少させた(各々P=0.011および0.003)。同様に、FDAに認可されている抗うつ薬イミプラミンは、静止を有意に減少させた(P=0.043)。図2を参照のこと。全体的な移動度および四分円の横断に対し有意な薬物の効果は存在しなかった(P値>0.10)ので、β−メチル−6−クロロメラトニンのいずれの用量も鎮静効果を生じなかった。これらのデータは、この十分に確立された前臨床モデルにおいて、β−メチル−6−クロロメラトニンが、鎮静性ではない用量で、有意かつ信頼できる抗うつ/抗不安効果を実証することを示す。
【0023】
(参考文献)
【0024】
【化8】

(頭蓋内損傷および脊髄損傷を含む中枢神経系の損傷)
本発明の化合物は、中枢神経系の損傷(頭蓋内損傷(外傷性脳損傷(TBI)とも呼ばれる)および脊髄損傷(SCI)が挙げられる)を処置することにおいて有効である。本発明の化合物の効能は、TBIの十分認められている前臨床モデルを使用して実証された(Facchinettiら、1998;Chenら、2003)。本発明の一化合物の効能は、以下のプロトコールにしたがって実証された。
【0025】
被験体は、体重250〜300gの雄性Sprague−Dawleyラットであり、これらを、12時間:12時間の明暗サイクルで、温度および湿度管理された動物施設に収容し、食料および水を適宜に利用可能にさせた。制御性皮質衝撃(controlled cortical impact)モデル(Sullivanら、2000a)を使用して、動物をTBIに供した。動物を麻酔し、それらの脳皮質を曝露させた。直径5mmの傾斜した先端を備えた、空気制御型(pneumatically−controlled)インパクターロッドを使用して、一方の皮質を1.5mmの所定の深さまで3.5m/秒で圧迫し、TBIを生じさせた。他方の皮質は傷つけずにインタクトなままにした。実験的なTBIプロトコールにしたがって、動物を無作為に二群に分け、腹腔内へのビヒクルまたは10mg/kgのβ−メチル−6−クロロメラトニンのいずれかによって処置した(2回の投薬;TBIから15分後に最初の投薬、そして24時間後に二回目の投薬)。動物を168時間(7日間)回復させた。7日目に、定量的体型測定画像分析(quantitative morphometric image analysis)を使用して、皮質組織の損傷を評価した。定量的体型測定は、TBIにおける神経保護性(neuroprotectant)薬物の効能を評価するための「至適な基準(gold standard)」とみなされている(Sullivanら、1999;Sullivanら、2000a;Sullivanら、2000b)。傷つけられていない皮質に存在するインタクトな組織に対して正規化された傷つけた皮質内のインタクトな組織の量に基づいて、組織損傷%を算出した。ビヒクル処置されたTBIラットと比較して、β−メチル−6−クロロメラトニン処置は、TBIラット内の損傷した皮質組織において、68%と非常に有意な低減をもたらした(P=0.01;図3)。これらのデータは、β−メチル−6−クロロメラトニンが、TBIに関連する皮質組織損傷をブロックし、この前臨床モデルにおいて、TBIに対する有効な処置であることを示す。
【0026】
(参考文献)
【0027】
【化9】

(神経変性疾患)
本発明の化合物は、神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、ハンティングトン病(HD)およびパーキンソン病(PD))を処置することにおいて有効である。本発明の化合物の効能は、EOC−20小グリア細胞(炎症誘発性神経損傷(例えば、ALS、AD、HDおよびPD)の十分認められている小グリア細胞培養物モデル(Hensleyら、2003;West、2004))を使用して実証された。本発明の化合物の効能は、以下のプロトコールにしたがって実証された。
【0028】
実験は、増大する濃度のβ−メチル−6−クロロメラトニンによって、TNF−αで刺激されたEOC−20細胞を処理すること、次に神経炎症(neuroinflammation)関連マーカーを測定することから構成された。ALS、AD、HDおよびPD関連病態生理学において、神経炎症は、小グリア細胞を活性化し、炎症性サイトカイン、活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)を産生させる(Deckel、2001;Cacquevel、2004;McGeerおよびMcGeer、2004;Sargsyanら、2005)。プロスタグランジン(PGE)(強力な炎症媒介因子)、および亜硝酸塩(RNS産生の間接的な尺度)の増大は、ALS、AD、HDおよびPD患者における炎症誘発性神経変性を示す(Milstienら、1994;Tohgiら、1999;Deckel、2001;Cacquevel、2004)。20ng/ml TNF−αで処理されたEOC−20細胞は、亜硝酸塩およびPGEレベルの有意な増大をもたらした(Hensleyら、2003;West、2004)。β−メチル−6−クロロメラトニンは、20ng/ml TNF−αで刺激されたEOC−20細胞において、亜硝酸塩産生を用量依存的な様式でブロックした(P<0.01;図4)。さらに、β−メチル−6−クロロメラトニンはまた、20ng/ml TNF−αで刺激されたEOC−20細胞において、PGEレベルの有意な増大も用量依存的な様式でブロックした(P<0.01;図5)。概して、これらのデータは、β−メチル−6−クロロメラトニンが神経変性疾患(例えば、ALS、AD、HDおよびPD)に対する有効な処置であることを示す。
【0029】
(参考文献)
【0030】
【化10】

(脳血管疾患)
本発明の化合物は、脳血管疾患(例えば、クモ膜下出血、脳卒中、脳梗塞、脳内出血および大脳動脈瘤)を処置することにおいて有効である。効能は、脳血管疾患の十分認められている前臨床モデルを使用して実証された(Vannucci、2001)。本発明の好ましい実施形態の効能は、以下のプロトコールにしたがって実証された。
【0031】
被験体は、8〜12週齢の成体の雄性C57B1/6マウスであり、これらを、12時間:12時間の明暗サイクルで、温度および湿度管理された動物施設に収容し、食料および水を適宜に利用可能にさせた。これらのマウスを虚血性低酸素傷害(ischemia−hypoxia injury)(IHI)に供した。右総頚動脈を恒久的に咬合し、かつ麻酔下、ガスマスクを使用して30分間、低酸素ガス(7.5% O)を送達することによって、傷害を付与した。動物の体温を、実験の間にわたって36.5℃〜37.5℃に維持した。薬物効能研究のために、β−メチル−6−クロロメラトニンを、低酸素症の30分前および30分後に0mg/kg(ビヒクルのみ)、10mg/kgおよび100mg/kgの用量で腹腔内投与した。傷害から3日目に、定量的体型測定画像分析を使用して、動物から単離した、ニッスル染色した脳切片内の梗塞の大きさを評価した。ビヒクル処置IHIマウスと比較して、β−メチル−6−クロロメラトニン投与は、IHIマウス内の脳梗塞の大きさに33〜40%の低減をもたらした(図6)。β−メチル−6−クロロメラトニンにより付与された保護は用量依存的であった。これらのデータは、β−メチル−6−クロロメラトニンがIHIに関連する組織損傷をブロックし、かつこの前臨床モデルにおいて、脳卒中に対する有効な処置であることを示す。
【0032】
(参考文献)
【0033】
【化11】

不安障害および情動障害の処置は、本明細書において好ましい使用である。外傷性脳損傷、アルツハイマー病およびパーキンソン病の処置は、規定される化合物の抗酸化物質およびフリーラジカル清掃(scavenging)能力に少なくとも部分的に基づくことが考えられる。
【0034】
上記で考察されるように、規定されるメラトニン誘導体は、哺乳動物の列挙される障害を処置することにおいて有用である。このような方法は、望ましい治療介入(therapeutic intervention)を達成するために、このような処置を必要とする哺乳動物(好ましくは、ヒト)に、1つ以上の規定される化合物の安全かつ有効な量を投与する工程を包含する。これらの化合物は、種々の経路(経口経路、直腸経路、経皮経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、または鼻内経路を含む)によって投与され得る。経口経路および経皮経路が好ましい。どのような経路が選択されても、このような投与は、製剤科学において周知の技術により調製される薬学的組成物によって達成される。
【0035】
上記されたように、本発明の方法は薬学的組成物を利用する。このような組成物を製造する際に、通常、1つ以上の規定されるメラトニン誘導体(活性成分)は、キャリアと混合されるか、またはキャリアによって希釈されるか、またはカプセル、小さな袋(sachet)、紙もしくは他の容器の形態であり得るキャリア内に封入される。このキャリアが希釈剤として働く場合、それは、活性成分のためのビヒクル、賦形剤または媒体として作用する固体材料、半固体材料または液体材料であり得る。したがって、この組成物は、例えば、約0.01重量%〜約10重量%の活性化合物を含む、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、小さな袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁物、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてか、または液体媒体中)、軟膏、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌の注射可能な溶液、ならびに、無菌包装された散剤の形態であり得る。
【0036】
このようなキャリアは、薬学的処方物の分野において慣例的である。適切なキャリア、賦形剤および希釈剤の一部の例としては、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩溶液、シロップ、メチルセルロース、メチルパラベンおよびプロピルパラベン、タルク、ステアリン酸マグネシウムならびに鉱油が挙げられる。処方物はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味料または矯味矯臭剤を含み得る。当該分野で周知の手順を使用することによって、患者への投与後に、活性成分の迅速な放出、持続性の放出または遅延性の放出を提供するように、組成物を処方することができる。
【0037】
各々の投薬量が、約0,05〜約150mgの活性成分、より通常には、約20mg〜約150mgの活性成分、さらにより通常には約20〜約100mgの活性成分を含むように、組成物は、好ましくは、単位投薬形態で処方される。用語「単位投薬形態」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単一の投薬量として適切な、物理的に分離した単位(unit)をいい、各々の単位は、1つ以上の適切な薬学的希釈剤、賦形剤またはキャリアと結合して、所望の治療効果を生成するために、算出された所定量の活性材料を含む。
【0038】
本発明の方法に使用される化合物は、列挙された障害を処置するために、一日あたり約0.1mg〜約150mgの活性成分、好ましくは、一日あたり約20mg〜約150mgの活性成分、さらにより好ましくは、一日あたり約20mg〜約100mgの活性成分の投薬量範囲にわたって有効である。したがって、本明細書で使用される場合、用語「安全かつ有効な量」とは、一日あたり約0.1mg〜約150mgの活性成分の投薬量範囲をいう。成人の処置において、単一用量または分割用量で、一日あたり約20mg〜約150mgの活性成分の範囲が好ましい。しかしながら、関連する状況(投与される化合物の選択、選択された投与経路、個々の患者の年齢、体重および応答、ならびに患者の症状の性質および重症度を含む)を鑑みて、実際に投与される化合物の量は、医師により決定されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、抗うつ効果(立ち上がり挙動に関して)を提供する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。
【図2】図2は、抗うつ効果(静止挙動に関して)を提供する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。
【図3】図3は、外傷性脳損傷を処置する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。
【図4】図4は、神経変性疾患を処置する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。
【図5】図5は、神経変性疾患を処置する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。
【図6】図6は、脳血管疾患を処置する、本発明の使用を実証する試験結果を報告する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安障害、情動障害、肥満、頭蓋内損傷、脊髄損傷、神経変性障害、硬化症、片頭痛、線維筋痛症および脳血管疾患から選択される状態を有する患者を処置する方法であって、該方法は、式:
【化1】

を有する化合物から選択されるメラトニン誘導体の安全かつ有効な量を、該患者へ投与することを包含し、ここで、
は、水素、C−CアルキルまたはC−Cアルコキシであり;
は、水素、またはC−Cアルキルであり;
は、水素、C−Cアルキル、フェニルまたは置換フェニルであり;
は、水素、ハロアセチル、C−Cアルカノイル、ベンゾイル、または、ハロもしくはメチルで置換されたベンゾイルであり;
およびRは、各々別個に水素またはハロであり、;そして
は、水素、またはC−Cアルキルであり、
ただし、R、RおよびRが各々水素である場合、Rは、C−Cアルキルでなければならない、方法。
【請求項2】
前記メラトニン誘導体が、約0.1mg/日〜約150mg/日で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メラトニン誘導体が、式(ii)の化合物から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がC−Cアルキルであり、Rが、水素、またはC−Cアルキルであり、かつRが水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がメチルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
およびRが独立してC−Cアルキルである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
およびRが両方ともメチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メラトニン誘導体が、N−[2−メチル−2−(5−メトキシ−6−フルオロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド;N−[2−エチル−2−(5−メトキシ−6−クロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド;N−[2−メチル−2−(5−メトキシ−6,7−ジクロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド;N−[2−メチル−2−(5−メトキシ−6−クロロインドール−3−イル)エチル]アセトアミド;およびこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記メラトニン誘導体が、(R)−N−[2−(6−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)プロピル]アセトアミドである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記メラトニン誘導体が、約20mg/日〜約100mg/日で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記メラトニン誘導体が、約20mg/日〜約100mg/日で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
不安障害、情動障害、頭蓋内損傷、脊髄損傷、神経変性疾患、および脳血管疾患から選択される状態を有する患者を処置するための、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
不安障害および情動障害から選択される状態を有する患者を処置するための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
不安障害および情動障害から選択される状態を有する患者を処置するための、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534616(P2008−534616A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504457(P2008−504457)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/012126
【国際公開番号】WO2006/105455
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507324326)
【Fターム(参考)】