説明

特定の繊維混合物を含有する新規な機能性食品

本発明は、粘性化性水溶性繊維、非粘性化性水溶性繊維、及び非水溶性繊維の三元混合物を含有する、経時的に安定で、消化中も有意な粘度を保持する、流動性又は半流動性の食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性化性(viscosifying)及び非粘性化性の2種類の水溶性繊維と非水溶性繊維とからなる三元系混合物を含有し、消化中の著しい粘度を保持する、経時的に安定な流動性又は半流動性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル化性又は増粘性の水溶性多糖(食物)繊維は健康に有益であることが認められてきた。
胃の中で、ヒドロコロイド(親水コロイド)が水の存在下で膨潤し、胃の膨満を引き起し、食物塊のコンシステンシー(粘稠性)を高め、胃が空になるのを遅らせる結果、充足・満腹感を生じる。
【0003】
本書では、「ヒドロコロイド」なる用語は、このようなテクスチャーを付与する水溶性多糖(食物)繊維を意味し、従って、デンプンは除外される。デンプンもテクスチャーを付与する多糖類であるが、小腸で代謝されるからである。
【0004】
腸において、それらの繊維により生じた増大した粘度は、下記現象を引き起こすことが一般に認められている。
・栄養素の拡散速度を低下させて、例えば、食後血糖の発現速度を低下させることができ、例えば糖尿病患者に有用な血糖ピークの低下を生じる。
【0005】
・粘稠性の食物塊と共に運ばれる胆汁酸の受動排出を促進させる。代わりに、身体がこれらの胆汁酸を再合成し、それによりコレステロールが消費され、従って循環血中コレステロール濃度が低下する。
【0006】
しかしながら、流動性又は半流動性媒質へのゲル化性又は増粘性ヒドロコロイドの混入は、次に述べるように、大きな技術上の問題点を提起する。
乳製品に関して:
・発酵前の乳汁(ミルク)混合物中にかなりの量のヒドロコロイドを混入することは不可能である。多糖類と乳タンパク質との間の相溶性(なじみ)が低いため、相分離と品質のよくないカード(凝乳、curd)の生成を生じ、生成物は消費にはふさわしくないものなる。
【0007】
・果物調製品を経たヒドロコロイドの混入も、濃厚で重すぎる果物調製品のテクスチャーの発生によって制限される。そのような果物調製品は粘度が高すぎて、ポンプ搬送が不可能となるからである。
【0008】
例えば、常法を用いて撹拌型フルーツヨーグルト中に混入することができる天然グアー(グアー豆)の最大量は0.2%程度である。
デキストロース当量(DE)が低い、軽度に加水分解されたマルトデキストリン、又はヒドロコロイド溶液の粘度を制限することができる非粘性化性水溶性繊維といった、「粘度降下剤」の使用は、興味ある技術的解決策となるかもしれない。しかし、所望の効果を得るには、粘性化性水溶性繊維の量に比べて大過剰のこのような粘度降下剤を使用する必要がある。これらの条件下で、一部の粘度降下剤は、貯蔵中に沈殿する不溶性結晶の析出といった問題点を生ずる。これは、例えば、軽度加水分解マルトデキストリン、又は天然もしくは長鎖イヌリン類で見られる。この結晶化は、製品の官能的品質の劣化(特に、ザラザラした舌触り)と、色の変化(例、イチゴ果物調製品の色が赤からピンクに変化)を引き起こす。これらの粘度降下剤はまた、無視できないカロリー増大(マルトデキストリンの場合)又は結腸内で発酵可能な繊維に起因する消化不快の兆候といった栄養学的な難点を伴うことがある。
【0009】
さらに、上述した粘性化性と非粘性化性の2種類の水溶性繊維の二元系混合物は、経時的な安定性が十分ではない。程度の差はあるが、製品の相分離が時間の経過と共に認められ、テクスチャーが非常に高い相が、容積的には多量であるが粘度がずっと低い相と並んで出現する事態が起こりうる。従って、この種の系は、一定温度での貯蔵中に、日又は週のスケールでの不安定性という危険を伴う。この不安定性のスケールは、温度変化がある場合[例えば、4〜10℃の温度で貯蔵された生の製品(フレッシュ又は新鮮食品)の温度は摂取後に37℃に上昇する]にはより短くなる。
【0010】
特許文献WO00/67952(Opta Food Ingredients)は、低DEのマルトデキストリン、加水分解グアー又はイヌリンを用いてグルコマンナン溶液の粘度の著しい低下を得ることができることを開示している。
【0011】
同様に、特許文献US2003−013679(Abbott Laboratories)にも、低DEマルトデキストリンを用いて2%グアー溶液の粘度を実質的に低下させることが記載されている。
【0012】
しかし、所望の粘度低下効果を得るには、水溶性粘性化性繊維に比べて大過剰のマルトデキストリンを使用する必要がある。特許文献US2003−013679によれば、マルトデキストリンの必要量は水溶性粘性化性繊維の5〜14倍の範囲内である。例えば、最終製品の水溶性繊維濃度が2%の場合で、10〜28%の軽度に加水分解されたマルトデキストリンを添加する必要があり、最終製品100gあたりのカロリー含有量を40〜112kcalも高くする。砂糖(4kcal/g)に等しいそのカロリー値に加えて、マルトデキストリンは完全に糊化したデンプンから部分加水分解により製造されるため、消化性アミラーゼ(唾液及び腸中の)により急速に代謝される。これは、血糖の急速な発現を助長し、それにより血糖の発現を遅らせることが知られている水溶性繊維分の利益を損なう。従って、この技術的解決手段は、体重又は満腹を管理することを目的とする成分を開発する場合の有用性は非常に限られる。
【0013】
イヌリン及びその他の多少とも加水分解されたフラクトオリゴ糖については、これらは胃腸許容量が低く、15〜20g/日以上では不快な徴候(膨満、腹鳴など)の発現を伴う。粘度低下効果を得るには実質的な量が必要であることを考慮すると、10〜15gのフラクトオリゴ糖を含有することがある最終製品は、その許容度が限られてしまうことになる。
【0014】
Jasim Ahmed et al による非特許文献 (Int. Journal of Food Properties, 2005, 8, 179-192) は、アカシアガム (gum acacia、アラビアガムに同じ) がグアー (及びキサンタンガム) のレオロジーを著しく低下させることを報告している。しかし、これらの知見は、グアーガム量の16〜80倍という混合物中のアカシアガムの非常に高い割合に関する。グアーガム (以下、単にグアーともいう) 含有量が低い場合(0.25%に20%のアカシアガムを混合)、粘度はこの濃度でのアカシアガム (以下、単にアカシアともいう) の粘度に非常に近くなる。グアー濃度が1.25%まで増大すると、純グアーガム(即ち、20%のアカシアガムの不存在)の粘度よりは低い値にとどまる場合でも、粘度も著しく増大する(指数的に)。
【0015】
従って、上記非特許文献を読むと、そこに記載のグアー/アカシアガム混合物の挙動を、本発明が関係するような割合に拡張して推測することは不可能である。著者らにより示されたモデル化及び結論は、以下に本発明で検討する領域から外れた実験範囲内で行われた試験のみに有効な基礎を置いている。この文献の著者らは、多量のグアーガムの使用を望んでおらず、流動性又は半流動性食品にまで拡張することが困難と思われる菓子類(コンフェクショナリー)に特異的な問題点に焦点を絞らなければならなかった。
【0016】
また、この技術的解決手段は、最終製品中のアカシアガムの非常に高い含有量、従って結腸内でのアカシアガムの発酵に起因する胃腸不快感の危険性につながる。最終製品中のグアー含有量が2%の場合、Jasimらの論文に従ったアカシアガムの使用量は32%より多くなる。最終製品中のアカシアガムの非常に高い含有量は、最終製品の摂取量が数グラム程度と少ない場合(キャンディー類、チューインガムなどの菓子ではそうである)にしか許容できない。しかし、100g又はそれ以上の領域の単位で利用可能な生の乳製品、飲料及びフルーツピューレのような流動性ないし半流動性の食品では、Jasimらの論文に記載されたアカシアガムの量は、消費者にとって不耐性という危険性をもたらす。
【0017】
特許文献WO2005/036971は、
・少なくとも50%の吸収性の糖と、
・グアー、β−グルカン及び/もしくは化工デンプンのような増粘剤、
とを含有する系におけるレオロジー調整剤として特にアカシアガムについて触れている。
【0018】
その目的は、吸収性糖の含有量が低減した乾燥製品(シリアル製品、パスタ)を製造することである。従って、この特許文献により解決される課題は本発明の課題とはかけ離れている。
【0019】
特許文献EP1008306には、オオバコ溶液の粘度を下げることができるアカシアガムの添加について記載されている。この特許文献では、オオバコに焦点があてられ、他のテクスチャー付与剤(texturizer)については何も触れられていない。特許請求されている最良の粘度降下剤は化工マニオク(キャッサバ)デンプンである。この場合も、粘度に対して著しい効果を得るには非常に多量の化工マニオクデンプンを添加する必要がある。マニオクデンプンを10%から20%程度の量で添加すれば、2%オオバコ溶液の粘度を実質的に1%オオバコ溶液の値まで低減させることができる。
【0020】
特許文献USP5545411には、1〜2%のアカシアガムの添加により大豆タンパク質(0.2%〜3%)を含有する経腸栄養用調製品の粘度を下げる(20〜30%)ことが記載されている。
【0021】
特許文献特開2005−185132及びUSP4988530には、ペクチンとアカシアガムとを同時に含有する飲料が記載されている。しかし、アカシアガムが寄与する粘度への具体的な効果については何も触れられていない。
【0022】
特許文献USP4971810には、繊維、特にアカシアガムを含有するヨーグルトの製造方法が記載されている。しかし、粘度を低減するという課題は達成されていない。
従って、従来技術は、グアーのような粘性化性の水溶性(食物)繊維により生ずる強粘性を、軽度に加水分解されたマルトデキストリン、アカシアガム、部分加水分解グアー、化工デンプンなどの或る種の高分子量分子の存在下で低減させることができることを示している。しかし、これらの分子は大過剰に、即ち、一般に粘性化性水溶性繊維の量の少なくとも10倍量で、添加する必要がある。
【0023】
従来技術はさらに、これらの二元系混合物を用いて、体重管理、満腹感又は血糖コントロールに対して効果のある製品を処方することも示している。通常(特にUS2003−013679を参照)、従来技術に記載された製品は粉末混合物の形態をとり、消費者は摂取前に再水和する。しかし、食物サプリメント産業では普通に提案されているような粉末混合物は、生の乳製品、飲料又はフルーツピューレのような種類の食品を製造するには不十分である。水分活性の高い食品は、少なくとも或る種の微生物的品質を保証するという目的で機械的な熱処理を受けるが、そのような熱処理は使用した2種類の繊維間の相互作用を変質させることがある。また、粘性化性繊維と粘度降下剤との混合物は、食品中で一旦水和した後、その食品の有効期間中ずっと化学的及び物理的安定性を有していなければならない。特に、凝集が続くことにより起こる巨視的な(肉眼で見えるような)相分離とクリーム分離/沈降分離の現象は避けなければならない。奇妙なことに、従来技術は繊維の二元系混合物が急激な変化を受けて、保存中にすぐに相分離を示すことについては触れていない。
【0024】
特許文献WO2006/134157は、少なくとも部分的に加水分解されたグアーガムのような粘性化性水溶性繊維を主成分とする満腹原性(satietogenic)粉末を含んだ生の乳製品を記載している。
【0025】
しかし、部分加水分解グアーガムは、室温での固有粘度が0.3dl/gであり、従って粘度及び安定性の問題を引き起こすことはなく、天然のグアーガムより実施が容易である。
【0026】
特に、ヨーグルト中で使用することが意図された中間調製品の組成物がWO2006/134157の表4に示されている。
この中間調製品は部分加水分解グアーガムであるSunFiber(登録商標)を11重量%含有している。それはまた3重量%の小麦と16重量%のリンゴピューレも含有する。Souci-Fachmann-Krautの書籍(Food composition and nutrition Tables、食品成分表)とそのオンラインデータベース(www.sfk-online.netで利用可能)によると、リンゴピューレの繊維分は合計2重量%である。これらの繊維のうち、24重量%は水溶性繊維で、残り76重量%は非水溶性繊維である。
【0027】
従って、この特許文献に記載された中間調製品の非粘性化性水溶性多糖繊維の含有量はわずか0.48重量%にすぎない。最終製品125g当たり2gのグアーガムを含有するヨーグルトを得るために、18重量%のこの中間調製品がヨーグルトに添加される。従って、ヨーグルトの非粘性化性水溶性多糖繊維の含有量はわずか0.086重量%にすぎない。
【0028】
この特許文献は、非粘性化性水溶性多糖繊維が粘度に影響を及ぼすことについては記載も示唆もない。実際、この特許文献におけるこの種の繊維の使用量は、真の粘度低下を生ずるには不十分である。さらに、部分加水分解グアーガムはヨーグルト中に使用した時に何ら粘度増大を引き起こさないので、このような粘度低下は必要とされない。従って、この特許文献において、非粘性化性水溶性多糖繊維は「粘度降下剤」の役割を果たしてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】WO00/67952
【特許文献2】US公開2003−013679
【特許文献3】WO2005/036971
【特許文献4】EP1008306
【特許文献5】USP5545411
【特許文献6】特開2005−185232
【特許文献7】USP4988530
【特許文献8】USP4971810
【特許文献9】WO2006/134157
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Jasim Ahmed et al, Int. Journal of Food Properties, 2005, 8, 179-192
【発明の概要】
【0031】
予想外なことに、本発明者らは、アカシアガムのような非粘性化性の水溶性多糖繊維を「粘度降下剤」として、非水溶性セルロース繊維と組み合わせて使用することにより、高い含有量でグアーガムのような粘性化性水溶性多糖繊維を含有する経時的に安定な流動性又は半流動性の食品を得ることができることを見出した。また、グアーガム(又は他の水溶性粘性化性繊維)の粘度を低下させるのに必要なアカシアガムの割合は従来技術に記述されている量よりずっと少なく、グアーガムの含有量の1.5〜4倍量のアカシアガムで著しい粘度低下を得るのに十分である。しかし、混合物の安定性及び貯蔵中の製品均質性を確保するのに不溶性繊維の存在が必要である。
【0032】
従って、グアーガムを5重量%まで含有する安定な半流動性の水「溶液」を、十分な割合の三元系混合物(グアー/アカシア/非水溶性セルロース繊維)を用いて得ること可能となる。また、慣用の装置を用いてパスチャライズ(低温殺菌)及び希釈することができる程度のグアーガム濃度を有する、十分な流動性を保持した飲料用のシロップを製造することも可能となる。
【0033】
さらに、アカシアガム、フラクトオリゴ糖、加水分解グアーのような一部の非粘性化性水溶性多糖繊維には、プレバイオティック(prebiotic)効果もある。これらの繊維の結腸内フローラによる発酵は短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、ピルビン酸)を生じて、局部的にpHを低下させ、これら2つの作用はビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属)の菌数を増大させ、病原菌(大腸菌群、サルモネラ菌など)の菌数を低減させることにつながる。しかし、この発酵は特にガス発生のために不快感につながることがあり、胃腸許容度も考慮することは重要である:例えば、アカシアガムはフラクトオリゴ糖(FOS)よりよく許容され、膨満(鼓腸)のような不快感の軽い徴候が発現する摂取量は、FOS及びイヌリンの15〜20g/日に比べてアカシアガムでは40g/日である。本発明で用いるアカシアガムの摂取量は、この許容使用量より少ないので、胃腸許容度の問題を何ら生ずることはない。
【0034】
従って、本発明は、その乾燥抽出物分 (dry extract) が製品全重量に対して30重量%以下、有利には20重量%以下であり、食物製品(食品)全重量に対して1〜24重量%の繊維を含有する安定な流動性又は半流動性の製品であって、前記繊維が下記A〜Cの混合物からなることを特徴とする食物製品に関する:
A)製品全重量に対して0.4〜5重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B)製品全重量に対して0.8〜20重量%の、平均分子量が3×105〜3×106g/molで、水溶液の固有粘度が0.3dl/gより低い、非粘性化性の水溶性繊維、
C)製品全重量に対して0.04〜0.6重量%の非水溶性セルロース繊維。
【0035】
有利には、この粘性化性水溶性多糖繊維は、平均分子量が7×105g/mol以上であるか、及び/又は室温での固有粘度が5dl/gより大きく、より有利には室温での固有粘度が6dl/gより大きい。
【0036】
本発明の意味において、「粘性化性水溶性多糖繊維」とは、少量で粘性を付与する天然の、又は軽度に加水分解された、任意の水溶性多糖食物繊維を意味する。
これらの繊維のうち、平均分子量が7×105g/mol以上で、直鎖又はわずかに分岐した構造の多糖が、少量(典型的には0.05〜0.5%)の混入で溶媒の粘度を数桁も増大させることができることから「粘性化性」と呼ぶことができる。この効果は、水中でのポリマー鎖の実質的な浸透性膨潤によって、伸長されたコンフォメーションをとり、それにより多数の水分子を移動可能にすることに関連づけられる。この粘性化性ポリマーを含有する溶液は、より遅い流速と増大した粘度を有する。粘度(粘性率)は、流れを発生させるために加えられた応力とこの流れの固有速度(characteristic speed)との間の比であると定義される。ポリマーの増粘性を客観的に定量化するために、溶液中でポリマー鎖が占める容積に言及することが有利である。即ち、固有粘度の定義は、溶液状態のポリマーのグラム当たりでのいわゆる占有「流体力学的」容積である。この容積は、種々の濃度でポリマー溶液の粘度を測定し、ゼロ濃度での低下した粘度値を外挿することにより実験的に求めることができる。典型的には、分子量が106g/mol以上の天然グアーの固有粘度は8〜30dl/g程度である(Doublier and Wood, Cereal Chemistry, 1995, 72, 335-340)。
【0037】
有利には、本発明の粘性化性水溶性多糖繊維は、天然の植物起源のものであり、有利にはカロウバガム (carouba gum)、コロハ種子 (fenugreek)、コンニャクグルコマンナン、タラガム (tara gum)、燕麦及び大麦β−グルカン類、グアーガム、ペクチン、並びに柑橘果肉繊維の中から選ばれる。より有利には、それはグアーガム、カロウバガム、コンニャクグルコマンナン、並びに燕麦及び大麦β−グルカン類の中から選ばれる。特に有利には、それはグアーガムである。有利には、グアーガムはMeyproguar M 225 (Danisco社) 又はViscogum MP 41230 (Cargill社) なる商品名で市販されているガムである。これらは一般的な加水分解されていない天然グアーである。
【0038】
有利には、本発明の食品では、グアーガム/アカシアガムの比率は約1.5〜6前後である。好ましくはこの比は約2〜4である。
本発明の意味において「非粘性化性水溶性多糖繊維」とは、その高分子量(3×105〜3×106g/mol)にもかかわらず、少量では粘性を与えない任意の多糖水溶性食物繊維を意味する。これらの繊維は非常にコンパクトなコンフォメーションを有し、溶液状態で小さな流体力学的容積を占めるため、溶液状態では低粘性となる。
【0039】
有利には、それらはアカシアガム、水溶性リンゴ繊維(例えば、Pomelite LV (登録商標))又は大豆繊維 (例えば、Soya Fibe (登録商標))の中から選ばれ、有利にはアカシアガム及び水溶性リンゴ繊維の中から選ばれ、さらに有利にはそれはアカシアガムである。アカシアガムは、工業的観点(テクスチャー付与性が弱いガム)及び栄養上の観点(良好な消化許容度及びプレバイオティック効果)から最も興味ある水溶性食物繊維の1種である。アカシアガムは天然の水溶性食物繊維である。それは、高分子量(4×105〜2×106g/molの範囲内)の巨大分子であるが、その固有粘度は0.2dl/gより低い(Al-Assaf et al, Food Hydrocolloids, 2005, 19, 647-667; Flindt et al, Food Hydrocolloids, 2005, 19, 687-701)。同等の分子量で比べて、アカシアガムの固有粘度はグアーより30〜40倍も低く、それは溶液状態でのコンフォメーションが異なることを実証する。
【0040】
アラビアガムとも呼ばれるアカシアガムは、アカシア属の木の滲出物を当業者には周知の物理的方法だけを用いて精製したものである。その精製は、粉砕、水への溶解、濾過、遠心分離、精密濾過、並びに噴霧乾燥もしくは造粒からなる。acacia seyalと、acacia senegal (アラビアゴムノキ) という2種類のアカシアガムがある。それらは構造がやや異なる。しかし、それらは互いに非常に異なる旋光能及び単糖組成 (アラビノース含有量が、acacia seyalでは46%、acacia senealでは24%)によって識別しうる。有利には、アカシアガムはacacia senegal、acacia seyal又はそれらの混合物である。「acacia senegalガム」とはアラビアゴムノキ(Acacia senegal)属の樹木の天然分泌物から製造された、即ち、幹又は枝のタッピング(傷口からの樹液の採取)により製造されたガムを意味する。有利には、アカシアガムはCNI社製のファイバーガムB(Fibregum B)である。
【0041】
有利には、非水溶性セルロース繊維はセルロース及び/又はヘミセルロースを含有する。有利には、それらは、小麦、綿および木材繊維並びにそれらの混合物から選ばれ、より有利には、該繊維は小麦繊維からなる。
【0042】
有利には、非水溶性セルロース繊維と非粘性化性水溶性多糖繊維は緊密な混合物の形態であり、有利には(α1)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に共乾燥するか、又は(α2)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に強い剪断下(有利には104-1以上の)で混合するか、又は(α3)非水溶性セルロース繊維と非粘性化性水溶性多糖繊維との混合物を加圧下(有利には少なくとも50barの)でホモジナイズすることにより得られたものである。有利には、それは工程(α1)で得られた共乾燥混合物である。有利には、この混合物は、混合物の全重量に対して5〜30重量%、有利には20重量%の非水溶性セルロース繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%、有利には80重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維とを含有する。非水溶性セルロース繊維が30重量%を超えると、混合物を乾燥することができなかった。非水溶性セルロース繊維が5重量%未満では、この混合物は有用性がない。
【0043】
本発明に係る食品において安定剤として作用するのは非水溶性セルロース繊維である。しかし、それは分散した後ではじめてその機能を発現し、この分散は均質混合物状態にある非粘性化性水溶性多糖繊維によって起こる。従って、本発明の食品において安定剤として作用するのはこの均質混合物であると考えることもできる。有利には、非水溶性セルロース繊維は小麦繊維である。有利には、使用する共乾燥混合物は、CNI社からEquascia(登録商標)なる商品名で市販されている小麦繊維/アカシアガム系である。
【0044】
本発明の意味において、「剪断」とは、有利にはs-1の単位で表される剪断速度を意味する。
本発明の意味において、「流動性又は半流動性の食品」とは、ボトルから直接飲むことができる(流動性食品)か、又は袋に適度な圧力を加えることにより吸うことができるか(フルーツピューレ型)、又はカートン容器からスプーンを使って摂取できる(半流動性食品)食品を意味する。有利には、この食品の10s-1の剪断速度及び20℃での見かけ粘度は0.05Pa.s(最も流動性の高い食品)から10Pa.s(よりテクスチャーのある食品)の範囲内である。
【0045】
有利には、それは生の(新鮮な)乳製品、植物汁、飲料及びそれらの混合物の中から選ばれ、有利には果物入り生乳製品、果汁及び/もしくは野菜汁、フレーバーウォーター(風味つきの水)、又はフルーツピューレから選ばれる。本発明における「飲料」とは、水を主成分とする風味づけしてあるすべての食品を意味し、特にフレーバーウォーターを意味する。
【0046】
有利には、本発明の流動性及び半流動性食品は、生の乳製品である。有利には、それは発酵乳製品である。この食品は、例えば、果汁又は豆乳が添加されている乳製品であってもよい。
「発酵乳製品」なる用語は、特に、そのままヒトが消費(摂取)できる発酵乳製品、即ち、発酵酪農食品を意味する。本出願では特に発酵乳及びヨーグルトが関係する。それ以外に、この発酵乳食品は、フロマージュ・ブラン(ホワイトチーズ)又はプチスイス (petit-suisses) チーズであってもよい。
【0047】
「発酵乳」及び「ヨーグルト」なる用語は、乳製品産業の分野におけるそれらの普通の意味で使用される。即ち、乳基質の酸性化乳酸発酵から得られる、ヒトの食用を意図した製品を意味する。これらの製品は、果物、野菜、糖などの追加成分を含有しうる。例えば、1988年12月31日付のフランス共和国官報で公布された1988年12月30日付の発酵乳及びヨーグルトに関する仏国行政命令No. 88-1203号を参照することができる。また、「コーデックス委員会(Codex Alimentarius)も参照できる (FAO<国連食糧農業機関>とWHO<世界保健機関>の指導下にコーデックス委員会作業部会(Codex Alimentarius Commission)により作製され、FAO情報部により発表され、http://www.codexalimentarius.netでオンライン利用可能;より具体的には"Codex Alimentarius"の第12巻、「乳及び乳製品のコーデックス規格」及び規格"CODEX STAN A-1 1(a)-1975"を参照)。
【0048】
従って、「発酵乳」なる用語は、本出願においては、各製品に特有の菌種に属する微生物が接種された、少なくともパスチャライズと同等の処理を受けた、乳汁(ミルク)を基質として調製された乳製品のことである。「発酵乳」は、使用した乳基質の構成成分を除去する処理を全く受けておらず、特に凝塊を排除する処理を受けてはいない。「発酵乳」の凝集・凝固は、使用した微生物の活性又は作用から生ずるもの以外の手段によって得てはならない。従って、実際には、「発酵乳」とは、一般にヨーグルト以外の発酵乳を意味する用語として使用され、国によって異なるが、例えば、「ケフィア」、「クミス (馬乳酒)」、「ラッシー」、「ダヒ」、「レーベン」、「フィルムヨーク」、「ヴィリ」、「アシドフィルスミルク」などと呼ばれることがある。
【0049】
「ヨーグルト」とは、ブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)及びサーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus)と呼ばれる特定の好熱性(高温性)乳酸菌の増殖により、局部的かつ恒常的な使用に従って得られる発酵乳のことであり、使用した乳酸菌は、乳部分に対して1グラム当たり少なくとも1千万個の割合で最終製品中に生きた状態で存在しなければならない。国によっては、規則によってヨーグルトの製造に他の乳酸菌の添加、特にビフィズス菌(Bifidobacterium)及び/又はアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)及び/又はカゼイ菌(Lactobacillus casei)の菌株の追加使用が認められる。これらの追加の乳酸菌株は、腸内細菌叢の平衡を良くしたり、あるいは免疫系の調節といった各種の特性を最終製品に付与するために使用される。
【0050】
発酵乳基質中に含まれる遊離乳酸の量は、消費者への販売時点で100g当たり0.6g未満であってはならず、乳部分のタンパク質含有量は普通の乳汁中のそれより少なくなってはいけない。
【0051】
「フロマージュ・ブラン」及び「プチスイス」なる用語は、本出願では、乳酸菌だけによる発酵を受けた(乳酸発酵以外の発酵を受けていない)未熟成で加塩されていないチーズのことである。フロマージュ・ブランの乾燥分含有量は、完全な乾燥後に、その脂肪分が25%より大であるか否かに応じて、フロマージュ・ブラン100g当たり15g又は10gまで低下させてもよく、又はフロマージュ・ブラン100g当たり20g以上又は20g以下とすることができる。フロマージュ・ブランの乾燥分含有量は13〜20%である。プチスイスの乾燥分含有量はプチスイス100g当たり23g以上である。その乾燥分含有量は一般に25〜30%である。「フロマージュ・ブラン」及び「プチスイス」は一般に、本発明の技術分野において慣用されている「フロマージュ・フレ(fromage frais)」なる用語に共に区分される。
【0052】
有利には、生の乳製品は、撹拌型ヨーグルト (stirred yogurt) を包含するヨーグルト、ヨーグルト飲料、フロマージュ・フレ、及び発酵乳から選ばれる。
特定の1態様において、本発明の生の乳製品は低脂肪かつ低糖分のものである。
【0053】
本発明の意味において、「低脂肪」食品とは脂肪分が下記条件を満たすものである:
・固体食品(形のあるヨーグルト又はフロマージュ・フレのタイプ)の場合、食品100g当たりの脂肪が約3g未満、
・液体食品(ヨーグルト飲料タイプ)の場合、食品100mlあたりの脂肪が約1.5g未満。
【0054】
これに関して、本出願人は、上記定義が、1997年にコーデックス委員会作業部会により採択され、2001年に修正された栄養強調表示の使用に関するコーデックスガイドラインにも適合していることを明記する。
【0055】
「低糖」又は「低糖分」食品は、下記より多い量の糖分を含有しない食品である:
・固体食品では食品100g当たりが約0.5gの糖、
・液体食品では食品100ml当たり約2.5gの糖。
【0056】
この場合も、本出願人は、この定義が1998年7月8日付の特定食品について栄養強調表示の紛らわしさに関する(仏国)省間委員会により下された意見書に適合していることを指摘しておく。
【0057】
有利には、生の乳製品は低エネルギー密度の食品である。「低エネルギー密度」食品とは、100g当たり約40〜120kcal、好ましくは100g当たり約60〜110kcal、さらに好ましくは100g当たり約70〜100kcalのカロリーの食品をここでは意味する。
【0058】
別の態様において、本発明の生の乳製品は、生の乳製品の全重量に対して2〜10重量%、有利には4〜7重量%のタンパク質を含有する。有利にはこれらのタンパク質は乳タンパク質及び/又は植物タンパク質である。乳タンパク質は、例えば、粉末乳、カゼイン及び漿液タンパク質(serum proteins、乳清タンパク質)から選ばれる。植物タンパク質は、例えば、大豆タンパク質及び/又は小麦タンパク質、特にグルテン及び部分加水分解グルテンを含む。
【0059】
有利には、本発明の生の乳製品は果物(フルーツ)を含有する。有利には、果物は、リンゴ、オレンジ、レッドフルーツ、イチゴ、桃、アンズ、プラム、ラズベリー、ブラックベリー、レッドカラント、レモン、グレープフルーツ、バナナ、パイナップル、キウイ、梨、サクランボ、ココナツ、パッションフルーツ、マンゴー、イチジク、ルバーブ、メロン、トロピカルフルーツ、ライチ、ブドウ類、ブルーベリー、並びにそれらの混合物よりなる群から選ばれる。
【0060】
特定の1態様において、本発明の食品は果物を含んだ生の乳製品であり、下記の各繊維の含有量が該食品の全重量に対する重量%で次の通りである:
A1)0.5〜2%、有利には1%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B1)0.8〜8%、有利には2%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C1)0.04〜0.25%、有利には0.1%の非水溶性セルロース繊維。
【0061】
別の態様では、本発明の流動性又は半流動性食品はフルーツピューレである。有利には、それは下記を含有する:
A2)ピューレ又は果物調製品の全重量に対して1〜5重量%、有利には2.5重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B2)ピューレ又は果物調製品の全重量に対して2〜20重量%、有利には7.4重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C2)ピューレ又は果物調製品の全重量に対して0.05〜0.6重量%、有利には0.15重量%の非水溶性セルロース繊維。
【0062】
これらのフルーツピューレのテクスチャーは標準的なピューレのテクスチャーに近い。
有利には、本発明の食品は少なくとも4℃で4週間、有利には室温で12カ月の間安定である。本発明の意味において、「安定な食品」とは、10℃で8週間後における分離した液相の量が、食品の全重量に対して5重量%未満、有利には食品の全重量に対して3重量%未満、さらに有利には食品の全重量に対して1重量%未満である、上に定義したような食品を意味する。「分離した液相」とは、食品の底部に現れる透明な水性相を意味する。分離した液相の割合が5重量%より少ない食品は、実際上は巨視的な相分離がないので安定な食品であると考えられる。4週間という期間は、ヨーグルトに期待される安定性の最低期間である。
【0063】
有利には、本発明の食品は粘度が、好ましくは消化条件下で、0.2Pa.sより大、即ち、水の粘度の200倍より高い。有利には本発明の食品の粘度は1Pa.sより大、即ち、水の粘度の1000倍より高い。さらに好ましくは、本発明の食品の粘度は3Pa.sより大、即ち、水の粘度の3000倍より高い。
【0064】
「消化条件」とは、食品を胃腸条件下、即ち、胃及び腸のpHで消化管のこれらの部分に天然に存在する消化酵素と接触した状態にさらすことを意味する。より正確には、これらの胃腸条件をin vitroで次の操作により模擬することができる。まず本発明に係る該食品をビーカーに入れ、37℃に30分間加熱した後、4N HCl溶液を用いてpH2に酸性化する。10分間連続撹拌した後、前工程で酸性化された食品に1.25重量%量のペプシンを粉末形態で加える。35分間待った後、濃4N水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を用いて食品のpHを6まで上げる。10分間撹拌した後、0.5重量%の量の粉末パンクレアチンを添加する。撹拌を10分間続ける。
【0065】
上に示した粘度値は、これらの条件下で10s-1の剪断速度で測定された値である。
このin vitro試験のさらなる詳細は実施例3に後述されている。
本発明はまた、下記工程を含む本発明に係る流動性又は半流動性食品の製造方法にも関する:
a)本発明に係る繊維を初期母材に添加し、そして
b)得られた生成物を混合する。
【0066】
「初期母材」とは、乳汁、発酵乳、植物汁、発酵植物汁、水、発酵水、フルーツピューレを意味する。
有利には、本発明の方法は、工程(a)の前に、下記操作により非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維中に分散させる工程(α)を含む:
・α1)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に共乾燥する、又は
・α2)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に強い(有利には104-1以上の)剪断下で混合する、又は
・α3)非水溶性セルロース繊維と非粘性化性水溶性多糖繊維との混合物を加圧下(有利には少なくとも50barの)でホモジナイズする。
【0067】
有利には、工程(α)は工程(α1)、即ち、非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と共乾燥することからなる。
共乾燥を行う場合、最終乾燥品における非水溶性セルロース繊維の量は最大で30重量%とすることが好ましい。有利には最終乾燥品は、混合物の全重量に対して5〜30重量%の非水溶性セルロース繊維、有利には小麦繊維と、混合物の全重量に対して70〜95重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維、有利にはアカシアガムとを含有する。有利には、非水溶性セルロース繊維が80重量%で、非粘性化性水溶性多糖繊維が20重量%である。
【0068】
有利な1態様において、工程(a)で添加された繊維は中間調製品、有利には果物調製品及びシロップの中から選ばれた中間調製品の形態である。
本発明の意味において、「果物調製品」とは、果肉片又はフルーツピューレを含有する水性懸濁液を意味する。本発明の意味において、「フルーツピューレ」とは、丸ごと又は皮を剥いた果物の可食部分を、果汁を除去せずに、漉すなどの方法によって得られた、発酵可能ではあるが未発酵の食品を意味する。ピューレは濃縮されていてもよいが、この場合はフルーツピューレから構成水の所定部分を物理的に除去することにより得られる。
【0069】
有利には、本発明に係る果物調製品は、CENCOテクスチャー測定装置を用いて測定して、5〜15、好ましくは5〜12のテクスチャーを有する。この種のテクスチャー測定は当業者が日常的に使用しているものである。この場合、慣用の粘度もしくはテクスチャー測定装置を使用することはできないが、それは果物調製品が均質な混合物ではないからである。
【0070】
CENCO測定値が高いほど調製品の流動性が高い。
有利な1態様では、本発明に係る果物調製品は、糖類又は甘味料と、場合により着色料、香料、並びに/又は酸味料を含有する。糖類は特に単糖類及び二糖類である。単糖類としては、フラクトース、ガラクトース、グルコースが挙げられる。二糖類としては、特にスクロース(しょ糖)が挙げられる。
【0071】
本発明の意味において.「シロップ」とは、糖、テクスチャー付与剤(texturizer)、水及び香料を含有する液状調製品を意味する。
本発明はまた、有利には本発明の流動性又は半流動性食品に使用するための、下記成分を含有する中間調製品に関する:
A3)中間調製品の全重量に対して2〜10重量%、有利には5重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B3)中間調製品の全重量に対して4〜40重量%、有利には10重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C3)中間調製品の全重量に対して0.2〜1.25重量%、有利には0.5重量%の非水溶性セルロース繊維。
【0072】
有利には、本発明のこの中間調製品は果物調製品又はシロップである。
本発明はさらに、本発明の中間調製品の流動性又は半流動性食品、有利には生の乳製品における使用にも関する。果物調製品の場合、それは特に発酵乳製品に混合物として又は2層製品の1層として混入することができる。
【0073】
本発明はまた、下記の引き続く工程を含む、本発明に係る中間調製品の製造方法にも関する:
・粉末形態の上記3種類の繊維を混合し、
・この粉末混合物を撹拌下に水中に分散させ、
・場合により、この分散液に果物、糖、着色料、香料を添加し、
・得られた調製品をパスチャライズ熱処理に付し、
・得られた中間調製品を冷却し、
・この中間調製品を低温容器(10℃以下、好ましくは4℃以下)内で保存する。
【0074】
果物は、ピューレ、果肉片、果汁などの形態で添加される。
有利には、非水溶性セルロース繊維は、その分散を促進するように、下記操作により処理される:
・α1)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に共乾燥する、又は
・α2)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に強い(有利には104-1以上の)剪断下で混合する、又は
・α3)非水溶性セルロース繊維と非粘性化性水溶性多糖繊維との混合物を加圧下(有利には少なくとも50barの)でホモジナイズする。
【0075】
本発明に係る中間調製品の成分は、本発明の非粘性化性水溶性多糖繊維と非水溶性セルロース繊維に加えて、他に例えば、粘性化性水溶性多糖繊維、果物(ピューレ又は果肉片の形態)、酸、糖もしくは甘味料、着色料などである。
【0076】
パスチャライズ熱処理の条件は当業者には知られている。
最後に、本発明は、胃膨満感の増大、空腹感の開始の遅延、及び/又は人の体重管理のための満腹性食品(satiating food)としての本発明に係る食品の非治療目的での使用にも関する。
【0077】
ここで使用したような「満腹」なる用語は、本技術分野で通常認められている定義に合致する。この概念は、多数の刊行物の主題となってきた。参考までに、「満腹性食品」とは、消費者に対して特に、空腹感の低下、食欲低下、胃膨満の増大、2回の食事間における空腹の戻りの遅延、2回の食事間隔の増大、食事後の食物摂取量(food intake)の低下をもたらす食品を意味することを明記しておく。これらの各種の効果は、単独で、又は複合して、十分に又は部分的に認められうる。後述するように(特に表1を参照)、食品の満腹特性を決定するのに使用できるマーカー測定法があることも想起される。特に満腹性食品は、胃の動態力学、膵液分泌、及び食物摂取量のコントロールに関与する吸収前及び吸収後信号の放出に寄与する。これらの信号の作用は、末梢及び中枢レベルで作用する(表1参照)。次の表1に最も一般的なマーカーをまとめて示す。これらのマーカーのさらなる情報については、Graaf et al, 2004によりなされた概説を参照されたい。
【0078】
【表1】

【0079】
本発明では、最終製品の重量に対して0.4〜4%という粘性化性水溶性繊維の高い含有量のために満腹性食品を処方することができる。これらの含有量で、グアーガムの粘度は0.2〜150Pa.s(即ち、25℃の水の粘度の200倍〜150,000倍)である。粘度は精密MCR 300レオメータ(Anton Paar社製Physica)を用いてペルティエ効果により恒温調節されたCC27同軸シリンダ及び測定チャンバ (TEZ 150 PC) を使用して測定される。選択された剪断速度は、腸内条件下で遭遇する剪断条件を表すことが知られている10s-1であった。
【0080】
これらの粘性化性繊維の作用によって、本食品の飲み込んだ食物塊は非常に高粘度となり、胃が空になったり、食物塊が腸内を前進するのを遅らせて、それにより満腹性効果に寄与する。
【0081】
本発明において興味あるのは、満腹性効果のある粘性化性繊維とプレバイオティック効果のある非粘性化性繊維とからなる系は、食品の状態ではその粘度を発現しないか、又は非常に少ない程度でしか発現しない。しかし、それが消化管に達するとすぐにその機能を確実に発揮する。
【0082】
満腹性粘性化性繊維(例、グアーガム)は、上部消化領域(胃及び小腸)においてかなり多く作用するのに対し、プレバイオティック性の非粘性化性繊維(例、アカシアガム)は下部消化領域(大腸及び結腸)においてより多く作用する。
【0083】
本発明はまた、人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ食事後の人体の血糖及びインスリン血症反応を遅らせる食品、好ましくは機能性食品としての本発明に係る食品の非治療目的での使用にも関する。
【0084】
本発明はまた循環血中コレステロール濃度を低減させる機能性食品としての非治療目的での使用にも関する。
本発明はまた、本発明に係る食品の薬用製品としての使用にも関する。
【0085】
好ましくは、本発明に係る食品は、人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ食事後の人体の血糖及びインスリン血症反応を遅らせる薬用製品及び機能性食品として使用され、それによりメタボリックシンドロームの徴候発症を防止する。
【0086】
本発明の別の側面によると、本発明の食品は、人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ心臓血管不全に関係する徴候発症を防止する薬用食品及び機能性食品として使用される。
【0087】
本発明は、以下の図面及び制限を意図しない実施例からさらによく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】天然グアーガム(Meyproguar M225)の水溶液の10s-1の剪断速度での粘度(Pa.s)の測定値を天然グアーガムの濃度(重量%)に対して示す。
【図2】アカシアガム(Fibregum B)のある量(0.10又は20重量%)の存在下での天然グアーガム水溶液の10s-1の剪断速度での粘度(Pa.s)の測定値を天然グアーガムの濃度(重量%)に対して示す。
【図3】グアーガムに対して一定割合のアカシアガムの存在下での天然グアーガム水溶液の10s-1の剪断速度での粘度(Pa.s)の測定値を、天然グアーガムの濃度(重量%)に対して示す。グアーガム/アカシアガムの比率(ratio acacia/guar)は1.5から4の範囲内である。従って、図3において、グアーガムとアカシアガムの量は共に変化させるが、それらの比は一定のままである。
【図4】水溶液の粘度が10s-1の剪断速度で10Pa.sに等しくなるようなグアーガムの濃度(重量%)に対する水溶液中のアカシアガムの濃度(重量%)を示す。
【図5】2重量%の天然グアーガムと10又は20重量%の各種の非粘性化性水溶性繊維:アカシアガム(Fibregum B)、リンゴ(Pomelite)及び大豆(Soyafibe)とを含有する水溶液の剪断速度10s-1での粘度(Pa.s)の測定値を示す。
【図6】2重量%の天然グアーガム(Meyproguar M225、 Danisco社)、又は2重量%のグルコマンナン (Rheolex RS、清水化学)、又は5重量%のペクチン (TS-P 6786、Danisco社)、又は5重量%のβ−グルカン富化燕麦ふすま (オートブラン) (Oatwell 22、 CreaNutrition社) を含有する水溶液の剪断速度10s-1での粘度(Pa.s)の測定値を示す。これらの粘性化性水溶性繊維の粘度を、アカシアガム無添加と10%のアカシアガム添加の場合とで比較する。
【図7】Taillefine Brasse Natureの種類の低脂肪撹拌型ヨーグルトと、天然グアーガム5重量%及びアカシアガム10重量%を含有する果物調製品と混合した同じヨーグルトとで得られた、消化工程に対する37℃、剪断速度10s-1での見かけ粘度 (Pa.s) に関するin vitro試験結果の例を示す。ホワイトマス (白色塊=ヨーグルト) 及び果物調製品の割合は最終製品中でそれぞれ80重量%及び20重量%であり、天然グアーガム及びアカシアガムの量は最終製品中でそれぞれ1重量%及び2重量%である。
【0089】
粘度測定は、高精密MCR 300レオメータ(Anton Paar社製Physica)を用いてペルティエ効果により恒温調節されたCC27同軸シリンダ及び測定チャンバ (TEZ 150 PC) を使用して行われる。選択された剪断速度は、腸内条件下で遭遇する剪断条件を表すことが知られている10s-1である。
【図8】高タンパク質ホワイトマス(タンパク質含有量6.5%)80%と果物調製品A(グアーガム7.5%及びアカシアガム20%を含有)又は果物調製品B(グアーガム7.5%及びアカシアガム20%を含有)20%とからなる混合物の複素粘性率(complex viscosity)の経時変化を示す。従って、食品Aはグアーガム1.5%とアカシアガム2.5%を含有し、食品Bはグアーガム1.5%とアカシアガム4%を含有する。
【実施例】
【0090】
実施例1:アカシアガム及び小麦繊維の存在下における2〜4%のグアーガムを含有する半流動性「溶液」の調製
使用したグアーは参照用のMeyproguar M225 (Danisco社) である。これは加水分解されていない普通の天然グアーである。その分子量は2.7×106g/molであり、これは20 dl/gのオーダーの固有粘度に対応する (Doublier and Wood, Cereal Chemistry, 1995, 72, 335-340)。使用したアカシアガムはFibregum B (CNI社) である。その分子量は6.4×105 g/molであり、これは0.18 dl/gのオーダーの固有粘度に対応する (Al-Assaf et al., Food Hydrocolloids, 2005, 19, 647-667; Flindt et al, Food Hydrocolloids, 2005, 19, 687-701)。
【0091】
実験室試験を下記の条件下で実施した:
・各粉末を一緒に混合し、冷水に分散させ;
・混合物を撹拌下 (30 s-1の剪断) 下で95℃まで加熱し
・撹拌下 (30 s-1の剪断) 下で20℃まで冷却し;
・同軸シリンダ (CC27) を取り付けたMCR300レオメータ (Anton Paar社) を用いて、10 s-1の剪断速度で見かけ粘度を測定する。
【0092】
このような条件下で、
グアーガム単独の溶液は、急速に高粘度を示す (図1を参照)。2重量%のグアー濃度で、粘度は既に19 Pa.s、即ち、ポンプ搬送が困難な溶液の粘度に達する。本発明の意味での半流動性「溶液」を得るには、混入できるグアーの最大濃度は約1.5重量%である。
【0093】
アカシアガム単独の溶液は粘度が低い:20%でアカシアガムの溶液の粘度はわずか0.02 Pa.s、即ち、25℃の水の粘度の20倍にすぎない (Jasim Ahmed et al, Int. Journal of Food Properties, 2005, 8, 179-192)。
【0094】
十分な濃度のアカシアガムの存在下で、10重量%までのグアーガムを含有する半流動性「溶液」を得ることができる (図2)。
これらの溶液は実際には次の2相が併存する2相系である:
・本質的にアカシアガム (及び少量のグアー) を含有する連続相、
・グアー濃度が高く、少量のアカシアガムを含有する分散相。
【0095】
これらの2相は密度が互いに異なり、安定性のために、小麦繊維のような非水溶性セルロース繊維を製品に添加する必要がある。
従って、0.8〜20重量%の濃度のアカシアガムの存在下で0.4〜5重量%のグアーガムを含有する半流動性「溶液」を得ることが可能なようである。
【0096】
図3も、10 s-1の剪断速度での天然グアーガム水溶液の粘度 (Pa.s) を天然グアーガムの濃度 (重量%) 及びグアー量に対して一定比率で添加されたアカシアガムに対して示す。●印は、グアーガム単独の濃度に対する10 s-1での見かけ粘度の変化に対応し、粘度は濃度と共に著しく増大し、それは3.35乗という累乗の規則により調整されうる。グアーガムの量に比例して加えたアカシアガムの存在下では、この同じ累乗規則の挙動が認められるが、グアー含有量がずっと高い領域だけであり、その領域はアカシア/グアーの比に応じて変動する。例えば、アカシア/グアー比が2.5では、累乗規則の挙動はグアーガム濃度が6%より高い (従って、アカシア濃度は15%より高い) 領域で認められる。アカシア/グアー比が4では、この挙動は3〜4%のグアー濃度から認められる。
【0097】
これらの臨界濃度に達しない領域では、グアー/アカシア混合物の粘度は複雑に変化し、希釈しても増大する。例えば、粘度は、グアー濃度5%でアカシア濃度12.5%の場合の1.2 Pa.sの値から、グアー濃度2%でアカシア濃度5%の場合の6.0 Pa.sに増大する。この希釈に伴う粘度増大は、本発明に完全に特有な現象であり、単一の粘性化性繊維では決して認められないものである。
【0098】
図3において、影をつけた丸印は、グアーガム単独の値を表すが、濃度を7倍した場合の値である。得られたプロット点は、少なくとも最高値の部分では、アカシア/グアー混合物の濃度に対する粘度変化の傾向とよく一致している。従って、本発明に係る繊維混合物は、同じ粘度を保持しながら、最終製品中に7倍まで多い量の粘性化性繊維を実際に混入することを可能にする。
【0099】
このことは、健康食品の処方に対する本発明の次のような利点を確認するものである:
a) 粘性化性水溶性繊維単独で生ずる粘度と比べてその包装形態では粘度が低いにもかかわらず、繊維を高濃度で含有する最終製品を得ることが可能となる。
【0100】
b) 摂取後の消化中に、本食品は、飲んだ水、又は消化液 (唾液、胃液など) により次第に希釈される。図3に示すように、希釈中にも粘度は高いままであり、アカシア/グアー比に応じて変動するある濃度範囲では増大することさえある。
【0101】
グアーガム濃度が一定の場合、ポンプ搬送と混合が容易な製品に対応する10 Pa.s未満の粘度を有する系を得ることが可能なアカシアガムの最小濃度が存在する。これら二つの濃度の間の関係を図4に示す。図4の線より上の領域は、上記機能が可能である領域に対応する。全体的にみて、アカシアガムの使用量は目標とするグアー量の2〜3倍である。やはり、この2〜3倍という比率は、粘度降下剤の従来技術で述べられているもの (この比率が10に近い) より相当に低い。
【0102】
大豆繊維 (Soya Fibe:不二製油社製)又は水溶性リンゴ繊維 (Pomelite LV、Val de Vire社製) を使用しても、類似の結果を得ることができるが、次に述べるように、利点はずっと少なくなる (図5)。
【0103】
・20重量%の水溶性リンゴ繊維 (Pomelite LV) により天然グアーガムの2重量%溶液の粘度を1/20に下げることができる。
・10重量%の大豆繊維 (Soya Fibe) により天然グアーガムの2重量%溶液の粘度を1/4に下げることができる。
【0104】
アカシアガムを用いて溶液状態の他の粘性化性繊維の粘度をかなり下げる試験でも、次に述べるように、同様の結果が類似の効果で得られる (図6)。
・10重量%のアカシアガムによりグルコマンナン (Rheolex RS, 清水化学社製) の2重量%溶液の粘度を1/100に下げることができる。
【0105】
・10重量%のアカシアガムによりペクチンHM (GrinstedペクチンTS-P 6786、Danisco社製) の5重量%溶液の粘度を1/10に下げることができる。
・10重量%のアカシアガムにより高濃度β−グルカン含有燕麦フスマ (Oatwell、22重量%β−グルカン、Crea Nutrition社製) の5重量%溶液の粘度を1/100に下げることができる。
【0106】
実施例2:高濃度のグアーガムを含有する果物調製品
実施例1に記載した方法を用いて1〜10重量%のグアーガムを含有する果物調製品を得ることができる。
【0107】
例示として、グアーガム5重量%を含有する無糖のイチゴ調製品を下記条件下で調製した。
組成:
・濃縮イチゴピューレ (6倍) 8.3%
・グアーガム (Meyproguar M 225) 5.0%
・アカシアガム (Fibregum B) 6.0%
・Equacia (登録商標) 5.0%
・水 74.3%
+酸味料、甘味料、着色料及び香料 1.4%
CNI社から入手できるEquacia (登録商標)なる成分は、90%のアカシアガムを10%の小麦セルロースと共乾燥した混合物である。
【0108】
方法:
1) 濃縮イチゴピューレに10重量%の水を加えて85℃に加熱する、
2) 下記操作により天然グアーガムとアカシアガムとの溶液を調製する、
・これら2種類の粉末を混合し、
・60重量%量の50℃の水に撹拌下に分散させる、
3) この溶液を前記フルーツピューレに加え、85℃に加熱する、
4) 50℃の残りの量の水に分散させた甘味料と着色料を加える、
5) 60℃に冷却する、
6) 香料とクエン酸を加えてpHを4に調整する。
【0109】
こうして、かなり流動性のあるイチゴ調製品を得ることができる。
ただし、特定の安定剤 (例、CNI社製のEquacia)を使用しないと、このイチゴ調製品は10℃で保存した時に安定ではない。10℃で数時間貯蔵すると、ポットの底部に、アカシアガムに富んだ液相が現れ、巨視的な相分離が認められる。
【0110】
実施例3:高濃度のグアーガムを含む発酵乳製品の調製
2重量%までのグアーガムを含有する発酵乳製品を、上記果物調製品を撹拌型ヨーグルト(stirred yoghurt) と混合することにより得ることができる。この混合物のコンシステンシー (粘稠度) は最初の数分間は変化するが、その後は経時的に安定となる。
【0111】
調和振動測定を利用すると、機械的な攪乱を起こさずにこの混合物の進展を追跡することができる。その原理は、材料を、振動数fで、応力が変形に比例した状態にとどまるように十分に低い変形レベルで、時間正弦波変形 (time sinusoid deformation) を受けさせることである。このような条件下で、サンプルは応答応力を発揮することにより応答し、この応答応力も時間正弦波関数であるが、位相シフトしている。このシフト量が、材料応答における固体寄与率 (即ち、弾性率G'により定量化される弾性) と液体寄与率 (即ち、粘性率G''により定量化される粘性) との間のバランスを表示する。複素粘性率η*は次式により定義される。
【0112】
【数1】

【0113】
式中、G'及びG''は、それぞれ弾性率及び粘性率 (単位:Pa) であり、fは変形の振動数 (周波数) (単位:s-1) である。選択した振動数及び変形率はここでは1 Hz及び0.1%であり、それにより線形粘弾性の範囲内に位置させることができる。測定装置は、AntonPaar社から市販のPhysica (FL100) であり、直径2cmの6枚羽をもつ可動型シソメータ (scissometer) である。このシソメータはサンプルの中心部の中に浸されるが、水平面におけるその小さな接触表面のために、サンプルのデストラクチャリング(de-structuring、構造破壊) は制限される。測定は10±0.1℃で行われ、サンプルはペルティエ効果により一定温度に調節された測定チャンバ (TEZ 150 PC) に挿入される。
【0114】
使用した方法は、ホワイトマス (=ヨーグルト) と果物調製品との前記混合物が受けた変化の追跡を、該混合物が静止状態にあると考えることができるような低い機械的攪乱条件下で行うことを可能にする。
【0115】
図8は、高タンパク質ホワイトマス (タンパク質含有量6.5%) 80%と果物調製品A (グアーガム7.5%とアカシアガム12.5%とを含有) 又は果物調製品B (グアーガム7.5%とアカシアガム20%とを含有) 20%とからなる混合物の複素粘性率の経時変化を示す。最終的に、製品Aはグアーガム1.5%とアカシアガム2.5%とを含有し、製品Bの方はグアーガム1.5%とアカシアガム4%とを含有する。
【0116】
図8において、果物調製品Aを用いて調製した混合物は連続線で示され、果物調製品Bを用いて調製された混合物は符号により示されている。
粘稠度の増大が確かに最初の数分から見られる。それはほぼ30分後には弱くなり、その後は安定化して数時間後にほぼプラトー値になる。次の表は、異なる時間でのいくつかの複素粘性率の値を、次式で算出される考慮する2つの時間の間での複素粘性率の増大速度と共に示す。
【0117】
【数2】

【0118】
【表2】

【0119】
上の表は、複素粘性率が短時間の間は本質的に変化するが、10℃で混合後24時間でプラトーに到達することを明らかに示している。
この表はまた、果物調製品のアカシアガム含有量が高いと、複素粘性率の増大が大きくなるが、その差は比較的小さい (約30 Pa前後) が、系統的に整然と現れる。従って、使用するグアーガムとアカシアガムとの比率は、最終製品のテクスチャーレベルを制御するための手段となる。
【0120】
全体的に、認められた粘稠度の増大は、水分85%のホワイトマスとの混合中における2種類のポリマー (グアーガムとアカシアガム)の浸透性膨潤により起こる。消化中も本食品は、食事中に摂取した流体 (例、飲み水) 並びに消化液 (唾液、胃液など) の両方により再び希釈される。この希釈によって、今度は、上記2種類のポリマーが個々に完全に水和するまで浸透性膨潤を生じ、均質な相が得られる。この膨潤は粘度増大を伴い、この粘度増大は希釈による粘度低下を部分的に相殺するので、最終的な製品の粘度は実施例4に示すように、希釈によりほとんど影響を受けない。
【0121】
本発明の別の利点は、最終製品における高いグアー含有量により生じた高粘度が消化中も保持されることである。
この結果を実証するため、消化中に繊維が生ずる粘度を評価するためのin vitro試験を考案した。この試験は胃内段階と次に腸内段階とを含む。
【0122】
試験の工程は次の通りである:
1) 繊維を含有する最終製品をます37℃に30分間加熱する (工程1)、
2) 次いで4N HCl溶液を用いてpH2まで酸性化する (工程2)、
3) 10分間の連続撹拌後に、粉末形態のSigma P7000ペプシン1.25重量%を添加して、ヨーグルトのタンパク質ミクロゲルを加水分解する (工程3)、
4) 最終製品について胃が半分空になる時間に対応する35分が経過してから、濃 4N 水酸化ナトリウム (NaOH) 溶液を用いてpHを6に上げる (小腸のpHに対応する) (工程4)、
5) 10分間撹拌してから、0.5重量%の粉末パンクレアチンSigma P7545を添加する (工程5)。パンクレアチンは、プロテアーゼ類、リパーゼ類及びアミラーゼ類を含む種々の酵素を含有する。撹拌を10分間続ける。
【0123】
上記各工程において、サンプルを採取し、その粘度をAnton Paar社製Physica MCR300レオメータを用いて測定する。3分間で1から100 s-1の間の増大、次に3分間で100から1 s-1の間の低下で剪断速度を幾何級数的に変化させて流れ曲線をプロットする。
【0124】
これらの流れ曲線を次の2レベルで解析する:
・定性的解析:流れ曲線の形状は、製品中の粘度発生成分についての情報を与える。得られた典型的な結果は、工程1では高度にレオ流体化性(rheofluidifying)及びチキソトロピー性挙動であり、これらの挙動はタンパク質ミクロゲルの可逆的配向 (レオ流体化性に対して) 及び部分的不可逆的分解 (チキソトロピー性に対して) に原因を求めることができる。工程5では、かなり強いポリマー溶液型の挙動が観察され、剪断速度が低いとニュートニアンプラトーを示し、剪断速度がより高くなるとレオ流体化性を示す。
【0125】
・定量的解析:小腸内の食物塊が受ける剪断を表す10 s-1の剪断速度での粘度の数値を流れ曲線から抽出する。
1例として、図7は、低脂肪の撹拌型ヨーグルトであるTaillefine(登録商標) Brasse Natureと、同じヨーグルトに天然グアーガム5重量%とアカシアガム10重量%とを含有する果物調製品を混合した混合物とを用いて得られたin vitro試験結果を示す。この最終製品中のホワイトマス (=ヨーグルト) と果物調製品の割合は、それぞれ80重量%と20重量%であり、グアーガムとアカシアガムガムの最終製品中の含有量はそれぞれ1重量%及び2重量%である。
【0126】
・2種類のヨーグルトの粘度は、どちらもpH2への酸性化 (工程2) まではそれほど変化しない。
・一方、ペプシン添加 (工程3) の後、撹拌型ヨーグルトは、多量のプロテアーゼの添加によるタンパク質ミクロゲルの構造崩壊に起因する著しい粘度低下を示す。グアーを含有するヨーグルトについては、この粘度低下は標準的なヨーグルトよりずっと小さい。
【0127】
・pH6に戻ると (工程4)、Taillefine Brasse Natureヨーグルトは著しい粘度低下を生じ、これは等電pHより高くなってしまったpHでのタンパク質の再可溶化に原因を求めることができる。工程3と同様に、グアー/アカシア混合物を含有するヨーグルトの方はわずかな粘度低下しか認められない。
【0128】
・パンクレアチンの添加 (工程5) は粘度変化を生じない。二つの製品はどちらも複雑な糖質や脂質 (それらのテクスチャーへの寄与がこの工程において粘度に影響を及ぼす) を含有していないからである。この工程は腸内での粘度の大きな差を示している。10 s-1での見かけ粘度は、Taillefine Brasse Natureヨーグルトでは4.7×10-3 Pa.sであるのに対し、天然グアーガム1重量%とアカシアガム2重量%とを (最終製品中に) 含有するように果物調製品を混合した同じホワイトマス (ヨーグルト) では1.6 Pa.sまで増大する。
【0129】
従って、このin vitro試験は、本発明により、消化中に標準的なヨーグルトよりずっと高い (本例では340倍の) 粘度を生ずるヨーグルトを最終的に得ることができることを確証する。
【0130】
実施例4:満腹性効果を持つフルーツピューレ
本発明に従ってかなりの量のグアーガムを含有するフルーツピューレを調製することができる。処方の1例は次の通りである:
濃縮 (3倍) リンゴピューレ 23%
ブラックカラントピューレ 12%
糖 4%
アカシアガム 7.35%
グアーガム 2.5%
小麦繊維 0.15%
水 51%
(注) 上記小麦繊維は、アカシアガム90%と小麦繊維10%とからなる市販製品Equacia (登録商標) を用いることにより含有させる。
【0131】
製造方法:
工程1:アカシアガム、Equacia、グアーガム及び水を混合する
工程2:濃縮リンゴピューレとブラックカラントピューレを加える
工程3:加熱する (90℃で5分間)
工程4:冷却してパッケージングする。
【0132】
このようにして、パッケージから吸いこみにより摂取できる十分な流動性を有するフルーツピューレ製品が得られる。栄養分組成を市販のフルーツピューレと比較すると次表の通りである。
【0133】
【表3】

【0134】
製品の粘度 (前と同様に10 s-1での) を最初の製品と希釈 (100gの製品に水200gを添加) 後の製品について測定した結果は次の通りである。
【0135】
【表4】

【0136】
上の表の右側の欄は希釈による粘度低下の比率を示す。本発明に係る満腹性ピューレは粘度が6.7倍しか低下しない (粘度が1/6.7に低下)のに対し、市販のピューレは800倍の粘度低下率を示す。
【0137】
従って、本発明に係る三元系混合物は希釈に起因する粘度低下を高度に低減できるようである。
消化も,食事中にとる水分の摂取、唾液、胃液などによる食物の希釈を伴う。本発明に記載した繊維混合物の前述した特異的な挙動を考慮すると、粘度は消化中により長く保持され、それにより本食品に満腹性が付与される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥抽出物分が食品全重量に対して30重量%以下、有利には20重量%以下であり、食品全重量に対して1〜24重量%の繊維を含有する安定な流動性又は半流動性の食品であって、前記繊維が下記A〜Cの混合物からなることを特徴とする食品:
A)食品全重量に対して0.4〜5重量%の量の粘性化性水溶性多糖繊維、
B)食品全重量に対して0.8〜20重量%の量の、平均分子量3×105〜3×106g/molで、水溶液の固有粘度が0.3dl/gより低い、非粘性化性の水溶性繊維、
C)食品全重量に対して0.04〜0.6重量%の非水溶性セルロース繊維。
【請求項2】
前記粘性化性水溶性多糖繊維が天然の植物起源のものであり、有利にはカロウバガム、コロハ種子、コンニャクグルコマンナン、タラガム、燕麦及び大麦β−グルカン類、グアーガム、ペクチン、並びに柑橘果肉繊維の中から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
粘性化性水溶性多糖繊維がグアーガム、カロウバガム、コンニャクグルコマンナン、並びに燕麦もしくは大麦β−グルカン類、又はそれらの混合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
前記非粘性化性水溶性多糖繊維が、アカシアガム、水溶性大豆もしくはリンゴ繊維、又はそれらの混合物の中から選ばれ、有利にはアカシアガム及び水溶性リンゴ繊維の中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
前記非水溶性セルロース繊維が小麦、綿もしくは木材繊維又はそれらの混合物であり、、有利には小麦繊維であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
消化条件下での粘度が0.2Pa.sより大であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の食品。
【請求項7】
生の乳製品、植物汁、飲料及びそれらの混合物の中から選ばれ、有利には生の乳製品、果汁及び/もしくは野菜汁、フレーバーウォーター、並びにフルーツピューレの中から選ばれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の食品。
【請求項8】
少なくとも4℃で4週間、有利には室温で12カ月の間安定であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の食品。
【請求項9】
食品が果物を含んだ生の乳製品であって、各繊維の重量含有量が該食品の全重量に対する%で次の通りであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の食品:
A1)0.4〜2重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B1)0.8〜8%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C1)0.04〜0.25%の非水溶性セルロース繊維。
【請求項10】
ヨーグルト、ヨーグルト飲料、フロマージュ・フレ、及び発酵乳の中から選ばれることを特徴とする.請求項7〜9のいずれかに記載の生の乳製品。
【請求項11】
低脂肪かつ低糖であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の生の乳製品。
【請求項12】
生の乳製品の全重量に対して2〜10重量%、有利には4〜7重量%のタンパク質を含有することを特徴とする、請求項7〜11のいずれかに記載の生の乳製品。
【請求項13】
果物を含有することを特徴とする、請求項7〜12のいずれかに記載の生の乳製品。
【請求項14】
下記成分を含有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のフルーツピューレ:
A2)ピューレの全重量に対して1〜5重量%、有利には2.5重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B2)ピューレの全重量に対して2〜20重量%、有利には7.4重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C2)ピューレの全重量に対して0.05〜0.6重量%、有利には0.15重量%の非水溶性セルロース繊維。
【請求項15】
下記工程を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の流動性又は半流動性食品の製造方法:
a)請求項1〜5のいずれかに記載されているような繊維を初期母材に添加し、そして
b)得られた生成物を混合する。
【請求項16】
工程(a)の前に、下記操作により非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維中に分散させる工程(α)を含む、請求項15に記載の製造方法:
・α1)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に共乾燥する、又は
・α2)非水溶性セルロース繊維を非粘性化性水溶性多糖繊維と一緒に有利には104-1の、強い剪断下で混合する、又は
・α3)非水溶性セルロース繊維と非粘性化性水溶性多糖繊維との混合物を、有利には少なくとも50barの、加圧下でホモジナイズする。
【請求項17】
工程(a)で添加された繊維が、有利には果物調製品及びシロップの中から選ばれる、中間調製品の形態であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
有利には流動性又は半流動性食品に使用するための、下記成分を含有することを特徴とする中間調製品:
A3)中間調製品の全重量に対して2〜10重量%の粘性化性水溶性多糖繊維、
B3)中間調製品の全重量に対して4〜40重量%の非粘性化性水溶性多糖繊維、及び
C3)中間調製品の全重量に対して0.2〜1.25重量%の非水溶性セルロース繊維。
【請求項19】
請求項18に記載の中間調製品の流動性又は半流動性食品、有利には生の乳製品における使用。
【請求項20】
下記の引き続く工程を含む、請求項18に記載の中間調製品の製造方法:
・粉末形態の上記3種類の繊維を混合し、
・この粉末混合物を撹拌下に水中に分散させ、
・場合により、この分散液に果物、糖、着色料、香料を添加し、
・こうして得られた調製品をパスチャライズ熱処理に付し、
・こうして得られた中間調製品を冷却し、
・この中間調製品を低温容器内で保存する。
【請求項21】
胃膨満感の増大、空腹感の開始の遅延、及び/又は人の体重管理のための満腹性食品としての請求項1〜14のいずれかに記載の食品の非治療目的での使用。
【請求項22】
人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ食事後の人の血糖及びインスリン血症応答を遅らせる機能性食品としての請求項1〜14のいずれかに記載の食品の非治療目的での使用。
【請求項23】
循環血中コレステロール濃度を低減させる機能性食品としての請求項1〜14のいずれかに記載の食品の非治療目的での使用。
【請求項24】
薬用製品として使用するための請求項1〜14のいずれかに記載の食品。
【請求項25】
人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ食事後の人の血糖及びインスリン血症反応を遅らせて、それによりメタボリックシンドロームの徴候発症を防止する機能性食品として使用するための請求項24に記載の食品。
【請求項26】
人の循環血中コレステロール濃度を低減させ、かつ心臓血管不全に関する徴候発症を防止する機能性食品として使用するための請求項24に記載の食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−501940(P2011−501940A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513929(P2010−513929)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058246
【国際公開番号】WO2009/003931
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(506375923)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】