説明

特定の食品のための成分としてのアルテルナンの使用

第一の発明は、酸性食品のための成分としてのアルテルナンの使用及びアルテルナンを成分として含む食品に関する。第二の発明は、食品組成物における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用及びアルテルナンを成分として含む食品であって、その製造中に加熱ステップに付されたものである食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の発明
第一の発明は、酸性食品のための成分としてのアルテルナンの使用及びアルテルナンを成分として含む酸性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテルナン多糖又はオリゴ糖はグルコース単位で構成されている。グルコース単位は、α−1,3−及びα−1,6−グリコシド結合を介して互いに連結し、それら二つのタイプの結合は主に交互に出現する。
【0003】
アルテルナンオリゴ糖類は前生物的成分(prebiotics)として記載されている。米国特許第7,182,954号は、スクロースと様々な受容体糖とのアルテルナンスクラーゼ酵素触媒反応によって製造されるオリゴ糖類が、腸内細菌病原体を抑制するための前生物的成分として有効であることを開示している。これらのオリゴ糖類の一つ以上を有益菌(たとえば乳酸菌、ビフィズス菌)の生育を促進するのに有効な量で含む組成物によって動物を処理することにより、腸病原性細菌の集団を実質的に減らす又は抑制することができる。
【0004】
WO2006088884公開公報は、アルテルナンオリゴ糖類を含む実質的に透明な低血糖シロップ(LGS)を製造する方法を提供している。これらのシロップは、相対的に低い血糖症指数を有し、さらには、透明性の増大が望まれる用途において有用である。このような性質は食品組成において特に有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、酸性食品、特に酸性飲料の場合に当てはまるような低pH環境においてその有益な性質を保持する前生物的食品成分の必要性がなおも存在する。
【0006】
したがって、第一の発明の目的は、食品のためのpH安定性前生物的成分及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分を提供することである。
【0007】
第一の発明のさらなる目的は、食品は高温で処理されることが多いため、酸性食品のためのpH及び温度安定性プレバイオティクス及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、酸性食品のための成分としてのアルテルナンの使用に関する。特に、アルテルナンは、酸性食品のための抗分解成分として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アルテルナンはプレバイオティクス性を有すると考えられる(Lopez-Munguia et al Enzyme Microb, Technol. 15 (1993))。他の有益な性質が記載されている。US5,702,942及びUS5,789,209によると、アルテルナンは、アラビアゴム、マルトデキストリン又はポリデキストロースの特定の機能特性に似る特有の性質を有する(G. L. Cote, Carbohydrate Polymers 19:249-252 (1992))。そのうえ、US5,702,942及びUS5,789,209号によると、アルテルナンは、食品及び化粧品における低粘度充填剤及び増量剤として潜在的な工業的用途を有して、ノンカロリー炭水化物系可溶性食品添加物としての潜在的価値を有する。
【0010】
第一の発明において、アルテルナンは、酸性環境において分解せず、したがって、酸性食品、特に酸性飲料に加えられたとき、上述の性質を保持することが示されている。同様に、アルテルナン分子からグルコースが放出されないため、アルテルナンの低血糖性及び可溶性繊維性が酸性食品中で保持される。
【0011】
第一の発明の語「アルテルナン」は、アルテルナン多糖及びアルテルナンオリゴ糖を包含し、両タイプのアルテルナンは、以下さらに定義するように、分子量が異なる。
【0012】
第一の発明のアルテルナンは、グルコース単位で構成されたサッカリドである。グルコース単位は、α−1,3−及びα−1,6−グリコシド結合を介して互いに連結し、それら二つのタイプの結合は主に交互に出現する。アルテルナンは分枝を含むことができる(Seymour et al., Carbohydrate Research 74, (1979), 41-62)。
【0013】
第一の発明の定義によるアルテルナン多糖は、3,000g/molを超える、好ましくは5,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。もう一つの実施態様において、アルテルナン多糖は、10,000,000g/mol〜60,000,000g/molの範囲(GPC MALLSによる測定)、より好ましくは12,000,000g/mol〜50,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する。特別な実施態様において、アルテルナン多糖は、WO00/47727に記載されているようにLeuconostoc Mesenteroidesに由来するアルテルナンスクラーゼを用いて製造され、33,000,000g/mol〜60,000,000g/molの範囲(GPC MALLSによる測定)、より好ましくは33,000,000g/mol〜50,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを示す。さらに別の特別な実施態様において、アルテルナン多糖は、PCT/EP2008/051760に記載されているように切断型アルテルナンスクラーゼ酵素を用いて製造され、12,000,000g/mol〜30,000,000g/molの範囲(GPC MALLS)、より好ましくは14,000,000g/mol〜28,000,000g/molの範囲、さらに好ましくは16,000,000g/mol〜26,000,000g/molの範囲、もっとも好ましくは18,000,000g/mol〜23,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを示す。切断型アルテルナンスクラーゼ酵素、それからアルテルナン多糖を製造する方法及びアルテルナン多糖そのものは、参照によって本明細書に取り込まれるPCT/EP2008/051760に記載されている。
【0014】
第一の発明の定義におけるアルテルナンオリゴ糖の重量平均分子量Mwは、3,000g/mol以下、好ましくは2,500g/mol以下、より好ましくは2,000g/mol以下、さらに好ましくは1,500g/mol以下、もっとも好ましくは1,300g/mol以下である(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。したがって、本発明のアルテルナン多糖の重量平均重合度DPwは、18.5以下、好ましくは15.4以下、より好ましくは12.3以下、さらに好ましくは9.3以下、もっとも好ましくは8.0以下である(DPw=Mw/162g/mol、162g/mol=モノマーグルコース単位の分子量)。もう一つの実施態様において、アルテルナン多糖の重量平均分子量Mwの下限は800g/molであり(DPw=4.9)、アルテルナンオリゴ糖のMwは、800g/mol〜3,000g/mol、好ましくは800g/mol〜2,500g/mol、より好ましくは800g/mol〜2,000g/mol、さらに好ましくは800g/mol〜1,500g/mol、もっとも好ましくは800g/mol〜1,300g/molの範囲である(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。
【0015】
第一の発明のアルテルナンオリゴ糖は、3〜30の範囲の重合度を有するアルテルナン分子からなり、30よりも高いDPの分子が少量で存在するかもしれない。もう一つの実施態様において、本発明のアルテルナンオリゴ糖は、3〜26の範囲、好ましくは3〜20の範囲、より好ましくは3〜18の範囲、さらに好ましくは3〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲、もっとも好ましくは3〜10の範囲の重合度(DP)を有する分子からなり、前記上限よりも高いDPの分子が少量で存在するかもしれない。
【0016】
語「少量」とは、アルテルナンオリゴ糖の総重量に基づいて5.0重量%未満、好ましくは3.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、さらに好ましくは1.0重量%未満、もっとも好ましくは0.5重量%未満の量をいう。
【0017】
第一の発明において、単数形の語「アルテルナン多糖」は、一つの重合度(DP)の分子のみを有する単分散アルテルナン多糖及び異なる重合度の分子を有する多分散アルテルナン多糖の両方を指す。
【0018】
第一の発明において、単数形の語「アルテルナンオリゴ糖」は、一つの重合度(DP)の分子のみを有する単分散アルテルナンオリゴ糖及び異なる重合度の分子を有する多分散アルテルナンオリゴ糖の両方を指す。
【0019】
アルテルナンオリゴ糖類は、技術水準から周知であり、たとえば、その製造方法とともに、参照によって本明細書に取り込まれるWO00/47727、US7,182,954、WO2006/088884及びCote and Robyt 1982, Carbohydrate Research, 111:127-142に開示されている。アルテルナンオリゴ糖類は、以下に説明するように、スクロースと受容体分子との反応によって、又は受容体分子なしで製造することができる。
【0020】
アルテルナンオリゴ糖類は、アルテルナン多糖類から、適切な条件下、アルテルナン多糖類の分解によって製造することができる。分解は、たとえば、アルテルナン多糖類の酵素的分解又は酸性条件下での、好ましくは加熱による分解であることができる。
【0021】
アルテルナンオリゴ糖類はまた、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造することもできる。
【0022】
アルテルナンオリゴ糖類は、
a)スクロース含有溶液を、スクロースをアルテルナンオリゴ糖及びフルクトースに転換することができる条件下、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及び受容体分子と接触させ、
b)アルテルナンオリゴ糖及びフルクトースを溶液から単離する
方法によって調製することができる。
【0023】
反応は、室温ないし37℃及び約4.7〜7のpHで実施することができ、スクロースが実質的に消費されるまで進行させることができる。詳細な反応条件は、WO00/47727、US7,182,954及び下記の実施例に開示されている。生成物は通常、シロップとして得られ、それを、さらにすなわち膜ろ過によって精製、及び/又は、乾燥させたりしてもよい。
【0024】
受容体分子とは、アルテルナンスクラーゼが連鎖延長反応を触媒することができるところの分子をいうものと理解される。反応の開始時に反応混合物に加えることができる受容体は、好ましくは炭水化物又は炭水化物誘導体である。外部受容体の使用が低分子量アルテルナンオリゴ糖類の製造を生じさせる。炭水化物受容体は、好ましくは、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンからなる群より選択されるサッカリドである。他の好ましい受容体分子は、グルコース、ゲンチオビオース、ラフィノース、メリビオース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖、テアンデロース、コジビオース、グルコシルトレハロース、セロビオース、マルトテトラオース、ニゲロース、ラクトース、パノース又はそれらの混合物である。
【0025】
選択される特定の受容体に依存して、グルコシル単位は一般に、α(1,6)結合を介して、又はα(1,6)結合がすでに存在する場合には、α(1,3)結合を介して加えられる。外部受容体の非存在下で調製することができるアルテルナンよりも低い分子量を有するアルテルナンオリゴ糖類が得られる。反応は通常、異なる重合度(DP)を有するオリゴ糖類の混合物を製造する。スクロースと受容体分子との反応によってアルテルナンオリゴ糖類が製造されるならば、重合度(DP)は、(元の受容体分子に加えられるD−グルコシル単位の数)+(元の受容体オリゴ糖中の単糖単位の数)と定義される。
【0026】
重合度は、スクロース及び受容体オリゴ糖の濃度及び相対比とともに変化してよい。反応生成物は一般に、異なる重合度を有するオリゴ糖類の混合物で構成される。相対的に高いスクロース:受容体比では、より多くのグルコシル単位がグルカンに移され、より高い重合度の生成物が得られる(すなわち、生成物中の高DPオリゴ糖類の相対量が増す)。対照的に、低いスクロース:受容体比では、主な反応生成物は、1個のグルコシル単位が受容体に移される結果として生じる生成物である。このように、スクロース:受容体比を変化させることにより、所望の重合度のオリゴ糖類の収率を最適化することができる。所望の重合度のための正確なスクロース:受容体比は、具体的な受容体オリゴ糖とともに変化し、通例の実験によって容易に決定することができる。
【0027】
さらに別の実施態様において、アルテルナンオリゴ糖類は、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、受容体分子を使用せずに、スクロースの反応によって製造することができる。
【0028】
本明細書で使用するためのアルテルナンスクラーゼは、たとえばWO00/47727に開示されているように、多様な微生物、好ましくはLeuconostocの株、特にL. mesenteroidesの株から得ることができる。一つの実施態様において、酵素は、参照によって本明細書に取り込まれるLeathersらの米国特許第5,702,942号によって記載されているような、デキストランスクラーゼに対してアルテルナンスクラーゼを高い割合で分泌する株によって産生される。もう一つの実施態様において、アルテルナンオリゴ糖類を製造するために使用できるアルテルナンスクラーゼ酵素は、Leuconostoc mesenteroides株NRRL B 1355、23185、23186、23188、23311、21297、30821、30894を含む。これらの酵素はさらに、Gilles Joucla, Doctoral Dissertation, Ingenier INSA, Toulouse, France, 2003に記載されているように、さらにクローン化し、遺伝子組み換え的に発現させることもできる。
【0029】
アルテルナンスクラーゼの産生は、従来技術を使用して、Leathersら又は下記の実施例に記載されているような、酵素の生育及び産生を促進するのに有効である好気条件下、上述した微生物のいずれかを培養することによって実施することができる。培養ののち、従来具術を使用して、たとえば遠心分離又はろ過によって、酵素を微生物から単離又は分離することができる。
【0030】
第一の発明における語「抗分解性」とは、アルテルナンの重合度が、pH3の酸性環境中、試料が室温(20℃)で貯蔵された場合、少なくとも3週間にわたり、(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)計測しうる程度には低下しないことをいう。
【0031】
しかし、アルテルナンオリゴ糖はさらに安定であることがわかった。アルテルナンオリゴ糖類の重合度は、pH6以下、好ましくはpH3以下の酸性環境中、試料が32℃の温度で貯蔵された場合、少なくとも8週間にわたり、(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)計測しうる程度には低下しない。
【0032】
アルテルナンの主要な分解生成物はグルコースであり、分解機構は通常、アルテルナン鎖の加水分解によって起こる。その抗分解性のおかげで、アルテルナンは、酸性食品のための抗分解性前生物的成分及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分としてすばらしく適している。そのうえ、その抗分解性のおかげで、従来技術で記載されているアルテルナンの他の有益な性質すべてが保持される。
【0033】
本明細書で使用される語「食品」は飲料をも包含し、語「酸性食品」は酸性飲料をも包含する。酸性食品とは、7未満のpHを有する食品と定義される。酸性食品は、一つの実施態様においては、6以下のpH、より好ましくは3.5以下のpH、さらに好ましくは<3(3未満)のpHを有する。さらに別の実施態様において、酸性食品は、1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1.5〜3.5の範囲のpHを有する。もう一つの有利なpH範囲は3〜6及び1〜<3である。
【0034】
特殊な実施態様において、酸性食品は酸性飲料であり、その飲料における成分としてアルテルナンオリゴ糖が使用される。酸性飲料は、好ましくは6以下のpH、より好ましくは3.5以下のpH、さらに好ましくは<3(3未満)のpHを有する。さらに別の実施態様において、酸性飲料は、1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1.5〜3.5の範囲のpHを有する。もう一つの有利なpH範囲は3〜6及び1〜<3である。
【0035】
アルテルナンのもう一つの有益な性質は、酸性環境中、かつ高温における抗分解性である。
【0036】
第一の発明において、アルテルナン多糖は、pH3〜4の水性環境中、60℃の温度で1時間加熱されても、わずかな量しか分解しないことが示されている。アルテルナン多糖は、これらの条件下、70℃でさえ、わずかしか分解せずに許容しうる安定性を有すると考えられる。したがって、アルテルナンポリマーは、pHの下限としてpH3を有する酸性食品のための抗分解成分として適しており、それは60〜70℃程度の温度で加熱工程に付される。分解は、アルテルナンポリマーの分解生成物としての、加熱試料中のグルコースの増加によって(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)検出される。
【0037】
アルテルナンオリゴ糖はさらに安定であることがわかった。第一の発明において、アルテルナンオリゴ糖は、pH3以上の水性環境中、120℃程度の温度で1時間加熱されても、計測しうる程度には分解しないことが示されている。アルテルナンオリゴ糖は、pH1.5の水性環境中、95℃程度の温度で1時間加熱されても、計測しうる程度には分解しない。これに関して、計測しうる程度の分解がないということは、アルテルナンオリゴマーの分解生成物としての、加熱試料中のグルコースの増加が(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)検出されないことを意味する。
【0038】
酸性飲料は製造工程で高めの温度に加熱されることがあるため、アルテルナンオリゴ糖のこの性質は特に(非限定的に)酸性飲料の製造工程において有益である。一部の飲料製造工程は熱間充填を要する。これは、たとえば、飲料を80〜90℃に加熱し、その温度で約10分間保持し、約65℃まで冷ましたのち、ボトル詰めすることを含む。アルテルナンオリゴ糖は、眼に見える影響を受けることなく少なくとも約10分間この酷熱に耐えることができる。
【0039】
上記発見に基づき、第一の発明はまた、製造中に加熱工程に付される酸性食品のための成分としてのアルテルナン(アルテルナンオリゴ糖又はアルテルナン多糖)の使用に関する。
【0040】
第一の発明の一つの実施態様において、食品は、少なくとも60℃の温度で加熱工程に付される。
【0041】
もう一つの実施態様において、第一の発明は、酸性食品のための成分としてのアルテルナンオリゴ糖の使用に関しその酸性食品は60〜150℃、より好ましくは75〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃、もっとも好ましくは80〜120℃の温度で加熱ステップに付される。さらに別の実施態様において、加熱ステップは60〜120℃で実施される。
【0042】
例示的な加熱時間は、5〜3600秒又は5〜1800秒、特に5〜300秒、より好ましくは5〜200秒、さらに好ましくは5〜100秒、特に好ましくは5〜60秒、もっとも好ましくは10〜30秒であることができる。これらの時間それぞれを上記で指定の時間それぞれと組み合わせることができる。
【0043】
周知の加熱法として、乳製品、ミルク、アイスクリーム、飲料、ビール、缶詰食品、ソース及びスープの製造で一般に使用される低温殺菌法がある。低温殺菌工程は通常、約60℃〜約100℃、好ましくは約75℃〜約85℃の温度で約10秒〜約30分、好ましくは少なくとも約25秒の時間実施される。低温殺菌法は、高温短時間(HTST)処理又は低温長時間(LTLT)処理のいずれによって実施することもできる。
【0044】
他の一般的な加熱方法としては、滅菌処理及び超高温(UHT)処理がある。第一の発明において、前記方法は、当業者に公知のやり方で実施される。UHT処理は一般に、90〜150℃、より好ましくは95〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃、もっとも好ましくは110℃〜150℃の温度で実施され、UHT処理期間は一般に、5〜300秒、より好ましくは5〜200秒、さらに好ましくは5〜100秒、特に好ましくは5〜60秒、もっとも好ましくは10〜30秒である。
【0045】
本発明はさらに、アルテルナンを成分として含む酸性食品に関する。アルテルナンは、抗分解性プレバイオティクス及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分として使用することができる。好ましい酸性食品は、飲料、果実、野菜、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、ケーキ、インスタント食品、ヨーグルト及びバターミルクのような乳製品、ならびに酸性飲料から選択される。
【0046】
第一の発明の酸性食品は、すでに上記で定めたpHを有することができる。そのうえ、第一の発明の酸性食品は、その製造中に加熱工程に付される食品であることもできる。
【0047】
第一の発明の一つの実施態様において、酸性食品は、少なくとも60℃の温度で加熱工程に付される。第一の発明の他の実施態様において、酸性食品は、60〜150℃、より好ましくは75〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃、もっとも好ましくは80〜120℃の温度で加熱工程に付される。さらに別の実施態様において、加熱工程は60〜120℃で実施される。加熱方法及び加熱時間はすでに記載されている。
【0048】
アルテルナンは、本発明の食品に、食品の総重量に基づいて0.1〜20重量%の量、より好ましくは0.1〜10重量%の量、さらに好ましくは0.1〜5重量%の量で加えることができる。
【0049】
酸性食品は、一つの実施態様において、上記の範囲のpHを有する酸性飲料が、アルテルナンオリゴ糖を成分として含有する。飲料は、好ましくは、果汁、エネルギードリンク、レモネード、シャーベット、ソーダ、ソフトドリンク及びフレーバー水から選択される。
【0050】
本発明の飲料は透明な飲料であることもできる。その抗分解性の他に、アルテルナンオリゴ糖のさらなる有益な性質として、プレバイオティクス及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分として透明な飲料組成物に加えられた場合の、透明な飲料の透明性を保持する能力がある。透明性は、WO2006/088884に記載されている試験手順を使用して測定することもできるし、下記の実施例に示すような定性的基準で目視的に評価することもできる。
【0051】
もう一つの態様において、本発明は、上記のような酸性飲料を製造する方法を提供する。飲料を製造する一つの方法においては、アルテルナンオリゴ糖を他の成分とブレンドしてプレミックスを形成したのち、それを飲料の水ベースに加える。アルテルナンオリゴ糖は、一つ以上のさらなる成分、たとえばビタミン、ミネラル、糖アルコール、強力甘味料、香料、香味増強剤、酸、たとえばクエン酸又はリンゴ酸及び従来の甘味料とブレンドすることができる。もう一つの実施態様においては、アルテルナンオリゴ糖だけを、すでにできている飲料に加える。原則として、当業者に公知である飲料のためのすべての製造方法を制限なく用いることができる。
【0052】
第一の発明の酸性食品は、一つの実施態様において、WO2006/088884公開公報に開示されているような、食品、シロップ又はアルテルナンオリゴ糖類(オリゴアルテルナンとも呼ばれる)を含まず、酸性食品のための成分としてのアルテルナンの使用は、一つの実施態様において、WO2006/088884公開公報に開示されているようなシロップ又はアルテルナンオリゴ糖類(オリゴアルテルナンとも呼ばれる)の使用を含まない。
【0053】
第二の発明
第二の発明は、食品における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用、食品組成物への成分としてのアルテルナンの添加と加熱工程とを含む食品を製造する方法ならびにアルテルナンを成分として含む食品であって、その製造中に加熱工程に付されたものである食品に関する。
【0054】
食物繊維のような多くの栄養成分は熱に弱い。食物繊維は食物の重要な成分であるが、多くの消費者にとって食物繊維は口に合わない。難消化性デンプン(RS)のような一部の食物繊維は多くの消費者にとっていっそう口に合わないが、過酷な加工条件下で高い食物繊維含量を保持することができず、理論的に予測されるよりも少ない食物繊維しか含まない製品を生じさせる。多くの食品は、過酷な加工条件、たとえばプリン及びヨーグルトをはじめとする高水分食品組成物の均質化及びさらには70℃以上の温度での低温殺菌、温度が長期間121℃であるレトルト処理及び/又はスナック菓子及び朝食シリアルをはじめとする低水分食品の押出し成形に付される。過酷な加工は、数多くの一般的な食品組成物を製造するために使用されているため、これが、そのような加工食品組成物における食物繊維の採用及び使用にとって大きな障害であった。
【0055】
US20070275123A1は、過酷な条件下で加工される食物組成物の食物繊維含量を増すための化工デンプンの使用を提案している。特定の化工デンプンを使用することにより、食品組成物は、過酷な加工を受けながらも実質的な食物繊維を保持することができる。さらには、US20070275123A1に記載されている化工デンプンは、一般に他の食物繊維供給源の添加の場合に伴う、食品組成物のきめ又は感覚刺激性に対するマイナスの効果を及ぼすことなく、食物繊維を提供する。
【0056】
全食物繊維含量を高く維持するために、代替の繊維供給源が使用されてきた。しかし、栄養目的のための熱安定性機能成分の必要性がなおも存在する。
【0057】
驚くことに、第二の発明において、アルテルナンを成分として使用することにより、成分の熱分解を回避する一方で,食品組成物をより過酷な加工条件に付すことができるということがわかった。
【0058】
第二の発明は、食品組成物における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用に関する。
【0059】
第二の発明はさらに、食品の製造方法における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用、ならびに食品組成物への成分としてのアルテルナンの添加及び加熱ステップを含む食品を製造する方法に関する。
【0060】
アルテルナンは前生物的性質を有すると考えられる(Lopez-Munguia et al Enzyme Microb, Technol. 15 (1993))。他の有益な性質が記載されている。US5,702,942及びUS5,789,209によると、アルテルナンは、特有の性質を有し、それはアラビアゴム、マルトデキストリン又はポリデキストロースの特定の機能特性に似る(G. L. Cote, Carbohydrate Polymers 19:249-252 (1992))。そのうえ、US5,702,942及びUS5,789,209によると、アルテルナンは、食品及び化粧品における低粘度充填剤及び増量剤としての潜在的な工業的用途を有して、ノンカロリー炭水化物系可溶性食品繊維として価値がある。
【0061】
第二の発明において、アルテルナンは、高温下で安定であり、そのため、食品組成物又は加熱ステップを含む食品製造方法において熱安定性成分として使用された場合、上述した性質を保持することができることが示されている。同様に、アルテルナン分子からグルコースが放出されないため、アルテルナンの低血糖性及び可溶性繊維性が保持される。
【0062】
第二の発明の語「アルテルナン」は、アルテルナン多糖及びアルテルナンオリゴ糖を包含し、両タイプのアルテルナンは、以下さらに定義するように、分子量が異なる。
【0063】
第二の発明のアルテルナンは、グルコース単位で構成されたサッカリドである。グルコース単位は、α−1,3−及びα−1,6−グリコシド結合を介して互いに連結し、それら二つのタイプの結合は主に交互に出現する。アルテルナンは分枝を含むことができる(Seymour et al., Carbohydrate Research 74, (1979), 41-62)。
【0064】
第二の発明の定義によるアルテルナン多糖は、3,000g/molを超える、好ましくは5,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。もう一つの実施態様において、アルテルナン多糖は、10,000,000g/mol〜60,000,000g/molの範囲(GPC MALLSによる測定)、より好ましくは12,000,000g/mol〜50,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する。特別な実施態様において、アルテルナン多糖は、WO00/47727に記載されているようにLeuconostoc Mesenteroidesに由来するアルテルナンスクラーゼを用いて製造され、33,000,000g/mol〜60,000,000g/molの範囲(GPC MALLSによる測定)、より好ましくは33,000,000g/mol〜50,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを示す。さらに別の特別な実施態様において、アルテルナン多糖は、PCT/EP2008/051760に記載されているように切断型アルテルナンスクラーゼ酵素を用いて製造され、12,000,000g/mol〜30,000,000g/molの範囲(GPC MALLS)、より好ましくは14,000,000g/mol〜28,000,000g/molの範囲、さらに好ましくは16,000,000g/mol〜26,000,000g/molの範囲、もっとも好ましくは18,000,000g/mol〜23,000,000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを示す。切断型アルテルナンスクラーゼ酵素、それからアルテルナン多糖を製造する方法及びアルテルナン多糖そのものは、参照によって本明細書に取り込まれるPCT/EP2008/051760に記載されている。
【0065】
第二の発明の定義におけるアルテルナンオリゴ糖の重量平均分子量Mwは、3,000g/mol以下、好ましくは2,500g/mol以下、より好ましくは2,000g/mol以下、さらに好ましくは1,500g/mol以下、もっとも好ましくは1,300g/mol以下である(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。したがって、本発明のアルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度DPwは、18.5以下、好ましくは15.4以下、より好ましくは12.3以下、さらに好ましくは9.3以下、もっとも好ましくは8.0以下である(DPw=Mw/162g/mol、162g/mol=モノマーグルコース単位の分子量)。もう一つの実施態様において、アルテルナンオリゴ糖の重量平均分子量Mwの下限は800g/molであり(DPw=4.9)、アルテルナンオリゴ糖のMwは、800g/mol〜3,000g/mol、好ましくは800g/mol〜2,500g/mol、より好ましくは800g/mol〜2,000g/mol、さらに好ましくは800g/mol〜1,500g/mol、もっとも好ましくは800g/mol〜1,300g/molの範囲である(GPC RI又はGPC MALLSによる測定)。
【0066】
第二の発明のアルテルナンオリゴ糖は、3〜30の範囲の重合度を有するアルテルナン分子から主になり、30よりも高いDPの分子が少量で存在するかもしれない。もう一つの実施態様において、本発明のアルテルナンオリゴ糖は、3〜26の範囲、好ましくは3〜20の範囲、より好ましくは3〜18の範囲、さらに好ましくは3〜15の範囲、特に好ましくは3〜12の範囲、もっとも好ましくは3〜10の範囲の重合度(DP)を有する分子からなり、前記上限よりも高いDPの分子が少量で存在するかもしれない。
【0067】
語「少量」とは、アルテルナンオリゴ糖の総重量に基づいて5.0重量%未満、好ましくは3.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、さらに好ましくは1.0重量%未満、もっとも好ましくは0.5重量%未満の量をいう。
【0068】
第二の発明において、単数形の語「アルテルナン多糖」は、一つの重合度(DP)の分子のみを有する単分散アルテルナン多糖及び異なる重合度の分子を有する多分散アルテルナン多糖の両方を指す。
【0069】
第二の発明において、単数形の語「アルテルナンオリゴ糖」は、一つの重合度(DP)の分子のみを有する単分散アルテルナンオリゴ糖及び異なる重合度の分子を有する多分散アルテルナンオリゴ糖の両方を指す。
【0070】
アルテルナンオリゴ糖類は、技術水準から周知であり、たとえば、その製造方法とともに、参照によって第二の明細書に取り込まれるWO00/47727、US7,182,954、WO2006/088884及びCote and Robyt 1982, Carbohydrate Research, 111:127-142に開示されている。アルテルナンオリゴ糖類は、以下に説明するように、スクロースと受容体分子との反応によって、又は受容体分子なしで製造することができる。
【0071】
アルテルナンオリゴ糖類は、アルテルナン多糖類から、適切な条件下、アルテルナン多糖類の分解によって製造することができる。分解は、たとえば、アルテルナン多糖類の酵素的分解又は酸性条件下での、好ましくは加熱による分解であることができる。
【0072】
アルテルナンオリゴ糖類はまた、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造することもできる。
【0073】
アルテルナンオリゴ糖類は、
a)スクロース含有溶液を、スクロースをアルテルナンオリゴ糖及びフルクトースに転換することができる条件下、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及び受容体分子と接触させ、
b)アルテルナンオリゴ糖及びフルクトースを溶液から単離する
方法によって調製することができる。
【0074】
反応は、室温ないし37℃及び約4.7〜7のpHで実施することができ、スクロースが実質的に消費されるまで進行させることができる。詳細な反応条件は、WO00/47727、US7,182,954及び下記の実施例に開示されている。生成物は通常、シロップとして得られ、それを、すなわち膜ろ過によってさらに精製及び/又は乾燥してもよい。
【0075】
受容体分子とは、アルテルナンスクラーゼが連鎖延長反応を触媒することができるところの分子をいうものと理解される。反応の開始時に反応混合物に加えることができる受容体は、好ましくは炭水化物又は炭水化物誘導体である。外部受容体の使用が低分子量アルテルナンオリゴ糖類の製造を生じさせる。炭水化物受容体は、好ましくは、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンからなる群より選択されるサッカリドである。他の好ましい受容体分子は、グルコース、ゲンチオビオース、ラフィノース、メリビオース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖、テアンデロース、コジビオース、グルコシルトレハロース、セロビオース、マルトテトラオース、ニゲロース、ラクトース、パノース又はそれらの混合物である。
【0076】
選択される特定の受容体に依存して、グルコシル単位は一般に、α(1,6)結合を介して、又はα(1,6)結合がすでに存在する場合には、α(1,3)結合を介して加えられる。アルテルナンオリゴ糖類は、外部受容体の非存在下で調製することができるアルテルナンよりも低い分子量を有するものが得られる。反応は通常、異なる重合度(DP)を有するオリゴ糖類の混合物を製造する。アルテルナンオリゴ糖類がスクロースと受容体分子との反応によって製造されるならば、重合度(DP)は、元の受容体分子に加えられるD−グルコシル単位の数+元の受容体オリゴ糖中の単糖単位の数と定義される。
【0077】
重合度の範囲は、スクロース及び受容体オリゴ糖の濃度及び相対比とともに変化してよい。反応生成物は一般に、異なる重合度を有するオリゴ糖類の混合物で構成される。相対的に高いスクロース:受容体比では、より多くのグルコシル単位がグルカンに移され、より高い重合度の生成物が得られる(すなわち、生成物中の高DPオリゴ糖類の相対量が増す)。対照的に、低いスクロース:受容体比では、主な反応生成物は、1個のグルコシル単位が受容体に移される結果として生じる生成物である。このように、スクロース:受容体比を変化させることにより、所望の重合度のオリゴ糖類の収率を最適化することができる。所望の重合度のための正確なスクロース:受容体比は、具体的な受容体オリゴ糖とともに変化し、通例の実験によって容易に決定することができる。
【0078】
さらに別の実施態様において、アルテルナンオリゴ糖類は、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、受容体分子を使用せずに、スクロースの反応によって製造することができる。
【0079】
本明細書で使用するためのアルテルナンスクラーゼは、たとえばWO00/47727に開示されているように、多様な微生物、好ましくはLeuconostocの株、特にL. mesenteroidesの株から得ることができる。一つの実施態様において、酵素は、参照によって本明細書に取り込まれるLeathersらの米国特許第5,702,942号によって記載されているような、デキストランスクラーゼに対してアルテルナンスクラーゼを高い割合で分泌する株によって産生される。もう一つの実施態様において、アルテルナンオリゴ糖類を製造するために使用することができるアルテルナンスクラーゼ酵素は、Leuconostoc mesenteroides株NRRL B 1355、23185、23186、23188、23311、21297、30821、30894を含む。これらの酵素はさらに、Gilles Joucla, Doctoral Dissertation, Ingenier INSA, Toulouse, France, 2003に記載されているように、クローン化し、遺伝子組み換え的に発現させることもできる。
【0080】
アルテルナンスクラーゼの産生は、従来技術を使用して、Leathersら又は下記の実施例に記載されているような、酵素の生育及び産生を促進するのに有効である好気条件下、上述した微生物のいずれかを培養することによって実施することができる。培養ののち、従来具術を使用して、たとえば遠心分離又はろ過によって、酵素を微生物から単離又は分離することができる。
【0081】
第二の発明における語「熱安定性」とは、アルテルナンの重合度が、pH7で、120℃の温度で1時間加熱された場合、(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)計測しうる程度には低下しないことをいう。
【0082】
アルテルナンの主要な分解生成物はグルコースであり、分解機構は通常、アルテルナン鎖の加水分解によって起こる。その熱安定性のおかげで、アルテルナンは、製造中に加熱される食品のための、熱安定性前生物的成分及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分としてすばらしく適している。そのうえ、その熱安定性のおかげで、従来技術で記載されているアルテルナンの他の有益な性質すべてが保持される。
【0083】
上述したように、第二の発明は、食品組成物における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用に関する。食品組成物は、食品の製造工程又はその後で、たとえば、食品が消費前に消費者によって加熱されるとき、加熱工程に付されることができる。第一の意味、すなわち製造工程における加熱において、本発明はまた、食品組成物への成分としてのアルテルナンの添加及び加熱工程を含む、食品を製造する方法に関する。製造方法はさらに限定されない。第二の発明にしたがって、アルテルナンは、加熱工程を含む任意の食品製造方法で使用することができる。
【0084】
食品の製造工程における加熱の場合、加熱工程又はいくつかの加熱ステップの少なくとも一つは、食品組成物へのアルテルナンの添加ののち実施される。そうしなければ、アルテルナンは、第二の発明の意味における熱安定性成分の機能を果たさないであろう。
【0085】
製造方法又はその後における加熱工程は、50〜150℃、より好ましくは60〜150℃又は75〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃、もっとも好ましくは80〜120℃の温度で実施することができる。もう一つの実施態様において、加熱ステップは60〜120℃で実施される。
【0086】
例示的な加熱時間は、5〜3600秒又は5〜1800秒、特に5〜300秒、より好ましくは5〜200秒、さらに好ましくは5〜100秒、特に好ましくは5〜60秒、もっとも好ましくは10〜30秒であってよい。これらの時間それぞれを上記で指定の時間それぞれと組み合わせることができる。
【0087】
周知の加熱法として、乳製品、ミルク、アイスクリーム、飲料、ビール、缶詰食品、ソース及びスープの製造で一般に使用される低温殺菌法がある。低温殺菌工程は通常、約60℃〜約100℃、好ましくは約75℃〜約85℃の温度で約10秒〜約30分、好ましくは少なくとも約25秒の期間実施される。低温殺菌法は、高温短時間(HTST)処理又は低温長時間(LTLT)処理のいずれによって実施することもできる。
【0088】
他の一般的な加熱方法として、滅菌処理及び超高温(UHT)処理がある。第二の発明において、前記方法は、当業者に公知のやり方で実施される。UHT処理は一般に、90〜150℃、より好ましくは95〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃、もっとも好ましくは110℃〜150℃の温度で実施され、UHT処理期間は一般に、5〜300秒、より好ましくは5〜200秒、さらに好ましくは5〜100秒、特に好ましくは5〜60秒、もっとも好ましくは10〜30秒である。
【0089】
もう一つの態様において、第二の発明は、その製造中に加熱工程に付され、アルテルナンを成分として含む食品に関する。上記で説明したような加熱方法を適用することができる。本明細書で使用される語「食品」は飲料をも包含する。
【0090】
食品は、乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、プリン、飲料、ビール、ソース、スープ、レトルト食品、香辛料、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、クッキー、ケーキ、ビスケット、肉製品、押出し成形品、たとえばスナック菓子及びシリアル、パスタならびにインスタント食品から選択することができる。
【0091】
アルテルナンは、本発明の食品に対し、食品の総重量に基づいて0.1〜20重量%の量、より好ましくは0.1〜10重量%の量、さらに好ましくは0.1〜5重量%の量で加えることができる。
【0092】
第二の発明の非常に特別な実施態様において、食品は、その製造中に加熱工程に付され、アルテルナンを成分として含む酸性食品である。これは、酸性飲料の場合に特に当てはまる。何故なら、製造中に加熱ステップに付される多くの食品は、貴重な成分の分解をさらに促進する低いpHを有する。飲料はその工程、たとえば熱間充填工程で高めの温度に加熱されることが多いためである。他の酸性食品、たとえば乳製品は一般に低温殺菌ステップに付される。
【0093】
本明細書において、酸性食品とは、7未満のpHを有する食品と定義される。酸性食品は、6以下のpH、より好ましくは3.5以下のpH、さらに好ましくは<3(3未満)のpHを有することができる。さらに他の実施態様において、酸性食品は、1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1.5〜3.5の範囲のpHを有する。もう一つの有利なpH範囲は3〜6及び1〜<3である。
【0094】
酸性食品は、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、ケーキ、インスタント食品、乳製品、たとえばヨーグルト及びバターミルクならびに酸性飲料から選択することができる。
【0095】
特殊な実施態様において、酸性食品は酸性飲料である。酸性飲料は、6以下のpH、より好ましくは3.5以下のpH、さらに好ましくは<3(3未満)のpHを有することができる。さらに他の実施態様において、酸性飲料は、1〜6、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1.5〜3.5の範囲のpHを有する。もう一つの有利なpH範囲は3〜6及び1〜<3である。
【0096】
酸性飲料は、果汁、エネルギードリンク、レモネード、シャーベット、ソーダ、ソフトドリンク及びフレーバー水から選択することができる。
【0097】
第二の発明において、アルテルナン多糖は、pH3〜4の水性環境中、60℃の温度で1時間加熱されても、わずかな量しか分解しないことが示されている。アルテルナン多糖は、これらの条件下、70℃でさえ、わずかしか分解せずに許容しうる安定性を有すると考えられる。したがって、アルテルナンポリマーは、60〜70℃の加熱工程に付される、pHの下限としてpH3を有する酸性食品のための熱安定性成分として適している。分解は、アルテルナンポリマーの分解生成物としての、加熱試料中のグルコースの増加によって(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)検出される。
【0098】
さらに酸性である食品、たとえば一部の酸性飲料において、好ましい成分はアルテルナンオリゴ糖である。第二の発明において、アルテルナンオリゴ糖は、pH3以上の水性環境中、120℃の温度で1時間加熱されても、計測しうる程度には分解しないことが示されている。アルテルナンオリゴ糖は、pH1.5の水性環境中、95℃程度の温度で1時間加熱されても、計測しうる程度には分解しない。これに関して、計測しうる程度の分解がないということは、アルテルナンオリゴマーの分解生成物としての、加熱試料中のグルコースの増加が(高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC又はゲル透過クロマトグラフィーGPC−RIで)検出されないことを意味する。
【0099】
アルテルナンオリゴ糖のこの性質は特に(非限定的に)飲料の製造工程において有益である。何故なら、飲料は製造工程中で高めの温度に加熱されることがあるためである。一部の飲料製造工程は熱間充填を要する。これは、たとえば、飲料を80〜90℃に加熱し、その温度で約10分間保持し、約65℃まで冷ましたのち、ボトル詰めすることを含む。アルテルナンオリゴ糖は、眼に見える影響を受けることなく少なくとも10分間この酷熱に耐えることができる。
【0100】
本発明の飲料は透明な飲料であることもできる。その熱安定性の他に、アルテルナンオリゴ糖のさらなる有益な性質として、プレバイオティクス及び/又は低血糖及び/又は可溶性繊維成分として透明な飲料組成物に加えられた場合の、透明な飲料の透明性を保持する能力がある。透明性は、WO2006/088884に記載されている試験手順を使用して測定することもできるし、定性的基準で目視的に評価することもできる。
【0101】
第二の発明の食品は、一つの実施態様において、WO2006/088884公開公報に開示されているような食品、シロップ又はアルテルナンオリゴ糖類(オリゴアルテルナンとも呼ばれる)を含まず、食品における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用は、一つの実施態様において、WO2006/088884公開公報に開示されているようなシロップ又はアルテルナンオリゴ糖類(オリゴアルテルナンとも呼ばれる)の使用を含まない。
【0102】
第二の発明は以下の主題を開示する。
1.食品における熱安定性成分としてのアルテルナンの使用。
2.食品が50〜150℃の温度で加熱工程に付される、主題1のアルテルナンの使用。
3.アルテルナンがアルテルナン多糖である、主題1又は2の使用。
4.アルテルナンがアルテルナンオリゴ糖である、主題1又は2の使用。
5.アルテルナンオリゴ糖が、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造される、主題4の使用。
6.受容体分子が、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンから選択される、主題5の使用。
7.食品が、乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、プリン、飲料、ビール、ソース、スープ、レトルト食品、香辛料、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、クッキー、ケーキ、ビスケット、肉製品、押出し成形品、たとえばスナック菓子及びシリアル、パスタならびにインスタント食品から選択される、主題1〜6のいずれか一つの使用。
8.食品が酸性食品である、主題1〜7のいずれか一つの使用。
9.食品がpH6以下の酸性飲料である、主題4〜6のいずれか一つの使用。
10.食品組成物への成分としてのアルテルナンの添加及び加熱ステップを含む、食品製造方法。
11.加熱工程が50〜150℃の温度で実施される、主題10の方法。
12.アルテルナンがアルテルナン多糖である、主題10又は11の方法。
13.アルテルナンがアルテルナンオリゴ糖である、主題10又は11の方法。
14.アルテルナンオリゴ糖が、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造される、主題13の方法。
15.受容体分子が、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンから選択される、主題14の方法。
16.食品が、乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、プリン、飲料、ビール、ソース、スープ、レトルト食品、香辛料、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、クッキー、ケーキ、ビスケット、肉製品、押出し成形品、たとえばスナック菓子及びシリアル、パスタならびにインスタント食品から選択される、主題10〜15のいずれか一つの方法。
17.食品が酸性食品である、主題10〜16のいずれか一つの方法。
18.食品がpH6以下の酸性飲料である、主題13〜15のいずれか一つの方法。
19.アルテルナンを成分として含む食品であって、その製造中に加熱工程に付されたものである食品。
20.乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、プリン、飲料、ビール、ソース、スープ、レトルト食品、香辛料、缶詰食品、特に缶詰果実、缶詰魚類、缶詰野菜、ベーカリー製品、クッキー、ケーキ、ビスケット、肉製品、たとえばスナック菓子及びシリアル、パスタならびにインスタント食品のような押出し成形品、から選択される、主題19の食品。
21.酸性食品である、主題19又は20の食品。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、本発明をさらに説明することを意図したものであり、請求の範囲によって画定される本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
実施例
【0104】
【表1】

【0105】
1.Leuconostoc mesenteroidesからのアルテルナンスクラーゼの発酵産生
Leuconostoc mesenteroides株NRRL B-1355からアルテルナンスクラーゼ(ARS)を異種発現させるために、アルテルナンスクラーゼをコードする遺伝子を単離し、Strep-tag(IBA BioTAGnology, Gottingen, Germany)に融合し、テトラサイクリン誘発性プロモータの制御下、ベクターpAI-B-AlSuにクローン化した。
【0106】
発酵に用いた遺伝子的に改変された大腸菌株DH5a pAIB-AlSu Q29は、Leuconostoc mesenteroidesからのアルテルナンスクラーゼの細胞質発現のためのプラスミドpAI-B-AlSuを宿らせる。ベクターpAI-B-AlSuは本質的にプラスミドpASK-IBA-3(IBA Gottingen(www.iba-go.com)から購入)に由来する。これは、C末端で8アミノ酸ペプチドStrep-tagに融合したLeuconostoc mesenteroides株NRRL B-1355に由来するアルテルナンスクラーゼのコード配列を含む。Strep-tagは、2アミノ酸リンカを介してタンパク質に結合される。アルテルナンスクラーゼの発現は、tetAプロモータ/オペレータ及びレプレッサの転写制御下にある。tetAプロモータは、tetレプレッサによって綿密に調節され、そのtetレプレッサは同じプラスミド上にコード化され、β−ラクタマーゼプロモータから構成的に発現する。このようにして、アルテルナンスクラーゼの発現は、テトラサイクリン又はアンヒドロテトラサイクリンAHTによる効率的な化学誘発まで厳密に抑制される(Degenkolb et al.; 1991)。
【0107】
ベクターpAI-B-AlSuは以下の遺伝子要素を含有する。
【0108】
【表2】

【0109】
発酵させるため、ベクターpAI-B-AlSuを大腸菌K12 DH5αに形質転換し、ベクターを宿す細菌細胞を、アンピシリン(100μg/ml)で補足したミネラル培地(Horn et al., 1996)中、37℃で12時間、65のOD600まで選択的に生育させる。アンヒドロテトラサイクリン(0.2mg/l)の添加によってアルテルナンスクラーゼの発現を誘発し、さらに、25℃で5時間、140のOD600まで培養する。酵素の精製のために、遠心分離(20,000rpm、20分)によって細菌細胞を収穫し、再懸濁緩衝液(100mM NaAc、pH5.3)に可溶化する。
【0110】
高圧ホモジナイザ(2サイクル、1200バール)を使用して細胞を破壊する。細菌核酸をDNase/RNase(3mg/l)処理によって分解し、得られた抽出物を遠心分離処理(3,800g、4℃で15分間)して、細菌封入体を含む不溶性細胞質を収穫する。
【0111】
上澄みを捨て、ペレットをpH5.3の、8M尿素、50mM NaAc緩衝液に再懸濁させ、氷上に維持しながら1時間振とうする。その後、残留する砕片を10,000Gで15分間の遠心分離によって除去する。次いで、pH5.3の、0.5M尿素、2.5mM CaCl2、100mM NaAc中に20倍希釈することによって復元を実施する。混合物のアリコートをただちに液体窒素中で凍結させ、−20℃で貯蔵する。
【0112】
アルテルナンスクラーゼの活性は、Lopez-Munguia et al., 1993によって記載されているように測定することができる。
【0113】
2.受容体分子マルトース(マルトースオリゴ糖)を用いるアルテルナンオリゴ糖類の製造
マルトースオリゴ糖の製造のために、1に記載した精製アルテルナンスクラーゼ酵素をpH5.3の、50mM酢酸ナトリウム緩衝液中、10%(w/v)スクロース及び4.5〜5%マルトース(w/v)とともに室温で約72時間インキュベートする。インキュベーションのために、反応ミックス1リットルあたりアルテルナンスクラーゼ50単位を使用する。分析用エタノールを最終濃度50%(v/v)まで加えることにより、副生成物として蓄積するアルテルナンを沈殿させる。混合物を4,000rpmで10分間遠心分離処理し、得られた沈殿物を捨てる。
【0114】
真空蒸発器(Buechi Rotavapor R-220)を使用して、得られた沈殿物をブリックス度約70°までさらに濃縮することにより、マルトースオリゴ糖を調製する。マルトースオリゴ糖はシロップとして得られ、それをさらに精製し、乾燥させて最終生成物を得る。
【0115】
3.アルテルナン多糖の製造
プラスミドpAI-B-AlSu Q29(上記実施例1を参照)を大腸菌DH5αに形質転換した。細胞を、100μg/mlアンピシリン及び10%LB培地を含むミネラル培地(Horn et al., 1996)中で予備培養した。LBなしのミネラル培地にこの予備培養物を接種した。細胞を37℃で生育させ、アンヒドロテトラサイクリン(AHT)(0.2mg/l)で誘発し、25℃でさらに生育させた。細胞を収穫し、[10 mM MOPS pH 7,6; 2,5 mM CaC12 und 0,05 % Trition X-100]中に再懸濁させ、高圧ホモジナイザを用いて抽出した。細胞溶解産物を4℃で20分間、20,000rpmで遠心分離処理した。上澄みを0.22μmフィルタに通してろ過した。
【0116】
0.13%酢酸、100mM NaAc(pH5.3)、20%スクロース、1mM DTT、1600mlろ過タンパク質抽出物(約3900単位)を含有する60Lバイオトランスフォーメーション中でアルテルナンを製造した。反応混合物を37℃で60時間インキュベートした。工業用エタノール60Lを用いてポリマーを4℃で40時間沈殿させ、60%工業用エタノール60Lを用いて2回洗浄し、60%無水エタノール60Lを用いて1回洗浄した。凍結乾燥によって生成物を乾燥させた。
【0117】
4.フレーバー水における適用試験
二つの市販フレーバー水を適用実験で試験した。実施例2に記載したように製造したアルテルナンオリゴ糖(以下、マルトース受容体のために、「マルトースオリゴ糖」ともいう)を試験に使用した。
【0118】
【表3】

【0119】
諸条件
・貯蔵温度:−17.8℃、4.4℃、21℃、32.2℃
・評価点:0時、1週、4週、8週
【0120】
飲料製造
・大きな釜の中でアルテルナンオリゴ糖をフレーバー水と混合した。
・ライトニングミキサを700rpmで用いてかく拌しながらアルテルナンオリゴ糖を水に加えた。アルテルナンオリゴ糖の全量を加えたのち、飲料をさらに1.5分間混合した。
・予備スクリーニングで使用した割合を貯蔵寿命のために使用した。各変数は、一回分あたり繊維5グラムを与えるレベルで存在する。
・混合ののち、飲料を貯蔵用の別々のボトルに分配した。各温度でボトルを貯蔵した。
・評価点ごとに一つのボトルを使用した。
・評価の前に、試料を室温になるまで放置した。
以下のプロトコルを使用して、貯蔵寿命実験における間隔ごとに飲料を評価した。
【0121】
4.1 比重―ブリックス度
・Bausch & Lomb Abbe-3L屈折計
・試料は常に室温であったので温度制御は使用されなかった。
マルトースオリゴ糖を含有する飲料のブリックス度は、異なる貯蔵温度(−17.8℃、4.4℃、21℃、32.2℃)における8週間の貯蔵寿命期間中に変化しなかった。沈殿が認められた場合でさえ、ブリックス度は有意には影響されなかった。計測前には常に飲料を振とうした。
【0122】
4.2 色
・250ml Pyrexビーカ中200ml試料サイズ
・白いろ紙をビーカの上に配置した。
・ガラスがきれいであることを確認して、ビーカーの底を通して読みを記録した。
・色を目視的に評価し、コメントを加えた。
マルトースオリゴ糖は、貯蔵寿命にわたって有意な色を発しなかった。32.2℃での貯蔵におけるマルトースオリゴ糖試料は、酸性飲料中8週間後に非常に淡い黄色を示した。
【0123】
4.3 濁度及び沈殿物形成
異なる温度で貯蔵された試料を用い、貯蔵寿命にわたって試料中の濁度及び沈殿を目視的に評価した。
マルトースオリゴ糖は、両方の水系においてわずかな曇りを生じさせた。濁りは、時間及び/又は温度によって有意な影響を受けるようは見えなかった。
【0124】
【表4】


スケール:0=透明、1=軽度、2=軽度+、3=中程度、4=中程度+、7=非常に重度
マルトースオリゴ糖は、いずれの貯蔵条件下でも沈殿物を形成しなかった。
【0125】
4.4 熱間充填シミュレーション―過酷な条件
一部の飲料製造工程は熱間充填を要する。これは、飲料を82℃に加熱し、その温度で約10分間保持し、65℃まで冷ましたのち、ボトル詰めすることを含む。マルトースオリゴ糖飲料をこの酷熱に暴露した。
手順
・Metro Mint又はFruit2O水中マルトースオリゴ糖2.60%の溶液500mlをダブルボイラの上に配置した。
・82℃〜87.8℃に加熱した。
・当該温度で10分間保持した。
・65.6℃に冷ました。
・ボトル詰めした。
・飲料を72時間観察した。粘度、pH及びブリックス度を計測した。
結果
【0126】
【表5】

【0127】
マルトースオリゴ糖は試験の熱間充填条件に耐性であった。
【0128】
4.5 抗分解性
計測のために、すべての試料を希釈し(全出発量1ml)、必要ならば中和した(Fruit2O:+100μl 150mM NaOH)。
高速アニオン交換クロマトグラフィーHPAEC:1:100、注入量25μl、HPAEC−PAD:グルカンプログラム45分
ゲル透過クロマトグラフィーGPC:Metromint:DMSOで1:5、Fruit2O試料(中和後)1:2.5
【0129】
結果
GPCプロフィール中、試料の貯蔵寿命(8週)にわたって変化は検出されなかった。
【0130】
HPAEC:DP3を超える画分において、変化は検出されなかった。Metromintにおいては、貯蔵寿命にわたり、32.2℃でわずかなグルコース増加が検出された。Fruit2Oにおいては、貯蔵寿命にわたり、32.2℃でスクロースが減少し、グルコース及びフルクトースが増加した。
【0131】
【表6】

【0132】
DP計算においては、モノマーのMWとして162g/molを使用した。
【0133】
5.炭酸飲料における抗分解性
三つの市販飲料(Coca Cola(登録商標)、Fanta(登録商標)及びオレンジレモネード)を、貯蔵寿命スクリーニングのために、アルテルナンオリゴ糖(マルトース受容体分子のために、マルトースオリゴ糖ともいう)及び競合製品を用いて調製した。
マルトースオリゴ糖は、30%スクロース及び15%マルトースを使用し、エタノール沈殿ステップを省略した以外、実施例2と同様な手順にしたがって製造した。ろ過技術によって生成物を精製し、フルクトース約15重量%を含有するシロップとしてマルトースオリゴ糖を得た。
諸条件
・貯蔵温度:4℃、RT(24℃)、37℃
・評価点:0時、4日、1週、4週、8週
飲料製造
・50gバッチの中でマルトースオリゴ糖を飲料と混合した。
・2.5%のマルトースオリゴ糖をスクリーニングに使用した。50mlのFalcon中で、マルトースオリゴ糖を飲料に加えた。繊維の全量ののち、水5gを加え、飲料を混合した。
・混合後、50gバッチを小さな飲料量(約3g)に分配し、小さなボトルに入れた。これら小さなボトルを異なる条件における貯蔵寿命貯蔵に使用した。
・評価点ごとに一つのボトルを使用した。
・各貯蔵時間後、試料を目視的に評価したのち、GPC−RI及びHPAEC−PAD計測に備えて−18℃で冷凍した。
【0134】
GPC−RI及びHPAEC−PAD結果
マルトースオリゴ糖の分解に関して、BBSでGPC−RI及びHPAEC−PADを使用して飲料を計測した。三つの飲料のいずれでも、マルトースオリゴ糖は、異なる温度における調査時間範囲にわたって貯蔵中の分解を示さなかった。唯一の変化はスクロース含量に見られた。この効果は、37℃で最低のpHを有する飲料(Coca Cola(登録商標)及びFanta(登録商標))でより強烈であった。オレンジレモネードのスクロース含量も同じく低下したが、より低い量であった。
【0135】
6.アルテルナンオリゴ糖の熱及び酸安定性
材料:30%スクロース及び15%マルトースを使用し、エタノール沈殿ステップを省略した以外、実施例2と同様な手順にしたがってマルトースオリゴ糖を製造した。ろ過技術によって生成物を精製し、フルクトース約15重量%を含有するシロップとしてマルトースオリゴ糖を得た。ブリックス度68.8°(内標準M2)。
マルトースオリゴ糖生成物は、DP3〜7の範囲の重合度(DP)を有した。
マルトースオリゴ糖は、フルクトース約15重量%を含有した。試料の調製のために、>5%純度のマルトースオリゴ糖が最終試料に含有されるようにすべての量を計算した。
【0136】
試料
・0.1M HAc(pH3)中アルテルナンオリゴ糖
・0.02M HCl(pH1.5)中アルテルナンオリゴ糖
試料を20、40、60、80及び95℃の温度で10分間ならびに120℃で1時間インキュベートしたのち、10分間冷ました。各試料から100μl量を採取し、中和した。
0.1M HAc:100μl+100μl N-Mix HAc(450μl 1M NaOH ad 10ml)
0.02M HCl:100μl+100μl N-Mix HCl(175μl 1M NaOH ad 10ml)
HPAEC分析のために、中和試料の1:400希釈物50μlを注入した(SC−HPAEC)。
【0137】
以下の表はアルテルナンオリゴ糖類の相対ピーク面積を示す。
結果は、水及び酢酸(pH3)中では120℃の温度までオリゴ糖類(DP3〜7)の分解が検出できないことを示す。HCl(pH1.5)中では、95℃の温度まで分解は検出不可能である。グルコースの増加は検出されなかった(データ示さず)。
HCl中120℃の温度で分解が検出され、検出されたグルコースの増加(データ示さず)によって示され、DP4〜DP7の相対ピーク面積の減少によって示された(表を参照)。
しかし、120℃の試料は、技術的理由(オートクレーブ)のため、他の試料(10分)よりもずっと長い1時間にわたり加熱されたということを考慮すべきである。
【0138】
結果
アルテルナンオリゴマーのpH及び温度安定性
【0139】
【表7】

【0140】
7.アルテルナン多糖の熱及び酸安定性
方法1:
材料:アルテルナンポリマーを1%、5%、10%又は12%の濃度で調製した。
環境:水(pH6〜7)、酢酸(pH3.5〜5)、オレンジレモネード(pH3)又は塩酸(pH1.3〜1.5)
温度:室温(20℃、RT)、40℃、60℃、80℃、95℃、(オートクレーブの場合のみ)120℃
インキュベーション時間:0.5時間、1時間、4時間、24時間及び2〜3週間
【0141】
方法2:
材料:アルテルナンポリマーをオレンジジュース中1.25%及び2.5%の濃度で調製した。
環境:オレンジジュース(pH4)
手順A:アルテルナンを冷えたオレンジジュースに加え、62.8〜65.6℃に加熱し、62.8℃で30分間低温殺菌する。
手順B:アルテルナンを予熱したオレンジジュース(62.8℃)に加え、62.8℃で30分間低温殺菌する。
冷蔵庫で1、3、7、10、20、30及び60日間貯蔵
【0142】
両方法の分析をGPC MALLSによって実施した。結果を以下の表に示す。
結果は、アルテルナンポリマーが、pH6〜7では、加熱されたときでさえ安定であることを示す。pH3〜4では、アルテルナンポリマーは室温で安定である。アルテルナンポリマーが60℃に加熱されると、pH3〜4でわずかな分解が検出される。アルテルナンポリマーが80℃に加熱されると、pH3〜4でかなりの分解が検出される。
結果
アルテルナンポリマーのpH及び温度安定性
【0143】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性食品のための成分としてのアルテルナンの使用。
【請求項2】
前記アルテルナンがアルテルナン多糖である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記アルテルナンがアルテルナンオリゴ糖である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記アルテルナンオリゴ糖が、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造される、請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記受容体分子が、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンから選択される、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記酸性食品が、飲料、果実、野菜、缶詰食品、ベーカリー製品、ケーキ、インスタント食品及び乳製品から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記食品が1〜4のpHを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記食品が3.5以下のpHを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記食品が3未満のpHを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記食品が少なくとも60℃の温度で加熱工程に付される、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記食品が80〜130℃の温度で加熱工程に付される、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
アルテルナンを成分として含む酸性食品。
【請求項13】
前記アルテルナンがアルテルナン多糖である、請求項12記載の酸性食品。
【請求項14】
前記アルテルナンがアルテルナンオリゴ糖である、請求項12記載の酸性食品。
【請求項15】
前記アルテルナンオリゴ糖が、アルテルナンスクラーゼ酵素の存在下、スクロースと受容体分子との反応によって製造される、請求項14記載の酸性食品。
【請求項16】
前記受容体分子が、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル−α−D−グルカンから選択される、請求項15記載の酸性食品。
【請求項17】
前記酸性食品が飲料、果実、野菜、缶詰食品、ベーカリー製品、ケーキ、インスタント食品及び乳製品から選択される、請求項12〜16のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項18】
前記食品が1〜4のpHを有する、請求項12〜17のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項19】
前記食品が3.5以下のpHを有する、請求項12〜17のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項20】
前記食品が3未満のpHを有する、請求項12〜17のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項21】
前記食品が少なくとも60℃の温度で加熱工程に付される、請求項12〜20のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項22】
前記食品が80〜130℃の温度で加熱工程に付される、請求項12〜20のいずれか1項記載の酸性食品。
【請求項23】
総重量に基づいて0.1〜10重量%の量のアルテルナンを含む、請求項12〜22のいずれか1項記載の酸性食品。

【公表番号】特表2011−510643(P2011−510643A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544652(P2010−544652)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000762
【国際公開番号】WO2009/095278
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】