説明

特定位相位置検出回路及び特定位相位置検出方法

【課題】 アナログ信号の振幅の変化に伴い、位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置が変化するために、アナログ信号のピーク位置を正確に検出することができない。
【解決手段】 アナログ信号の各周期ごとに、アナログ信号の信号レベルが第1のしきい値と一致する2つの時間的位置を第1及び第2の基準位置としてそれぞれ検出すると共に、第1及び第2の基準位置間の時間的長さを基準期間としてそれぞれ計測する計測部と、アナログ信号の各周期ごとに、前の周期において計測された基準期間に基づいて、基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する算出部と、現周期において検出された第1の基準位置から、算出部により算出された付加期間だけずれた時間的位置を特定位相位置として検出し、特定位相位置を示す検出信号を出力する検出部と、を備える特定位相位置検出回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号のピーク位置を検出する技術に関し、特に、アナログ信号の振幅が変化する場合でもピーク位置を正確に検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放電ランプの点灯制御のためにコイルとコンデンサとから成る共振回路を備えるプロジェクタが種々提案されている。このようなプロジェクタでは、放電ランプを共振回路のコンデンサと並列となるよう接続し、共振回路に印加する電圧の周波数をこの共振回路の共振周波数となるよう制御することにより、共振回路に接続された放電ランプに対して、放電に必要な電圧を印加して点灯させる。
なお、このようなプロジェクタとして、下記特許文献1に記載されたプロジェクタが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平5−217682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、放電ランプの点灯制御のために共振回路を備えるプロジェクタでは、放電ランプにおける放電ギャップの摩耗や放電ランプの温度特性等の変化により、共振回路の共振周波数が変わる場合がある。このような場合に、共振回路に印加する電圧の周波数が一定であれば、放電ランプに必要な電圧を印加できずに放電ランプが点灯しなくなる。そこで、共振周波数が変化しても点灯状態を維持するために、共振周波数の変化に応じて印加電圧の周波数を変化させることが可能なプロジェクタが求められていた。
このような要請に応えて、共振回路における電流値に基づいて、共振回路への印加電圧の周波数を変化させるプロジェクタが提案されている。以下、このようなプロジェクタにおける点灯制御の動作を簡単に説明する。
【0005】
放電ランプを共振回路に接続した構成においては、共振回路に印加する電圧の周波数を徐々に増加させて共振周波数に近づけていくと、放電ランプにおいて放電が始まり、共振回路に大電流が流れるようになる。この場合、共振回路の電流値は、印加電圧の周波数の増加と共に増えていき、共振周波数において最大値となる。
そこで、このプロジェクタでは、共振回路における電流値を電流センサで検出し、検出した電流値が所定値以上になった場合に、共振回路の電流の位相と印加電圧の位相とが、所定の位相差を維持するように印加電圧の周波数を増加若しくは減少させるようにする。
このようにすることで、共振周波数が変化した場合においても、共振回路に所定値以上の電流が流れた状態を維持するように印加電圧の周波数を制御することとなり、安定して点灯状態を維持することができる。
【0006】
このようなプロジェクタでは、共振回路の電流の位相と印加電圧の位相とを比較して位相差を検出する必要があるが、この比較は、それぞれのピークレベルの位置(以下、単に「ピーク位置」と呼ぶ。)で比較することが好ましい。しかしながら、ピーク位置を検出することは困難であることから、以下のような位相比較方法が用いられる場合がある。
【0007】
図8は、従来のプロジェクタにおいて、共振回路に印加される電圧の位相と、共振回路のおける電流の位相と、を比較する位相比較方法を示す説明図である。
図8において、(A)は共振回路に印加される電圧の波形と位相検出点とを示し、(B)は共振回路電流の波形と位相検出点とを示す。なお、図8(A)及び(B)において、横軸は経過時間(周期N,N+1、及び周期N+2の一部)を、縦軸は振幅の中心を0レベルとした場合の電流値を、それぞれ示している。また、図8(A)及び(B)において、白抜きの三角の印はピーク位置を示し、黒い三角の印はピーク位置の代わりとして検出する、位相を比較するための基準となる位置(以下、「位相検出点」と呼ぶ。)を示す。なお、電圧と電流とは、正負の両極性にピークを持っているが、ここでは、正側のピークについてのみで話を進めることとする。
【0008】
従来のプロジェクタにおいては、図8(A)に示すように、印加電圧に対して、所定のしきい値(Th1)を予め設定しておき、印加電圧がこのしきい値(Th1)以上の場合にハイレベルとなる信号(以下、「比較信号」と呼ぶ。)を生成する。そして、この比較信号の立ち上がり位置を検出して位相検出点とする。
【0009】
一方、図8(B)に示すように、共振回路電流に対しても、所定のしきい値(Th2)を予め設定しておき、図8(A)と同様に、比較信号を生成して、この比較信号の立ち上がり位置を検出して位相検出点とする。
そして、それぞれのピーク位置の代わりに、このようにして検出した印加電圧の位相検出点と、共振回路電流の位相検出点と、を比較して位相差を検出するようにしていた。
【0010】
以上説明した、従来における位相比較方法においては、以下のような問題があった。
【0011】
印加電圧の周波数を共振周波数に近づけるように増加させると、図8(B)に示すように、次第に共振回路電流の振幅が大きくなっていく。その結果、各周期において、開始位置(0)から1/2周期の位置(π)までの期間を「1」とした場合に、ピーク位置から位相検出点までの期間は、例えば、図8(B)に示すように、「0.1」「0.3」「0.4」と変化することとなる。したがって、共振回路電流については、各位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置は変化することになる。
一方、印加電圧については、各周期において、開始位置(0)から1/2周期の位置(π)までの期間を「1」とした場合に、ピーク位置から位相検出点までの期間は、例えば、図8(A)に示すように、「0.1」で一定となる。したがって、印加電圧については、各位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置は一定となっている。
【0012】
従って、印加電圧及び共振回路電流について、それぞれの位相検出点で位相を比較して位相差を検出しても、検出される位相差は、実際のピーク位置同士を比較して得られる位相差とかけ離れたものとなってしまう。その結果、正確な位相差を検出することができないために、印加電圧の周波数の正確な制御ができず、放電ランプの安定した点灯を維持することができない恐れがあった。
【0013】
なお、前述のように位相比較する場合に限らず、共振回路における電流または電圧を示すアナログ信号のピーク位置を検出する必要がある場合において、前述の位相検出点をピーク位置として検出するような場合にも、実際のピーク位置に対する相対的な位置が変化する位置をピーク位置として検出することとなるので、所定の誤差の範囲内でピーク位置を検出することができないという問題が発生し得る。
また、共振回路におけるアナログ信号に限らず、振幅が変化し得るアナログ信号について、ピーク位置を検出しようとする場合にも前述の問題は発生し得る。
【0014】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、アナログ信号の振幅が変化する場合でも、このアナログ信号のピーク位置を正確に検出することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第1の特定位相位置検出回路は、周期的なアナログ信号のピーク位置を基準として、所望の位相となる時間的位置を検出し、検出した前記時間的位置を示す検出信号を出力することを要旨とする。
【0016】
このような構成とすることで、アナログ信号の振幅が変化した場合においても、第1の特定位相位置検出回路は、ピーク位置を基準として所望の位相となる時間的位置を検出するので、この時間的位置に基づきピーク位置を正確に検出することが可能となる。また、第1の特定位相位置検出回路は、検出信号を出力するので、ピーク位置に基づき制御を行う回路等に対して正確なピーク位置を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明の第2の特定位相位置検出回路は、アナログ信号の各周期において、特定の位相となる時間的位置を特定位相位置として検出する特定位相位置検出回路であって、
前記アナログ信号の信号レベルが所定のしきい値と一致する時間的位置を基準位置として検出する第1の検出部と、前記基準位置に基づく時間的長さを基準期間として計測する計測部と、前記基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する算出部と、前記基準位置と前記付加期間とに基づいた時間的位置を前記特定位相位置として検出し、前記特定位相位置を示す検出信号を出力する第2の検出部と、を備えることを要旨とする。
【0018】
このように構成した場合、ピーク位置は、基準期間に対して所定の割合となる位置となる。例えば、アナログ信号が正弦波であり、かつ、基準期間を基準位置間の時間的長さとした場合には、基準期間の中心位置(50%)がピーク位置となる。従って、この基準期間に対し一定の割合となる付加期間と、基準位置と、に基づいた時間的位置は、アナログ信号の振幅が変化した場合においても、ピーク位置に対する相対的な位置は一定となる。それ故、この時間的位置に基づきピーク位置を正確に検出することが可能となる。
【0019】
また、本発明の第3の特定位相位置検出回路は、アナログ信号の各周期において、特定の位相となる時間的位置を特定位相位置として検出する特定位相位置検出回路であって、前記アナログ信号の各周期ごとに、前記アナログ信号の信号レベルが第1のしきい値と一致する2つの時間的位置を第1及び第2の基準位置としてそれぞれ検出すると共に、前記第1及び第2の基準位置間の時間的長さを基準期間として計測する計測部と、前記アナログ信号の各周期ごとに、前の周期において計測された前記基準期間に基づいて、前記基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する算出部と、現周期において検出された前記第1の基準位置から、前記算出部により算出された前記付加期間だけずれた時間的位置を前記特定位相位置として検出し、前記特定位相位置を示す検出信号を出力する検出部と、を備えることを要旨とする。
【0020】
アナログ信号の各周期において、第1のしきい値と一致する第1及び第2の基準位置間の時間的長さを基準期間として計測し、この基準期間に対し一定の割合となる付加期間を算出した場合、次回以降の周期において第1の基準位置からこの付加期間だけずれた時間的位置は、アナログ信号の振幅の変化にかかわらず、各周期のピーク位置に対し一定の割合となる期間だけずれた時間的位置に近い位置となる。
特に、アナログ信号の振幅の変化が少なく、比較的近い周期において算出した付加期間を適用した場合には、第1の基準位置から付加期間だけずれた時間的位置は、各周期のピーク位置に対し一定の割合となる期間だけずれた時間的位置と、ほぼ一致することとなる。
従って、上記のような構成とすることで、各周期において、ピーク位置に対する相対的な位置がほぼ一定となる位置を特定位相位置として検出することが可能となる。その結果、アナログ信号の振幅が変化する場合でも、このアナログ信号のピーク位置を正確に検出することが可能となる。
【0021】
なお、上記第1ないし第3のいずれかの特定位相位置検出回路において、前記アナログ信号は、共振回路から出力されるアナログ信号であってもよい。
【0022】
共振回路における電流値または電圧値を示すアナログ信号は、共振回路に印加される電圧の周波数の増減に応じてその振幅が変化し得る。従って、本発明を適用することで、共振回路から出力されるアナログ信号の振幅が変化した場合においても、このアナログ信号のピーク位置を正確に検出することが可能となる。特に、印加電圧の周波数を増加させていき、共振回路の共振周波数に近くなった場合には、アナログ信号の振幅はほぼ一定となるので、ピーク位置をより正確に検出することができる。
【0023】
本発明の波形発生回路は、上記第1ないし第3のいずれかの特定位相位置検出回路を備え、前記共振回路に電圧を印加する共振駆動部に対して、前記電圧の波形を示す電圧信号を出力する波形発生回路であって、前記電圧信号を生成する波形生成部と、前記波形生成部により生成された前記電圧信号を入力し、前記電圧信号の各周期ごとに、前記電圧信号の信号レベルが第2のしきい値と一致する2つの時間的位置を第3及び第4の基準位置としてそれぞれ検出すると共に、少なくとも前記第3または第4の基準位置のいずれか一方の時間的位置を示す位置信号を出力する位置信号出力部と、前記特定位相位置検出回路が出力する前記検出信号と、前記位置信号出力部が出力する前記位置信号と、を入力して、前記検出信号の示す前記特定位相位置と、前記位置信号の示す前記第3または第4の基準位置の時間的位置と、を比較することにより、前記アナログ信号と前記電圧信号との位相差を検出し、前記位相差を示す位相差信号を出力する位相比較部と、を備え、前記波形生成部は、前記位相比較部が出力する前記位相差信号を入力すると共に、入力した前記位相差信号の示す前記位相差に基づき、前記電圧信号の周波数を調整することを要旨とする。
【0024】
共振駆動部が共振回路に印加する電圧は、共振回路において測定される電流や電圧等のアナログ信号と異なり、周波数の変化にかかわらず振幅は一定である。従って、電圧信号については、第2のしきい値と一致する第3及び第4の基準位置の、ピーク位置に対する相対的な位置は各周期において一定となる。一方、アナログ信号については、電圧信号の周波数の変化に応じて振幅が変化することとなるが、特定位相位置検出回路を備えることにより、この特定位相位置検出回路から出力される検出信号において、特定位相位置のピーク位置に対する相対的な位置は各周期においてほぼ一定となる。
従って、位相比較部は、電圧信号及びアナログ信号について、それぞれのピーク位置に対する相対的な位置がほぼ一定である位置で位相を比較することができるので、正確な位相差を検出することが可能となる。その結果、正確な位相差に基づいて電圧信号の周波数を調整することができるので、共振回路に印加する電圧の周波数を、アナログ信号が所定のレベルを維持するように調整することが可能となる。
【0025】
本発明の電子機器は、上記波形発生回路を備えたことを要旨とする。
【0026】
このような構成とすることで、電子機器は、波形発生回路により、共振回路に印加する電圧の周波数をアナログ信号が所定のレベルを維持するように調整することが可能となる。従って、電子機器が共振回路によって動作制御を行う場合には、動作環境の変化等によって、共振周波数が変化するような場合においても、アナログ信号が所定のレベルを維持するようにすることができ、安定した動作制御が可能となる。
【0027】
本発明の放電ランプ制御装置は、上記波形発生回路を備え、放電ランプの点灯を制御するための放電ランプ制御装置であって、前記放電ランプは、前記共振回路に接続されると共に、前記共振駆動部により前記共振回路に印加される電圧によって放電して点灯することを要旨とする。
【0028】
このような構成とすることで、波形発生回路によって、共振回路に印加する電圧の周波数をアナログ信号が所定のレベルを維持するように調整することが可能となるので、共振回路に印加される電圧によって放電して点灯する放電ランプについて、共振周波数が変化するような場合においても、点灯状態を維持させることが可能となる。
【0029】
本発明のプロジェクタは、上記放電ランプ制御装置と、上記放電ランプと、を備えることを要旨とする。
【0030】
このような構成とすることで、プロジェクタの放電ランプにおいて、ギャップの摩耗や、温度特性等の変化により共振周波数が変化したような場合においても、放電ランプの点灯状態を維持して、スクリーン等に画像を投写表示させることが可能となる。
【0031】
なお、本発明は、上記した特定位相位置検出回路等の装置発明の態様に限ることなく、特定位相位置検出方法などの方法発明としての態様で実現することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施例:
A1.装置構成:
A2.位相検出点の定め方の概要:
A3.位相比較の具体的な動作:
A4.実施例の効果:
B.変形例:
【0033】
A.実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の一実施例としての液晶プロジェクタの概略構成を示す説明図である。
図1に示す液晶プロジェクタ1000は、主として、放電ランプ10,放電ランプ10の点灯制御を行う放電ランプ制御部20,CPU30,液晶パネル40,投写レンズ等から成る投写光学系50,外部より出力されるアナログ信号を入力する入力部60,画像処理部70,液晶パネル40を駆動する液晶パネル駆動部80を備えている。
【0034】
このうち、入力部60は、ビデオプレーヤ,テレビ,パーソナルコンピュータなどから出力されたアナログ画像信号を入力して、ディジタル画像信号に変換する。画像処理部70は、CPU30からの指示に従い、画像の表示状態(コントラストやシャープネス等)が所望の状態となるように、入力されたディジタル画像信号を調整して液晶パネル駆動部80に出力する。そして、液晶パネル駆動部80は、入力されたディジタル画像信号に基づいて、液晶パネル40を駆動する。
【0035】
また、放電ランプ制御部20は、CPU30により設定された各種パラメータに従って放電ランプ10を点灯させ、放電ランプ10から照明光を射出させる。液晶パネル40は、この照明光を画像情報に応じて変調する。投写光学系50は、液晶パネル40によって変調された照明光を図示せざるスクリーン等に投写し、画像を表示させる。
なお、前述の放電ランプ制御部20は請求項に記載の放電ランプ制御装置に相当する。
【0036】
この液晶プロジェクタ1000においては、前述の放電ランプ制御部20が、放電ランプ10の放電ギャップの摩耗や温度特性の変化が起きても、放電ランプ10の点灯状態を維持するようにする。
【0037】
図2は、図1に示す放電ランプ制御部20の概要構成を示す説明図である。
図2に示す放電ランプ制御部20は、主として、波形発生部100,共振駆動部130,共振部150を備えている。
【0038】
このうち、共振部150は、図示せざる共振用コイル及び共振用コンデンサを備え、この共振用コンデンサが放電ランプ10と並列となるように、放電ランプ10と接続されている。そして、共振部150は、共振駆動部130から印加される電圧によって共振し、放電ランプ10を点灯させる。
共振駆動部130は、波形発生部100から出力される正弦波信号A1に基づき、この正弦波信号A1に相当する電圧を共振部150に印加する。そして、電流センサ140は、共振部150における電流信号A10を検出する。
【0039】
波形発生部100は、CPU30により設定されたパラメータに基づき、正弦波信号A1を生成して共振駆動部130に出力する。また、波形発生部100は、電流センサ140が検出した電流信号A10を入力すると共に、出力する正弦波信号A1をフィードバックして入力する。そして、波形発生部100では、入力した電流信号A10及び正弦波信号A1の位相を比較して位相差を検出し、この位相差に応じて正弦波信号A1の周波数を増減させ、所定の位相差を維持するように制御を行う。
なお、この波形発生部100は、請求項に記載の波形発生回路に相当する。
【0040】
上述したように共振駆動部130は、正弦波信号A1に相当する電圧を共振部に印加するので、波形発生部100がこのような制御を行うことにより、共振部150への印加電圧と共振部150における電流とは所定の位相差を維持することとなり、放電ランプ10の点灯状態は維持されることとなる。
なお、以下において、前述の所定の位相差は0とし、共振部150への印加電圧の位相と共振部150における電流の位相とが一致するように制御を行うものとする。
【0041】
図3は、図2に示す波形発生部100の構成を示す説明図である。
図3に示す波形発生部100は、本発明の特徴部分であるピーク信号生成部200,しきい値記憶部212及びしきい値記憶部222,電流比較部214,電圧比較部224,位相比較部230,正弦波生成部240を備えている。
【0042】
このうち、しきい値記憶部212及びしきい値記憶部222は、それぞれ、CPU30により設定されたしきい値Th3及びしきい値Th4を記憶する。これらしきい値Th3,Th4は、それぞれ、図8に示すしきい値Th2,Th1と同様に、電流信号A10及び正弦波信号A1に対して設定されるしきい値である。
【0043】
電流比較部214は、前述のしきい記憶部212に記憶されたしきい値Th3と、電流センサ140から入力された電流信号A10と、を入力して比較を行い、電流信号A10がしきい値Th3以上の場合にハイレベルとなる比較信号S110を出力する。そして、ピーク信号生成部200は、入力した比較信号S110に基づき、ピーク信号S111を生成して位相比較部230に出力する。なお、このピーク信号S111の生成の詳細については後述する。
【0044】
一方、電圧比較部224は、前述のしきい値比較部222に記憶されたしきい値Th4と、後述する正弦波生成部240からフィードバックされた正弦波信号A1と、を入力して比較を行い、正弦波信号A1がしきい値Th4以上の場合にハイレベルとなる比較信号S112を生成し、位相比較部230に出力する。ここで、正弦波生成部240から出力される正弦波信号A1の振幅は一定のため、電圧比較部224の出力ではピーク信号生成部200のようなピーク検出は必要ない。
【0045】
位相比較部230は、入力したピーク信号S111と比較信号S112とに基づき、電流信号A10の位相検出点と、正弦波信号A1の位相検出点と、を比較して、電流信号A10及び正弦波信号A1の位相差を検出する。そして、位相比較部230は、この位相差を示す位相差信号P1を正弦波生成部240に出力する。正弦波生成部240は、正弦波信号A1を生成すると共に、入力された位相差信号P1に応じて、電流信号A10及び正弦波信号A1の位相差を減らすように正弦波信号A1の周波数を調整して出力する。
【0046】
波形発生部100は、このような位相差の検出及び正弦波信号A1の周波数調整を繰り返し行うことで、電流信号A10及び正弦波信号A1の位相差がなくなるように動作する。従って、この位相差を正確に検出する必要があり、本発明では、前述のピーク信号生成部200を用いることにより、正確な位相差を検出するようにしている。
【0047】
なお、前述のピーク信号生成部200は請求項に記載の特定位相位置検出回路に、前述の電圧比較部224は請求項に記載の位置信号出力部に、前述の位相比較部230は請求項に記載の位相比較部に、前述の正弦波生成部240は請求項に記載の波形生成部に、それぞれ相当する。
【0048】
続いて、本発明の特徴部分であるピーク信号生成部200の構成について説明する。
図4は、図3に示すピーク信号生成部200の詳細構成を示す説明図である。
図4に示すピーク信号生成部200は、クロック回路310,カウンタ部320,カウンタ値記憶部330,演算値記憶部340,乗算回路350,演算結果記憶部360,比較部370を備えている。
【0049】
このうち、カウンタ部320は、比較信号S110を入力すると共に、クロック回路310から出力されるクロック信号に基づき、入力された比較信号S110がハイレベルの期間におけるクロック数を順次カウントすると共に、得られたカウンタ値を比較部370に順次出力する。そして、カウンタ部320は、比較信号S110がハイレベルからローレベルになった段階で、そのときのカウンタ値をカウンタ値記憶部330に記憶させる。
【0050】
演算値記憶部340は、CPU30により設定された演算値を記憶する。乗算回路350は、カウンタ値記憶部330に記憶されたカウンタ値と、演算値記憶部340に記憶された演算値と、を掛合わせ、得られた演算結果を演算結果記憶部360に記憶させる。
【0051】
比較部370は、ピーク信号P1を生成して出力すると共に、カウンタ部320から順次入力されるカウンタ値と、演算結果記憶部360に記憶されている演算結果と、を比較し、これらが一致した場合にピーク信号P1を所定期間だけハイレベルにする。
【0052】
なお、前述のカウンタ部320は請求項に記載の計測部に、前述の乗算回路350は請求項に記載の算出部に、前述の比較部370は請求項に記載の検出部に、それぞれ相当する。
【0053】
以下において、このピーク信号生成部200を用いた具体的な位相比較動作を説明する前に、本発明における位相検出点の定め方の概要について図5を用いて説明する。
【0054】
A2.位相検出点の定め方の概要:
図5は、本発明における電流信号A10の位相検出点の定め方の概要を示す説明図である。
図5において、上部は電流信号A10の波形を示し、下部は比較信号S110と位相検出点及びピーク位置とを示す。なお、図5において、横軸,縦軸,白抜きの三角の印,黒い三角の印は、それぞれ、図8における横軸,縦軸,白抜きの三角の印,黒い三角の印と同じであるので説明を省略する。
【0055】
周期N(0〜2π)において、期間a1は、1/2周期(0〜π)を示し、期間b1は、比較信号S110がハイレベルの期間を示す。なお、周期N+1における期間a2,b2、及び周期N+2における期間a3,b3は、前述の期間a1,b2と同様であるので説明を省略する。
【0056】
電流信号A10は正弦波であることから、期間a1の中心位置(π/2)であるピーク位置と、期間b1の中心位置と、は一致する。従って、期間b1を「1」としたときの中心位置から0.1だけずれた位置は、期間a1において、期間a1を「1」としたときの、ピーク位置から所定の割合となる期間d1だけずれた位置に相当する。
ここで、期間b1において、中心位置から0.1だけずれた位置は、期間b1の開始位置から中心位置までの期間を100%とした場合の、中心位置から20%手前に相当し、比較的中心位置に近い位置となる。そして、この位置は、期間a1においても、ピーク位置に比較的近い位置となるために、前述の期間d1は、0.1に近い値となる。
【0057】
同様に、周期N+1についても、期間b2において、期間b2を「1」としたときの、中心位置から0.1だけずれた位置は、期間a2において、期間a2を「1」とした場合の、ピーク位置から期間d2だけずれた位置に相当し、この期間d2も0.1に近い値となる。また、周期N+2についても、同様に、図5に示す期間d3は0.1に近い値となる。
【0058】
このように、比較信号S110がハイレベルの期間について、中心位置から0.1だけずれた位置、すなわち、中心位置までの期間の20%手前となる位置を位相検出点とすると、各周期において、位相検出点はピーク位置(π/2)からほぼ0.1だけずれた位置となり、ピーク位置に対する相対的な位置はほぼ一定となる。
そこで、本発明では、比較信号S110のハイレベルの期間の中心位置から0.1だけずれた位置を位相検出点とするものとする。
【0059】
一方、正弦波信号A1の位相検出点については、各周期において比較信号S112の立ち上がり位置を位相検出点とするようにする。正弦波信号A1は、図8(A)に示す印加電圧と同様に振幅は変化しないので、各位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置は一定となっているからである。
【0060】
なお、正弦波信号A1に対するしきい値Th4は、図8(A)に示すしきい値Th1と同様に、1/2周期(0〜π)を「1」としてピーク位置から0.1だけずれた位置が位相検出点となるように予め設定しておくものとする。このようにすることで、電流信号A10と正弦波信号A1とで、ピーク位置に対する相対的な位置がほぼ同じ位置で位相を比較することができる。その結果、それぞれの位相検出点が一致した場合に、それぞれのピーク位置もほぼ一致しており、電流信号A10と正弦波信号A1との位相はほぼ一致することとなる。
【0061】
また、前述のように、中心位置までの期間の20%手前となる位置を位相検出点とするためには、比較信号S110のハイレベルの期間を100%とした場合に、下記式(1)に示すように、ハイレベルの期間の立ち上がりの位置から40%に相当する位置を位相検出点とする必要がある。
(100%―20%)/2=40% ・・・(1)
【0062】
しかしながら、例えば、図5に示す周期N+1において位相検出点を定めようとしても、周期N+1においてハイレベルの期間b2は、この期間b2が経過しないと分からないため、この期間b2の立ち上がりの位置から40%に相当する位置も分からないこととなる。
そこで、本発明では、1つ前の周期Nにおいてハイレベルの期間である期間b1を用いて、期間b2の立ち上がりの位置から期間b1の40%に相当する位置を、周期N+1の位相検出点と定めるものとする。
【0063】
また、図4に示す演算値記憶部340に記憶される演算値は、比較信号S110のハイレベルの期間を「1」とした場合の、比較信号S110の立ち上がりの位置から位相検出点までの期間として記憶させるようにする。したがって、前述のように、ハイレベルの期間の立ち上がりの位置から40%に相当する位置を位相検出点とする場合には、「0.4」を記憶させるようにする。
【0064】
A3.位相比較の具体的な動作:
まず、図3に示す位相比較部230に入力される電流信号A10側のピーク信号S111の生成動作を図4,図6を用いて具体的に説明する。
【0065】
図6は、ピーク信号生成部200におけるピーク信号S111の生成動作と、位相検出点の定め方と、を模式的に示す説明図である。
図6において、上部は電流信号A10の波形を示し、下部は比較信号S110,図4に示すクロック回路310の出力するクロック信号,カウンタ値記憶部330に記憶されるカウンタ値,ピーク信号S111,位相検出点及びピーク位置を示す。
なお、図6において、横軸,縦軸,白抜きの三角の印,黒い三角の印,周期N〜N+2,期間b1〜b3は、それぞれ、図5における横軸,縦軸,白抜きの三角の印,黒い三角の印,周期N〜N+2,期間b1〜b3と同じであるので説明を省略する。また、図6の最下部に示すように、周期N〜N+2について、1/2周期(0〜π)を1とした場合の、ピーク位置から位相検出点までの期間をd1〜d3とする。
【0066】
今、図6に示す周期Nが終わり周期N+1が開始する。このとき、1つ前の周期Nにおいて、図4に示すカウンタ部320は、図6に示す期間b1におけるクロック数をカウントし、得られたカウンタ値(C1)をカウンタ値記憶部330に記憶させると共に、乗算回路350は、このカウンタ値「C1」と、演算値記憶部340に記憶されている演算値「0.4」と、を掛け合わせて得られた「C1*0.4」を演算結果記憶部360に記憶させている。
【0067】
周期N+1が始まり電流信号A10がしきい値Th3に達すると、比較信号S110はハイレベルとなり、図4に示すカウンタ部320はクロック数のカウントを開始する。そして、比較部370は、カウンタ部320がカウントするカウンタ値と、演算結果記憶部360に記憶されている「C1*0.4」と、を順次比較していき、カウンタ値が「C1*0.4」となった段階でピーク信号S111を所定期間だけハイレベルにする。そして、比較信号S110がハイレベルからローレベルになり、期間b2が終了した段階で、カウンタ部320は、そのときのカウンタ値(C2)をカウンタ値「C1」に上書きしてカウンタ値記憶部330に記憶させる。
そして、乗算回路350は、このカウンタ値「C2」と、演算値記憶部340に記憶されている演算値「0.4」と、を掛け合わせ、得られた「C2*0.4」を、既に記憶されている「C1*0.4」に上書きして演算結果記憶部360に記憶させる。
【0068】
一方、位相比較部230に入力される正弦波信号A1側の比較信号S112については、電圧比較部224において、前述のようにして設定されたしきい値Th4と正弦波信号A1とが比較されて生成されるので、図8(A)に示す比較信号と同じ信号となる。
【0069】
そして、図3に示す位相比較部230は、上述したピーク信号S111と比較信号S112とを入力し、それぞれの位相検出点を比較する。
ここで、位相比較部230は、電流信号A10については、ピーク信号S111の立ち上がりの位置を検出して位相検出点とする。その結果、周期N+1については、期間b2の立ち上がりの位置から「C1*0.4」の位置が位相検出点となり、周期N+2については、期間b3の立ち上がりの位置から「C2*0.4」の位置が位相検出点となる。
【0070】
図6に示すように、隣り合う周期において、比較信号S110のハイレベルの期間の変化は小さく、特に、正弦波信号A1の周波数が共振周波数に近い状態においては、電流信号A10の振幅はほぼ一定となるので、ハイレベルの期間はほぼ同じとなる。したがって、先に説明したように、図6に示す期間d1〜d3は、1/2周期(0〜π)を「1」とした場合に、いずれもほぼ「0.1」となり、各位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置はほぼ一定となる。
【0071】
一方、正弦波信号A1については、比較信号S112の立ち上がりの位置を検出して位相検出点とするので、各位相検出点は、各周期の1/2周期(0〜π)を「1」とした場合に、各周期のピーク位置から0.1だけずれた位置で一定であり、ピーク位置に対する相対的な位置は一定である。
【0072】
このようにして、位相比較部230は、ピーク位置に対する相対的な位置がほぼ一定である位相検出点同士を比較することとなる。その結果、位相比較部230は、電流信号A10の振幅が変化しても、電流信号A10及び正弦波信号A1の位相差をほぼ正確に検出することとなる。
【0073】
A4.実施例の効果:
以上説明したように、波形発生部100では、電流信号A10の位相検出点を、比較信号S110の立ち上がりの位置ではなく、比較信号S110のハイレベルの期間を「1」とした場合のピーク位置から「0.1」だけずれた位置としている。その結果、この位相検出点は、各周期の1/2周期(0〜π)を「1」とした場合に、ピーク位置からほぼ「0.1」だけずれた位置となり、各周期において、位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置はほぼ一定となる。
一方、正弦波信号A1については、振幅が変化しないことから、位相検出点のピーク位置に対する相対的な位置は一定である。したがって、電流信号A10と正弦波信号A1とで、それぞれの位相検出点で位相を比較することにより、ピーク位置に対する相対的な位置がほぼ一定である位相検出点同士で位相を比較することができる。
【0074】
その結果、位相比較部230は、電流信号A10の振幅が変化しても、電流信号A10及び正弦波信号A1の位相差をほぼ正確に検出することが可能となり、ほぼ正確な位相差を示す位相差信号P1を正弦波生成部240に出力することができる。それ故、正弦波生成部240は、正弦波信号A1の周波数を適切に調整することが可能となり、放電ランプ10の点灯を安定して維持することができる。
【0075】
B.変形例:
なお、本発明は、前述の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形も可能である。
【0076】
B1.変形例1:
上述した実施例では、共振部150への印加電圧の元となる正弦波信号A1は、正弦波であるものとしたが、正弦波に限らず、他の波形であっても構わない。この場合、各波形に応じた演算値を定めて、図3に示す演算値記憶部340に記憶させるようにしてもよい。
図7は、変形例1における印加信号及びその元となる信号の波形と、それぞれの波形に設定される演算値の一例を示す説明図である。
図7に示すように、ノコギリ波1は、周期の開始位置から1周期の位置までを1とした場合に開始位置から0.8だけずれた位置がピーク位置となっている。従って、演算値として0.7を設定することで、ピーク位置に比較的近い位置を位相検出点とすることができる。
同様にして、ノコギリ波2では0.2,三角波及び正弦波では0.5だけ開始位置からずれた位置がピーク位置であるので、それぞれピーク位置に近い位置である0.1及び0.4だけ開始位置からずれた位置を位相検出点とするように、演算値を定めるようにしてもよい。このようにすることで、波形が変わっても、ピーク位置に近い位置を位相検出点として位相比較を行うことが可能となる。
【0077】
なお、このように演算値を固定とせずに、例えば、ノコギリ波1であれば、「0.7」〜「0.8」といった演算値の範囲を予め定めておき、この範囲のうちのいずれかの値を演算値として採用するようにしてもよい。
【0078】
B2.変形例2:
上述した実施例では、各周期において、比較信号S110のハイレベルの期間を「1」として、このハイレベルの期間の中心位置から「0.1」だけずれた位置を位相検出点としたが、本発明は、「0.1」に限定するものではない。よりピーク位置に近い位置を位相検出点とするために、例えば、中心位置から「0.05」だけずれた位置を位相検出点としてもよい。
この場合、位相検出点は、比較信号S110のハイレベルな期間において、中心位置までの期間の10%手前となる位置に相当し、上記式(1)と同様に算出すると「45%」を得ることとなる。従って、比較信号S110のハイレベルの期間を100%として、比較信号S110の立ち上がり位置から45%に相当する位置を位相検出点として定めるようにすればよく、そのために、「0.45」を演算値として設定すると共に、正弦波信号A1に対するしきい値Th4も、各位相検出点が各ピーク位置から0.05だけずれた位置となるように変更すればよい。
【0079】
なお、上述した実施例では、電流信号A10と正弦波信号A1との所定の位相差を0としたが、本発明では、前述の演算値の値を変更することで、これら信号の位相差を任意の位相差にすると共に、この位相差を維持することができる。これは、例えば、演算値を「0.4」から「0.45」に変更する一方で、正弦波信号A1に対するしきい値Th4を変更しないことにより可能となる。
この場合、電流信号A10についての位相検出点は、1/2周期(0〜π)を「1」として、ピーク位置からほぼ「0.05」だけずれた位置で一定となるのに対し、正弦波信号A1についての位相検出点は、上述した実施例のように、ピーク位置から「0.1」だけずれた位置で一定となる。従って電流信号A10と正弦波信号A1とは、各周期において、ほぼ0.05に相当する位相差を維持することとなる。
【0080】
また、上述した実施例では、最高値を示すピーク位置により近い位置を位相検出点とするようにしていたが、最低値を示すピーク位置により近い位置を位相検出点とするようにしてもよい。この場合、例えば、比較信号S110の立ち下がりの位置から、比較信号S110のハイレベル期間に対して所定の割合(例えば80%等)の期間だけずれた位置を位相検出点とすればよい。そして、正弦波信号A1についても、正弦波信号A1における最低値を示すピーク位置に比較的近い位置が位相検出点となるようにしきい値Th4を設定して位相検出点を検出するようにすればよい。
【0081】
B3.変形例3:
上述した実施例では、液晶プロジェクタ1000に適用した場合について説明したが、本発明は、液晶プロジェクタ1000に限らず、DLPプロジェクタ(DLPは登録商標)に適用することも可能である。また、プロジェクタに限らず、車載照明機器(ヘッドランプ)などの、共振回路により放電ランプの点灯制御を行う照明装置に適用することも可能である。また、ランプ以外の放電制御に適用したり、放電ランプに限らず、ピエゾモータ等のアクチュエータの動作を共振回路により制御する制御回路に適用することもできる。更には、共鳴制御にも応用して、原子時計,レーザ発振制御回路,無線同調制御回路等に適用することもできる。
【0082】
B4.変形例4:
上述した実施例では、共振回路の電流の位相と正弦波信号A1の位相と比較していたが、本発明は、位相比較する場合にのみ適用されるものではない。上述の放電ランプやアクチュエータ等の動作を制御する制御回路において、共振回路における電流のピーク位置を検出する必要がある場合には、本発明を適用して、上述した実施例における位相検出点をピーク位置として検出することができる。
このようにすることで、実際のピーク位置に対する相対的な位置が一定である位置をピーク位置として検出することができるので、共振回路における電流の振幅が変化した場合においても、所定の誤差の範囲内でピーク位置を検出することが可能となる。
【0083】
なお、上述のような共振回路における電流に代えて、振幅が変化し得るような電流等のアナログ信号に対して本発明を適用することも可能である。このようにすることで、このアナログ信号のピーク位置についても、所定の誤差の範囲内で検出することが可能となる。
【0084】
B5.変形例5:
上述した実施例では、共振回路の電流値を電流センサで検出し、電流信号A10として正弦波信号A1と位相比較するようにしていたが、電流値に代えて、実際に共振部150に印加される電圧値を電圧センサで検出してアナログ信号として出力し、このアナログ信号を正弦波信号A1と位相比較するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施例としての液晶プロジェクタの概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す放電ランプ制御部20の概要構成を示す説明図である。
【図3】図2に示す波形発生部100の構成を示す説明図である。
【図4】図3に示すピーク信号生成部200の詳細構成を示す説明図である。
【図5】本発明における電流信号A10の位相検出点の定め方の概要を示す説明図である。
【図6】ピーク信号生成部200におけるピーク信号S111の生成動作と、位相検出点の定め方と、を模式的に示す説明図である。
【図7】変形例1における印加信号及びその元となる信号の波形と、それぞれの波形に設定される演算値の一例を示す説明図である。
【図8】従来のプロジェクタにおいて、共振回路に印加される電圧の位相と、共振回路のおける電流の位相と、を比較する比較方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
10...放電ランプ
20...放電ランプ制御部
30...CPU
40...液晶パネル
50...投写光学系
60...入力部
70...画像処理部
80...液晶パネル駆動部
100...波形発生部
130...共振駆動部
140...電流センサ
150...共振部
200...ピーク信号生成部
212,222...しきい値記憶部
214...電流比較部
224...電圧比較部
230...位相比較部
240...正弦波比較部
310...クロック回路
320...カウンタ部
330...カウンタ値記憶部
340...演算値記憶部
350...乗算回路
360...演算結果記憶部
370...比較部
1000...液晶プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的なアナログ信号のピーク位置を基準として、所望の位相となる時間的位置を検出し、検出した前記時間的位置を示す検出信号を出力する特定位相位置検出回路。
【請求項2】
アナログ信号の各周期において、特定の位相となる時間的位置を特定位相位置として検出する特定位相位置検出回路であって、
前記アナログ信号の信号レベルが所定のしきい値と一致する時間的位置を基準位置として検出する第1の検出部と、
前記基準位置に基づく時間的長さを基準期間として計測する計測部と、
前記基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する算出部と、
前記基準位置と前記付加期間とに基づいた時間的位置を前記特定位相位置として検出し、前記特定位相位置を示す検出信号を出力する第2の検出部と、
を備える特定位相位置検出回路。
【請求項3】
アナログ信号の各周期において、特定の位相となる時間的位置を特定位相位置として検出する特定位相位置検出回路であって、
前記アナログ信号の各周期ごとに、前記アナログ信号の信号レベルが第1のしきい値と一致する2つの時間的位置を第1及び第2の基準位置としてそれぞれ検出すると共に、前記第1及び第2の基準位置間の時間的長さを基準期間として計測する計測部と、
前記アナログ信号の各周期ごとに、前の周期において計測された前記基準期間に基づいて、前記基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する算出部と、
現周期において検出された前記第1の基準位置から、前記算出部により算出された前記付加期間だけずれた時間的位置を前記特定位相位置として検出し、前記特定位相位置を示す検出信号を出力する検出部と、
を備える特定位相位置検出回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の特定位相位置検出回路であって、
前記アナログ信号は、共振回路から出力されるアナログ信号であることを特徴とする特定位相位置検出回路。
【請求項5】
請求項4に記載の特定位相位置検出回路を備え、前記共振回路に電圧を印加する共振駆動部に対して、前記電圧の波形を示す電圧信号を出力する波形発生回路であって、
前記電圧信号を生成する波形生成部と、
前記波形生成部により生成された前記電圧信号を入力し、前記電圧信号の各周期ごとに、前記電圧信号の信号レベルが第2のしきい値と一致する2つの時間的位置を第3及び第4の基準位置としてそれぞれ検出すると共に、少なくとも前記第3または第4の基準位置のいずれか一方の時間的位置を示す位置信号を出力する位置信号出力部と、
前記特定位相位置検出回路が出力する前記検出信号と、前記位置信号出力部が出力する前記位置信号と、を入力して、前記検出信号の示す前記特定位相位置と、前記位置信号の示す前記第3または第4の基準位置の時間的位置と、を比較することにより、前記アナログ信号と前記電圧信号との位相差を検出し、前記位相差を示す位相差信号を出力する位相比較部と、
を備え、
前記波形生成部は、前記位相比較部が出力する前記位相差信号を入力すると共に、入力した前記位相差信号の示す前記位相差に基づき、前記電圧信号の周波数を調整することを特徴とする波形発生回路。
【請求項6】
請求項5に記載の波形発生回路を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項5に記載の波形発生回路を備え、放電ランプの点灯を制御するための放電ランプ制御装置であって、
前記放電ランプは、前記共振回路に接続されると共に、前記共振駆動部により前記共振回路に印加される電圧によって放電して点灯することを特徴とする放電ランプ制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放電ランプ制御装置と、前記放電ランプと、を備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
アナログ信号の各周期において、特定の位相となる時間的位置を特定位相位置として検出するための特定位相位置検出方法であって、
前記アナログ信号の各周期ごとに、前記アナログ信号の信号レベルが第1のしきい値と一致する2つの時間的位置を第1及び第2の基準位置としてそれぞれ検出する第1の工程と、
検出した前記第1及び第2の基準位置間の時間的長さを基準期間としてそれぞれ計測する第2の工程と、
前記アナログ信号の各周期ごとに、前の周期において計測された前記基準期間に基づいて、前記基準期間に対し一定の割合となる期間を付加期間として算出する第3の工程と、
現周期において検出された前記第1の基準位置から前記付加期間だけずれた時間的位置を、前記特定位相位置として検出する第4の工程と、
を備える特定位相位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−250588(P2006−250588A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64691(P2005−64691)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】