説明

特殊液用筆記体

【課題】浴室で使用する筆記体としては、インクを完全な液体として考え、入浴剤成分に有機溶媒や粘着剤等の添加物を加えた特殊なものを必要としており、またインクとなる液体は、あらかじめ製造工程で容器内に封入されたものであり、好みの粉末状入浴剤を使用することは不可能である。
また、調理時に文字を書く方法としては、ヒーターにより溶かした液を自由落下で垂らす方法等が採られていたが、一般の筆記具で書くような繊細な文字を書くことは難しかった。
【解決手段】筆記体の外形、外寸を一般的な太目の筆記体と同程度とし、利用者が特殊液等を入れるケースA部と、加圧構造、ストッパから構成されるケースBとを結合させ、特殊液等に圧力を付加し、ケースA先端の回転自在かつケースA内への移動可能としたボールを硬い平面に押し当てることで、ケースA吐出口とボールとの間に隙間を生じさせ特殊液等を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、完全な液体のみでなく固体である粉末状物質を含んだ特殊液をも塗布することを可能とした筆記体であり、インクの材料として使う粉末状物質を粉末状入浴剤としたときは、入浴時に浴室内のどこにでも文字や絵を書くことができ、また、インクの材料を小麦粉水溶液や卵黄といった食材を用いたときは、調理の際の飾りやメッセージとして繊細な文字や絵を書くことができることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末状物質を含んだ特殊液を塗布する筆記体というものは、従来技術として皆無である。
浴室用筆記体の一例としては、容器内にあらかじめ流動性を持たせた入浴剤を封入したマーカーペンがある(特許文献1参照)。他にはフエルト等の芯部でインクを吸い上げる一般の油性ペンの構造で、入浴剤を主成分として粘性や色を付加させるために他の成分を加え調整したインクを使った筆記具もある(特許文献2参照)。また、インク収容部の前端にボール等の弁機構を有しコイルばね等を用いた加圧機構によりインクの吐出安定性を高める構造の塗布具がある(特許文献3参照)。
調理用筆記体の一例としては、菓子用のもので、固形チョコレートをヒーターにより溶かし、先端のノズルから垂らして文字等を書くペンがある(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−158195号広報
【特許文献2】特許第4333323号広報
【特許文献3】特開平10−324837号広報
【特許文献4】実開昭62−162979号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では浴室で使用する筆記体として、インク塗布方法がボールペンと同様、液体を流出させるのに必用な分の筆記体吐出口とボールとの隙間を設けていたり、フエルト等の芯を使用した毛細管現象を利用したものであったりとインクを完全な液体として考えており、市販の入浴剤の飽和水溶液では粘度、色の濃度が不十分であることから、インクとして使用するために入浴剤成分を溶解するための有機溶媒や粘度を上げるための粘着剤等の添加物を必要とする特殊なものを用いるため、浴槽内に流入した際には純粋な入浴剤成分のみによる効能である爽快感やくつろぎ感等が減少される。また従来技術では、いずれもインクとなる液体をあらかじめ製造工程で容器内に封入したものであり、毎日の気分によって好みの入浴剤を使いたいといった場合、インクとなる液体を変えることは不可能であった。
調理時に文字を書く方法としては、従来技術で記したヒーターにより溶かした液体を自由落下で垂らす方法のほかに手で液体が入ったチューブ状の容器をしぼり、液体を出す方法または、直線状に細く切った食材を組み合わせて料理上にのせるという方法が採られていたが、一般の筆記具で書くような繊細な文字を書くことは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、外形、外寸を一般的な太目の筆記体と同程度とし、二分割された本体ケースのうち先端側のケースA内に、利用者が浴室用として使う場合は、粉末状入浴剤と水を、調理用として使う場合は液状あるいは粉体混じりの液状の食材を入れ、コイルばね及びピストンによる特殊液を含む液体への加圧構造とコイルばねの圧縮力を保持または開放するためにピストンの一部と係合して配置されるストッパから構成されるケースBとを結合させて使用するものであり、ストッパを開放して特殊液を含む液体に圧力を付加し内圧を高めた状態で、浴室用として使う場合は本体を軽く振って粉末状入浴剤と水を混ぜ流動性と粘着性を与え、エラストマー、ゴム等の素材でできたペン先(ボール)を硬い平面に押し当てることでボールが後退し、ボールとケースA吐出部とのあいだに粉末状物質を含んだ液体ではその粒子の径以上の隙間を生じさせ加圧されていた特殊液を含む液体を塗布することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
以上の手段により、人体、浴槽、タイルなどの浴室面に影響のない粉末状入浴剤の粒子の混ざった液体を浴槽、タイルなどの浴室面である被筆記体に塗布することができ、手軽で安全に明瞭な濃い線で浴室内のどこにでも文字や絵を描くことが可能となり、また、水をかけることで消去することも容易となる。
従って浴槽にゆっくりつかりながら、浴槽の湯から上の浴槽内側垂直面に書くことも可能となる。また、利用者がインクとして使う粉末状入浴剤を入れることができるので、好みの色や香りのものを自由に代えることができ、何度でも繰り返し使用することが可能となる。
また、ケースA内に入れる液体として、卵黄や小麦粉を水で溶かした液体といった粘性の高い、あるいは粉体混じりの液状の食材を用いて、被筆記体をフライパンとすることで、一般の筆記体同様の使用感で繊細な文字を書くことが可能となり、料理やお弁当、お皿の上にのせる飾りやメッセージとしての文字や絵を繊細なものとできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の縦断面図
【図2】本発明の斜視図
【図3】ケースA部に粉末状入浴剤と水を入れた状態の縦断面図
【図4】ケースB部コイルばねセット前の縦断面図
【図5】ケースB部コイルばねセット後の縦断面図
【図6】ストッパなどの変形例を示すストッパ、ピストン係合部横断面図
【図7】液体に圧力が加わった時のケースA部先端縦断面拡大図
【図8】ボールが硬い平面に押し当てられたときのケースA部先端縦断面拡大図
【図9】液体への加圧終了時の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施形態を詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の第1の実施例を示す縦断面図であって、一般の太目の筆記体と同等の外形、外寸を持ち、特殊液等を入れるケースA1の部分(ケースA部:符号1から3)と、加圧機構を備えたケースB4の部分(ケースB部:符号4から8)に分かれるようになっている。ケースA1の先端には、被筆記体を傷付けず、また、筆記時の被筆記体との滑りを抑える目的からエラストマーやゴムといった弾性体でできたボール2がある。ボール2は回転自在でかつ硬い平面10に押し当てた際に、ケースA1の吐出口12との間に隙間を生じさせ粉末状入浴剤の粒子が混ざった液体を塗布するために、ケースA1内軸方向に粉末状入浴剤粒子の径以上である0から0.5mm程度もぐり込むよう移動が可能になっており、受け座3によりその移動量は制限されている。また、受け座3には中心軸部のみでなく複数の特殊液等の流路があることが望ましい。
【0010】
ケースB4内部には、コイルばね5が取り付けられ、コイルばね5のもう一端にはピストン6が取り付けられている。ピストン6のもう一端にはパッキン7がはめ込まれ、ケースA1の円筒形部内壁と摺動自在に配置されている。パッキン7の代わりにOリングを用いた構造としても良い。また、ケースB4外部にはストッパ8が支点9を中心に回転可能に取り付けられており、セット時には圧縮させたコイルばね5の力をストッパ、ピストン係合部14にて保持する構造になっている。
【0011】
図2は、本発明の斜視図を示す。図3は、ケースA部を垂直に保持して粉末状入浴剤10と水11を入れた状態を示す。図4は、コイルばね5が自由長であるケースB部のセット前の状態を示す。図5は、コイルばね5を圧縮し、ストッパ8の先端部をピストンの円板状端部15と係合させて圧縮力を保持したケースB部のセット後の状態を示す。ここでコイルばね5の代わりにスポンジ等の弾性体を用いても良い。そして、図3のケースA部に図5のケースB部を螺合させる。ここでケースA部とケースB部の結合は、ねじ式に限らずコイルばね5の力がケースA部とケースB部を分離させようとする力以上の保持力が確保でき、ケースA部とケースB部との結合、分離の繰り返しが容易で耐久性があれば、一般的などのような方法でも良い。ストッパ8の後端部を押下することで、ピストン6とストッパ8との係合部14が外れ、保持されていたコイルばね5の圧縮力が開放されピストン6およびパッキン7を介して特殊液に圧力を与える。また、ストッパ8の代わりに図6で示すように本体の横断面方向に支点17で回転可能としたストッパ16をピストンの円板状端部15と係合させる方法でも良い。
【0012】
その後に、全体を軽く振って入浴剤と水を混ぜ合わせ、入浴剤粒子に流動性および粘着性を持たせる。図6は特殊液にコイルばね等による圧力が加わった時のケースA部先端の縦断面拡大図を示す。この状態では、ケースA1の先端の吐出口12は、ボール2で塞がれ液体は流出しない。図7は硬い平面13にボール2を押し当てたところで、ボール2とケースA1の吐出口12との間に生じた隙間から、融けきらない粉末状入浴剤10の粒子が水11とともに硬い平面13に塗布される状態を示す。ボール2を硬い平面13から離すと、特殊液の圧力によりボール2はケースA1の吐出口12に隙間なくはまり特殊液の流出は止まる。以上の動作により、浴室内の硬い平面であればどこにでも文字や絵を書くことが可能となる。図8はピストン6端部のパッキン7が受け座3に当たり、特殊液への加圧が終了した状態を示す。
【0013】
以上のように第1の実施例によれば、浴室内の硬い平面部であればどこにでも手軽に安全に明瞭で濃い線の文字や絵が書け容易に消すことができ、人体や浴槽、タイルなどの浴室面に影響がなく、日々の気分等により粉末状入浴剤を入れ替えて、繰り返し利用することが可能な浴室用筆記体を提供できる。
【実施例2】
【0014】
この発明の第2の実施例は、第1の実施例が浴室用の筆記体としてのものであったのに対し、調理用筆記体としてのものである。発明の構成については、第1の実施例とまったく同じであるが、使用する特殊液等は、あらかじめ小麦粉を水で溶かした水溶液や卵黄といった粘性が高く熱によって固化する食材である。したがって、第1の実施例の動作の説明の中にあるケース内に特殊液の材料を入れ、加圧後に軽く振る(混ぜる)という工程は不要である。本実施例では被筆記体はフライパンといった加熱調理器具であり被筆記体が水平の状態で使用するもので、第1の実施例同様その硬い平面13にペン先のボール2を押し当てて特殊液等を流出させ、文字や絵などを書いた後に加熱し固化させた後、被筆記体よりはがして利用する。
【0015】
以上のように第2の実施例によれば、一般の筆記体と同様の使用感で液状の食材を流出させることができるため、料理やお弁当、お皿の上にのせる飾りやメッセージとしての絵や文字を繊細なものとできる効果がある。また、第2の実施例では、常温は液体で加熱により固化する食材に限定したが、チョコレート等の食材で加熱により液状にしたものを本発明の特殊液等に使用し文字等を書いた後、冷やして固化させるという利用法もある。さらにデザート等のソースを本発明の特殊液等に使用し、皿の上に文字や模様を書くという利用法もある。
【産業上の利用可能性】
【0016】
浴室内のどこにでも安全に文字や絵を書くことのできる浴室用筆記体。
料理やお皿の上に液状の食材を使ってのせる文字や絵を繊細なものとできる調理用筆記体。
【符号の説明】
【0017】
1 ケースA
2 ボール
3 受け座
4 ケースB
5 コイルばね
6 ピストン
7 パッキン
8 ストッパ
9 支点
10 粉末状入浴剤
11 水
12 吐出口
13 硬い表面
14 ストッパ、ピストン係合部
15 ピストンの円板状端部
16 ストッパ
17支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対し溶融性を持つ粉末状物質と水からなる特殊液を、あるいは水よりも粘性の高い液体を入れる収容部であるケースA部と、コイルばね及びピストンによるケースA部収容部内の特殊液等への加圧構造と、その加圧力を保持または開放するためにピストンの一部と係合して配置されるストッパから構成されるケースB部との二つのケース部からなり、両者を結合して使用するもので、ケースA部先端の吐出口より加圧状態の特殊液等を塗布することを特徴とする特殊液用筆記体。
【請求項2】
請求項1記載の吐出口内部に回転自在かつケースA部軸方向でケースA部内に、その移動量を制限する受け座まで移動可能な弾力性を持ったボールを配置し、筆圧により生じる吐出口とボールとの粉末状物質の粒子径よりも大きな隙間、あるいは単純に吐出口とボールとの隙間より、加圧状態の特殊液等を特徴とする請求項1に記載の特殊液用筆記体。
【請求項3】
請求項1記載の粉末状物質を粉末状入浴剤としたことを特徴とする、請求項1または2に記載の構造を持つ浴室用筆記体。
【請求項4】
請求項1記載の特殊液あるいは水よりも粘性の高い液体を小麦粉を溶かした水溶液や卵黄といった食材としたことを特徴とする、請求項1または2に記載の構造を持つ調理用筆記体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−152722(P2011−152722A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16077(P2010−16077)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(709007537)
【Fターム(参考)】