説明

特装車のルーフ構造

【課題】 ルーフパネルの意匠設計の自由度を制約することなく、また車室内の空気を円滑に排出することができる特装車のルーフ構造を提供する。
【解決手段】 ハイルーフ用のルーフパネル10と、車室内の空気を排気するための換気扇13とを備えた特装車1において、換気扇13による排気を車室外に排出するための排気ダクト12の開口部を、ルーフパネル10のリア側における凹陥部20に設ける。そして、ダクトカバー11をルーフパネル10の凹陥部20に取り付けて、排気ダクト12の開口部を外部から見えないように覆い、かつ排気を外部に排出する隙間19をルーフパネル10との間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特装車のルーフ構造に関し、詳細には、ハイルーフ用のルーフパネルに排気を車室外に排出するための排気ダクトを設けた特装車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバン型車などでは、ベースとなるボディー本体に天井高を高くするためにハイルーフ用のルーフパネルを取り付けてハイルーフ仕様とした車両が知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。ハイルーフ車としては、ボディー上縁からルーフ高が200mm程度のものが一般的であるが、特殊用途に用いられる特装車ではルール高が400mm以上となるものも存在する。そして、特装車の中には用途や目的に応じて、車室内の空気を排気するための換気扇を備えて、その換気扇による排気を車室外に排出するための排気ダクトをルーフパネルに設けたものが知られている。
【0003】
図3は、従来の特装車100の斜め後方から見た外観斜視図である。図4は、従来のルーフパネル101のB−B線における矢視方向断面図である。図3に示すように、従来の特装車100では、換気扇103による排気を排出するための排気ダクト104をルーフパネル101に設ける場合、加工が容易なFRPなどを用いて排気ダクト104を収容可能な形状でルーフパネル101を成形し、このルーフパネル101を換気扇103及び排気ダクト104とともにボディー本体102に取り付けている。そのため、ルーフパネル101は、排気ダクト104を収容する部分が外部(図3では車両の側面方向)に膨らんだ形状をなし、また排気ダクト104は排気がしやすいように車両の進行方向とは反対のリア側に向けて配置されている。
【0004】
また、図4に示すように、ルーフパネル101の排気ダクト104が設置された部分を、特装車100のサイド側方向(B−B線における矢視方向)からみると、ルーフパネル101内部には車室内の空気を排気する換気扇103が設けられ、換気扇103から排気ダクト104内に送風された排気は、排気の流れを調整するバタフライ弁105を介して、排気ダクト104の開口部から車室外に排出される。なお、排気ダクト104の開口部は、パンチングメタルによるメッシュ構造となっており、排気の排出口としての機能のみならず、外部からのゴミや障害物の進入を防ぐ機能を有する。
【特許文献1】特開平8−295186号公報
【特許文献2】特開平9−254815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の特装車では、換気扇による排気を排出するための排気ダクトをルーフパネルに設ける場合は、ルーフパネルに排気ダクトを収容する箇所を設ける必要性があり、またルーフパネル表面に排気ダクトの開口部が表れることから、ルーフパネルの意匠設計の自由度を制約してしまうという問題があった。
【0006】
また、ルーフパネル表面に排気ダクトの開口部が表れると、換気扇から送風された排気はバタフライ弁を介して排気ダクトから直接車室外に排出されることになる。そのため、例えば車室外でリア側からフロント側に向けて強風が流れている場合など、排気ダクトにも車室外の空気が流れ込むため、排気ダクトから排気を排出しづらくなるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、換気扇による排気を排出するための排気ダクトをルーフパネルに設ける場合であっても、ルーフパネルの意匠設計の自由度を制約することなく、また車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる特装車のルーフ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の特装車のルーフ構造は、ハイルーフ用のルーフパネルと、車室内の空気を排気するための換気手段とを備え、前記ルーフパネルに前記換気手段による排気を車室外に排出するための排気ダクトを設けた特装車のルーフ構造であって、前記排気ダクトの開口部を被覆するダクトカバーを備え、前記ダクトカバーは前記ルーフパネルに取り付けられて、前記ルーフパネルにおける前記排気ダクトの開口部を外部から見えないように覆い、かつ排気を外部に排出する隙間を前記ルーフパネルとの間に形成していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明の特装車のルーフ構造は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記ルーフパネルは、前記特装車のリア側に向けられた面に凹陥部が形成されており、前記排気ダクトの開口部は、前記凹陥部の内部に設けられ、前記ダクトカバーは前記凹陥部に取り付けられて、前記凹陥部が形成された面を滑らかに連続する面形状とすることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明の特装車のルーフ構造は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記換気手段により前記排気ダクトから排出された排気は、前記排気ダクトの開口部と対向する前記ダクトカバーの内面に沿って、前記ダクトカバーと前記ルーフパネルとの隙間から導出されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明の特装車のルーフ構造は、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記換気手段により前記排気ダクトから排出された排気は、前記ダクトカバーと前記ルーフパネルとの隙間のうち、前記特装車のリア側に向けた隙間から導出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の特装車のルーフ構造では、ハイルーフ用のルーフパネルに換気手段による排気を車室外に排出するための排気ダクトを設けたものであって、ルーフパネルに排気ダクトの開口部を被覆するダクトカバーを取り付けて、その開口部を外部から見えないように覆い、かつ排気を外部に排出する隙間をルーフパネルとの間に形成している。よって、換気扇による排気を排出するための排気ダクトをルーフパネルに設ける場合であっても、ルーフパネルの意匠設計の自由度を制約することなく、また車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明の特装車のルーフ構造では、請求項1に記載の発明の効果に加え、ルーフパネルのリア側の凹陥部に排気ダクトの開口部が設けられ、ダクトカバーをその凹陥部に取り付けて表面を滑らかに連続する面形状とする。よって、ルーフパネルのリア側の凹陥部に設けた排気ダクトの開口部をダクトカバーで被覆することで、その表面を滑らかに連続する面形状とすることができ、ルーフパネルの意匠設計の自由度を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明の特装車のルーフ構造では、請求項2に記載の発明の効果に加え、排気ダクトから排出された排気は、ダクトカバーの内面に沿ってダクトカバーとルーフパネルとの隙間から導出される。よって、排気ダクトからの排気が直接車室外に排出されないため、車室外の環境の影響を受けることなく、車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の特装車のルーフ構造では、請求項3に記載の発明の効果に加え、排気ダクトから排出された排気は、ダクトカバーとルーフパネルとの隙間のうち、特装車のリア側に向けた隙間から導出される。よって、排気がしやすい車両のリア側におけるダクトカバーとルーフパネルとの隙間から、車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る特装車のルーフ構造の実施の形態について、特装車1を例示して説明する。図1は、特装車1の斜め後方から見た外観斜視図である。図2は、ルーフパネル10のA−A線における矢視方向断面図である。
【0017】
まず、特装車1について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る特装車1は、特殊用途に用いられる特装車であり、車室内の天井高を高くするためにハイルーフ用のルーフパネル10を取り付けたハイルーフ仕様となっている。これは、ルーフパネル10自体に補器類などの重量物を設置できるようなスペースを確保するためであり、本実施の形態ではルーフパネル10のルーフ高は約400mmである。そして、下方に開口するように湾曲した容器状をなすルーフパネル10は、鉄板が加工成形されたものであり、特装車1のボディー本体2の上方に向けた開口部に取り付けられて、特装車1の天井部を形成する。
【0018】
また、特装車1において、ルーフパネル10のリア側縁部には、後述するダクトカバー11が設けられており、このダクトカバー11の両サイド側に各々警告灯8が設けられている。警告灯8は、特装車1の出動時などに外部に緊急状態を報知するためのものである。そして、図1に示すように、ダクトカバー11はルーフパネル10と一体となるように取り付けられており、外観上はルーフパネル10におけるダクトカバー11の取付け部位は滑らかに連続する面形状となっている。なお、ダクトカバー11が取り付けられたリア側縁部の下方で、バックドア5がボディー本体2に取り付けられている。
【0019】
次に、ルーフパネル10におけるダクトカバー11の内部構造について説明する。図2に示すように、ルーフパネル10におけるダクトカバー11の取付け部断面(A−A線における断面)を側面方向から見ると、ルーフパネル10はリア側縁部でパネル表面の滑らかな曲面形状に対して凹陥した凹陥部20が形成されている。
【0020】
そして、凹陥部20を被覆するように、ダクトカバー11がルーフパネル10に取付けられている。ダクトカバー11は、リア側に向けて下方に湾曲した形状をなすABS製のブロー成形部材であり、そのフロント側端縁部は取付部18でルーフパネル10とネジ止め又は接着固定されている。一方、ダクトカバー11のリア側端縁部は固定されておらず、ダクトカバー11とルーフパネル10との間に隙間19が形成されている。
【0021】
ルーフパネル10には、隙間19からリア側端部にかけて一段低くなった段差部22が形成されている。そして、ルーフパネル10のリア側端部に、バックドア5の上端縁部5aが取付金具7によって取り付けられている。
【0022】
取付金具7はバックドア5を開閉可能に軸支するものである。また、ルーフパネル10のリア側端縁部には、段差部22とバックドア5の上端縁部5aとにより囲まれた空間である可動領域21が形成されている。よって、バックドア5を開閉するとその上端部5bが可動領域21内を上下方向に動くことができるため、バックドア5の開閉動作がルーフパネル10によって妨げられることはない。
【0023】
次に、特装車1における車室内の空気の排気について説明する。図2に示すように、凹陥部20の内部には、車室内の空気が排気される流路を形成する排気ダクト12の開口部が設けられている。この排気ダクト12の開口部には、排気の流れを調整するバタフライ弁17が設けられている。また、ルーフパネル10のリア側内部には、車室内の空気を車室外に向けて送風する換気扇13が設置されている。そして、換気扇13により送風された排気は、排気ダクト12を経由してバタフライ弁17から凹陥部20内に排出される。
【0024】
ここで、ダクトカバー11における凹陥部20に対向する内面は、取付部18から隙間19に向けて徐々に下方に湾曲しているため、排気ダクト12から凹陥部20内に排出された排気は、この湾曲した内面に沿って隙間19から可動領域21内に導出される。そして、可動領域21は、バックドア5の上端部5bとダクトカバー11との隙間である上方開口部31と、特装車1(ルーフパネル10)の左右の両側面方向に開口した側面開口部32の各々に連通している。よって、可動領域21内に導出された排気は、上方開口部31又は側面開口部32から特装車1の外部に排出されることになる。なお、本実施の形態において、換気扇13が本発明の「換気手段」に相当し、隙間19が本発明の「排気を外部に排出する隙間」に相当する。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態の特装車1のルーフ構造によれば、排気ダクト12を被覆するダクトカバー11をルーフパネル10に取り付けることで、ルーフパネル10における排気ダクト12の開口部を外部から見えないように覆い、かつ排気を外部に排出する隙間19をルーフパネル10との間に形成した。よって、換気扇13による排気を排出するための排気ダクト12をルーフパネル10に設ける場合であっても、ルーフパネル10の意匠設計の自由度を制約することなく、また車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる。
【0026】
また、ルーフパネル10のリア側における凹陥部20に排気ダクト12の開口部を設け、この凹陥部20の開口部をダクトカバー11で被覆することで、ルーフパネル10の表面を滑らかに連続する面形状とすることができ、ルーフパネル10の意匠設計の自由度を向上させることができる。
【0027】
また、排気ダクト12から排出された排気はダクトカバー11の内面に沿って、ダクトカバー11とルーフパネル10との隙間のうち、特装車1のリア側に向けた隙間19から導出される。よって、排気ダクト12からの排気が直接車室外に排出されないため車室外の環境の影響を受けることなく、排気がしやすい特装車1のリア側から車室内の空気を車室外へ円滑に排出することができる。
【0028】
なお、本発明は、以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変形が可能なことはいうまでもない。
【0029】
上記実施の形態では、ルーフパネル10におけるリア側端縁部に、凹陥部20,排気ダクト12,ダクトカバー11などを設けているが、これらの構成を設ける数量,位置,大きさ,範囲などは、特装車1の用途や目的などに応じて任意とすることができる。例えば、凹陥部20,排気ダクト12,ダクトカバー11をルーフパネル10に複数設けてもよいし、特装車1(ルーフパネル10)のサイド側端縁部に設けてもよい。
【0030】
同様に、特装車1のリア側に向けた隙間19から換気扇13による排気が排出されているが、換気扇13による排気が排出される隙間はルーフパネル10の任意に位置,大きさ,範囲で形成することができ、例えばルーフパネル10におけるフロント側又はサイド側に向けた面に形成してもよい。
【0031】
また、上記実施の形態では、排気ダクト12の開口部を凹陥部20に設けているが、排気ダクト12の開口部をルーフパネル10における他の部位(例えば、表面が滑らかに連続する面形状をなす部位)に設けて、その排気ダクト12の開口部をダクトカバー11で被覆するようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、換気扇13をルーフパネル10の内部に設けているが、換気扇13を車室内の任意の位置に設けて、その換気扇13による排気がルーフパネル10に設けられた排気ダクト12から排出されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る特装車のルーフ構造は、ハイルーフ用のルーフパネルに換気手段による排気を車室外に排出するための排気ダクトを設けた特装車のルーフ構造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】特装車1の斜め後方から見た外観斜視図である。
【図2】ルーフパネル10のA−A線における矢視方向断面図である。
【図3】従来の特装車100の斜め後方から見た外観斜視図である。
【図4】従来のルーフパネル101のB−B線における矢視方向断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 特装車
2 ボディー本体
5 バックドア
5a 上端縁部
5b 上端部
7 取付金具
8 警告灯
10 ルーフパネル
11 ダクトカバー
12 排気ダクト
13 換気扇
17 バタフライ弁
18 取付部
19 隙間
20 凹陥部
21 可動領域
22 段差部
31 上方開口部
32 側面開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイルーフ用のルーフパネルと、車室内の空気を排気するための換気手段とを備え、前記ルーフパネルに前記換気手段による排気を車室外に排出するための排気ダクトを設けた特装車のルーフ構造であって、
前記排気ダクトの開口部を被覆するダクトカバーを備え、
前記ダクトカバーは前記ルーフパネルに取り付けられて、前記ルーフパネルにおける前記排気ダクトの開口部を外部から見えないように覆い、かつ排気を外部に排出する隙間を前記ルーフパネルとの間に形成していることを特徴とする特装車のルーフ構造。
【請求項2】
前記ルーフパネルは、前記特装車のリア側に向けられた面に凹陥部が形成されており、
前記排気ダクトの開口部は、前記凹陥部の内部に設けられ、
前記ダクトカバーは前記凹陥部に取り付けられて、前記凹陥部が形成された面を滑らかに連続する面形状とすることを特徴とする請求項1に記載の特装車のルーフ構造。
【請求項3】
前記換気手段により前記排気ダクトから排出された排気は、前記排気ダクトの開口部と対向する前記ダクトカバーの内面に沿って、前記ダクトカバーと前記ルーフパネルとの隙間から導出されることを特徴とする請求項2に記載の特装車のルーフ構造。
【請求項4】
前記換気手段により前記排気ダクトから排出された排気は、前記ダクトカバーと前記ルーフパネルとの隙間のうち、前記特装車のリア側に向けた隙間から導出されることを特徴とする請求項3に記載の特装車のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45229(P2007−45229A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229637(P2005−229637)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】