説明

玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステム

【課題】不正確な玉掛けを解消して、正確に玉掛けを実施することができる玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステムを提供すること。
【解決手段】玉掛けシステム1は、多関節ロボット20bと、多関節ロボット20bのアームに取り付けられるロボットハンド30であって、鋼材玉掛用の吊ワイヤを把持又は解放するロボットハンド30と、吊ワイヤに取り付けられた反射テープ14cを照明する照明機器18aと、所定の検出感度に設定され反射テープを検出しカメラ映像として出力するCCDカメラ18bと、そのカメラ映像に基づいて反射テープの位置を求める画像処理雄値18と、反射テープの位置に基づいて吊ワイヤを把持させる把持命令をロボットハンド30に送信して当該ロボットハンド30を制御する玉掛けロボット制御装置16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステムに関し、更に詳しくは、吊具本体の軽量化を図るとともに、正確な玉掛けを可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
「玉掛け」とは、ワイヤで鋼材を吊ること、更には、その吊った鋼材をクレーン等で移動させトラックに積載することまでを意味する。図13は、鋼材BをワイヤWで吊った玉掛けの状態を示したものである。玉掛けは従来の一般的なロボットを用いて行うが、二人の作業者(主玉掛け者及び補助者)による補助作業が必要である。
【0003】
また、この種の従来技術としては、例えば、特許文献1の長尺物自動玉掛け吊具が知られている。この長尺物自動玉掛け吊具は、クレーンにより長いものから比較的短いものまで広範囲に吊り上げられるとともに、耐荷重性が優れたものを提供することを目的として提案されたものであり、クレーンにより支持される吊具本体にモータによりピニオンを回転駆動させる一対の駆動装置を設け、該ピニオンに噛合するラックが形成された一対のビームを該吊具本体に夫々上下段差をもって支持し、該駆動装置により該ビームが該吊具本体の両側へ略水平に張り出すようにするとともに、垂下アーム対を拡縮自在に吊下してなる支持枠体を該各ビームの先端部に設け、該垂下アーム対の下端に所定長の吊索を張設してなる構成を備える。
【0004】
【特許文献1】特開2004−35195
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼材Bを吊るワイヤWは、図13に示すように形状不安定である。そのため、2玉掛け(2本の鋼材BをワイヤWで吊ること、同図(a)参照)を予定していても1玉掛け(1本の鋼材BをワイヤWで吊ること、同図(b)参照)になったり、その逆の場合もあるという問題が指摘されている。従って、従来では正確に自動的に玉掛けを実施することが困難であるという問題が指摘されている。更に、従来の一般的なロボットを用いた場合には、二人の作業者による補助作業が必要となり人件費がかかるという問題が指摘されている。
【0006】
また、特許文献1の長尺物自動玉掛け吊具は、吊具本体にモータ、ピニオン駆動装置等の付加機構が設けられるため、クレーン本体の荷重が増加するという問題が指摘されている。このように付加機構が増えると耐重量オーバーとなる場合があり、この場合には、クレーン本体の改造が必要になることがある。そうすると、コスト高となるという問題が指摘されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、
(1)玉掛けされる鋼材及びその結束線への吊ワイヤの引っかかり、
(2)1束の玉掛け時の2束の玉掛けの誤実施、
(3)2束の玉掛け時の1束の玉掛けの誤実施、といった不正確な玉掛けを解消して、正確に玉掛けを実施することができる玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステムを提供することを目的とする。
本発明は、更に、重量オーバーやコスト高といった問題を改善できる玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る玉掛けロボットは、
多関節ロボットと、
当該多関節ロボットのアームに取り付けられるロボットハンドであって、鋼材の玉掛け用の吊ワイヤを把持又は解放するロボットハンドと、
前記吊ワイヤに取り付けられた被検出手段を照明する照明手段と、
所定の検出感度に設定された撮像手段であって前記被検出手段を検出しカメラ映像として出力する撮像手段と、
前記カメラ映像に基づいて前記被検出手段の位置を求める画像処理手段と、
前記被検出手段の位置に基づいて当該吊ワイヤを把持させる把持命令を前記ロボットハンドに送信して当該ロボットハンドを制御するロボットハンド制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
この場合に、前記撮像手段は、前記鋼材及びその結束線の位置を検出してこれらをカメラ映像として出力するものであり、
前記画像処理手段は、前記カメラ映像に基づいて前記鋼材及びその結束線の位置を求めるものであり、
更に、
前記鋼材及びその結束線の位置に基づいて前記多関節ロボットのアームの軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御する多関節ロボット制御手段を備えるとよい。
この場合に、前記ロボットハンドは一対からなるものであり、その間隔が前記鋼材の束径よりも大きいものであるとよい。
この場合に、前記ロボットハンド、前記照明手段及び前記撮像手段は、前記多関節ロボットに取り付けられることが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る玉掛けロボットを用いた玉掛けシステムは、
本発明に係る玉掛けロボットを用いたシステムであって、
前記玉掛けロボットによる玉掛けを実施する台車レーンを、(1)台車レーン繰返し回数、台車レーンの束数、台車レーンの束長さ、及び、台車レーンのレーン番号からなる群の少なくともいずれか、及び/又は、(2)台車レーンを選択する選択ボタン及びこれを確定する確定ボタンの押下に基づいて判断する玉掛けロボット制御手段を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備えた本発明に係る玉掛けロボットは、撮像手段によって検出され撮像されたカメラ映像に基づいて画像処理手段が被検出手段の位置を求め、ロボットハンド制御手段が前記被検出手段の位置に基づいて吊ワイヤを把持させる把持命令をロボットハンドに送信して当該ロボットハンドを制御するので、
(1)玉掛けされる鋼材及びその結束線への吊ワイヤの引っかかり、
(2)1束の玉掛け時の2束の玉掛けの誤実施、
(3)2束の玉掛け時の1束の玉掛けの誤実施、といった不正確な玉掛けを解消して、正確に玉掛けを実施することができるという効果がある。
【0012】
本発明に係る玉掛けロボットは、撮像手段によって検出され撮像されたカメラ映像に基づいて画像処理手段が鋼材及びその結束線の位置を求め、多関節ロボット制御手段が当該鋼材及びその結束線の位置に基づいて前記多関節ロボットのアームの軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御するので、当該鋼材及び結束線にハンドやアームが引っかかることなく、正確に玉掛けを実施することができるという効果がある。
本発明に係る玉掛けロボットは、前記ロボットハンドが一対からなるものであり、その間隔が前記鋼材の束径よりも大きいため、鋼材及び結束線にハンドやアームが引っかかりにくいという効果がある。
【0013】
本発明に係る玉掛けロボットは、ロボットハンド、照明手段及び撮像手段が多関節ロボットに取り付けられるものであるため、重量オーバーを回避することができる。これにより、重量オーバーを回避するための設備投資を抑えることができるためコスト高を回避することができる。
本発明に係る玉掛けシステムは、本発明に係る玉掛けロボットを用いたものであるから、上記と同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る単腕式玉掛けロボット10(以下単に「玉掛けロボット10」という)を用いた玉掛けシステム1の構成を示すブロック図である。
【図2】吊具2の吊ビーム14aに吊ワイヤ14bが取り付けられた状態を示す外観図である。
【図3】吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)の検出動作の説明図である。
【図4】一対のロボットハンド30の間に照明機器18a及びCCDカメラ18bが取り付けられた状態を示す外観図である。
【図5】ロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持した状態及び玉掛けロボット10の玉掛け動作を示す外観図である。
【図6】(a)は玉掛けロボットPLC16の主操作盤のメイン画面例を示す図、(b)は長さ情報・束掛け部位・ロボット起動操作盤の画面例を示す図である。
【図7】玉掛けシステム1の動作遷移図である。
【図8】玉掛けシステム1のタイミングチャートである。
【図9】玉掛けシステム1のフローチャートである。
【図10】自動倉庫DBに基づいて玉掛け順序を決定するための説明図である。
【図11】自動倉庫DBに基づいて玉掛け順序を決定した一例を示す図である。
【図12】玉掛けロボットPLC16の主操作盤の登録・管理画面の一例を示す図である。
【図13】玉掛けを説明するための図である。
【符号の説明】
【0015】
1 玉掛けシステム
10 玉掛けロボット
14c 反射テープ(被検出手段)
16 玉掛けロボットPLC(ロボットハンド制御手段)
18 画像処理装置(画像処理手段)
18a 照明機器(照明手段)
18b CCDカメラ(撮像手段)
20 ロボットコントローラ(多関節ロボット制御手段)
20b 多関節ロボット(多関節ロボット)
30 ロボットハンド(ロボットハンド)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して本発明の一実施の形態に係る玉掛けシステム1について詳細に説明する。
(概略構成)
図1は本発明の一実施形態に係る玉掛けシステム1の構成を示すブロック図、図2は吊具14の吊ビーム14aに吊ワイヤ14bが取り付けられた状態を示す外観図、図3は吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)の検出動作の説明図、図4は一対のロボットハンド30の間に照明機器18a及びCCDカメラ18bが取り付けられた状態を示す外観図、図5はロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持した状態及び玉掛けロボット10の玉掛け動作を示す外観図、図6は(a)が玉掛けロボットPLC16の主操作盤のメイン画面例を示す図、(b)が長さ情報・束掛け部位・ロボット起動操作盤の画面例を示す図である。
【0017】
(玉掛けシステム1及び玉掛けロボット10)
図1に示すように、玉掛けシステム1は、自動倉庫制御装置12(以下単に「自動倉庫PLC12」という)に搭載又は双方向通信可能に接続される自動倉庫データベース(以下単に「自動倉庫DB」という)で在庫管理された鋼材Bの玉掛け順序を演算し、鋼材Bを吊具14の吊ビーム14aに取り付けられた吊ワイヤ14bに掛けてクレーンでトラックに搬送するとともに、鋼材Bの在庫管理を行うシステムである。
玉掛けシステム1は自動倉庫PLC12と、玉掛けロボット制御装置16(以下単に「玉掛けロボットPLC16」という)、画像処理装置18及びこれに接続された照明機器18a・CCDカメラ18b、ロボットコントローラ20及びこれに接続されたロボット搬送装置20a・6軸多関節ロボット20b並びにロボットハンド30等の各種デバイス、更にクレーン(図示省略)等を備える。
また、玉掛けロボット10は玉掛けシステム1を構成するもののうち、玉掛けロボットPLC16、画像処理装置18及びこれに接続された照明機器18a・CCDカメラ18b、ロボットコントローラ20及びこれに接続されたロボット搬送装置20a・6軸多関節ロボット20b並びにロボットハンド30、各種アーム等からなる。
【0018】
(吊具14、吊ビーム14a、吊ワイヤ14b、反射テープ14c)
図2に示すように、吊具14は鋼材Bの長手方向に沿うように配置され、その両端付近に二股の吊ビーム14aが取り付けられる。吊ビーム14aは180°又は360°旋回可能である。吊ビーム14aの先端にU字状に鋼材Bの玉掛け用の吊ワイヤ14bが取り付けられる。
図3に示すように、吊ワイヤ14bにはCCDカメラ18bの感度を吊ワイヤ14bの背景が検出されない所定の感度に下げても(例えば、感度25%)、CCDカメラ18bにより検出される被検出物として反射テープ14cが貼付される。反射テープ14cは画像処理装置18が吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を演算しうる程度の縦横サイズを備えるか、又は、吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を演算しうるように複数枚貼付される。上記のようにCCDカメラ18bは所定の感度に調整されるため、背景を検出することなく反射テープ14cを検出し、検出した反射テープ14cをカメラ映像として出力するので画像処理装置18による「CCDカメラ18bの誤認識に基づく演算」が解消され、一対のロボットハンド30による正確な吊ワイヤ14bの把持動作がなされる。被検出物は、CCDカメラ18bにより検出され得るものであればよいため、例えば、吊ワイヤ14bに蛍光塗料を塗布する等してもよい。
【0019】
(一対のロボットハンド30)
図4に示す一対のロボットハンド30は装置各部を制御するCPU、その制御プログラムや各種データを記憶する各種ROM、RAM等の記憶手段、各種入出力インタフェースを備え、6軸多関節ロボット20bのアームに取り付けられ、玉掛けロボットPLC16に双方向通信可能に接続され、玉掛けロボットPLC16の制御命令に従って吊ワイヤ14bの把持動作・解放動作を行う。一対のロボットハンド30はクランプからなり、一対の各ハンド間隔が鋼材Bの束径より大きい間隔とされる。一対のロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持して玉掛けするときに、吊ワイヤ14bが鋼材B及びその結束線に引っかからないようにするためである。
【0020】
図4に示すように、一対のロボットハンド30の間には照明機器18a及びCCDカメラ18bが取り付けられる。そのため、照明機器18aは当該一対のロボットハンド30及びその近傍を照明することができ、CCDカメラ18bは照明機器18aにより照明されたところを撮像することができる。これにより、画像処理装置18の「CCDカメラ18bの誤認識に基づく演算」が回避され、一対のロボットハンド30及び6軸多関節ロボット20bを正確に動作させることができる。
【0021】
図5に一対のロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持した状態で6軸多関節ロボット20bが玉掛けする動作の一例を示す。この際、CCDカメラ18bは鋼材B及びその結束線並びに近傍を撮像し、撮像した画像をカメラ映像として出力し、この映像に基づいて画像処理装置18によりその鋼材B及びその結束線の位置が求められる。そして、ロボットコントローラ20は、玉掛けロボットPLC16を経由して送信されるその鋼材B及びその結束線の位置に基づいて6軸多関節ロボット20bの各アーム軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御する。これにより、鋼材B及びその結束線が一対のロボットハンド30及び吊ワイヤ14bに引っかからないように各アームの動作が演算又は補正される。
【0022】
(照明機器18a、CCDカメラ18b)
照明機器18a及びCCDカメラ18bは上記のように一対のロボットハンド30の間に設けられる。従って、照明機器18aにより吊ワイヤ14bの把持部分及びその近傍やロボットハンド30の軌道及びその近傍を照らした状態で所定の感度に調整されたCCDカメラ18bが撮像する。従って、CCDカメラ18bは画像処理装置18の演算に不要な背景を認識することなく必要な対象物を撮像することができる。CCDカメラ18bは必要な対象物のみを撮像することが好ましい。
CCDカメラ18bは、例えば、
(1)吊ワイヤ14bの反射テープのカメラ映像に基づいて反射テープ14c、すなわち、吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)をカメラ映像として出力し、
(2)鋼材B及びその結束線の位置を検出してこれらをカメラ映像として出力する。
従って、画像処理装置18はCCDカメラ18bによる誤認識を排除して正確に演算することができる。尚、照明機器18a及びCCDカメラ18bを取り付ける位置は、吊ワイヤ14bの被把持部分が適度に照明される限り特に限定されず、例えば、玉掛けロボット10のアームや本体等に取り付けてもよい。
【0023】
(画像処理装置18)
画像処理装置18は装置各部を制御するCPU、その制御プログラムや各種データを記憶する各種ROM、RAM等の記憶手段、各種入出力インタフェースを備え、一対のロボットハンド30の間(本実施形態では一対のロボットハンド30のほぼ中心線上)に設けられる照明機器18aと、CCDカメラ18bとに接続されており、
(1)CCDカメラ18bで撮像された吊ワイヤ14bの反射テープのカメラ映像に基づいて反射テープ14c、すなわち、吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を演算により求めたり、
(2)CCDカメラ18bで撮像された鋼材B及びその結束線のカメラ映像に基づいてその鋼材B及びその結束線の位置を演算により求める。
【0024】
(玉掛けロボットPLC16)
玉掛けロボットPLC16は、装置各部を制御するCPU、その制御プログラムや各種データを記憶する各種ROM、RAM等の記憶手段、各種入出力インタフェースを備え、自動倉庫PLC12と、画像処理装置18と、ロボットコントローラ20と、ロボットハンド30とに双方向通信可能に接続されており、これらをシーケンス制御するとともに、これらとの間で各種データの授受を実行する。
例えば、玉掛けロボットPLC16は、画像処理装置18により演算され、送信された反射テープの位置(縦位置,横位置,傾き)や、鋼材B及びその結束線の位置をロボットコントローラ20に送信する。
【0025】
また、玉掛けロボットPLC16の主操作盤のメイン画面の一例を図6(a)に示すが、同図に示すように、玉掛けロボットPLC16は、その記憶手段に、
(1)自動倉庫情報として、台車レーン(台車のレーン番号)、台車レーン繰返し回数(そのレーンで何回玉掛け作業を行うか)、北束長さ(北側の束長さ、尚、束長さが0mmの場合は北側での束取り無しを示す)、南束長さ(南側の束長さ、束長さが0mmの場合は南側での束取り無しを示す)を記憶し、
(2)実行情報として、クレーン動作の状態、ロボット動作の状態、台車レーンの状態、束位置情報(北側の束か南側の束のいずれを玉掛けするか)、束長さ(玉掛け対象の束長さ)を記憶し、
(3)クレーン情報として、横行停止位置、走行停止位置、巻下停止位置、旋回停止位置を記憶し、
(4)ロボット情報として、レーン指定位置(どのレーンで玉掛けするか)、レーン現在位置(ロボットがどのレーンにいるか)、横行状態、束位置(ロボットが玉掛けする束位置はいずれか)、束長さ(玉掛けする鋼材の長さ)、画像認識状態(ワイヤ把持前、ワイヤ把持中、ワイヤ把持後)、玉掛け動作状態(玉掛け動作中、玉掛け完了)を記憶する。玉掛けロボットPLC16は、これらを記憶することにより、例えば、玉掛けロボット10の位置とクレーンの位置とが同じか否かを判断する。
【0026】
(ロボットコントローラ20)
ロボットコントローラ20は装置各部を制御するCPU、その制御プログラムや各種データを記憶する各種ROM、RAM等の記憶手段、各種入出力インタフェースを備え、ロボット搬送装置20aと、6軸多関節ロボット20bとに双方向通信可能に接続される。
ロボットコントローラ20は玉掛けロボットPLC16のシーケンス制御に基づいて、
(1)当該玉掛けロボットPLC16を介して送信される、画像処理装置18により演算され、送信された反射テープの位置(縦位置,横位置,傾き)に基づいて、一対のロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持するときの玉掛けロボット10のアーム部分の軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御したり、
(2)当該玉掛けロボットPLC16を介して送信される、鋼材B及びその結束線の位置に基づいて、一対のロボットハンド30が吊ワイヤ14bを把持して玉掛けするときの玉掛けロボット10のアーム部分の軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御する。これにより、一対のロボットハンド30及び吊ワイヤ14bが鋼材B及びその結束線に接触したり、引っかかったりすることが回避される。
【0027】
(自動倉庫PLC12)
自動倉庫PLC12は装置各部を制御するCPU、その制御プログラムや各種データを記憶する各種ROM、RAM等の記憶装置、各種入出力インタフェースを備え、クレーンと玉掛けロボットPLC16とに双方向通信可能に接続されている。記憶装置は、倉庫に格納されている鋼材Bの台車レーン番号・束数・束長さ・位置を記憶した図示を省略する自動倉庫データベース(以下単に「自動倉庫DB」という)を含む。
【0028】
(玉掛けシステム1の動作)
上記構成における玉掛けシステム1の動作について図7の動作遷移図、図8のタイミングチャート(TC0〜TC9までの各タイミング)及び図9のフローチャート(S01〜C03の各ステップ)を参照して説明する。尚、同図のフローチャートは玉掛け作業のフローの一例を示したものであるため、動作順序はこのフローチャートに限定されず順序が前後することがありうる。
自動倉庫PLC12は、各台車の台車レーン繰返し回数・束長さ・束掛け位置を演算により求め又は作業者による手入力に基づいて更新し、最新情報として自動倉庫DBに格納する。尚、束長さが0mmの場合には束取り無しを示す。従って、北0mm、南123mmの時は、束掛け位置は南となる。
【0029】
自動倉庫PLC12は、自動倉庫DBから読み出した台車レーン毎の繰返し回数及びデータ書込み完了フラグを玉掛けロボットPLC16に送信する(TC0前〜TC2.5)。すると、玉掛けロボットPLC16は自動倉庫PLC12から送信された台車レーン毎の繰返し回数及びデータ書込み完了フラグを受信する(TC2〜TC2.5、S01参照)。次に、自動倉庫PLC12は、自動倉庫DBから読み出した台車レーン毎の束長さ及びデータ書込み完了フラグを玉掛けロボットPLC16に送信する(TC2〜TC3.5)。すると、玉掛けロボットPLC16は自動倉庫PLC12から送信された台車レーン毎の束長さ及びデータ書込み完了フラグを受信する(TC2〜TC3.5、S01参照)(※A)。尚、玉掛けロボットPLC16は、自動倉庫PLC12から送信された各種データを既述の自動倉庫PLC12の記憶手段(図1参照)に記憶する。
【0030】
自動倉庫PLC12は台車を出荷側(西方向)へ搬送する制御を実行し(TC3〜TC5.5)、搬送する制御が完了すると搬送完了信号(台車停止信号)を玉掛けロボットPLC16へ送信する(TC5.5以降)。一方、玉掛けロボットPLC16は受信した台車レーン毎の繰返し回数及び束長さに基づいて出荷順序演算を実行する。また、台車停止信号を受信する(TC5.5以降)。
【0031】
図10〜図12を参照して、玉掛けロボットPLC16による出荷順序演算手順について説明する。ここで、図10は自動倉庫DBに基づいて玉掛け順序を決定するための説明図、図11は自動倉庫DBに基づいて玉掛け順序を決定した一例を示す図、図12は玉掛けロボットPLC16の主操作盤の登録・管理画面の一例を示す図である。
【0032】
玉掛けロボットPLC16は、玉掛けロボット10による玉掛けを実施する台車レーンを、台車レーン繰返し回数、台車レーンの束数、台車レーンの束長さ、及び、台車レーンのレーン番号からなる群の少なくともいずれかに基づいて判断する。すなわち、玉掛けロボットPLC16は、図10のパターン<1>から<4>に示すように、
(1)台車レーン繰返し回数を比較して当該台車レーン繰返し回数が最も多い台車レーンを選択し(規則1:パターン<1>参照)、
(2)台車レーン繰返し回数が同じと判断した場合には、当該台車レーン繰返し回数が同じ台車レーンの束数(北側の束と南側の束があり、それぞれで、1束とカウントする。尚、上記のように0mmの場合には束無しを意味する)を比較し当該束数が最も多い台車レーンを選択し(規則2:パターン<2>参照)、
(3)台車レーン繰返し回数と束数が同じと判断した場合には、これらが同じ台車レーンの束長さを比較し当該束長さが最も長い台車レーンを選択し(規則3:パターン<3>参照)、
(4)台車レーン繰返し回数、束数及び束長さが同じと判断した場合には、これらが同じ台車レーンのレーン番号を比較し当該レーン番号が最も若い台車レーンを決定する(規則4:パターン<4>参照)ことにより出荷順序演算を実行する。
【0033】
例えば、自動倉庫にパターン<1>で例示する在庫がある場合には、玉掛けロボットPLC16は、束長さデータを更新する度、すなわち、上記※Aで示すタイミングに基づいて、出荷順序演算を実行し(図10及び図11参照)、
(1)1回目の玉掛けでは規則1に基づいて出荷並びを演算し、台車レーンNo.4を決定し、
(2)2回目の玉掛けでも台車レーンNo.4の台車レーン繰返し回数が最多であるため規則1に基づいて演算し、台車レーンNo.4を決定し、
(3)3回目の玉掛けでは台車レーンNo.4の台車レーン繰返し回数が台車レーンNo.5の台車レーン繰返し回数と等しくなるため、その場合には、規則2に基づいて演算して、束数が多い台車レーンNo.4を決定し、
(4)4回目の玉掛けでは台車レーンNo.1,2,4,5,8の台車レーン繰返し回数・束数が等しくなるため、その場合には、規則3に基づいて、束長さが長い台車レーンNo.8を選択し、
(5)5回目の玉掛けでは台車レーンNo.1,2,4の台車レーン繰返し回数・束数・束長さが等しくなるため、その場合には、規則4に基づいて番号の最も若い台車レーンNo.1を選択し、
(6)以降も同様に規則1〜4に基づいて玉掛けを実施する台車レーンを決定する。
【0034】
図12に示すように、自動モードが選択されていると玉掛けロボットPLC16によって決定された台車レーンのところが色表示され、レーン束数書き込みフラグを受信すると、玉掛けロボット10は演算によって求められた台車レーンへ先行移動させる(図7の動作遷移図では省略、A01参照)。尚、図12の登録・管理画面では手動モードに切り換えることも可能であり、その場合には、移動ボタンが選択表示された状態で作業者により上下矢印(↑又は↓)ボタンによって台車レーンが選択され確定ボタンの押下により、作業者が指定した台車レーンへ玉掛けロボット10を先行移動させることができる。また、玉掛けロボット10は、移動した先の台車及び天井クレーンが定位置停止しているか否かを判断し、定位置停止していることを条件に後述する玉掛け動作を実行する。
【0035】
上記のようにして台車レーンが決定されると、玉掛けロボットPLC16はロボット横行レーン位置決め指示信号を玉掛けロボット10に送信し、玉掛けロボット10はその信号を受信するとロボット横行レーン位置決め開始を実行し、これを完了すると横行レーン位置決め完了信号を玉掛けロボットPLC16に送信する。
一方、クレーン運転者はクレーン位置決めを行い、これによりクレーン横行走行、旋回がなされ(B01参照)、クレーン位置決めが完了するとクレーン位置が自動検出されその位置信号が玉掛けロボットPLC16に自動送信される。玉掛けロボットPLC16はクレーン停止位置完了信号及びロボット横行レーン完了信号を受信すると、作業者によるフットスイッチ押下を待機する。
【0036】
作業者が西側ワイヤを把持して(C01参照)、玉掛けロボット10がそのフットスイッチの作業者による押下により起動されると(C01参照)、玉掛けロボットPLC16及び玉掛けロボット10によりフットスイッチの起動信号が受信され、玉掛けロボット10は、吊ワイヤ検知待機位置へ移動する。尚、本実施形態においては作業者は一人で済む。従って、人件費削減が実現される。
【0037】
クレーン運転者がクレーン巻下げを開始すると(B01参照)、クレーンから巻下げ中間位置信号が送信され(D01参照)、巻下げ減速制御がなされ(D01参照)、玉掛けロボットPLC16はクレーンから送信された巻下げ中間位置信号を受信すると、玉掛けロボット10へ巻下げ中間位置信号を送信する。玉掛けロボット10は巻下げ中間位置信号を受信するとフットスイッチがオンになっていることを条件としてワイヤ検知動作を開始する。玉掛けロボット10によるワイヤ検知動作は、図3〜図5に示すように吊ワイヤ14bに貼付された反射テープを目印にCCDカメラ18bを介してなされる。CCDカメラ18bの感度は背景を検出しない程度、例えば、25%に設定されている。従って、玉掛けロボット10はCCDカメラ18bを介して吊ワイヤ14bの存在の有無を検出することができる。玉掛けロボット10はワイヤ検知動作を完了すると、玉掛けロボットPLC16へワイヤ検知動作位置完了信号を送信し、玉掛けロボットPLC16はワイヤ検知動作位置完了信号を受信すると、画像取り込み開始信号を玉掛けロボット10に取り付けられた画像処理装置18に送信する。
【0038】
画像処理装置18はその画像取り込み開始信号を受信すると、画像取り込みを開始し、画像処理を実行する。これにより、吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を求める。すなわち、画像処理装置18は、反射テープ14cの縦横サイズや複数の端点に基づいて吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を演算する等の画像処理を実行する。
画像処理装置18は、その吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)及び書込み完了フラグを玉掛けロボットPLC16に送信し、玉掛けロボットPLC16は吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を受信すると、これを玉掛けロボット10に送信する。
【0039】
玉掛けロボット10は吊ワイヤ14bの位置(縦位置,横位置,傾き)を受信すると、吊ワイヤ14bの把持動作を開始し(A02参照)、これを終了すると把持動作完了信号を玉掛けロボットPLC16及びクレーンに送信する。
クレーンは、把持動作完了信号を受信すると、ロボット横文字表示灯(把持動作完了信号)を点灯する。クレーン運転者はこれを目視して、巻下げ高速切り換えを行う。クレーンは巻下げ高速に切り換えた状態で(D02参照)、巻下げを行う。
【0040】
クレーンは巻下げが終了すると、巻下げ定位置完了信号を玉掛けロボットPLC16及び玉掛けロボット10に送信する(D02参照)。
また、作業者は、ロボット横文字表示灯(把持動作完了)を目視して、西側ワイヤを掛ける(C02参照)。尚、作業者が西側ワイヤを掛けるのは、本実施形態においては、東側が玉掛けロボット10により、西側が作業者により所定の作業が行われているためである。すなわち、作業者は二人ではなく一人でよい。
玉掛けロボット10は、作業者によるフットスイッチのオン操作に基づいて、<1>横行定位置信号・<2>走行定位置・<3>巻下中間位置・<4>巻下定位置・<5>旋回定位置のデータが揃ったことを条件として、玉掛け動作を開始する(A03参照)。
【0041】
この場合、動作遷移図では表示を省略しているが、玉掛けロボットPLC16は画像処理装置18に鋼材B及びその結束線の画像取り込み開始を指示し、これにより画像処理装置18が鋼材B及びその結束線並びにその近傍を撮像する。画像処理装置18は、その鋼材B及びその結束線の端面位置・境界位置等を演算により求め、これらの位置データは玉掛けロボットPLC16に送信される。そして、玉掛けロボットPLC16は、当該位置データをロボットコントローラ20にシーケンス制御のもとで送信する。ロボットコントローラ20は受信したこれらの位置データに基づいて玉掛けロボット10のアームの軌道や旋回ポイント、回転ポイント等を演算により求め、鋼材B及びその結束線との接触を回避するように制御する。
【0042】
玉掛けロボット10はワイヤ玉掛け動作を完了すると続けて原点復帰動作を行い(A03参照)、順次、ワイヤ玉掛け動作完了信号及び原点復帰完了信号を玉掛けロボットPLC16に送信する。
【0043】
玉掛けロボットPLC16は、ワイヤ玉掛け動作完了信号及び原点復帰完了信号を順次受信した後、ロボット干渉外信号を自動倉庫PLC12・クレーンに送信する。自動倉庫PLC12及びクレーンはロボット干渉外信号を受信し、クレーンはロボット横文字表示灯(ロボット干渉外信号)を点灯させる。クレーンにロボット横文字表示灯(ロボット干渉外信号)が点灯されると、クレーン運転者がクレーンを運転しこれを上昇させ(B02参照)、鋼材Bがトラックへ搬送される。
【0044】
作業者は、ロボット横文字表示灯(ロボット干渉外信号)の点灯を目視により確認後、自動倉庫PLC12の玉掛け完了PB操作を行い(C03参照)、玉掛け完了信号が自動倉庫PLC12から玉掛けロボットPLC16に送信される。
自動倉庫PLC12は玉掛け完了信号を玉掛けロボットPLC16に送信すると該当台車レーンの(台車レーン繰返し回数を減算し(TC8.5〜TC9)、玉掛けロボットPLC16は玉掛け完了信号を受信すると該当台車レーンの束長さを消去する(TC8.5〜TC9)。尚、更新は束長さデータ書き込みフラグで実行される。
【0045】
以上の手順により玉掛けが終了すると次束の玉掛けがクレーン運転者によるクレーン横行開始・玉掛けロボットPLC16による横行レーン位置決め指示信号送信から開始される。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。本発明は、上記実施形態を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。上記実施形態においては、単腕式ロボットを用いた例を説明したが、双腕式ロボットを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る玉掛けロボット及びこれを用いた玉掛けシステムによれば、吊ビームの重量オーバーやコスト高という問題を生じさせることなく、正確な玉掛けが実施できるため、鋼材倉庫を備えた鉄鋼関連の工場・事業所・港湾等での利用価値が見込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節ロボットと、
当該多関節ロボットのアームに取り付けられるロボットハンドであって、鋼材の玉掛け用の吊ワイヤを把持又は解放するロボットハンドと、
前記吊ワイヤに取り付けられた被検出手段を照明する照明手段と、
所定の検出感度に設定された撮像手段であって前記被検出手段を検出しカメラ映像として出力する撮像手段と、
前記カメラ映像に基づいて前記被検出手段の位置を求める画像処理手段と、
前記被検出手段の位置に基づいて当該吊ワイヤを把持させる把持命令を前記ロボットハンドに送信して当該ロボットハンドを制御するロボットハンド制御手段と、を備えたことを特徴とする玉掛けロボット。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記鋼材及びその結束線の位置を検出してこれらをカメラ映像として出力するものであり、
前記画像処理手段は、前記カメラ映像に基づいて前記鋼材及びその結束線の位置を求めるものであり、
更に、
前記鋼材及びその結束線の位置に基づいて前記多関節ロボットのアームの軌跡の演算や回転・旋回等の動作を制御する多関節ロボット制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の玉掛けロボット。
【請求項3】
前記ロボットハンドは一対からなるものであり、その間隔が前記鋼材の束径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の玉掛けロボット。
【請求項4】
前記ロボットハンド、前記照明手段及び前記撮像手段は、前記多関節ロボットに取り付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の玉掛けロボット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の玉掛けロボットを用いたシステムであって、
前記玉掛けロボットによる玉掛けを実施する台車レーンを、(1)台車レーン繰返し回数、台車レーンの束数、台車レーンの束長さ、及び、台車レーンのレーン番号からなる群の少なくともいずれか、及び/又は、(2)台車レーンを選択する選択ボタン及びこれを確定する確定ボタンの押下に基づいて判断する玉掛けロボット制御手段を備えたことを特徴とする玉掛けシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−86963(P2012−86963A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236280(P2010−236280)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(000149505)大同マシナリー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】