説明

玩具及びその設計方法

【課題】組み立ての難易度を高めつつ比較的設計が容易である。
【解決手段】組み立て体100において、ブロック部材11〜18に関して、2つの表面がN極であり残りの表面がS極である基本パターンP1と、N極及びS極が逆転した基本パターンP2とを交互に割り当て、展開図を作成する。そして、組み立て体100において最も外部に露出する表面に「×」マークを付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブロック部材を一体の組み立て体に組み立てる玩具及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のブロック部材の表面同士を着脱可能とし、これらのブロック部材を組み立てて、一つの大きな立体形状を有する組み立て体とする玩具がある。この玩具において、ブロック部材の表面同士を吸着させるため、ブロック部材の各面に磁石を設けることが考えられる。この場合、ブロック部材同士を吸着させて上記の組み立て体を構成できるように、どのブロック部材のどの表面をN極とし、あるいはS極とするかを適切に調整する必要がある。
【0003】
例えば、各ブロック部材が立方体の場合、全ての表面がN極であるブロック部材と全ての表面がS極であるブロック部材とを用意し、これら2種類のブロック部材を交互に配列して組み立て体を構成することも考えられる。しかし、この構成では、2種類のブロック部材同士ではどの面を向かい合わせても互いに吸着可能である。したがって、組み立て体を組み立てる難易度が比較的低い。
【0004】
これに対して特許文献1では、各ブロック部材においてN極の表面及びS極の表面が混在していると共に、N極及びS極の配置方法がブロック部材ごとに違っている。したがって、例えばいずれかのブロック部材において異なる面を吸着させようとすると、適切に組み立てることができなくなる場合が生じる。つまり、組み立て体を構成可能なブロック部材同士の位置関係に関する場合の数が限定されている。これにより、組み立て体を組み立てる難易度が、上述の場合に比べて高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−154487号公報(第5図〜第11図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の構成では、N極及びS極の配置が不規則過ぎる。したがって、組み立て体を組み立てることができるようにN極及びS極を配置する設計が容易でない。
【0007】
本発明の目的は、比較的設計が容易な玩具及びその設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の玩具は、表面同士を吸着させる磁石が設けられた複数のブロック部材を有している。これら複数のブロック部材は、各ブロック部材における6つの表面のうち、互いに反対側に配置された第1の表面及び第2の表面に含まれる吸着面を第1の吸着面とし、6つの表面のうち、第1及び第2の表面以外の第3〜第6の表面に含まれる吸着面を第2の吸着面とするとき、(a)前記第1の吸着面がN極となり前記第2の吸着面がS極となる第1のブロック部材と、(b)前記第1の吸着面がS極となり前記第2の吸着面がN極となる第2のブロック部材とから構成されている。そして、第1のブロック部材と第2のブロック部材が交互に配列されることで組み立て体が組み立てられる。
【0009】
本発明の玩具によると、第1の吸着面と第2の吸着面とが互いに反対の極になっている。つまり、各ブロック部材においてN極とS極が混在している。したがって、ブロック部材の向きを適切に配置しなければ組み立てられず、組み立てのバリエーションが限定される。また、N極及びS極の基本配置が互いに反対である第1のブロック部材と第2のブロック部材とにより組み立て可能に構成されているので、設計が容易である。
【0010】
また、本発明の別の観点では、本発明は玩具の設計方法であって、ブロック部材の6つの表面のうち、4つの表面が一列に配列されると共にN極に分類され、残りの2つの表面がS極に分類される展開図又はこれと同じ構成の前記ブロック部材に対応する展開図と、この展開図とは表面同士の配置関係が同じでN極及びS極の分類が反対となる展開図とを作成するものである。
【0011】
上記別の観点によると、容易に作成可能な2種類の展開図により、玩具を設計することができる。
【0012】
なお、本発明において「立方体を画定する6つの表面を有するブロック部材」は、立方体形状を有するブロック部材を含んでいるが、完全な立方体でなくてもよく、例えば立方体の角が斜めに切り落とされた立体形状を有していてもよいことを示している。要は、6つの表面の延長面によって立方体が画定されるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態の玩具の構成要素であるブロック部材の一例の斜視図である。図1(b)は、ブロック部材の縦断面の一例である。図1(c)はブロック部材に埋め込まれる磁石の斜視図である。
【図2】図2(a)は、8つのブロック部材を立方体に組み立てた実施例1の斜視図である。図2(b)は、図2(a)の組み立て体全体の展開図である。
【図3】実施例1を設計する際に作成する展開図その他の図である。
【図4】図4(a)は、27個のブロック部材を立方体に組み立てた実施例2の斜視図である。図4(b)は、図4(a)の組み立て体全体の展開図である。
【図5】実施例2を設計する際に作成する展開図その他の図である。
【図6】実施例3及び4における組み立て体の斜視図及びブロック部材の展開図である。
【図7】変形例に関する展開図、ブロック部材の斜視図、及び、組み立て体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本実施形態に係る玩具は、図1(a)に示す立方体のブロック部材1を複数有している。ブロック部材1の本体は木製であるが、樹脂材料や金属材料から構成されてもよい。ブロック部材1の中には、図1(b)に示すように少なくとも1つの表面に凹部1aが形成されている。凹部1aには円板形状の磁石2がはめ込まれており、その外側から木製の薄い板3がブロック部材1の本体に貼り合わされている。板3は、ブロック部材1の最も外側の表面を構成する部材であり、正方形の平坦な表面を有している。また、板3にはブロック部材1の本体と同じ材質の木材が用いられており、ブロック部材1の表面が違和感のない模様となるように作製されている。具体的には、図1(a)に示すブロック部材1の表面3aは、それぞれの面の木目が異なるため、全体として違和感のないよう、その面に合った木目の板を貼り付けている。ブロック部材1において磁石2が設置されていない表面は、ブロック部材1の本体がそのまま露出している。本体が直接露出した表面も、その他の面との木目の配置関係が違和感のないように調整されている。磁石2はフェライト磁石などの永久磁石である。図1(c)に示すように、円板の一方の面がN極であり、他方の面がS極である。ブロック部材1の表面に磁石2が設置されることにより、その表面が他のブロック部材1において磁石2が設けられた表面に吸着する吸着面となる。
【0016】
(実施例1)
図2は、8つのブロック部材1を互いに吸着させて一体に組み立てることで、一つの大きな立方体の組み立て体100を形成した実施例1を示している。実施例1では、1つ1つのブロック部材1の表面に絵柄が形成されており、組み立て体100を完成させた際、ブロック部材1の各表面に形成された絵柄が繋がって、図2(a)に示すように、1つの大きな絵柄が形成される。図2(b)は図2(a)の展開図である。図2(b)において最も小さい正方形がブロック部材1の1つの表面に対応している。各ブロック部材1の表面には円形の絵柄が形成されている。この円形の絵柄は、複数のブロック部材1に跨ったり単一のブロック部材1に形成されたりしており、8つのブロック部材1が適切に組み立てられた場合に、全体として6面さいころと同じ模様が形成されるようになっている。
【0017】
ところで、ブロック部材1同士は磁石2による吸着力で吸着する。ブロック部材1の各表面には、図1(a)及び図1(c)に示すように、磁石2の一方の極が面する。したがって、ブロック部材1の各吸着面はN極かS極のいずれかとなるので、互いに異なる極の吸着面同士は吸着するが、同極の吸着面同士は反発する。このため、図2(a)の組み立て体100を組み立て可能にするためには、組み立て体100において互いに向かい合うこととなる吸着面同士が同極にならないように、各表面に磁石2を適切に配置しなければならない。
【0018】
このために最も簡単な方法は、6つの表面の全てがN極となるブロック部材1と6つの表面の全てがS極となるブロック部材1とを作製することである。この場合、前者のブロック部材1と後者のブロック部材1とを交互に配列すれば、隣り合うブロック部材同士を吸着させることができる。しかし、前者のブロック部材1と後者のブロック部材1とはどの面で吸着させても互いに吸着可能である。したがって、ブロック部材1の向きを変えても組み立てることができるので、組み立て体を組み立てる難易度が比較的低い。一方で、組み立ての難易度を上げるため、ブロック部材1の各面に不規則にN極及びS極を配置することも考えられる。しかし、N極及びS極の配置を不規則にすると、組み立て体を組み立てることができるようにこれらの極を配置するための設計や製造が困難になるおそれがある。
【0019】
そこで本実施形態では、以下のようにブロック部材を設計することとしている。図3(a)は組み立て体100の各ブロック部材1を区別して示したものである。これらのブロック部材11〜18は、いずれも基本構造が図1に示す構造と同様であるが、どの表面に磁石2がどのように配置されているかが互いに異なっているものを含んでいる。図3(b)は、ブロック部材11〜18における磁石2の配置に関する基本パターンを示すブロック部材の展開図である。図3(b)において各正方形はブロック部材の各表面を示している。正方形の中に記載された「N」「S」は、各表面がN極に分類されていること、あるいはS極に分類されていることを示している。また、図3(c)は、図3(b)のいずれの正方形がブロック部材のいずれの表面に対応するかを示している。図3(c)に示す”上下前後左右”の各文字は、図3(a)の”上下前後左右”の矢印が示す方向に面した各表面に対応している。
【0020】
図3(b)に示すように、ブロック部材11〜18は、基本パターンP1及びP2の2種類に従って磁石が配置されている。基本パターンP1は、互いに反対側に配置された2つの表面91(第1及び第2の表面)がN極に分類されており、その他の4つの表面92(第3〜第6の表面)がS極に分類されている。つまり、基本パターンP1は、表面91と表面92とが互いに異なる極となっている。そして、上下方向、前後方向及び左右方向のそれぞれに関して、互いに反対側に配置された2つの表面同士が同極となっている。一方、基本パターンP2は、基本パターンP1に対してN極及びS極の配置を逆転させたものに相当する。
【0021】
ブロック部材11〜18は、基本パターンP1と基本パターンP2とを上下方向、前後方向及び左右方向のそれぞれに交互に割り当てたものに従って磁石2が配置されている。具体的には、ブロック部材11、13、16及び18(第1のブロック部材)は基本パターンP1が割り当てられ、ブロック部材12、14、15及び17(第2のブロック部材)は基本パターンP2が割り当てられる。このように、基本パターンP1と基本パターンP2とが各方向に交互に割り当てられると、ちょうどブロック部材が互いに吸着可能となる配置になる。これは、各基本パターンにおいて互いに反対側に配置された2つの表面同士が同極であり且つ基本パターンP1と基本パターンP2とではN極及びS極が逆転しているので、隣り合う2つの異なる基本パターン同士では、向かい合った表面同士が必ず異なる極となるためである。
【0022】
さらに、ブロック部材11〜18は、組み立て体100において最も外側に配置される表面には磁石2が配置されないように構成されている。つまり、磁石2が配置された吸着面はいずれも、組み立て体100において内側に配置され、必ずとなりのブロック部材の吸着面と向かい合うように配置されている。
【0023】
本実施形態によれば、このようにブロック部材11〜18を設計するために、図3(d)に示すように、ブロック部材11〜18に対応する展開図21〜28を作成する。まず、ブロック部材11、13、16及び18に対応する展開図21、23、26及び28は基本パターンP1に基づき作成する。ブロック部材12、14、15及び17に対応する展開図22、24、25及び27は基本パターンP2に基づき作成する。そして、各展開図において、対応するブロック部材の組み立て体100における配置(図3(a))を参照しながら、最も外部に露出することとなる表面に対応する正方形に「×」マークを記載する。これによって各正方形が、組み立て体100において最も外側に露出する表面を示すものとそれ以外の表面を示すものとに分類される。これらの分類を示す表示の態様は「×」マークに限らず、視覚的な表示であればどのようなものでもよい。
【0024】
例えば、ブロック部材11は組み立て体100において、後、左及び上の各表面が外部に露出する。これに従い、基本パターンP1に対して、後、左及び上の各表面に対応する正方形に「×」マークを付したものが、展開図21となる。これにより、展開図21において基本パターンP1の表面91に対応する正方形93のうち、一方の正方形はN極の吸着面(第1の吸着面)を示すのに対し、他方の正方形は「×」マークが付され、吸着面を示さない。また、展開図21において基本パターンP1の表面92に対応する正方形94のうち、2つの正方形がS極の吸着面(第2の吸着面)を示すのに対し、残り2つの正方形は「×」マークが付され、吸着面を示さない。また、ブロック部材17は組み立て体100において、左、前及び下の各表面が外部に露出する。これに従い、基本パターンP2に対して、左、前及び下の各表面に対応する正方形に「×」マークを付したものが、展開図27となる。このようにして、ブロック部材11〜18に対応する展開図21〜28を図3(d)のように作成することができる。展開図21〜28が示すように、実施例1ではいずれのブロック部材も、6つの表面のうちの3つが吸着面となり、残りの3つが吸着面とならない。3つの吸着面のうちの2つが同極の吸着面となり、残りの1つに対して異なる極となる。
【0025】
以上のように、本実施形態では、基本パターンP1において表面91に含まれる吸着面は全てN極となり、表面92に含まれる吸着面は全てS極となる。このように、1つのブロック部材においてN極の吸着面とS極の吸着面とが混在するため、ブロック部材の向きを適切に配置しなければ組み立て体100を組み立てられない。これによって、組み立て可能な方法のバリエーションが限定され、組み立ての難易度が高くなっている。例えば、基本パターンP1を上下方向に沿った軸周りに90°回転させると、前後左右の各面のN極とS極とが反転する。このため、例えばブロック部材11を上下方向に沿った軸周りに90°回転させると、ブロック部材11が組み立て体100におけるその他のブロック部材とうまく吸着しなくなる。基本パターンP1とはN極とS極の配置が逆転する基本パターンP2に関しても同様である。
【0026】
また、本実施形態では、組み立て体100において最も外側に配置される表面には磁石2が設置されていない。これによって、組み立て可能な方法のバリエーションがさらに限定され、組み立ての難易度が高くなっている。例えば、基本パターンP1及びP2のいずれも、前後方向に沿った軸周りに90°回転しても同じパターンとなる。つまり、基本パターンのみで見れば、各ブロック部材を前後方向に沿った軸周りに90°回転しても元のN極及びS極の配置と一致する。しかし、展開図における「×」マークの配置も考慮した場合、各ブロック部材を前後方向に沿った軸周りに90°回転すると、N極とS極の配置が一致しなくなる。つまり、各ブロック部材を前後方向に沿った軸周りに90°回転すると吸着面以外の面が他のブロック部材に向き合うため、組み立て体100を組み立てることができなくなる。このように、組み立て可能な方法のバリエーションが限定されている。
【0027】
このように本実施形態によると、N極とS極の配置が互いに逆転した基本パターンP1及びP2を交互に割り当てるという簡単な方法により、組み立てのバリエーションが限定された玩具を容易に設計することができる。具体的な展開図も、基本パターンP1及びP2を交互に配列するという規則的な方法で作成できる上に基本パターンP1及びP2自体が簡単な配置図である。このため、N極とS極を不規則に配置する場合と比べて、玩具を設計することもその設計に基づいてブロック部材を作製することも容易になる。また本実施形態では、組み立て体において外部に露出する表面とそれ以外の表面とを展開図上で分類するという簡易な方法により、組み立て可能な方法のバリエーションをより限定することができている。
【0028】
さらに、本実施例1では、組み立て体100において6面さいころと同じ模様が各表面に表れるように、各ブロック部材に絵柄が形成されている。この絵柄によっても組み立てのバリエーションが限定されている。例えば、ブロック部材12及び15は、互いに基本パターンP2に対応しており、展開図22及び25における「×」マークを考慮しても、これらのパターンだけでは互いに一致する。一方、図2(b)において、正方形1xがブロック部材12の表面に対応し、正方形1yがブロック部材15の表面に対応している。これを見ると、表面の絵柄もさらに考慮した場合、どのように回転してもブロック部材12及び15が互いに一致しないことが分かる。つまり、ブロック部材12とブロック部材15との互いの位置を交換すると、これらのブロック部材をどのように回転させても、絵柄が完成しない。したがって、組み立てのバリエーションが絵柄によって限定される。
【0029】
(実施例2)
図4は、27個のブロック部材1から立方体の組み立て体200を形成した実施例2を示している。実施例2でも、組み立て体200において6面さいころと同じ模様が形成されるように、ブロック部材1の各表面に絵柄が形成されている。ただし、実施例2では実施例1と異なり、円形の絵柄が全て各表面の中央に形成されており、複数のブロック部材1に跨ったりはしていない。
【0030】
図5(a)は組み立て体200の各ブロック部材1を区別して示したものであり、図5(b)〜図5(d)は本実施形態に基づいて実施例2を設計する際に作成する展開図である。図5(a)においては、上下方向に3個、左右方向に3個配列した9個のブロック部材からなる3つの部分に組み立て体200を分けて図示している。なお、図5(a)では絵柄の図示が省略されている。展開図61〜69はブロック部材31〜39に対応し、展開図70〜78はブロック部材40〜48に対応し、展開図79〜87はブロック部材49〜57に対応している。
【0031】
実施例2においても、まず、(1)基本パターンP1と基本パターンP2とを各方向に交互に割り当てる。これにより、基本パターンP1がブロック部材31、33、35、…、55及び57に割り当てられる。また、基本パターンP2がブロック部材32、34、36、…、54及び56に割り当てられる。さらに、(2)組み立て体200において最も外側に配置される表面に相当する正方形に「×」マークを付すことにより、展開図61〜87が作成されている。これにより、組み立て可能な方法のバリエーションを限定しつつ、容易に設計及び製造が可能な玩具となっている。
【0032】
例えば、ブロック部材33とブロック部材41とは基本パターンが同じP1であるため、基本パターンだけで見ればN極及びS極の配置が一致する。しかし、展開図63と展開図71とを比較すると、「×」マークを考慮することにより、互いにN極及びS極の配置が一致しなくなる。したがって、実施例1と同様に、組み立て可能な方法のバリエーションが限定されている。
【0033】
また、絵柄が形成されていることにより、組み立てのバリエーションが限定されていることも、実施例1と同様である。例えば、ブロック部材49とブロック部材57とは、それぞれ基本パターンP1に対応しており、展開図79及び87における「×」マークの配置を考慮しても、N極及びS極の配置が互いに一致する。一方、図4(b)において、正方形1wがブロック部材49の表面に対応し、正方形1zがブロック部材57の表面に対応している。これを見ると、表面の絵柄もさらに考慮した場合、どのように回転してもブロック部材49及び57が互いに一致しないことが分かる。なお、実施例2では、展開図61〜87が示すように、6つの表面のうち、吸着面が3つとなるものから吸着面が6つ全てとなるものまで、いろいろなブロック部材が混在する。
【0034】
(実施例3)
図6(a)は、4個のブロック部材301〜304から直方体の組み立て体300を形成した実施例3を示している。実施例2では、組み立て体300の上面に、複数のブロック部材に跨って葉の絵柄が形成されるように、ブロック部材の各上面に絵柄が形成されている。図6(b)は、ブロック部材301〜304に対応して実施例1と同じ方法で作成された展開図311〜314を示している。実施例3のように比較的少ない数のブロック部材によって組み立て体が構成される場合には、なるべく各ブロック部材の表面に非対称な絵柄が形成されることが好ましい。これにより、例えばブロック部材301とブロック部材304とを交換すると、組み立て体300と同じ形状の立体を組み立てられたとしても絵柄が完成しない。したがって、組み立てのバリエーションが限定される。
【0035】
(実施例4)
図6(c)は、9個のブロック部材401〜409から直方体の組み立て体400を形成した実施例4を示している。実施例4では、組み立て体400の上面に、複数のブロック部材に跨って鳥の絵柄が形成されるように、ブロック部材の各上面に絵柄が形成されている。図6(d)は、実施例1と同じ方法でブロック部材401〜409に対応して作成された展開図411〜419を示している。実施例4においても実施例3と同様、各ブロック部材の表面に非対称な絵柄が形成されている。これにより、例えばブロック部材402とブロック部材408を交換すると、組み立て体400と同じ形状の立体を組み立てられたとしても絵柄が完成しない。したがって、組み立てのバリエーションが限定される。
【0036】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0037】
例えば、上述の実施形態では、展開図を作成する際、図3(b)に示す基本パターンP1と基本パターンP2とが使用されている。しかし、基本パターンP1や基本パターンP2と同等な展開図であれば、異なる配置の基本パターンが使用されてもよい。図7(a)や図7(b)はその一例である。なお、図7(a)の基本パターンP3は、上下左右前後の各方向の表面との対応関係が、図3(b)及び図3(c)に示す対応関係と同じである。また、基本パターンP4は、上下左右前後の各方向の表面との対応関係が、例えば図7(c)に示す対応関係になっている。
【0038】
また、上述の実施例1〜4のいずれにおいても、各ブロック部材が立方体の形状を有していたが、これに限られない。例えば、ブロック部材が、図7(d)に示すように、立方体の頂点付近がいずれも削り落とされた形状を有していてもよい。この場合でも、上述の実施形態と同様にブロック部材に磁石を設置することにより、図7(e)に示すように複数のブロック部材から組み立て体を構成することができる玩具が実現する。この他、立方体の頂点ではなく、辺の付近が削り落とされたものや、8つの頂点全てではなく、そのうちの一部の頂点付近が削り落とされたものであってもよい。要は、立方体における6つの表面のそれぞれを一部でも有しており、それらの表面から立方体が画定されるような形状を有していればよい。
【0039】
また、上述の実施形態では円盤状の磁石2が用いられているが、矩形の平板状の磁石が用いられてもよいし、棒状の磁石が用いられてもよい。また、各実施例においてはブロック部材の表面に絵柄が形成されているが、各表面に色分けが施されていてもよい。この場合は例えば、図2(b)に示す展開図において、組み立て体100の6つの表面のそれぞれが6色に色分けられるように各ブロック部材に色分けが施されていてもよい。また、絵柄や色分けのみならず、表面の形状自体が互いに異なっていてもよい。また、各実施例では組み立て体として立方体や直方体を組み立てる場合が示されているが、このような多面体に限らず、組み立て体としてあらゆる立体が採用され得る。例えば、星型の立体であったり、動物や乗り物型の立体であったりしてもよい。
【0040】
また、上述の実施形態では、基本パターンP1及びP2に対応する展開図を作成した後に、磁石2が配置されない表面を示す「×」マークを各正方形に付している。したがって、完成した展開図においては、いずれの正方形にも「N」又は「S」が配置されている。しかし、磁石2が配置されない表面を示す「×」マークを各正方形に付した後に、「×」マークが付されていない正方形のみに、基本パターンP1及びP2に基づいて「N」及び「S」を配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
P1〜P4 基本パターン
1、11〜18、31〜57、301〜304,401〜409 ブロック部材
2 磁石
21〜28、61〜87、311〜314、411〜419 展開図
100、200、300、400 組み立て体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方体を画定する6つの表面を有する複数のブロック部材を有し、前記ブロック部材の表面同士を着脱可能に吸着させる磁石が前記ブロック部材に設けられた玩具であって、
前記複数のブロック部材のそれぞれにおける6つの表面の少なくとも1つが、前記磁石によるN極及びS極のいずれかの吸着面であり、
前記複数のブロック部材のそれぞれにおける6つの表面のうち、互いに反対側に配置された第1の表面及び第2の表面に含まれる前記吸着面を第1の吸着面とし、前記6つの表面のうち、前記第1及び第2の表面以外の第3〜第6の表面に含まれる前記吸着面を第2の吸着面とするとき、(a)前記第1の吸着面がN極となり前記第2の吸着面がS極となる第1のブロック部材と、(b)前記第1の吸着面がS極となり前記第2の吸着面がN極となる第2のブロック部材とから前記複数のブロック部材が構成されており、
前記第1のブロック部材と前記第2のブロック部材とが交互に配列されつつ前記吸着面同士が互いに吸着させられた場合に、前記複数のブロック部材の全てが一体となった組み立て体に組み立てられることを特徴とする玩具。
【請求項2】
前記組み立て体において前記吸着面のいずれも他のいずれかの前記吸着面と吸着した状態となることを特徴とする請求項1に記載の玩具。
【請求項3】
立方体を画定する6つの表面を有し、そのうちの少なくとも1つが磁石によるN極及びS極のいずれかの吸着面である複数のブロック部材を有し、前記吸着面同士を吸着させると前記複数のブロック部材の全てが一体となった組み立て体に組み立てられる玩具の設計方法であって、
前記6つの表面のうち、4つの表面が一列に配列されると共にそのうちの前記吸着面がN極に分類され、残りの2つの表面のうちの前記吸着面がS極に分類される展開図又はこれと同じ構成の前記ブロック部材に対応する展開図と、この展開図とはN極及びS極の分類が反対となる展開図とを作成することを特徴とする玩具の設計方法。
【請求項4】
前記組み立て体において最も外側に露出する表面とそれ以外の表面とに前記ブロック部材の各表面が分類されるように、前記展開図を作成することを特徴とする請求項3に記載の玩具の設計方法。
【請求項5】
N極及びS極の配置、前記最も露出する表面か否かの分類、表面の形状、表面の模様、並びに、表面の色彩の少なくともいずれか2つ以上を組み合わせたパターンを、2つの前記ブロック部材において互いに異ならせるように玩具を設計することを特徴とする請求項4に記載の玩具の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194110(P2011−194110A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65900(P2010−65900)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(510080598)武藤工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】