説明

現像剤供給装置

【課題】 現像剤担持面における現像剤の担持や回収をよりスムーズに行う。
【解決手段】 現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、搬送基板と、電圧印加手段と、を備えている。搬送基板は、主走査方向と交差する方向に沿って配列された複数の搬送電極を備えていて、これらの搬送電極への進行波状の多相交流電圧の印加に伴って発生する電界により、現像剤を現像剤搬送方向に搬送するように構成されている。この搬送基板は、現像剤搬送方向における端部が現像剤担持部材と対向するように設けられている。電圧印加手段は、現像剤担持部材に搬送電極と同期した多相交流電圧を印加するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、特開2008−70803号公報等に開示されているものが知られている。かかる装置は、現像剤担持部材(現像ローラ)と、上流側現像剤搬送手段と、下流側現像剤搬送手段と、を備えている。
【0003】
前記現像剤担持部材は、所定の現像領域にて、潜像担持体(感光体ドラム)と対向するように設けられている。この現像剤担持部材は、帯電した現像剤を担持するための現像剤担持面を有している。
【0004】
前記上流側現像剤搬送手段は、上流側搬送面を有している。この上流側搬送面は、前記現像領域よりも前記現像剤担持面の移動方向における上流側にて、当該現像剤担持面と所定の距離を隔てて対向するように配置されている。この上流側現像剤搬送手段は、上流側搬送電界(前記上流側搬送面上の前記現像剤を当該現像剤担持面の移動方向における上流側から下流側に向けて移動させるための電界)を形成するように構成されている。
【0005】
前記下流側現像剤搬送手段は、下流側搬送面を有している。この下流側搬送面は、前記現像領域よりも前記現像剤担持面の移動方向における下流側にて、当該現像剤担持面と所定の距離を隔てて対向するように配置されている。この下流側現像剤搬送手段は、下流側搬送電界(前記下流側搬送面上の前記現像剤を当該現像剤担持面の移動方向における上流側から下流側に向けて移動させるための電界)を形成するように構成されている。
【0006】
かかる構成においては、帯電した前記現像剤を前記現像剤担持面の移動方向(前記現像ローラの回転方向)における上流側から下流側へ向けて移動させる電界が、前記上流側搬送面上及び前記下流側搬送面上の空間に形成する。これにより、帯電した前記現像剤は、前記上流側搬送面及び前記下流側搬送面のそれぞれの面上にて、前記現像剤担持部材の移動方向における上流側から下流側へ向けて移動する。
【0007】
ここで、前記現像剤は、前記上流側搬送面上から前記現像剤担持面(前記現像ローラの周面)に向かう。これにより、前記現像剤は、前記現像剤担持面に付着する。すなわち、前記現像剤担持面上に、前記現像剤が担持される。この現像剤担持面上に担持された前記現像剤の一部は、前記現像領域に到達すると、前記潜像担持体の周面である潜像形成面上の、静電潜像に応じた位置に付着する。
【0008】
前記現像剤担持面上に担持された前記現像剤のうちの、前記潜像形成面に付着しなかったものは、前記下流側搬送面に到達すると、前記下流側搬送面上を、前記現像剤担持面の移動方向(前記現像ローラの回転方向)における上流側から下流側へ搬送される。これにより、余剰の前記現像剤が回収される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この種の装置において、前記現像剤の、前記現像剤担持面への担持や、当該現像剤担持面からの回収が、スムーズに行われないと、形成画像の乱れ等の不具合が生じる。
【0010】
本発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記現像剤担持部材の周面である前記現像剤担持面における、前記現像剤の担持や回収をよりスムーズに行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象となる現像剤供給装置は、帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成されている。この現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、搬送基板と、電圧印加手段と、を備えている。
【0012】
前記現像剤担持部材は、主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有していて、当該現像剤担持面が現像剤供給位置にて前記供給対象と対向するように設けられている。この現像剤担持部材は、前記主走査方向と平行な軸を中心として回転可能に構成されている。
【0013】
前記搬送基板は、前記主走査方向と交差する方向に沿って配列された複数の搬送電極を備えていて、これらの搬送電極への進行波状の多相交流電圧の印加に伴って発生する電界により、前記現像剤を現像剤搬送方向に搬送するように構成されている。この搬送基板は、前記現像剤搬送方向における端部が前記現像剤担持部材と対向するように設けられている。
【0014】
例えば、前記搬送基板としての供給用搬送基板の、前記現像剤搬送方向における下流側の端部が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも上流側の現像剤担持位置にて、前記現像剤担持部材と対向するように設けられ得る。この場合、前記供給用搬送基板に設けられた前記搬送電極のうちの、前記現像剤搬送方向における最下流側のものが、前記現像剤担持部材と最近接するように、前記供給用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置され得る。
【0015】
前記現像剤担持位置が複数設けられるように、前記供給用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置され得る。この場合、
隣り合う2つの前記現像剤担持位置間の前記現像剤搬送方向に沿った長さをL、
前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度をv、
前記搬送電極及び前記現像剤担持部材に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数をf、相数をk、
複数の前記搬送電極のピッチをp、
m、nは任意の整数、
とした場合に、下式
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v
を満たすように、当該現像剤供給装置が構成され得る。
【0016】
また、前記搬送基板としての回収用搬送基板の、前記現像剤搬送方向における上流側の端部が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも下流側の現像剤回収位置にて、前記現像剤担持部材と対向するように設けられ得る。この場合、前記回収用搬送基板に設けられた前記搬送電極のうちの、前記現像剤搬送方向における最上流側のものが、前記現像剤担持部材と最近接するように、前記回収用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置され得る。
【0017】
前記現像剤回収位置が複数設けられるように、前記回収用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置され得る。この場合、
隣り合う2つの前記現像剤回収位置間の前記現像剤搬送方向に沿った長さをL、
前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度をv、
前記搬送電極及び前記現像剤担持部材に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数をf、相数をk、
複数の前記搬送電極のピッチをp、
m、nは任意の整数、
とした場合に、下式
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v
を満たすように、当該現像剤供給装置が構成され得る。
【0018】
なお、前記搬送基板による前記現像剤の前記現像剤搬送方向における搬送速度が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度の2倍以上となるように、前記現像剤供給装置が構成され得る。
【0019】
本発明の特徴は、前記電圧印加手段が、前記現像剤担持部材に前記搬送電極と同期した多相交流電圧を印加するように構成されていることにある。この場合、前記搬送基板における複数の前記搬送電極のうちの少なくともいずれか1つと、前記現像剤担持部材とが、同電位となるように、当該現像剤供給装置が構成され得る。
【発明の効果】
【0020】
上述の構成を備えた、本発明の現像剤供給装置によれば、前記現像剤担持部材に、前記搬送電極と同期した多相交流電圧が印加される。これにより、前記搬送基板の前記現像剤担持部材と対向している位置(少なくとも前記搬送基板の前記現像剤搬送方向における端部)にて、前記現像剤担持面における前記現像剤の担持や回収が、よりスムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としてのレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されている搬送基板を拡大した側断面図である。
【図4】図3に示されている各電源回路の出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】図2に示されているトナー供給装置の要部を拡大した側断面図である。
【図6】図2に示されているトナー供給装置の一変形例の構成を示す側断面図である。
【図7】図6に示されているトナー供給装置の要部を拡大した側断面図である。
【図8】図2に示されているトナー供給装置の他の変形例の構成を示す側断面図である。
【図9】図8に示されているトナー供給装置の要部を拡大した側断面図である。
【図10】図2に示されているトナー供給装置のさらに他の変形例の構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0024】
<レーザープリンタの構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置であるレーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。
【0025】
図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。
【0026】
レーザープリンタ1内に備えられた、図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、用紙Pを所定の用紙搬送経路PPに沿って搬送し得るように構成されている。
【0027】
本発明の供給対象としての感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向)と平行な円筒面として形成されている。この静電潜像担持面LSは、電位分布による静電潜像が形成されるとともに、当該静電潜像に対応した位置にて本発明の現像剤としてのトナーT(図2参照)を担持するように構成されている。
【0028】
感光体ドラム3は、前記主走査方向と平行な軸を中心として、図中矢印で示されている方向(図1における反時計回り)に回転駆動され得るように構成されている。すなわち、静電潜像担持面LSが、前記主走査方向と直交する副走査方向に沿って移動し得るように、感光体ドラム3が構成されている。
【0029】
帯電器4は、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。この帯電器4は、コロトロン型あるいはスコロトロン型の帯電器であって、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させ得るように構成されている。
【0030】
スキャナーユニット5は、画像データに基づいて変調されたレーザービームLBを生成するように構成されている。すなわち、スキャナーユニット5は、画素の有無によって発光のON/OFFが制御された、所定の波長帯域のレーザービームLBを生成するように構成されている。
【0031】
また、スキャナーユニット5は、生成されたレーザービームLBを、静電潜像担持面LSにおけるスキャン位置SPにて結像させる(露光する)ように構成されている。ここで、スキャン位置SPは、帯電器4よりも、感光体ドラム3の回転方向(図1における矢印で示されている方向:図中反時計回り)における下流側の位置に設けられている。
【0032】
さらに、スキャナーユニット5は、静電潜像担持面LS上にてレーザービームLBが結像される位置を、前記主走査方向に沿って等速度にて移動させる(走査する)ことで、静電潜像担持面LS上に静電潜像を形成し得るように構成されている。
【0033】
本発明の現像剤供給装置としてのトナー供給装置6は、感光体ドラム3と対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、現像位置DPにて、トナーを帯電した状態で静電潜像担持面LSに供給し得るように構成されている。ここで、現像位置DPとは、トナー供給装置6が静電潜像担持面LSと対向する位置である。このトナー供給装置6の詳細な構成については後述する。
【0034】
次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0035】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。
【0036】
レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間に向けて送り出し得るように構成されている。
【0037】
転写ローラ22は、感光体ドラム3の外周面である静電潜像担持面LSと、転写位置TPにて、用紙Pを挟んで対向するように配置されている。また、転写ローラ22は、図中矢印で示されている方向(時計回り)に回転駆動され得るように構成されている。
【0038】
転写ローラ22は、図示しないバイアス電源回路に接続されている。すなわち、転写ローラ22と感光体ドラム3との間で、静電潜像担持面LS上に付着したトナー(現像剤)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0039】
<<トナー供給装置>>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図である。図2を参照すると、トナー供給装置6は、帯電したトナーTを、電界によりトナー搬送経路TTPに沿って搬送しつつ、感光体ドラム3に対して供給するように構成されている。
【0040】
トナー供給装置6のケーシングをなすトナーボックス61は、側断面視にて長円状に形成された箱状部材である。このトナーボックス61は、その長手方向が上下方向(図中y軸方向)と平行となるように配置されている。
【0041】
トナーボックス61の内部には、粉末状の乾式現像剤としてのトナーTが収容されている。すなわち、トナーTは、トナーボックス61の内側の空間における底部の、略半円筒状の部分である、トナー貯留部61a内に貯留されている。なお、本実施形態においては、トナーTは、正帯電性、非磁性1成分の、黒色トナーである。
【0042】
トナーボックス61の頂部であって、感光体ドラム3と対向する位置には、開口部61bが形成されている。すなわち、開口部61bは、感光体ドラム3に向けて上方に開口するように設けられている。なお、本実施形態においては、開口部61bは、トナーボックス61の内側の空間の、奥行き方向(前記主走査方向及び前記上下方向と直交する方向:図中x軸方向)における全幅分にわたって形成されている。
【0043】
本発明の現像剤担持部材としての現像ローラ62は、前記主走査方向と平行な円柱面状の周面であるトナー担持面62aを有するローラ状の部材であって、感光体ドラム3と対向するように設けられている。すなわち、トナー担持面62aが現像位置DPにて感光体ドラム3における静電潜像担持面LSと近接しつつ所定間隔(500μm程度)のギャップを介して対向するように、現像ローラ62が配置されている。
【0044】
現像ローラ62は、トナーボックス61における、開口部61bが形成された上端部にて、前記主走査方向と平行な軸を中心として回動可能に支持されている。本実施形態においては、現像ローラ62は、前記主走査方向と平行な回転中心軸がトナーボックス61の内側に位置することで、トナー担持面62aのほぼ半分がトナーボックス61の外側の露出するように、トナーボックス61に収容されている。
【0045】
トナーボックス61の内部には、トナー搬送経路TTPに沿って、搬送基板63が設けられている。搬送基板63は、トナーボックス61の内壁面に固定されている。本実施形態においては、搬送基板63は、底部搬送基板63aと、供給用搬送基板63bと、回収用搬送基板63cと、を備えている。なお、搬送基板63(底部搬送基板63a、供給用搬送基板63b、及び回収用搬送基板63c)の内部構成の詳細については後述する。
【0046】
底部搬送基板63aは、トナー貯留部61aの底面を構成するように、トナーボックス61の内側の空間における底部に配置されている。底部搬送基板63aは、搬送基板63の底部の、側断面視にて半円筒形状に屈曲された凹状の曲面状の部分であって、供給用搬送基板63bの下端部と滑らかに接続されている。この底部搬送基板63aは、トナー貯留部61a内のトナーTを、供給用搬送基板63bの下端部に向けて搬送するように、当該下端部と接続されている。
【0047】
供給用搬送基板63bは、平板状に形成されていて、底部搬送基板63aと接続された下端部からトナーTを垂直上方に搬送するように立設されている。
【0048】
本実施形態においては、供給用搬送基板63bの上端部(トナー搬送方向TTDにおける下流側の端部)は、現像ローラ62の中心とほぼ同じ高さに(当該中心よりも若干上方まで)設けられている。この上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと対向するように設けられている。
【0049】
供給用搬送基板63bの上端部と、トナー担持面62aとは、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動方向における現像位置DPよりも上流側のトナー担持位置TCPにて、所定間隔(300μm程度)のギャップを隔てて対向するように設けられている。すなわち、供給用搬送基板63bの上端部と、トナー担持面62aとは、トナー担持位置TCPにて最も近接しつつ対向するように設けられている。
【0050】
供給用搬送基板63bは、底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、トナー担持位置TCPに向けて、トナー搬送方向TTDに搬送するように構成されている。
【0051】
回収用搬送基板63cは、平板状に形成されていて、供給用搬送基板63bの上端部と現像ローラ62を挟んだ反対側にて、現像ローラ62と対向するように設けられている。この回収用搬送基板63cは、トナーボックス61の開口部61bよりもトナー搬送方向TTDにおける下流側に配置されている。本実施形態においては、回収用搬送基板63cの下端部(トナー搬送方向TTDにおける終端部)は、現像ローラ62の下端に対応する位置に設けられている。
【0052】
本実施形態においては、回収用搬送基板63cの上端部(トナー搬送方向TTDにおける上流側の端部)は、現像ローラ62の中心とほぼ同じ高さに(当該中心よりも若干上方まで)設けられている。この上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと対向するように設けられている。
【0053】
回収用搬送基板63cの上端部と、トナー担持面62aとは、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動方向における現像位置DPよりも下流側のトナー回収位置TRPにて、所定間隔(300μm程度)のギャップを隔てて対向するように設けられている。すなわち、回収用搬送基板63cの上端部と、トナー担持面62aとは、トナー回収位置TRPにて最も近接しつつ対向するように設けられている。
【0054】
回収用搬送基板63cは、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収するとともに、この回収されたトナーTを下方のトナー貯留部61aに向けて搬送するように構成されている。
【0055】
搬送基板63及び現像ローラ62は、搬送電源回路64と電気的に接続されている。この搬送電源回路64は、トナーTをトナー搬送経路TTPに沿ってトナー搬送方向TTDに循環させる(トナー貯留部61a内のトナーTを現像ローラ62に一旦担持させつつ現像位置DPまで供給するとともに、現像位置DPにて消費されなかったトナーTを現像ローラ62から回収して下方のトナー貯留部61aに還流させる)ために必要な電圧を出力するようになっている。
【0056】
具体的には、搬送電源回路64は、+300V/0V、300Hzの矩形波状の交流電圧を出力するように構成されている。また、本実施形態においては、搬送電源回路64による出力電圧の周波数は、搬送基板63(供給用搬送基板63b及び回収用搬送基板63c)によるトナーTのトナー搬送方向TTDにおける搬送速度が、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動速度と同一となるように設定されている。
【0057】
本発明の電圧印加手段としての搬送電源回路64は、搬送基板63に多数備えられた後述する搬送電極631に対して多相交流電圧を印加するともに、現像ローラ62に対して搬送電極631と同期した(多数の搬送電極631のうちの一部と同電位の)電圧を印加するように構成されている。搬送基板63及び現像ローラ62と搬送電源回路64との電気的接続の詳細については後述する。
【0058】
<<<搬送基板>>>
図3は、図2に示されている搬送基板63を拡大した側断面図である。
【0059】
図3を参照すると、搬送基板63は、薄板状の部材であって、フレキシブルプリント配線基板と同様の構成を有している。具体的には、搬送基板63は、搬送電極631と、搬送電極支持フィルム632と、搬送電極コーティング層633と、搬送電極オーバーコーティング層634と、から構成されている。
【0060】
搬送電極631は、前記主走査方向と平行な(すなわち前記副走査方向と直交する)長手方向を有する線状の配線パターンであって、厚さが数十μm程度の銅箔によって形成されている。複数の搬送電極631は、前記主走査方向と交差するトナー搬送経路TTPに沿って配列されていて、互いに平行に配置されている。
【0061】
なお、底部搬送基板63aにおける搬送電極631を、以下、「底部搬送電極631a」と称するものとする。同様に、供給用搬送基板63bにおける搬送電極631を、以下「供給用搬送電極631b」と称し、回収用搬送基板63cにおける搬送電極631を、以下「回収用搬送電極631c」と称するものとする。
【0062】
トナー搬送経路TTPに沿って多数配列された各搬送電極631は、3本置きに同一の電源回路に接続されている。すなわち、電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631,電源回路VDに接続された搬送電極631,電源回路VAに接続された搬送電極631,電源回路VBに接続された搬送電極631,電源回路VCに接続された搬送電極631・・・が、トナー搬送経路TTPに沿って順に配列されている(なお、これらの電源回路VAないしVDは、搬送電源回路64の構成要素である。)。
【0063】
ここで、図4は、図3に示されている各電源回路VAないしVDの出力波形の一例を示すグラフである。本実施形態においては、図4に示されているように、各電源回路VAないしVDは、ほぼ同一波形の交流電圧である駆動電圧を出力し得るように構成されている。また、各電源回路VAないしVDが発生する電圧の波形における位相が、90°ずつ異なるように、各電源回路VAないしVDが構成されている。すなわち、電源回路VAから電源回路VDに向かう順に、電圧の位相が90°ずつ遅れるようになっている。
【0064】
このように、搬送基板63は、各搬送電極631に対して上述のような多相交流の駆動電圧が印加されて、トナー搬送経路TTPに沿った進行波状の電界が発生することで、正帯電したトナーTをトナー搬送方向TTDに搬送し得るように構成されている。
【0065】
複数の搬送電極631は、搬送電極支持フィルム632の表面上に形成されている。搬送電極支持フィルム632は、可撓性のフィルムであって、ポリイミド樹脂等の絶縁性の合成樹脂から構成されている。
【0066】
搬送電極コーティング層633は、絶縁性の合成樹脂から構成されている。この搬送電極コーティング層633は、搬送電極支持フィルム632における搬送電極631が設けられている表面、及び搬送電極631を覆うように設けられている。
【0067】
搬送電極コーティング層633の上には、搬送電極オーバーコーティング層634(なお、底部搬送基板63aにおける搬送電極オーバーコーティング層634を底部オーバーコーティング層634a、供給用搬送基板63bにおける搬送電極オーバーコーティング層634を垂直オーバーコーティング層634b、回収用搬送基板63cにおける搬送電極オーバーコーティング層634を回収オーバーコーティング層634cと称する。)が設けられている。
【0068】
すなわち、上述の搬送電極コーティング層633は、搬送電極オーバーコーティング層634と搬送電極631との間に形成されている。搬送電極オーバーコーティング層634の表面は、トナーTがスムーズに搬送され得るように、凹凸の極めて少ない平滑な面として形成されている。
【0069】
本実施形態においては、垂直オーバーコーティング層634b及び回収オーバーコーティング層634cは、同一の材料(ポリエステル)によって形成されている。そして、この材料としては、トナーの帯電量を適正値にする摩擦帯電材料であって、摩擦帯電列における位置が、底部オーバーコーティング層634aを構成する材料(ポイリミド)よりもプラス側すなわちトナーTの帯電極性と同極性側となるものが用いられている。
【0070】
<<<現像剤担持位置及び現像剤回収位置周辺の要部構成の詳細>>>
図5は、図2に示されているトナー供給装置6の要部を拡大した側断面図である。なお、図5においては、図示の簡略化のため、図2におけるトナーボックス61の図示が省略されているものとする。
【0071】
図5を参照すると、供給用最下流電極631b1(トナー搬送経路TTPに沿って供給用搬送基板63bに設けられた複数の供給用搬送電極631bのうちのトナー搬送方向TTDにおける最下流側のもの)が、トナー担持面62aと最近接するように、供給用搬送基板63b及び現像ローラ62が配置されている。すなわち、供給用最下流電極631b1は、供給用搬送基板63bと現像ローラ62(トナー担持面62a)とが最近接するトナー担持位置TCPに対応する位置に設けられている。
【0072】
図5に示されているように、供給用搬送基板63bには、供給用搬送電極631bA、631bB、631bC、631bD、631bA・・・が、トナー搬送方向TTDにこの順に配列するように設けられている。ここで、供給用搬送電極631bXは、電源回路VX[XはA、B、C、及びDのうちのいずれか1つ]と接続された供給用搬送電極631bを指すものとする(後述する回収用搬送電極631cA、631cB、631cC、631cD、631cA・・・も同様である。)。
【0073】
供給用最下流電極631b1は、トナー搬送方向TTDにおける上流側にて隣接する供給用搬送電極631bよりも、位相が1相分遅れた電圧が印加されるようになっている。すなわち、本実施形態においては、トナー搬送方向TTDにおける上流側にて供給用最下流電極631b1と隣接する供給用搬送電極631b(631bC)は、電源回路VCと接続されている。そして、この供給用搬送電極631bCに対してトナー搬送方向TTDにおける下流側にて隣接する供給用最下流電極631b1は、電源回路VDと接続されている。
【0074】
また、本実施形態においては、現像ローラ62は、供給用最下流電極631b1よりも、位相が1相分遅れた電圧が印加されるようになっている。すなわち、本実施形態においては、現像ローラ62は、電源回路VAと接続されている。
【0075】
さらに、本実施形態においては、回収用最上流電極631c1(トナー搬送経路TTPに沿って回収用搬送基板63cに設けられた複数の回収用搬送電極631cのうちのトナー搬送方向TTDにおける最上流側のもの)は、現像ローラ62よりも、位相が1相分遅れた電圧が印加されるようになっている。すなわち、本実施形態においては、回収用最上流電極631c1は、電源回路VBと接続されている。
【0076】
回収用最上流電極631c1は、回収用搬送基板63cと現像ローラ62(トナー担持面62a)とが最近接するトナー回収位置TRPに対応する位置に設けられている。この回収用最上流電極631c1(回収用搬送電極631cB)のトナー搬送方向TTDにおける下流側には、回収用搬送電極631cC、631cD、631cA・・・が、トナー搬送方向TTDにこの順に配列するように設けられている。
【0077】
<レーザープリンタの動作説明>
次に、上述のように構成されたレーザープリンタ1による動作の概要を、実施形態の構成による作用・効果とともに、図面を適宜参照しつつ説明する。
【0078】
<<給紙動作>>
まず図1を参照すると、図示しない前記給紙トレイ上に積載された用紙Pの先端が、レジストローラ21まで送られる。このレジストローラ21にて、用紙Pの斜行が補正されるとともに、搬送タイミングが調整される。その後、用紙Pは、転写位置TPまで給送される。
【0079】
<<潜像形成面上へのトナー像の担持>>
上述のように用紙Pが転写位置TPに向けて搬送されている間に、感光体ドラム3の周面である静電潜像担持面LS上に、以下のようにしてトナーTによる像が担持される。
【0080】
<<<静電潜像の形成>>>
感光体ドラム3の静電潜像担持面LSは、まず、帯電器4によって、正極性に一様に帯電される。
【0081】
帯電器4によって帯電された静電潜像担持面LSは、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(反時計回り)の回転により、スキャナーユニット5と対向する(正対する)位置であるスキャン位置SPまで、前記副走査方向に沿って移動する。
【0082】
このスキャン位置SPにて、画像情報に基づいて変調されたレーザービームLBが、前記主走査方向に沿って走査されつつ、静電潜像担持面LSに照射される。このレーザービームLBの変調状態に応じて、静電潜像担持面LS上の正電荷が消失する部分が生じる。これにより、静電潜像担持面LS上に、正電荷のパターン(画像状分布)による静電潜像が形成される。
【0083】
静電潜像担持面LSに形成された静電潜像は、感光体ドラム3の図中矢印で示されている方向(反時計回り)の回転により、トナー供給装置6と対向する現像位置DPに向かって移動する。
【0084】
<<<帯電トナーの搬送・供給>>>
図2及び図3を参照すると、トナーボックス61内に貯留されているトナーTは、底部搬送基板63aにおける底部オーバーコーティング層634aとの接触や摩擦等により帯電する。底部搬送基板63aにおける底部オーバーコーティング層634aと接触あるいは近接している、帯電したトナーTは、底部搬送電極631aに対する印加電圧によって発生する電界により、トナー搬送方向TTDに搬送され、供給用搬送基板63bに受け渡される。
【0085】
ここで、本実施形態においては、底部搬送基板63aのトナー搬送方向TTDにおける下流側の端部、すなわち、供給用搬送基板63bとの接続部が、曲面状に形成されている。これにより、供給用搬送基板63bの下端部における、底部搬送基板63aからのトナーTの受け渡しが、スムーズに行われ得る。
【0086】
供給用搬送基板63bは、その下端部にて底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTを、垂直上方に搬送する。このとき、供給用搬送基板63bにおける垂直オーバーコーティング層634bは、底部搬送基板63aにおける底部オーバーコーティング層634aとは異なり、搬送中の正帯電のトナーTをさらに正帯電にする機能が低い。よって、垂直搬送基板上を搬送中の前記現像剤の帯電状態の変化が、可及的に抑制され得る。
【0087】
ここで、底部搬送基板63aから受け渡されたトナーTには、帯電状態が不良なもの(逆極性すなわち負極性に帯電したものや、低帯電あるいは無帯電のもの、等。)が混入している。
【0088】
もっとも、本実施形態の構成においては、供給用搬送基板63bによってトナー担持位置TCPに向けて垂直上方に搬送されている際や、供給用搬送基板63bと現像ローラ62との間に形成された電界によって正帯電のトナーTがトナー担持位置TCPにて現像ローラ62に担持される際に、帯電状態が不良なトナーTは、重力や上述の電界の作用により、トナー搬送経路TTPから逸脱し、供給用搬送基板63bから下方に落下する。
【0089】
これにより、帯電状態が良好なトナーTのみが選択的に、トナー担持位置TCPまで搬送される。すなわち、供給用搬送基板63bにて、トナーTにおける、帯電状態が良好なものと不良なものとが、良好に選別される。トナー搬送経路TTPから逸脱して供給用搬送基板63bから下方に落下してきたトナーTは、トナー貯留部61aに還流する。かかるトナーTは、供給用搬送基板63bによって、トナー担持位置TCPに向けて、再度上方に搬送される。
【0090】
上述のようにして、正帯電のトナーTが、供給用搬送基板63bによって、トナー担持位置TCPまで搬送される。ここで、図4及び図5を参照すると、現像ローラ62には、供給用搬送電極631bと同期した多相交流電圧が印加される。具体的には、電源回路VAと接続された現像ローラ62には、電源回路VDと接続された供給用最下流電極631b1よりも、位相が1相分遅れた電圧が印加される。
【0091】
すると、供給用搬送基板63b上のトナー搬送経路TTPにおけるトナーTをトナー搬送方向TTDに搬送する進行波電界と同様の電界が、トナー担持位置TCPにて、供給用最下流電極631b1と現像ローラ62(トナー担持面62a)との間に形成される。
【0092】
ここで、トナー担持位置TCPに印加される電圧は、正帯電のトナーTを現像ローラ62側に移行させるための、大きな直流バイアス電圧を含まない。このため、トナーTは、このトナー担持位置TCPに形成される、搬送電源回路64から出力される多相交流電圧による進行波状の電界により、現像ローラ62側にスムーズに移行し、トナー担持面62a上に良好に担持される。
【0093】
トナー担持面62a上に担持されたトナーTは、現像ローラ62の回転駆動により現像位置DPまで移動することで、トナーTが現像位置DPに供給される。この現像位置DPの近傍にて、静電潜像担持面LSに形成された静電潜像が、トナーTによって現像される。すなわち、静電潜像担持面LS上であって、静電潜像における正電荷が消失した部分に、トナーTが付着する。これにより、トナーTによる画像(以下、「トナー像」と称する。)が、静電潜像担持面LS上に担持される。
【0094】
現像位置DPを通過した(現像位置DPにて消費されなかった)トナー担持面62a上のトナーTは、現像ローラ62の回転駆動により、トナー回収位置TRPまで移動する。ここで、図4及び図5を参照すると、現像ローラ62には、回収用搬送電極631cと同期した多相交流電圧が印加される。具体的には、電源回路VAと接続された現像ローラ62には、電源回路VBと接続された回収用最上流電極631c1よりも、位相が1相分進んだ電圧が印加される。
【0095】
すると、回収用搬送基板63c上のトナー搬送経路TTPにおけるトナーTをトナー搬送方向TTDに搬送する進行波電界と同様の電界が、トナー回収位置TRPにて、回収用最上流電極631c1と現像ローラ62(トナー担持面62a)との間に形成される。
【0096】
ここで、トナー回収位置TRPに印加される電圧は、鏡像力やファンデルワールス力によってトナー担持面62a上に強固に付着している正帯電のトナーTを現像ローラ62から回収用搬送基板63c側に移行させるための、大きな直流バイアス電圧を含まない。
【0097】
このため、トナーTは、このトナー回収位置TRPに形成される、搬送電源回路64から出力される多相交流電圧による進行波状の電界により、現像ローラ62から回収用搬送基板63c側にスムーズに移行する。すなわち、トナー回収位置TRPにて、トナーTが、回収用搬送基板63cによってトナー担持面62aから回収される。そして、回収されたトナーTは、上述のような大きな直流バイアスによって回収用搬送基板63c上に押さえ付けられることなく、トナー搬送方向TTDに良好に搬送される。
【0098】
さらに、現像ローラ62への印加電圧は、現像位置DPにおける所謂ジャンピング現像のための現像バイアスを兼ねた作用を奏する。したがって、現像バイアスが、簡略な装置構成によって良好に印加され得る。
【0099】
回収用搬送基板63cの下端部にて、トナーTは、垂直下方に搬送される。このとき、トナーTには、重力と同方向の慣性が作用する。そして、回収用搬送基板63cの下端部よりも下方においては、トナーTは、重力と、この重力と同方向の慣性の作用で、トナー貯留部61aに落下する。よって、回収用搬送基板63cがトナー貯留部61aに達するまで設けられていなくても、トナーTがトナー貯留部61aに良好に還流する。
【0100】
<<潜像形成面から用紙へのトナー像の転写>>
図1を参照すると、上述のようにして感光体ドラム3の静電潜像担持面LS上に担持されたトナー像は、当該静電潜像担持面LSが図中矢印で示されている方向(反時計回り)に回転することにより、転写位置TPに向けて搬送される。そして、この転写位置TPにて、トナー像が、静電潜像担持面LSから用紙P上に転写される。
【0101】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0102】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0103】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0104】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0105】
(1)本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、平板状や無端ベルト状等であってもよい。また、露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。
【0106】
あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0107】
(2)感光体ドラム3と現像ローラ62とは、接触していてもよい。
【0108】
(3)搬送基板63の構成は、上述の実施形態のものに限定されない。
【0109】
例えば、搬送電極オーバーコーティング層634は省略され得る(この場合、上述の実施形態における搬送電極オーバーコーティング層634の材料選択と同様に、搬送電極コーティング層633の材料選択が行われる。)。あるいは、搬送電極631が搬送電極支持フィルム632内に埋め込まれることで、搬送電極コーティング層633及び搬送電極オーバーコーティング層634の双方が省略され得る。
【0110】
供給用搬送基板63bは、実質的に前記上下方向に沿って立設していればよく、多少傾いていてもよい。同様に、回収用搬送基板63cも、多少傾いていてもよい。
【0111】
底部搬送基板63aの中央部は、平坦であってもよい。すなわち、底部搬送基板63aにおける曲面状の部分は、供給用搬送基板63bの下端部との接続部のみであってもよい。また、底部搬送基板63aは、供給用搬送基板63bと一体であってもよく、別体であってもよい。
【0112】
回収用搬送基板63cのトナー搬送方向TTDにおける終端部は、底部搬送基板63aと接続されていてもよい。この場合、底部搬送基板63aは、回収用搬送基板63cと一体であってもよく、別体であってもよい。
【0113】
底部搬送基板63a、供給用搬送基板63b、及び回収用搬送基板63cは、トナーボックス61と一体化されていてもよい。すなわち、例えば、底部搬送基板63a、供給用搬送基板63b、及び回収用搬送基板63cを一体化してなる搬送基板63が、側断面視にて略U字状に屈曲されたソリッド基板によって構成されていてもよい。
【0114】
図6は、図2に示されているトナー供給装置6の一変形例の構成を示す側断面図である。図7は、図6に示されているトナー供給装置6の要部を拡大した側断面図である。図6及び図7に示されているように、供給用搬送基板63bや回収用搬送基板63cの最上端部には、現像ローラ62の円筒形状に倣った形状の屈曲部が形成されていてもよい。
【0115】
本変形例においては、供給用搬送基板63bの最上端部は、現像ローラ62の中心よりも上方まで、具体的には、開口部61bに達する位置まで設けられている。この最上端部は、現像ローラ62における円柱面状のトナー担持面62aと一定間隔(300μm程度)のギャップを隔てて対向するように、凹状の曲面状に屈曲されている。
【0116】
また、本変形例においては、回収用搬送基板63cの上部は、現像ローラ62と一定間隔(現像位置DPにおける感光体ドラム3と現像ローラ62とのギャップの間隔よりも狭い間隔:300μm程度)のギャップを隔てて対向するように、凹状の曲面状に屈曲されている。そして、回収用搬送基板63cの下部は、トナーTを垂直下方に搬送するように設けられている。
【0117】
すなわち、図7に示されているように、本変形例においては、上述の実施形態(供給用最下流電極631b1のみがトナー担持面62aと最も近接している)とは異なり、供給用搬送基板63bの最上端部とトナー担持面62aとが対向するトナー担持領域TCAにて、供給用最下流電極631b1を含む複数の供給用搬送電極631bが設けられている。
【0118】
同様に、本変形例においては、上述の実施形態(回収用最上流電極631c1のみがトナー担持面62aと最も近接している)とは異なり、回収用搬送基板63cの最上端部とトナー担持面62aとが対向するトナー回収領域TRAにて、回収用最上流電極631c1を含む複数の回収用搬送電極631cが設けられている。
【0119】
なお、本変形例においては、搬送電源回路64による出力電圧の周波数は、搬送基板63(供給用搬送基板63b及び回収用搬送基板63c)によるトナーTのトナー搬送方向TTDにおける搬送速度が、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動速度の2倍以上となるように設定されている。これにより、トナー担持面62aにおけるトナーTの担持やトナー担持面62aからのトナーTの回収が、より良好に行われ得る。
【0120】
図8は、図2に示されているトナー供給装置6の他の変形例の構成を示す側断面図である。図9は、図8に示されているトナー供給装置6の要部を拡大した側断面図である。図8及び図9に示されているように、この変形例は、図6及び図7に示されている先の変形例を、さらに変形したものである。
【0121】
すなわち、本変形例においては、上述の実施形態(図5参照)と同様に、複数の供給用搬送電極631bのうちの供給用最下流電極631b1のみがトナー担持面62aと最も近接するようになっている。また、本変形例においては複数の回収用搬送電極631cのうちの回収用最上流電極631c1のみがトナー担持面62aと最も近接するようになっている。
【0122】
かかる構成によっても、トナー担持面62aにおけるトナーTの担持やトナー担持面62aからのトナーTの回収が、良好に行われ得る。
【0123】
特に、図9に示されているように、本変形例においては、トナー担持面62aにおける供給用最下流電極631b1からトナーTの供給を受ける部分が、トナー搬送経路TTPにおける供給用最下流電極631b1に対応する位置でのトナー搬送方向TTD(当該位置でのトナー搬送経路TTPの接線方向)に沿って形成される。これにより、トナーTが、供給用搬送基板63bから現像ローラ62側にスムーズに移行し、トナー担持面62a上に良好に担持される。
【0124】
また、図9に示されているように、本変形例においては、トナー担持面62aにおける回収用最上流電極631c1によってトナーTの回収作用を受ける部分が、トナー搬送経路TTPにおける回収用最上流電極631c1に対応する位置でのトナー搬送方向TTD(当該位置でのトナー搬送経路TTPの接線方向)に沿って形成される。これにより、トナーTが、現像ローラ62から回収用搬送基板63c側にスムーズに移行する。したがって、回収用搬送基板63cによる、トナー担持面62aからのトナーTの回収、及びトナー搬送方向TTDへの搬送が、良好に行われる。
【0125】
図10は、図2に示されているトナー供給装置6のさらに他の変形例の構成を示す側断面図である。図10に示されているように、トナー担持面62aと搬送基板63とが、複数(図10の例では2つ)の位置にて(最)近接するように、トナー供給装置6が構成され得る。
【0126】
すなわち、トナー担持位置TCPが複数設けられるように、供給用搬送基板63b及び現像ローラ62が配置され得る。かかる構成によれば、トナー担持面62aにおけるトナーTの担持が、より良好に行われ得る。ここで、図中、トナー搬送方向TTDcは、搬送基板63が供給用搬送基板63bである場合のトナー搬送方向を示すものとする。
【0127】
この場合、下式(1)
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v・・・(1)
を満たすように、トナー供給装置6が構成され得る。
【0128】
ここで、上記式(1)中、
Lは、隣り合う2つのトナー担持位置TCP間(第一対向位置CP1−第二対向位置CP2間)のトナー搬送方向TTDcに沿った長さ、
vは、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動速度、
fは、供給用搬送電極631b(図3参照)及び現像ローラ62に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数、
kは、供給用搬送電極631b(図3参照)及び現像ローラ62に印加される進行波状の多相交流電圧の相数、
pは、複数の供給用搬送電極631b(図3参照)のピッチ、
m、nは任意の整数である。
【0129】
具体的には、多相交流電圧が4相であって、トナー担持面62aの移動速度vと供給用搬送基板63bによるトナー搬送方向TTDcにおけるトナー搬送速度とが等しい場合、第二対向位置CP2における供給用搬送電極631bには、第一対向位置CP1における供給用搬送電極631bよりも位相が2相分ずれた電圧が印加される。
【0130】
かかる構成によれば、トナー担持面62aにおける、第二対向位置CP2にてトナーTが担持されなかった部分に対して、第一対向位置CP1にてトナーTが良好に担持され得る。これにより、トナーTが、トナー担持面62a上により均一に担持される。
【0131】
あるいは、トナー回収位置TRPが複数設けられるように、回収用搬送基板63c及び現像ローラ62が配置され得る。かかる構成によれば、トナー担持面62aからのトナーTの回収が、より確実に行われ得る。ここで、図中、トナー搬送方向TTDrは、搬送基板63が回収用搬送基板63cである場合のトナー搬送方向を示すものとする。
【0132】
この場合、下式(2)
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v・・・(2)
を満たすように、トナー供給装置6が構成され得る。
【0133】
ここで、上記式(2)中、
Lは、隣り合う2つのトナー回収位置TRP間(第一対向位置CP1−第二対向位置CP2間)のトナー搬送方向TTDrに沿った長さ、
vは、現像ローラ62の回転によるトナー担持面62aの移動速度、
fは、回収用搬送電極631c(図3参照)及び現像ローラ62に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数、
kは、回収用搬送電極631c(図3参照)及び現像ローラ62に印加される進行波状の多相交流電圧の相数、
pは、複数の回収用搬送電極631c(図3参照)のピッチ、
m、nは任意の整数である。
【0134】
具体的には、多相交流電圧が4相であって、トナー担持面62aの移動速度vと回収用搬送基板63cによるトナー搬送方向TTDcにおけるトナー搬送速度とが等しい場合、第二対向位置CP2における回収用搬送電極631cには、第一対向位置CP1における回収用搬送電極631cよりも位相が2相分ずれた電圧が印加される。
【0135】
かかる構成によれば、第一対向位置CP1にて回収されずにトナー担持面62a上に残留したトナーTが、第二対向位置CP2にて良好に回収され得る。これにより、トナー担持面62a上の残留トナーの回収がより良好に行われ、形成画像におけるゴーストの発生が良好に抑制され得る。
【0136】
(4)図4を参照すると、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の波形は、矩形波状以外にも、正弦波状や三角波状等の任意のものが用いられ得る。
【0137】
また、上述の実施形態においては、4つの電源回路VA〜VDが設けられるとともに、各電源回路VA〜VDが発生する電圧の位相が90°ずつ異なっていた。もっとも、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明における多相交流電圧は、4相に限定されない。よって、例えば、トナー供給装置6には、位相が120°ずつ異なる3つの電源回路VA〜VCが備えられていてもよい。
【0138】
(7)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0139】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0140】
1 … レーザープリンタ
2 … 用紙搬送機構
21 … レジストローラ
22 … 転写ローラ
3 … 感光体ドラム(供給対象)
4 … 帯電器
5 … スキャナーユニット
6 … トナー供給装置(現像剤供給装置)
61 … トナーボックス(ケーシング)
61a … トナー貯留部(現像剤貯留部)
61b … 開口部
62 … 現像ローラ(現像剤担持部材)
62a … トナー担持面(現像剤担持面)
63 … 搬送基板
63a … 底部搬送基板
63b … 供給用搬送基板
63c … 回収用搬送基板
631 … 搬送電極
631a … 底部搬送電極
631b … 供給用搬送電極
631b1 … 供給用最下流電極
631c … 回収用搬送電極
631c1 … 回収用最上流電極
632 … 搬送電極支持フィルム
633 … 搬送電極コーティング層
634 … 搬送電極オーバーコーティング層
64 … 搬送電源回路(電圧印加手段)
CP1 … 第一対向位置
CP2 … 第二対向位置
DP … 現像位置(現像剤供給位置)
LB … レーザービーム
LS … 静電潜像担持面
P … 用紙
PP … 用紙搬送経路
SP … スキャン位置
T … トナー(現像剤)
TCA … トナー担持領域(現像剤担持位置)
TRA … トナー回収領域(現像剤回収位置)
TCP … トナー担持位置(現像剤担持位置)
TRP … トナー回収位置(現像剤回収位置)
TP … 転写位置
TTD … トナー搬送方向
TTDc … トナー搬送方向
TTDr … トナー搬送方向
TTP … トナー搬送経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0141】
【特許文献1】特開2008−70803号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置において、
主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有し、当該現像剤担持面が現像剤供給位置にて前記供給対象と対向するように設けられ、前記主走査方向と平行な軸を中心として回転可能に構成された、現像剤担持部材と、
前記主走査方向と交差する方向に沿って配列された複数の搬送電極を備え、これらの搬送電極への進行波状の多相交流電圧の印加に伴って発生する電界により前記現像剤を現像剤搬送方向に搬送するように構成され、当該現像剤搬送方向における端部が前記現像剤担持部材と対向するように設けられた、搬送基板と、
前記現像剤担持部材に前記搬送電極と同期した多相交流電圧を印加する、電圧印加手段と、
を備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記搬送基板としての供給用搬送基板の、前記現像剤搬送方向における下流側の端部が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも上流側の現像剤担持位置にて、前記現像剤担持部材と対向するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の、現像剤供給装置であって、
前記供給用搬送基板に設けられた前記搬送電極のうちの、前記現像剤搬送方向における最下流側のものが、前記現像剤担持部材と最近接するように、前記供給用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の、現像剤供給装置であって、
前記現像剤担持位置が複数設けられるように、前記供給用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の、現像剤供給装置であって、
隣り合う2つの前記現像剤担持位置間の前記現像剤搬送方向に沿った長さをL、
前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度をv、
前記搬送電極及び前記現像剤担持部材に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数をf、相数をk、
複数の前記搬送電極のピッチをp、
m、nは任意の整数、
とした場合に、下式
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v
を満たすように構成されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の、現像剤供給装置であって、
前記搬送基板としての回収用搬送基板の、前記現像剤搬送方向における上流側の端部が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動方向における前記現像剤供給位置よりも下流側の現像剤回収位置にて、前記現像剤担持部材と対向するように設けられたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項7】
請求項6に記載の、現像剤供給装置であって、
前記回収用搬送基板に設けられた前記搬送電極のうちの、前記現像剤搬送方向における最上流側のものが、前記現像剤担持部材と最近接するように、前記回収用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の、現像剤供給装置であって、
前記現像剤回収位置が複数設けられるように、前記回収用搬送基板及び前記現像剤担持部材が配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の、現像剤供給装置であって、
隣り合う2つの前記現像剤回収位置間の前記現像剤搬送方向に沿った長さをL、
前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度をv、
前記搬送電極及び前記現像剤担持部材に印加される進行波状の多相交流電圧の周波数をf、相数をk、
複数の前記搬送電極のピッチをp、
m、nは任意の整数、
とした場合に、下式
L=n・k・p=[{m+(1/2)}・f]/v
を満たすように構成されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1項に記載の、現像剤供給装置であって、
前記搬送基板による前記現像剤の前記現像剤搬送方向における搬送速度が、前記現像剤担持部材の回転による前記現像剤担持面の移動速度の2倍以上となるように構成されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1項に記載の、現像剤供給装置であって、
前記搬送基板における複数の前記搬送電極のうちの少なくともいずれか1つと、前記現像剤担持部材とが、同電位となるように構成されたことを特徴とする、現像剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−277035(P2010−277035A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132027(P2009−132027)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】