説明

現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】トナーを外周面上でホッピングさせて潜像担持体の現像領域へ搬送するトナー担持体を備えた現像装置であって、そのトナー担持体に設けられた電極間で界面やトナーを通じたリークが生じることがなく、さらに、経時においても、電極部材間でのイオンマイグレーションによるリークが生じることのない現像剤担持体、現像装置を提供する。
【解決手段】電圧印加手段によって、内側電極と外側電極との両方に直流成分と互いに逆相な交流成分とから構成される電圧がそれぞれ印加されるか、または、内側電極と外側電極とのいずれか一方の電極に交流成分と直流成分とから構成される電圧を印加されるとともに他方の電極に直流成分のみが印加され、かつ、内側電極と外側電極とにそれぞれ印加される電圧の直流成分が、互いに異なる電圧で構成されている現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像剤を担持する外周面が表面移動することにより現像剤を現像領域へ搬送するための現像剤担持体を備えた現像装置、この現像装置を備えたプロセスカートリッジ、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備えた現像剤担持体を有する現像装置が知られている。
【0003】
例えば、現像剤担持体上の現像剤を感光体等の潜像担持体に直接接触させないで、現像剤を潜像担持体上の潜像に供給して現像を行う現像装置がある。そして、このような現像装置の一例として、現像剤担持体上の一成分現像剤(トナー)をクラウド化させることによってトナーを潜像担持体上に供給する方式を採用するものが挙げられる。
【0004】
この方式に使用される現像剤担持体は、外周面に沿って複数種類の電極が所定のピッチで配置され、その複数種類の電極の外周面側を保護層で覆ったものである。この複数種類の電極に対し、時間的に変化する互いに異なる電圧をそれぞれ印加して、時間的に変化する電界を互いに近接する複数種類の電極間に形成すると、この電界により現像剤担持体上のトナーを互いに近接する複数種類の電極間で飛翔させることができる(このようにトナーが飛翔する現象(ホッピング)を、以下「フレア」と呼ぶ。)。これにより、現像剤担持体の外周面近傍の空間でトナーがクラウド化した状況となる。
【0005】
この方式の現像装置において、トナーが現像剤担持体の外周面に付着することなくフレアするためには、現像剤担持体の外周面において、互いに近接する複数種類の電極間に形成されるフレア用電界からトナーが受ける力F1と、トナーと現像剤担持体の外周面との間の付着力F2との大小関係が重要となってくる。F1よりF2の方が大きいと、トナーは現像剤担持体外周面との付着力から逃れることができず、フレアしない。F2よりF1の方が大きければ、トナーはフレアすることができ、このときのF2とF1との差が大きいほど、安定したフレアを実現できる。F1を大きくすればこの差を大きくできるので安定したフレアを実現できるが、F1を大きくするためには現像剤担持体の外周面上に形成されるフレア用電界を大きくすることが必要となる。
【0006】
特許文献1には、フレア用電界を形成するための2種類の電極がローラ状の現像剤担持体における同心円上に設けられている現像装置が開示されている。この現像装置で使用する現像剤担持体は、2種類の櫛歯状の電極を、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯部分の間に入り込むように外周面に沿って配置したものである。そして、各種類の電極に上述した電圧をそれぞれ印加することにより、櫛歯部分間でトナーを飛翔させ、フレアさせることができる。
【0007】
また、特許文献2には、フレア用電界を形成するために3種類の電極を備えたローラ状の現像剤担持体が開示されている。この現像剤担持体は、3種類の電極のうちの2種類の電極は同心円上に設けられているが、残りの1種類の電極は上記2種類の電極よりも外周面側に配置されている。この現像剤担持体を用いた現像装置でも、各種類の電極に互いに位相が異なる3相の電圧をそれぞれ印加することにより、各種電極間でトナーを飛翔させ、フレアさせることができる。
【0008】
また、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備えた現像剤担持体を有する現像装置の他の例としては、例えば、特許文献3に記載されたものが知られている。この特許文献3には、現像剤担持体上のトナーを振動させて帯電させる交番電界(帯電用電界)を形成するための2種類の電極が現像剤担持体に設けられている。この現像装置で使用される現像剤担持体は、2種類の電極間に空気を介在させることで、これらの電極間は空気による絶縁がなされている。ただし、電極間を絶縁材で覆うような処理は施されていない。
【0009】
また、特許文献4では、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えた現像剤担持体において、上記複数種類の電極部材を外周面法線方向で互いに異なる位置に配置し、各電極部材間に絶縁層を介在させている。この現像剤担持体を用いた現像装置でも、各種類の電極に互いに位相が異なる電圧をそれぞれ印加することにより、各種電極間でトナーを飛翔させ、フレアさせることができる。
【0010】
上記特許文献1〜3に記載された現像装置のようにローラ同心円上に複数種類の電極を備えた構成でフレア用電界や帯電用電界を大きくするためには、これらの電極間におけるリークを有効に防止することが必要となる。従来の構成においても、電極間には樹脂等の絶縁材や空気が充填されるので、比較的小さい電圧を印加する場合には電極間の絶縁性を十分に確保することができた。しかし、より大きな電界を形成するために比較的大きな電圧を印加しようとすると、電極間の絶縁性を十分に確保することが困難となる。これは次の理由による。
【0011】
上記特許文献1に記載の構成においては、表面に櫛歯状の溝が形成された樹脂製ローラに対し、その表面に金属メッキを行い、その後にローラ表面を削ることによって2種類の櫛歯状の電極を作成する。また、この方法以外にも、ローラ同心円上に2種類の櫛歯状の電極を作成する方法としては、例えば、表面を金属メッキしたローラをエッチングによって櫛歯状に形成する方法、インクジェット方式によって導電インクを吐出して櫛歯状の電極を形成する方法なども考えられる。しかし、いずれの方法を採用する場合であっても、2種類の電極間に充填する絶縁材を櫛歯状の電極が作成されたローラ表面にコーティングすることにより電極間の絶縁性を得ることになる。この場合、2種類の電極間には、ローラの樹脂表面とコーティングされた絶縁材との界面が形成される。そのため、この界面を通じたリークが生じやすく、比較的大きな電圧を印加すると、電極間の絶縁性を十分に確保することが困難となる。
【0012】
また、上記特許文献2に記載された構成においては、3種類の電極のうち2種類の電極が同心円上に設けられている。この2種類の電極の形成方法も上記特許文献1の場合と同様であり、したがってやはりこの界面を通じたリークが生じやすい。よって、この2種類の電極間の絶縁性については、上記特許文献1に記載の構成と同様の理由で、絶縁性を十分に確保することが困難である。なお、3種類の電極のうちの2種類の電極と残りの1種類の電極との間には絶縁層が設けられているために、これらの間では界面を通じたリークが生じることはない。しかし、2種類の電極間でリークが生じてしまえば、この2種類の電極と残りの1種類の電極との間でリークが生じなくても、適正なフレア電界が形成することはできない。
【0013】
また、上記特許文献3に記載の構成においては、2種類の電極間を絶縁材で覆うような処理が施されていないために、電極間にトナーが充満された場合にはトナーを介してリークが発生してしまう。
【0014】
なお、同時期に互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えた現像剤担持体であれば、その電圧印加の目的によらず、上述したリークの問題が同様に生じ得る。
【0015】
また、上記特許文献4に記載の構成においては、内側電極と外側電極の間を絶縁層で分断することによって、特許文献1〜2における電極間の界面がなくなり、かつ、外側電極の外側を絶縁体でコーティングすることにより、特許文献3でみられたような、トナーと電極との接触がなくなるので、初期的なリークは生じなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、電極材料を、銀、銅、鉛、錫、あるいは、これらの合金から構成した場合、経時、すなわち、長期間の使用時において、前記電極材料の一部がイオン化し、絶縁層の中を移動しもう一方の電極上で還元(金属化)されることにより、電極間でリークが生じてしまう問題が生じることが判った。
【0017】
上記の現象はイオンマイグレーションと一般に呼ばれており、金属の電気化学的な移動現象である。このイオンマイグレーションは、銀、銅、はんだ(錫、鉛)等、一般に電極材料としてよく用いられているものにおいて発生が確認されているが、最も発生しやすく問題となりやすいのは銀と銅である。
【0018】
ここで、イオンマイグレーションについての基本的な説明をおこなう。
箔、メッキ、あるいは、ペースト状の前記金属に高湿度の環境下で電圧を印加すると、電気分解作用により絶縁物の表面を金属がシミ状あるいは樹枝状に移動し成長する。この結果、電極間の絶縁抵抗値が低下したり、リークに至ることがある。典型的なイオンマイグレーションは、陽極側からシミ状の成長が起こり、陰極では樹枝状結晶(デンドライト)成長が起こる。しかしながら、実際には絶縁物の種類、環境条件等に影響されるために、陽極側から溶出した金属イオンが途中で還元されて金属として析出したり、陰極側からの析出物が樹枝状にならずにシミ状になったりすることもある。さらに、銀は大気中に化合物として存在する硫黄(S)や塩素(Cl)と反応しやすいのでXMA(X線マイクロアナライザー)等で分析すると、これらの元素が同時に検出されることが多い。
【0019】
次に、銀におけるイオンマイグレーションの発生メカニズムについて説明する。
直流電圧が印加されている銀電極間に水分が付着すると、陽極において式(1)の化学反応が起こる。
【0020】
[式1]
Ag+OH → AgOH+е ……(1)
【0021】
ここで発生した水酸化銀(AgOH)は非常に不安定であるため、式(2)のように分解する。
【0022】
[式2]
2AgOH → AgO+HO ……(2)
【0023】
発生したコロイド状の酸化銀(AgO)は、さらに、式(3)のように反応する。
【0024】
[式3]
AgO + HO ⇔ 2AgOH ⇔ 2Ag + 2OH ……(3)
【0025】
このように、発生したコロイド状のAgOと銀イオンとが徐々に移動(特に銀イオンは電界により引っ張られる)して陰極に達すると、式(4)のように還元されて金属銀となる。
【0026】
Ag + е → Ag ……(5)
【0027】
この析出銀は、一般に白色の樹枝状となる。さらに、その先端の電界の強さは成長とともに増大するため、一度成長が始まると成長は加速度的に進行する。
【0028】
次に、イオンマイグレーションの加速要因と対策について説明する。
(a) 電位差および電極間隔:イオンマイグレーションは電気化学反応であるため、直流印加時のみ問題となる。また電極間がリークするまでの時間は、おおむね電位差に逆比例し間隔に比例する。
【0029】
記特許文献4における電極間の電位差は、0V(それそれの電極には、交流と同電位の直流が重畳されている)であるために、電位差による発生要因は小さいと考えられるが、電極間間隔が20〜40μm程度と非常に狭いため、リークが発生しやすくなっていると考えられる。
【0030】
(b) 温度:湿度に比べて関与する割合は小さいが、温度が高いほど化学反応の速度が早くなるため、イオンマイグレーションは促進される。
【0031】
(c) 湿度(特に結露の有無):湿度は、イオンマイグレーションに大きく影響する。一般的には、相対湿度が50%以下であれば進行せず70%以上になると急激に進行する。上記特許文献4における電極間のリークは、高温高湿環境において生じやすい。
【0032】
(d) 絶縁物の種類:絶縁物の種類は、湿度とともにイオンマイグレーションに大きく影響する。一般的には、吸湿性の大きな基材のフェノール樹脂積層板、ナイロンなどにおいては顕著に発生するが、吸湿性の小さなガラスエポキシ基板では発生しにくい。
上記特許文献4における絶縁層は、その要求スペック上、絶縁層材料が限られており、材料での対策は限られてくる。
(e) 塵埃量および水質:塵埃はそれ自身が水溶性の成分を含んでいること、もしくは塵埃が水分の保持体として働くために、イオンマイグレーションを促進する。また水質は、電解質の濃度が高くなるほど促進する。
【0033】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、トナーを外周面上でホッピングさせて潜像担持体の現像領域へ搬送するトナー担持体を備えた現像装置であって、そのトナー担持体に設けられた電極間で界面やトナーを通じたリークが生じることがなく、さらに、経時においても、電極部材間でのイオンマイグレーションによるリークが生じることのない現像剤担持体、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の現像ローラは、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、トナー搬送面から第一の所定深さの位置であってかつ長手方向がトナーの搬送方向に交差する位置に互いに間隔をあけて設けられた複数の長尺の外側電極、前記外側電極より深い第二の所定深さの位置であって少なくとも前記長尺の外側電極同士の間隔部分に設けられた内側電極、及び、前記外側電極が設けられた層と前記内側電極が設けられた層との間に絶縁層が設けられた前記トナー担持体と、前記トナーを前記トナー搬送面でホッピングさせるための電圧を前記内側電極と前記外側電極とにそれぞれ印加する電圧印加手段と、を備えた現像装置において、
前記電圧印加手段によって、前記内側電極と前記外側電極との両方に直流成分と互いに逆相な交流成分とから構成される電圧がそれぞれ印加されるか、または、前記内側電極と前記外側電極とのいずれか一方の電極に交流成分と直流成分とから構成される電圧を印加されるとともに他方の電極に直流成分のみが印加され、かつ、前記内側電極と前記外側電極とにそれぞれ印加される前記電圧の直流成分が、互いに異なる電圧で構成されていることを特徴とする現像装置である。
【0035】
また、本発明の現像装置は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の現像装置において、前記内側電極が、前記トナー搬送面の全体の前記第二の所定深さの位置に、面状に設けられていることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の現像装置は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の現像装置において、前記外側電極が、銀、銅、鉛、錫、あるいは、それらの合金から構成されていることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の現像装置は、請求項4に記載の通り、請求項3に記載の現像装置において、前記外側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧が、前記内側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧よりも低く保持されていることを特徴とする。
【0038】
本発明のプロセスカートリッジは、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の現像装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0039】
本発明の画像形成装置は、請求項5に記載の通り、請求項4に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0040】
本発明の現像装置によれば、前記内側電極と前記外側電極とにそれぞれ印加される前記電圧の直流成分が、互いに異なる電圧で構成されているために、銀、銅、鉛、錫およびそれらの合金を電極として用いた場合であってもイオンマイグレーションがあらかじめ防止することが可能であるので、長寿命の現像装置となり、長期間安定して画像形成が可能となる。
【0041】
さらに、請求項2に記載の現像装置によれば、内側電極が、前記トナー搬送面の全体の前記第二の所定深さの位置に、面状に設けられている構成により、トナー担持体の製造が容易になる。
【0042】
さらに、請求項3に記載の現像装置によれば、前記外側電極が、銀、銅、鉛、錫、あるいは、それらの合金から構成されていることにより、トナー担持ローラの作成が容易である。
【0043】
さらに、請求項4に記載の現像装置によれば、前記外側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧が、前記内側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧よりも低く保持されている構成により、電極に一般的に用いられる上記、電極材料を用いながら、確実にイオンマイグレーションの防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明に係る複写機を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明に係る複写機における潜像担持体と現像装置とを示す概略構成図である。
【図3】図3は、本発明に係る現像装置のトナー担持ローラを回転軸に対して直交する方向から見たときのモデル図である。
【図4】図4は、図3のトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したモデル断面図である。
【図5】図5は、トナー担持ローラの内側電極及び外側電極にそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すチャートである。図5(a)矩形波(Duty:50%)の例、図5(b)矩形波(Duty:50%)の例、図5(c)三角波の例、図5(d)のこぎり波の例、図5(e)サイン波の例。
【図6】図6は、内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧との他の例を示すチャートである。
【図7】図7は、内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧との他の例を示すチャートである。
【図8】図8は、内側電極及び外側電極への給電方法を示す、ローラ軸に沿って切断したモデル図である。
【図9】図9は、内側電極及び外側電極への給電方法を示す、斜視図である。
【図10】図10は、実施形態2における内側電極及び外側電極への給電方法を示す、ローラ軸に沿って切断したモデル図である。
【図11】図11は、図10の給電方法を説明する、軸方向に対して直交する方向から見たモデル図である。
【図12】図12は、図10の給電方法を示す、斜視図である。
【図13】図13は、実施形態3における現像装置を示すモデル図である。
【図14】図14は、実施形態4における現像装置を示すモデル図である。
【図15】図15は、実施形態5における現像装置を感光体とともに図示したモデル図である。
【図16】図16は、同現像装置における回収機構の他の例を示すモデル図である。
【図17】図17は、同現像装置における回収機構の更に他の例を示すモデル図である。
【図18】図18は、同現像装置における回収機構の更に他の例を示すモデル図である。
【図19】図19は、実施形態6における現像装置のトナー担持ローラとその周囲とを示すモデル図である。
【図20】図20は、実施形態7におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したモデル部分断面図である。
【図21】図21は、実施形態7のトナー担持ローラにおける電気力線の概略を図示したモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機について適用した一実施形態について説明する。
【0046】
図1は、本実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。
潜像担持体としてのドラム状の感光体49は、図中時計回り方向に回転駆動される。操作者がコンタクトガラス90に図示しない原稿を装置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源91及びミラー92を具備する第1走査光学系93と、ミラー94,95を具備する第2走査光学系96とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。走査された原稿画像がレンズ97の後方に配設された画像読み取り素子98で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化された後に画像処理される。そして、画像処理後の信号でレーザーダイオード(LD)が駆動され、このレーザーダイオードからのレーザー光がポリゴンミラー99で反射した後、ミラー80を介して感光体49を走査する。この走査に先立って、感光体49は帯電装置50によって一様に帯電され、レーザー光による走査により感光体49の表面に静電潜像が形成される。
【0047】
感光体49の表面に形成された静電潜像には現像装置1の現像処理によってトナーが付着し、これによりトナー像が形成される。このトナー像は、感光体49の回転に伴って、転写チャージャー60との対向位置である転写位置に搬送される。この転写位置に対しては、感光体49上のトナー像と同期するように、第1給紙コロ70aを具備する第1給紙部70、又は第2給紙コロ71aを具備する第2給紙部71から記録紙Pが送り込まれる。そして、感光体49上のトナー像は、転写チャージャー60のコロナ放電によって記録紙P上に転写される。
【0048】
このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、分離チャージャー61のコロナ放電によって感光体49表面から分離され、その後、搬送ベルト75によって定着装置76に向けて搬送される。そして、定着装置76内において、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ76aと、これに向けて押圧される加圧ローラ76bとの当接による定着ニップに挟み込まれる。その後、定着ニップ内での加圧や加熱によってトナー像が表面に定着せしめられた後、機外の排紙トレイ77に向けて排紙される。
【0049】
上述の転写位置を通過した感光体49表面に付着している転写残トナーは、クリーニング装置45によって感光体49表面から除去される。このようにしてクリーニング処理が施された感光体49表面は、除電ランプ44によって除電されて次の潜像形成に備えられる。
【0050】
図2は、本実施形態に係る複写機における感光体(潜像担持体)49と現像装置1とを示す概略構成図である。
【0051】
ドラム状の感光体49は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。そして、この感光体49の図中右側方には、トナー担持体であるトナー担持ローラ(トナー担持体)2を有する現像装置1が配設されている。現像装置1は、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュー12を収容する第1収容部13と、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュー14を収容する第2収容部15とを有しており、両収容部は仕切壁16によって仕切られている。そして、これら収容部はそれぞれ、図示しない磁性キャリアとマイナス帯電性のトナーとが混合された混合剤を収容している。
【0052】
第1搬送スクリュー12は、その回転駆動によって第1収容部13内の混合剤を回転撹拌しながら、図中手前側から図中奥側へと搬送する。このとき、搬送途中の混合剤は、第1収容部13の底部に固定されたトナー濃度センサ17によってそのトナー濃度が検知される。そして、図中奥側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁16の奥側端部付近に設けられた図示しない第1連通口を経て、第2収容部15内に進入する。第2収容部15は、現像剤供給部材としての後述するトナー供給ロール18を収容する磁気ブラシ形成部21に連通しており、第2搬送スクリュー14とトナー供給ロール18とは所定の間隙を介して互いに軸線方向を平行にする姿勢で対向している。第2収容部15内の第2搬送スクリュー14は、その回転駆動によって第2収容部15内の混合剤を回転撹拌しながら、図中奥側から図中手前側へと搬送する。この過程において、第2搬送スクリュー14によって搬送される混合剤の一部は、トナー供給ロール18のトナー供給スリーブ19上に汲み上げられる。そして、図中反時計回り方向のトナー供給スリーブ19の回転駆動に伴って、後述するトナー供給位置を通過した後、トナー供給スリーブ19の表面から離脱して、再び第2収容部15内に戻される。その後、第2搬送スクリュー14によって図中手前側の端部付近まで搬送された混合剤は、仕切壁16の図中手前側端部付近に設けられた図示しない第2連通口を経て第1収容部13内に戻される。
上述したトナー濃度センサ17は、透磁率センサからなる。このトナー濃度センサ17による混合剤の透磁率の検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。混合剤の透磁率は、混合剤のKトナー濃度と相関を示すため、トナー濃度センサ17はトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。
【0053】
本複写機の図示しない制御部はRAM(Random Access Memory)を備えており、この中にトナー濃度センサ17からの出力電圧の目標値であるVtrefを格納している。そして、トナー濃度センサ17からの出力電圧値と、RAM内のVtrefとを比較して、比較結果に応じた時間だけ図示しないトナー補給装置を駆動させる。この駆動により、現像に伴うトナーの消費によってトナー濃度を低下させた混合剤に対し、トナー補給口13aから第1収容部13内に適量のトナーが補給される。このため、第2収容部15内の混合剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
【0054】
トナー供給ロール18は、図中反時計回り方向に回転駆動される非磁性材料からなる筒状のトナー供給スリーブ19と、これに内包される固定配置されたマグネットローラ20とを有している。筒状のトナー供給スリーブ19は、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂などの非磁性体を円筒形に成型したものである。また、マグネットローラ20は、図示のように、回転方向に並ぶ複数の磁極(図中真上の位置から反時計回り方向に順にN極、S極、N極、S極、N極、S極)を有している。これら磁極により、トナー供給スリーブ19の周面上に混合剤が吸着し、磁力線に沿って穂立ちした磁気ブラシが形成される。
【0055】
トナー供給スリーブ19の表面によって汲み上げられた混合剤は、トナー供給スリーブ19の回転に伴って図中反時計回り方向に回転する。そして、トナー供給スリーブ19の表面に対して所定の間隙を介して対向配置されている規制部材22との対向位置である担持量規制位置に進入する。このとき、規制部材22とスリーブ表面との間隙を通過することで、スリーブ表面上における混合剤の担持量が規制される。
【0056】
トナー供給スリーブ19の図中左側方では、トナー担持ローラ2がトナー供給スリーブ19表面と所定の間隙を介して対向しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されている。トナー供給スリーブ19の回転に伴って上述の担持量規制位置を通過した混合剤は、トナー担持ローラ2との接触位置であるトナー供給位置に進入する。これにより、混合剤からなる磁気ブラシ先端がトナー担持ローラ2の表面を摺擦する。この摺擦やトナー供給スリーブ19とトナー担持ローラ2との電位差などの作用を受けて、磁気ブラシ中のトナーがトナー担持ローラ2の表面上に供給される。なお、トナー供給スリーブ19には、電圧印加手段である供給バイアス電源24により、供給バイアスが印加されている。この供給バイアスは、トナー担持ローラ2側にトナーを移動させる電界が形成できるようなものであれば、直流電圧でもよいし、かかる直流電圧に交流電圧を重畳したものでもよい。
【0057】
トナー供給位置を通過したトナー供給スリーブ19上の混合剤は、スリーブの回転に伴って第2収容部15との対向位置まで搬送される。この対向位置の付近には、マグネットローラ20に磁極が設けられておらず、混合剤をスリーブ表面に引き付ける磁力が作用していないため、混合剤はスリーブ表面から離脱して第2収容部15内に戻る。なお、本複写機においては、マグネットローラ20として、6つの磁極を有するものを用いたが、磁極の個数はこれに限られるものではない。8極、12極などであってもよい。
【0058】
トナーが供給されたトナー担持ローラ2は、現像装置1のケーシング11に設けられた開口から外周面の一部を露出させている。この露出箇所は、感光体49に対して数十〜数百μmの間隙を介して対向している。このようにトナー担持ローラ2と感光体49とが対向している位置が、本複写機における現像領域となっている。
トナー担持ローラ2の表面上に供給されたトナーは、後述する理由により、トナー担持ローラ2の表面上でホッピングしながら、トナー担持ローラ2の回転に伴って、トナー供給位置から現像位置に向けて搬送される。現像領域まで搬送されたトナーは、トナー担持ローラ2と感光体49上の静電潜像との間の現像電界によって、感光体表面上の静電潜像部分に付着し、これにより現像が行われる。現像に寄与しなかったトナーは、ホッピングしながらトナー担持ローラ2の回転によってさらに搬送され、繰り返し利用される。
【0059】
次に、本実施形態(実施例で使用)におけるトナー担持体であるトナー担持ローラ2の具体的構成について説明する。
【0060】
図3は、本実施形態におけるトナー担持ローラ2の電極配置を説明するためにトナー担持ローラ2を回転軸に対して直交する方向から見たときのモデル図である。なお、説明の都合上、表層6や絶縁層5は図示していない。
【0061】
図4は、本実施形態におけるトナー担持ローラ2を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【0062】
本実施形態のトナー担持ローラ2は、中空状のローラ部材で構成されており、そのトナー搬送面の表面から第一の所定深さの位置に長手方向が前記トナーの搬送方向に交差する位置に互いに間隔をあけて複数の長尺の外側電極4a(その端部で外側電極同士が接続部で接続されて櫛状となっていても良い)と、前記トナー搬送面の全体に亘り、外側電極より深い第二の所定深さの位置に内側電極3aと、が設けられており、内側電極3aと外側電極4aとの間にはこれらの間を絶縁するための絶縁層5が設けられている。また、外側電極4aの外周面側を覆う保護層としての表層6も設けられている。すなわち、本実施形態のトナー担持ローラ2は、内周側から順に、内側電極3a、絶縁層5、外側電極4a、表層6の4層構造となっている。
【0063】
内側電極3aは、トナー担持ローラ2の基体としても機能しており、ステンレスやアルミニウム等の導電性材料を円筒状に成型した金属ローラである。このほか、内側電極3aの構成としては、ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる樹脂ローラの表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を形成したものが挙げられる。このような導電層の形成方法としては、金属メッキ、蒸着等により形成する方法や、ローラ表面に金属膜を接着する方法などが挙げられる。
【0064】
内側電極3aの外周面側は絶縁層5に覆われている。本実施形態において、この絶縁層5は、ポリカーボネートやアルキドメラミン等で形成されている。絶縁層5の厚みは、3μm以上50μm以下の範囲内が好ましい。3μmよりも薄くなると、内側電極3aと外側電極4aとの間の絶縁性が十分に保てなくなり、内側電極3aと外側電極4aとの間でリークが発生してしまう可能性が生じる。一方、50μmよりも厚くなると、内側電極3aと外側電極4aとの間で作られる電界が表層6よりも外側に形成されにくくなり、表層6の外側に強いフレア(ホッピング)用電界(外部電界)を形成することが困難となる。本実施形態では、メラミン樹脂からなる絶縁層5の厚みを20μmとしている。このような絶縁層5は絶縁層5はスプレー法やディップ法等によって内側電極3a上に均一な膜厚で形成することができる。
【0065】
絶縁層5の上には外側電極4aが形成される。この外側電極4aは、アルミニウム、銅、銀などの金属で形成される。長尺の電極をその方端で接続した櫛歯状の外側電極4aの形成方法としては、例えば、絶縁層5の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって櫛歯状の電極を形成するという方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを絶縁層5の上に付着させて櫛歯状の電極を形成するという方法も可能である。
【0066】
ただし、アルミニウムによる電極の形成法は、溶融されたアルミニウム浴への浸漬や、蒸着法が一般的であり、いずれも高温下のプロセスになるため、絶縁層である樹脂材料が高温に耐えられないという問題がある。よって、高温下でなくとも電極形成が可能な方法である、比較的安価に形成できる銀、銅やはんだによって形成が望ましい。
【0067】
本実施形態においては、外側電極が銀、銅、鉛、錫あるいはそれらの合金から形成されており、以下、この電極を「電極A」と呼ぶことにする。また、内側電極が上記以外の導電性材料から形成されており、以下、この電極を「電極B」と呼ぶことにする。例えば、電極Bとして内側電極はアルミニウムを円筒状に形成した金属ローラ、(電極Aとして)外側電極はスクリーン印刷によって銀ペーストを付着させたものが挙げられる(ただし、内側電極を側電極が銀、銅、鉛、錫あるいはそれらの合金から形成させ、外側電極をこれら以外の導電性材料から形成してもよい)。
【0068】
外側電極4a及び絶縁層5の外周面側は、表層6により覆われている。トナーは、表層6上でホッピングを繰り返す際、この表層6との接触摩擦によって帯電する。トナーに正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)を与えるため、本実施形態では、表層6の材料として、シリコーン、ナイロン、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等が使用され、本実施形態ではポリカーボネートが採用されている。また、表層6は、外側電極4aを保護する役割も持ち合わせている。このために、表層6の膜厚としては、3μm以上40μm以下の範囲が好ましい。3μmよりも小さいと、経時使用による膜削れ等で外側電極4aが露出し、トナー担持ローラ2上に担持されたトナーやトナー担持ローラ2に接触するその他の部材を通じて,印加電圧がリークしてしまうおそれがある。一方、40μmよりも大きいと、内側電極3aと外側電極4aとの間で作られる電界が表層6よりも外側に形成されにくくなり、表層6の外側に強いフレア用電界を形成することが困難となる。
【0069】
本実施形態では、表層の膜厚は20μmとされている。このような表層6は、絶縁層5と同様にスプレー法やディッピング法等によって形成することができる。
【0070】
本実施形態では、内側電極3aと外側電極4aとの間で作られる電界、より詳しくは、内側電極3aの外側電極4aとは対向していない部分(長尺の外側電極4aの間隔部分)と外側電極4aとの間で作られる電界が、表層6の外側に形成されることで、トナー担持ローラ2上のトナーをホッピングさせ、これによりトナーをクラウド化させる。このとき、トナー担持ローラ2上のトナーは、内側電極3aに絶縁層5を介して対向した表層部分と、これに隣接する外側電極4aに対向した表層部分との間を、飛翔しながら往復移動するように、ホッピングし潜像担持体の現像領域へ搬送されることになる。
【0071】
トナーを安定してクラウド化させるためには、相応する大きさのフレア(ホッピング)用電界を形成することが重要となるが、このような大きなフレア用電界を形成するためには内側電極3aと外側電極4aとの間に大きな電位差を形成する必要がある。しかし、このような大きな電位差を安定して形成するためには、内側電極3aと外側電極4aとの間を安定かつ有効に絶縁し、リークを防止することが重要である。
【0072】
従来技術のように、フレア用電界を形成するための2種類の長尺の電極をそれぞれ交互に間隔を空けて(2種類の長尺の電極を櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように)構成した場合、これら電極の形成品質が悪いと、2種類の電極間の絶縁性が著しく低下し、リークが起きやすい。具体的には、例えば、エッチングで電極形成する場合には除去すべき金属膜の一部が残存していたり、インクジェット法やスクリーン印刷法で電極形成する場合には電極間に導電ペーストが付着してしまったりする事態が起こり得る。このような場合、これら2種類の電極間でリークが起きやすくなり、適正なフレア用電界を形成することができなくなる。また、従来構成においては、ローラの樹脂表面上に櫛歯状電極を高い品質で形成したとしても、2種類の櫛歯状電極を形成した後にその外周面側を絶縁材で覆うことにより電極間に絶縁材を充填して電極間の絶縁性を得るため、電極間にはローラの樹脂表面と絶縁材との界面が形成され、この界面を通じたリークが生じやすく、比較的大きな電圧を印加すると電極間の絶縁性が著しく低下する。
【0073】
しかしながら、上述したような本発明に係る実施形態によれば、トナー搬送面の表面から第一の所定深さの位置に長手方向が前記トナーの搬送方向に交差する位置に互いに間隔をあけて複数の長尺の外側電極4a、外側電極4aより深い第二の所定深さの位置であって少なくとも長尺の外側電極3a同士の間隔部分に対応する位置に内側電極4a、及び、外側電極4aが設けられた層と内側電極3aが設けられた層との間に絶縁層5が設けられた構成により、これらの内側電極3aと外側電極4a間にリークの原因となり得るような界面は存在しない。
【0074】
また、トナー担持ローラ2の製造段階において、リークの原因となり得る導電材がこれら2種の電極間に介在する可能性も非常に少なくできる。したがって、本実施形態によれば、内側電極3aと外側電極4aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧を印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。
【0075】
また、本実施形態において、長尺の外側電極4aの電極の幅は、10μm以上120μm以下であるのが好ましい。10μmよりも小さいと、細すぎて電極の断線のおそれが生じる。一方、120μmより大きいと、外側電極4aの被給電部4bからの距離が遠い箇所の電圧が低くなり、その箇所でトナーを安定かつ有効にホッピングさせ、潜像担持体の現像領域へ搬送することが困難となり、結果的に形成される画像に幅方向のむらが生じることとなる。
【0076】
本実施形態の被給電部4bは、図3に示すように、トナー担持ローラ2の外周面上における軸方向両端に設けられている。すなわち、長尺の外側電極4aの両端部を互いに接続している。このような場合では、外側電極4aの電極幅が120μmより大きいと、トナー担持ローラ2の軸方向中央部におけるフレア用電界が軸方向両端部のフレア用電界よりも相対的に低くなり、トナー担持ローラ2の軸方向中央部に担持されているトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。
【0077】
また、本実施形態では、外側電極4a同士の距離は、電極幅と同じか、電極幅よりも広いのが好ましい。電極幅よりも小さいと、内側電極3aからの電気力線の多くが表層6の外側に出る前に外側電極4aへ収束してしまい、表層6の外側に形成されるフレア用電界が弱くなってしまうからである。一方、外側電極4a同士の距離が大きいと、電極間中央のフレア用電界が弱くなってしまう。このために、外側電極4a同士の距離は、電極幅以上であって電極幅の5倍以下の範囲内であるのが好ましい。
【0078】
本実施形態では、外側電極4aの幅及び外側電極4a同士の距離をいずれも80μmに設定している。
【0079】
また、本実施形態では、外側電極4aのピッチ(外側電極4a自体の幅と外側電極4a同士の距離との和)を、トナー担持ローラ2の周方向にわたって一定となるように設定されている。電極のピッチを一定とすることで、内側電極3aと外側電極4aとの間で作られるフレア用電界がトナー担持ローラ2上の周方向にわたってほぼ均一となる。よって、現像位置で周方向に均一なトナーのホッピングを実現することが可能となり、均一な画像現像が可能となる。
【0080】
次に、内側電極3a及び外側電極4aに印加する電圧について説明する。
トナー担持ローラ2上の内側電極3a及び外側電極4aには、内側電極3aと外側電極4aとの両方に直流成分と互いに逆相な交流成分とから構成された電圧をそれぞれ印加する、または、前記内側電極と前記外側電極とのいずれか一方の電極に交流成分と直流成分とから構成された電圧を印加しかつ他方の電極に直流電圧を印加する電圧印加手段が接続されている。
【0081】
具体的には電圧印加手段として、電源装置25A,25Bは、第1電圧である内側電圧及び第2電圧である外側電圧をそれぞれ内側電極3aと外側電極4aとに印加する。電源装置25A,25Bが印加する内側電圧及び外側電圧は、両者の電圧差を常に最大とできるために互いに逆相な矩形波であることが最も適している。また、それぞれの矩形波のデゥーティ(Duty)を変化させてもよい。ただし、矩形波に限らず、例えばサイン波(正弦波)でも三角波でも、のこぎり波であってもよい。
【0082】
また、本実施形態では、フレア用電極を形成するための電極が内側電極3a及び外側電極4aの2相構成であり、各電極3a,4aには互いに位相差πをもった、すなわち、互いに逆相となった交流成分を有する電圧がそれぞれ印加される。
【0083】
図5(a)〜図5(e)は、電極A及び電極Bにそれぞれ印加する電圧の例を示すモデル図である。
図5(a)は矩形波のデゥーティを50%とした例、図5(b)は矩形波のデゥーティを25%と小さくした例、図5(c)は三角波の交流成分を用いた例、図5(d)はのこぎり波の交流成分を用いた例、図5(e)はサイン波の交流成分であり、いずれの例の交流成分も、互いに位相がπだけずれた同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。これら図中ΔDCVはこれら電圧の直流成分の差である。
【0084】
また、電極Aと電極Bとにそれぞれ印加される電圧の直流成分の大きさには差がある(図5(a)〜図5(e)におけるΔDCV)。電極Aに印加される電圧の直流成分を、電極Bに印加される電圧の直流成分より小さくする(マイナス側にする)ことによって、経時(特に高温高湿環境下)における電極Aの材料、銀、銅、鉛、錫、あるいは、これらの合金のイオンマイグレーションによって発生する金属イオン(Ag、Cu2+、Sn2+、Sn4+、Pb2+)が正極性であるため、これらイオンは、上記のような電圧の印加により負極性である電極Aの静電引力によって引き付けられ、電極Bへの移動を阻止される。このように、上記金属イオンの電極Aから絶縁層中を電極Bに向かっての移動がなくなるので、電極Aと電極Bとの間でのイオンマイグレーションによるリークを防止することができる。このとき、電極Aと電極Bとに印加される電圧のそれぞれの直流成分の大きさの差(の絶対値)は、それぞれの電圧のピークトゥピーク電圧Vppより小さくなくてはならない。直流成分の大きさの差が電圧のピークトゥピークより大きくなると、ローラ表面上の電界の向きが変化しなくなり、トナーをホッピングさせるための電界、すなわちフレア用電界が発生しなくなってしまうからである。本実施形態では、電極Aと電極Bとに印加される電圧の直流成分の大きさの差(の絶対値)を0Vより大きく、100V以下に設定している。
【0085】
このような電圧を印加するための電圧印加手段としては、例えば、CPU、D/Aコンバータ、及び、OPアンプからなる波形生成回路と高圧アンプとから形成することができる。
【0086】
上記のような電圧を印加することにより、電極Aと電極Bとの間には、Vpp±「直流成分の差」だけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界のうち表層6の外側に形成されるフレア用電界によって表層6上をトナーがホッピングする。本実施形態において、電極Aと電極Bとの間の電位差(すなわちVpp±「直流成分の差」は100V以上2000V以下の範囲内となるようにすることが好ましい。電位差が100Vより小さいと、十分なフレア用電界を表層6上に形成できず、トナーを安定してホッピングさせて搬送することが困難となる。一方、電位差が2000Vより大きいと、経時使用により電極間でリークが発生する可能性が高くなる。本実施形態では、Vppを500Vに設定している。
【0087】
また、電極Aと電極Bにそれぞれ印加される電圧の平均値(すなわち、それぞれの直流成分の電圧)は、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件に応じて適宜最適化させる。
【0088】
また、本実施形態において、内側電圧と外側電圧との中心値V0は、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件に応じて適宜最適化させる。
【0089】
本実施形態において、内側電圧と外側電圧との交流成分の周波数fは、0.1kHz以上10kHz以下であるのが好ましい。すなわち、0.1kHzより小さいと、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなる、すなわち、現像に必要なトナーの量が供給できなくなるおそれがある。一方、10kHzより大きいと、トナーの移動が電界の切り替わりに追従できなくなり、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となり、やはり現像に必要なトナーの量が供給できなくなるおそれがある。本実施形態では、周波数fを500Hzに設定している。
【0090】
ここで、トナーのホッピングを生じさせるためには、内側電圧と外側電圧との両方が交流成分と直流成分とから構成される電圧である必要は必ずしもなく、一方が交流成分と直流成分とから構成される電圧、他方が直流電圧であってもよい。
【0091】
図6には、内側電極3aを電極Bとし、外側電極4aを電極Aとした場合の内側電極3a及び外側電極4aへ印加する内側電圧と外側電圧の他の例を示すチャートである。
【0092】
この例では、内側電極3aについては、図5(a)に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、外側電極4aについては、直流電圧(直流成分のみ)が印加される。この場合、電極間の電位差は、内側電極のVpp/2±「直流成分の差」となる。よって、この例における内側電極のVppの好適な範囲は、200V以上4000V以下である。この例によれば、内側電極3aと外側電極4aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コスト、延いては装置コストを安くすることができる。
【0093】
図7は、内側電極3aを電極Bとし、外側電極4aを電極Aとした場合の内側電極3a及び外側電極4aへ印加する内側電圧と外側電圧のさらに他の例を示すチャートである。
【0094】
この例では、外側電極4aについては、図5に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、内側電極3aについては、直流電圧が印加される。この場合も、電極間の電位差はVpp/2±「直流成分の差」となる。よって、この例における外側電極のVppの好適な範囲は、200V以上4000V以下である。この例も、内側電極3aと外側電極4aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コストが安くなる。
【0095】
図8は、本実施形態における内側電極3a及び外側電極4aへの給電構成を、トナー担持ローラの軸に沿って切断したときのモデル図であり、図9はその構成を模式的に示す斜視図である。
【0096】
この例では、内側電極3aは、トナー担持ローラ2のローラ軸と一体化されており、そのローラ軸端面が被給電部3bとなる。ローラ軸端面で構成される被給電部3bには、電源装置25Aに接続された第1給電部材としての給電ブラシ7が当接している。一方、トナー担持ローラ2の外周面両端部分には表層6が設けられておらず、トナー担持ローラ2の外周面における外側電極4aの両端部分(長尺の電極の両端に設けられた接続部)は露出しており、この露出面が被給電部4bとなる。被給電部4bには、電源装置25Bに接続された第2給電部材としての給電コロ8が当接している。この給電コロ8は、回転自在に支持されており、トナー担持ローラ2の回転に伴い、被給電部4bに当接したまま連れ回り回転し、電気的に被給電部4bに接続している。
【0097】
なお、本実施形態では、外側電極4aに外側電圧を印加するための第2給電部材である給電コロ8がトナー担持ローラ2の両端にそれぞれ1つずつ設けられているが、方端のみ1つであってもあるいは両端に複数あってもよい。外側電極4aに外側電圧を印加するための第2給電部材が複数あれば、一部の第2給電部材で接触不良による給電不良が生じても、他の第2給電部材により給電を行うことができるので、安定した給電を行うことが可能となる。
【0098】
また、本実施形態のように、トナー担持ローラ2の外周面に外側電極4aの一部分を露出させ、その露出部分を被給電部4bとして、これに第2給電部材を当接させて給電する方式を採用する場合、その被給電部4bは、トナー担持ローラ2上における現像幅(感光体上において静電潜像が形成され得る領域と対向し得る領域幅)よりも軸方向外側に位置することが好ましい。なぜなら、被給電部4bが現像幅内に位置すると、トナー担持ローラ2と被給電部4bとの間で押しつぶされたトナーが現像に寄与することになり、その部分で現像不良が発生する恐れが生じるからである。より好ましくは、被給電部4bは、トナー担持ローラ2上におけるトナー供給幅(トナー供給スリーブ19からトナーが供給される領域幅)よりも軸方向外側に位置することが望まれる。被給電部4bがトナー供給幅内に位置した場合、トナー担持ローラ2と被給電部4bとの間に多量のトナーが介在し、給電不良が起きやすくなるが、上記構成によりこの不都合が未然に防止される。本実施形態では、被給電部4bがトナー担持ローラ2上におけるトナー供給幅よりも軸方向外側に位置するように構成している。さらに、本実施形態では、トナー供給幅内のトナーが被給電部4bに付着しないように、ローラ両端部に位置する各被給電部4bの軸方向中央側に図示しないトナーシールが設けられている。
【0099】
本実施形態では、第2給電部材として、上述のように被給電部4bに連れ回り回転する給電コロ8を用いているが、これに限らず、例えば、導電性ブラシや導電性板バネなどを用いてもよい。なお、導電性ブラシや、導電性板バネなどのように被給電部4bに対して摺動する第2給電部材を用いる場合、被給電部4bとの接点部分の摩耗を抑制するために導電性グリスなどを併用することが好ましい。
また、上記では、内側電極3aの被給電部がローラ軸端面である場合について説明したが、これに限らず、例えばローラ軸の周面やローラ本体部の端面を被給電部としてもよい。
【0100】
以上の実施形態によれば、外周面に担持された一成分現像剤であるトナーを現像領域へ搬送するためのトナー担持体としてのトナー担持ローラ2が、第1電極部材としての内側電極3aと、内側電極3aよりも外周面側に位置し、その内側電極3aへ印加される第1電圧である内側電圧とは異なる第2電圧である外側電圧が印加される第2電極部材としての外側電極4aと、内側電極3aと外側電極4aとの間を絶縁するための絶縁層5と、外側電極4aの外周面側を覆う保護層としての表層6とを有しており、絶縁層5の両側には、それぞれ内側電極3a及び外側電極4a以外の電極部材(内側電圧及び外側電圧とは異なる電圧が印加される電極部材)が隣接しておらず、長尺の外側電極4aの一部分(方端又は両端に設けられた接続部)が外周面に露出するように表層6が設けられており、外側電極4aのこの露出部分が外側電圧の被給電部4bとして機能する。これら構成により、トナー担持ローラ2の外周面側に位置する外側電極4aに対する給電は外周面側から行うことができるので、その外側電極4aよりも内周側に位置する内側電極3aに対する給電構成の自由度が、外側電極4aに対する給電構成によって制限されることが少ない。
【0101】
加えて、外側電極4aの被給電部4bに外側電圧を給電するための第2給電部である給電コロ8や給電ブラシ8’等は、トナー担持ローラ2に対して外周面法線方向外側に配置すればよく、トナー担持ローラ2に対して軸方向外側に配置する必要がなくなる。その結果、トナー担持ローラ2に対して軸方向外側に給電コロ8や給電ブラシ8’等の配置スペースが不要となり、トナー担持ローラ2の軸方向における現像装置1の小型化が可能となる。
【0102】
また、本実施形態によれば、内側電極3aと外側電極4aとの間に絶縁層5が介在させている。これにより、トナー担持ローラ2上に設けられる全電極3a,4a間が絶縁層5で分断されるため、これらの電極間をつなぐような界面が存在したり、これらの電極間にトナーが介在したりするようなことがない。よって、トナー担持ローラ2上に設けられる電極3a,4a間で界面やトナーを通じたリークが生じることがない。
【0103】
また、内側電極3a及び外側電極4aのどちらか一方の電極(電極A)がその材料として銀、銅、鉛、錫およびそれらの合金から形成され、また、他の電極(電極B)がその材料として、上記以外の導電性材料から形成されている場合において、電極Aに印加される電圧の直流成分から、電極Bに印加される電圧の直流成分を引いた値が、マイナスであることによって、電極Aで発生した金属イオンが電極A上で留まることとなり、絶縁層内部への金属イオンの移動を防止できる。したがって長期にわたってイオンマイグレーションによるリークを防止することが出来る。
【0104】
また、本実施形態では、最外周側に位置する最外周電極部材としての外側電極4aがトナー担持ローラ2の外周面に沿って複数に分割された複数の電極部を備えており、その電極部間の電極間領域に対向する位置に、外側電極4aよりも内周側に位置する内側電極3aが配置されている。本実施形態によれば、フレア用電界を形成するための電極3a,4a間でリークが生じないので、強いフレア用電界を安定して形成することができる。
【0105】
また、本実施形態では、最内周側に位置する最内周電極部材としての内側電極3aが外側電極4aにおける複数の電極部間の電極間領域に対向する位置だけでなく当該複数の電極部に対向する位置にも電極部が配置されるように一体化された電極部を有している。これにより、内側電極3aを簡易な方法で形成することが可能となる。また、内側電極3aをトナー担持ローラ2の基体として用いることもできるようになる。
【0106】
以下に他の実施形態について説明する。
〔実施形態2〕
内側電極3a及び外側電極4aへの給電構成の変形例について説明する。
図10は、本変形例1における内側電極3a及び外側電極4aへの給電構成を、ローラ軸に沿って切断したときのモデル図であり、図11は、軸方向に対して直交する方向から見たときのモデル図である。また、図12は、モデル的に示す斜視図である。
【0107】
実施形態2において、内側電極3aに対する給電構成は、上記実施形態と同様に、ローラ軸端面がその被給電部3bとなるように構成されており、その被給電部3bに給電ブラシ7が当接し、伝記的に接続している。一方、外側電極4aに対する給電構成は、外側電極4aをローラ軸周面上まで引き出し、その引き出した部分を被給電部4bとしている。そして、絶縁層5も同様にローラ軸周面上まで引き出すことにより、ローラ軸周面上においても内側電極3aと外側電極4aとの絶縁を確保している。ローラ軸周面上の被給電部4bには、電源装置25Bに接続された第2給電部材としての給電ブラシ8’が当接する。
【0108】
この実施形態2に例示した給電構成以外にも、例えば、トナー担持ローラ2の各ローラ軸を互いに電気的に分割し、内側電極3a及び外側電極4aをそれぞれいずれかの軸に導通させ、各ローラ軸を通じて内側電極3a及び外側電極4aそれぞれに電圧を印加する構成が可能である。
【0109】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3について説明する。
図13は、実施形態3における現像装置を示すモデル図である。
【0110】
この例では、磁性キャリアを用いないでトナー担持ローラ2にトナーを供給する。具体的には、本変形例2に係る現像装置1は、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュー12を収容する第1収容部13と、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュー14を収容する第2収容部15とを有しており、両収容部は仕切壁16によって仕切られている。そして、これら収容部には、それぞれ、図示しないマイナス帯電性のトナーが収容されている。第1搬送スクリュー12及び第2搬送スクリュー14の回転駆動により、トナーは第1収容部13及び第2収容部15を循環搬送される。この搬送時に、トナーは第1搬送スクリュー12及び第2搬送スクリュー14から摺擦を受けることで摩擦帯電する。このようにして摩擦帯電した第2収容部15内のトナーは、供給バイアス電源24により供給バイアスが印加されたトナー供給ロール18上に、静電的に吸着する。なお、この供給バイアスは、直流電圧でも交流電圧でもよいし、また、直流電圧に交流電圧を重畳させたバイアスでもよい。トナー供給ロール18上に吸着したトナーは、規制部材22により担持量が規制された後、供給位置へと搬送される。そして、供給位置へ搬送されたトナーは、トナー供給ロール18とトナー担持ローラ2との電位差の作用を受けて、トナー担持ローラ2の表面上に供給される。その後は、上記実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0111】
〔実施形態4〕
次に、トナー担持ローラ2にトナーを供給する構成の他の例(実施形態4)について説明する。
【0112】
図14は、実施形態4における現像装置を示すモデル図である。
実施形態4では、上記実施形態3と同様に磁性キャリアを用いないでトナー担持ローラ2にトナーを供給するが、トナー供給ロール18を用いずにトナーを直接、トナー担持ローラ2へ供給する。
【0113】
具体的には、実施形態4では、トナー収容部15’内にスポンジローラ18’を設け、スポンジローラ18’の表面をトナー担持ローラ2の表面に当接させている。これにより、トナー収容部15’内でスポンジローラ18’の表面に付着したトナーは、トナー担持ローラ2の表面との当接部で摺擦を受けて摩擦帯電し、これにより静電的にトナー担持ローラ2上へ供給される。実施形態4では、スポンジローラ18’をトナー担持ローラ2に対してトレーリング方向に回転駆動しているが、カウンター方向でもよい。実施形態4の場合、スポンジローラ18’に接続された供給バイアス電源24’により印加される供給バイアスによって、トナー担持ローラ2へ供給するトナーの量を制御することができる。この供給バイアスは、直流電圧でも交流電圧でもよいし、また直流電圧に交流電圧を重畳させたバイアスでもよい。
【0114】
〔実施形態5〕
次に、現像に寄与しなかったトナーをトナー担持ローラ2から回収する回収手段としての回収機構30を設けた現像装置の変形例(実施形態5)について説明する。
図15は、実施形態5における現像装置を感光体49とともに図示した概略構成図である。
【0115】
実施形態5における現像装置の基本構成は、上記の実施形態と同様であるが、回収機構30が設けられている点と、トナー担持ローラ2及びトナー供給ロール18の下方に位置するケーシング11の内壁が第2搬送スクリュー14を収容する第2収容部15に向けて下傾斜している点とが、主に相違する構成である。以下、この相違する構成についてのみ説明する。
【0116】
実施形態5において、回収機構30は、トナー担持ローラ2の外周面に対向するように配置される回収板31と、回収板31に接触するように配置された振動子32と、回収板31に所定の電圧を印加するための回収電源33とから構成されている。トナー担持ローラ2と回収板31との間には、マイナス極性に帯電したトナーをトナー担持ローラ2から回収板31に向けて静電的に移動させる向きの電界が形成される。これにより、現像領域で現像に寄与しなかったトナーは、回収板31とトナー担持ローラ2とが対向しあう回収領域において、トナー担持ローラ2上から回収板31側へ移動する。回収板31に付着したトナーは、振動子32によって回収板31を振動させることにより、回収板31上から振るい落とされる。振るい落とされたトナーは、ケーシング11の内壁面上を移動して第2収容部15内に戻され、再び第1収容部13及び第2収容部15を循環搬送される。
【0117】
図16は、回収機構30の他の例を示すための概略構成図である。
図16に示すように、回収機構30として、回収ローラ34を利用した構成も採用できる。具体的には、この回収機構30は、トナー担持ローラ2の外周面に対向するように配置される回収ローラ34と、回収ローラ34に接触するように配置されたクリーニングブレード35と、回収ローラ34に所定の電圧を印加するための回収電源33とから構成されている。トナー担持ローラ2と回収ローラ34との間には、マイナス極性に帯電したトナーをトナー担持ローラ2から回収ローラ34に向けて静電的に移動させる向きの電界が形成される。これにより、現像領域で現像に寄与しなかったトナーは、回収ローラ34とトナー担持ローラ2とが対向しあう回収領域において、トナー担持ローラ2上から回収ローラ34側へ移動する。回収ローラ34に付着したトナーは、クリーニングブレード35によって掻き落とされる。掻き落とされたトナーは、ケーシング11の内壁面上を移動して第2収容部15内に戻され、再び第1収容部13及び第2収容部15を循環搬送される。
【0118】
図17は、回収機構30の更に他の例を示すための概略構成図である。
図17に示すように、回収機構30として、ブラシローラ36を利用した構成も採用できる。具体的には、この回収機構30は、トナー担持ローラ2の外周面に接触して対向するように配置されるブラシローラ36と、ブラシローラ36に接触するように配置されたフリッカー37と、ブラシローラ36に所定の電圧を印加するための回収電源33とから構成されている。トナー担持ローラ2とブラシローラ36との間には、マイナス極性に帯電したトナーをトナー担持ローラ2からブラシローラ36に向けて静電的に移動させる向きの電界が形成される。これにより、現像領域で現像に寄与しなかったトナーは、ブラシローラ36とトナー担持ローラ2とが対向しあう回収領域において、トナー担持ローラ2上からブラシローラ36側へ移動する。ブラシローラ36に付着したトナーは、フリッカー37によって払い落とされる。払い落とされたトナーは、ケーシング11の内壁面上を移動して第2収容部15内に戻され、再び第1収容部13及び第2収容部15を循環搬送される。
【0119】
図18は、回収機構30の更に他の例を示すための概略構成図である。
図18に示すように、回収機構30として、吸引ポンプ40を利用した構成も採用できる。具体的には、この回収機構30は、トナー担持ローラ2の外周面に対向するように配置される吸引ノズル38と、入口端が吸引ノズル38に接続され、出口端41aが第1搬送スクリュー12を収容する第1収容部13の上部に連通したダクト41と、吸引ノズル38からのトナーをダクト41の出口端41aまで吸引搬送するための吸引ポンプ40とから構成されている。また、吸引ノズル38に対してトナー担持ローラ2の表面移動方向下流側には、シール39が設けられている。このシール39は、トナー担持ローラ2の表面と接触している。現像領域で現像に寄与しなかったトナーは、トナー担持ローラ2と吸引ノズル38とが対向しあう回収領域において、吸引ポンプ40により生じる空気の流れに乗って吸引ノズル38内に吸引され、ダクト41を通って出口端41aから第1収容部13内へ戻され、再び第1収容部13及び第2収容部15を循環搬送される。なお、空気の流れに乗らずに回収領域を通過したトナーは、シールによって堰き止められるので、そのまま下流に搬送されていくことはない。
【0120】
〔実施形態6〕
次に、現像領域において感光体49上の非画像部(地肌部)に付着するトナーを現像領域上流で回収するための現像前トナー回収手段を設けた現像装置の変形例(実施形態6)について説明する。
図19は、実施形態6における現像装置のトナー担持ローラ2とその周囲構成とを示す拡大構成図である。
【0121】
図19において、符号Ar0が付された領域は、トナー担持ローラ2と、トナー供給ロール18のトナー供給スリーブ19の表面に形成された図示しない磁気ブラシとが摺擦するトナー供給領域を示している。また、符号Ar2が付された領域は、現像領域を示している。また、符号Ar1が付された領域は、トナー担持ローラ2の表面移動方向における全領域のうち、トナー供給領域Ar0を通過した後、現像領域Ar2に進入する前の領域としての現像前搬送領域を示している。また、符号Ar3が付された領域は、現像領域Ar2を通過した後、トナー供給領域Ar0に進入する前の領域としての現像後搬送領域を示している。
【0122】
なお、現像領域Ar2は、感光体49とトナー担持ローラ2が対向している領域のうち、感光体49がその曲率によってトナー担持ローラ2にかなり近づいている領域である。このような現像領域Ar2におけるトナー担持ローラ2の表面移動方向長さについては、次のようにして測定することが可能である。すなわち、現像領域Ar2とその前後近傍とにおけるトナーの挙動を高倍率高速度カメラで撮影しながら、感光体49上に形成したベタ画像を現像する。そして、そのベタ画像の感光体表面移動方向の上流端に付着したトナー粒子がトナー担持ローラ2表面上で最後にホッピングした位置と、ベタ画像の感光体回転方向の下流端に付着したトナー粒子がトナー担持ローラ2表面上で最後にホッピングした位置との距離を測定する。この距離を現像領域Ar2におけるローラ回転方向の長さとする。
【0123】
現像前搬送領域Ar1でホッピングする個々のトナーは、トナー担持ローラ2の回転に伴って現像領域Ar2に徐々に近づいていくが、その中には逆帯電トナーが含まれている。また、平均的なトナー帯電量よりも正規極性側に大きくしている逆帯電トナーも含まれている。これら逆帯電トナーや高帯電量トナーが現像領域Ar2まで搬送されると、感光体49の非画像部(地肌部)に付着して地汚れを引き起こしてしまう。
【0124】
そこで、この実施形態6においては、現像前搬送領域Ar1にてトナー担持ローラ2表面上でホッピングしているトナーのうち、逆帯電トナー及び高帯電量トナーを回収する現像前トナー回収手段を設けている。この現像前トナー回収手段は、トナー担持ローラ2の表面における回転方向の全領域のうち、現像前搬送領域Ar1に対して、所定の間隙を介して対向する現像前対向電極42を有している。また、この現像前対向電極42に現像前回収バイアスを供給するための電圧供給手段たる現像前回収バイアス電源43も有している。
【0125】
現像前対向電極42は、トナー担持ローラ2の回転方向における上流側端部から下流側端部にかけて、トナー担持ローラ2との間隙がほぼ均一になるように、少なくともトナー担持ローラ2との対向面が湾曲している。この間隙は、現像領域Ar2における感光体49とトナー担持ローラ2との最小間隙である現像ギャップと同じ値に設定されている。
【0126】
現像前回収バイアス電源43は、感光体49の地肌部(一様帯電電位)と同じ極性且つ同じ値の直流電圧からなる現像前対向バイアスを出力する。つまり、現像前対向バイアスの印加により、現像前対向電極42の電位は感光体49上の地肌部電位と同じ極性且つ同じ値になる。
【0127】
上述した現像前トナー回収手段は、現像前対向電極42や現像前回収バイアス電源43の他、この電源からの現像前回収バイアスの出力のオンオフを制御する図示しない制御部も有している。そして、現像動作中(静電潜像の現像に寄与し得るトナーを現像前搬送領域Ar1及び現像領域Ar2内で搬送している状態)には、現像前対向電極42に対して現像前回収バイアスを印加する。かかる構成では、現像前搬送領域Ar1内でホッピングしている無数のトナーのうち、現像領域Ar2で感光体49の地肌部に付着して地汚れを引き起こしてしまう地汚れトナー、即ち、逆帯電トナー及び高帯電量トナーを、現像前対向電極42に選択的に付着させる。そして、これにより、現像前搬送領域Ar1内で搬送されるトナーの中から、地汚れトナーを選択的に分離する。
【0128】
現像動作(連続プリント時においては連続現像動作)が終了すると、上記制御部は制御信号により、現像前回収バイアス電源43からの出力電圧を、上述の現像前回収バイアスから、これよりもトナーの帯電極性側に大きな(本例ではマイナス側に大きな)吐き出しバイアスに切り替える。これにより、現像前対向電極42に付着した逆帯電トナーや高帯電量トナーが現像前対向電極42から離脱してトナー担持ローラ2の表面上に吐き出される。そして、現像領域Ar2と現像後搬送領域Ar3とを経由した後、トナー供給領域Ar0で磁気ブラシ内に回収される。
【0129】
なお、吐き出しバイアスには、トナー担持ローラ2の電極に印加する電圧の中心値に対して、プラス側とマイナス側にまたがる大きな交流電圧を印加するのが好ましい。これにより、トナー担持ローラ2と現像前回収バイアス電源43との間に存在するトナーを往復運動させる力がトナーに作用し、現像前回収バイアス電源43との付着力からトナーを解放やすくなる。これにより、現像前回収バイアス電源43上のトナーをトナー担持ローラ2の電極間に発生するフレア用電界に拘束させ、効率よくトナー担持ローラ2の回転に伴って搬送させることができる。
【0130】
また、トナー供給ロール(図示しない)に供給バイアスを印加してトナー担持ローラ2へトナーを静電的に供給する構成においては、現像前対向電極42に吐き出しバイアスを印加して現像前対向電極42に付着した逆帯電トナーや高帯電量トナーをトナー担持ローラ2へ戻す際には、トナー供給ロール18,18’への供給バイアスの印加を停止させるのが好ましい。この場合、トナー付着量が少ないトナー担持ローラ2上へ逆帯電トナーや高帯電量トナーを戻すことができる。
【0131】
なお、現像前対向電極42に付着した逆帯電トナーや高帯電量トナーを現像前対向電極42から除去する方法としては、現像前対向電極42に吐き出しバイアスを印加する方法に限られない。例えば、現像前対向電極42に付着した逆帯電トナーや高帯電量トナーを除去用のブラシローラで掻き落とす方法や、ブレードの付いた除去部材を軸方向に走査することにより現像前対向電極42に付着した逆帯電トナーや高帯電量トナーを除去する方法等が考えられる。
【0132】
現像前搬送領域Ar1上で搬送される高帯電量トナーは、他のトナーに比べて帯電量が大きいことから、他のトナーよりも高くホッピングする。すると、ホッピングによる最高レベル到達時に、多量のトナーからなるトナークラウドを自らの下方に位置させ、その反発力によってトナー担持ローラ2上の電界による拘束力の及ばない範囲まで飛散してしまうことがある。現像前対向電極42を設けたことで、このような高帯電量トナーの飛散を防止することもできる。
【0133】
現像前対向電極42としては、金属等の導電性材料からなる電極層の表面(トナー担持ローラ2との対向面)に、絶縁性材料からなる絶縁層5を被覆したものを用いることが望ましい。かかる構成によれば、トナーと、現像前対向電極42の導電性表面とを直接接触させることによるトナーに対する電荷注入や、トナーの電荷の電極層へのリークを回避することができる。
【0134】
また、現像前対向電極42としては、トナー担持ローラ2との対向面におけるローラ回転方向に直交する方向の長さを、トナー担持ローラ2における現像前対向電極42との対向面の同方向の長さ以上にしたもの、を用いている。かかる構成では、現像前搬送領域Ar1でホッピングしているトナーに対し、前記直交する方向の全領域にて、逆帯電トナーや高帯電量トナーの分離処理を施すことができる。
【0135】
また、現像前対向電極42としては、トナー担持ローラ2との対向面におけるローラ回転方向の長さを、現像領域Ar2のローラ回転方向の長さ以上にしたもの、を用いている。かかる構成では、現像領域Ar2のローラ回転方向の長さ未満にした場合とは異なり、現像前対向電極42の直下においてトナーを現像領域通過時間よりも長い時間搬送することで、現像領域Ar2で地汚れトナーとなってしまう逆帯電トナーや高帯電量トナーを確実に分離することができる。
【0136】
現像前搬送領域Ar1のうち、トナー担持ローラ2と現像前対向電極42とが対向する領域(以下、この領域を現像前回収領域という)におけるトナーホッピング条件については、現像領域Ar2におけるトナーホッピング条件と同じに設定している。かかる構成では、現像前回収領域におけるトナーホッピング条件を現像領域Ar2とは異ならせることに起因する逆帯電トナーや高帯電量トナーの分離・回収精度の悪化を回避することができる。なお、ここで言うトナーホッピング条件は、電極(3a、3b)の幅、電極の配設ピッチ、各電極に印加するパルス電圧の特性、及び表面層(5)の厚みの組合せである。
【0137】
〔実施形態7〕
次に、外側電極4aの変形例(以下、本変形例を「実施形態7」という。)について説明する。
【0138】
従来は、各外側電極4a上の大部分のトナーが、フレア用電界により、各外側電極4aにそれぞれ隣接する2つの外側電極間部分(外側電極4aとは対向していない内側電極3aが対向する部分。以下「内側電極対向部」という。)のいずれかへ移動でき、かつ、各内側電極対向部上の大部分のトナーが、フレア用電界により、各内側電極対向部にそれぞれ隣接する2つの外側電極4a上のいずれかへ移動できるように、フレア用電界の強さに応じて、外側電極4aの幅(トナー担持ローラ表面移動方向長さ)や内側電極対向部の幅を設定する。
【0139】
ここで、外側電極4aの幅及び内側電極対向部の幅が均等であり(厳密には製造誤差による多少の不均等が生じている。)、内側電極3a及び外側電極4aそれぞれが均等な電位となるのであれば、トナー担持ローラ2上でムラの少ないフレア用電界が形成できる。このような場合、トナー担持ローラ2上でホッピングするトナーに他の外力が作用しない限り、トナー担持ローラ2上のトナーは、内側電極3a及び外側電極4aが対向する外周面全域にわたってほぼ均一に分散した状態で、ホッピングすることができる。
【0140】
しかし、内側電極3a及び外側電極4aそれぞれが均等な電位にならず、それぞれの電極3a,4a内で例えばトナー担持ローラ2の表面移動方向に製造誤差による電位勾配が生じるなどにより、トナー担持ローラ2の表面移動方向において偏ったフレア用電界が形成される場合が生じ得る。この場合、トナー担持ローラ2上でホッピングするトナーは、その電位勾配に応じて外側電極4a及び内側電極対向部をホッピングしながら渡り歩くように、トナー担持ローラ2の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ2上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ2上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
【0141】
また、トナー担持ローラ2の表面近傍に生じる気流などがトナーに作用して、トナーをトナー担持ローラ2の表面移動方向方向上流側又は下流側へ移動させる外力が発生する場合もある。例えばトナー担持ローラ2の表面移動方向方向下流側への外力が発生した場合、フレア用電界と外力の作用を受けて、トナー担持ローラ2上でホッピングするトナーの多くがホッピング時にトナー担持ローラ表面移動方向方向下流側へ移動する。そのため、多くのトナーが外側電極4a及び内側電極対向部をホッピングしながらトナー担持ローラ表面移動方向下流側へ渡り歩くように、トナー担持ローラ2の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ2上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ2上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
【0142】
上記のようなムラは、画像濃度ムラを引き起こす原因となる。
図20は、本実施形態7におけるトナー担持ローラ2を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図21は、電気力線の概略を図示した説明図である。
【0143】
本実施形態7において、外側電極4aの幅Xは均等となるように製造されるが、内側電極対向部の幅は、トナー担持ローラ2の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように製造されている。内側電極対向部の幅において、短い幅Y1と長い幅Y2との差(Y2−Y1)は、内側電極対向部の幅を均等に製造しようとするときの製造誤差の範囲を超える差である。このような構成においては、電位勾配や気流などが原因でトナーをトナー担持ローラ表面移動方向上流側または下流側へ移動させる力が発生した場合でも、以下に説明するように、トナー担持ローラ2上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。
【0144】
すなわち、上記のような力が発生すると、トナー担持ローラ2上でホッピングするトナーの多くが、その力の向きにトナー担持ローラ表面移動方向に沿って移動しようとする。ここで、1つの外側電極4aに着目したとき、図21に示すように、これに隣接する2つの内側電極対向部との間で作られる各フレア用電界(表層6の外側に形成される電界)の強さは、その内側電極対向部の幅によって相対的に変わってくる。すなわち、短い幅Y1の内側電極対向部との間に形成されるフレア用電界よりも、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア用電界の方が強くなる。そして、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア用電界は、内側電極3a及び外側電極4aに印加される電圧が同じであれば、内側電極対向部の幅を均等とした場合に比べて強い電界となる。したがって、上記のような力が発生した場合でも、外側電極4a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へホッピングした多くのトナーを、再び元の外側電極4a上へ戻すことが可能となる。その結果、外側電極4a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へ移動したトナーのうち、更にその力の方向に隣接する外側電極4aへ渡り歩くことが少なくなる。
【0145】
このように、本実施形態7においては、長い幅Y2の内側電極対向部が、上記のような力の作用を受けてその力の向きに移動しようとするトナーの移動を妨げる障壁の役割を果たし、トナー担持ローラ2上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。よって、トナー担持ローラ2上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じるのを抑制でき、画像濃度ムラを抑制できる。
【0146】
なお、本実施形態7においては、短い幅Y1の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極4aとの間付近に存在するトナーの量よりも、長い幅Y2の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極4aとの間付近に存在するトナーの量の方が多くなるので、微視的にみればトナー担持ローラ2上でトナー量のムラが生じる。しかし、このようなムラはその周期が非常に短い高周波のムラであるため、画像濃度に影響が出にくく、画像濃度に影響が出たとしても人間が感知できるようなムラにはならないので、実質的に画質に影響しない。
【0147】
本実施形態7において、内側電極対向部の長い幅Y2は、内側電極対向部の短い幅Y1の2倍〜5倍に設定するのが好ましい。2倍未満の場合、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア用電界を十分に強い電界とすることができず、上記障壁としての役割を十分に果たすことができず、画像濃度ムラの抑制効果が低いものとなってしまう。一方、5倍を越える場合、その長い幅Y2の内側電極対向部の中央部に存在するトナーが隣接する外側電極4a上に移動できず、トナーを効率的にクラウド化させることが困難となる。なお、内側電極対向部の短い幅Y1は、外側電極4aの電極幅と同程度とするのが好ましい。
【0148】
本実施形態7においては、外側電極4aの電極幅を40μm、内側電極対向部の短い幅Y1を40μm、内側電極対向部の長い幅Y2を120μmに設定している。
なお、本実施形態7においては、外側電極4aの幅Xを均等とし、内側電極対向部の幅を不均等とする場合について説明したが、逆に、外側電極4aの幅Xを不均等とし、内側電極対向部の幅を均等とする場合でも、同様の効果が得られる。
【0149】
また、本実施形態7においては、内側電極対向部の幅を、トナー担持ローラ2の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように不均等としているが、不均等の方法は限られない。例えば、短い幅Y1が2つ以上続いた後に1つの長い幅Y2が存在するというように不均等としてもよい。また、幅の種類が3種類以上となるようにしてもよい。
【実施例】
【0150】
次に、上記実施形態を踏まえた上での詳細な実施例と比較例について記載する。
用いたトナー担持ローラは、アルミニウム製中空ローラ部材(外径16mm、長さ250mm)を内側電極(電極B)とし、メラミン樹脂製絶縁層を介し、ローラ軸に平行に複数の長尺の外側電極(幅80μm)がそれぞれ80μmの間隔をあけて設けられ、さらに外側電極の両端は外側電極と同じ材質からなる接続部で互いに電気的に接続されており、外側電極の上は20μmの膜厚の表層で覆われていてなめらかな外周面が形成されている。
【0151】
温度30℃、相対湿度90%の環境において、上記のトナー担持ローラの外側電極および内側電極へ異なる電圧を印加し、経時でのリークの有無を確認した(プリント枚数にしてA4サイズ3000000枚相当)。それぞれの電極に印加される電圧の交流成分のVppは500Vで、位相は互いにπずれた逆相であり、使用した波形は、それぞれ矩形波、サイン波、三角波、のこぎり波である。交流成分の周波数は500Hzである。
【0152】
以下に示す実施例1〜9、比較例1〜6の条件で画像形成テスト(トナー供給ローラの線速度は200mm/秒)を行い、初期、30万枚画像形成後(300k)、及び、300万枚画像形成後(3000k)に外側電極と内側電極との間に電極のリークの有無を電極間にテスター(CUSTOM社製デジタルテスタCDM−2000D)により抵抗値を測定することによって調べた。
【0153】
(実施例1)
外側電極の材料として、銀ペーストを用い、外側電極の直流成分と内側電極の直流成分との差を−10Vとした。また、外側電極、内側電極それぞれに印加した電圧の交流成分には矩形波(DUTY50%)を用いた。また、絶縁層膜厚を20μmとした。
【0154】
ペーストを用いる電極作製は次のようにして行った。すなわち、アルミニウム中空ローラの側面に設けられた絶縁層の表面にスクリーン印刷法により導電性ペースト(藤倉化成社製ドータイトFA−333)によりスクリーン印刷法により長さ220mm、幅80μmの電極パターンを80μm間隔で印刷し、その後150℃の加熱処理を行って作製した。
【0155】
(実施例2)
実施例1と同様に、ただし、外側電極の材料として、銅ペーストを用いた。
(実施例3)
実施例1と同様に、ただし、外側電極の材料として、はんだペーストを用いて外側電極を作製した。
(実施例4)
実施例1と同様に、ただし、外側電極、及び、内側電極の交流成分にはサイン波を印加した。
(実施例5)
実施例1と同様に、外側電極、内側電極それぞれに印加した電圧の交流成分には矩形波(DUTY25%)を用いた。
(実施例6)
実施例1と同様に、ただし、外側電極、及び、内側電極にそれぞれ印加された電圧の交流成分には三角波を印加した。
(実施例7)
実施例1と同様に、ただし、外側電極、及び、内側電極にそれぞれ印加された電圧の交流成分にはのこぎり波を印加した。
(実施例8)
実施例1と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を−50Vとした。
(実施例9)
実施例1と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を−100Vとした。
(比較例1)
実施例1と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を0Vとした。
(比較例2)
実施例2と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を0Vとした。
(比較例3)
実施例3と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に 印加された電圧の直流成分の差を0Vとした。
(比較例4)
実施例1と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を+10Vとした。
(比較例5)
外側電極の材料として、銀ペーストを用い、外側電極の直流成分と内側電極の直流成分との差を0Vとした。また、外側電極、内側電極の交流成分にはサイン波を印加した。また、絶縁層膜厚を20μmとした。
(比較例6)
実施例1と同様に、ただし、外側電極に印加された電圧の直流成分と内側電極に印加された電圧の直流成分の差を0Vとした。また、絶縁層膜厚を40μmとした。
上記、実施例および比較例の実験結果を表1に示す。リークがあるときを不充分として「×」、リークがなかったときを充分であるとして「○」として評価した。
【0156】
【表1】

【0157】
表1より、外側電極と内側電極とに印加される電圧の直流成分の差がマイナスである条件のものはいずれも長期にわたってリークが発生しないことが確認された。
【符号の説明】
【0158】
1 現像装置
2 トナー担持ローラ
3a 内側電極
3b 被給電部
4a 外側電極
4b 被給電部
4c 絶縁性粒子
5 絶縁層
6 表層
7 給電ブラシ
8 給電コロ
8’ 給電ブラシ
11 ケーシング
18 トナー供給ロール
18’ スポンジローラ
19 トナー供給スリーブ
20 マグネットローラ
25A,25B 電源装置
30 回収機構
31 回収板
32 振動子
34 回収ローラ
35 クリーニングブレード
36 ブラシローラ
37 フリッカー
38 吸引ノズル
39 シール
40 吸引ポンプ
41 ダクト
42 現像前対向電極
43 現像前回収バイアス電源
49 感光体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0159】
【特許文献1】特開2007−133388号公報
【特許文献2】特開2008−116599号公報
【特許文献3】特公平1−31611号公報
【特許文献4】特開2010−164932号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー搬送面から第一の所定深さの位置であってかつ長手方向がトナーの搬送方向に交差する位置に互いに間隔をあけて設けられた複数の長尺の外側電極、前記外側電極より深い第二の所定深さの位置であって少なくとも前記長尺の外側電極同士の間隔部分に設けられた内側電極、及び、前記外側電極が設けられた層と前記内側電極が設けられた層との間に絶縁層が設けられた前記トナー担持体と、前記トナーを前記トナー搬送面でホッピングさせるための電圧を前記内側電極と前記外側電極とにそれぞれ印加する電圧印加手段と、を備えた現像装置において、
前記電圧印加手段によって、前記内側電極と前記外側電極との両方に直流成分と互いに逆相な交流成分とから構成される電圧がそれぞれ印加されるか、または、前記内側電極と前記外側電極とのいずれか一方の電極に交流成分と直流成分とから構成される電圧を印加されるとともに他方の電極に直流成分のみが印加され、かつ、
前記内側電極と前記外側電極とにそれぞれ印加される前記電圧の直流成分が、互いに異なる電圧で構成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記内側電極が、前記トナー搬送面の全体の前記第二の所定深さの位置に面状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記外側電極が、銀、銅、鉛、錫、あるいは、それらの合金から構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記外側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧が、前記内側電極に印加される電圧のうちの直流成分の電圧よりも低く保持されていることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の現像装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−118261(P2012−118261A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267404(P2010−267404)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】