説明

現像装置、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】現像剤担持体に担持された液体現像剤を、液体現像剤中のトナー量に応じた帯電状態に調整する。
【解決手段】本発明に係る現像装置は、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を担持するとともに現像バイアスが印加される現像剤担持体20と、現像剤担持体20に液体現像剤を供給する現像剤供給部と、現像剤担持体20に現像剤帯電バイアスを印加して液体現像剤を帯電させる帯電部22と、現像剤担持体20に担持され帯電部22にて帯電された液体現像剤の電位を測定する電位測定部23と、現像剤供給部から現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量を検出する検出部と、電位測定部23で測定された液体現像剤の電位が検出部で検出された液体現像剤のトナー量に基づいた電位となるように、帯電部22で印加する現像剤帯電バイアスを調整する制御部と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成した静電潜像をトナーとキャリア液を有する液体現像剤によって現像する現像装置、そして、現像装置により現像された現像剤像を記録材に転写し、定着することで画像形成する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体溶媒中に固体成分からなるトナーを分散させた高粘度の液体現像剤を用いて潜像を現像し、静電潜像を可視化する湿式画像形成装置が種々提案されている。この湿式画像形成装置に用いられる現像剤は、シリコーンオイルや鉱物油、食用油等からなる電気絶縁性を有し高粘度のキャリア液中に固形分(トナー粒子)を懸濁させたものであり、このトナー粒子は、粒子径が1μm前後と極めて微細である。このような微細なトナー粒子を使用することにより、湿式画像形成装置では、粒子径が7μm程度の粉体トナー粒子を使用する乾式画像形成装置に比べて高画質化が可能である。
【0003】
液体現像剤を用いる画像形成装置において、現像ローラー上に帯電ローラー等を設け、現像ローラーに塗布された液体現像剤中のトナーを帯電・圧縮させる技術が知られている。この技術によれば、現像前の現像剤中のトナーの帯電を補い、さらに現像ローラー側に圧縮することでトナーの移動性の向上と非画像部へのトナー付着を抑制することができる。(特許文献1)
【0004】
このように液体現像剤の帯電・圧縮を行う場合、液体現像剤が好適な帯電状態かどうかを判断し、帯電・圧縮量を適切な値に制御することが必要となる。特許文献2では現像ローラー上に現像ローラー表面電位測定装置を設け、現像剤帯電装置の印加電圧を制御することで現像ローラーに塗布された液体現像剤層表面を所望の電位に安定さることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−185265号公報
【特許文献2】特開2009−294490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現像ローラーに塗布された液体現像剤層を現像剤帯電装置で帯電・圧縮する場合、液体現像剤中の固形分量に対して適切な現像剤表面電位の値が異なったものとなる。液体現像剤中に含まれるトナー量が多いほど帯電を補うための電荷量が多く必要とされ、またトナー粒子を圧縮するために必要とされる電界も大きくなる。特許文献2に開示される手法では、現像ローラー上の液体現像剤表面電位を所定の範囲に制御するのみであって、このような現像ローラーに塗布された液体現像剤中の固形分量を考慮した制御は行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像装置は、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を担持するとともに現像バイアスが印加される現像剤担持体と、前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する現像剤供給部と、前記現像剤担持体に現像剤帯電バイアスを印加して液体現像剤を帯電させる帯電部と、前記現像剤担持体に担持され前記帯電部にて帯電された液体現像剤の電位を測定する電位測定部と、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤
のトナー量を検出する検出部と、前記電位測定部で測定された液体現像剤の電位が前記検出部で検出された液体現像剤のトナー量に基づいた電位となるように、前記帯電部で印加する現像剤帯電バイアスを調整する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明に係る現像装置において、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量は、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体へ供給される液体現像剤の供給量で調整されることとしている。
【0009】
さらに、本発明に係る現像装置は、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー濃度を調整する現像剤濃度調整部を有し、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量は、前記現像剤濃度調整部で調整される液体現像剤のトナー濃度により調整されることとしている。
【0010】
さらに、本発明に係る現像装置において、前記電位測定部は、液体現像剤が担持されていない位置の前記現像剤担持体の電位を測定し、前記制御部は、前記現像剤担持体の電位に基づいて、前記現像剤担持体に印加する現像バイアスを制御することとしている。
【0011】
さらに、本発明に係る現像装置において、前記電位測定部は、前記液体現像剤の電位を測定する第1電位検出部材、及び前記現像剤担持体の電位を測定する第2電位検出部材を有することとしている。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、潜像が形成される潜像担持体と、前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を担持するとともに現像バイアスが印加される現像剤担持体、前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する現像剤供給部、前記現像剤担持体に現像剤帯電バイアスを印加して液体現像剤を帯電させる帯電部、及び前記現像剤担持体に担持され前記帯電部にて帯電された液体現像剤の電位を測定する電位測定部を有し、前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量を検出する検出部と、前記電位測定部で測定された液体現像剤の電位が前記検出部で検出された液体現像剤のトナー量に基づいた電位となるように、前記帯電部で印加する現像剤帯電バイアスを調整する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係る画像形成方法は、トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を現像剤担持体に供給するとともに液体現像剤のトナー量を検出し、前記現像剤担持体に供給された液体現像剤を現像剤帯電バイアスで帯電し、帯電された液体現像剤の電位を測定し、検出された液体現像剤のトナー量及び測定された液体現像剤の電位に基づいて前記現像剤帯電バイアスを調整することを特徴としている。
【0014】
本発明の現像装置によれば、現像剤担持体に塗布する液体現像剤に含まれるトナー量を検出し、調整したトナー量に応じて、液体現像剤の帯電状態を好適な状態に制御することが可能となる。液体現像剤の膜厚が変化した場合においても液体現像剤が好適な状態に帯電されるため、膜厚増加時における画像パターンの潰れや滲みを抑制することができる。また過剰なプリチャージによる液体現像剤内のトナー粒子の凝集を抑制することができる。
【0015】
また、液体現像剤のトナー量が変化した場合においても、液体現像剤が好適な状態に帯電されるため薄層現像が可能となり、スクリーンパターンのエッジ再現性を向上させることが可能となる。また過剰なプリチャージによる液体現像剤内のトナー粒子の凝集を抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、現像剤担持体の表面電位を所望の値に制御することで、現像コントラストおよび逆コントラストを適切な値に設定することができ、過剰現像によるドット太りおよびカブリのない均一な画像形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の主要構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成部、現像部の主要構成を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態に係るバイアス制御構成を示す図。
【図4】トナー帯電器への印加バイアスと液体現像剤の電位の関係を示す図。
【図5】トナー帯電器への印加バイアスと各種液体現像剤の電位の関係を示す図。
【図6】液体現像剤の膜厚の違いによるV1−Vdの良好範囲を示す図。
【図7】本発明の実施形態に係る現像剤供給部の構成を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態に係るバイアス制御構成を示す図。
【図9】トナー帯電器への印加バイアスと各種液体現像剤の電位の関係を示す図。
【図10】液体現像剤のトナー濃度の違いによるV1−Vdの良好範囲を示す図。
【図11】本発明の実施形態に係る電位検出部の配置を示す図。
【図12】本発明の実施形態に係る電位検出部の配置(拡大)を示す図。
【図13】本発明の実施形態に係るバイアス制御処理を示すフロー図。
【図14】本発明の実施形態に係る各種電位変移の様子を示す図。
【図15】本発明の実施形態に係る各種電位変移の値を示す図。
【図16】本発明の他の実施形態に係る電位測定部の配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置の主要構成を示した図であり、図2は本発明の実施形態に係る画像形成装置において、イエロー(Y)色における画像形成部、現像装置(現像部)の主要構成を示した図である。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の画像形成装置は、転写ベルト40と、感光体10Y、10M、10C、10Kを主要構成とする4つの画像形成部と、各感光体10Y、10M、10C、10K(本発明における「潜像担持体」)に対応して配設された4つの現像装置30Y、30M、30C、30Kと、図中、転写ベルト40の右側に配設されている2次転写部と、図中、転写ベルト40の左側に配設されているクリーニング部などによって構成されている。
【0020】
以下、画像形成部及び現像装置30Y、30M、30C、30Kについては、各色の画像形成部及び現像装置の構成は同様であるため、イエロー(Y)の画像形成部及び現像装置に基づいて説明する。
【0021】
現像部30Yは、液体現像剤により感光体10Y上に形成された潜像を現像する装置であって、現像ローラー20Yと、中間ローラー32Yと、アニロクスローラー33Yと、液体現像剤を貯蔵する液体現像剤容器31Y、現像ローラー20Y上のトナーを帯電させるトナー帯電器22Yを主な構成要素としている。
【0022】
現像ローラー20Yの外周には、クリーニングブレード21Y、中間ローラー32Y、トナー帯電器22Yが配されている。中間ローラー32Yは、その表面を現像ローラー20Yとアニロクスローラー33Yに当接させており、その外周には中間ローラークリーニングブレード34Yが配設されている。
【0023】
アニロクスローラー33Yには、現像剤貯留部311Yから汲み上げた液体現像剤の量を調整する規制部材35Yが当接している。なお、本実施形態の現像装置のように中間ローラー32Yを用いた3ローラー方式では、中間ローラー32Yがアニロクスローラー33Yに当接することで液体現像剤の量を調整することが可能であるため、この規制部材35Yを配設しない構成とすることも可能である。さらに、中間ローラー32Yとアニロクスローラー33Yの回転数を変更することで、現像ローラー20Y上に塗布する液体現像剤の膜厚を制御することが可能である。また、中間ローラー32Yを用いない2ローラー方式を採用することも可能である。その場合、膜厚は現像ローラー20Yに当接するアニロクスローラー33Yの回転数を変更することで制御可能となる。
【0024】
現像剤貯留部311Yには、搬送経路723Yを介して現像剤供給部から液体現像剤が供給される。なお、本実施形態では、仕切板313Yの両端部が中央部よりも一段低い形状を有しており、この一段低い部分にて液体現像剤を現像剤貯留部311Yから回収液貯留部312Y側に溢れさせることで、現像剤貯留部311Yの液位を一定に保っている。
【0025】
回収液貯留部312Yでは、その内部に配設された回収オーガ37Yにより、現像剤貯留部311Yから溢れた液体現像剤と各種ブレードにて回収された液体現像剤を含む回収液が回収オーガ37Yにて搬送され、移送経路721Yを介して現像剤供給部に回収される。回収された回収液は、現像剤補給部にて濃度調整された後、再度、移送経路723Yを介して供給されることで再利用を図ることが可能となっている。
【0026】
現像剤容器31Yに収容されている液体現像剤は、従来一般的に使用されているIsopar(商標:エクソン)をキャリアとした低濃度(1〜2wt%程度)かつ低粘度の、常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性を有する不揮発性液体現像剤である。すなわち、本発明における液体現像剤は、熱可塑性樹脂中へ顔料等の着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコーンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約25%とした高粘度(HAAKE RheoStress RS600を用いて、25℃の時のせん断速度1000(1/s)のときの粘弾性が30〜300mPa・s程度)の液体現像剤である。
【0027】
アニロクスローラー33Yは、中間ローラー32Yに対して液体現像剤を供給して塗布する塗布ローラーとして機能する。このアニロクスローラー33Yは、円筒状の部材であり、表面に現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に螺旋状に彫刻された溝による凹凸面が形成されたローラーである。このアニロクスローラー33Yにより、現像剤貯留部311Yから現像ローラー20Yへと液体現像剤が供給される。装置動作時においては、図に示すようにアニロクスローラー33Yは時計回りに回転して、中間ローラー32Yに液体現像剤を塗布する。
【0028】
規制部材35Yは、厚さ200μm程度の金属ブレードであり、アニロクスローラー33Yの表面に当設し、アニロクスローラー33Yによって坦持搬送されてきた液体現像剤の膜厚、量を規制し、現像ローラー20Yに供給する液体現像剤の量を調整する。
【0029】
中間ローラー32Yは、円筒状の部材であり、回転軸を中心に図に示すように、現像ローラー20Yと同様、反時計回りに回転し、現像ローラー20Yに対しカウンター当接する。中間ローラー32Yは現像ローラー20Yと同様に、金属製の内心の外周部に弾性層を設けて構成される。
【0030】
中間ローラー32Yと現像ローラー20Yとの当接位置下流には、中間ローラークリーニングブレード34Yが当接して配設され、現像ローラー20Yに供給されなかった液体
現像剤を掻き取って現像剤容器31Y内の回収液貯留部312Yに回収する。
【0031】
現像ローラー20Yは、円筒状の部材であり、回転軸を中心に図に示すように反時計回りに回転する。現像ローラー20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。現像ローラー20Yには現像バイアスが印加されることとなるが、現像バイアスは、この金属製の内心に印加される。
【0032】
現像ローラークリーニングブレード21Yは、現像ローラー20Yが感光体10Yと当接する現像ニップ部より現像ローラー20Yの回転方向の下流側に配設され、現像ローラー20Yに残存する液体現像剤を掻き落として除去する。現像残りの現像剤は、現像ローラークリーニングブレード21Yによって掻き落として除去され現像剤容器31Y内の回収液貯留部312Yに滴下して再利用される。
【0033】
トナー帯電器22Y(本発明における「帯電部」)は、現像ローラー20Yの表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、現像ローラー20Yによって搬送される液体現像剤は、このトナー帯電器22Yと近接する位置でコロナ放電による電界が印加され帯電される。
【0034】
画像形成部は、感光体10Yの外周の回転方向に沿って順に配設された、2基のコロナ帯電器11Y、11Y’、露光ユニット12Y、感光体スクイーズ装置、1次転写部50Y、感光体クリーニングブレード18Yなどによって構成される。この画像形成部は感光体10Yの外周上、露光ユニット12Yと第1スクイーズローラー13Yとの間において現像部30Yの現像ローラー20Yと当接する。
【0035】
感光体10Yは、外周面にアモルファスシリコン感光体などの感光層が形成された円筒状の部材からなる感光体ドラムであり、時計回りの方向に回転する。
【0036】
2基のコロナ帯電器11Y、11Y’は、感光体10Yと現像ローラー20Yとのニップ部より感光体10Yの回転方向の上流側に配置され、図示しない電源装置から電圧が印加され、感光体10Yをコロナ帯電させる。露光ユニット12Y(本発明における「露光部」)は、コロナ帯電器11Yより感光体10Yの回転方向の下流側において、コロナ帯電器11Y、11Y’によって帯電された感光体10Y上に光を照射し、感光体10Y上に潜像を形成する。
【0037】
1次転写部50Yの上流側に配置される感光体スクイーズ装置は、感光体10Yに対向して現像ローラー20Yの下流側に配置されている。この感光体スクイーズ装置は、感光体10Yに摺接して回転する弾性ローラー部材からなる第1スクイーズローラー13Y、第2スクイーズローラー13Y’、感光体スクイーズローラークリーニングブレード14Y、14Y’にて構成され、感光体10Y上に現像されたトナー像から余剰なキャリア液及び本来不要なカブリトナーを回収(スクイーズ)し、顕像(トナー像)内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。なお、感光体スクイーズローラー13Y、13Y’には、カブリトナーを感光体スクイーズローラー13Y、13Y’側に誘引するためバイアス(電圧)が印加されている。
【0038】
感光体スクイーズローラークリーニングブレード14Y、14Y’は、各感光体スクイーズローラー13Y、13Y’に当接して設けられ、回収されたキャリア液やカブリトナーを含んだ液体現像剤を掻き落として、現像剤容器31Y内の回収液貯留部312Yに滴下する。
【0039】
上記の第1感光体スクイーズローラー13Y、第2感光体スクイーズローラー13Y’からなるスクイーズ装置を経た感光体10Y表面は、1次転写部50Yに進入する。この1次転写部50Yでは、感光体10Yに現像された現像剤像を1次転写バックアップローラー51Yにより転写ベルト40へ転写する。この1次転写部50Yにおいては、1次転写バックアップローラー51Yに印加される転写バイアスの作用によって、感光体10Y上のトナー像は転写ベルト40側に転写される。ここで、感光体10Yと転写ベルト40は等速度で移動する構成であり、回転及び移動の駆動負荷を軽減するとともに、感光体10Yの顕像トナー像への外乱作用を抑制している。
【0040】
1次転写部50Yの下流側において、感光体10Yと当接している感光体クリーニングブレード18Yは、感光体10Y上のキャリア成分リッチな液体現像剤をクリーニングする。
【0041】
転写ベルト40(転写部材)は、ポリイミド基層上にポリウレタンの弾性中間層を設け、さらにその上にPFA表層が設けられている三層構造となっている。この転写ベルト40は、ベルト駆動ローラー41、テンションローラー42にて張架され、PFA表層側においてトナー像が転写されるようにして用いられる。本実施形態の画像形成装置では、転写させるための部材として、転写ベルト40を用いているが、ベルトに限らず、ローラー、ドラムなど各種の転写部材を採用することも可能である。
【0042】
感光体10Y、10M、10C、10Kと転写ベルト40を挟んで1次転写バックアップローラー51Y、51M、51C、51Kが対向配置することで形成される1次転写部50Y、50M、50C、50Kでは、感光体10Y、10M、10C、10Kとの当接位置を転写位置として、現像された感光体10Y、10M、10C、10K上の各色のトナー像を転写ベルト40上に順次重ねて転写し、転写ベルト40上にフルカラーのトナー像を形成する。
【0043】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラー61が転写ベルト40を挟んでベルト駆動ローラー41と対向配置され、両者によって2次転写部(ニップ部)を形成する。この2次転写部では、転写ベルト40上に形成された単色あるいはフルカラーのトナー像が転写材搬送経路Lにて搬送される用紙、フィルム、布等の転写材に転写される。さらに、シート材搬送経路Lの下流には、図示しない定着ユニットが配設され、転写材上に転写された単色のトナー像やフルカラーのトナー像に熱や圧力を加えて定着させる。
【0044】
2次転写ユニットに対する転写材の供給は給紙装置(不図示)によって行われる。給紙装置にセットされた転写材は、所定のタイミングにて一枚ごとに転写材搬送経路Lに送り出されるようになっている。転写材搬送経路Lでは、ゲートローラー101、101’によって転写材を2次転写部まで搬送し、転写ベルト40上に形成された単色あるいはフルカラーのトナー像を転写材に転写する。
【0045】
テンションローラー42は、駆動ローラー41と共に中間転写体40を張架しており、中間転写体40のテンションローラー42に張架されている箇所にて、転写ベルト40をクリーニングするクリーニングブレード46が当接して配設される。
【0046】
このように本実施形態の現像装置30Y、画像形成装置では、アニロクスローラー33Yで汲み上げた液体現像剤を、ウィズ回転の中間ローラー32Yに転移させ、さらにカウンター回転の現像ローラー20Yで摺りきり界面をならすことで4〜10μmの均一な薄膜が形成される。さらに、現像ローラー20Yに対向して設けられたトナー帯電器22Yによって液体現像剤に現像剤帯電バイアスを印加し、かつ、現像ローラー20Y側に圧縮することで、非画像部に余分なトナーが付着すること(カブリ)を抑制すると共に、画像
部における均一性を向上させることが可能となる。
【0047】
本実施形態では、トナー帯電器22Yとして、コロトロン、スコロトロン等、コロナ放電を行うことで液体現像剤に現像剤帯電バイアスを印加する装置を用いているが、このような形態以外に、帯電ローラーを用いることとしてもよい。なお、トナー帯電器22Yによる帯電・圧縮をプリチャージと呼ぶこともある。
【0048】
図2に示されるよう現像ローラー20Yの周囲には、トナー帯電器22Yと、現像ローラー20Yと感光体10Yのニップ位置の間に電位測定部23Yが配設されている。この電位測定部23Yによって、液体現像剤がプリチャージされた後で、かつ現像直前の液体現像剤の表面電位(第1電位)を計測することが可能となる。
【0049】
図3は、本発明の実施形態(実施例1)に係るバイアス制御構成を示す図である。本発明は現像ローラー20Yに塗布された液体現像剤の帯電状態を液体現像剤のトナー量に応じて調整するものである。実施例1では、液体現像剤のトナー量として、現像ローラー20Yに塗布される液体現像剤の膜厚を用いることとしている。液体現像剤の膜厚が大きくなるに従って、液体現像剤に含まれるトナー量も多くなるため、液体現像剤の帯電量を増加させる必要がある。
【0050】
現像ローラー20Yに塗布された液体現像剤の帯電状態は、電位測定部23Yを用いて測定される。この電位測定部23Yは、現像ローラー20Yの周囲であって、トナー帯電器22Yと、現像ローラー20Yと感光体10Yにて形成されるニップ部の間に配設されている。電位測定部23Yにて測定された、現像ローラー20Y上の液体現像剤の表面電位(第1電位:V1)は中央制御部200に出力される。この液体現像剤の表面電位V1と、現像ローラー20Yに印加する現像バイアスVdの差分(V1−Vd)が液体現像剤自身の帯電量として算出される。図4には、トナー帯電器への印加バイアスと液体現像剤の電位の関係が示されている。
【0051】
印刷動作中において印刷媒体に対する濃度補正、階調補正、または、表面が粗い印刷媒体を使用する際など、現像ローラー20Yに対する液体現像剤の供給量を増加させて、現像ローラー20Y上に塗布する膜厚を変更する場合がある。本実施形態では、このような膜厚の変更を、アニロクスローラー33Yの回転数を制御することで実行することとしている。なお、アニロクスローラー33Yのみならず中間ローラー32Yの回転数も制御して膜厚の変更を行うこととしてもよい。
【0052】
中央制御部200Yは、各種設定条件に基づいて、現像ローラー20Yに塗布する液体現像剤の膜厚を決定する。決定された膜厚は、中央制御部200Yにてアニロクスローラー33Yの回転数に変換される。膜厚とアニロクスローラー33Yの回転数の関係は、中央制御部200Y内に記憶される所定の関係式あるいはテーブルを用いて算出される。駆動源203は、決定された回転数にてアニロクスローラー33Yを回転させることで、現像ローラー20Y上に決定された膜厚の液体現像剤を形成させる。
【0053】
一方、液体現像剤の帯電量の制御は、トナー帯電器22Yに印加するバイアスを調整することで実行される。中央制御部200は、電位測定部23Yが出力する液体現像剤の表面電位V1に基づいて算出された液体現像剤の帯電量(V1−Vd)が、現像ローラー20Yに塗布される液体現像剤に含まれるトナー量(本実施形態では、液体現像剤の膜厚)に応じた値となるように、トナー帯電器22Yに印加するバイアスVwを調整し、液体現像剤の帯電量を好適なものとする。なお、液体現像剤に含まれるトナー量は、中央制御部200において、アニロクスローラー33Yの回転速度など、液体現像剤の膜厚を決定付ける制御パラメーターに基づいて検出(推定)することとなる。
【0054】
図5は、トナー帯電器への印加バイアスと各種液体現像剤の電位の関係を示す図であり、図6には、現像剤膜厚に対して必要な帯電量(V1−Vd)の値が示されている。ここでは、現像剤膜厚5.0μmを基準とし、各膜厚において必要な帯電量(V1−Vd)の値が示されている。液体現像剤の膜厚が増加すると、プリチャージをするときのトナー粒子の移動距離が増加することとなる。したがって同じプリチャージ時間で移動させるためには、トナー帯電器22Yにて与える電界の強さを増加させる必要がある。例えば、膜厚が8.0μmの場合、移動距離は5.0μmの場合の1.6倍となる。したがって液体現像剤層の帯電量(V1−Vd)を1.6倍とすることで、膜厚が変化した場合においても等しい帯電・圧縮状態とすることが可能となる。
【0055】
以上、本実施形態(実施例1)では、液体現像剤のトナー量として、現像ローラー20Yに塗布される液体現像剤の膜厚を用いることとしたが、液体現像剤のトナー量としては、液体現像剤のトナー濃度を用いるものであってもよい。次に説明する実施形態(実施例2)では、現像剤供給部における液体現像剤のトナー濃度調整に基づいて、液体現像剤の帯電量を調整するものである。
【0056】
図7は、本発明の実施形態に係る現像剤供給部の構成を示す図である。本実施形態における現像剤供給部は、主な構成として、高濃度現像剤タンク76Y、キャリア液タンク75Y、濃度調整タンク71Y、回収液貯留部312Yと濃度調整タンク71Yを接続する移送経路721Y、濃度調整タンク71Yと現像剤貯留部311Yを接続する移送経路723Yなどで構成されている。
【0057】
濃度調整タンク71Yは、その内部に液体現像剤を貯留するとともに、その濃度調整を行うための供給現像剤貯留部711Y(貯留槽)が形成されている。この供給現像剤貯留部711Yには、高濃度現像剤タンク76Y(トナー貯留部)から移送経路725Yを介して高濃度現像剤を、また、キャリア液タンク75(キャリア液貯留部)から移送経路724Yを介してキャリア液を供給することが可能となっている。各移送経路725Y、724Yにおける高濃度現像剤、キャリア液の搬送は、各移送経路中725Y、724Yにポンプを配設して積極的に供給することとしてもよいし、バルブを開閉し、自重により供給することとしてもよい。
【0058】
回収液貯留部312Y内の回収液は、回収オーガ37Yにて積極的に排出され、移送経路721Yを介して供給現像剤貯留部711Yに貯留される。また、供給現像剤貯留部711Y内にて濃度調整された液体現像剤は、移送経路723Yを介して現像部30Yの現像剤貯留部311Yに搬送され画像形成に使用される。このような現像剤供給により、液体現像剤を濃度調整して再利用を図ることが可能となる。
【0059】
供給現像剤貯留部711Y内には、液体現像剤のトナー濃度を検知するための濃度センサー73Y、液量を検知するための液位センサー74Y、貯留する液体現像剤を攪拌するための攪拌部材77Yが配設される。濃度センサー73Y、液位センサー74Yの出力に基づいてポンプ735Y、734Yを駆動し、攪拌部材77Yにて攪拌することで、供給現像剤貯留部711Yに貯留する液体現像剤の濃度、液量を一定の値に調整することが可能となっている。
【0060】
濃度センサー73Yは、支持部材734Yに固定されており、支持部材734Yは、タンク蓋712Yに固定部材735Yにて固定される。濃度センサー73Yは、中空の筐体内に対向して配設された駆動用超音波振動子732と、検出用超音波振動子733にて構成される。これらの振動子732、733の間の液体現像剤の伝搬速度を計測することで、供給現像剤貯留部711Y内の液体現像剤の濃度が検出される。なお、濃度センサー7
3Yには、このような超音波式の他、光学式のものを採用してもよい。
【0061】
中央制御部200では、濃度センサー73Yにて検出された検出濃度信号、液位センサー74Yが検出する検出液量信号に基づいて、キャリアタンク75Yからのキャリア液の補給、高濃度現像剤タンク76Yからの高濃度現像剤の補給を制御する。このような補給制御にて、供給現像剤貯留部711Y内の液体現像剤の濃度並びに液量を所望の値に制御することが可能となる。なお、本実施形態では、搬送経路724Y、725Yに、それぞれポンプ754Y、755Yを設け、これらを制御することで補給量を調整することとしている。
【0062】
図8は、本発明の他の実施形態(実施例2)に係るバイアス制御構成を示す図である。この実施例2では、液体現像剤のトナー量として、図7の濃度センサー73Yにて検出した検出濃度信号を使用して、現像ローラー20Yに塗布された液体現像剤の帯電状態を調整することとしている。
【0063】
現像ローラー20Yに塗布された液体現像剤の帯電状態は、実施例1と同様、電位測定部23Yを用いて測定される。この電位測定部23Yにて測定された液体現像剤の表面電位(V1)と、現像ローラー20Yに印加する現像バイアスVdの差分(V1−Vd)が液体現像剤自身の帯電量として算出される。
【0064】
一方、液体現像剤の帯電量の制御は、トナー帯電器22Yに印加するバイアスを調整することで実行される。中央制御部200は、電位測定部23Yが算出する液体現像剤の表面電位(V1)に基づいて算出される液体現像剤の帯電量(V1−Vd)が、現像ローラー20Yに塗布される液体現像剤のトナー量(本実施形態では、液体現像剤のトナー濃度)に応じた値となるように、トナー帯電器22Yに印加するバイアスVwを調整し、液体現像剤の帯電量を好適なものとする。
【0065】
図7で説明したように液体現像剤は通常、一定のトナー濃度に保たれているが、印刷媒体の濃度補正や画質改善のためにトナー濃度を変化させて調整することがある。液体現像剤中のトナー濃度が変化した場合、液体現像剤中のトナー粒子量が変化する。トナー粒子の量が変化したときトナー粒子の相互作用が変化するため液体現像剤の粘性が変化することとなる。
【0066】
例えば、トナー濃度20%における粘性係数は115mPa・sであるのに対し、トナー濃度が30%では210mPa・sと高粘度になる。液体現像剤内の粒子にかかる粘性抵抗は粘度に比例するため、粘度が変化した場合は変化量に応じてプリチャージを調整する必要がある。トナー濃度と粘度の関係は予め中央制御部200にて記憶している。また、液体現像剤の粘度は温度に対する変化が大きいため、例えば、供給現像剤貯留部711Y内の液体現像剤の温度を計測し、計測した温度に基づいて粘性の補正を行うことが好ましい。
【0067】
図9は、トナー帯電器への印加バイアスと各種液体現像剤の電位の関係が、また、図10には、トナー濃度20%を基準とし、液体現像剤のトナー濃度に応じて必要となる帯電量(V1−Vd)の値が示されている。なお、本実施形態では、トナー濃度として重量%濃度が用いられている。トナー濃度が増加すると粘度が増加した分だけ、粘性抵抗が大きくなるためトナー粒子の移動度が低下する。したがって同じプリチャージ時間で移動させるためには、電界の強さを増加させる必要がある。例えば、トナー濃度が30%の場合、粘度は20%の場合の1.82倍となる。したがって液体現像剤層にかける電位差(V1−Vd)を1.82倍にすることでトナー濃度が変化しても等しい帯電・圧縮状態にすることができる。
【0068】
以上、液体現像剤のトナー量の検出として、実施例1では、現像ローラー20Yに塗布する液体現像剤の膜厚を、実施例2では、液体現像剤のトナー濃度を利用することとしたが、液体現像剤の膜厚、トナー濃度の両者を考慮して液体現像剤の帯電量を調整することとで、液体現像剤の帯電状態をさらに好適なものとすることが可能となる。
【0069】
次に、本発明の他の実施形態(実施例3)について説明する。前述した実施形態(実施例1、実施例2)において、液体現像剤の帯電量は、電位測定部23Yにて液体現像剤の表面電位(V1)と、現像ローラー20Yに印加する現像バイアスVdとの差(V1−Vd)とするものであった。しかしながら、実際には、現像ローラー20Yの表面電位は、現像バイアスVdと異なるものとなる。これは、トナー帯電器22Yによる電荷が現像ローラー20Y上に堆積してしまうことに起因する。
【0070】
本実施形態では、液体現像剤が塗布されていない領域での現像ローラー20Yの表面電位V2(本発明における「第2の電位」)を検出し、V2が好適な値となるように現像バイアスVdを調整することで、形成する画像のコントラストを良好なものとすることとしている。
【0071】
図11は、本発明の実施形態に係る電位測定部23Yの構成を説明するための図である。本実施形態の電位測定部23Yには、少なくとも2箇所において現像ローラー20Y上の電位を測定する電位検出部231Y、232Yが配設された2センサー方式が採用されている。なお、第1電位検出部232Y、第2電位検出部231Yの少なくとも一方について複数配設する場合には、それぞれの計測電位の平均をV1、V2として採用することとしてもよい。
【0072】
第1電位検出部232Yは、現像ローラー20Y上において液体現像剤が塗布される領域、すなわち、アニロクスローラー33Yにおいて液体現像剤を汲み上げる凹凸面に対応する領域における電位(第1電位)を測定可能とする位置に配設されている。なお、第1電位検出部231Y、第2電位検出部232Y共に、非接触で対向する位置の電位を検出するセンサーである。
【0073】
一方、第2電位検出部231Yは、現像ローラー20Y上において液体現像剤が塗布されない領域の電位(V2)を検出する位置に配設される。図12には、第2電位検出部231Yの配設位置の詳細が示されている。この図は、現像ローラー20Yの端部付近における側面図であって、第2電位検出部231Yは、図に示される位置に配設される。第2電位検出部231Yは、その現像ローラー20Yの軸方向における幅Lが、液体現像剤が塗布されない領域であって、トナー帯電器22Yによる帯電領域、及び、現像ローラークリーニングブレード21Yもしくは中間ローラー32Yによる除電領域に含まれる位置に配置される。このような位置で第2電位、すなわち、現像ローラー20Y自体の表面電位を測定することが可能となる。
【0074】
本実施形態では、現像ローラークリーニングブレード21Yもしくは中間ローラー32Yによる除電性能を向上させるため、現像ローラークリーニングブレード21Yもしくは中間ローラー32Yは、体積抵抗率が103〜107Ωcm、または、表面抵抗率が104
〜1011Ω/cm2の部材で構成され、さらに図示しない高圧電源から現像バイアスVd
と等バイアスが印加されている。現像ローラー20Y表面にはトナー帯電器22Yからの電荷が堆積するため、現像ローラーが1回転するごとに電荷を除去する必要がある。したがって現像ローラークリーニングブレード21Yまたは中間ローラー32Yを所定の範囲の抵抗部材で構成することで、現像ローラーとの当接部分から電荷を逃がすことができるため、現像ローラー20Y表面の除電が可能となり、プリチャージ直前の現像ローラー2
0Yの表面電位を現像バイアスVdと略等しくすることが可能となる。
【0075】
プリチャージによって現像ローラー20Y表面に堆積した電荷を除電するために所定範囲の抵抗に調整された現像ローラークリーニングブレード21Yの幅もしくは中間ローラー32Yの幅は、トナー帯電器22Yによる帯電領域(幅)よりも大きくなっている。現像ローラー20Y表面に堆積した電荷の除電効果を高めるために現像ローラークリーニングブレード21Yおよび中間ローラー32Yには現像バイアスVdよりも低いバイアスを印加することもできる。
【0076】
図13は、本発明の実施形態に係るバイアス制御処理を示すフロー図である。バイアス制御処理は、印刷動作開始時、印刷動作実行中など、適宜タイミングにて行うことができる。このバイアス制御処理が開始されると、まず、現像ローラー20Yに印加する現像バイアスVd、トナー帯電器22Yに印加するバイアスVwを初期値に設定するとともに、現像ローラー20Y、中間ローラー32Y等の駆動を開始させる(S102)。液体現像剤が現像ローラー20Y上に塗布され、ある程度安定した状態となったときに、電位測定部23Yにて、液体現像剤が塗布された領域の第1電位V1が測定され、液体現像剤層に加えられる帯電量(V1−Vd)が求められる(S103)。
【0077】
この差分が液体現像剤層に付与された電荷による電位上昇分となる。この電位上昇分が所定範囲内、すなわち、実施例1、実施例2で説明した液体現像剤のトナー量に応じた値にある場合には、液体現像剤自体の帯電量は好適な範囲にある。一方、差分が所定範囲を外れている場合には、液体現像剤層のトナー帯電器22Yに印加するバイアスを調整することで液体現像剤の帯電量が好適な範囲となるように調整される。具体的には、差分が所定範囲の下限値よりも小さい場合には、トナー帯電器22Yに印加するバイアスVwを一定量上昇させる。また、差分が所定範囲の上限値よりも大きい場合には、トナー帯電器22Yに印加するバイアスVwを一定量下降させる。S103、S105の処理を繰り返すことで、差分(V1−Vd)は好適な範囲に収められる。
【0078】
本実施形態では、さらに、現像ローラー20Y自体の表面電位についても適正値となるように制御し、現像コントラストおよび逆コントラストを好適な条件に保つこととしている。S104では、この現像ローラー20Yの表面電位を示す第2電位がV2*(V2の
適正値)に対し±5[V]の範囲内にあるか否かを判定することで適正値となっているか判断される。適正値にある場合にはバイアス制御処理を終了する(S101)。一方、適正値でない場合には、現像バイアスVdを調整することで適正化が図られる。具体的には、V2が適正値よりも大きい場合には現像バイアスVdを下げ、V2が適正値よりも小さい場合には現像バイアスVdを上昇させる。
【0079】
S106にて、現像バイアスVdを変更した場合には、現像ローラー20Yの表面電位である第2電位V2、液体現像剤の表面電位である第1電位V1もその影響を受けることとなる。そのため、本実施形態では、S103以降の処理を繰り返し実行することで、差分(V1−Vd)、V2ともに適正値に保つこととしている。
【0080】
図14、図15は、本発明の実施形態に係るバイアス制御処理の具体例を示したものである。実施例1および実施例2にて説明したように、液体現像剤膜厚5.0μm、トナー濃度25%の場合を例にすると、V1−Vdの好適値は60[V]である。制御前(初期値)の現像バイアスVdを400[V]、トナー帯電器22Yの印加バイアスVwは4.0[kV]である。ここで感光体10Yの帯電電位Vaは550[V]、露光後電位Vbは65[V]であり、現像バイアスVdから計算した現像コントラスト(Vd−Vb)は335[V]、逆コントラスト(Va−Vd)は150[V]となる。
【0081】
液体現像剤を塗布しない領域でかつプリチャージされた現像ローラー20Yの表面電位V2を計測すると425[V]となり、V2の適正値である400[V]よりも25[V]高い値となっている。これはプリチャージによって現像ローラー20Y表面に電荷が堆積したためである。この状態では最適な現像コントラストよりも大きいため、トナーが潜像よりも大きい範囲に現像される過剰現像が発生し、また非画像部コントラストは最適値よりも小さいため、非画像部にも多くトナーが付着しカブリが増加することとなる。
【0082】
したがって図14、図15のように現像バイアスVd’を375[V]に下げるとともに、トナー帯電器22Yの印加バイアスVw’を3.9[kV]に下げることで、V1−Vdの値を適正値範囲内の65[V]に保ったまま現像ローラー20Yの表面電位V2’を400[V]にすることができる。この制御の結果、現像ローラー20Y表面電位基準である実効的な現像コントラストは335[V]、逆コントラストは150[V]となり、現像時の好適範囲に収められる。
【0083】
図16は、本発明の他の実施形態に係る電位検出部の配置を示す図である。図11では、2つの電位検出部231Y、232Yを使用した2センサー方式の電位測定部23Yについて説明したが、電位測定部23Yは1つの電位検出部230Yにて構成することも可能である。この場合、図に示されるように電位検出部230Yは、図11の第1電位検出部232Yと同様、現像ローラー20Yにおいて液体現像剤が塗布される位置の電位を検出できる位置に配設される。
【0084】
このような位置では、液体現像剤を塗布しない部分の電位(第2電位)を測定する処理が必要とされる。したがって、印刷動作開始時、所定印刷時間経過後(例えば1時間)、所定枚数印刷後(例えば1000ページ)に印刷動作を停止して、現像ローラー20Yに液体現像剤を塗布しない期間において、液体現像剤が塗布されていない現像ローラー20Yの表面電位を検出し第2電位V2として出力する。
【0085】
なお、印刷動作中、転写材(用紙)間に対応した位置は現像剤塗布が不要となるため、転写材の間に対応する位置において各種供給ローラー(アニロクスローラー33Y、またはアニロクスローラー33Yおよび中間ローラー32Y)を停止させ、液体現像剤が塗布されていない現像ローラー20Yの表面電位(第2電位)を測定することもできる。
【0086】
なお、本明細書においては、種々の実施の形態について説明したが、それぞれの実施の形態の構成を適宜組み合わせて構成された実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0087】
10Y(以下、符号にYの付されているものは、M、C、K各色についても同様)…感光体(潜像担持体)、11Y…第1コロナ帯電器、11Y’…第2コロナ帯電器、12Y…露光ユニット(露光部)、13Y…第1スクイーズローラー、13Y’…第2スクイーズローラー、14Y…第1スクイーズローラークリーニングブレード、14Y’…第2スクイーズローラークリーニングブレード、18Y…感光体クリーニングブレード、20Y…現像ローラー(現像剤担持体)、21Y…現像ローラークリーニングブレード、22Y…トナー帯電器(帯電器)、23Y…電位測定部、230Y〜232Y…電位検出部、30Y…現像部(現像装置)、31Y…現像剤容器、311Y…現像剤貯留部、312Y…回収液貯留部、313Y…仕切板、32Y…中間ローラー、33Y…アニロクスローラー、34Y…中間ローラークリーニングブレード、35Y…規制部材、36Y…攪拌オーガ、37Y…回収オーガ、40…転写ベルト、41…駆動ローラー、42…テンションローラー、50Y…1次転写部、51Y…1次転写バックアップローラー、60…2次転写ユニット、61…2次転写ローラー、62…2次転写ローラークリーニングブレード、63…2次転写ユニット回収貯留部、71Y…濃度調整タンク、711Y…供給現像剤貯留部
、712Y…タンク蓋、73Y…濃度センサー、732…駆動用超音波振動子、733…検出用超音波振動子、734…支持部材、74Y…液位センサー、721Y〜725Y…移送経路、74Y…液位センサー、75Y…キャリア液タンク、76Y…高濃度現像剤タンク、754Y、755Y…ポンプ、77Y…攪拌部材、771Y…回転翼、772…攪拌軸、773…攪拌駆動部、77…攪拌部材、101、101’…ゲートローラー、102…転写材ガイド、200…中央制御部、201、202…高圧電源、210…濃度センサー制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を担持するとともに現像バイアスが印加される現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する現像剤供給部と、
前記現像剤担持体に現像剤帯電バイアスを印加して液体現像剤を帯電させる帯電部と、
前記現像剤担持体に担持され前記帯電部にて帯電された液体現像剤の電位を測定する電位測定部と、
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量を検出する検出部と、
前記電位測定部で測定された液体現像剤の電位が前記検出部で検出された液体現像剤のトナー量に基づいた電位となるように、前記帯電部で印加する現像剤帯電バイアスを調整する制御部と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量は、前記現像剤供給部から前記現像剤担持体へ供給される液体現像剤の供給量で調整される請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー濃度を調整する現像剤濃度調整部を有し、
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量は、前記現像剤濃度調整部で調整される液体現像剤のトナー濃度により調整される請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記電位測定部は、液体現像剤が担持されていない位置の前記現像剤担持体の電位を測定し、
前記制御部は、前記現像剤担持体の電位に基づいて、前記現像剤担持体に印加する現像バイアスを制御する請求項1から請求項3の何れか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記電位測定部は、前記液体現像剤の電位を測定する第1電位検出部材、及び前記現像剤担持体の電位を測定する第2電位検出部材を有する請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、
トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を担持するとともに現像バイアスが印加される現像剤担持体、前記現像剤担持体に液体現像剤を供給する現像剤供給部、前記現像剤担持体に現像剤帯電バイアスを印加して液体現像剤を帯電させる帯電部、及び前記現像剤担持体に担持され前記帯電部にて帯電された液体現像剤の電位を測定する電位測定部を有し、前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
前記現像剤供給部から前記現像剤担持体に供給される液体現像剤のトナー量を検出する検出部と、
前記電位測定部で測定された液体現像剤の電位が前記検出部で検出された液体現像剤のトナー量に基づいた電位となるように、前記帯電部で印加する現像剤帯電バイアスを調整する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
トナー及びキャリア液を含む液体現像剤を現像剤担持体に供給するとともに液体現像剤のトナー量を検出し、
前記現像剤担持体に供給された液体現像剤を現像剤帯電バイアスで帯電し、
帯電された液体現像剤の電位を測定し、
検出された液体現像剤のトナー量及び測定された液体現像剤の電位に基づいて前記現像剤帯電バイアスを調整することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−103639(P2012−103639A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254448(P2010−254448)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】