説明

現像装置とプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】規制部材への1成分現像剤の融着及び帯電不良トナーの規制部材からの擦り抜けを防止して、装置長寿命化とともに、帯電不良な1成分現像剤による地汚れを抑制して良好な画像を得られる現像装置を提供する。
【解決手段】互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備え、表面に担持された一成分現像剤を現像領域へ搬送する現像剤担持体と、複数の電極に対して互いに異なる電圧を給電電圧供給手段と、現像剤担持体の表面と対向配置され、同表面に担持された一成分現像剤の層厚さを規制する規制部材と、現像剤担持体の表面に担持された一成分現像剤の帯電に起因する変動要素となる温度または湿度の少なくとも一方を検知する変動要素検知手段と、変動要素検知手段の検知情報に基づき、前記現像剤担持体に対する前記規制部材の位置を変位させる調整手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機やそれら複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置で用いられる現像装置とプロセスカートリッジ及びこれらを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像装置は、現像剤担持体と規制部材を備え、現像剤担持体を像担持体と対向配置し、対向部に形成される現像領域に、装置内の現像剤を現像剤担持体の表面に担持させて搬送し、その搬送途中で、現像剤担持体の表面の近傍に配置した規制部材で現像剤の厚さを規制して薄層化を図っている。
現像剤担持体上に担持される現像剤には、トナーとキャリアを有する2成分現像剤と、キャリアを持たない1成分現像剤があるが、近年、1成分現像剤(トナー)を用いる現像装置として、1成分現像剤を感光体等の像担持体に直接接触させないで、1成分現像剤を像担持体上の潜像に供給して現像を行う現像装置がある。この現像装置では、現像剤担持体上の一成分現像剤をクラウド化させることによって1成分現像剤を像担持体上に供給する方式を採用している。クラウド方式に使用される現像剤担持体は、表面に沿って複数の電極が所定のピッチで配置され、その複数の電極の表面側を保護層で覆ったものである。そしてこの複数の電極に対し、時間的に変化する互いに異なる電圧をそれぞれ印加して、時間的に変化する電界を互いに近接する複数の電極間に形成すると、この電界により現像剤担持体上のトナーを互いに近接する複数の電極間で飛翔させることができる(このようにトナーが飛翔する現象を、以下「フレア」と呼ぶ。)。これにより、現像剤担持体の表面近傍の空間でトナーをクラウド化させている。このようなクラウド方式の現像装置としては、特許文献1が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クラウド式の現像装置においても、他の方式の現像装置と同様に、現像剤担持体上の近傍に規制部材を配置して1成分現像剤の層厚を規制して薄層化しているが、1成分現像剤の粒子は現像剤担持体の表面を跳びはねるように移動するため、大部分の時間は現像剤担持体の表面とは非接触となる。このため1成分現像剤の粒子と現像剤担持体表面とが静電的に付着する力は弱く、現像剤担持に対する規制部材の当接圧が小さくても層厚を規制することができるためトナーに対するストレスを少ないという利点がある。
しかし、1成分現像剤の粒子と現像剤担持体表面との静電的付着力が弱いため、静電的付着力の変化の影響を受け易い。たとえば、温度や湿度等の環境条件が変化した場合、トナーの帯電量もそれに応じて変化する。すなわち、低温低湿環境では帯電量は高く、高温高湿環境では帯電量は低くなってしまう。この1成分現像剤の帯電量の変化は、1成分現像剤と現像剤担持体表面との静電的な付着力を変えてしまう。
【0004】
このため、低温低湿環境では付着力が高いため、規制部材による当接圧を高くしなければ1成分現像剤が規制部材を擦り抜けてしまい層厚を適正な量に規制できない傾向にあるが、当接圧を大きくすると1成分現像剤にストレスを掛け、高温高湿環境時に1成分現像剤が溶融し、規制部材の表面に固着する場合がある。
特に電界によりクラウドを形成するクラウド式の現像装置では、現像剤担持体表面に電界を発生させるために、電極層上にはごく薄い絶縁層しか形成することができない。そのため現像剤担持体表面は弾性が少なく、1成分現像剤にストレスを与え易い。1成分現像剤が固着しないような材料を規制部材にコーティングする事も考えられるが、この方式だと規制部材の表層の厚さが増し電界形成に影響を与えてしまう。
また、局所的に1成分現像剤が規制部材に融着すると規制量が不均一になるため、現像剤担持体上にスジ状のコートムラの発生や、規制部材による1成分現像剤への本来の電荷付与が阻害されるため、トナー帯電量が不安定になり、さまざまな画像劣化の発生要因になってしまう。
【0005】
本発明は、規制部材への1成分現像剤の融着及び帯電不良トナーの規制部材からの擦り抜けを防止して、装置長寿命化とともに、帯電不良な1成分現像剤による地汚れを抑制して良好な画像を得られる現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備え、表面に担持された一成分現像剤を現像領域へ搬送する現像剤担持体と、複数の電極に対して互いに異なる電圧を給電電圧供給手段と、現像剤担持体の表面と対向配置され、同表面に担持された一成分現像剤の層厚さを規制する規制部材と、現像剤担持体の表面に担持された一成分現像剤の帯電に起因する変動要素となる温度または湿度の少なくとも一方を検知する変動要素検知手段と、変動要素検知手段の検知情報に基づき、現像剤担持体に対する規制部材の位置を変位させる調整手段を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一成分現像剤の帯電状態に応じて現像剤担持体に対する規制部材の位置を調整するので、帯電状態に影響のある温度や湿度の環境変化等により現像剤の帯電状態が変化しても規制部材への現像剤の融着及び帯電不良な現像剤の規制部材からの擦り抜けを防止でき、一成分現像剤の層厚の均一化を図りやすくなり現像装置の長寿命化を図りながら、現像剤担持体上の帯電不良な1成分現像剤による地汚れを抑制して良好な画像を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に第1の実施形態に係る現像装置の構成を示す拡大図。
【図2】現像装置が備える規制部材と調整手段の構成を示す拡大図。
【図3】本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の一形態を示す概略構成図。
【図4】画像形成装置本体に対する現像装置の着脱動作を説明する図。
【図5】現像装置が備える現像剤担持体の電極の配列を示す断面図。
【図6】現像剤担持体の代表例を示す斜視図。
【図7】現像剤担持体の内部構造を示す概略図。
【図8】現像剤担持体の電極配置を説明するために現像剤担持体を回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図。
【図9】現像剤担持体の電極に印加する電圧波形の一形態を示すグラフ。
【図10】本発明に第2の実施形態に係る現像装置の構成を示す拡大図。
【図11】本発明に第3の実施形態に係る現像装置の構成を示す拡大図。
【図12】本発明に係る現像装置を備えたプロセスカートリッジを装着した画像形成装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。最初に画像形成装置の全体構成と動作を説明し、そのあとに現像装置とその周辺の構成について説明する。各実施の形態において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すに留め、先の説明との重複説明は省略する。
【0010】
図3に示すように、画像形成装置100は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロ(B、M、C、Y)の4色の現像剤を用いてフルカラー画像を可能なプリンタである。画像形成装置本体101内には、転写装置1と、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロ(B、M、C、Y)に対応した、書込装置7K、7M、7C、7Y、帯電部材12K、12M、12C、12Y、現像装置13K、13M、13C、13Yと、給紙装置8及び定着装置14が配置されている。
【0011】
転写装置1は、負帯電の有機感光体を無端ベルト形状に構成した像担持体5と、像担持体5が巻き掛けられた複数のローラ部材2,3,4と、ローラ部材4と対向配置された最終転写部材としての転写ローラ6と、転写部材11K、11M、11C、11Yを備えている。像担持体5は、ローラ部材2が図示しない駆動手段によって回転駆動されることで、図中反時計回り方向に回転移動するように構成されている。ローラ状の転写部材11K、11M、11C、11Yは、像担持体5の内側ループ内で、現像装置13K、13M、13C、13Yの現像剤担持体130K、130M、130C、130Yと対向するように配置されている。転写部材11K、11M、11C、11Yは、少なくとも芯金と芯金を被覆する導電性弾性層を有し、導電性弾性層はポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を106〜1010Ω・cmの中抵抗に調整した弾性体の転写ローラとして形成されている。
【0012】
これら複数のローラ部材2,3,4と転写ローラ6と転写部材11K、11M、11C、11Yは、転写装置1の図示しない基板にそれぞれ装着されていて、1つのユニットとされている。
【0013】
転写装置1と対向する画像形成装置本体101の側面102の一部は、開放可能に構成されている。転写装置1は、ここでは、ローラ部材2の軸2aを中心に、図3に示す収納位置と、側面102の一部を開放した状態において図4に示す離脱位置とに開閉自在に構成されている。
【0014】
帯電部材12K、12M、12C、12Yは、現像装置13K、13M、13C、13Yよりも、像担持体5の移動方向の上流側に配置され、像担持体5の表面を一様帯電させるためのものである。本実施形態において、帯電部材12K、12M、12Cは、非接触のコロナ帯電を行うものを採用しているため、上流側の現像装置によって形成されたトナー像を乱すことなく像担持体5を帯電させることができるので好ましい。
【0015】
書込装置7K、7M、7C、7Yは、帯電部材12K、12M、12C、12Yによる帯電後の像担持体5に、画像情報に応じてそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエロ色に対応した潜像を書き込む光ビームLK、LM、LC、LYを照射する装置である。ポリゴンを用いた光走査装置やLEDアレイ等、種々のものを使用することができる。
【0016】
現像装置13K、13M、13C、13Yは、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロ(B、M、C、Y)の一成分の現像剤となる非磁性トナーから成るトナーTB、TM、TC、TYをそれぞれ備えていて、各色のトナーを現像剤担持体130Y、130C、130C、130Kを用いて、像担持体5との対向部となる現像領域G1に搬送して像担持体5上の潜像を現像し、各色のトナー像を像担持体5上に形成するものである。これら現像装置13K、13M、13C、13Yは、画像形成装置本体101に着脱自在に装着されていて、転写装置1を図4に示す離脱位置へと移動することで、画像形成装置本体101からユーザーによる交換が可能とされている。
【0017】
給紙装置8は、画像形成装置本体101の下部に配置され、記録用紙等の転写材Pを格納し、転写ローラ6と像担持体5の間に形成される転写部N1に向かって転写材Pを搬送する周知のものである。転写部N1には、像担持体5上に転写されたトナー像を転写材Pに転写する転写バイアスが図示しない電源から供給されていて、この転写バイアスの作用によって像担持体5側から転写材Pにトナー像が転写される。
【0018】
定着装置14は、転写部N1を通過してトナー像が転写された転写材Pに対し、熱と圧力を搬送しながら付与することでトナー像を転写材Pに定着する周知のものである。
【0019】
このような構成の画像形成装置では、例えばカラー画像形成時に、帯電部材12K、12M、12C、12Yによって像担持体5を一様に帯電する。すでに像担持体5上にトナー像が形成されている場合でも、トナー像を含め像担持体5の表面を一様帯電する。次いで書込装置7K、7M、7C、7Yから画像情報に応じた光ビームLK、LM、LC、LYを照射する。各光ビームは帯電装置12K、12M、12C、12Yと現像装置13K、13M、13C、13Yの間を通過するため、一様帯電されている像担持体5に対して光ビームが照射されることとなり、負帯電性の感光体である像担持体5の表面では画像部に対応する領域が除電されて各色に応じた潜像が形成される。
【0020】
現像装置13K、13M、13C、13Yは、現像剤担持体130Y、130C、130C、130Kが回転することで像担持体5上に形成された潜像の画像部に各トナーを付着させ、潜像をトナー像として可視化する。以上の帯電、光ビームLK、LM、LC、LYが照射、現像の工程が前述のように各現像装置との対向部において繰り返され、像担持体5上に4色のトナー像が重ねられたフルカラー画像が形成される。
【0021】
なお本実施形態の画像形成装置1では、像担持体5の表面の転写残トナーを回収するためのクリーニング部材は設けていない。転写残トナーは像担持体5の表面に残留したままとなるが、4つの帯電装置12K、12M、12C、12Yによって帯電され、やがて転写材Pに転写されて像担持体5から除去される。転写残トナーが転写材Pに転写されると多少の画像の乱れが生じるが、わずかの乱れであれば視覚的に認識されない。このような背景からクリーニング部材を設けていないが、ブレードやローラ状のクリーニング部材を配置して像担持体5をクリーニングするようにしてもよい。
【0022】
フルカラー画像されたトナー像は、像担持体5の移動にともない転写部N1へと搬送され、給紙装置8から給紙された転写材Pに、転写部N1で転写バイアスを付与されることで転写される。トナー像が転写された転写材Pは、定着装置14へと搬送され、熱と圧力を付与されることで転写材P上に定着される
次に、各現像装置の構成について説明するが、各現像装置はトナーの色が異なる以外は同一構成であるので、ここでは1つの現像装置を代表して説明する。また、説明の煩雑化のため、色を識別するための符号であるK、M、C、Yは省略する。
【0023】
現像装置13は、電界によりクラウドを形成する所謂クラウド式のものである。現像装置13は、その容器131の内部に、粉体であるトナーTが収納されている。容器131には、トナーTを搬送、現像、回収するローラ状の現像剤担持体130と、現像剤担持体130と対向配置され、現像剤担持体130との間で摩擦帯電を行い現像剤担持体130にトナーTを供給する供給部材となる供給ローラ132と、現像剤担持体130の表面130aと対向配置され、同表面130aに担持されたトナーTの層厚を規制する規制部材133と、パドル部材134が設けられている。
【0024】
現像剤担持体130は、容器131に回転自在に支持されていて、図示しない駆動源から駆動力が伝達されることで図中時計回り方向に回転駆動する。現像剤担持体130は、画像形成時には、像担持体5に対して50〜1000μm、好ましくは150〜400μmの間隙をあけて非接触状態で対向するように配置されている。現像剤担持体130の構成について図5を参照して詳細に説明する。図5は現像剤担持体130の像担持体5側の表面を展開して拡大した断面図である。現像剤担持体130は、支持基材1301上に複数の電極1302A、1302BがトナーTの移動方向(周方向)に沿って交互に所要の間隔で配置されていて、電極1302A、1302Bの上に、搬送面を形成する絶縁性の搬送面形成部材であり、電極1302A、1302Bの表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料で形成した表面保護層1303を積層したものである。
【0025】
本実施形態における支持基材1301としては、ガラス基材、樹脂基材或いはセラミックス基材等の絶縁性材料からなる基材、或いは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基材などを用いることができる。
【0026】
電極1302A、1302Bは、支持基材1301上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μm厚、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これを、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これら、複数の電極1302A、1302Bの幅RはトナーTの平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0027】
表面保護層1303としては、例えばSiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。
【0028】
現像剤担持体130は、図6,図7に示すように、2相の電極1302A、1302Bが形成された筒状の支持基材1301の両端から、電極1302Aと電極1302Bにそれぞれ電力を供給する電極軸1304Aと電極軸1304Bを同軸線上に位置するように圧入して一体化されていて、電極軸1304Aと電極軸1304Bを回転軸として回転するように構成されている。また、それぞれの電極1302A、電極1302Bには、電極軸1304A、1304B、図示しない電極ブラシなどを介して、図8に示すように、互いに異なる電圧が給電電圧供給手段25A、25Bからそれぞれ供給される。給電電圧供給手段25Bには、電量計測装置28が接続されている。
【0029】
図8は、現像剤担持体130の回転軸に平行な方向から見た図を示す。図8において、一方の相の電極1302Aは左側から、他方の相の電極1302Bは右側から軸線方向に延びていて、電極1302Aと電極1302Bとが互いに櫛歯状の電極構成として形成されている。現像剤担持体130の両端部は、各電極1302Aと各電極1302Bと接続するベタ電極部として構成されていて、この部分から配線している。ベタ電極部は、電極軸1304Aと電極軸1304Bに形成した環状の鍔部1304A1、1304B1と接続し、電極1302Aと電極1302Bにそれぞれ電圧を給電電圧供給手段25A、25Bから供給する。
【0030】
電極1302Aと電極1302Bは、交互に配置されていることから、電極1302A側をa相、電極1302Bをb相としたとき、電極1302Aと電極1302Bに印加する各電圧は図9に示すように矩形波であり、電極1302Aと電極1302Bにそれぞれ印加される電圧と電圧は、互いに位相がπだけずれた同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。よって、電極1302Aと電極1302Bとの間には、常にVppだけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界に応じてトナーTが電極間をホッピングし、現像剤担持体130が回転することで移動する。
【0031】
図9では、電極1302Aと電極1302Bに印加する電圧を矩形波としているが、矩形波の場合、電圧の切り替わりが瞬時に起き、トナーTのホッピングには適している。もっとも印加する電圧の波形としては、矩形波に限定するものではなく、サイン波でも三角波でもよい。つまり、現像剤担持体130は互いに異なる電圧が印加される複数の電極1302A、1302Bを備え、表面130aに担持された一成分現像剤となるトナーTを現像領域G1へ搬送するものである。
【0032】
図1に示すように、供給ローラ132には、容器131に回転自在に支持されていて、供給バイアス電源25Cにより、供給バイアスが印加されている。この供給バイアスは、現像剤担持体130側にトナーTを移動させる電界が形成できるようなものであれば、直流電圧でもよいし、かかる直流電圧に交流電圧を重畳したものでもよい。
【0033】
供給ローラ132と現像剤担持体130との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーTは供給ローラ132から解離し、現像剤担持体130の表面に移動する。
【0034】
トナーTの搬送方向における現像領域G1の上流側部分には、トナー薄層を形成するために規制部材133が設置されている。この規制部材133は、ブレードやローラなどでトナーに当接させ、そのときに現像剤担持体130や規制部材133とトナーTとの摩擦によってトナーTを帯電させる。
【0035】
容器131に回転自在に支持されたパドル部材134は、図示しない駆動源から駆動力が伝達されることで、容器131内トナーTを攪拌しながら供給ローラ132へ汲み上げるように構成されている。
(第1の実施形態)
図1、図2に示すように、現像装置130は、現像剤担持体130の表面130aに担持されたトナーTの帯電に起因する変動要素となる温度または湿度の少なくとも一方を検知する温度センサや湿度センサからなる変動要素検知手段201と、変動要素検知手段201の検知情報に基づき、現像剤担持体130に対する規制部材133の位置を変位させる調整手段30と、調整手段30の動作を制御する制御手段202を有している。
【0036】
図2に示すように、薄い金属の板状部材で構成された規制部材133は、その基端133bが調整手段30に固定され、中央部から先端130aに掛けて現像剤担持体130の表面130aに対して接触するように配置されている。規制部材133は、図2に矢印Aで示す現像剤担持体130の表面130aに接離する方向に移動自在に設けられている。規制部材133はステンレス、りん青銅、ニッケルなど金属等の導電材料で構成されている。規制部材133を導電性にすることで、現像剤担持体130の表面130aと対向する規制部N2で現像剤担持体130に発生している電界を抑制することができるので、好ましい。
【0037】
調整手段30は、変動要素検知手段201の検知情報(温度や湿度の情報)に基づき規制部材133を接離する方向Aに変位させる機能を備えている。すなわち、調整手段30は、導電性ホルダー31、圧電アクチュエーター32、絶縁用セパレーター33及び圧電アクチュエーター82の駆動電圧印加用電極部84を備えている。本形態では絶縁用セパレーター33に規制部材133の基端133bを固定している。圧電アクチュエーター82は、導電性ホルダー31に固定された駆動電圧印加用電極部84と絶縁用セパレーター33との間に介装されていて、制御手段202からの駆動信号に応じて電圧が印加されると、その量に応じて接離する方向Aに作動する。
【0038】
この現像装置13は、現像剤担持体130の表面130aにトナーTの薄層を保持し、直流電源により所定の現像バイアスを印加した状態で現像剤担持体130上のトナーTを像担持体5上の静電潜像に接触させてこの静電潜像を現像するものである。
【0039】
制御手段202は変動要素検知手段201で検知した温度、湿度など環境に起因する変動要素から現像剤担持体130上のトナーTの帯電状態を推測し、当該帯電状態が最適になるように現像剤担持体13に対する規制部材133の位置を制御する。制御手段202は周知のコンピュータで構成されていて、図示しないメモリー内に変動要素検知手段201の検知情報(温度や湿度の情報)に応じて圧電アクチュエーター82への駆動電圧が予めデータテーブルとして設定されている。
【0040】
本形態では、低温低湿環境ではトナーTと現像剤担持体130との付着力が高いため、規制部材133による当接圧を高くように駆動電圧が高く設定されていて、高温高湿環境ではトナーTと現像剤担持体130との付着力が弱くなるため、規制部材133による当接圧を低くように駆動電圧が低く設定されている。つまり、低温低湿環境では規制部材133を現像剤担持体130の表面130aから離れる方向に移動し、高温高湿環境では規制部材133を現像剤担持体130の表面130aに近づける方向に移動する。
【0041】
このような構成によると、変動要素検知手段201で検知した温度や湿度の情報が低温低湿の場合、規制部材133による当接圧を高めるべく、調整手段30は規制部材133を現像剤担持体130の表面130a側に近づける方向に移動する。このため、トナーTと現像剤担持体130との付着力が高い場合でも、規制部材133による当接圧を高めているので、トナーTが規制部N2を擦り抜けてしまうことを抑制することができる。このためトナー層厚を適正に規制することができ、現像剤担持体130の表面130a上のトナー量が均一化されるので、画像濃度ムラを軽減することができる。
【0042】
変動要素検知手段201で検知した温度や湿度の情報が高温高湿の場合、規制部材133による当接圧を弱めるべく、調整手段30は規制部材133を現像剤担持体130の表面130aから離間する方向に移動する。このため、トナーTと現像剤担持体130との付着力が弱い場合には、規制部材133による当接圧が低くなるので、トナーTに対するストレスが低減し、トナーTが溶融して規制部材133の表面に固着することを抑制することができる。このため、トナー層厚を適正に規制することができ、現像剤担持体130の表面130a上のトナー量が均一化されるため、画像濃度ムラを軽減することができるとともに、現像装置の長寿命化を図ることができる。また溶融したトナーによる固着が発生しないので、現像剤担持体130上にスジ状のコートムラの発生や、規制部材133によるトナーTへの本来の電荷付与が阻害されることがなく、トナーTの帯電量が安定し、画像劣化を抑えて良好な画像を得ることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、規制部材133を現像剤担持体130の表面130aに対して接離する方向Aに移動自在に設け、調整手段30で現像剤担持体130の表面130aに対して規制部材133を接離する方向Aに変位させていたが、図10に示す本形態では、規制部材133を現像剤担持体130との接線方向Bに移動自在とし、変動要素検知手段201の検知情報(温度や湿度の情報)に基づき、規制部材133を接線方向に変位させる調整手段30Aを備えている。
【0043】
本形態において、規制部材133の基端133bは略90度折り曲げられていて、その中央部から先端133aにかけて現像剤担持体130の表面130aに接触するように配置されている。調整手段30Aは基本的には調整手段30と同一構成で有り、略90度折り曲げられた規制部材133の基端133bを絶縁用セパレーター33に固定している。本形態において、調整手段30Aは圧電アクチュエーター82が接線方向Bに変位するように配置されていて、制御手段202Aによってその位置が制御される。
【0044】
制御手段202Aは、変動要素検知手段201で検知した温度、湿度など環境に起因する変動要素から現像剤担持体130上のトナーTの帯電状態を推測し、当該帯電状態が最適になるように現像剤担持体13に対する規制部材133の位置を制御する。制御手段202Aは周知のコンピュータで構成されていて、図示しないメモリー内に変動要素検知手段201の検知情報(温度や湿度の情報)に応じて圧電アクチュエーター82への駆動電圧が予めデータテーブルとして設定されている。
【0045】
本形態では、低温低湿環境ではトナーTと現像剤担持体130との付着力が高いので、規制部N2に対する現像剤の取込量を多くすべく、現像剤担持体130の表面130aと規制部材133との当接部位から先端133aまでの突出量Cが増大するように駆動電圧が高く設定されていて、高温高湿環境ではトナーTと現像剤担持体130との付着力が弱く、規制部N2に対するトナーTの取込量を少なくすべく、突出量Cが減少するように駆動電圧が低く設定されている。つまり、規制部材133は、低温低湿環境では突出量Cが増大する方向に移動し、高温高湿環境では突出量Cが減少する方向に移動する。
【0046】
このような構成によると、変動要素検知手段201で検知した温度や湿度の情報が低温低湿の場合、制御手段202Aは、規制部材133の突出量Cが増大する方向に調整手段30Aの動作を制御するので、規制部N2に対するトナーTの取込量が増大する。このため、トナーTと現像剤担持体130との付着力が高い場合でも、取込量が増大することにより現像剤担持体130に対する規制部材133の接触圧が高められるので、トナーTが規制部N2を擦り抜けてしまうことを抑制することができる。このため、トナー層厚を適正に規制することができ、現像剤担持体130の表面130a上のトナー量が均一化されるので、画像濃度ムラを軽減することができる。
【0047】
変動要素検知手段201で検知した温度や湿度の情報が高温高湿の場合、制御手段202Aは、規制部材133の突出量Cが減少する方向に調整手段30Aの動作を制御するので、規制部N2に対するトナーTの取込量が減少する。このため、トナーTと現像剤担持体130との付着力が弱い場合には、取込量の減少により現像剤担持体130に対する規制部材133の接触圧が低められるので、トナーTに対するストレスが低減して、トナーTが溶融して規制部材133の表面に固着することを抑制することができる。このため、層厚を適正に規制することができ、現像剤担持体130の表面130a上のトナー量が均一化されるので、画像濃度ムラを軽減することができるとともに、現像装置130の長寿命化を図ることができる。また、溶融したトナーTの固着が発生しないので、現像剤担持体130上にスジ状のコートムラの発生や、規制部材133によるトナーTへの本来の電荷付与が阻害されることがなく、トナーTの帯電量が安定し、画像劣化を抑えて良好な画像を得ることができる。
(第3の実施形態)
図11に示すように、第3の実施形態は、第1の実施形態の構成に、規制部材133に正規帯電のトナーTと同極性のバイアスを印加するバイアス印加手段25Dを追加したものである。無論、第2の実施形態の構成にバイアス印加手段25Dを追加した構成であっても良い。
【0048】
容器131内のトナーTを現像剤担持体130に供給する供給ローラ132と現像剤担持体130の対向部は供給部N3を構成するが、この供給部N3において摩擦帯電により正常に帯電されなかった弱帯電や無帯電のトナーTは、正常に帯電されたトナーTよりも現像剤担持体130に対する静電的付着力が小さく、層厚の均一化を乱す要因となる。
【0049】
このため、本形態では、バイアス印加手段25Dを用いて規制部材133に正常帯電のトナーTと同極性(逆帯電トナーとは逆極性)のバイアスを印加している。本実施形態の場合、規制部材133には、0Vから−300Vの範囲でバイアスを印加する。
【0050】
このような構成によると、供給部N3において摩擦帯電により正常帯電されず逆極性に帯電されたトナーTは、バイアスを印加した規制部材133に静電的に吸着され現像剤担持体130の表面130aから分離され、正常に帯電されたトナーTは静電的に反発するので規制部材133と表面130aとの間の規制部N2を通過する。このため、現像剤担持体130から静電的に逆極性のトナーTを分離除去することができるので、トナー層厚を適正に規制することができ、現像剤担持体130の表面130a上のトナー量が均一化されるため、より画像濃度ムラを軽減して良好な画像を得られる。
【0051】
上記各形態では、現像装置13K、13M、13C、13Yと像担持体5及び各帯電部材をそれぞれ個別な構成として配置したが、図12に示す画像形成装置100Aでは、これらを1つのユニットとしてプロセスカートリッジ50K、50M、50C、50Yを構成したものである。
【0052】
プロセスカートリッジ50K、50M、50C、50Yは、帯電部材12K、12M、12C、12Yと、現像装置13K、13M、13C、13Yと、像担持体となるドラム状の感光体51K、51M、51C、51Yと、クリーニング部材52K、52M、52C、52Yとが1つのユニット化されたものである。
【0053】
この画像形成装置100Aは、中間転写ユニット60を備えている。中間転写ユニット60は複数のローラ部材62,63,64に、感光体51K、51M、51C、51Y上に現像装置13K、13M、13C、13Yによって現像されたトナー像を転写する中間転写ベルト65が巻き掛けられている。中間転写ベルト65の内側ループ内には転写部材11K、11M、11C、11Yが感光体51K、51M、51C、51Yとそれぞれ対向して配置されている。中間転写ユニット60は、これら複数のローラ部材62,63,64と転写ローラ6と転写部材11K、11M、11C、11Yが、中間転写ユニット60の図示しない基板にそれぞれ装着されていて、1つのユニットとされている。
【0054】
中間転写ユニット60と対向する画像形成装置本体101Aの側面102の一部は、開放可能に構成されている。中間転写ユニット60は、ここでは、ローラ部材62の軸62aを中心に、図12に実線で示す収納位置から側面102の一部を開放した状態において2点鎖線で示す離脱位置へと開閉自在に構成されている。
【0055】
プロセスカートリッジ50K、50M、50C、50Yは、画像形成装置本体101Aに着脱自在に装着されていて、中間転写ユニット60を離脱位置へと移動することで、画像形成装置本体101Aからユーザーによる交換が可能とされている。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用できる画像形成装置としては、クラウド式の現像装置13K、13M、13C、13Y、あるいはクラウド式の現像装置13K、13M、13C、13Yと少なくとも像担持体とを1つのユニットとしたプロセスカートリッジ50K、50M、50C、50Yを備えた画像形成装置であればよく、カラー画像形成装置だけでなく、モノクロ画像形成装置にもの適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
13K、13M、13C、13Y 現像装置
25A、25B 給電電圧供給手段
25D バイアス印加手段
30、30A 調整手段
50K、50M、50C、50Y プロセスカートリッジ
51K、51M、51C、51Y 像担持体
100、100A 画像形成装置
130 現像剤担持体
130a 表面
133 規制部材
201 変動要素検知手段
1302A、1302B 複数の電極
A 接離する方向
B 接線方向
G1 現像領域
P 記録材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2010−164932号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備え、表面に担持された一成分現像剤を現像領域へ搬送する現像剤担持体と、前記複数の電極に対して互いに異なる電圧を給電電圧供給手段と、前記現像剤担持体の表面と対向配置され、同表面に担持された一成分現像剤の層厚さを規制する規制部材とを備えた現像装置において、
前記現像剤担持体の表面に担持された一成分現像剤の帯電に起因する変動要素となる温度または湿度の少なくとも一方を検知する変動要素検知手段と、
前記変動要素検知手段の検知情報に基づき、前記現像剤担持体に対する前記規制部材の位置を変位させる調整手段を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、
前記規制部材は、前記現像剤担持体の表面に対して接離する方向に移動自在であって、
前記調整手段は、前記変動要素検知手段の検知情報に基づき前記規制部材を接離する方向に変位させることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の現像装置において、
前記規制部材は、前記現像剤担持体との接線方向に移動に移動自在であって、
前記調整手段は、前記変動要素検知手段の検知情報に基づき、前記規制部材を接線方向に変位させることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の現像装置において、
前記規制部材に正規帯電の一成分現像剤と同極性のバイアスを印加するバイアス印加手段を有することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
少なくとも像担持体と、該像担持体上に形成される潜像を一成分現像剤で現像する現像装置を1つのユニットとして構成したプロセスカートリッジにおいて、
上記現像装置として、請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像担持体上に形成された潜像に対して現像装置により一成分現像剤を供給することにより該潜像を現像して得られる画像を記録材上に転写して、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
前記現像装置として、請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
少なくとも像担持体と、該像担持体上に形成される潜像を一成分現像剤で現像する現像装置とを1つのユニットとして構成したプロセスカートリッジを備え、前記現像装置により一成分現像剤を供給することにより該潜像を現像して得られる画像を、記録材上に転写して該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジとして、請求項5記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−92577(P2013−92577A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233201(P2011−233201)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】