説明

現像装置及びこれを用いた画像形成装置、トナー保持体

【課題】現像時のトナー保持体のトナー保持面に対するトナーの付着力を低減しながら現像効率を向上させる。
【解決手段】静電潜像が保持された像保持体1に対向して設けられ、回転可能な支持体3、および、この支持体の3表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体4を有し、表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体2と、このトナー保持体2の表面部を面方向に沿って振動させる振動付与手段5と、を備え、振動付与手段5は、弾性体4の表面部に設けられ且つトナー保持体2のトナー保持面に対して面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体6と、少なくとも像保持体1上の静電潜像が現像に供される現像領域DRに対応した部位にて振動体6が振動するように振動体6に対し振動力を供給する振動力供給手段7と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びこれを用いた画像形成装置、トナー保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、進行波電界を使用する現像装置において、トナーを進行波電界によって保持して搬送するベルト部材の現像領域より上流側において、ベルト部材の裏面に接触する振動ローラを設け、この振動ローラと、振動ローラから離間して配置された電極部材との間に振動電界を作用させることで、振動ローラを振動させ、ベルト部材をその厚み方向に振動させる構成が記載されている。
また、特許文献2には、トナー担持体にその回転軸方向に沿った複数の線状電極を設け、現像領域に位置する二つの線状電極及びトナー担持体に所定の電圧を印加することで、現像領域にあるトナー担持体上からトナーをクラウド化させる構成が記載されている。
更に、特許文献3には、現像スリーブ内部に圧電フィルムを対向する位置二箇所に帖着し、圧電フィルムを振動させることで現像スリーブを径方向(断面方向)に変形させる構成が記載されている。
更にまた、特許文献4には、現像剤担持体に振動部材を設け、現像剤担持体の回転方向、接触面の接線方向、回転軸方向などに微小振動を与えることが記載されている。
そして、特許文献5には、現像ローラ上のトナーを均一化するために、現像ロールを軸方向に振動させる機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−128021号公報(発明を実施するための最良の形態、図2)
【特許文献2】特開平7−209982号公報(実施例、図2)
【特許文献3】特開平9−114236号公報(発明の実施の形態、図3)
【特許文献4】特開平6−266214号公報(実施例、図1)
【特許文献5】特開平6−161227号公報(実施例、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、現像時のトナー保持体のトナー保持面に対するトナーの付着力を低減しながら現像効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、静電潜像が保持された像保持体に対向して設けられ、回転可能な支持体、および、この支持体の表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体を有し、表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体と、このトナー保持体の表面部を面方向に沿って振動させる振動付与手段と、を備え、前記振動付与手段は、前記弾性体の表面部に設けられ且つ前記トナー保持体のトナー保持面に対して面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体と、少なくとも前記像保持体上の静電潜像が現像に供される現像領域に対応した部位にて前記振動体が振動するように当該振動体に対し振動力を供給する振動力供給手段と、を具備することを特徴とする現像装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る現像装置において、前記振動力供給手段は、前記振動体が前記トナー保持体の回転軸方向に沿う面方向に振動するように前記振動体に対し振動力を供給することを特徴とする現像装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置のうち前記支持体がロール状部材である態様において、前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、前記支持体の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイルを含み、前記トナー保持体の少なくともトナー保持面に対して前記コイルを埋設したものであり、前記振動力供給手段は、前記支持体のうち少なくとも前記コイルが巻かれた部位に対応して設けられ且つ前記支持体の回転軸方向に沿う磁場を発生させる磁場発生源と、前記コイルに予め決められた周期で極性が変化する電流を供給する電流供給源と、を備えることを特徴とする現像装置である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、前記コイルは、前記トナー保持体の回転軸方向における現像可能な現像可能領域に対応する部位に亘って設けられることを特徴とする現像装置である。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る現像装置において、前記コイルは、前記トナー保持体の回転軸方向における一部に設けられることを特徴とする現像装置である。
請求項6に係る発明は、請求項3乃至5のいずれかに係る現像装置において、前記磁場発生源は、前記支持体として磁場を発生する磁石部材を用いたことを特徴とする現像装置である。
請求項7に係る発明は、請求項3乃至5のいずれかに係る現像装置において、前記磁場発生源は、前記支持体を磁場の発生が可能な磁性材料で構成すると共に、当該支持体の外部に支持体を磁化することで前記支持体に磁場を発生させる磁石部材を備えることを特徴とする現像装置である。
請求項8に係る発明は、請求項1又は2に係る現像装置において、前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層に圧電材料が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層の前記圧電材料はトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が当該面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、前記振動力供給手段は、前記像保持体と前記トナー保持体との間に極性が周期的に変化する振動電界を供給する振動電界供給源を備えることを特徴とする現像装置である。
請求項9に係る発明は、請求項8に係る現像装置において、前記圧電材料は、針状粒子であることを特徴とする現像装置である。
【0007】
請求項10に係る発明は、静電潜像を保持して回転する像保持体と、この像保持体に対し離間して配置され且つ当該像保持体上の静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至9のいずれかに係る現像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項11に係る発明は、表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体であって、回転可能な支持体と、この支持体の表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体と、この弾性体の表面部に設けられ且つ外部から供給される振動力によってトナー保持面に対し面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体と、を備えることを特徴とするトナー保持体である。
請求項12に係る発明は、請求項11に係るトナー保持体において、前記支持体は、回転軸方向に沿った磁場が発生する磁石部材又は外部の磁石部材によって回転軸方向に沿った磁場が発生可能な磁性部材を含むロール状部材であり、前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、予め決められた周期で極性が変化する電流が流されるように、前記支持体の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイルを有し、当該コイルを少なくともトナー保持面に対して埋設したことを特徴とするトナー保持体である。
請求項13に係る発明は、請求項11に係るトナー保持体において、前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層に圧電材料が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層は圧電材料がトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が前記面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、トナー保持面の法線方向に対して極性が周期的に変化する振動電界を作用させることで、前記圧電材料がトナー保持面の面方向に沿って振動することを特徴とするトナー保持体である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、現像時のトナー保持体のトナー保持面に対するトナーの付着力を低減しながら現像効率を向上できる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、現像される画像に対する振動の影響をより小さく抑えることができる。
請求項3に係る発明によれば、トナー保持面がトナー保持体の回転軸方向に振動する構成を容易に実現できる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、トナー保持面の性状を均一化しつつ一様な振動も行わせ易くなる。
請求項5に係る発明によれば、コイルをトナー保持体の現像可能領域に対応する部位に亘って設ける場合に比べて、使用電力を低減させることができる。
請求項6に係る発明によれば、現像装置内において支持体を磁化するための部材が不要になる。
請求項7に係る発明によれば、支持体を予め決められた方向に磁化するための着磁装置を不要にできる。
請求項8に係る発明によれば、トナー保持体のトナー保持面を振動させるために現像電界を利用することができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、圧電材料をトナー保持面の面方向に沿って配向させ易くなる。
請求項10に係る発明によれば、現像時のトナー保持体のトナー保持面に対するトナーの付着力を低減しながら現像効率を向上できる画像形成装置を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、トナー保持面に対し面方向に沿った振動をさせることができるトナー保持体を提供できる。
請求項12に係る発明によれば、トナー保持面を支持体の回転軸方向に沿って振動させることができるトナー保持体を提供できる。
請求項13に係る発明によれば、現像電界を利用してトナー保持面を面方向に振動させることができるトナー保持体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明が適用された現像装置の実施の形態の概要を示す説明図であり、(b)はコイルが埋設された振動体を用いたトナー保持体、(c)は圧電材料が埋設された振動体を用いたトナー保持体を示す。
【図2】トナー保持体に対するトナーの付着力の変化を示す説明図であり、(a)はトナー保持体が振動しない場合、(b)はトナー保持体が振動する場合を示す。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の現像装置の概要を示す説明図である。
【図5】(a)は実施の形態1の現像ロールの構成を示す説明図であり、(b)は(a)の側方断面図である。
【図6】実施の形態1の現像ロールの周辺構成を示す説明図である。
【図7】(a)は実施の形態2の現像ロールの構成を示す説明図であり、(b)は(a)の側方断面図である。
【図8】実施の形態2の変形例の現像ロールの構成を示す説明図である。
【図9】(a)は実施の形態3の現像ロールの構成を示す説明図であり、(b)は(a)の側方断面図である。
【図10】(a)は実施の形態3の現像ロールの振動体を形成する方法を示す説明図であり、(b)は圧電材料の分散状態を示す説明図である。
【図11】(a)は実施の形態3の現像ロールにおける圧電材料の分極過程、(b)は現像領域での作用を示す説明図である。
【図12】(a)〜(c)は実施例で用いた装置構成を示す説明図である。
【図13】実施例での現像ロールを振動させるために用いた駆動構成を示す説明図である。
【図14】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された現像装置の実施の形態の概要について説明する。
図1(a)は、本発明を具現化する実施の形態モデルに係る現像装置の概要を示すものであって、静電潜像が保持された像保持体1に対向して設けられ、回転可能な支持体3、および、この支持体の3表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体4を有し、表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体2と、このトナー保持体2の表面部を面方向に沿って振動させる振動付与手段5と、を備え、振動付与手段5は、弾性体4の表面部に設けられ且つトナー保持体2のトナー保持面に対して面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体6と、少なくとも像保持体1上の静電潜像が現像に供される現像領域DRに対応した部位にて振動体6が振動するように振動体6に対し振動力を供給する振動力供給手段7と、を具備している。
【0011】
ここで、トナー保持体2はトナーが保持されるものであればよく、現像装置で使用される現像剤としては、トナー保持体2に保持される一成分系トナーであってもよいし、例えばトナー及びキャリアを含む二成分系現像剤を用い、そのうちのトナーをトナー保持体2で保持するようにしても差し支えない。更に、トナーとしては非磁性トナーであってもよいし、磁性トナーであっても差し支えない。更にまた、トナー保持体2は、像保持体1に対して振動が画像に影響を及ぼさない範囲であれば接触してもよいが、振動の影響を避ける観点からは離間している方が好適である。
【0012】
支持体3は、ロール状部材が好適であるが、ベルト状部材であっても差し支えなく、ベルト状部材にあっては、特に、後述する圧電材料11が分散された圧電分散層を振動体6とする態様での適用が容易となる。
また、弾性体4は、その構成が複数層で構成されていても差し支えないが、硬すぎると十分振動できない虞があり、通常、JIS硬度30度以下のものが適用される。
【0013】
そして、振動付与手段5は、トナー保持体2の表面部を面方向に沿って振動させるものであり、弾性体4の表面部にトナー保持体2のトナー保持面に対して面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体6を有している点に特徴がある。また、振動付与手段5は、少なくとも現像領域DRにて振動体6が振動するように振動体6に振動力を供給する振動力供給手段7を有している。このような振動力供給手段7としては、通常、振動体6に対して磁気的又は電気的エネルギーを、直接的又は間接的に与えることで振動体6を振動させるようになっていればよい。尚、トナー保持体2が回転する際、例えば部材の寸法許容差や組み立て精度等によって、トナー保持体2自体が回転方向とは異なる方向に多少変動することは、ここでいう振動とは異なる。
【0014】
また、弾性体4の表面部に振動体6を設けるとは、弾性体4の表面部に弾性体4とは異なる振動体6を設けるようにしてもよいし、例えば弾性体4を複数の層構成とし、最上層を振動体6とするようにしてもよく、振動体6が振動することで、トナー保持体2のトナー保持面が面方向に沿って振動するようになっていればよい。
【0015】
振動体6の振動方向は、トナー保持体2のトナー保持面が面方向に沿う方向の振動を与えられる方向であればよく、トナー保持体2の回転方向に交差する幅方向(つまり回転軸方向)及びこの回転軸方向に交差する交差方向を含むものが挙げられる。このような振動方向において、像保持体1上の静電潜像への影響を軽減し、更に、現像される画像に対する影響を軽減する観点からすれば、振動力供給手段7は、振動体6がトナー保持体2の回転軸方向に沿う面方向に振動するように振動体6に対し振動力を供給することがよい。このとき、「トナー保持体2の回転軸方向に沿う面方向に振動する」とは、振動体6の振動がトナー保持体2の回転軸方向に振動する成分が主体となる振動であればよいことを意味する。
【0016】
ここで、トナー保持体2のトナー保持面を面方向に振動させる理由について説明する。
近年、高画質化の目的でトナーは小粒径化の方向に進んでいるが、トナーが小粒径化するに伴い、トナー一個あたりの帯電量も小さくなり、現像領域DRで作用する従来の現像電界による静電気力qE(ここで、qはトナーの有する電荷量、Eは電界強度を表すものとする)が、所謂非静電的なファンデルワールス力と同等な力の範囲となりつつある。電界強度Eを大きくするには、像保持体1とトナー保持体2との間隙を狭くし、トナー保持体2側の電位と像保持体1側の潜像電位との差を大きくとることであるが、現状においても、放電リークが発生しない程度に十分大きな電界が既に用いられている。また、トナー一個あたりの電荷量qを大きくすることも想定されるが、トナーの帯電はその表面を利用するため、トナーの小径化により表面積が半径の二乗で小さくなることを考えると困難になる。更に、単純に電荷量qを大きくすると、静電的な付着力は、(q/d)に比例する(ここで、dはトナーの直径)ので、現像に際しては却って強い電界を必要とする。
【0017】
更にまた、現像領域DRに至るまでのトナーは、例えば摩擦帯電の際にトナー保持体2側に押し付けられたりされる。そのため、トナーにはトナー保持体2に対する静電的な付着力以外にも非静電的な付着力が作用し、結果的に現像領域DRに至るトナーはトナー保持体2に対する付着力がかなり大きなものとなる。
【0018】
このような現象に対し、現像時の現像電界の電界強度をある程度小さくした状態で小粒径化したトナーをトナー保持体2から引き剥がすには、現像電界による静電的な力の他にトナー保持体2に対する付着力を低減させる物理的な力を作用させることが想定される。このような物理的な力として、少なくとも現像領域DRにおいてトナー保持体2を振動させることで、トナーのトナー保持体2に対する付着力を低減させ、小粒径化したトナーであっても、ある程度の電界強度を有する現像電界によってトナー保持体2からのトナーの引き剥がし効果が十分期待される。
【0019】
図2は、現像領域DRでのトナー保持体2上のトナーTの様子を示す模式図である。
(a)はトナー保持体2のトナー保持面が振動しない場合であり、トナー保持体2に対するトナーTの付着力がFのときに、トナーTを引き剥がすには現像電界の電界強度として例えばEが必要となる。一方、(b)はトナー保持体2のトナー保持面が振動する場合であり、トナー保持体2に対するトナーTの付着力がFのときに現像電界の電界強度としてEが必要となることを示している。
【0020】
(b)のように、現像領域DRにてトナー保持体2のトナー保持面を面方向に沿って振動させることで、トナーTには図中Fで示す力が作用し、トナー保持体2に対するトナーの付着力Fはトナー保持体2を振動させない場合に比べて小さくなる(F<F)。これにより、トナー保持体2からトナーTを引き剥がすための電界強度Eもトナー保持体2を振動させない場合(電界強度Eに相当)に比べて小さくて済む。
【0021】
更に、トナー保持体2の振動方向は、トナー保持体2のトナー保持面の面方向に沿う方向であるため、振動によってトナー保持体2と像保持体1との間隙や圧力が変化することは殆ど想定されず、その分、現像領域DRでの安定した現像は特に支障なくなされる。仮に、振動方向がトナー保持体2と像保持体1との間隙を変化させるような方向であると、像保持体1の静電潜像を現像する際、間隙の変化に対応した現像がなされる結果、例えば振動周期に合った所謂バンディング等の画像欠陥を生じ易くなる。また、トナー保持体2が像保持体1に例えばトナーを介して接触する態様にあっては、トナーに対する圧力変化が生じ、圧力変化に応じた画像欠陥を生じ易くなる。
【0022】
本実施の形態モデルでは、トナー保持体2のトナー保持面の振動が面方向に沿ったものであるため、特に、非接触交流ジャンピング現像に際し、かぶりを抑えつつ現像濃度を確保するという両方の条件設定が容易になされる。また、トナーの劣化に対しても影響され難くなる。
【0023】
このような振動付与手段5の代表的態様としては、次のものが挙げられる。
第一態様は、支持体3がロール状部材である場合、図1(b)に示すように、振動体6は、弾性体4の表面部又は弾性体4を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、支持体3の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイル8を含み、トナー保持体2の少なくともトナー保持面に対してコイル8を埋設したものであり、振動力供給手段7は、支持体3のうち少なくともコイル8が巻かれた部位に対応して設けられ且つ支持体3の回転軸方向に沿う磁場を発生させる磁場発生源9と、コイル8に予め決められた周期で極性が変化する電流を供給する電流供給源10と、を備えるものが挙げられる。
【0024】
このような第一態様によれば、支持体3によって発生する磁場と、支持体3を取り囲むように設けられたコイル8に電流供給源10からの電流を供給することでコイル8の内側に発生する磁場との間に磁気的な相互作用が生じる。このとき、支持体3が回転軸方向の移動を規制されていることから、コイル8が支持体3の回転軸方向に沿って振動する力を受け、コイル8が埋設された振動体6が支持体3の回転軸方向に沿って振動するようになり、結果的にトナー保持体2のトナー保持面が回転軸方向に振動する。
【0025】
このようなコイル8は、トナー保持体2の回転軸方向における現像可能な現像可能領域に対応する部位に亘って設けられてもよいし、トナー保持体2の回転軸方向における一部に設けられてもよい。要は、トナー保持体2のトナー保持面が面方向に沿って振動できるように、振動体6が振動すればよく、特に、トナー保持体2は、その回転軸方向に対する少なくとも現像可能領域全体が一体的に振動できるようになっていればよい。更にまた、現像可能領域を除く部位にコイル8を設け、このコイル8の振動によって現像可能領域を振動させるようにしても差し支えない。
【0026】
また、磁場発生源9の構成を簡単にする観点からすれば、磁場発生源9は、支持体3として磁場を発生する磁石部材を用いた構成としてもよい。つまり、支持体3を永久磁石とすれば、現像装置内において支持体3を磁化するための部材が不要になる。更には、支持体3を予め決められた方向に磁化するための着磁装置を不要にする観点からすれば、磁場発生源9は、支持体3を磁場の発生が可能な磁性材料で構成すると共に、支持体3の外部に支持体3を磁化することで支持体3に磁場を発生させる磁石部材を備えるようにしてもよい。尚、支持体3を磁化する磁石部材としては、例えば電磁石を用いるようにしても差し支えないが、構成を簡略化するには永久磁石が好適である。
【0027】
一方、振動付与手段5の第二態様は、図1(c)に示すように、振動体6は、弾性体4の表面部又は弾性体4を覆う被覆層に圧電材料11が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層の圧電材料11はトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が当該面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、振動力供給手段7は、像保持体1とトナー保持体2との間に極性が周期的に変化する振動電界を供給する振動電界供給源12を備えるものが挙げられる。ここで、振動電界供給源12としては、現像領域DRでの現像電界を利用することが好適である。
【0028】
このような第二態様によれば、振動体6は、弾性体4の表面部又は弾性体4を覆う被覆層に圧電材料11が分散された圧電分散層を有するものであり、また、圧電材料11は、トナー保持面の面方向に沿う伸縮度が当該面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されているため、現像領域DRにおける振動電界の極性変化によって、圧電材料11が伸縮を繰り返し、この伸縮に沿った方向で振動体6が振動する。このような振動方向は、圧電材料11の配向によって定まるが、全体としてトナー保持体2のトナー保持面を面方向に沿って振動させるものとなる。つまり、この態様では、トナー保持体2のトナー保持面が周方向全域に亘って振動するものではなく、現像領域DRに位置する部位のみが振動することに特徴がある。
【0029】
このような圧電材料11は圧電分散層に分散させることから細かい粒子状のものが好ましく、特に、配向性をより高める観点からすれば、圧電材料11が針状粒子であることが好適である。一般に、圧電材料11としては各種粒子状のものが知られており、平板状や針状のものも知られている。このような圧電材料11を振動体6としてその中に分散して配向させるには、例えば振動体6の樹脂材料と圧電材料11等とを混合し、その混合溶液中に弾性体4が被覆された支持体3を回転させながら浸漬させるようにしたり、混合溶液中に浸漬させた後に回転軸方向に引き上げるなど、公知の方式を適宜選定すればよい。
【0030】
そして、このような現像装置を画像形成装置に適用するには、静電潜像を保持して回転する像保持体1と、この像保持体1に対し離間して配置され且つ像保持体1上の静電潜像をトナーにて現像する現像装置と、を備え、この現像装置として上述の現像装置を用いるようにすればよい。
【0031】
また、上述した現像装置に用いられるトナー保持体2としては、図1(b)や(c)に示すように、回転可能な支持体3と、この支持体3の表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体4と、この弾性体4の表面部に設けられ且つ外部から供給される振動力によってトナー保持面に対し面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体6と、を備えるようにすればよい。
【0032】
このようなトナー保持体2としては次の態様が挙げられる。
第一の態様は、支持体3は、回転軸方向に沿った磁場が発生する磁石部材又は外部の磁石部材によって回転軸方向に沿った磁場が発生可能な磁性部材を含むロール状部材であり、振動体6は、弾性体4の表面部又は弾性体4を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、予め決められた周期で極性が変化する電流が流されるように、支持体3の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイル8を有し、コイル8を少なくともトナー保持面に対して埋設したものが挙げられる。
【0033】
第二の態様は、振動体6は、弾性体4の表面部又は弾性体4を覆う被覆層に圧電材料11が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層は圧電材料11がトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、トナー保持面の法線方向に対して極性が周期的に変化する振動電界を作用させることで、圧電材料11がトナー保持面の面方向に沿って振動するようにしたものが挙げられる。
【0034】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は、本発明が適用された現像装置が用いられた実施の形態1の画像形成装置の概要を示す。同図において、本実施の形態の画像形成装置は、例えば電子写真方式が採用されたもので、静電潜像を保持して回転する像保持体としての感光体20と、この感光体20に対し離間して配置され且つ感光体20上に保持された静電潜像をトナーにて現像する現像装置30等が設けられている。
【0035】
感光体20の周りには、各種装置が予め決められた順番で配置されている。静電潜像が形成される前の感光体20を帯電する帯電装置21、帯電装置21によって帯電された感光体20に対し静電潜像を形成するために露光する露光装置22、感光体20上の静電潜像を現像する現像装置30、現像装置30によって現像された感光体20上のトナー像を図示外の記録材供給部(図示せず)から供給された記録材P上に転写する転写装置23、転写後の感光体20を清掃する清掃装置24等が設けられている。そして、転写装置23によってトナー像が転写された記録材Pは、定着装置25によって定着された後、図示外の記録材排出部に排出される。
【0036】
本実施の形態の現像装置30は、図4に示すように、非磁性一成分トナーが収容される現像容器31を有し、この現像容器31には感光体20に対向した位置に現像用の開口31aが開設されている。また、この開口31aに面して、感光体20と離間して配置され且つ対向する部位で感光体20と同方向に回転するトナー保持体としての現像ロール32を設け、感光体20と現像ロール32とが対向する現像領域DRにて感光体20上に形成された静電潜像をトナーによって現像するようにしたものである。
【0037】
また、現像容器31内には、現像ロール32の感光体20側と異なる側に、現像ロール32に接触してトナーを現像ロール32に供給する供給ロール33が、現像ロール32との対向部位で現像ロール32とは逆方向に回転するように設けられている。本実施の形態の供給ロール33は、例えば表面がスポンジ状のもので構成され、現像ロール32との間で現像ロール32に残留したトナーを掻き取る作用と共に、現像ロール32に適度な量のトナーを供給する作用を奏している。
【0038】
更に、現像ロール32と供給ロール33との対向部位より現像ロール32の回転方向における下流側には、現像領域DRに向かう現像ロール32上のトナー層を規制する層規制部材34が設けられている。この層規制部材34は、現像容器31に対して一端側が固定され、他端側が現像ロール32に対し、その回転方向における上流側に向かって延びるように配置されている。この層規制部材34によって、供給ロール33から供給された現像ロール32上のトナーの層厚が規制されると共に、トナーに対して所望の帯電量が付与される。また、本実施の形態では、現像容器31内の供給ロール33の背後にはトナーを攪拌するアジテータ35が設けられ、このアジテータ35の回転によってトナーが供給ロール33側に供給される。
【0039】
また、本実施の形態では、感光体20側が接地されると共に、現像ロール32に現像電源36が接続され、この現像電源36によって現像領域DRでのトナーの飛翔が行われるようになっている。このような現像電源36としては、例えば直流電圧が重畳された交流電圧が用いられる。
【0040】
図5(a)は本実施の形態の現像ロール32を示すもので、(b)は(a)の側方断面図である。本実施の形態の現像ロール32は、図5に示すように、支持体としての芯金32aと、この芯金32aの表面に設けられ且つ芯金32a表面の面方向に沿って弾性変形が可能な弾性体32bと、振動付与手段の一要素として、弾性体32bの表面部を覆う被覆層にコイル41が埋設された振動体32cとで構成されている。
【0041】
本実施の形態の芯金32aは、例えば軟磁性材料で構成されたロール状のものが用いられている。また、弾性体32bは、例えばJIS硬度20度の導電性シリコーンゴムで構成されている。更に、振動体32cは、例えば導電性アクリル樹脂からなるコート層の中に、例えばφ60μm程度のエナメル銅線やポリウレタン銅線等で構成されたコイル41が埋設されたものとなっている。そして、本実施の形態では、振動体32cの表面には例えばアミン変性シリコーンオイルが塗布されており、振動体32cの表面に対してトナーの固着が抑えられている。ここで、芯金32aは、軟磁性材料で構成されたロール状のものを示したが、これに限られず、例えば細い軟磁性材料の周りに導体を巻くような構成であっても差し支えない。更には、芯金32aを中空状とするようにしてもよい。
【0042】
コイル41は、弾性体32bを径方向に縮ませないようにして弾性体32b上の周りに例えば0.5mm程度のピッチで前記銅線が螺旋状に巻き付けられたものである。また、コイル41への電流を供給できるように、コイル41の両端は、芯金32aの両端部側に設けられて芯金32aとの間が絶縁された二つの環状端子42a,42bに対し、例えばはんだ付け等で接続されている。そのため、二つの環状端子42a,42bの間に電流供給源を接続することで、コイル41に電流が流されるようになっている。
【0043】
ここで、弾性体32bや振動体32cの導電性は少なくとも現像電界が作用できる程度の導電性を有すればよく、特に、振動体32cにおいては、コイル41間は銅線の被覆がなされているため、絶縁されていることは言うまでもない。また、ここで示した各種材料はあくまでも一例を示したものであり、使用する材料としては公知の材料を適宜選択して使用すればよい。
【0044】
本実施の形態では、このような現像ロール32を用い、図6のように構成することで、現像ロール32のトナー保持面を振動させるようになっている。すなわち、現像ロール32の芯金32aの両端には、永久磁石43,44を夫々設け、永久磁石43,44による磁極の向きを一致させることで、芯金32aは一定方向に磁化される。更に、芯金32aの周囲に設けられた環状端子42a,42bの位置に合わせて環状端子42a,42b夫々に接触する導電性の二つのブラシ片45a,45bが設けられ、環状端子42a,42bが回転してもブラシ片45a,45bとの接触が常に保たれるようになっている。更に、これらのブラシ片45a,45bの間には、コイル41に電流を流すための電流供給源としての交流電源46が抵抗47を介して接続されている。尚、芯金32aには現像電源36が接続できるようになっており、また、環状端子42a,42bと芯金32aとの間は絶縁されていることは言うまでもない。
【0045】
次に、本実施の形態の現像装置30における作動について説明する。先ず、概要を図4に基づいて説明する。アジテータ35の回転によって供給ロール33に供給されたトナーは、供給ロール33の回転によって現像ロール32側へ供給される。このとき、本実施の形態では、現像ロール32と供給ロール33とが接触部位で互いに反対方向に回転していることから、供給ロール33上のトナーは現像ロール32側に押し付けられるようにして現像ロール32上に供給される。
【0046】
現像ロール32上に供給されたトナーは、層規制部材34によって層規制されると共に摩擦帯電され、所望の帯電量や層厚を有したトナー層が現像ロール32の回転に伴ってそのまま下流側に搬送される。このとき、層規制部材34によってトナーは強く現像ロール32側に押し付けられるため、現像ロール32に対するトナーの付着力は、層規制される前に比べて大きなものとなる。
【0047】
層規制された現像ロール32上のトナーは、感光体20との対向部位である現像領域DRに搬送される。現像領域DRにて現像がなされた後、現像ロール32上に残った残留トナーは、現像ロール32の回転に伴って搬送され、現像ロール32と供給ロール33との接触部位にて、供給ロール33の働きによって現像ロール32から掻き取られる。
【0048】
このような過程における現像ロール32の振動作用について説明する。
図6に示すように、現像ロール32の芯金32aには、二つの永久磁石43,44が例えば図のように配置されているため、芯金32a自体が図中左側に向かう磁場を発生するものとなる。これに対し、現像ロール32の振動体32c中のコイル41(図5参照)には、交流電源46から交流電流が流されるようになっているため、コイル41を流れる電流の向きが切り替わることでコイル41の内側(巻かれたコイル41の内側部分)に発生する磁場は、図中の左右方向に一周期毎に切り替わるものとなる。そのため、芯金32aの磁場と、コイル41によって発生する磁場との相互作用によって、芯金32aが回転方向以外の動きを規制されていることから、コイル41の方が芯金32aの回転軸方向に沿って振動しようとする。このとき、コイル41が埋設された振動体32cは弾性体32bより硬い構成であるため、振動体32cが一体的に芯金32aの回転軸方向に沿って振動する。
【0049】
このように現像ロール32の表面が回転軸方向に振動することで、層規制部材34によって更に現像ロール32への付着力が高まったトナーであっても、トナーには振動による運動エネルギーが作用し、結果的にトナーの現像ロール32に対する付着力が低下する。本実施の形態では、現像ロール32上のトナーは層規制部材34に接触した後から振動による効果が作用するため、層規制部材34から現像領域DRに至るまでにトナーには現像ロール32の表面から引き剥がそうとする運動エネルギーが十分作用している。これにより、現像領域DRにおいては、現像電源36による現像電界が小さくてもトナーは現像ロール32から容易に飛翔される。
【0050】
一般的に、感光体20上の画像におけるかぶりを低減するには、現像電界を小さくした方がよく、一方、現像濃度を確保するには現像電界をある程度大きくする必要がある。本実施の形態では、現像領域DRにおける現像ロール32上のトナーは、現像ロール32の振動によってその付着力が低下しているため、現像電界を小さくしても、かぶりの低減並びに現像濃度の確保の双方が容易に実現される。
【0051】
また、このような現像ロール32の振動は、現像ロール32の周面全体でなされるが、現像ロール32と層規制部材34との接触部位や現像ロール32と供給ロール33との接触部位では、振動方向が現像ロール32の回転軸方向であることから特に問題にならず、層規制や現像ロール32へのトナーの供給動作並びに掻き取り動作を阻害する虞は殆どない。
【0052】
そして、このような振動を行わせる周波数としては、振動体32cが十分振動できるような値がよく、高すぎると弾性体32bの効果が現れ難くなって振動体32cの十分な変位量が得られない。一方、低すぎると、振動体32cの表面からトナーを引き剥がす力が弱くなり、振動させた効果が現れ難くなる。そのため、周波数としては、例えば200〜400Hz程度が好適であり、このような周波数は実験等で確認して選定すればよい。
【0053】
更に、本実施の形態では、現像ロール32の振動量は、弾性体32bの弾性限界内で作用されるため、長期に亘って繰り返しの振動を行っても現像ロール32に塑性変形が生じる虞もなく、安定した振動が長期に亘って継続される。
【0054】
本実施の形態の現像ロール32は、コイル41を埋設した振動体32cを用いているため、振動体32cの表面が多少凹凸を帯びた面となり易いが、このような凹凸は、トナーを搬送する際の搬送力を補完するため、現像ロール32としてはこのように多少凹凸を帯びている方がよい。そのような表面粗さとしては、算術平均粗さRaが0.5μm〜1.0μmが好適である。
【0055】
本実施の形態では、図5及び図6に示すように、現像ロール32の芯金32aとして軟磁性材料を用い、永久磁石43,44にて芯金32aを磁化する方式を示したが、例えば芯金32aとして硬磁性材料を用い、これを着磁装置等で芯金32aの軸方向に沿った方向で磁化を行わせることで、芯金32aを磁化するための永久磁石43,44を必要としない態様としてもよい。また、振動体32cが一層で構成される態様を示したが、複数層であっても差し支えない。更には、弾性体32bを複数層で構成し、表面側の弾性層を硬くして、この硬い弾性層中にコイル41を埋設することで、振動体32cとするようにしても差し支えない。
【0056】
本実施の形態では、画像形成装置として、図3に示すように、単色の態様を示したが、単色に限らず、複数色備える態様であっても差し支えない。
また、ここでは、静電潜像を保持する像保持体として感光体20を用いたが、感光体20の代わりに、例えば画素電極をマトリクス状に配し、夫々の画素電極にスイッチング素子を設け、このスイッチング素子を制御することで、画素電極による静電潜像を形成するような方式の像保持体を用いるようにしてもよい。特に、このような画素電極を用いる場合には、潜像電位を高くしなくても、現像時に現像ロール32に対するトナーの付着力が小さくなっていることから、容易に現像がなされる。
【0057】
更に、現像装置30として、図4に示すように、感光体20と現像ロール32との間でトナーを飛翔させる方式を示したが、例えば感光体20のような静電潜像を保持する像保持体と現像ロール32との間に、現像ロール32上のトナーを飛翔させる飛翔電極を別途設け、この飛翔電極と現像ロール32との間に振動電界を作用させて、トナーをクラウド化させる方式を用いるようにしてもよい。
【0058】
◎実施の形態2
図7は実施の形態2の現像装置に用いられる現像ロール32を示すもので、(a)は現像ロール32の概要を示すものであり、(b)は(a)の側方断面図である。本実施の形態の現像ロール32は、実施の形態1の現像ロール32(図5参照)と略同様に構成されるが、コイル41が現像ロール32の回転軸方向全域に亘って設けられておらず、現像ロール32の両端部分に設けられ、中央部分には設けられていない点が実施の形態1と異なる。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施の形態の振動体32cは、回転軸方向の両端部分に夫々螺旋状に巻かれた二つのコイル41(具体的には41a,41b)が埋設されたものとなっている。これらのコイル41a,41bは、夫々、芯金32aの両端部分に対応する位置に螺旋状に共に同方向に沿って巻かれており、二つのコイル41には夫々単独に電流が供給されるようになっている。また、コイル41に電流を供給するために、芯金32aの両端部分には、夫々一組の環状端子42a1,42a2と、もう一組の環状端子42b1,42b2が設けられている。尚、芯金32aが実施の形態1と同様に、図示外の磁石部材にて磁化されていることは言うまでもない。
【0060】
本実施の形態の振動体32cは、少なくとも振動体32cが一体的に振動できる程度に硬く構成されている。また、環状端子42a1,42a2の間には、図示外のブラシ片を介して環状端子42a1,42a2間に電流を供給するため、交流電源46aと抵抗47aが設けられている。一方、環状端子42b1,42b2の間には、図示外のブラシ片を介して環状端子42b1,42b2間に電流を供給するため、交流電源46bと抵抗47bが設けられている。尚、二つの交流電源46a,46bは、振幅及び周期が等しくなっている。
【0061】
このような構成において、交流電源46a,46bによる電流供給が行われると、二つのコイル41a,41bには同じ方向に電流が流れるため、振動体32cのうち、コイル41a,41bが埋設された部位に回転軸方向に対して反転する磁場が発生し、芯金32aによる磁場との作用で、振動体32cが現像ロール32の回転軸方向に沿って振動しようとする。このとき、振動体32cは、硬い層で構成されているため、振動体32cは全体として現像ロール32の回転軸方向に沿って振動する。そのため、現像ロール32に対するトナーの付着力が振動しない場合よりも低減する。
【0062】
ここでは、二つのコイル41a,41bを設け、夫々に異なる交流電源46a,46bから電流供給を行う方式を示したが、例えば二つのコイル41a,41bを互いに並列接続し、一つの交流電源から電流を流すようにしても差し支えない。また、二つのコイル41a,41bの間にて現像ロール32の回転軸方向に沿って直線状に延ばした線を振動体32cに埋設し、二つのコイル41a,41bが繋がった一つのコイルの状態とし、互いのコイル41a,41bの繋がっていない側を芯金32aの両端側に夫々設けた環状端子に接続することで、これに交流電源から電流を流すようにしてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、コイル41が現像ロール32の両端部分に埋設される態様を示したが、振動体32cが一体的に振動できるようになっていれば、コイル41をどの位置に埋設するようにしてもよく、例えば現像ロール32の回転軸方向の中央部分に設けるようにしてもよいし、三箇所以上に設けるようにしてもよい。
【0064】
図8は、本実施の形態の変形例の現像ロール32を示すものである。本態様の現像ロール32は、実施の形態2の現像ロール32(図7参照)と略同様に構成されるが、コイル41(41a、41b)が巻かれた部位が現像ロール32の両端部であり、更に、コイル41を、現像ロール32の回転軸方向における現像可能領域Wを超える部位に設けた点に特徴がある。
【0065】
このような構成とすることで、現像ロール32の長さは長くなるものの、現像ロール32の現像可能領域Wにはコイル41が設けられていないため、現像ロール32の表面は、コイル41が設けられていない現像可能領域Wの部分と、その外側のコイル41が設けられた部分となる。このような場合、コイル41がない部分とコイル41がある部分は、その表面性が異なりやすく、コイル41がある部分の表面の方が凹凸の大きい表面になり易い。本態様では、このように現像可能領域Wにコイル41が設けられていないため、その部位の現像ロール32の表面は凹凸が少ない略均一面となり、現像時の現像特性を現像可能領域Wに亘って一様にし易くなる。
【0066】
◎実施の形態3
図9は実施の形態3の現像装置に用いられる現像ロール32を示すもので、(a)は現像ロール32の概要を示し、(b)は(a)の側方断面図である。本実施の形態の現像ロール32は、実施の形態1や実施の形態2の現像ロール32(図5等参照)と異なり、振動体32cに対して、コイル41を埋設する代わりに無機の圧電材料51を埋設したものとなっている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施の形態の芯金32aは実施の形態1と異なり、磁性材料である必要はなく、例えば非磁性のステンレス鋼等が適用される。そのため、使用するトナーとしては、非磁性一成分トナーに限られず、磁性トナーであっても差し支えない。また、弾性体32bとしては、例えばJIS硬度20度の導電性シリコーンゴムが適用され、振動体32cには、例えば導電性アクリル樹脂コートが適用される。また、本実施の形態の振動体32cは、例えば平板状の圧電材料51(粒径0.5〜2μm)が埋設されている。
【0068】
本実施の形態の振動体32cは、圧電材料51が埋設されているが、このとき、圧電材料51は現像ロール32の面方向に対する伸縮度が厚み方向に比べて大きくなるように配向されている。
【0069】
圧電材料51をこのように配向させるには、例えば図10(a)に示すような方法を用いればよい。圧電材料51(ここでは平板状の微粒子を想定している)を分散媒(例えばアクリル系樹脂+導電材料+溶媒等で構成された多少粘性の高い液体が好適)に分散させた溶液62を容器61に入れ、この溶液62を芯金32aの周囲にある弾性体32b上に塗布する。このとき、芯金32aを回転させながら行うことで、弾性体32b上にはある程度均一な塗布が可能となる。そして、本実施の形態では、溶液62に浸漬後の表面を例えば板ばね製のスキージ63によって撫でることで、圧電材料51が弾性体32bの表面に沿って配向される。その後、塗布膜の硬化処理を行うことで、圧電材料51が埋設された振動体32cが完成する。図10(b)は振動体32cの要部を示す模式図であり、圧電材料51は夫々の向きは多少異なるが全体的には弾性体32bの表面に沿って配向された状態で形成される。尚、図中矢印は、後述する分極処理後の圧電材料51の伸縮方向を示している。
【0070】
次に、このような構成の現像ロール32を振動させるには、次のようにすればよい。
図11(a)に示すように、現像ロール32単品の状態で、振動体32cの周囲に導電板71を巻き、芯金32aと導電板71との間に直流電圧72を加えて、圧電材料51を分極する。尚、このとき、加温するようにしてもよい。
【0071】
そして、分極処理を行った現像ロール32を現像装置30にセットすることで、(b)のように、現像ロール32と感光体20とが対向する現像領域DRにおいて、現像電源36による現像電界が作用し、圧電材料51が伸縮を繰り返す。このとき、図10(b)にも示したように、圧電材料51の伸縮方向は、粒子個々によって異なるが、全体として現像ロール32の表面に沿った方向に伸縮する。このように現像領域DRにおいて圧電材料51が伸縮することで、振動体32cが振動する。そのため、現像ロール32の表面に付着しているトナーは振動が加えられないものに比べて剥がれ易くなり、現像電界が小さくても、感光体20側に向かって飛翔する。本実施の形態の現像電源36としては、極性が反転する電界を印加することが必要で、その周波数としては3kHz程度のものが適用されるが、このような周波数としては実験等で確認して選定すればよい。
【0072】
本実施の形態では、圧電材料51として、平板状のものを用いたが、針状粒子を用いる方が、配向性を高める点では好適である。圧電材料51として針状粒子を用いる場合、その塗布方法は、図10(a)のような方法を用いるようにしてもよいが、例えば溶液62中に弾性体32b毎浸漬させ、芯金32aを立てる方向で引き上げるようにしてもよい。このように針状粒子の場合には、針状粒子が弾性体32bの表面に対して法線方向に沿って立ち上がる方向への配向が抑えられ、針状粒子は勢い弾性体32bの表面に沿う方向で配向され易くなる。それ故、現像ロール32はその表面方向に沿って容易に振動されるようになる。
【実施例】
【0073】
本実施例は、現像ロールを振動させることで、現像効率がどのように変化するかを確認するために行ったものである。
本実施例では、現像効率をある程度正確に算出する目的で、基本的な装置構成として、図12(a)〜(c)に示す装置を用いた。(a)に示すように、現像容器85中に非磁性一成分トナーを貯留し、供給ロール83によって中間ロール82にトナーを供給する。中間ロール82は、周速vで回転(ここでは周速vを60mm/sとしている)するもので、この中間ロール82上に供給されたトナーは層規制部材84にて層規制並びに所望の帯電量が付与される。
【0074】
一方、現像ロール81(32に相当)は中間ロール82に対して従動回転するように構成され、また、現像ロール81と中間ロール82の間には、中間ロール82上のトナーを従動回転する現像ロール81に転移させるための転移電源86が設けられている。ここでは、転移電源86による転移バイアス500Vでトナーが現像ロール81に転移する。その結果、現像ロール81上にはこのような転移がなされたトナー層が存在する。
【0075】
次に、現像ロール81上のトナー層に対して、トナー層が(b)に示すトリミング範囲になるように縁の部分をテープでトリミングし、形を整える。このときトリミングによって残るトナー層の面積を基準面積Sとする。
そして、(c)に示すように、トリミングされたトナー層を有する現像ロール81を、単独に中間ロール82の周速vと同じ周速vで回転させ、固定されたアルミ板の対向電極87(感光体20に相当)と回転する現像ロール81との間に現像電源88として直流電圧を作用させた場合のトナーの移動状態を確認した。尚、現像ロール81と対向電極87との間隙Gは100μmとした。
【0076】
本実施例で使用したトナーは、平均粒径5.8μm、外添剤としてシリカ二種、チタニア一種を使用したものを用いた。また、(b)に示すように、現像ロール81に転移したトナーの帯電量は、−10μC/gであり、(c)の符号Mdは現像によって現像されたトナー量を意味し、符号Mrは現像後の現像ロール81上の残留トナー量を意味する。それ故、現像効率としては、Md/(Md+Mr)となる。尚、本実施例では、(Md+Mr)/Sが一定になるように、各種条件が調整されている。
【0077】
このような装置での実験において、現像ロール81として、実施の形態1と同様の構成のものを評価した。
図13は、現像ロール81の具体的な様子を示すもので、芯金81aの両端部には夫々磁石89が設けられ、二つの磁石89で現像ロール81の芯金81aは回転軸方向に向かう磁場が形成されている。また、コイル(図示せず)に対しては、交流電源90と抵抗91が直列に接続されている。
【0078】
本実施例における交流電源90としては、例えば24Vpp、200〜400Hz、デューティ比50%の矩形波を用い、抵抗91としては10k〜100kΩを用いた。そして、本実施例では、交流電源90を適用しない場合と、交流電源90を適用した場合との現像効率を比較した。
【0079】
図14は、本実施例の結果を示すもので、現像電圧として100〜300Vで実験したところ、次の点が確認された。
(1)現像電圧を上昇させるに従い、振動の有無に関係なく現像効率は向上する。
(2)現像ロールを振動させると、振動させない場合に比べ、現像効率が大きく、特に、現像電圧が150Vのときには2倍以上の現像効率の改善がなされる。
(3)現像ロールを振動させると、振動させない場合に比べ、現像電圧に対する現像効率の飽和傾向が早くなる。
以上のことから、現像ロールを振動させることで、トナーが現像ロールから剥がれ易くなる結果、現像効率が向上することが確認された。
【0080】
本実施例に加え、コイルに流す電流を図13に示す範囲で更に実験したが、同様の結果が得られることが確認された。
また、現像電界として交流電圧を用いると共に、現像ロールとして圧電材料を用いた構成においても同様の実験を行ったところ、コイルを用いる構成に比べて振動量が小さくなるものの、現像ロールを振動させる方が振動させない場合よりも現像効率が高くなることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
1…像保持体,2…トナー保持体,3…支持体,4…弾性体,5…振動付与手段,6…振動体,7…振動力供給手段,8…コイル,9…磁場発生源,10…電流供給源,11…圧電材料,12…振動電界供給源,DR…現像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が保持された像保持体に対向して設けられ、回転可能な支持体、および、この支持体の表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体を有し、表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体と、
このトナー保持体の表面部を面方向に沿って振動させる振動付与手段と、を備え、
前記振動付与手段は、
前記弾性体の表面部に設けられ且つ前記トナー保持体のトナー保持面に対して面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体と、
少なくとも前記像保持体上の静電潜像が現像に供される現像領域に対応した部位にて前記振動体が振動するように当該振動体に対し振動力を供給する振動力供給手段と、を具備することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記振動力供給手段は、前記振動体が前記トナー保持体の回転軸方向に沿う面方向に振動するように前記振動体に対し振動力を供給することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置のうち前記支持体がロール状部材である態様において、
前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、前記支持体の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイルを含み、前記トナー保持体の少なくともトナー保持面に対して前記コイルを埋設したものであり、
前記振動力供給手段は、前記支持体のうち少なくとも前記コイルが巻かれた部位に対応して設けられ且つ前記支持体の回転軸方向に沿う磁場を発生させる磁場発生源と、前記コイルに予め決められた周期で極性が変化する電流を供給する電流供給源と、を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3記載の現像装置において、
前記コイルは、前記トナー保持体の回転軸方向における現像可能な現像可能領域に対応する部位に亘って設けられることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項3記載の現像装置において、
前記コイルは、前記トナー保持体の回転軸方向における一部に設けられることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の現像装置において、
前記磁場発生源は、前記支持体として磁場を発生する磁石部材を用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれかに記載の現像装置において、
前記磁場発生源は、前記支持体を磁場の発生が可能な磁性材料で構成すると共に、当該支持体の外部に支持体を磁化することで前記支持体に磁場を発生させる磁石部材を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の現像装置において、
前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層に圧電材料が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層の前記圧電材料はトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が当該面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、
前記振動力供給手段は、前記像保持体と前記トナー保持体との間に極性が周期的に変化する振動電界を供給する振動電界供給源を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項8記載の現像装置において、
前記圧電材料は、針状粒子であることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
静電潜像を保持して回転する像保持体と、
この像保持体に対向して設けられ且つ当該像保持体上の静電潜像をトナーにて現像する請求項1乃至9のいずれかに記載の現像装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
表面にトナーを保持して搬送するトナー保持体であって、
回転可能な支持体と、
この支持体の表面部に設けられ且つ少なくとも表面が面方向に沿って移動可能に弾性変形する弾性体と、
この弾性体の表面部に設けられ且つ外部から供給される振動力によってトナー保持面に対し面方向に沿う振動を与えるように振動する振動体と、
を備えることを特徴とするトナー保持体。
【請求項12】
請求項11記載のトナー保持体において、
前記支持体は、回転軸方向に沿った磁場が発生する磁石部材又は外部の磁石部材によって回転軸方向に沿った磁場が発生可能な磁性部材を含むロール状部材であり、
前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層の全部若しくは一部に対し、予め決められた周期で極性が変化する電流が流されるように、前記支持体の回転軸方向に沿って螺旋状に巻かれたコイルを有し、当該コイルを少なくともトナー保持面に対して埋設したことを特徴とするトナー保持体。
【請求項13】
請求項11記載のトナー保持体において、
前記振動体は、前記弾性体の表面部又は前記弾性体を覆う被覆層に圧電材料が分散された圧電分散層を有し、この圧電分散層は圧電材料がトナー保持面の面方向に沿う伸縮度が前記面方向に交差する厚み方向に比べて大きくなるように配向されたものであり、トナー保持面の法線方向に対して極性が周期的に変化する振動電界を作用させることで、前記圧電材料がトナー保持面の面方向に沿って振動することを特徴とするトナー保持体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−83829(P2013−83829A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224233(P2011−224233)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】