説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】ハイブリッド現像方式において、現像剤担持体からトナー担持体へのトナー供給性を高め、トナー担持体のトナー消費の違いによる現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高品質の画像を長期に渡って提供できる現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性のトナー担持体の表面に誘電層を設け、現像剤担持体からトナー担持体へのトナーの供給性を向上させる。また、該誘電層の表面に導電層を設け、トナー供給性を安定して維持させる。よって、トナー消費の違いによる現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高品質の画像を長期に渡って提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアとトナーとを含む現像剤を用いてトナー担持体上にトナー層を形成し、形成したトナー層によって像担持体上の潜像を現像するハイブリッド現像装置、及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置における現像方式としては、現像剤としてトナーのみを用いる一成分現像方式及びトナーとキャリアを用いる二成分現像方式が知られている。
【0003】
一般的に、一成分現像方式では、トナーをトナー担持体とトナー担持体に押圧された規制板とによって形成される規制部を通過させることでトナーを帯電し、所望のトナー薄層を得ることができるため、装置の簡略化、小型化、低コスト化の面で有利である。
【0004】
一方で、規制部の強いストレスによりトナーの劣化が促進され易く、トナーの電荷受容性が低下しやすい。さらに、トナーへの電荷付与部材である規制部材やトナー担持体表面がトナーや外添剤により汚染されることでトナーへの電荷付与性も低下する。そのため、トナー帯電量がより低下し、かぶり等の問題を引き起こすなど、現像装置の寿命が短い。
【0005】
比較すると、二成分現像方式では、トナーをキャリアとの混合による摩擦帯電で帯電するためストレスが小さく、さらに、キャリア表面積が大きいため、トナーや外添剤による汚染に対しても相対的に強く、長寿命に有利である。
【0006】
しかしながら、二成分現像方式では像担持体上の静電潜像を現像する際に、現像剤により形成される磁気ブラシによって像担持体表面を摺擦するため、現像像に磁気ブラシ痕が発生するという課題を有している。さらに、像担持体にキャリアが付着しやすく、画像欠陥となる課題を有している。
【0007】
二成分現像方式の長寿命の特長を有しながら、画像欠陥の問題を解決する現像方式として、現像剤担持体上に二成分現像剤を担持し、この二成分現像剤からトナーのみをトナー担持体に供給して現像に用いる、所謂ハイブリッド現像方式が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
ところが、ハイブリッド現像方式が一般的に抱える課題として、トナー担持体上の現像に使用されなかった現像残トナーが、次の現像工程において現像履歴(ゴースト)として画像上に現れる現象がある。
【0009】
ハイブリッド現像方式では、現像剤担持体とトナー担持体の対向部(トナー供給領域)において、トナーをトナー担持体に供給するためのバイアスを印加して、トナー担持体にトナーを供給している。
【0010】
現像領域を通過後のトナー担持体上のトナー層には、現像にトナーが使用され、現像残トナーが無いかあるいは少なくなった部分と、トナーが現像に使用されなかった部分とが生じる。この現像残トナー層で発生する両者のトナー量の差は、次の供給領域での1回のトナー供給では埋めきることができない。
【0011】
そのため、トナー消費が行われなかった部分と現像でトナー消費が行われた部分とでは次の現像時にトナー量に差が生じてしまう。現像履歴(ゴースト)とはそのトナー量の差が現像工程に影響し、画像上に濃度のコントラストとして現れてしまう問題である。
【0012】
図3に、ゴーストの画像の発生状況を示す。
【0013】
図3(a)は、原稿画像であり、白地部51にベタ画像領域52とその後にハーフトーン画像領域53が配置されている。このような画像を図に示した用紙の印刷方向にプリントすると、図3(b)のように、ベタ領域52を印字した後のトナー担持体1回転周期後のハーフトーン画像領域53内にベタ領域52のゴーストの画像54が発生する。
【0014】
画像濃度を図の画像濃度測定位置で測定すると、ゴーストの画像54の部分が、その周辺のハーフトーン画像領域53よりも濃度が薄くなっている。これは現像領域でベタ領域52を現像した後に、供給領域でトナー供給を行っても、1回の供給領域を通過するだけでは、十分なトナー供給がされていないためである。
【0015】
このようなトナー担持体上のトナー付着量の変化に伴って画像濃度が変化する問題に対して、像間(複数枚コピー時の用紙と用紙の間)や画像形成動作の開始前、終了後などの非画像形成時に、トナー担持体上の現像後の残トナーの回収を行う方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0016】
また、顕像化したトナー像の濃度検知を行ってトナー供給バイアスの補正を行う方策や、トナー担持体に残トナー回収用部材を設け、トナー供給部でトナー供給する前にトナー担持体上の残トナーを除去する方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平5−150636号公報
【特許文献2】特開昭59−172662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、非画像形成時にトナー担持体上の残トナー回収を行ったり(特許文献2参照)、濃度検知を行ってバイアス補正を行ったりする方策では、画像形成中のトナー担持体の1周の長さに対応する現像履歴や、トナー担持体の軸方向のトナー消費の違いに対応した現像履歴には原理的に対応できない。また残トナー回収用部材を設けた場合、現像装置の大型化やコストの大幅増が避けられない。
【0019】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ハイブリッド現像方式において、現像剤担持体からトナー担持体へのトナー供給性を高め、トナー担持体のトナー消費の違いによる現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高品質の画像を長期に渡って提供できる現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0021】
1.表面にトナーを担持搬送し、対向する像担持体上に形成された潜像を前記トナーで現像するトナー担持体と、
表面にトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送し、前記現像剤中のトナーを対向する前記トナー担持体に供給する現像剤担持体と、を有する現像装置であって、
前記トナー担持体は、導電性基体の表面に誘電層を有し、さらに該誘電層の表面に導電性コート層を設けてなり、
前記導電性コート層は、少なくとも現像動作中は前記導電性基体から電気的に絶縁されたフロート状態にある
ことを特徴とする現像装置。
【0022】
2.現像動作中以外のタイミングにおいて、前記導電性コート層を前記導電性基体と電気的に導通させることができる手段を有する
ことを特徴とする前記1に記載の現像装置。
【0023】
3.像担持体と、該像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、を有する画像形成装置であって、
前記現像装置は、前記1または2に記載の現像装置である
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置によれば、ハイブリッド現像装置において、導電性のトナー担持体の表面に誘電層を設けているため、現像剤担持体からトナー担持体へのトナーの供給性を向上させることができる。また、該誘電層の表面に導電性コート層を設けているため、トナー供給性を安定して維持することができる。よって、トナー担持体のトナー消費の違いによる現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高品質の画像を長期に渡って提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の構成例を示す構成図である。
【図3】代表的なゴースト画像の例と、ゴーストの発生を測定する位置の例を示す図である。
【図4】従来の現像装置におけるトナー担持体上のトナー量の推移をプロットしたグラフである。
【図5】従来のトナー担持体上の現像残トナー層に生じたトナー量の差ΔM/Aが、1回のトナー供給では埋めきれないことを示す模式図である。
【図6】トナー担持体上のトナー層表面電位の推移をプロットしたグラフである。
【図7】トナー供給バイアスとトナー担持体上に供給されたトナー供給量の関係をプロットしたグラフである。
【図8】トナー担持体上のトナー量の推移を、トナー担持体回転回数に対してプロットしたグラフである。
【図9】供給バイアスと、トナー担持体上に供給されたトナー層の表面電位の関係をプロットしたグラフである。
【図10】トナー担持体の表面の概略構成を(a)アルマイト処理の例と(b)実施例について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の一形態について図面を用いて説明する。
【0027】
(画像形成装置の構成と動作)
図1に、本発明の一実施形態による画像形成装置の主要部の構成例を示す。
【0028】
この画像形成装置は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成されたトナー像を用紙等の転写媒体Pに転写して画像形成を行うプリンターである。
【0029】
この画像形成装置は画像を担持するための像担持体1を有しており、像担持体1の周辺には、像担持体1を帯電するための帯電手段としての帯電部材3、像担持体1上の静電潜像を現像し、トナー像を形成する現像装置2、像担持体1上のトナー像を転写するための転写ローラ4、及び像担持体1上の残留トナー除去用のクリーニングブレード5が、像担持体1の回転方向Aに沿って順に配置されている。
【0030】
像担持体1は、帯電部材3で帯電された後に、図中のE点の位置でレーザ発光器などを備えた露光装置6により露光されて、その表面上に静電潜像が形成される。現像装置2は、この静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写ローラ4は、この像担持体1上のトナー像を転写媒体Pに転写した後、図中の矢印C方向に排出する。クリーニングブレード5は、転写後の像担持体1上の残留トナーを、その機械的な力で除去する。
【0031】
画像形成装置に用いられる像担持体1、帯電部材3、露光装置6、転写ローラ4、クリーニングブレード5等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。例えば、帯電手段として図中、帯電ローラが示されているが、像担持体1と非接触の帯電装置であってもよい。また例えば、クリーニングブレードはなくてもよい。
【0032】
現像装置2は、キャリアとトナーを含む現像剤23とそれを収容する現像剤槽17、該現像剤槽17から供給された現像剤23を表面に担持して搬送する現像剤担持体13、現像剤担持体13からトナーのみが供給され、前記像担持体1上に形成された静電潜像を現像するトナー担持体24を備えている。
【0033】
また現像装置2は、トナー担持体24に現像バイアス電圧Vb2を供給するトナー担持体用バイアス電源31、現像剤担持体13にトナー供給バイアス電圧Vb1を供給する現像剤担持体用バイアス電源32を備える。
【0034】
現像装置2の詳細な構成と動作については、後述する。
【0035】
(現像剤の構成)
本実施形態において使用する現像剤23はトナーと該トナーを帯電するためのキャリアを含んでなるものである。
【0036】
<トナー>
トナーとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができ、バインダー樹脂中に着色剤や必要に応じて、荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用できる。トナー粒径としてはこれに限定されるものではないが、3〜15μm程度が好ましい。
【0037】
このようなトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0038】
トナーに使用するバインダー樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)やポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂単体もしくは複合体により、軟化温度が80〜160℃の範囲のものを、またガラス転移点が50〜75℃の範囲のものを用いることが好ましい。
【0039】
また、着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができ、一般に上記のバインダー樹脂100質量部に対して2〜20質量部の割合で用いることが好ましい。
【0040】
また、上記の荷電制御剤としても、公知のものを用いることができ、正帯電性トナー用の荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。負帯電性トナー用荷電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カリックスアレーン化合物などがある。荷電制御剤は一般に上記のバインダー樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で用いることが好ましい。
【0041】
また、上記の離型剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、一般に上記のバインダー樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で用いることが好ましい。
【0042】
また、上記の外添剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子を使用することができ、特にシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコーンオイル等で疎水化したものを用いるのが好ましい。そして、このような流動化剤を上記のトナー100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で添加させて用いるようにする。外添剤の個数平均一次粒径は10〜100nmであることが好ましい。
【0043】
さらに上記外添剤として、トナーと逆極性の荷電性を有する逆極性粒子を使用してもよい。好適に使用される逆極性粒子はトナーの帯電極性によって適宜選択される。
【0044】
例えば、トナーがキャリアによって負に帯電されるとき、逆極性粒子は現像剤中で正に帯電されている正帯電性粒子である。また例えば、トナーがキャリアによって正に帯電されるとき、逆極性粒子は現像剤中で負に帯電されている負帯電性粒子である。逆極性粒子を二成分系現像剤に含有させ、かつ耐久に伴い現像剤中に逆極性粒子を蓄積させることにより、トナーや後処理剤のキャリアへのスペント等によりキャリアの荷電性が低下しても、逆極性粒子もトナーを正規極性に荷電し得るため、キャリアの荷電性を有効に補うことができ、結果としてキャリアの劣化を抑制できる。
【0045】
トナーとして負帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、正帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に正帯電性を付与する正荷電制御剤を含有させる、あるいは含窒素モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。
【0046】
上記の正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩等を使用することができ、また上記の含窒素モノマーとしては、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニールイミダゾール等を使用することができる。
【0047】
一方、正帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、負帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子に加え、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に負帯電性を付与する負荷電制御剤を含有させる、あるいは含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。上記の負荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用することができる。
【0048】
また、逆極性粒子の帯電性及び疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理するようにしてもよく、特に、無機微粒子に正帯電性を付与する場合には、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましく、また負帯電性を付与する場合には、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
【0049】
逆極性粒子の個数平均粒径は、100〜1000nmであることが好ましい。トナー100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で添加させて用いるようにする。
【0050】
<キャリア>
キャリアとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができ、バインダー型キャリアやコート型キャリアなどが使用できる。キャリア粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。
【0051】
バインダー型キャリアは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリア表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けたりすることもできる。バインダー型キャリアの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御することができる。
【0052】
バインダー型キャリアに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
【0053】
バインダー型キャリアの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。その形状は粒状、球状、針状の何れであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリアを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリア中に50〜90質量%の量で添加することが適当である。
【0054】
バインダー型キャリアの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、これらの樹脂を表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
【0055】
バインダー型キャリアの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリアと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリアの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリア中に打ち込むようにして固定することにより行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリア表面から突き出すようにして固定される。
【0056】
帯電性微粒子としては、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的には、有機系としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用いることができ、帯電レベル及び極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電性の無機微粒子などが用いられる。
【0057】
一方、コート型キャリアは磁性体からなるキャリアコア粒子に樹脂コートがなされてなるキャリアであり、コート型キャリアにおいてもバインダー型キャリア同様、キャリア表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたりできる。コート型キャリアの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができ、バインダー型キャリアと同様の材料を用いることができる。特にコート樹脂はバインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0058】
トナーとキャリアの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されればよく、トナー混合比はトナーとキャリアとの合計量に対して3〜50質量%、好ましくは6〜30質量%が適している。
【0059】
(現像装置の構成)
図2を参照して、本実施形態において用いられる現像装置の構成例と動作例について説明する。
【0060】
現像剤槽17は、ケーシング20により形成されており、通常は内部に現像剤を混合・撹拌し、現像剤担持体13へ現像剤を供給する混合撹拌部材18、19を収納している。
【0061】
ケーシング20の混合撹拌部材19に対向する位置には、好ましくは、トナー濃度検出用のATDC(Automatic Toner Density Control)センサ21が配設されている。
【0062】
現像装置2は通常、像担持体1へと消費される分のトナーを現像剤槽17内に補給するための補給部15を有している。補給部15において、補給トナーを収納した図示しないホッパから送られた補給トナー22が現像剤槽17内へ補給される。
【0063】
現像装置2はまた、現像剤担持体13上の現像剤量を規制するための現像剤薄層化用の規制部材16を有している。
【0064】
現像剤担持体13は通常、固定配置された磁石ローラ26と、これを内包する回転自在なスリーブローラ27とから構成され、画像形成時にはトナー担持体24へとトナーを供給するためのトナー供給バイアスVb1が、現像剤担持体用バイアス電源32により印加される。
【0065】
スリーブローラ27は、その表面に種々のコーティングを施してあっても構わない。また磁石ローラ26は複数の磁極を有する。一例として5極を有する構成を図2に示した。これらの磁極のうち、主磁極N1はトナー担持体24と対向するトナー供給領域8の位置に配されている。
【0066】
また、スリーブローラ27上の現像剤23を剥離するための反発磁界を発生させる同極部S2、S3が現像剤槽17内部に対向した位置14に配置されている。
【0067】
<トナー担持体の構成>
トナー担持体24は現像剤担持体13及び像担持体1のそれぞれに対向するように配され、像担持体1上の静電潜像を現像するための現像バイアスVb2がトナー担持体用バイアス電源31により導電性基体28に印加されている。
【0068】
トナー担持体24は導電性基体28とその表面に誘電層29を持ち、さらに最表層は導電性コート層30で被覆されている。導電性コート層30は導電性基体28とは誘電層29の介在により電気的に絶縁されている。導電性コート層30は導電性基体28と導通可能な構造になっていることが望ましいが、少なくとも画像形成動作中は絶縁されている必要がある。
【0069】
導電性基体28は導電性を有する限りいかなる材料からなっていてもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、スチール、鉄などと、その混合物とを含む金属ローラが挙げられる。その他ほか樹脂材料に導電剤を添加したもの、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂やシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムのバルクに導電剤が添加された部材で構成されたローラであってもよい。
【0070】
導電剤としては、電子導電剤もしくはイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤として、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これに制約されない。イオン導電剤として、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、その他イオン性高分子材料が挙げられるが、これにこだわらない。
【0071】
誘電層29に用いられる部材は、樹脂材料やゴム材料、またはポリアミドイミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリニトロセルローズ、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリイオノマー、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリスチレン、塩化または硫化ポリビニリデン、各種フッ素樹脂、シリコーン樹脂などや、その混合物よりなるポリマー組成など、適当な誘電体物質で構成される。
【0072】
誘電層29は導電性基体28の表面に金型を用いて注入形成してもよく、またスプレー塗装、ディップ塗装など適当な技術によって被覆してもよい。
【0073】
誘電層29の比誘電率は望ましい静電容量に合わせて選べばよい。静電容量(比誘電率/厚み)は小さいほど望ましいが、実際的には後述する所望のトナー供給効率に合わせて設定すればよい。
【0074】
導電性コート層30は、表面抵抗が10Ω程度以下であればいかなる材料でもよい。例えばアルミなどの金属、導電剤を添加したポリマーなどでもよい。
【0075】
導電性コート層30は誘電層29の表面に蒸着法などで形成してもよく、スプレー塗装、ディップ塗装など適当な技術によって被覆してもよい。またトナー供給時、現像時などにおける過度のリーク発生を防止するために、表面に酸化処理などのリーク防止処理を施した導電性コート層を用いてもよい。
【0076】
<現像装置の動作>
図2に示す現像装置2の動作について詳しく説明する。
【0077】
現像剤槽17内の現像剤23は、混合撹拌部材18、19の回転により混合撹拌され、摩擦帯電すると同時に現像剤槽17内で循環搬送され、現像剤担持体13表面のスリーブローラ27へと供給される。
【0078】
現像剤23は、現像剤担持体13内部の磁石ローラ26の磁力によってスリーブローラ27の表面側に保持され、スリーブローラ27とともに回転移動して、現像剤担持体13に対向して設けられた規制部材16で通過量を規制される。
【0079】
その後、現像剤23はトナー担持体24と対向するトナー供給領域8へと搬送される。
【0080】
トナー供給領域8では磁石ローラ26の主磁極N1の磁力によって現像剤穂立ちが形成される。トナー担持体24に印加された現像バイアス電圧Vb2と現像剤担持体13に印加されたトナー供給バイアス電圧Vb1の電位差に基づき形成された電界がトナーに与える力により、現像剤23中のトナーがトナー担持体24側へ供給される。
【0081】
トナー担持体24に供給されたトナー層は、トナー担持体24の回転に伴って現像領域7へと搬送され、現像バイアスVb2と像担持体1上の潜像電位とによって形成される現像電界により潜像が顕像へと現像される。
【0082】
現像バイアスVb2としては公知の種々のバイアスが適用可能であるが、通常は直流電圧に交流電圧を重畳したバイアスが加えられる。現像方式は反転現像方式であってもよいし、または正規現像方式であってもよい。
【0083】
現像装置2には、トナー担持体24上のトナー層の量を検出し、その結果をトナー供給部のトナー供給条件や現像部の現像条件にフィードバックするために、トナー層検知手段を設けてもよい。
【0084】
トナー層検知手段としては、例えばトナー層の反射濃度を光学的に検出するための反射濃度センサやトナー層表面の表面電位を検出するための表面電位センサなどが考えられる。あるいはトナー層検知手段をトナー担持体24に対向して設けるのではなく、トナー担持体24上のトナーを像担持体1上に一旦完全に現像し、像担持体1上で検出するように構成してもよい。
【0085】
現像領域7でトナーを消費したトナー層(現像残トナー)は、さらにトナー担持体24の回転によって、現像剤担持体13と対向するトナー供給領域8へと搬送され、現像剤担持体13により一部回収される。
【0086】
ここで、図2では現像剤担持体13とトナー担持体24の回転方向を同方向に設定しているが、逆回転に設定することもできる。
【0087】
一方、トナー供給領域8を通過した現像剤担持体13上の現像剤23は、スリーブの回転とともに現像剤槽17に向けて搬送され、磁石ローラ26の現像剤回収領域14に対応する位置に設けられた反発磁界を発生させる同極部S2、S3によって現像剤担持体13上から剥離され、現像剤槽17内へと回収される。
【0088】
補給部15に設けられた不図示の補給制御部は、ATDCセンサ21の出力値から現像剤23中のトナー濃度が画像濃度確保のための最低トナー濃度以下になったことを検出すると、不図示のトナー補給手段によってホッパ内に貯蔵された補給トナー22がトナー補給部15を介して現像剤槽17内へ供給される。
【0089】
(トナー担持体の表面の構成と現像履歴抑制について)
<現像履歴の発生メカニズム>
現像履歴の現象については、すでに図3を用いて説明しているので、次にその発生メカニズムについて説明する。
【0090】
図4は、従来構成として、その表面に誘電層とその上にさらに導電性コート層を形成していない金属ローラをトナー担持体として用いた場合のトナー担持体上のトナー量M/A(単位面積当たりに換算した量)の推移を、横軸をトナー担持体回転回数、縦軸をトナー供給領域で供給された後のトナー担持体上のトナー量としてプロットしたものである。
【0091】
現像領域で黒ベタの画像を現像してトナー担持体上にトナーがほとんどない状態から出発して、その後白画像を連続させることで現像剤担持体と対向するトナー供給領域を通過する毎にトナー量は増加していくことがわかる。また、ある一定以上のトナー担持体の周回を繰り返すとそれ以上トナー量は増加せず、飽和状態に至る。
【0092】
この図から、従来構成のトナー担持体を用いた場合の、連続して白の画像を繰り返した後のトナー量と、黒ベタの画像を現像した後1回トナー供給領域を通過した後のトナー量とは、差が生じていることがわかる(以後、この差をΔM/Aと呼称する)。
【0093】
図5は、このΔM/Aの差を説明するための、トナー担持体上のトナー層の模式図である。
【0094】
図5(a)は、図4における非画像部(白画像部)繰り返し後のトナー量を表面に持つトナー担持体上のトナー層から、白画像と部分的に黒ベタの画像とを現像した直後のトナー層の状態を示し、図5(b)は、その後トナー供給領域を1回通過した後のトナー担持体上のトナー層の状態を示している。
【0095】
Sはトナー担持体の表面、Twは連続白の画像を繰り返した後のトナー層、Tk0は黒ベタ画像を現像した直後のトナー層、Tk1は、黒ベタ画像を現像した後1回トナー供給領域を通過した後のトナー層(消費後1週目のトナー層)をそれぞれ示している。
【0096】
図5(a)に示すように、黒ベタの画像を現像した領域の現像直後のトナー層Tk0は、ほとんどトナーが無くなり、白画像に対応する領域のトナー層Twは、現像領域通過後もほとんど変化していない。
【0097】
この状態でトナー供給領域を1回通過すると、図5(b)に示すように白画像に対応する領域のトナー層Twの増加は、ほとんど無く、黒ベタの画像を現像した領域のトナー層Tk1は、1回のトナー供給が行われ、その分増加している。
【0098】
しかし、黒ベタ画像を現像した領域のトナー量Tk1は、消費したトナー量を1回のトナー供給で埋めきるほど十分には供給できておらず、連続した白画像に対応した領域のトナー量Twと、ΔM/Aの差が生じている。
【0099】
このトナー層が現像に供されることによって白後と黒後の現像特性に違いが生じ、現像履歴(ゴースト)となって画像上に現れることになる。このことを踏まえると、ΔM/Aを小さくすることができればそれだけ現像した後の濃度のコントラストも小さくすることができ、現像履歴(ゴースト)の発生を抑制することができる。
【0100】
<トナー供給能力とΔM/A上昇>
トナー担持体上に誘電層を設けない場合を例にして、現像剤担持体からトナー担持体へのトナー供給能力とバイアス設定の関係について図6を用いて説明する。
【0101】
トナー供給用の現像剤担持体、トナー担持体のそれぞれに印加される各バイアス電圧は、直流電圧であっても、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧であってもよいが、ここでは単純のためにそれぞれの印加電圧の平均値を用いて説明する。
【0102】
ここで、印加電圧の平均値とはDCバイアスであれば電圧値、AC重畳バイアスであればDC成分の値である。例えばDuty比を設けた矩形波など非対称波形の場合は時間平均のことである(以下、同様)。
【0103】
現像剤担持体上の現像剤からトナー担持体へトナーを供給させるために、現像剤担持体とトナー担持体の間にトナー供給電位差VDC(=Vb2−Vb1)が設定されている。
【0104】
トナー供給領域において、現像剤担持体からトナー担持体へのトナー供給量は、トナー供給電位差VDCの大きさに依存するが、トナー供給後の現像剤中のキャリアに発生するカウンターチャージなどの影響によって、1回のトナー供給では電位差のすべてを埋めることはできない。
【0105】
現像領域を通過したトナー担持体上は現像残トナーが蓄積した状態で再びトナー供給領域に搬送され、トナー供給が行われる。繰り返しトナー供給が行われることによってトナー担持体上のトナー量は次第に増大し、その最大供給量は、トナー担持体上に供給されたトナー層によるトナー層電位Vtdがトナー供給電位差VDCとほぼ等しくなる量である(図6参照)。
【0106】
このように通常の構成においては、1回のトナー供給で電位差のすべてを埋めることができないために、トナー供給履歴(トナー供給前のトナー担持体上のトナー量、すなわち現像履歴)によってトナー担持体上のトナー量にコントラスト(ΔM/A)が生じる。従って、1回のトナー供給によるトナー電位とトナー供給電位差VDCの差をいかに小さくするかが、ΔM/A、すなわち現像履歴(ゴースト)抑制の重要な要素となる。
【0107】
<トナー担持体の表面構成とΔM/Aの抑制>
本実施形態の現像装置2においては、トナー担持体24は導電性基体28とその表面に誘電層29を有し、さらに最表層は導電性コート層30で被覆されている。
【0108】
導電性コート層30は導電性基体28とは誘電層29の介在により電気的に絶縁されている。
【0109】
このトナー担持体24の表面構成によるΔM/A抑制効果について、以下に説明する。
【0110】
トナー担持体24表面に誘電層29を設けることによって、設けない場合よりも、トナーが付着するトナー担持体24表面と導電性基体28間の静電容量は小さくなる。すなわち、同じトナー量でもトナー層の表面電位は大きくなる。
【0111】
そうすると、1回のトナー供給による表面電位上昇が大きくなり、トナー供給電位差VDCとの差は小さくなる。図6に示した関係でいうと、相対的に1回でのトナー供給能力が上がり、飽和状態(トナー供給電位差VDCに相当するトナー量)との差が小さくなり、ΔM/Aが抑制される。すなわち現像履歴(ゴースト)発生が抑制できる。
【0112】
また上記理由により、導電性コート層30は導電性基体28とは誘電層29の介在により電気的に絶縁されている必要がある。少なくとも画像形成動作中は絶縁されている必要がある。
【0113】
導電性コート層30が導電性基体28と導通していると、上記誘電層29による静電容量の変化は意味をなさず、トナー供給能力にも変化は生じない。
【0114】
また、導電性コート層30を設けないと、上記の相対的なトナー供給能力の向上と現像履歴(ゴースト)抑制の効果は見られるものの、次のような理由で安定したトナー供給能力が得られにくい。
【0115】
すなわち、トナー担持体24の誘電層29表面は、現像剤担持体13との対向部で現像剤23による摩擦を受けて局所的に帯電する。その結果、白地画像領域では局所的に像担持体1との電位差が小さくなるためにカブリが発生し、逆にハーフ画像領域では局所的にトナー量が減少するために濃淡ムラが発生する。
【0116】
導電性コート層30を設けてあると、表面電位に局所的なムラが生じた場合であっても速やかに電位ムラをならすことができ、均質な画像を維持することができる。
【0117】
上記により、本実施形態に係る現像装置2のトナー担持体24は誘電層29を有し、かつその誘電層の表面には導電性コート層30を設けている。また導電性コート層30は、少なくとも画像形成動作中は絶縁(フロート状態)されている必要がある。
【0118】
しかしながら、導電性コート層30は導電性基体28と導通可能な手段を有していることが望ましい。例えば、導電性基体28と導通し、トナー担持体24端部で導電性コート層30と接触するかしないかを制御可能な接点部を備えていてもよい。これにより、画像形成動作中以外のタイミングで、適宜、フロート状態の導電性コート層30に蓄積した電荷を除電することで、より一層の効果を奏することができる。
【0119】
トナー担持体24の有する誘電層29と導電性コート層30によるΔM/Aの抑制、すなわち現像履歴(ゴースト)発生の抑制効果については、後述の実施例の中でさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0120】
本発明の効果を確認するために、次の実施例、比較例に挙げる現像装置を用いて比較実験を行った。
【0121】
<条件設定>
実施例、比較例1及び2に共通する条件として次のような条件設定で実験を行った。なお実施例、比較例1及び2の現像装置で異なるのは、トナー担持体に関する構成だけである。
【0122】
現像剤として、トナーはスチレンアクリル樹脂を主成分とするシアントナーを、キャリアとしてフェライトコアに樹脂コートを施したキャリアをそれぞれ使用した。
【0123】
トナーの帯電極性はマイナス極性、現像剤中のトナー濃度は8%に設定した。
【0124】
像担持体とトナー担持体との現像ギャップは0.15mmとし、トナー担持体と現像剤担持体とのギャップは0.6mmとした。
【0125】
トナー担持体に印加する電圧を振幅1.4kV、DC成分−300V、周波数4kHz、Duty比50%の矩形波電圧に設定した。
【0126】
現像剤担持体に印加する電圧は、同じく矩形波電圧で、振幅1.6kV、周波数4kHz、Duty比50%とし、DC成分は後に述べる方法で実施例、比較例1及び2それぞれに設定した。
【0127】
トナー担持体の矩形波電圧と現像剤担持体の矩形波は、互いに反転したような波形になるよう、現像剤担持体の位相をトナー担持体の位相に対して180°遅らせた位相に設定した。
【0128】
像担持体とトナー担持体とは、それぞれの表面が同一方向に移動するような回転方向(ウィズ回転)とし、周速度は、像担持体を750mm/s、トナー担持体は像担持体に対し相対速度(現像θ比)1、現像剤担持体は像担持体に対し相対速度(現像θ比)1.5とした。
【0129】
像担持体上に形成された静電潜像の背景部電位は−500V、画像部電位は−50Vとなるよう調整した。
【0130】
<トナー担持体の表面構成>
比較例1では、トナー担持体として表面を白アルマイト処理しただけのアルミ製のローラを用いた。
【0131】
比較例2では、トナー担持体として、アルミ製のローラ表面に、誘電層として誘電率2.1のPTFEを30μmの厚みでスプレー法により塗布したローラを用いた。
【0132】
実施例では、比較例2のローラの表面にさらに導電性コート層として、カーボンを添加して表面抵抗率を10Ω程度に調整したPTFEを、15μmの厚みでスプレー法により塗布した。
【0133】
<実験内容>
これらのトナー担持体を設置した比較例1及び2と実施例の現像装置を用いて、まず、トナー供給バイアスとトナー担持体上に供給されたトナー供給量の関係を測定した。結果を図7に示す。
【0134】
図中、横軸はトナー担持体に印加した電圧のDC成分から現像剤担持体に印加した電圧のDC成分を引いた値であり、トナー供給電位差VDCと呼んでいる。
【0135】
また、L1及びL2のプロットで示してあるのが、それぞれ比較例1及び2のトナー担持体上のトナー量であり、L3のプロットで示してあるのが実施例のトナー担持体上のトナー量である。
【0136】
この実験結果から、実使用条件での現像剤担持体上のバイアスのDC成分が決まり、そのときのΔM/Aを知ることができる。
【0137】
比較例1及び2、そして実施例では、消費後1周目トナー量を共に3g/mに設定する。これを下回ると消費後1周目のトナー量が不足し、画像濃度が不十分になる恐れがある。また、これを上回る設定にしようとするとトナー供給電位差VDCを必要以上に高めに設定せねばならず、トナー担持体からの磁気ブラシによるトナーの回収が悪化し、ゴースト抑制に悪影響を与える。
【0138】
図7から消費後1周目トナー量を共に3g/mにするためのトナー供給電位差VDCの値を知ることができる。比較例1(L1)ではトナー供給電位差VDCが90V、実施例(L3)及び比較例2(L2)ではトナー供給電位差VDCが170Vとなる。
【0139】
このとき、トナー担持体に印加する電圧のDC成分が−300Vであることから、現像剤担持体に印加する電圧のDC成分は、比較例1が−390V、比較例2及び実施例が−470Vとなる。
【0140】
図8はトナー担持体上のトナー量の推移を、横軸をトナー担持体回転回数とし、縦軸をトナー担持体上に供給されているトナー量としてプロットしたものである。
【0141】
トナー担持体上にトナーがない状態から出発して、L1のプロットで示した比較例1ではトナー量は周回を重ねるごとに増加していき、ある一定以上の周回を繰り返すとそれ以上のトナー量の増加が停止し、飽和に至る。1回転目のトナー量と飽和後の30回転目のトナー量の差(ΔM/A)はおよそ2.4g/mであった。
【0142】
一方L2及びL3のプロットで示した比較例2及び実施例では、トナー量は周回を重ねてもほぼ変化せず、ΔM/Aはおよそ0.2g/mであった。すなわち比較例2及び実施例の構成をとることで現像履歴(ゴースト)抑制が達成されたといえる。
【0143】
但し後述の実験結果に示されるように、比較例2では、安定した現像履歴(ゴースト)抑制が得られない。
【0144】
<誘電層を有するトナー担持体でのΔM/Aの抑制効果について>
図9に、供給バイアスと、トナー担持体上に供給されたトナー層の表面電位の関係を測定した結果を示す。図中、横軸は図7と共通であり、縦軸をトナー担持体一回転目でトナー担持体上に供給されたトナーによる表面電位としてプロットしたものである。
【0145】
L1のプロットで示した比較例1では、トナー供給電位差VDCに対するトナー層電位の割合(供給効率)が25%程度であるのに対して、L2及びL3のプロットで示した比較例2及び実施例では80%程度の供給効率となっている。
【0146】
トナー担持体へのトナー供給を重ねるたびにトナー層電位はトナー供給電位差VDCに近づく。1回のトナー供給量3g/m設定で、80%の供給効率であるから、トナー層電位が100%、すなわちトナー供給電位差VDCに等しくなるトナー量は4g/m程度となる(実際にはそれに至る前に飽和状態となる)。
【0147】
従って、比較例2及び実施例ではトナー層電位がトナー供給電位差VDCに等しくなっても、ΔM/Aはせいぜい1g/m程度であることがわかる。
【0148】
このように、トナー担持体表面に誘電層を有する比較例2及び実施例では、誘電層を有しない比較例1に対して供給効率が大幅に向上しているためにΔM/Aの上昇が抑制されたといえる。
【0149】
次に、トナー担持体表面に誘電層を有する比較例2及び実施例において供給効率が大幅に向上した理由についてさらに説明する。
【0150】
図10に、トナー担持体24上のトナー層の概略図を、(a)導電性基体28にアルマイト処理のみを施した例と(b)上記の実施例について示す。
【0151】
(a)の例では、表面のアルマイト層40は比誘電率が8、層厚d1が5μm程度であり、静電容量が比較的大きい。一方(b)の実施例では誘電層29の比誘電率が2.1、層厚d2が30μmで静電容量が小さいため、少量のトナー付着でも大きな電位上昇が発生する。
【0152】
このため静電容量が小さい比較例2及び実施例では、比較例1と同程度のトナー量を供給しても表面電位はより高くなり、トナー供給電位差VDCに対する表面電位の割合(トナー供給効率)が大幅に向上すると考えられる。
【0153】
<出力画像評価>
最後に実際の画像においてゴーストの発生が抑制されているのを確かめるため、上記の条件において、図3に示したチャートを実際の画像形成装置で印刷して評価を行った。
【0154】
評価は図3に示すハーフ画像領域における黒ベタ印刷領域のトナー担持体1周後とその下流側白ベタ領域のトナー担持体1周後に対応する領域を、色彩色差計ミノルタCR3000でL*a*b*色空間座標の測定を行い、両者の色差ΔE=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)]を指標とした(ΔEが小さいほど良好)。
【0155】
その結果、比較例1ではΔE=0.9で目視でもゴーストが視認できるレベルであったのに対し、比較例2及び実施例の構成ではΔE=0.4で目視ではゴーストがほとんど視認できないレベルに改善されていた。
【0156】
出力画像の目視評価を行った結果を合わせて表1に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
比較例1及び実施例ではカブリ、濃淡ムラとも問題のないレベルであるのに対して、比較例2の場合、白地画像領域ではカブリが、ハーフ画像領域には濃淡ムラが発生していた。これは比較例2のトナー担持体の最表面が高抵抗の誘電体層であることに起因する。
【0159】
トナー担持体表面は現像剤担持体との対向部で現像剤による摩擦を受けて局所的に帯電する。比較例2では表面がPTFEであるため現像剤に対してマイナスに帯電する。その結果、白地画像領域では局所的に像担持体との電位差が小さくなるためにカブリを発生し、逆にハーフ画像領域では局所的にトナー量が減少するために濃淡ムラが発生する。
【0160】
対して実施例ではPTFEの上にさらに導電コート層を設けているため、局所的に摩擦帯電が生じても帯電電荷が拡散され、カブリや濃淡ムラが発生しない。従って、長期的に安定して、ゴーストの発生を抑制し、カブリや濃淡ムラも発生しない良好な品質の画像を得ることができる。
【0161】
上述してきたように、本実施形態に係る現像装置、及び該現像装置を備えた画像形成装置によれば、ハイブリッド現像装置において、導電性のトナー担持体の表面に誘電層を設けているため、現像剤担持体からトナー担持体へのトナーの供給性を向上させることができる。また、該誘電層の表面に導電層を設けているため、トナー供給性を安定して維持できる。よって、トナー担持体のトナー消費の違いによる現像履歴(ゴースト)の発生を抑制し、高品質の画像を長期に渡って提供することができる。
【0162】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1 像担持体
2 現像装置
3 帯電部材
4 転写ローラ
5 クリーニングブレード
6 露光装置
7 現像領域
8 トナー供給領域
13 現像剤担持体
14 現像剤回収領域
15 トナー補給部
16 規制部材
17 現像剤槽
18、19 混合攪拌部材
20 現像器筐体
21 ATDCセンサ
22 補給トナー
23 現像剤
24 トナー担持体
26 磁石ローラ
27 スリーブローラ
28 導電性基体
29 誘電層
30 導電性コート層
31 トナー担持体用バイアス電源
32 現像剤担持体用バイアス電源
51 白地部
52 ベタ画像領域
53 ハーフトーン画像領域
54 ゴーストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナーを担持搬送し、対向する像担持体上に形成された潜像を前記トナーで現像するトナー担持体と、
表面にトナーとキャリアを含む現像剤を担持搬送し、前記現像剤中のトナーを対向する前記トナー担持体に供給する現像剤担持体と、を有する現像装置であって、
前記トナー担持体は、導電性基体の表面に誘電層を有し、さらに該誘電層の表面に導電性コート層を設けてなり、
前記導電性コート層は、少なくとも現像動作中は前記導電性基体から電気的に絶縁されたフロート状態にある
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
現像動作中以外のタイミングにおいて、前記導電性コート層を前記導電性基体と電気的に導通させることができる手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
像担持体と、該像担持体上に形成された潜像を現像する現像装置と、を有する画像形成装置であって、
前記現像装置は、請求項1または2に記載の現像装置である
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128201(P2011−128201A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283863(P2009−283863)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】