説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】現像装置の、現像ローラと現像ローラにトナーを供給するトナー供給ローラの当接部の上方領域では、発生するトナーの対流により帯電荷量の異なるトナーが混在して現像ローラへ供給されるため、帯電不良による画像不良を招くという問題があった。
【解決手段】現像ローラ16と、現像ローラ16と対向部で対向して現像ローラ16にトナーを供給するトナー供給ローラ18と、対向部の、トナー供給ローラ18の回転方向上流側に備えられる現像剤ガイド部材21とを備え、現像剤ガイド部材21が、現像ローラ16と対向して現像ローラ16と所定量の間隙を有する第1の対応曲面部21aと、トナー供給ローラ18に対向してトナー供給ローラ18と所定量の間隔を有する第2の対応曲面部21bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の潜像担持体に形成された潜像を現像して可視化するのに用いられる現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の現像装置では、感光体ドラムに形成された静電潜像にトナーを付与して現像する現像ローラに、トナーホッパから供給されるトナーを現像ローラに供給する供給ローラを接して配置した構成を有するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−137236号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の印字速度の高速化によりトナーホッパを構成している金属とトナー供給ローラを構成している材料が摺擦することでトナー供給ローラが磨耗し、接触圧が小さくなるため、結果的に十分なトナーを現像ローラへ供給することが出来なくなり濃度が低下するという問題があった。また、現像ローラとトナー供給ローラの接触部より、供給ローラの回転方向上流側の接触部近傍でトナーの対流が発生し、この対流によって帯電荷量の異なるトナーが混在して現像ローラへ供給されるため、帯電不良による画像不良を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による現像装置は、
現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体と対向部で対向し、前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する現像剤供給部材と、前記対向部の、前記現像剤供給部材の移動方向上流側に備えられる現像剤ガイド部材とを備え、
前記現像剤ガイド部材は、前記現像剤担持体と対向し、前記現像剤担持体と所定量の間隙を有する第1の対応部と、前記現像剤供給部材と対向し、前記現像剤供給部材と所定量の間隙を有する第2の対応部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記したトナー対流の発生を抑制し、トナー供給ローラから現像ローラへのトナー供給を促進することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による現像装置を採用する実施の形態1の画像形成装置の要部構成を概略的に示す概略構成図である。
【図2】転写ベルト、転写ローラ、記録用紙と共に、ブラック(K)の現像装置を模式的に示す概略構成図である。
【図3】本実施の形態1の画像形成装置の制御系のうち、各現像装置の電圧制御系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】現像剤ガイド部材、現像ローラ、及びトナー供給ローラの位置関係を示す部分拡大図である。
【図5】実施の形態1における現像剤ガイド部材の外観図である。
【図6】回転部材周辺のトナーの流れの説明に供する図である。
【図7】現像剤ガイド部材を回転部材の周辺に配置した際の、トナーの流れを考察した際の評価結果を示す表である。
【図8】現像剤ガイド部材を配置して行った印刷枚数と印字濃度の関係を測定した試験結果を、参考例の試験結果と共に示すグラフである。
【図9】実施の形態1の現像剤ガイド部材の変形例を示す図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2の画像形成装置の制御系のうち、各現像装置の電圧制御系の要部を示すブロック図である。
【図11】本発明を、現像装置を1つ備えた単色(例えばブラック)用の電子写真プリンタに用いた例を示す要部構成図である。
【図12】本発明を、間接転写方式のタンデム型カラー電子写真プリンタに用いた例を示す要部構成図である。
【図13】第1対応曲面部及び第2対応曲面部の、対応するローラの回転方向下流側の端部付近に発生する固着部分の説明に供する説明図である。
【図14】試験において、棒状の部材を用いて行った比較例2の説明に供する図である。
【図15】現像剤ガイド部材を使用しない現像装置の例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明による現像装置を採用する実施の形態1の画像形成装置の要部構成を概略的に示す概略構成図である。
【0009】
同図に示す画像形成装置1は、直接転写方式のタンデム型カラー電子写真プリンタとしての構成を備え、装置内部には、記録媒体としての記録用紙35を収納する給紙カセット33が装着され、記録用紙35を給紙カセット33から取り出す給紙ローラ43、記録用紙35を画像形成部まで搬送する搬送ローラ41が配置される。また、画像形成装置1内には、画像形成部として、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色の現像剤としてのトナーの画像を形成する現像装置10K,10Y,10M,10C(区別する必要のない場合は現像装置10と称す)が、記録用紙35の搬送経路に沿って、上流側から順に配置されている。これらの現像装置10は、所定色のトナーを使用する外は同じ構成を有する。
【0010】
また、画像形成装置1内には、ベルトユニットとして、記録用紙35を搬送する転写ベルト32、図示せぬ駆動部より回転されて転写ベルト32を矢印方向に駆動するドライブローラ30、ドライブローラ30と対を成して転写ベルト32を張架するテンションローラ31、及び転写ベルト32上に付着したトナーを掻き取ってクリーニングするクリーニングブレード34が配置され、更に転写部として、各現像装置10の感光体ドラム11上に形成されたトナー画像を記録用紙35上に転写すべく、転写ベルト32を挟むように各感光体ドラム11に対向して転写ローラ36が配置されている。
【0011】
尚、図1中のX、Y、Zの各軸は、記録用紙35が現像装置10を通過する際の搬送方向にX軸をとり、後述する感光体ドラム11の回転軸方向にY軸をとり、これら両軸と直交する方向にZ軸をとっている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各軸が示される場合、これらの軸方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のXYZ軸は、各図の描写部分が、図1に示す画像形成装置1を構成する際の配置方向を示している。またここでは、Z軸が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0012】
ここで、ブラック(K)の現像装置10Kを例にとり、その内部構造を説明する。図2は、転写ベルト32、転写ローラ36、記録用紙35と共に、ブラック(K)の現像装置10Kを模式的に示す概略構成図である。
【0013】
図2に示すように各現像装置10には、像担持体としての感光体ドラム11が矢印方向に回転可能に配置され、この感光体ドラム11の周囲には、その回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に一定の圧力で接触して電荷を供給して帯電させる帯電部材としての帯電ローラ12、帯電された感光体ドラム11の表面に、例えばLEDヘッド等の光源による光を照射して静電潜像を形成する露光装置13が配設される。
【0014】
更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、対応する所定色(ここではブラック(K))のトナーを付着させて現像する現像部25、感光体ドラム11上のトナー現像を記録用紙35に転写した際に残留した転写残トナーを除去するクリーニングブレード19が配設されている。このためクリーニングブレード19は弾性体で形成され、そのエッジ部が感光体ドラム11の表面に一定の圧力で接触するように配置されている。尚、これら各装置に用いられている回転体は、図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転する。
【0015】
現像部25は、現像剤としてのトナー14を収容し、その下部に形成された開口部15aからトナー14を排出する現像剤収容器15、現像剤収容器15から供給されたトナー14を貯蔵するトナー貯蔵部20、感光体ドラム11に一定の圧力で接触する現像剤担持体としての現像ローラ16、この現像ローラ16にトナー14を供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ18、現像ローラ16上のトナー14を薄層化する現像ブレード17、及び現像剤ガイド部材21を有し、現像ローラ16により、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を薄層化されたトナー14で顕像化、即ち現像する。
【0016】
現像ローラ16とトナー供給ローラ18とは、一定の圧力で当接するように、互いに平行に配置され、それぞれ同図に示される矢印の方向(同方向)に回転する。また、現像ブレード17と現像ローラ16とは、同図に示すように、例えば現像ブレード17の折り曲げ部分が現像ローラ16の周面に一定の圧力で接触するように、互いに平行に配置される。尚、これら各装置に用いられている回転体は、図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転する。尚、現像剤ガイド部材21については後で詳しく説明する。
【0017】
ここでは、現像ローラ16とトナー供給ローラ18が一定の圧力で当接する配置としたが、必ずしも当接する必要はなく、所定の間隙を介して対向するように配置してもよい。
【0018】
図1に示すように、記録用紙35の搬送経路に沿って配列された4つの現像装置10の搬送方向下流側には、記録用紙35上に形成されたトナー画像を、熱及び圧力を加えることによって定着させる定着装置40、定着装置40を通過した記録用紙35を搬送し、画像が定着された記録用紙35を貯留する排出部44に記録用紙35を排出する搬送ローラ42が配置される。
【0019】
図3は、本実施の形態1の画像形成装置1の制御系のうち、各現像装置10の電圧制御系の要部構成を示すブロック図である。
【0020】
本実施の形態の画像形成装置1は、印刷制御部101により制御される。このうち、図3に示すように、電圧制御部102は、印刷制御部101の指示により、帯電電圧印加部104を制御して帯電ローラ12へ帯電ローラ印加電圧Vbを印加し、同じく、現像ローラ電圧印加部105を制御して現像ローラ16へ現像ローラ印加電圧Vcを印加し、同じく、供給ローラ電圧印加部106を制御して供給ローラ18へ供給ローラ印加電圧Vdを印加し、同じく、ブレード電圧印加部107を制御して現像ブレード17へ現像ブレード印加電圧Veを印加する。
【0021】
尚、図3では、4つの画像形成部10K,10Y,10M,10Cの各現像剤ガイド部材21、帯電ローラ12、現像ローラ16、供給ローラ18、及び現像ブレード17を、省略してそれぞれ1つのブロックで表している。
【0022】
以上の構成において、画像形成装置1の印刷動作について、図1〜図3を参照しながら説明する。尚、図1中の点線矢印は、搬送される記録用紙35の搬送方向を示す。
【0023】
各現像装置10の感光体ドラム11の表面は、帯電電圧印加部104(図3)により帯電電圧Vbが印加された帯電ローラ12により帯電される。続いて、感光体ドラム11が矢印方向に回転することによって、帯電された感光体ドラム11表面が露光装置13の付近に到達すると、露光装置13によって露光され、感光体ドラム11表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像部25により現像され、感光体ドラム11の表面にトナー画像が形成される。
【0024】
一方、給紙カセット33に収納された記録用紙35は、給紙ローラ43によって給紙カセット33から取り出され、搬送ローラ41及び転写ベルト32により、先ず現像装置10Kに対向して配置された最上流の転写ローラ36の付近に搬送される。そして、感光体ドラム11が回転することによって、現像によって得られた感光体ドラム11の表面上のトナー画像が転写ローラ36及び転写ベルト32と対向する位置に到達すると、図示しない電源装置により電圧が印加されている転写ローラ36と転写ベルト32によって、感光体ドラム11表面上のブラック(B)のトナー画像が記録用紙35上に転写される。
【0025】
以上のトナー画像の記録用紙35上への転写が、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のトナー画像を形成する現像装置10K,10Y,10M,10Cを通過する過程で順次重ねて行われ、記録用紙35上に各色のトナーによるカラー画像が形成される。
【0026】
続いて、表面に各色のトナー画像が形成された記録用紙35は、転写ベルト32の回転走行によって、定着装置40に搬送される。記録用紙35上のトナー画像は、定着装置40によって加圧及び加熱されて溶融し、記録用紙35上に定着される。更に、記録用紙35は、搬送ローラ42により排出部44に排出され、画像形成の動作が終了する。この間、記録用紙35を分離した後の転写ベルト32は、その表面に残留したトナーやその他の異物を除去するクリーニングブレード34により清掃される。
【0027】
次に、図2に示す現像部25の現像剤ガイド部材21の、形状及び現像ローラ16、トナー供給ローラ17との位置関係について説明する。図4は、現像剤ガイド部材21、現像ローラ16、及びトナー供給ローラ17の位置関係を示す部分拡大図であり、図5は、現像剤ガイド部材21の外観図である。
【0028】
図4、図5に示すように、現像剤ガイド部材21は、現像ローラ16とトナー供給ローラ18が接する接触部の、トナー供給ローラ18の回転方向上流側の所定の位置に配置されたとき、現像ローラ16の周面に対向し、Y軸と垂直となる断面が現像ローラ16の周面に沿う略円弧形状となる曲面を有する第1の対応面部としての第1対応曲面部21aと、トナー供給ローラ18の周面に対向し、Y軸と垂直となる断面がトナー供給ローラ18の周面に沿う略円弧形状となる曲面を有する第2の対応面部としての第2対応曲面部21bと、第1対応曲面部の一端部と第2対応曲面部の一端部が背中合せで隣接する中央凸部21cと、第1対応曲面部の他端21eから第2対応曲面部の他端21fまでY軸と垂直となる断面が略円弧状に延在する凸面部21dをと有する。即ち、ここでの現像剤ガイド部材21は、断面が略扇型の形状を有している。
【0029】
そして、現像剤ガイド部材21は、現像ローラ16とトナー供給ローラ18との当接部が形成されるY軸方向の全領域をカバーする長さを有し、図4に示すように、例えば、現像ローラ16の周面と第1対応曲面部21a間、及びトナー供給ローラ18の周面と第2対応曲面部21b間が、なるべく均等に、平均で約100μm程度の間隙が生ずるように形成され、配置される。また現像剤ガイド部材21の材料として、ここでは、少なくとも第1と第2の対応曲面部に、例えばウレタン、シリコン、アクリルスチレン等の材料を用いた。
【0030】
ここで、現像剤ガイド部材21を上記のように配置することによる周辺トナーの流れについて、図6を参照しながら説明する。
【0031】
一般に、回転ローラ201の周囲にトナー等の粉体が存在する場合、図6に示すように、回転ローラ201の周囲には、粉体による幾つかの領域が形成されると考えられる。
【0032】
第1の領域202は、回転ローラ201の表面上に形成される層であり、回転ローラ201の表面からの距離(放射方向)hが0〜100μm程度の範囲の層で、回転ローラ201に付着している粉体、及びこの粉体と近傍に存在する粉体との摩擦によって回転している(方向は複雑なので説明を省略する)粉体が存在する領域である。
【0033】
第2の領域203は、第1の領域202の上層であり、回転ローラ201の表面からの距離(放射方向)hが100〜300μm程度の範囲の層で、外力が無い限り静止し、第1の領域202で発生した静電作用などを受ける粉体が存在する領域である。
【0034】
第3の領域204は、第2の領域203の外側の領域に相当し、外力が無い限り静止している粉体が存在している領域である。
【0035】
現像ローラ16の場合、その表面には、通常0.45mg程度のトナーが付着し、嵩密度(例えば約0.38〜0.43g/cm)であることから考えて約10μm程の層(第1の領域201に相当)があるものと想定され、この層のトナーは、現像ローラ16の回転に作用されて動いていると考えられる。その上層(第2の領域203に相当)のトナーは、現像ローラ16に印加される現像ローラ印加電圧Vcによるバイアス作用によって現像ローラ16の周辺に引き寄せられ、またトナー同士の摩擦帯電によって生じた静帯電によってブリッジが形成されていると考えられる。
【0036】
トナー供給ローラ18の場合、表面と一体的に移動する100μm程度のトナー層があり、その上層に上記した現像ローラ16の場合と同様の、第1の領域201に相当する層、第2の領域203に相当する層が形成されるものと考えられる。
【0037】
図4において、現像ローラ16の周面と現像剤ガイド部材21の第1対応曲面部21aが対向する第1対応部27、及びトナー供給ローラ18の周面と現像剤ガイド部材21の第2対応曲面部21bが対向する第2対応部28の間隙について図6、図7を参照しながら考察する。
【0038】
間隙が第1の領域202(図6)の層の範囲にある場合、
・現像ローラ16では規制力が大きくなるために帯電が高くなる、
・現像ローラ16の表面にトナーが固着することが懸念され、トナー供給ローラ18では、部材のセル(スポンジ構造の穴)にトナーが詰まり、これによりグレイニネスやディザなど細かい画像の表現力が低下し、残像などの画像不良が発生する、
などの不良発生が考えられる。
【0039】
間隙が第2の領域203(図6)の層の範囲にある場合、現像ローラ16又はトナー供給ローラ18からの外力はあまり作用しないものの、印加される電圧によってローラ部材にトナーが供給されやすくなる作用があると考えられる。
【0040】
間隙が第3の領域204(図6)の層の範囲にある場合、
トナーの溜りが解消されるのみで、上記の作用やそれ以外の作用は、小さいか又は無いものと考えられる。
【0041】
次に、第1、第2の各領域において、第1対応部27と第2対応部28の各間隙の大小を、異なる組み合わせで設定した場合について考察する。
【0042】
(1)第1と第2の対応曲面部21a,21bの両方、又はどちらか一方が第1の領域202にある場合:
「第1対応部27の間隙」>「第2対応部28の間隙」
及び
「第1対応部27の間隙」<「第2対応部28の間隙」
のどちらにおいても、上記した理由により、不具合が多くなると考えられる。
【0043】
(2)第1と第2の対応曲面部21a,21bが共に第2の領域203にある場合:
「第1対応部27の間隙」>「第2対応部28の間隙」
のとき、現像ローラ16への供給力があるので、印字濃度が高くなることが予想される。しかしながら、上記したように外力が無ければトナーは静止しており、トナーが他より供給されない場合、カスレの原因となる。尚、重力によってトナーを供給している面もあるため、設置する現像剤ガイド部材21の第2対応部28側の「ひさし」の先端(第2対応曲面部の他端21fに相当)はトナー供給ローラ18の回転中心18aよりも現像ローラ16との接触部側に位置するように形成し、設定した。
一方、「第1対応部27の間隙」<「第2対応部28の間隙」
のとき、第1対応部27側の「ひさし」があるため、重力による現像ローラ16へのトナー供給力は小さくなっている。しかし現像ローラ16に付着できなかったトナーがこの間隙を通り抜けるため、現像剤ガイド部材21に例えばバイアス電圧を印加する等により、濃度増加に寄与できるものと思われる。
【0044】
(3)第1と第2の対応曲面部21a,21bのどちらか一方の最近接面が第2の領域203にある場合:
「第1対応部27の間隙」>「第2対応部28の間隙」
の時、上記した(2)の場合と同等の効果が得られ、
「第1対応部27の間隙」<「第2対応部28の間隙」
の時、上記した(2)の場合よりも得られる効果が小さいものと考えられる。
【0045】
(4)第1と第2の対応曲面部21a,21bが共に第3の領域204にある場合:
第1と第2の対応曲面部21a,21bを設けることによる効果はないものと考えられる。
【0046】
図7の表は、上記の考察結果をまとめたものである。同表中の評価「○」は、現像剤ガイド部材21を配置することによって形成される第1と第2の対応部27,28によって何らかの効果が得られることを示し、同表中の評価「×」は、現像剤ガイド部材21を配置することによって形成される第1と第2の対応部27,28によって、特に効果が得られなかったことを示す。従って、第1及び第2の対応曲面部21a,21bが共に第2の領域203にある場合、又は第1及び第2の対応曲面部21a,21bのどちらか一方が第2の領域203にある場合(ただし、他方は第3の領域204)、現像剤ガイド部材21を配置する効果が得られる。
【0047】
次に、現像剤ガイド部材21を配置して行った印刷枚数と印字濃度の関係を測定した試験結果について説明する。
【0048】
尚、試験は以下の試験条件の下で行った。
・実験装置として、例えば、図1に示す画像形成装置1の4つの現像装置10のうち、ブラック(K)のトナー画像を形成する現像装置10Kのみを可動とした装置を用いた。
・感光体ドラム11 :外径約30mm、 周速度189.9mm/sec
現像ローラ16 :外径約15.9mm、 周速度239.8mm/sec
トナー供給ローラ18:外径約15.5mm、 周速度158.4mm/sec
とした。
・A4用紙で30k印刷経過時における感光体ドラム11
の総回転数は約403000回転である。
・印刷時における、
帯電ローラ12へ帯電ローラ印加電圧Vb=−1000V、
現像ローラ16へ現像ローラ印加電圧Vc=−230V、
トナー供給ローラ18へ供給ローラ印加電圧Vd=−330V、
現像ブレード17へ現像ブレード印加電圧Ve=−230V
である。
尚、このとき、感光体ドラム11の表面電位は、非露光部が−500V、露光部が−50Vとなる。
・試験環境は、室温(気温25℃、湿度55%)である。
・印刷試験は、A4の記録用紙の印字可能領域全面に印字可能濃度で形成される画像密度(coverage)の1%の濃度で30000枚印刷し、5000枚印刷毎に、画像密度(coverage)の100%の濃度で印刷し、その印字濃度を計測した。
・濃度計測には、エックスライト社製の分光濃度計X−Rite528を使用した。
【0049】
以上の条件の下での実施例試験として、
現像剤ガイド部材21の、第1と第2の対応曲面部21a,21bが、それぞれ対応する現像ローラ16、トナー供給ローラ18に対して、共に上記した第2の領域203に存在するように、間隙がなるべく均等に平均で約100μm程度となるように配置して印刷試験を行った。
【0050】
比較例1の試験として、参考図15に示すように、現像剤ガイド部材21を配置しない状態で、同様の印刷試験を行った。
比較例2の試験として、参考図14に示すように、現像剤ガイド部材21の代わりに、現像剤ガイド部材21と同じ部材で形成された棒状の部材51を固定配置した状態で、同様の印刷試験を行った。
比較例3の試験として、比較例2の試験で配置した棒状の部材をトナー供給ローラ18と同方向に軸回転させた状態で、同様の印刷試験を行った。
【0051】
表1は、上記試験結果を示す表であり、図8は、表1の試験結果をグラフにした図である。
【0052】
【表1】

【0053】
表1及び図8のグラフに示すように、各印刷試験において、印刷枚数が増加するに連れて印字濃度は低下する傾向にある。実施例の試験では、初期の印字濃度が1.55[OD]であり、30K枚印刷後には1.33[OD]となった。現像剤ガイド部材21を除いた比較例1の試験では、初期の印字濃度が約1.48[OD]であったものの、30K枚印刷後には0.82[OD]まで低下した。現像剤ガイド部材21の代わりに棒状の部材51を固定配置した比較例2の試験では、初期の印字濃度が約1.53[OD]であったものの、30K枚印刷後には1.10[OD]まで低下した。棒状の部材51を軸回転した比較例3の試験では、初期の印字濃度が約1.51[OD]であったものの、30K枚印刷後には0.90[OD]まで低下した。
【0054】
以上の試験結果について考察する。図15に示すように、現像ローラ16とトナー供給ローラ18が接する接触部の、トナー供給ローラ18の回転方向上流側に形成される逆三角形の領域90では、現像ローラ16及びトナー供給ローラ18が同方向に回転しているため、トナーが現像ローラ16及びトナー供給ローラ18との摩擦力等によって駆動力を得て対流している。この対流によって接触する部材と過剰に摩擦帯電し、設計値より高い帯電荷を帯びたトナーが生成され、また逆に外添剤が遊離・脱落した摩擦帯電しにくい現像剤が生成される。これらの帯電性能の異なるトナーが電子写真プロセスに混入するため帯電不良を引き起こし、結果として濃度低下等の画像不良が起きる。
【0055】
また電子写真プロセスに於いて、現像ローラ16、トナー供給ローラ18、及び感光体ドラム11などの、一定の圧力を伴って接触する部材は動作によって磨耗するため、動作時間の増加と共に接触圧が小さくなってトナーの搬送力が低下するため、印字濃度が低下する。
【0056】
このため、逆三角形の領域90に、図2或いは図4に示すように現像剤ガイド部材21を配置することによって、この領域での、トナーの対流の発生を防止し、上記した画像不良の発生を防止する。更に、現像剤ガイド部材21を配置することによって第1と第2の対応部27,28が形成され、前記したように所定の設定条件の下では現像ローラ16へのトナー供給量が増加し、実施例での試験結果に示すように、印刷濃度の低下も抑制することができる。
【0057】
一方、比較例2,3での棒状部材51を配置した場合では、その周辺で、まだトナーが対流していたため、実施例の場合のような効果が得られなかったものと考えられる。
【0058】
ここでは、実験装置として、図1に示す画像形成装置1の4つの現像装置10のうち、現像装置10Kのみを可動とした装置を用いが、他の現像装置10Y,10M,10Cにおいても同様の試験結果が得られるものである。
【0059】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、逆三角形の領域90に現像剤ガイド部材21を配置し、現像ローラ16やトナー供給ローラ18との間に所定の第1と第2の対応部27,28を形成することによって、トナーの不均一な帯電状況を抑制できるため、かすれや濃度低下などによる画像不良を抑制し、更に現像ローラ16へのトナー供給量を増加することが出来る。
【0060】
従って、第1対応部27と第2対応部28は、逆三角形の領域90(図15)に対流が発生しないだけの領域にわたって形成される必要があり、この場合の、第1対応部27及び第2対応部28の間隙は、共に前記したようにトナーの搬送が円滑に行われる、第2の領域203(図6)の層の範囲にあることが好ましい。但し、第2の対応部28では、重力によってトナーを供給している面もあるため、設置する現像剤ガイド部材21の第2対応部28側の「ひさし」の先端(第2対応曲面部の他端21fに相当)はトナー供給ローラ18の回転中心18aよりも現像ローラ16との接触部側に位置するように形成することが好ましい。
【0061】
図9は、図5に示す現像剤ガイド部材21の変形例を示す現像剤ガイド部材22である。現像剤ガイド部材22は、その第1対応曲面部22a及び第2対応曲面部22bが、それぞれ図5に示す現像剤ガイド部材21の第1対応曲面部21a及び第2対応曲面部21bとおなじ曲面となるように構成され、図4に示すように、現像剤ガイド部材21の場合と同様に、第1対応部27及び第2対応部28が形成されるように配置されるものである。
【0062】
この場合は、逆三角形の領域90にトナーが存在することになるが、対流は発生しないため、上記した現像剤ガイド部材21を配置した場合と同様の効果が得られるものである。また、例えば板状部材を加工して形成することができるため、製造が容易である。
【0063】
実施の形態2.
図10は、本発明に基づく実施の形態2の画像形成装置の制御系のうち、各現像装置10の電圧制御系の要部を示すブロック図である。
【0064】
この制御系を採用する画像形成装置が、前記した図3に示す実施の形態1の制御系と主に異なる点は、現像剤ガイド部材21に電圧を印加するガイド部材電圧印加部103が追加された点である。この制御を採用する画像形成装置が、前記した実施の形態1の画像形成装置1(図1)と共通する部分には同符号を付して、或いは図面を省いて説明を省略し、異なる点を重点的に説明する。尚、本実施の形態の画像形成装置の要部構成は、図1、図2、図4、図5に示す実施の形態1の画像形成装置1の要部構成と共通するため、必要に応じてこれらの図を参照する。
【0065】
実施の形態1で説明したように、図4に示すように現像剤ガイド部材21を配置し、室温(気温25℃、湿度55%)等の前記した試験条件で、A4の記録用紙の印字可能領域全面に印字可能濃度で形成される画像密度(coverage)の1%の濃度で30K枚程度印刷すると、現像ローラ16及びトナー供給ローラ18とで形成される第1対応部27及び第2対応部28における各間隙ではトナーの流動に偏りがおき、第1対応曲面部21a及び第2対応曲面部21bの、対応するローラの回転方向下流側の端部付近には、図13に示すような固着部分60、61が発生する場合がある。
【0066】
これは、トナーが、現像ローラ16、トナー供給ローラ18、及び現像剤ガイド部材21などとの接触によって摩擦帯電するが、実施の形態1の構成では、トナーの供給に関しては物理的な搬送力が支配的であったため、トナーの流動に偏りがおきて固着部分が発生したものと考えられる。これによりトナーの対流等が発生して円滑な移動が不可能となる。
【0067】
そこで本実施の形態では、図10に示すように、電圧制御部102に制御されて、現像剤ガイド部材21にガイド部材印加電圧Vaを印加するガイド部材電圧印加部103を追加すると共に、現像剤ガイド部材21の素材を抵抗値が1×10[Ω]以下の金属又は各種導電性材料とし、
現像ローラ印加電圧Vc>供給ローラ印加電圧Vd>ガイド部材印加電圧Va
となるように、各部材に電圧を印加する。
ここでは、例えば現像ローラ印加電圧Vc=−230V、供給ローラ印加電圧Vd=−330V、ガイド部材印加電圧Va=−360Vとした。
【0068】
これらのバイアス電圧の印加により、トナーの流動の偏りが解消され、現像剤ガイド部材21にトナーが付着しにくくなって固着部分60、61の発生が抑制され、トナーが円滑に移動することができるようになる。
【0069】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置によれば、前記した実施の形態1の効果に加え、現像剤ガイド部材21にトナーが固着するのを防止することができるので、第1と第2の対応部27,28において、常に円滑なトナー移動が可能となり、印刷枚数が増えた段階でも安定して高品位の印字を保つことが可能となる。
【0070】
尚、上記した各実施の形態では、直接転写方式のタンデム型カラー電子写真プリンタを例にして動作を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、図11に示す画像形成装置のように、現像装置10を1つ備えた単色(例えばブラック)用の電子写真プリンタや、図12に示す画像形成装置2のように、現像装置10K,10Y,10M,10Cによって、カラートナー画像を一旦無端状ベルト71に転写し、搬送ローラ41,72によって、支持ローラ73と転写ローラ74からなる第2転写部に搬送される記録用紙35に、無端状ベルト71に形成されたカラートナー画像を転写する間接転写方式のタンデム型カラー電子写真プリンタに採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
前記した各実施の形態では、電子写真プリンタについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ファクシミリ装置、複写機、MFP(Multifunction Peripheral)等の複合機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成装置、 2 画像形成装置、 10 トナー画像形成部、 11 感光体ドラム、 12 帯電ローラ、 13 露光装置、 14 トナー、 15 現像剤収容器、 15a 開口部、 16 現像ローラ、 17 現像ブレード、 18 トナー供給ローラ、 18a 回転中心、 19 クリーニングブレード、 20 トナー貯蔵部、 21 現像剤ガイド部材、 21a 第1対応曲面部、 21b 第2対応曲面部、 21c 中央凸部、 21d 凸面部、 21e 第1対応曲面部の他端、 21f 第2対応曲面部の他端、 22 現像剤ガイド部材、 22a 第1対応曲面部、 22b 第2対応曲面部、 25 現像部、 27 第1対応部、 28 第2対応部、 30 ドライブローラ、 31 テンションローラ、 32 転写ベルト、 33 給紙カセット、 34 クリーニングブレード、 35 記録用紙、 36 転写ローラ、 40 定着装置、 41 搬送ローラ、 42 搬送ローラ、 43 給紙ローラ、 44 排出部、 51 棒状部材、 60 トナー固着部分、 61 トナー固着部分、 71 無端状ベルト、 72 搬送ローラ、 73 支持ローラ、 74 転写ローラ、 90 逆三角形の領域、 101 印刷制御部、 102 電圧制御部、 103 ガイド部材電圧印加部、 104 帯電電圧印加部、 105 現像ローラ電圧印加部、 106 供給ローラ電圧印加部、 107 ブレード電圧印加部、 201 回転ローラ、 202 第1の領域、 203 第2の領域、 204 第3の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体と対向部で対向し、前記現像剤担持体へ前記現像剤を供給する現像剤供給部材と、
前記対向部の、前記現像剤供給部材の移動方向上流側に備えられる現像剤ガイド部材と
を備え、
前記現像剤ガイド部材は、前記現像剤担持体と対向し、前記現像剤担持体と所定量の間隙を有する第1の対応面部と、前記現像剤供給部材と対向し、前記現像剤供給部材と所定量の間隙を有する第2の対応面部とを備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤供給部材は、前記対向部の、前記現像剤供給部材の移動方向上流側の所定領域を占有する形状を有することを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤供給部材は、板状部材を加工して形成したことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項4】
前記第2の対応部は、前記現像剤担持体の回転軸よりも前記対向部側に存在することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の現像装置
【請求項5】
前記現像剤供給部材は、断面が略扇型の部材であることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
【請求項6】
前記所定量の隙間は、略均等で100μm程度の間隙であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の現像装置。
【請求項7】
現像剤ガイド部材の素材を抵抗値が1×10[Ω]以下の金属又は導電性材料としたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤担持体への印加電圧Vc、前記現像剤供給部材への印加電圧Vd、及び前記現像剤ガイド部材への印加電圧Vaの関係が
Vc>Vd>Va
となるように、それぞれ電圧を印加することを特徴とする請求項7記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかの現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−150306(P2012−150306A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9431(P2011−9431)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】