説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられ、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向であって、像担持体へのキャリア付着に対策を施した現像装置、かかる現像装置を備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】像担持体1に対向した現像部42において像担持体1の移動方向と逆方向に移動し、担持した2成分現像剤により現像部42において像担持体1の現像を行う現像剤担持体41と、現像剤担持体41の移動方向における現像部42の上流側で現像剤担持体41を覆うように設けられた現像剤担持体被覆部52に現像剤担持体41に向けて突設され、像担持体1の移動により像担持体1の表面に流れる気流と現像剤担持体41の移動により現像剤担持体41の表面に流れる気流との衝突により生じる乱流を増加させるための複数の突起53とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられた、2成分現像剤を用いて感光体等の像担持体の現像を行う現像装置、かかる現像装置を備えたかかる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置であって、いわゆる電子写真プロセス方式を採用した画像形成装置において、2成分現像剤を用いて感光体等の像担持体の現像を行う現像装置を備えたものが知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献9〕参照)。
【0003】
かかる現像装置においては、現像剤を担持し、像担持体に対向した現像部において、担持した現像剤により像担持体の現像を行う現像剤担持体が備えられており、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向との関係において、これらが逆方向であるタイプ(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕参照)と、これらが順方向であるタイプ(たとえば、〔特許文献4〕〜〔特許文献8〕参照)とがある。
【0004】
前者のタイプの現像装置は、後者のタイプの現像装置よりも、白抜け画像の抑制において比較的優れている。白抜け画像とは、たとえばベタ画像とハーフトーン画像との境界など、濃度が異なる画像の境界においてトナー濃度が低下して白く抜けたような状態となる不良画像である。
【0005】
しかしながら、前者のタイプの現像装置であっても、白抜け画像の防止が完全とはいえない場合がある。これは、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向であることに起因するものである。すなわち、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向であるが故に、現像剤担持体上に穂立ちしたキャリアが、像担持体表面に強く当接して同表面を擦り易くなっており、この擦りによって、像担持体を現像したトナーが掻き取られると、かかる白抜け画像が生じるのである。
【0006】
一方、不良画像の原因として、像担持体へのキャリア付着が挙げられる。このキャリア付着は、前者のタイプの現像装置に生じやすい。この理由は、前者のタイプの現像装置における白抜け画像の発生原因と同様に、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向であるが故に、現像剤担持体上に穂立ちしたキャリアが、像担持体表面に強く当接することにある。
【0007】
前者のタイプの現像装置において、かかる白抜け画像、かかるキャリア付着を抑制するための方策として、現像剤担持体上に穂立ちしたキャリアが、像担持体表面に強く当接することを抑制するべく、キャリアの磁束密度を小さくすることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、キャリアの磁束密度を小さくすると、却って、像担持体へのキャリア付着が増加しうる。キャリアの磁束密度を小さくすることによって、現像剤担持体に担持されたキャリアが現像剤担持体から離れやすくなるためである。
よって、白抜け画像の抑制を考慮し、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向である構成を採用しつつ、像担持体へのキャリア付着に対策を施した現像装置が待たれているところである。
【0009】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられ、現像部における像担持体の移動方向と現像剤担持体の移動方向とが逆方向であって、像担持体へのキャリア付着に対策を施した現像装置、かかる現像装置を備えたかかる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、像担持体に対向した現像部において同像担持体の移動方向と逆方向に移動し、担持した2成分現像剤により前記現像部において同像担持体の現像を行う現像剤担持体と、この現像剤担持体の移動方向における前記現像部の上流側で同現像剤担持体を覆うように設けられた現像剤担持体被覆部に同現像剤担持体に向けて突設され、像担持体の移動により同像担持体の表面に流れる気流と前記現像剤担持体の移動により同現像剤担持体の表面に流れる気流との衝突により生じる乱流を増加させるための複数の突起とを有する現像装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、像担持体に対向した現像部において同像担持体の移動方向と逆方向に移動し、担持した2成分現像剤により前記現像部において同像担持体の現像を行う現像剤担持体と、この現像剤担持体の移動方向における前記現像部の上流側で同現像剤担持体を覆うように設けられた現像剤担持体被覆部に同現像剤担持体に向けて突設され、像担持体の移動により同像担持体の表面に流れる気流と前記現像剤担持体の移動により同現像剤担持体の表面に流れる気流との衝突により生じる乱流を増加させるための複数の突起とを有する現像装置にあるので、現像剤担持体被覆部に突設された突起を用いて像担持体に付着したキャリアを浮き上がらせることによって、像担持体へのキャリア付着に対策を施し、画像品質を向上可能な現像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一実施形態にかかる概略正断面図である。
【図2】図2に示した画像形成装置に備えられた現像装置の概略正断面図である。
【図3】図2に示した現像装置の一部の拡大概略正断面図である。
【図4】実施例と比較例とのそれぞれによって形成された画像の評価結果を示す図である。
【図5】白抜け画像の発生した様子を示した概念図である。
【図6】像担持体と現像スリーブとがこれらのニップで同方向に移動する場合に生じる気流を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略を示す。画像形成装置100は、カラー複写機であるが、他のタイプの複写機、カラーレーザプリンタ等のプリンタ、ファクシミリ、複写機とプリンタとの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状部材であるシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
【0014】
画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成手段10Y、10M、10C、10Kと、ベルト状の中間転写体6と、給紙装置20と、定着装置30とを備えている。
【0015】
画像形成装置100の上部には、画像読取装置SCが設置されている。原稿台上に載置された原稿は画像読取装置SCの原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、光書込手段3Y、3M、3C、3Kに入力される。
【0016】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成手段10Yは、感光体である像担持体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、光書込手段3Y、現像装置4Y及びクリーニング手段5Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成手段10Mは、像担持体1M、帯電手段2M、光書込手段3M、現像装置4M及びクリーニング手段5Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成手段10Cは、像担持体1C、帯電手段2C、光書込手段3C、現像装置4C及びクリーニング手段5Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成手段10Kは、像担持体1K、帯電手段2K、光書込手段3K、現像装置4K及びクリーニング手段5Kを有する。
【0017】
帯電手段2Yと光書込手段3Y、帯電手段2Mと光書込手段3M、帯電手段2Cと光書込手段3C及び帯電手段2Kと光書込手段3Kとは、潜像形成手段を構成している。
中間転写体6は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0018】
現像装置4Y、4M、4C、4Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒(K)の小粒径トナーとキャリアとを含む2成分現像剤を収容している。現像装置4Y、4M、4C、4Kはそれぞれ、トナーカートリッジTY、TM、TC、TBKから、図示しないトナー補給手段により、当該色のトナーを供給される。トナーカートリッジTY、TM、TC、TBK内には、当該色のトナーの他、キャリアが混合されたプレミックス現像剤が収納されており、現像装置4Y、4M、4C、4Kには、当該色のトナーとともに、キャリアも供給される。
【0019】
現像装置4Y、4M、4C、4Kからは、後述するように、余剰の現像剤が排出されるようになっており、現像装置4Y、4M、4C、4Kから排出された余剰の現像剤は、廃トナーボックスTBに回収される。
【0020】
画像形成手段10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に1次転写手段7Y、7M、7C、7Kにより転写領域である1次転写領域において逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0021】
給紙装置20の給紙カセット21内に収容された記録紙Pは、給紙手段22により給紙され、給紙ローラ23、24、25、26、レジストローラ27等を経て、2次転写手段9に搬送され、転写領域である2次転写領域において記録紙P上にカラー画像が転写される。
【0022】
なお、画像形成装置100の下部に鉛直方向に縦列配置された3段の給紙カセット21は、ほぼ同一の構成をなす。また、3段の給紙手段22も、ほぼ同一の構成をなす。給紙カセット21、給紙手段22を含めて給紙装置20と称す。
【0023】
カラー画像が転写された記録紙Pは、定着装置30において記録紙Pが挟持され、熱と圧力とを加えることにより記録紙P上のカラートナー像あるいはトナー像が定着されて記録紙P上に固定され、排紙ローラ28に挟持されて機外の排紙トレイ29上に載置される。
【0024】
一方、2次転写手段9により記録紙Pにカラー画像を転写した後、記録紙Pを曲率分離した中間転写体6は、クリーニング手段8により残留トナーが除去される。
なお、画像形成装置100の説明においては、カラー画像形成にて説明したが、モノクロ画像を形成する場合も本発明に含まれるものである。
【0025】
像担持体1Y、1M、1C、1Kは互いに同様の構成であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは互いに同様の構成であるため、以下、像担持体1Y、1M、1C、1Kを区別することのない場合、像担持体1と称し、現像装置4Y、4M、4C、4Kを区別することのない場合、現像装置4と称す。
【0026】
図2に示すように、現像装置4の筐体は下方の下部ケーシング40と、上方の上部ケーシング50とから成る二分割構成をなし、開閉可能である。
現像装置4の下部ケーシング40内には、現像剤担持体としての現像ローラ41、第1の現像剤撹拌搬送部材である第1撹拌部材43、第2の現像剤撹拌搬送部材である第2撹拌部材44、現像剤供給ローラである供給ローラ45、現像剤案内部材であるガイド部材46等が配置されている。
【0027】
下部ケーシング40は、第1撹拌部材43を収容する現像剤供給室401と、第2撹拌部材44を収容する現像剤撹拌室402とを有している。現像剤供給室401と現像剤撹拌室402とは、下部ケーシング40の底部から直立した隔壁部403を挟んで両側に形成されている。
【0028】
現像ローラ41は、回転する現像スリーブ41Aと、現像スリーブ41Aの内側に位置し、固定されたマグネットロールである磁界発生手段41Bとを有している。
現像スリーブ41Aと第1撹拌部材43との対向近接点において、現像スリーブ41Aは下方から上方に回動し、第1撹拌部材43は上方から下方に回動する。よって現像スリーブ41Aと第1撹拌部材43とは互いにカウンター方向に移動する。
【0029】
上部ケーシング50の内部の天井部には、広い空間部が形成され、現像剤整流空間Wを形成している。
現像ローラ41は、静電潜像を担持する像担持体1に対向して配置されている。現像ローラ41と像担持体1との対向領域は、現像スリーブ41Aに担持した現像剤により像担持体1の静電潜像を現像する現像領域としての現像部42となっている。
【0030】
現像スリーブ41Aは、図示しない駆動源により、現像部42において像担持体1の移動方向と逆方向に移動するように回転駆動される。このように、画像形成装置100では、カウンター現像方式を採用している。現像スリーブ41Aには、現像バイアスとして、交流電源E1による交流電圧と、直流電源E2による直流電圧とが重畳された、交番電界が用いられる。交流電源E1と直流電源E2とは、現像ローラ41に直流成分と交流成分とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段Eを構成している。なお、電源E1による交流電圧を用いたAC現像では、後述するエッジ電界による白抜け画像をもたらすエッジ効果が低減される。
【0031】
磁界発生手段41Bは、7極の磁極N1、N2、N3、N4、S1、S2、S3を有する。磁極N1は現像部42を形成する現像主磁極である主磁極、磁極N2は剥取磁極、磁極N3は現像ローラ41具体的には現像スリーブ41A上の現像剤搬送量を規制する規制磁極言い換えると汲上磁極である。7極の磁極N1、N2、N3、N4、S1、S2、S3によって、図示の磁力分布が形成される。
【0032】
現像ローラ41具体的には現像スリーブ41Aに担持された現像剤を規制する規制部材である現像剤量規制部材51の先端部は、磁界発生手段41Bの規制磁極である磁極N3の近傍の位置に配置されている。
【0033】
磁界発生手段41Bの複数個の磁極のうち互いに隣接する2磁極N2、N3は、同極性に配置され反発磁界を形成している。現像剤剥ぎ取り用の剥取磁極N2は、現像スリーブ41A上の現像剤を剥ぎ取り下部ケーシング40内に飛散させる。現像剤受け入れ用の規制磁極N3は、供給ローラ45により供給された現像剤を汲み上げて現像スリーブ41A上に付着させる。
【0034】
第1撹拌部材43は、第2撹拌部材44から搬送された現像剤を撹拌して搬送し、現像ローラ41に均一に供給する。第1撹拌部材43、第2撹拌部材44は何れも螺旋状のスクリュー部材である。
【0035】
第2撹拌部材44は第1撹拌部材43に平行配置され、トナー補給手段によって補給される新規トナー及びキャリアと現像スリーブ41Aから還流された現像剤とを混合、撹拌して第1撹拌部材43の上流部に搬送する。
【0036】
第1撹拌部材43は回転軸方向に現像剤を搬送するとともに、回転軸のほぼ直角方向に現像剤を放出する。このように、第1撹拌部材43と第2撹拌部材44とは、現像剤を撹拌しながら一方向に循環するように搬送するとともに現像スリーブ41Aに供給するために設けられている。このように現像剤を循環させながら撹拌することで、トナー濃度が安定し、画像濃度が安定する。
【0037】
現像剤量規制部材51は磁性体より成り、先端が規制磁極N3に対向し、現像スリーブ41A上の現像剤の層厚を規制する。供給ローラ45は固定配置された5極の磁石N1、N2、N3、S1、S2を有する磁界発生手段を備え、第1撹拌部材43から搬送される現像剤を保持して搬送し、現像剤整流空間Wに送り込む。
【0038】
ガイド部材46は、現像スリーブ41Aと第1撹拌部材43との対向近接点の近傍に、傾斜状に配置されている。ガイド部材46は、現像スリーブ41Aから剥ぎ取られて搬送される下方の現像剤と、現像スリーブ41Aに供給される上方の現像剤とを隔てるとともに、供給ローラ45により搬送される現像剤を堆積して現像ローラ41に案内する。ガイド部材46は、非磁性材料、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂、非磁性ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、セラミックス等により形成される。
【0039】
第1撹拌部材43の回転により掻き上げられた現像剤は、磁極を内蔵する供給ローラ45の回転によって搬送され、現像剤整流空間Wに移送されて収容された後、ガイド部材46上を整流状に一方向に移動して、回転する現像ローラ41具体的には現像スリーブ41Aによって担持されて搬送され、現像剤量規制部材51により現像剤高さが規制されて、像担持体1に対向する現像部42に搬送される。
【0040】
図2または図3に示すように、上部ケーシング50は、現像剤量規制部材51により高さが規制された状態で現像スリーブ41Aに担持され現像部42に搬送される現像剤が通過する領域に対向する位置に、現像スリーブ41Aを覆うように設けられた現像入口シールブラケットである現像剤担持体被覆部としての被覆部52を有している。
【0041】
被覆部52は、現像スリーブ41Aの移動方向における現像部42の上流側で現像スリーブ41Aを覆っている。被覆部52は、現像スリーブ41Aの移動方向において現像剤量規制部材51の下流側に、現像剤量規制部材51に隣り合うように設けられている。
【0042】
現像剤整流空間Wには大量の現像剤を収容する事が可能であるから、ベタ画像を連続して大量に高速で現像処理する場合でも、現像ローラへの現像剤の供給不足による現像濃度不良が防止される。
【0043】
更に、現像剤整流空間Wが現像剤で満たされたとき、供給ローラ45から余剰に供給された現像剤は現像剤整流空間Wの入口部の供給ローラ45から溢れ出して第1撹拌部材43に戻される。
【0044】
その他、画像形成装置100の構成は次のとおりである。
画像形成ライン速度(L/S):280mm/sec
感光体ドラム:径φ60mm、有機半導体層としてフタロシアニン顔料をポリカーボネイトに分散させたものを塗布され、電荷輸送層を含めた感光体層の膜厚25μm
感光体非画像部電位:電位センサで検知しフィードバック制御(制御可能範囲は−250V〜−900V)、全露光電位:−45〜150V
露光:レーザー走査方式:半導体レーザー(LD)のパワー300μW
現像スリーブ41A:直径φ30mm、回転数382rpm
供給ローラ45:直径φ16mm、回転数200rpm
第1撹拌部材43、第2撹拌部材44:外径φ30mm、回転軸の直径φ8mm、回転数:600rpm、螺旋羽根の高さH:11mm
トナー濃度センサ:キャリアの透磁率を検出するセンサ
現像バイアス: DCバイアス(直流電源E2):−200〜−700V
ACバイアス(交流電源E1):0.5〜−2.0kVp−p、2〜7kHz
【0045】
現像剤は次のとおりである。
乳化重合トナーと樹脂コーティングキャリアとの二成分現像剤(キャリアは粒径38μm、キャリアの表面抵抗が1013Ω・cmである高抵抗キャリア、トナー径は5.6μm)。
【0046】
ところで、一般に、画像形成装置では、白抜け画像という不良画像、すなわち、たとえば図5に示すように、ベタ画像とハーフトーン画像との境界など、濃度が異なる画像の境界においてトナー濃度が低下して白く抜けたような状態となる不良画像が生じることがある。同図において、白抜け画像は、ベタ画像とハーフトーン画像との境界すなわちベタ画像の周囲に全周にわたって生じている。この白抜け画像は、かかる境界において、現像バイアスによって形成される電界が乱れるいわゆるエッジ電界の他、以下述べる現象に起因して発生することが分かっている。
【0047】
画像形成装置100がカウンター現像方式を採用しているのは、白抜け画像対策のためである。なお、このカウンター現像方式は、次に述べるように磁気ブラシが像担持体1表面に接触するため、カウンター接触現像方式といわれる。
【0048】
しかしながら、このようなカウンター現像方式を採用すると、現像部42における像担持体1の移動方向と現像スリーブ41Aの移動方向とが逆方向であるが故に、現像スリーブ41A上に穂立ちしたキャリアいわゆる磁気ブラシが、像担持体1表面に強く当接して同表面を擦り易くなっており、この擦りすなわち穂当たりによって、像担持体1を現像したトナーが磁気ブラシに掻き取られ、再度キャリア側に戻ると、かかる白抜け画像が生じる。また、磁気ブラシの擦りにより、掃き目ムラなどといわれる画像乱れが生じ、ライン画像の縦横比が悪化したり、ベタ画像ムラが発生したりすることもある。
【0049】
そこで、画像形成装置100では、かかる白抜け画像、画像乱れへの対策として、穂当たりを弱めるべく、キャリア1個あたりの磁気力を7.00×10−6emu以下とし、磁束密度を弱めている。なお、かかる穂当たりを弱めるため、本形態では、磁気ブラシの長さを短くすることも行われている。
【0050】
ところが、このように、キャリアの磁気特性を、白抜け画像、画像乱れに対して最適化し、弱めると、カウンター現像方式を採用していることもあり、像担持体1にキャリア付着が発生することがある。このキャリア付着は、画像欠けなどの不良画像の原因となり得る。なお、この画像欠けも、白抜け画像の一種と捉えることが可能である。
【0051】
そこで、画像形成装置100では、像担持体1の移動すなわち回転により像担持体1の表面に流れる気流すなわち層流と、現像ローラ41具体的には現像スリーブ41Aの移動すなわち回転により現像スリーブ41Aの表面に流れる気流すなわち層流との衝突によって生じる乱気流すなわち乱流を用いて、像担持体1に付着したキャリアを像担持体1から除去するようになっている。
【0052】
なお、かかる乱流について図6を参照して説明する。図6は、像担持体と現像スリーブとが、これらの対向位置であるニップにおいて互いに同方向である左方に移動する場合を示したものである。同図において、実線は、像担持体、現像スリーブの表面のおよその位置を示している。同図に矢印で示されているように、ニップ直前では、かかる乱流が渦状に生じており、ニップ通過後では、像担持体、現像スリーブの移動方向下流側に向けて平行に空気流が吹き出している。このことから、カウンター現像方式を採用する画像形成装置100においては、現像スリーブ41Aの表面に流れる層流は像担持体1に衝突する位置で乱流となり、像担持体1の表面に流れる層流は現像スリーブ41Aに衝突する位置で乱流となると推測される。
【0053】
画像形成装置100では、カウンター現像方式によって生じる上述した乱流を用いて像担持体1に付着したキャリアを像担持体1から除去するべく、図3に示すように、被覆部52の内面、すなわち現像スリーブ41Aに対向する面に、かかる乱流を増加させるための多数の突起53を有している。突起53は、被覆部52とともに、上部ケーシング50に一体成型されている。突起53は、先の尖った形状である。
【0054】
突起53の、被覆部52の内面からの高さは1mm以下であり、本形態では0.9mmとされている。突起53の高さを1mm以下とする意義については、後述の実施例と比較例との対比により明らかになる。このような突起53を設けることにより、かかる乱流の流速は20%向上している。
【0055】
突起53は、像担持体1及び現像ローラ41の長手方向である主走査方向に対応した、図3の紙面に垂直な方向において、被覆部52の全幅にわたって多数設けられている。突起53は、主走査方向に直線状に並んだ状態で列をなすように設けられているが、ランダムに設けられていても良い。
【0056】
かかる乱流により、像担持体1に付着したキャリアは像担持体1から浮き上がる。この浮き上がったキャリアを像担持体1から除去するための構成として、現像装置4は、現像剤吸引部54を有している。なお、かかる構成としては、現像剤吸引部54のような、次に述べるように気流とともに吸引する構成が適しているが、磁気的に吸着する部材を用いるなど、他の構成とすることも可能である。
【0057】
現像剤吸引部54は、像担持体1に付着したキャリアを、像担持体1の回りに浮遊したトナーとともに吸引するために設けられている。現像剤吸引部54は、現像部42に向けて開口し、かかるキャリアをかかるトナーとともに吸引するキャリア回収口であるトナー飛散回収吸引口としての吸引口55と、吸引口55からかかる吸引を行わせるために吸引口55から空気を吸引する気流を形成するための気流形成手段としての図示しないポンプと、吸引口55から吸引したキャリアやトナーを廃トナーボックスTBに案内する図示しない案内部とを有している。
【0058】
吸引口55の、主走査方向における設置領域は、像担持体1及び現像スリーブ41Aの主走査方向における設置領域を含むようになっており、像担持体1に付着したキャリア及び浮遊したトナーをかかる領域全体において吸引可能となっている。
【0059】
吸引口55の内部には、吸引したトナーを集塵するための図示しないフィルターが設けられている。案内部は、このフィルターによって集塵された飛散トナーを廃トナーボックスTBに案内する廃トナー経路と、この廃トナー経路とは別経路として設けられ吸引口55から吸引されたキャリアを廃トナーボックスTBに案内する廃キャリア経路とを有しており、飛散トナー、キャリアの何れも、廃トナーボックスTBに案内して廃棄する。
【0060】
像担持体1に付着したキャリアは磁気力が弱く、適切な特性を有していないものであるため、現像剤吸引部54によって吸引されたキャリアは、再度の現像に用いられることのないように、案内部に排出され、廃トナーボックスTBに収容される。なお、像担持体1に付着したキャリアは、かかる乱流とともに、現像電界によっても、像担持体1から浮き上がる作用を受けるようになっている。
【0061】
このようにして像担持体1に付着したキャリアが回収され廃棄されると、現像装置4内のキャリアは減少していくが、この分のキャリアは、プレミックス現像剤によって補給されるため、現像に必要なキャリアが不足することはない。ただし、像担持体1へのキャリア付着が少ない場合は、プレミックス現像剤の補給に伴って、現像装置4内のキャリアが増加していく。そのため、図2に示すように、下部ケーシング40は、現像剤排出口47を有しており、現像剤排出口47から余剰の現像剤をオーバーフローによって排出することで、余分なキャリアを廃棄し、現像装置4内のキャリア量を一定に保持するようになっている。プレミックス現像剤中のキャリアの含有率は、このようなバランスを考慮して、重量比で1%から30%の間で設定される。
【0062】
現像剤排出口47の配設位置は、現像剤撹拌室402の、隔壁部403と反対側の壁面となっている。現像ローラ41から離れた位置とすることで、現像ローラ41に担持される現像剤量が安定するなどの利点があるためである。
【0063】
(実施例及び比較例)
次の条件の実施例及び比較例で画像形成を行い、図4に示すように、形成された画像の評価を行った。
評価項目はエッジ電界に起因する白抜け画像及びキャリア付着に起因する画像欠けである。画像評価は紙上において行った。
【0064】
評価結果はランク1〜5に分類した。
具体的に、ランク5は最良レベルであり、ランク1は最悪レベルである。ランク3以上を市場で受け入れられるレベルとして設定した。
【0065】
・実施例1
突起53の高さを0.9mm、キャリア1個あたりの磁気力を7.00×10−6emu以下とした。像担持体1の線速、現像ローラ41の線速はともに280mm/secであり、カウンター方向に回転させた。トナーの粒径は5.6um、トナーの帯電量は−32μc/g、キャリア粒径は38μmとした。像担持体1の帯電電位は−600V、現像ポテンシャルは300Vとして画像を形成した。
図4に示されているとおり、いずれの評価項目においてもランク3以上で良好な評価結果が得られた。
【0066】
・比較例1
突起53を設けることなく、キャリア1個あたりの磁気力を8.00×10−6emu以上とした。他の条件は実施例1と同じである。
図4に示されているとおり、白抜け画像の評価項目はランク3の評価結果であるものの、画像欠けの評価項目はランク1の評価結果となった。
【0067】
・比較例2
突起の高さを1.1mm、キャリア1個あたりの磁気力を7.00×10−6emu以下とした。他の条件は実施例1と同じである。
図4に示されているとおり、白抜け画像の評価項目はランク3の評価結果であるものの、画像欠けの評価項目はランク2の評価結果となった。なお、突起の高さの条件を変えて試験したところ、かかる高さが1.0mmを超えると同様の評価結果すなわちランク2あるいはランク1となることも分かった。
【0068】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
たとえば、現像剤担持体は、像担持体に対向して、像担持体の移動方向に沿って複数備えられていても良い。
2成分現像剤を撹拌しながら1方向に循環するように搬送するとともに現像剤担持体に供給するための複数の現像剤撹拌搬送部材は、3つ以上備えられていても良い。
【0070】
本発明は、画像形成装置100のようないわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することができ、また、カラー画像形成装置でなく、モノクロ画像形成装置にも適用することができる。いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙等に直接転写しても良い。
【0071】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 像担持体
4 現像装置
41 現像剤担持体
42 現像部
43、44 複数の現像剤撹拌搬送部材
51 規制部材
52 現像剤担持体被覆部
53 突起
54 現像剤吸引部
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2008−139649号公報
【特許文献2】特開2008−241997号公報
【特許文献3】特開2002−72690号公報
【特許文献4】特開2007−101797号公報
【特許文献5】特開2003−241517号公報
【特許文献6】特開2003−241518号公報
【特許文献7】特開平10−239914号公報
【特許文献8】特開2011−85893号公報
【特許文献9】特許第3127594号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に対向した現像部において同像担持体の移動方向と逆方向に移動し、担持した2成分現像剤により前記現像部において同像担持体の現像を行う現像剤担持体と、
この現像剤担持体の移動方向における前記現像部の上流側で同現像剤担持体を覆うように設けられた現像剤担持体被覆部に同現像剤担持体に向けて突設され、像担持体の移動により同像担持体の表面に流れる気流と前記現像剤担持体の移動により同現像剤担持体の表面に流れる気流との衝突により生じる乱流を増加させるための複数の突起とを有する現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記複数の突起の高さは、1mm以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の現像装置において、
像担持体に付着したキャリアを、像担持体の周りに浮遊したトナーとともに吸引する現像剤吸引部を有することを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の現像装置において、
トナーとともにキャリアが補給されることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の現像装置において、
キャリア1個あたりの磁気力が7.00×10−6emu以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の現像装置において、
2成分現像剤を撹拌しながら1方向に循環するように搬送するとともに前記現像剤担持体に供給するための複数の現像剤撹拌搬送部材を有することを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の現像装置において、
前記現像剤担持体に担持された2成分現像剤を規制する規制部材を有し、
前記現像剤担持体被覆部は、前記現像剤担持体の移動方向において前記規制部材の下流側に、同規制部材に隣り合うように設けられていることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の現像装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29672(P2013−29672A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165774(P2011−165774)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】