説明

球内部欠陥探傷装置用マスター及び該マスター専用回転治具ならびに該マスターを用いた球内部欠陥探傷方法

【課題】
従来の超音波探傷方式の検査装置では被検査対象物を数多く検査し、これらのデータを数多く重ねなければならなかったのをマスターを使用することにより欠陥の位置や大きさを容易に評価し、かつ検査装置の精度の信頼性を高める
【解決手段】
金属材料からなる球体をある平面において切断した後、その一方の切断面に垂直に、かつ反対側の球表面近傍に至る穴13を径がφ0.2mm以上、0.7mm以下のドリルを用い、穴の底部から球表面までの距離12が50μm〜300μmの範囲で穴をあけて球内部欠陥探傷装置用マスターとして作成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受け、ボールねじ、リニアガイド、等速ジョイント、ボール弁等に使用される鋼球内部に発生する材料欠陥(酸化物系介在物等)の有無を超音波法を利用して検出する球内部欠陥探傷装置において、該装置が異常なく正常に内部欠陥を検出でき得ることを証明するために用いる、あらかじめ内部欠陥の形態と位置が既知であるマスター及び該マスターの専用回転治具ならびに該マスターを用いた球内部欠陥探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検査対象物の内部に存在する欠陥、例えば鋼材からなる被検査対象物では通常、酸化物系介在物が考えられるが、これらの欠陥の有無を検査する方法として渦流探傷,超音波用音波探傷やX線を使った検査方法が従来から知られている。
【0003】
特に超音波方式による検査装置としては、軸受用転動体の転動面表面及び表面近傍に存在する微小欠陥を迅速に検出できるものとして超音波を利用した方法ならびに装置が提案されており(例えば特許文献1参照)、また球体ではないが、液中に被検査物を水没させた状態で超音波送信部より超音波を送信し、該送信部より送信された超音波の反射波を受信して検査を行なうことも提案されている。(例えば特許文献2参照)
さらに軸受用の球体に対し、球表面及び表面近傍のみならず、軸受等で使用する場合に軸受寿命への多大な影響を及ぼす、玉軸受に動定格荷重相当の外部荷重が負荷された時に生じる球内部の最大剪断応力発生位置(球径の約1.5〜1.75%)の約2倍の深さとなる球表面から球径の3.5%までの球内部欠陥の検査をいかなる球形においても確実に検出する超音波方式の検査方法ならびに装置も先に本出願人により提案されている(特願2008−109768号)。
【0004】
しかしながら、上記の如き各検査方法ならびに検査装置の検査精度を評価する方法に関しては、内部に欠陥を内在しているかどうか不明な被検査対象物を数多く検査し、検査装置において異常を検出した被検査対象物を、切断や電解研磨といった更に破壊検査することにより、被検査対象物に内在する内部欠陥の検査表面からの位置や大きさを判定し、これらデータを積み重ねる以外、なす術がなかった。
【0005】
また、例えば質量計といった測定装置では、あらかじめ質量が既知の基準となる分銅が市場に流通しているため、これを質量計で測定することにより、質量計が異常なく正しい質量を測定できているかどうかを定期的に点検や校正することは容易に行なえるが、こういった超音波探傷方式の検査装置では、その構造が比較的複雑であり、かつ超音波探触子と被検査対象物の位置関係の精度も要求される精密検査装置であるにも拘わらず、質量計の分銅に相当するような内部欠陥の位置や大きさが既知の基準となるものが存在しないため、定期的な検査装置の点検や校正を行なうことができなかった、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−84865号公報
【特許文献2】特階2007−47056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の如き実情に鑑み、これに対処するために、SUJ2、SUS440C、M50等の玉軸受に転動体として用いられる合金からなる球体をある平面において切断した後に、その一方の切断面に垂直で、かつ反対側の球表面近傍、具体的にはφ0.2mm以上0.7mm以下のドリルを用い、その穴の底部から球表面までの距離が50μm〜300μmの範囲で深さごと等間隔に穴をあけた球内部欠陥探傷装置用マスターの作成を見出し、これを球内部欠陥探傷装置用マスター専用回転治具に固定した後に、該マスターの元の球体の中心を回転軸として球内部欠陥探傷装置用マスターを回転させながら、球表面側から超音波探傷を実施することにより、球内部欠陥探傷装置用マスターの内部にあいている穴を探傷し得るかどうかを評価することで、検出限界となる検査表面からの位置や大きさを明確かつ容易に評価することができるようにすると共に、本球内部欠陥探傷装置用マスターを内部欠陥の位置や大きさを既知の基準とすることにより、その構造が比較的複雑であり、かつ超音波探触子と被検査対象物の位置関係の精度も要求される精密検査装置である超音波探傷方式の検査装置でも、定期的な検査装置の点検や校正を行なうことを可能ならしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、上記目的を達成する本発明は、先ず基本的に球体をある平面において切断した後に、その一方の切断面に垂直で、かつ反対側の球表面近傍まで穴をあけた球内部欠陥探傷装置用マスターにある。
【0009】
請求項2は上記平面において切断した球体の、切断面から垂直方向の球表面までの最大距離が、もとの球体の直径の25%以上50%以下であることを特徴とする。ここで、切断面から垂直方向の球表面までの最大距離が元の球体の直径の25%以上としたのは、マスターの球表面から切断面までの距離が直径の25%以上ないと超音波探傷を球表面側から実施した際に切断面である底面エコーと穴をあけたキズエコーの分離が困難になるためである。また、もとの球体の直径の50%以下としたのは、使用する工具であるドリルの穴あけ精度は短いほうが精度が良いためで、より精度の高い超音波探傷を実施するためである。
【0010】
請求項3は上記球体の材料が金属材料からなり、その構成がSUJ2、SUS440C、M50等の玉軸受に転動体として用いられる合金からなることで、経年変化を起こし難く、また取り扱いによるキズも付き難い特徴をもち、また検査対象とする球と同一の材質にすることでより精度の高い補正が可能となる。
【0011】
請求項4は上記マスター球部の真球度が1μm以下、表面粗さが0.01μmRa以下であることを特徴とし、これは検査対象球が真球度が1μm以下、表面粗さが0.01μmRa以下であるため、より高い補正を行なう上に必要である。ここで、超音波探傷を実施した際に真球度が1μm以上のものであれば、マスターの回転によりノイズが発生し、より精度の高い探傷ができなくなる。また、表面粗さを0.01μmRa以上のものであれば、超音波探傷を実施した際にマスター球部の表面で反射される表面エコーが大きくなり、内部探傷感度が低下してしまう。そのため、マスター球部の真球度が1μm以下、表面粗さが0.01μm以下であることが必要である。
【0012】
請求項5は上記マスターの製作に係り、球体をある平面において切断した後に、その一方の切断面中心から切断面に垂直で、かつ反対側の球表面近傍まで穴をあける際に、穴をあけるドリル径はφ0.2mm以上0.7mm以下を用い、さらにその穴の底部から球表面までの距離が50μm〜300μmの範囲で深さごとに等間隔に製作することを特徴とし、これにより、球内部欠陥探傷装置の深さ方向の感度の評価や補正に対応することができる。ここでドリル径φ0.2mm以上0.7mm以下としたのはドリルにて穴をあけることが可能な最小大きさが0.2mmであり、実際に金属材料に含まれる内部介在物等が0.7mm以下であることが多いためである。
【0013】
請求項6は上記請求項1〜4記載の球内部欠陥探傷用マスターの内部欠陥を探傷するための専用回転治具であり、容器内に収容された媒質油中に浸漬された回転治具よりなり、その回転軸の先端部に球体をある平面で切断したマスターを固定する固定部を有して、固定されたマスターを元の球体の中心を軸として回転可能となしていると共に、マスター固定部の上部に超音波探傷プローブが設置されている構成からなる。
【0014】
請求項7は前記請求項1〜4記載のマスターを請求項6記載のマスター専用回転治具を使用して内部欠陥を探傷する方法であり、マスターを回転治具に固定し、該マスターの元の球体の中心を回転軸としてマスターを回転させながら球表面側から超音波探傷を実施することによりマスターの内部においてあいている穴を探傷し、内部のキズがどの深さまで検査可能であるか確認可能として球内部欠陥探傷装置用マスターの内部にあいている穴を探傷し得るかどうかを評価することで、検出限界となる検査表面からの位置や大きさを明確かつ容易に評価することができるようにすると共に、請求項1〜4記載の球内部欠陥探傷装置用マスターの内部欠陥の位置や大きさを既知の基準とすることにより、定期的な検査装置の点検や校正を容易に行なうことを可能とするマスターを用いた球内部欠陥探傷方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマスターを使用することにより、従来の超音波方式の検査方法ならびに検査装置の検査精度を評価する際に、従来の如く内部に欠陥を内在しているかどうか不明な被検査対象物を数多く検査することなく、球表面からの位置や大きさが既知であり、これが個々に異なる数種類のマスターを検査することにより検査方法ならびに検査装置の検出限界の大きさといった検査装置が有する検査精度を容易に評価できるようになり、また本マスターを内部欠陥の位置や大きさが既知の基準とし、これを用いて定期的に検査装置の点検や校正を行なうことにより、検査装置の信頼性を恒久的に持続することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るマスターの1例を示す形態図である。
【図2】(イ)〜(ト)は本発明マスターの製作方法の順序を示し、(イ)は球体の成形、(ロ)は台座上に置いた状態、(ハ)はマスターを仮固定した状態、(ニ)は枠内部にボンドを充填した状態、(ホ)は硬化したボンドを削る前の状態、(ヘ)は切断球がボンドに埋め込まれた状態、(ト)はボンドに埋め込まれて完成した状態である。
【図3】マスター回転治具を示す概要図である。
【図4】回転軸に設置されたマスターを横から見た図である。
【図5】(イ),(ロ)はマスターを回転治具に置いて超音波探傷した際の各波形であり、(イ)はマスターが内部キズφ0.5mm表面からの深さ50μmの場合、(ロ)は内部キズがφ0.5mm,表面からの深さが100μmの場合である。
【図6】マスターのφ0.5mmの内部キズが表面からの深さ50〜300μmまでを50μmとびで同じ条件下で得られた超音波探傷時のエコー高さと内部キズ深さの関係グラフである。
【図7】(イ)は内部キズがφ0.7mm、表面からの深さが150μmのマスターを回転治具において実施した超音波探傷時の波形であり、(ロ)は内部キズがφ0.5mmで表面からの深さが150μmのマスターを回転治具に置いて実施した超音波探傷時の波形である。
【図8】マスターの内部キズ0.2〜0.7mm、表面からの深さが150μmで同じ条件下で超音波探傷した時のピークエコー高さと、内部人口キズの大きさの関係グラフである。
【図9】内部キズが0.7mm、表面からの深さ150μmのマスターを回転治具に置いて超音波探傷を実施したときの球表面で反射された表面エコーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、更に添付図面を参照し、本発明の詳細について順次説明する。図1は本発明に係る球内部欠陥探傷装置用マスターの1形態を示しており、このマスター11は高炭素クロム軸受鋼SUJ2の外、SUS440C、M50等の玉軸受に転動体として用いられる合金からなる金属材料で構成されており、その中心には穴底部から球表面までの距離12において例えば深さ50μm、例えば直径0.5mmの穴がドリルにてあけられている。図2は上記図1に示すマスター11の製作方法を示しており、以下図2に従い順を追って説明する。
【0018】
図2(イ)において、例えば球の直径10.0mmの高炭素クロム軸受鋼SUJ2からなる製品球21を用意する。このとき製品球21の精度として、通常、表面粗さが0.01μmRa以下、真球度が1μm以下であればよいが、実際的には表面粗さ0.004μmRa、真球度最大0.1μm位であることが好ましい。次にこの製品球21を図2(ロ)の如く台座22に置く。このとき台座22の精度として上面と下面の平行度が±1μmであることが好適である。そして、置いた製品球21を台座22に固定するために図2(ハ)の如く四方を枠23で仮固定する。その後、図2(ニ)の如くボンド24を隙間無く全体に充填する。そしてボンド24を充填して4時間経過後に仮固定している枠23を取り外し、平面研磨機にて図2(ホ)の如く、製品球が上面ギリギリにまたる位置まで上面を削る。図2(ホ)の上面の位置である、零点25を基準とし、ここから例えば7mm平面研磨機にて製品球21を硬化したボンド24ごと削る。そうすると図2(ヘ)の如き球体の直径の25%以上、50%以下である例えば3mmの切断球26がボンド24に埋め込まれた状態で出来上がる。ここで、例えばマスター11の球表面から人口キズまでの深さを50μmとしたい場合は、この切断球26のその切断面の中心から、2.950mm深さの位置までドリルにて穴開けを実施する。このとき工作機械の計測精度としては0.001mmである。またこの時、切断面からのドリル穴開け深さを変更することで深さ違いのものを作成することが可能となる。最終的に図2(ト)の如くマスター11がボンドに埋め込まれた状態で完成する。完成したマスター11をその後ボンドから取り外し、後述する専用の回転治具30に設置することで使用可能となる。
【0019】
次に、このマスター11を使用にあたり専用の回転治具に設置するには、例えば図3の如き媒質油31に浸漬された専用の回転治具30の回転軸先端にマスター固定部を設けてマスター11を設置し、その上に超音波探傷用プローブ32を設置することで使用される。回転治具30はマスター11の元の球体の中心を回転軸として回転できる機構となっており、マスター11を、超音波探傷用プローブ32の下で回転させることにより、マスター11の内部人口キズの探傷が可能となる。図中、容器33は媒質油31を満たすための容器である。また、図4は回転軸34に設置されたマスター11を横から見た図である。
【0020】
ここで例えばマスター11の内部キズがφ0.5mm、表面からの深さ50μmを回転治具30に置いて超音波探傷を実施したところ、図5(イ)の如きφ0.5mm、内部深さ50μmのエコー52が確認され、内部キズの探傷が可能であることが確認できた。球表面エコー51はマスター11の球表面で反射された超音波の表面エコー51である。また、マスター11の内部キズがφ0.5mm、表面からの深さ100μmを回転治具30において超音波探傷を実施すると図5(ロ)の如きφ0.5mm、内部深さ100μmのエコー53が確認され、マスター11の内部キズがφ0.5mm、表面から深さ50μmのエコー52と比較すると超音波のエコー高さが低くなっていることが確認できた。これはキズの位置が深くなるほど感度が低下することによるものである。
【0021】
図6はマスター11のφ0.5mmの内部キズ表面からの深さ50μm〜深さ300μmまでを50μmとびで同じ条件下で超音波探傷した結果得られた超音波ピークエコー高さと内部キズの深さの関係グラフである。ここで、縦軸は超音波探傷によって得られた内部キズの超音波エコーの高さ、横軸は内部キズの深さを表わしている。この図6より、内部キズの深さが表面から深くなるにつれ超音波探傷による超音波欠陥エコーが線形的に減少する様子が確認された。つまり、マスター11の任意の深さのものを点検用のマスター球に使用することで内部深さ方向に対するキズ感度の確認及び補正が可能となる。
【0022】
また、例えば内部キズがφ0.7mm、表面からの深さ150μmのマスター11の回転治具30において超音波探傷を実施したところ、図7(イ)の如きφ0.7mm、内部深さ150μmのエコー72が確認された。なお、図中、球表面エコー71はマスター11の球表面で反射された超音波の表面エコー71である。
【0023】
次に、例えばマスター11の内部キズがφ0.5mm、表面からの深さ150μmを回転治具30に置いて超音波探傷を実施すると図7(ロ)の如きφ0.5mm、内部深さ150μmのエコー73が確認され、マスター11の内部キズがφ0.7mm、表面深さ150μmのエコー72と比較して超音波のエコー高さが低くなっていることが確認できた。これはキズの大きさは小さくなる程、感度が低下することによるものである。
【0024】
図8はマスター11がφ0.2mm〜0.7mmの内部キズが表面からの深さ150μmで同じ条件下で超音波探傷した結果、得られた超音波ピークエコー高さと内部人口キズの大きさの関係のグラフであり、縦軸は超音波探傷によって得られた内部キズの超音波エコーの高さ、横軸は内部キズの大きさを表わしている。この図8より、内部キズの大きさが大きくなるにつれて超音波探傷による超音波欠陥エコーが増加する様子が確認される。つまり、マスター11の任意の大きさの物を点検用のマスター球に使用することで内部キズ大きさに対する感度の確認及び補正が可能となるのである。
【0025】
更に、製品球21の真球度が5μm、表面粗さ0.06μmRaの物を使用してその内部キズが0.7mm、表面からの深さ150μmのマスター11を製作し、そのマスター11を回転治具30に置いて超音波探傷を実施すると図9の如きφ0.7mm、内部深さ150μmのエコー92が確認された。ここで、球表面エコー91はマスター11の球表面で反射された超音波の表面エコー91である。この図9よりベースノイズ93が真球度0.1μm、表面粗さ0.004μmRaのマスターと比較して約10倍程度大きくなり、キズピークエコー92は約20%程度小さくなったことが分かる。これは真球度が1μm以上に悪い物を用いて、超音波探傷する超音波エコーの反射が一定でなくなってしまい、ノイズとなってしまうためである。また、表面粗さが0.01μmRa以上の悪いものを用いて超音波探傷すると、球部表面にて乱反射される割合が増加し、球内部キズエコーの反射率が低下し、キズピークエコーが低下してしまう。また、表面粗さの良いものであれば通常反射源にならない表面の凹凸が、表面粗さが悪いとその凹凸が超音波の反射源となるので、ベースノイズの増大に繋がってしまう。ベースノイズが大きいとキズの位置が深い場合のキズエコー、キズが小さい場合のエコーを見逃してしまう恐れがある。このためベースノイズは出来うる限り小さい方が良く、このため精度よく、感度よい探傷を実施し、より高い補正を行なうためにはマスター11の真球度は1μm以下、表面粗さは0.01μm以下の物を使用する必要がある。
【0026】
かくして、本発明マスターを使用することにより、従来の超音波方式の検査方法ならびに検査装置の検査精度を評価する際に、内部に欠陥を内在しているかどうか不明な被検査対象物を数多く検査することなく、球表面からの位置や大きさが既知であり、これが個々に異なる数種類のマスターボールを検査すれば検査方法ならびに検査装置の検出限界深さや検出限界の大きさといった検査装置が有する検査精度を容易に評価でき、また本マスターの内部欠陥の位置や大きさを既知の基準とし、これを用いて定期的に検査装置の点検や校正を行なうことにより、検査装置の信頼性を恒久的に持続することができる。
【符号の説明】
【0027】
11:マスター
12:球表面までの距離
13:穴
21:製品球
22:台座
23:枠
24:ボンド
26:切断球
30:回転治具
31:媒質油
32:探傷用プローブ
34:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体をある平面において切断し、該切断面中心から切断面に垂直で、かつ反対側の球表面近傍に至る穴を形成してなることを特徴とする球内部欠陥探傷装置用マスター。
【請求項2】
ある平面において切断した球体の、切断面から垂直方向の球表面までの最大距離が、もとの球体の直径の25%以上50%以下である請求項1記載の球内部欠陥探傷装置用マスター。
【請求項3】
球体が金属材料であり、SUJ2,SUS440C,M50等の玉軸受に転動体として用いられる合金から選ばれた材料からなる請求項1,又は2記載の球内部欠陥探傷装置用マスター。
【請求項4】
マスターの球部表面の真球度が1μm以下、表面粗さが0.01μmRa以下である請求項1,2又は3記載の球内部欠陥探傷層筒状保護部用マスター。
【請求項5】
球体をある平面において切断した後に、その一方の切断面中心から切断面に垂直で、かつ反対側の球表面近傍まで穴をあける際に、穴をあけるドリル径はφ0.2mm以上0.7mm以下とし、さらにその穴の底部から球表面までの距離が50μm〜300μmの範囲で、深さごとに等間隔に製作することを特徴とする球内部欠陥探傷装置用マスターの製作方法。
【請求項6】
容器内に収容された媒質油中に浸漬された回転治具よりなり、該回転治具はその先端部に球体をある平面で切断したマスターを固定する固定部を有して、固定されたマスターを元の球体の中心を軸として回転可能となしていると共に、マスター固定部の上部には超音波探傷プローブが設置されていることを特徴とする球内部欠陥探傷用マスター専用回転治具。
【請求項7】
請求項1〜4記載の球内部欠陥探傷装置用マスターを媒質油に浸漬された回転治具に固定し、該マスターをマスターの元の球体の中心を回転軸として超音波探傷プローブの下で回転させながら球表面側からマスターの内部にあいている穴を超音波探傷して検出限界となる検査表面からの位置や大きさを評価すると共に、該マスターの内部欠陥の位置や大きさを既知の基準とすることにより定期的な検査装置の点検や校正を行なうことを特徴とするマスターを用いた球内部欠陥探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−243170(P2010−243170A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88771(P2009−88771)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(595151017)株式会社天辻鋼球製作所 (27)
【Fターム(参考)】