説明

球状弾性表面波素子の製造方法

【課題】結晶球状体の表面に形成するすだれ状電極及び素子電極の処理工数を少なくし、球状弾性表面波素子を効率良く製造することにある。
【解決手段】結晶球状体11の表面上の素子電極21a,21b及びすだれ状電極22を形成しようとする北極部分13a、南極部分13b及び両極部分を接続する接続部分13cに、無電解析出反応に利用して金属膜15を一括して成膜する成膜工程と、北極部分13a、南極部分13bに成膜された金属膜15a,15bをそのまま素子電極21a,21bとして利用し、接続部分13cに成膜された金属膜15c上に対をなすすだれ状電極22a,22bを形成する電極形成工程とを含む球状弾性表面波素子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の弾性表面波素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶基材上に弾性表面波を発生させるとともに、その発生された弾性表面波を受信する弾性表面波素子としては、従来から広く知られている。
【0003】
ここで、弾性表面波とは、通常のバルク波と呼ばれる縦波や横波と異なり、物質表面にそのエネルギーの多くを集中させて伝搬する弾性波のことである。弾性表面波の例としては、レーリー波、セザワ波、擬セザワ波、ラブ波等が挙げられる。
【0004】
従来、弾性表面波素子としては、例えば、遅延線、発信機に組み込む発振素子及び共振素子、周波数を選択するためのフィルター、化学センサ、バイオセンサ、リモートタグなど、多くの用途で使用されている。
【0005】
その中でもよく知られている弾性表面波素子には、平面型の弾性表面波素子がある。平面型の弾性表面波素子は、平坦な基材上に配置された平坦な圧電体上に一対のすだれ状電極が設けられている。一方のすだれ状電極に高周波電流を供給すると、当該一方のすだれ状電極の並んでいる方向に圧電体から弾性表面波が発生される。このとき、他方のすだれ状電極は、一方のすだれ状電極の櫛形電極から発生される弾性表面波の移動方向に配置されているので、その移動伝搬してくる前述の弾性表面波を受信することができる。
【0006】
しかしながら、平面型の弾性表面波素子は、一対のすだれ状電極が設けられている圧電体の表面及び基材の表面が平坦であることから、一方のすだれ状電極から発生された弾性表面波は、他方のすだれ状電極に向かう伝搬中に、基材の平坦な表面上で弾性表面波の伝搬方向と直交する方向に拡散して弱まってしまう。
【0007】
その結果、平面型の弾性表面波素子は、弾性表面波の伝搬損失を小さくすることができず、ひいては弾性表面波素子の性能を高めることに限界がある。
【0008】
そこで、平面型の弾性表面波素子に代えて、球状弾性表面波素子が開発されている。
【0009】
この球状弾性表面波素子は、圧電体結晶球などにより構成された球状体の表面に周回経路を形成するとともに、当該周回経路上に対をなすすだれ状電極が設けられている。
【0010】
このすだれ状電極に高周波電流を供給し、球状体表面上の周回経路の方向に向かうように弾性表面波を発生させると、この弾性表面波が球状体表面の周回経路の方向と交差する方向に拡散せずに周回経路の方向に沿って連続的に伝搬する。このように、弾性表面波は、球状体表面上の周回経路に沿って拡散することなく伝搬させることができ、ひいては無限に伝搬させることが可能となる。
【0011】
従って、球状弾性表面波素子は、従来の平面型の弾性表面波素子に比べて遥かに性能を高めることができ、さらに基材の外表面が球形状をなし、その外表面に連続的に伝搬させる周回経路を形成できることから、コンパクトに実現できるなどの様々に優れた特徴を有している。
【0012】
ところで、以上のような球状弾性表面波素子の多くは、結晶球状体の表面に対をなすすだれ状電極が形成され、対をなすすだれ状電極の両端部が球状体中心線上の北極部分及び南極部分に配置される各素子電極に電気的に接続された構成となっている(特許文献1参照)。
【0013】
そこで、球状弾性表面波素子を駆動する場合、素子電極に高周波発生源を結線し、当該高周波発生源から高周波信号を印加する。そして、すだれ状電極から表面弾性波が発生するとともに、その発生された表面弾性波が球状体の外表面に形成された周回経路を連続的に伝搬することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−300628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、このような球状弾性表面波素子は、結晶球状体の表面の素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする各領域に蒸着、スパッタなどの方法によって金属膜を成膜した後、必要に応じてフォトリソグラフィー、エッチングなどの微細加工を施すことにより、各領域に素子電極及びすだれ状電極を形成している。
【0016】
特に、素子電極は、球状体の表面に形成される周回経路を障害しない位置に形成しなければならない。このため、前述する球状弾性表面波素子を製造する際、各領域に個別に蒸着、スパッタなどを複数回にわたって行い、領域ごとに金属膜を成膜した後、これらの金属膜に微細加工を施すことにより、素子電極及びすだれ状電極を別々に形成している。
【0017】
その結果、球状弾性表面波素子上にすだれ状電極及び素子電極を形成する場合、蒸着、スパッタ、成膜等の作業がそれぞれ複数回を行うことから、処理工数が多くなり、かつ効率的に製造できず、コストの面でも影響を与える問題がある。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、結晶球状体の表面上のすだれ状電極及び素子電極を形成しようとする複数の領域に金属膜を一括して成膜するとともに、その成膜された金属膜上にすだれ状電極及び素子電極を形成し、処理工数を少なくし、球状弾性表面波素子を効率良く製造する球状弾性表面波素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、結晶球状体の表面上の素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分、南極部分及びこれら両極部分を接続する接続部分に、無電解析出反応を利用して金属膜を一括して成膜する成膜工程と、北極部分及び南極部分に成膜された金属膜をそのまま素子電極として利用し、接続部分に成膜された金属膜上に対をなすすだれ状電極を形成する電極形成工程とを含む球状弾性表面波素子の製造方法である。
【0020】
また、請求項2に対応する発明は、結晶球状体の表面上の素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分、南極部分の何れか一方の部分及びこれら両極部分を接続しようとする接続部分に、無電解析出反応を利用して金属膜を一括して成膜する成膜工程と、北極部分、南極部分の何れか一方の部分に成膜された金属膜上に2つの素子電極を形成し、かつ接続部分に成膜された金属膜上に対をなすすだれ状電極を形成する電極形成工程とを含む球状弾性表面波素子の製造方法である。
【0021】
なお、成膜工程としては、結晶球状体の表面上の金属膜で成膜する部分をエッチング液に浸漬し、凹凸を形成する第1の工程と、この第1の工程によって結晶球状体に形成された凹凸に触媒を吸着及び定着させる第2の工程と、この第2の工程後、無電解析出反応に利用して金属膜を成膜する第3の工程とを有することを特徴とする。
【0022】
また、電極形成工程としては、レーザーアブレーションを用いて、すだれ状電極及び素子電極を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、結晶球状体の表面上のすだれ状電極及び素子電極を形成しようとする複数領域に金属膜を一括して成膜し、かつその成膜された金属膜上にすだれ状電極及び素子電極を形成していくことにより、処理工数を少なくし、球状弾性表面波素子を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法の一実施形態を説明する製造工程を示す図。
【図2】本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法の他の実施形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法の実施形態1を説明する図である。
【0026】
本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法としては、大きく分けると、成膜工程と電極形成工程との二つの工程を含むものである。
【0027】
(1) 成膜工程について。
【0028】
先ず、圧電性結晶材料で形成された結晶球状体の表面に対をなすすだれ状電極及び各すだれ状電極に対応する素子電極を形成するための金属膜を成膜する。
【0029】
結晶球状体としては、例えば水晶、ランガサイト、ニオブ酸リチウム、タルタン酸リチウムなどの圧電材料によって形成された球体である。
【0030】
金属膜の成膜は、金属イオンを含む水溶液中に結晶球状体を浸漬し、無電解析出反応を利用し、当該水溶液に含む金属イオンを還元して結晶球状体の表面に析出させるものである。このとき、成膜する金属種としては、無電解析出反応で析出可能な金属種の中から適宜選択的に使用する。具体的には、コバルト、ニッケル、銅、ルビジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、白金、金、鉛など、あるいはバナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、モリブデン、タングステンなどとニッケルまたはコバルトとの合金材料の中から選択的に使用する。
【0031】
因みに、本実施形態では、成膜する金属種の一例として、水晶の結晶球状体の表面に例えば銅を成膜する方法について、図1を参照して説明する。
【0032】
先ず最初に、水晶の結晶球状体11を用意する。12は結晶球状体11の北半球と南半球の中心となる赤道ラインを表している(図1(a)参照)。
【0033】
結晶球状体11は、その表面を超純水、あるいはエタノール、イソプロパノール、アセトンなどのような有機溶媒を用いて洗浄する。この洗浄により、結晶球状体11の表面が清浄化され、また後述するエッチング処理や無電解めっきを均一に保持させることが可能となる。
【0034】
次に、結晶球状体11の表面のうち、素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分13a、南極部分13b及びこれら両極部分13a,13bを接続する接続部分13cに対して、エッチング処理を行う(図1(b)参照)。
【0035】
なお、エッチング処理を行う理由は、結晶球状体11の表面上に、後述する無電解めっき処理を行うために必要な触媒金属を容易に保持させること、および結晶球状体11の表面に金属膜を機密性よく密着させる為である。
【0036】
このエッチング処理は、結晶球状体11を、フッ酸水溶液、重フッ化アンモン(重フッ化アンモニウム)水溶液などのような適当なエッチング液に浸漬し、素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分13a、南極部分13b及び接続部分13cに無数の微小な凹凸14を形成する。
【0037】
なお、結晶球状体11としては、予め適宜な治具(図示せず)にセットし、素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする部分(金属膜を成膜したい部分)13a〜13cのみを露出させ、エッチング液に浸漬し、凹凸14を形成してもよい。
【0038】
また、予め定めるプログラムデータに従って、結晶球状体11を保持するための治具のアームを自動的に動かし、結晶球状体11の金属膜を成膜したい部分13a〜13cのみを所定の順序で順次エッチング液に浸漬し、凹凸14を形成してもよい。
【0039】
次に、凹凸14が形成された結晶球状体11に対して、触媒金属吸着処理を行う。触媒金属吸着処理は、結晶球状体11に形成された凹凸14を、塩化スズ水溶液などに浸漬することによって行われる。この処理により、凹凸14の内部に塩化スズが浸透される。
【0040】
引き続き、凹凸14の内部に塩化スズが浸透された結晶球状体11に対して、触媒金属定着処理を行う。触媒金属定着処理は、結晶球状体11の内部に塩化スズが浸透された凹凸14を、塩化パラジウム水溶液などに浸漬することなどによって行われる。この浸漬により、凹凸14の内部に浸透した塩化スズが塩化パラジウム水溶液と反応し、図示されていないが凹凸14内部において金属パラジウム微粒子が還元析出される。この金属パラジウム微粒子が、後述する無電解めっきにおいて触媒金属として機能する。
【0041】
さらに、凹凸14の内部に金属パラジウム微粒子が析出された結晶球状体11に対して、無電解めっきを行い、結晶球状体11の表面に金属膜15を成膜する。
【0042】
無電解めっき処理は、硫酸銅水溶液などのような銅イオンを含む水溶液に、ホルムアルデヒド、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素カリウムなどのような還元剤を加えためっき浴に対して、凹凸14内部に金属パラジウム微粒子が析出された結晶球状体11を浸漬することによって行われる。
【0043】
この無電解めっき処理により、金属パラジウム微粒子が触媒として作用し、銅の無電解析出反応が始まる。このとき、反応条件を適宜に制御することにより、凹凸14が析出された銅によって完全に充填され、さらに凹凸14の近傍にも銅が満たされ、金属膜15が形成される(図1(c)参照)。
【0044】
(2) 電極形成工程について。
【0045】
電極形成工程は、前述したように結晶球状体11の表面に成膜された金属膜15に対してパターニング処理を施し、対をなすすだれ状電極及び素子電極を形成する工程である。
【0046】
なお、金属膜15としては、図1(c)に示すように、北極部分13a、南極部分13b及びこれら両極部分13a,13bを接続する接続部分13cに成膜する(図1(c)参照)。ここで、15aは北極部分13aに成膜された金属膜、15bは南極部分13bに成膜された金属膜、15cは接続部分13cに成膜された金属膜である。
【0047】
ここで、電極形成工程の一例としては、北極部分13aの金属膜15a及び南極部分13bの金属膜15bをそのまま素子電極21a,21bとして利用し、接続部分13cの金属膜15cのみにパターニング処理を施し、素子電極21a,21bに個別に連なる対をなすすだれ状電極22(22a,22b)を形成する。
【0048】
以下、すだれ状電極22の形成工程について説明する。
対をなすすだれ状電極22は、既に公知のパターニング技術を用いて形成する。その一例としては、フォトリソグラフィー技術が挙げられる。具体的には、接続部分13cに性膜された金属膜15cのうち、すだれ状電極22を形成したい領域近傍にレジストを塗布し、所要形状(例えば櫛歯状)をなすすだれ状電極パターンを有するフォトマスクを用いて露光する。
【0049】
その後、現像及びエッチングを行うことにより、金属膜15cにパターニングを施し、すだれ状電極22a,22bを形成する(図1(d)参照)。
【0050】
また、すだれ状電極22を形成する別の例としては、レーザーアブレーションが挙げられる。レーザーアブレーションは、材料表面に強力なレーザ光を照射してエッチングを行う手法である。すなわち、接続部分13cに性膜された金属膜15cのうち、すだれ状電極22を形成したい領域近傍に、所望のパターンでレーザ光を照射することにより、金属膜15cにパターニングを施し、対をなすすだれ状電極22a,22bを形成する。
【0051】
さらに、電極形成工程によってすだれ状電極21a,22bを形成した後、例えば2つの素子電極21a,21bを外部の高周波発生源(図示せず)に接続し、高周波発生源から高周波信号をすだれ状電極22a,22bに印加する。なお、すだれ状電極21a,22bの何れか一方を接地する場合もある。
【0052】
これにより、すだれ状電極22a,22bにおいて弾性表面波が発生し、その発生された表面弾性波が結晶球状体11表面の赤道ラインに沿う周回経路23を連続的に伝搬し、かつその伝搬されてくる弾性表面波をすだれ状電極22a,22bにて受信することができる。
【0053】
従って、以上のような実施形態1によれば、北極部分13a、南極部分13b及びこれら両極部分を接続する接続部分13cとに金属膜15a〜15bを一括して成膜し、そのうち北極部分13a及び南極部分13bに対応する金属膜15a,15bをそのまま素子電極21a,21bとして利用し、接続部分13cの金属膜15cのみにパターニング処理を施して、素子電極21a,21bに個別に連なる対をなすすだれ状電極22a,22bを形成するので、少ない処理工数で効率よく球状弾性表面波素子を製造でき、量産化に非常に好適な球状弾性表面波素子の製造方法を提供できる。
【0054】
(実施形態2)
図2は本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法の実施形態2を説明する図である。
【0055】
実施形態2における製造方法は、実施形態1と同様の成膜工程を採用するが、特に金属膜15の成膜を施すに当り、結晶球状体11の表面のうち、例えば北極部分13a、南極部分13bの何れか一方である例えば北極部分13a及び図1(c)に示す両極部分13a,13bどうしを接続する接続部分13cを金属膜15にて一括して成膜する(図2(a)参照)。
【0056】
そして、金属膜15の成膜後、実施形態1と同様の電極形成工程を行う。すなわち、両極部分13a,13bどうしを接続する接続部分13cに成膜した金属膜15c上に対をなすすだれ状電極22(22a,22b)を形成する。
【0057】
また、実施形態1と同様の電極形成工程により、両極部分13a,13bの何れか一方となる例えば北極部分13aに成膜した金属膜15aにも、すだれ状電極22a,22bと個別に連なる2つの素子電極21a,21bを形成する(図2(b)参照)。
【0058】
さらに、電極形成工程によってすだれ状電極21a,22bを形成した後、例えば2つの素子電極21a,21bを外部の高周波発生源(図示せず)に接続し、高周波発生源から高周波信号をすだれ状電極22a,22bに印加する。なお、すだれ状電極21a,22bの何れか一方を接地する場合もある。
【0059】
これにより、すだれ状電極22a,22bにおいて弾性表面波が発生し、その発生された表面弾性波が結晶球状体11表面の赤道ラインに沿う周回経路23を連続的に伝搬し、かつその伝搬されてくる弾性表面波をすだれ状電極22a,22bにより受信できる。
【0060】
従って、以上のような実施形態2によれば、北極部分13a、南極部分13bの何れか一方及び両極部分どうしを接続する接続部分13cに金属膜15を同時に一括して成膜し、そのうち接続部分13cに成膜した金属膜15cにパターニング処理を施して、対をなすすだれ状電極22a,22bを形成し、かつ、北極部分13a、南極部分13bの何れか一方に成膜した金属膜15aにもパターニング処理を施して、すだれ状電極22a,22bにそれぞれ個別に連なる2つの素子電極21a,21bを形成するので、少ない処理工数で効率よく球状弾性表面波素子を製造でき、量産化に好適な球状弾性表面波素子の製造方法を提供できる。
【0061】
(その他の実施形態)
(1) 上記実施形態では、対をなすすだれ状電極22a,22bを形成したが、複数対を有するすだれ状電極を形成してもよく、また、すだれ状電極22a,22bの櫛歯の幅、太さ、あるいは金属膜15cの何れの部分にすだれ状電極22a,22bを形成するかなどは、ユーザの要望等を考慮して適宜自由に選択することができる。
【0062】
(2) 上記の製造方法については、成膜工程と電極形成工程の二つの工程に分けて説明したが、さらに工程を細分化したり、あるいは成膜に用いる金属種についても一例を挙げて説明したが、金属種が異なれば、その金属種にとって各工程の中で最良とする手法が多少異なることも否めないものであり、製造方法として最良の方向であればその方向性に選択することは任意である。
【0063】
(3) なお、本発明に係る球状弾性表面波素子の製造方法は、圧電材料の結晶球状体11に弾性表面波を発生させ、周回経路23を伝搬させつつ多重周回させる際、その結晶球状体11の表面に付着する物質などによって周回速度が変化するのを電気的に測定するセンサとして用いることができる。具体的には、温度センサ,湿度センサ、各種のガスセンサ、臭いセンサ、バイオセンサなどへの測定センサとして適用することができる。
【0064】
(4) 上記各実施形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0065】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0066】
11…結晶球状体、12…赤道ライン、13a…北極部分、13b…南極部分、13c…両極どうしの接続部分、14…凹凸、15…金属膜、15a…北極部分に成膜した金属膜、15b…南極部分に成膜した金属膜、15c…両極どうしの接続部分に成膜した金属膜、21a,21b…素子電極、22…すだれ状電極、22a,22b…対をなすすだれ状電極、23…周回経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶球状体の表面上の素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分、南極部分及びこれら両極部分を接続する接続部分に、無電解析出反応を利用して金属膜を一括して成膜する成膜工程と、
前記北極部分及び前記南極部分に成膜された金属膜をそのまま素子電極として利用し、前記接続部分に成膜された金属膜上に対をなすすだれ状電極を形成する電極形成工程と
を含んだことを特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法。
【請求項2】
結晶球状体の表面上の素子電極及びすだれ状電極を形成しようとする北極部分、南極部分の何れか一方の部分及びこれら両極部分を接続しようとする接続部分に、無電解析出反応を利用して金属膜を一括して成膜する成膜工程と、
前記北極部分、前記南極部分の何れか一方の部分に成膜された金属膜上に2つの素子電極を形成し、かつ前記接続部分に成膜された金属膜上に対をなすすだれ状電極を形成する電極形成工程と
を含んだことを特徴とする球状弾性表面波素子の製造方法。
【請求項3】
前記成膜工程は、結晶球状体の表面上の金属膜で成膜する部分をエッチング液に浸漬し、凹凸を形成する第1の工程と、この第1の工程によって前記結晶球状体に形成された凹凸に触媒を吸着及び定着させる第2の工程と、この第2の工程後、無電解析出反応に利用して金属膜を成膜する第3の工程とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の球状弾性表面波素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極形成工程は、レーザーアブレーションを用いてエッチング処理することにより、前記すだれ状電極及び前記素子電極を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の球状弾性表面波素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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