説明

球面回転保持器およびそのような保持器を備える球面軸受

【課題】球面軸受の保持器は凹部内に収容されるころの位置合わせが不安定である。
【解決手段】保持器16のブリッジ32は、各々、上記2つの端環28,30の1つに各々接続している2つの端部82,86と当該2つの端部82,86を接続する中間部84とを含む。上記ブリッジ32の上記中間部84は、互いに、上記中間部84の上記内側面74の全てを含む、単一の中間円錐台形幾何学的表面を設定する。上記中間部84はころを収容する凹部40に向かって突出している少なくとも2つの突出部90を含み、当該突出部90は、各々、上記凹部40に向かって回転する辺縁誘導小面94を有し、上記内側面74と共に、内側ひだ96を形成する。上記辺縁誘導小面94は上記凹部40の固有幾何学的軸92を中心とする同じ回転表面と接し、上記固有幾何学的軸92は上記保持器16の回転軸と共に、上記中間円錐台形幾何学的表面の立体角の半分に等しい角度を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの保持器を備える球面ころ軸受に関するものである。本発明は特に、そのような球面軸受のための保持器に関するものである。本応用例において、球面軸受は、外輪が球面軌道を形成し、当該球面軌道は玉継手を構成し、当該玉継手において、ころと、1つないし複数の保持器と、内輪とにより形成されるサブユニットが振動することのできる、軸受を示すであろう。この種の軸受は、特に、上記外輪と内輪とに固定された構成要素の位置合わせを行うのが困難な、または当該位置合わせが不安定な、用途に用いられる。
【背景技術】
【0002】
文献FR06 06998において、少なくとも1列のころ用の単体金属板製保持器を備える球面軸受が記載されており、当該保持器は幾何学的回転軸を設定し、当該保持器は、横端面を有する大直径環と、横端面を有する小直径環と、当該小直径環と当該大直径環とを接続し、当該小直径環および当該大直径環とともに、ころ案内用の凹部を設定するブリッジとを含む。上記保持器はまた、径方向外側に向かって回転し、上記大直径環から上記小直径環へと軸方向に延びる径方向外側面を有し、当該径方向外側面は、上記大直径環から上記小直径環へと延びる円筒形端部分と、上記小直径環から上記大直径環へと延び、第1立体角に従って上記大直径環に向かって広がる円錐台形端部分と、上記小直径部分と上記大直径部分とを接続し、当該第1の立体角より小さい第2の立体角に従って上記大直径部分に向かって広がる円錐台形中間部分とから成る、回転表面によって包絡される。言い換えれば、上記径方向外側面は双円錐回転表面内に完全に含まれる。上記円錐台形中間部分により、より容易に上記内輪を上記外輪内に挿入でき、上記保持器の補強がもたらされる。上記ブリッジは、ころ案内用の側方突出部を含み、各ブリッジの2つの側方突出部は、有利には、上記中間部分の、上記円錐台形端部分側と上記円筒形端部分側との軸方向両側に配置され、同じ凹部へと向けられる。これらの突出部は上記ころを誘導し、それによって、第1に取付け時に、第2に上記軸受の使用時に、特に内輪が外輪に対して振動するときに、上記ころの脱落を防止する。一方で円錐台形に向けられ、他方で円筒に向けられる、上記突出部の位置合わせは、上記保持器の製造時の複雑な仕上げ工程を必要とし、その制御は困難である。加えて、上記突出部の摩耗が使用中に見られ、そして、上記ころが上記凹部の他の表面を侵食する傾向が見られ、これは、上記凹部内の上記ころの位置合わせの不安定性の結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2904388号明細書(2008年2月1日公開)
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記に明らかにされた先行技術の欠点の全て、または幾つかを改善することであり、特に、製造するのがより単純で、上記ころの誘導の点においてより効果的な保持器を提案することである。
【0005】
これをなすため、本発明の第1の側面に従って、下記の保持器が提案される。すなわち、球面軸受の少なくとも1列のころ用の保持器であって、当該保持器は、幾何学的回転軸を設定し、当該幾何学的回転軸に芯合わせされ、当該幾何学的回転軸に沿って互いに離れており、互いに異なる直径を有する2つの端環と、当該2つの端環を接続し、当該端環と共に、当該ころを誘導する凹部の範囲を定めるブリッジとを含み、当該ブリッジは、各々、当該2つの端環の1つへと各々接続する2つの端部と、当該2つの端部を接続し、当該回転軸に向かって回転する内側面を有する中間部とを含み、当該ブリッジの当該中間部は、互いに、当該中間部の当該内側面をすべて含む単一の中間円錐台形幾何学的表面を設定し、当該保持器はそのようなものであるから、当該凹部の各々と、当該凹部の範囲を定める当該ブリッジの各々とを考慮すると、当該ブリッジの当該中間部は、当該凹部に向かって突出している少なくとも2つの突出部を含み、当該突出部は、各々、当該凹部に向かって回転する辺縁誘導小面を有し、当該ブリッジの当該中間部の当該内側面と共に内側ひだを形成し、当該凹部内に突出している当該突出部の当該辺縁誘導小面は、当該凹部の固有軸を中心とする同じ回転表面と接し、当該凹部の固有軸は、当該保持器の当該回転軸と共に、当該中間円錐台形幾何学的表面の立体角の半分に等しい角度を、形成する。
【0006】
本技術分野の当業者に理解されるよう、上記に定義された凹部の固有軸は、上記誘導小面と接触する上記凹部内に位置するころの幾何学的軸へと結合されることを意図されており、その回転表面は、上記回転表面へと結合される。従って、上記凹部の機能は、第1に、上記球面軸受の内輪および外輪上を転がるころを誘導することである。
【0007】
上記突出部は上記中間部上に配置されているため、その内側面は円錐台形であり、上記凹部の幾何学的軸に平行であり、上記突出部を形成するための仕上げ工程が単純化され、厳しい製造許容誤差を維持することがより容易になる。選択される形成方法に応じて、加締めるまたは圧延することによって、上記ひだは、成形され、またはひじょうにわずかに丸みを付けられ、この場合、1mmよりも小さいひじょうに小さな曲率半径の丸みを付けられる。
【0008】
組み立てによって、上記ひだは上記中間円錐台形幾何学的表面上に配置される。上記誘導小面は、上記内側ひだに対し実質的に垂直に計測される「幅」を有していてもよく、それは比較的大きく、安定しており、上記誘導小面と上記凹部内に存在する上記ころとの間の制御された接触を担保する。
【0009】
好ましくは、上記凹部の上記軸は同じ基本円錐台形幾何学的包絡面上に配置され、当該同じ基本円錐台形幾何学的包絡面は、上記中間円錐台形幾何学的表面の径方向内側に配置され、または上記中間円錐台形幾何学的表面へと結合される。従って、上記突出部の上記誘導小面は、上記球面軸受全体の組み立て後に、上記球面軸受の上記内輪と上記突出部との間に留められる上記ころを保持するという付加的な機能を有する。
【0010】
あるいは、上記中間円錐台形幾何学的表面の径方向外側に配置される上記基本円錐台形幾何学的包絡面を与えることができる。しかし、その場合、上記ころを保持する他の手段を備えることが必要である。例えば、各ころの各軸端面上に窪みを与え、各凹部内に突出する環の各突出部上に窪みを与えることが可能であろう。
【0011】
好ましくは、上記回転表面は円弧状母線を有し、これは、上記保持器へと適合されたころ自体が円弧状の断面を有し、それによって当該ころが球面軸受に特に適するようになるという事実を示す。
【0012】
好ましい実施形態によれば、上記誘導小面は、各々、外側ひだを有し、当該外側ひだは、上記内側ひだに平行し、上記内側ひだの長さの3分の1の距離で、好ましくは、上記内側ひだの長さの半分よりも大きな距離で、上記内側ひだから離して配置される。平行するひだは、ここで、5度よりも小さな角度をお互いで形成するひだを指定するために説明される。この構成によれば、上記凹部の軸に対する上記ころの軸の若干の振動にもかかわらず、ころと制御されている誘導小面との間の接触点または接触域が担保される。
【0013】
上記小面は平面であるのが好ましく、または窪んでおり、後者の場合、上記ころの回転表面の曲率半径よりも大きな曲率半径で窪んでいる。
【0014】
好ましい実施形態によれば、上記凹部は、各々、上記2つの端環によって形成される2つの端誘導面を有し、当該2つの端誘導面は、平面であり、上記凹部の軸に垂直であり、互いに距離Lで離れている。これらの面は、上記ころの端面を誘導することを意図されており、上記ころの端面もまた平面であってもよく、また該当する場合には窪みを有していてもよい。
【0015】
上記凹部における上記ころのより好適な誘導に、特に、上記凹部における上記ころの回転軸のより少ない振動に、従って、より少ない摩耗に、単独で、または組み合わせることで寄与する、或る幾何学的構成を与えることができる。特に、上記凹部の各々と、上記凹部の範囲を定める上記ブリッジの各々とを考慮すると、上記凹部の上記2つの端誘導面を隔てている距離Lの3分の1よりも大きい距離で互いに離れている、上記ブリッジ上に配置される上記辺縁誘導小面を与えることができる。上記凹部の各々と、上記凹部の範囲を定める上記ブリッジの各々とを考慮すると、上記2つの端誘導面を隔てる距離は相対的に大きな隔たりを示し、上記2つの端誘導面を隔てる距離の半分の距離よりも大きな距離で互いに離れている、上記凹部のための、上記ブリッジの2つの突出部の2つの辺縁誘導小面を与えることもできる。上記凹部の各々と、上記凹部の範囲を定める上記ブリッジの各々とを考慮すると、上記凹部の上記2つの端誘導面を隔てる距離Lの、4分の1よりも小さく、望ましくは5分の1よりも小さい距離で、上記凹部の上記2つの端誘導面の1つの面から、各々が離れている、上記ブリッジの上記辺縁誘導小面を与えることもできる。
【0016】
或る実施形態によれば、上記内側ひだは、各々、上記2つの端誘導面を隔てる距離の10分の1から5分の1の長さを有する。
【0017】
金属板をプレス加工することで上記保持器を形成するのを容易にするための、特に有利な実施形態によれば、上記2つの環のうち、より小さな直径を有する環へと接続している各ブリッジの端部は、各々、上記回転軸に向かって回転し、上記回転軸を中心に描かれる同じ円錐台形端面と接する内側面を有する。
【0018】
上記凹部の軸の外側に上記中間円錐台形表面を配置することを可能とするために、1回りの上記中間円錐台形表面の立体角よりも大きな立体角を有する、1回りの上記円錐台形端面を与えることができる。上記回転軸に向かって回転し、上記回転軸を中心に描かれる同じ円筒形端面と接する内側面を各々が有する、上記2つの環のうち最も大きな直径を有する環へと接続している各ブリッジの端部を与えることもできる。
【0019】
優先的には、これまでに説明してきた保持器は金属板製であり、望ましくはプレス加工された金属板製である。
【0020】
本発明の別の側面によれば、本発明の別の実施形態は、以下の球面軸受に関するものである。すなわち、球面軌道が形成される単体外輪と、2つの軌道が形成される内輪と、これまでに説明してきた2つの保持器であって、各々が、当該内輪の当該軌道の1つに対応する、2つの保持器と、当該回転軌道上を回転する2列のころを形成するよう、当該保持器の凹部の中に配置され、当該内輪と当該外輪との間に配置される、円弧状母線を有するころとを含む球面軸受である。
【0021】
ここで、上記2つの保持器の最も大きな直径を有する環同士は隣接している。
【0022】
望ましくは、上記2つの保持器の各々の上記内側ひだは、上記ころが上記内輪の対応する軌道上を転がる時に、上記ころの回転軸が描く円錐台形の径方向外側に配置される。
【0023】
上記内輪に対する上記保持器の最適な誘導のために、各保持器のより小さな直径の環は、径方向外側に向かって回転する内輪の対応する面に対向する、径方向内側に向かって回転する円筒面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の他の特徴および有利な点は、添付の図面を参照しつつ下記の説明を読むことから明らかになるだろう。
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従う球面軸受の透視図である。
【図2】図2は、図1の軸受の軸方向の断面図である。
【図3】図3は、図1の軸受の保持器の透視図である。
【図4】図4は、図3の保持器の軸方向の断面図である。
【図5】図5は、接触小面の平面上の図3の保持器の断面図である。
【0025】
より明瞭にするため、全ての図において、同じ部材または類似する部材には、同じ部材番号を付している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および図2を参照すると、球面軸受10は、外輪12と、内輪14と、2つの保持器16と、ころ18とから構成される。
【0027】
外輪12は、鋼製の単体部片部分から成り、単一球面軌道20を含み、上記軌道は、点0に芯合わせされた球上に配置される表面を構成し、当該点0は外輪12の対称中心を構成する。外輪12の回転対称軸Xもまた設定され得る。
【0028】
内輪14もまた単体部片であり、外輪12の軌道20に対向する2つの軌道22を含む。これら2つの軌道22は、各々、回転対象軸Yを中心とする回転表面を構成し、図1の平面上で、その母線は、上記外輪の軌道20の曲率半径にほぼ等しい半径を有する、または若干大きい半径を有する円弧である。図2において、上記内輪の回転対象軸Yは、外輪12の回転対称軸Xへと結合されて示された。しかし、実際、対称軸Yは、内輪14とともに、点0を中心に回転することができる。内輪14はまた、各軸端において、上記外輪に向かって径方向に回転し、軌道22を延長する縁26を含む。
【0029】
ころ18は、各々、2つの横平端面42,44と、凸面転がり面46とを有する円筒形をしており、凸面転がり面46は、幾何学的軸47を中心とする回転における球面軌道22の曲率半径よりも小さな半径を有する円の円弧によって形成される母線から生成され、幾何学的軸47は、ころ18の回転軸を構成する。
【0030】
その詳細図の幾つかを図3から図5において見ることのできる2つの保持器16は、同じものであり、金属板から製造される。各保持器は、上記内側軌道の回転軸Yへと結合される、回転軸Zを設定し、大きな外側直径を有する環28と、より小さな外側直径を有する環30と、一方の環から他方の環へと延びるブリッジ32とを含む。大きな直径の環28は、軸方向に上記保持器の外側に向かって回転する面34(図4)を有し、小さな直径の環30は、上記保持器の外側に向かって回転する横平面36を有し、当該2つの横面34と36とは、上記保持器を縁どる2つの横平面と接する。ブリッジ32は、保持器16を構成する圧縮金属板に窓40を切り抜くことによって得られ、これら窓40は、ころ18が収容される凹部を形成する。
【0031】
小さな直径の環30は円筒面48(図4)を有し、当該円筒面48は、内輪14に対して保持器16を誘導するように、内側に向かって回転し、上記内輪の縁26にその近傍で対向する。
【0032】
保持器16は、各々、径方向外側に向かって回転する面58を有し、面58は、小さな直径の環30から大きな直径の環28へと延びている。この径方向外側面58は、下記の3つの部分における回転表面によって形成される幾何学的包絡面60内に含まれる。すなわち、大きな直径の環28から小さな直径の環30へと軸方向に延びている第1円筒形端部分62と、第2円錐台形中間部分64と、第3端部分66という3つの部分である。第3端部分66もまた円錐台形であり、第3端部分66は、第2部分64を小さな直径の環30に接続する。端部分66の円錐台形の立体角は、中間部分64の円錐台形の立体角よりも開いている。中間部分64は、上記保持器の横面34と36とから軸方向に等しい距離で離れて配置される横中央平面の、軸方向両側に延びている。円筒形部分62は、上記外輪の最小直径Φminよりも小さい直径を有し、上記保持器が上記外輪内に挿入されることを可能にする。
【0033】
同様の方法において、各保持器のブリッジ32は、径方向内側に向かって回転する面68を有し、面68は、小さな直径の環30から大きな直径の環28へと延びる。この径方向内側面68は、下記の3つの部分における回転表面によって形成される幾何学的包絡面70内に含まれる。すなわち、大きな直径の環28から小さな直径の環30へと軸方向に延びている第1円筒形端部分72と、第2円錐台形中間部分74と、第3端部分76という3つの部分である。第3端部分76もまた円錐台形であり、第3端部分76は、第2部分74を小さな直径の環30に接続する。端部分76の円錐台形の立体角は、中間部分74の円錐台形の立体角よりも開いている。中間部分74は、上記保持器の横面34と36との軸方向の中間に配置される横中央平面の、軸方向両側に延びている。
【0034】
上記ブリッジの内側面68と、上記保持部の外側面58との上述の類似した説明は、以下の事実を示す。すなわち、例えば窓40において計測され、そしてより一般的には内側面68と外側面58との間で計測される、上記保持器の厚みの次元は、特に図4の断面図によって示されているような上記保持器の全体構造について、(10%以内、好ましくは5%で)相対的に安定している、という事実である。この相対的に安定した厚みは、上記保持器の全般的形状を得るために金属板をプレス加工する工程を用いる、上記保持器の製造に、特に適している。従って、各ブリッジについて、内側円錐台形中間表面74および外側円錐台形中間表面64に対応する円錐台形中間部84を設定し、当該中間部84の両側に、当該中間部84を大きな直径の環に接続する円筒形部82と、当該中間部84を小さな直径の環に接続する円錐台形部86とを設定することができ、円筒形端部82は、内側円筒形端表面72と、外側円筒形表面62の一部とに対応し、円錐台形端部86は、その一部について、外側円錐台形表面66と内側円錐台形端表面76とに対応する。各ブリッジの中間部84は、凹部40内に突出する突出部90を備え、この場合、2組の突出部90は、各々、上記ブリッジによって範囲を定められる上記2つの凹部の1つの中に突出している。
【0035】
従って、ころ18は、各々、凹部40内に収容され、当該凹部40は、大きな直径の環28および小さな直径の環30と、上記凹部内に突出する2つの突出部を各々有する2つのブリッジ32とによって、範囲を定められる。各凹部について、凹部40の固有幾何学的軸92は、凹部40内に収容されるころ18の回転軸47へと結合されるよう意図されて、設定することができる。凹部40は、各々、上記ころのための誘導面を有し、ころ18の回転軸47が、凹部40のこの固有軸92と、正しい位置関係にあることを確保するよう意図されている。より正確には、大きな直径の環28は、各凹部において、当該凹部に固有の幾何学的軸92に対して垂直な平端誘導面50を形成する。同様に、小さな直径の環30は、各凹部において、当該凹部に固有の幾何学的軸92に垂直な平端誘導小面52を形成する。端誘導面50と52との間の距離は、ころ18の横平端面42と44との間の距離よりも若干大きく、ころ18と環28および30との間に、小さな機能的な隙間が保持される。
【0036】
各突出部は、凹部40に収容されるころ18と接触するための小面94を有し、当該接触小面94は、ころ18の辺縁の径方向の誘導を与えるために、ころ18の回転軸47に向かって回転する。より正確には、凹部40の4つの突出部90の辺縁誘導小面94は、当該凹部の固有幾何学的軸92を中心とする同じ回転表面と接し、この回転面は、保持器16が内輪14上に配置され、ころ18が内輪14の軌道22上を転がるとき、ころ18の回転表面46へと結合されるように意図されている。
【0037】
辺縁誘導小面94は、上記凹部の固有幾何学的軸92の径方向外側に配置され、外輪12が無い場合でさえ、内輪14の軌道22上の接合点における凹部内に、ころ18を保持する。
【0038】
凹部40の固有幾何学的軸92は、内輪14がその回転対称軸Yを中心に回転する時にころ18の回転軸47が描く基本円錐へと結合されることを目的とする円錐の、ひじょうに多くの母線を構成する。上記円錐は、内側面68の幾何学的包絡面70の円錐台形中間部分74の径方向内側に配置され、当該中間部分74と共に、同じ立体角度で開いており、従って、各凹部の固有軸92は、内側面68の幾何学的包絡面70の円錐台形中間部分74の母線に平行する。
【0039】
辺縁誘導小面94は、各々、上記ブリッジの内側面の幾何学的包絡面の中間部分74と共に形成される内側ひだ96と、当該内側ひだ96と実質的に平行な外側ひだ98と、そして、当該2つのひだに垂直な2つの側方ひだ100および102とによって範囲を定められる。下部ひだ96と上部ひだ98との間の距離は、2つの側方ひだ100と102との間の距離の半分よりも大きく、これによって、凹部40内でころ18がどんなに振動しても、ころ18と保持器16との間の接触点は常に小面94上にあることが担保される。同じブリッジ32の辺縁誘導小面94は、当該ブリッジの中間部84の端に配置されるのが望ましい。目安として、側方ひだ100と102との間で測定された、2つの辺縁誘導小面94の間の距離は、ころ18の好適な誘導を確保するのに十分なものでなくてはならず、上記凹部の2つの端誘導面50と52とを隔てている距離Lの3分の1よりも大きいことが望ましい。辺縁誘導小面94は、各々、隣接する端誘導面50と52とから、当該2つの端誘導小面50と52とを隔てる距離Lの4分の1よりも小さく、望ましくは5分の1よりも小さい距離で、離れている。
【0040】
内側ひだ96は、各々、2つの端誘導面50と52とを隔てる距離Lの10分の1から5分の1の長さを有する。
【0041】
図1および図2に示すように、2つの保持器16の内輪28同士は隣接し、それらの横面34はお互いにほとんど接している。
【0042】
上記軸受を組み立てるのに、図1に示すように、まず最初に、ころ18を備える2つの保持器16を内輪14上に取り付けるが、保持器ごとの2つの凹部が空のままである。このサブユニット104は、外輪12に垂直に提示され、この方向で、外輪12内に挿入される。この挿入時に、上記の空の凹部に対応するブリッジ32は、外輪12とほぼ接触しているが、上記保持器の径方向外側面60の全体的形状が、特に、円錐台形中間部分64が、接触なしに通過することを可能にする。いったん上記サブユニットを外輪12内に挿入すれば、上記の空の凹部を外側に向けて提示し、脱落したころをそこに挿入するように、内輪14を回転させることができる。
【0043】
当然、様々な変形例を想定することができる。幾つかの用途では、内輪14は、その横中央平面について対称でなくともよい。同様に、外輪12は、横に対称な面を必ずしも有さない。上記内輪が単体部片である必要もない。凹部40を構成する窓は、任意の好適な機械加工方法によって得ることができる。保持器16を構成する金属板は、表面処理を施されてもよい。使用される金属板は、鋼板、またはアルミ板、または真鍮板でよい。ころ18は窪みを有してもよく、端環28と30とは、ころ18の誘導に寄与するよう、これらの窪みへと入る、対応する突起を有していてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面軸受(10)の少なくとも1列のころ(18)用の保持器(16)であって、
当該保持器(16)は、幾何学的回転軸(Z)を設定し、
当該幾何学的回転軸(Z)に芯合わせされ、当該幾何学的回転軸(Z)に沿って互いに離れており、互いに異なる直径を有する2つの端環(28,30)と、
当該2つの端環(28,30)を接続し、当該端環(28,30)と共に、ころ(18)を収容する凹部(40)の範囲を定めるブリッジ(32)と
を含み、
当該ブリッジ(32)は、各々、
当該2つの端環(28,30)の1つへと各々接続する2つの端部(82,86)と、
当該2つの端部(82,86)を接続し、当該回転軸(Z)に向かって回転する内側面(74)を有する中間部(84)と
を含み、
当該ブリッジ(32)の当該中間部(84)は、互いに、当該中間部(84)の当該内側面(74)をすべて含む単一の中間円錐台形幾何学的表面を設定し、
当該凹部(40)の各々と、当該凹部(40)の範囲を定める当該ブリッジ(32)の各々とを考慮すると、当該ブリッジ(32)の当該中間部(84)は、当該凹部(40)に向かって突出している少なくとも2つの突出部(90)を含み、
当該突出部(90)は、各々、当該凹部(40)に向かって回転する辺縁誘導小面(94)を有し、当該ブリッジ(32)の当該中間部(84)の当該内側面(74)と共に内側ひだ(96)を形成し、
当該凹部(40)内に突出している突出部(90)の辺縁誘導小面(94)は、当該凹部(40)の固有幾何学的軸(92)を中心とする同じ回転表面と接し、
当該凹部(40)の固有幾何学的軸(92)は、当該保持器の回転軸(Z)と共に、当該中間円錐台形幾何学的表面の立体角の半分に等しい角度を、形成する
ことを特徴とする保持器(16)。
【請求項2】
上記凹部の上記固有幾何学的軸(92)は、同じ基本円錐台形幾何学的包絡面上に配置され、当該同じ基本円錐台形幾何学的包絡面は、上記中間円錐台形幾何学的表面の径方向内側に配置され、または上記中間円錐台形幾何学的表面へと結合される
ことを特徴とする請求項1に記載の保持器。
【請求項3】
上記回転表面は、円弧状母線を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の保持器。
【請求項4】
上記誘導小面(94)は、各々、外側ひだ(98)を有し、当該外側ひだ(98)は、上記内側ひだ(96)に平行し、上記内側ひだ(96)の長さの半分よりも大きな距離で上記内側ひだ(96)から離して配置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項5】
上記凹部は、各々、上記2つの端環(28,30)によって形成される2つの端誘導小面(50,52)を有し、
当該2つの端誘導小面(50,52)は、平面であり、上記凹部(40)の上記固有軸(92)に垂直であり、互いに距離L離れている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項6】
上記凹部(40)の各々と、上記凹部(40)の範囲を定める上記ブリッジ(32)の各々とを考慮すると、上記ブリッジ(32)上に配置される上記辺縁誘導小面(94)は、互いに、上記凹部(40)の上記2つの端誘導小面(50,52)を隔てている距離Lの3分の1よりも大きい距離で離れている
ことを特徴とする請求項5に記載の保持器。
【請求項7】
上記凹部(40)の各々と、上記凹部(40)の範囲を定める上記ブリッジ(32)の各々とを考慮すると、上記ブリッジ(32)の上記辺縁誘導小面(94)は、各々、上記凹部(40)の上記2つの端誘導面(50,52)を隔てる距離Lの、4分の1よりも小さく、望ましくは5分の1よりも小さい距離で、上記2つの端誘導面(50,52)の1つの面から離れている
ことを特徴とする請求項5または6に記載の保持器。
【請求項8】
上記内側ひだ(96)は、各々、上記2つの端誘導面(50,52)を隔てる距離Lの10分の1から5分の1の長さを有する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項9】
上記2つの環のうち、より小さな直径を有する環(30)へと接続している各ブリッジ(32)の端部(86)は、各々、内側面(76)を有し、当該内側面(76)は、上記回転軸(Z)に向かって回転し、上記回転軸(Z)を中心に描かれる同じ円錐台形端面と接する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項10】
上記円錐台形端面は、上記中間円錐台形表面の立体角よりも大きな立体角を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の保持器。
【請求項11】
上記2つの環のうち、より大きな直径を有する環(28)へと接続しているブリッジの各々の端部(82)は、各々、内側面(72)を有し、当該内側面(72)は、上記回転軸(Z)に向かって回転し、上記回転軸(Z)を中心に描かれる同じ円筒形端面と接する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項12】
上記保持器(16)は、金属板製の、望ましくはプレス加工された金属板製の、単体部片である
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の保持器。
【請求項13】
球面軌道(20)が形成される単体外輪(12)と、
2つの軌道(22)が形成される内輪(14)と、
請求項1から12のいずれか1項に記載の2つの保持器(16)であって、各々が、当該内輪(14)の当該2つの軌道の1つに対応する、2つの保持器(16)と、
当該2つの保持器の凹部(40)の中に並べられ、当該内輪(14)と当該外輪(16)との間に並べられ、2列のころ(18)を形成し、各々は当該2つの軌道(20,22)の1つの上を転がる、ころ(18)と
を含む球面軸受(10)。
【請求項14】
上記2つの保持器の各々について、上記内側ひだ(96)は、上記ころ(18)が上記内輪(14)の対応する軌道(22)上を転がる時に、上記ころ(18)の回転軸(47)が描く円錐台形の径方向外側に配置される
ことを特徴とする請求項13に記載の球面軸受。
【請求項15】
上記保持器(16)の各々の上記より小さな直径の環(30)は、径方向外側に向かって回転する内輪(14)の対応する面(26)に対向する、径方向内側に向かって回転する円筒面(48)を含む
ことを特徴とする請求項13または14に記載の球面軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2633(P2013−2633A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133963(P2012−133963)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(507018894)エヌテエヌ−エスエヌエール ルルモン (22)
【Fターム(参考)】