説明

環境ノイズ遮蔽装置

【課題】 本発明の目的は、従来技術に伴う不都合点を排除又は低減しつつ、環境ノイズから高感度な機器を保護する装置を提供することである。
【解決手段】 本発明は、環境ノイズ遮蔽装置であって、当該環境ノイズ遮蔽装置内に配置されている冷却素子によって内部温度を外部温度に合わせることができる、環境ノイズ遮蔽装置に関する。これにより、より良好な防音効果が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
本発明は、環境ノイズ遮蔽装置に関し、また、環境ノイズから機器を遮蔽する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
[発明が解決しようとする課題]
高感度な機器を遮音する装置は実用から知られている。特に半導体産業における高感度な検査機を遮蔽するのにいわゆる遮音壁(acoustic shrouds)が用いられている。
【0003】
このような減音(sound attenuation:消音)をもたらすハウジングは同時に、概して断熱ももたらす。特に、ハウジング内に熱損失を生じる機器が組み込まれる場合、著しい温度上昇がハウジングの内部に生じるであろう。
【0004】
多くの場合、このような温度上昇は望ましくない。特に、半導体産業における検査機器を遮断する(isolate)ためにハウジングを用いる場合、例えば、遮音壁の内部に導入されるウエーハが温度変動を受けないことを確実にするために、遮音壁(sound protection shrouds:防音壁)の内部は外部領域とほぼ同じ温度であることが望ましい。
【0005】
実際に、ファンにより、かかる遮音壁の熱を下げる試みがなされてきた。
【0006】
これらのようなファンは、特に減音するように適合されてはいても、依然として音に対し開口(aperture opening)が生じるため、ハウジングの遮音効果が減るという不都合点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これとは対照的に、本発明は、高感度な機器を環境ノイズから保護する装置であって、従来技術に伴う上述の不都合点が低減した、高感度な機器を環境ノイズから保護する装置を提供するという目的に基づいている。
【0008】
本発明の特定の一目的は、防音効果を高める装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、防音装置であって、内部温度を外部温度と同じレベルに保つことができる、防音装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[課題を解決するための手段]
[発明の概要]
本発明の目的は、いくつかの独立請求項の一項に記載の、環境ノイズ遮蔽装置によって、また、機器を環境音から遮蔽する方法によって達成される。
【0011】
本発明の好適な実施形態及び発展は、個々の従属請求項において見い出すことができる。
【0012】
本発明によれば、遮断すべき機器を保持する領域を画定するハウジングを有する環境ノイズ遮蔽装置が提供される。
【0013】
環境ノイズ遮蔽装置という表現は、遮断すべき機器をその内部に配置することができると共に、ノイズ量が当該装置のハウジングにより減る、すなわち、遮断すべき機器を保持する領域の音レベルが周囲領域におけるよりも低くなる装置を意味する。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つの冷却素子が上記領域内に配置される。冷却素子は、遮断すべき機器を保持する領域を冷却することができる任意の装置である。
【0015】
[発明を実施するための好適な形態]
本発明の好適な一実施の形態では、冷却素子は、機器の外に配置される少なくとも1つの供給装置に連結される。供給装置は好ましくは、ハウジングから本質的に分離され、すなわち、供給装置の振動は遮断すべき機器のハウジングに伝達されない。
【0016】
冷却のために、例えば圧縮機冷却素子、ペルチェ素子、又は冷却用ミアンダ状サーキット(cooling meander circuits)を用いることができ、これらは、ハウジングの内壁の1つ又は複数の地点に取り付けられるか、又は壁又は蓋の一部分としてもよい。
【0017】
冷却素子の選択は、本例では主として冷却パワーの要件によって決まる。特に半導体産業における検査機器からの熱損失は非常に低い場合が多いため、流体、特に水により熱が消散するペルチェ素子又は冷却用ミアンダ状サーキットが多くの用途に十分である。また、冷却パワーがより大きい用途には冷媒圧縮機を用いることができる。
【0018】
本例での、本発明の特定の一実施の形態の場合に設けられるような可撓性管路は、供給装置の振動、特に冷却圧縮機の振動が、環境ノイズ遮蔽装置のハウジングに全く伝わらないか、又はほんのわずかしか伝わらないことを確実にする。
【0019】
環境ノイズ遮蔽装置のハウジングの冷却素子は好ましくは、30dB未満、好ましくは20dB未満、特に好ましくは15dB未満の音レベルを生成するように設計される。したがって、ハウジングの内部にノイズをほとんど生成しない冷却素子が用いられる。
【0020】
冷却素子(単数又は複数)は好ましくは、特に冷却素子がハウジングの蓋に本質的に収容されるように設けられていることにより、ハウジングの壁及び蓋内にまとめて組み入れられる。
【0021】
本発明の一発展では、温度センサが領域内に配置され、冷媒用の供給装置を調整するように設計される。ハウジングの内部の温度は、このような温度センサを用いることによって一定に保たれることができる。
【0022】
代替的な一実施の形態では、本発明の一発展により提供されるように、さらなる温度センサが領域の外に配置され、ハウジングの外の温度を測定するのに用いることができる。したがって、ハウジング内の領域の温度は、外部温度に合わせることができる。環境ノイズ遮蔽装置内に検査すべき高感度な機器又はコンポーネントを閉じ込めた場合の温度変動が、大幅に回避される。
【0023】
本発明の一発展では、環境ノイズ遮蔽装置は、少なくとも1つの開口フラップを有し、この開口フラップは、本発明の好適な一実施形態に設けられるように自動的に動作することができる。例えば、環境ノイズ遮蔽装置は自動搬送システム内に一体化することができ、自動搬送システム内では、例えば、検査すべきサンプルが、自動装置により環境ノイズ遮蔽装置のハウジングに移動される。
【0024】
環境ノイズ遮蔽装置内の領域は好ましくは、ほぼ気密であるように閉鎖されることができる。これにより、遮音(sound-isolating)効果が増し、より正確な温度調整が可能となる。
【0025】
この領域は0.2〜7m、特に好ましくは0.5〜1.5mのスペースを占めることが好ましい。
【0026】
本発明により、環境ノイズ遮蔽装置であって、500Hzの周波数で、且つ、ハウジングの壁に対してほぼ直角にわたる入射角で、5dB以上、好ましくは10dB以上、特に好ましくは40dB以上の減音を有する、環境ノイズ遮蔽装置を提供することができる。
【0027】
250Hzの周波数での減音は、3dB以上、好ましくは8dB以上、特に好ましくは30dB以上である。
【0028】
100Hzの周波数での減音は、15dB以上、好ましくは30dB以上、特に好ましくは50dB以上である。
【0029】
本発明はまた、本発明による環境ノイズ遮蔽装置を有する防振(vibration isolation:遮音)システムに関する。
【0030】
環境ノイズ遮蔽装置は、本例では、好ましくは、防振形態で取り付けられ、特に、環境ノイズ遮蔽装置が防振プレートに配置されるように設けられる。
【0031】
本発明はまた、機器を環境音から遮蔽する方法であって、遮蔽すべき機器がハウジングに導入され、その後、ハウジングが閉鎖され、ハウジング内に配置されている冷却装置が、ハウジングに同様に配置されているセンサによって調整される、機器を環境音から遮蔽する方法に関する。
【0032】
本発明の一発展では、ハウジング内の温度は、ハウジングの外に配置されるさらなるセンサにより、ハウジングの外の温度に合わせされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[実施形態]
本発明は、図1〜図6の図面を用いて以下の記載により詳細に説明される。
【0034】
環境ノイズ遮蔽装置1の主要な構成要素が、図1を参照しながらより詳細に説明される。環境ノイズ遮蔽装置1は、遮断すべきハウジング2を有し、ハウジング2は、遮断すべき機器4を保持する領域3を画定している。冷却素子5が、環境ノイズ遮蔽装置1の領域3内に配置され、可撓性供給管路(フレキシブル・サプライ・ライン)7を介して、本例では冷媒圧縮機の形態の供給装置6に接続されている。
【0035】
冷却素子5は、供給装置6を介して冷却され、したがって、遮断すべき機器が配置されている領域3を冷却する。
【0036】
図2は、環境ノイズ遮蔽装置1の代替的な一実施形態を示し、ここでは、温度センサ8がハウジング2内に配置されている。温度センサ8は、遮断すべき機器4の付近に位置している。
【0037】
温度センサ8は、供給装置6を駆動する制御装置9に接続される。領域3内の温度は、制御装置9によりほぼ一定に保たれることができる。
【0038】
環境ノイズ遮蔽装置のさらなる実施形態は、図3を参照してより詳細に説明される。この実施形態では、環境ノイズ遮蔽装置1のハウジング2は、サンプル搬送装置10に連結される。
【0039】
サンプル搬送装置1を用いて、サンプル(図示せず)を環境ノイズ遮蔽装置1内の領域3に自動ドア11を介して導入し、そのサンプルを遮断すべき機器4に給送することができる。
【0040】
センサ8が環境ノイズ遮蔽装置1内の領域3内に配置され、制御装置9に接続される。
【0041】
さらなるセンサ12がハウジング2の外に配置される。外部温度がこのセンサ12を用いて測定される。
【0042】
制御装置9は、冷却素子5に接続される供給装置を駆動する。制御装置9は、本例では、環境ノイズ遮蔽装置1の領域3内の温度を外部温度(センサ12によって測定される)に合わせるように設計される。
【0043】
環境ノイズ遮蔽装置1のさらなる実施形態のハウジング2の主要な構成要素は、図4を参照しながらより詳細に説明する。ハウジング2はフラップ13を有し、フラップ13はガススプリング14によりハウジング2に対して保持される。ハウジング2内の領域3は、フラップ13によってほぼ気密になるように閉鎖されることができる。
【0044】
図5は、環境ノイズ遮蔽装置1のハウジング2のさらなる図を示す。取り外し可能なハンドル15がハウジング2に取り付けられ、環境ノイズ遮蔽装置を運ぶのに使用されることができる。
【0045】
さらに、環境ノイズ遮蔽装置1は、例えばフォークリフトトラックにより当該装置を上昇させるレセプタクル24を有する。レセプタクル24はまた、取り外し可能であるように設計される。
【0046】
図6は、図5の領域Aの詳細な図を示す。ハウジングの設計を詳細な図を参照しながらより詳細に説明する。ハウジング壁は複合材から成る多層から形成される。
【0047】
この例示的な実施形態では、壁は外装ラミネートフィルム16を有し、外装ラミネートフィルム16は、チップボード17の一部に接着接合する。ミネラルウール18の形態の断熱材がチップボードの裏側に配置される。
【0048】
減音マット19が、隣接キャビティ内のチップボード20のさらなる一部に接着接合される。減音マット19はスクラップ鋼を充填される。フィルム21も同様にチップボード20の他の一部に接着接合される。壁要素はねじ23により互いに接続される。本例ではシリコーンシールの形態のシール22が、ノイズ遮蔽のために個々の壁要素間に配置され、ハウジングが流体密であることを確実にする。
【0049】
本発明は、上記の特徴の組み合わせに制限されず、代わりに、当業者は、相応であれば、記載された特徴全てを組み合わせることができることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】環境ノイズ遮蔽装置の主要な構成要素を概略的に示す図である。
【図2】環境ノイズ遮蔽装置の代替的な実施形態を概略的に示す図である。
【図3】環境ノイズ遮蔽装置のさらなる代替的な実施形態を概略的に示す図である。
【図4】環境ノイズ遮蔽装置のハウジングの説明に関する概略的な図である。
【図5】本発明による環境ノイズ遮蔽装置のさらなる図である。
【図6】図5の領域Aの詳細な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断すべき機器を保持する領域を画定するハウジングを有する環境ノイズ遮蔽装置であって、少なくとも1つの冷却素子が前記領域内に配置される、環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項2】
少なくとも1つの冷却素子のための供給装置が設けられ、該供給装置は、前記ハウジングの外に配置される、請求項1に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項3】
前記供給装置は、可撓性管路及び/又はケーブルによって前記少なくとも1つの冷却素子に接続される、請求項1又は2に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項4】
前記冷却素子は、前記ハウジング内で、30dB未満、好ましくは20dB未満、特に好ましくは15dB未満の音レベルを生成する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの冷却素子は、前記ハウジングの壁及び/又は蓋内にまとめて組み入れられる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項6】
特に前記冷却素子のための供給装置を調整するように設計される少なくとも1つの温度センサが、前記領域内に配置される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの温度センサは前記領域の外に配置される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項8】
少なくとも1つの開口フラップを有する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項9】
前記開口フラップは、自動的に動作することができる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項10】
前記領域は、本質的に流体密であるように閉鎖されることができる、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項11】
前記領域は、0.2〜7m、好ましくは0.4〜5m、特に好ましくは0.5〜1.5mのサイズを有する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項12】
前記ハウジングの壁に対してほぼ直角にわたる入射角で、且つ、500Hzの周波数での、外部から内部への減音は、5dBより上、好ましくは10dBより上、特に好ましくは40dBより上である、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの環境ノイズ遮蔽装置を備える、防振システム。
【請求項14】
防振を与えるように取り付けられるプレートを有し、前記環境ノイズ遮蔽装置が該プレートに配置される、請求項13に記載の防振システム。
【請求項15】
特に請求項1ないし12のいずれか一項に記載の環境ノイズ遮蔽装置により、環境音から機器を遮蔽する方法であって、
遮蔽すべき前記機器がハウジング内に導入されるステップと、
前記ハウジングが閉鎖されるステップと、
前記ハウジング内に配置される冷却装置が、該ハウジング内に配置されるセンサによって調整されるステップと
を含む、環境音から機器を遮蔽する方法。
【請求項16】
前記ハウジング内の温度及び該ハウジングの外の温度がどちらも測定され、前記冷却装置を調整することによって、前記ハウジング内の温度は前記ハウジングの外の温度に本質的に合わされる、請求項15に記載の環境音から機器を遮蔽する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−147621(P2008−147621A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−241707(P2007−241707)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(502296338)インテグレイテッド ダイナミクス エンジニアリング ゲーエムベーハー (27)
【Fターム(参考)】