説明

環境制御室の床面構造及びこれに用いる床パネル

【課題】 床面構造として施工後に発塵、アウトガスによる汚染の問題を生ずることの無い床パネルを提供する。
【解決手段】 環境制御室の床の少なくとも一部を構成する合金製の床パネルであって、配管や配線を通すための貫通穴9aを有し、表面には不動体皮膜が形成されている。本床パネルは、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなることが好ましく、前記貫通穴とは別にこれより小さな複数の貫通孔23が形成されている。また、本床パネルは、外枠を構成するリブ9−1とこの外枠の内側領域に格子状に形成されたリブ9−2〜9−4とを有し、前記貫通穴は前記内側領域に形成され、前記格子状の網目が前記複数の貫通孔となるように構成されることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドルームやクリーンルームのような環境制御室に適した床材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の発達により、これに用いられる半導体の需要が高まっている。半導体の製造プロセスにおいては空気中の微量な不純物の存在が、その特性に大きな影響を与えるため、空気清浄度を制御した環境制御室の一種である、クリーンルーム内で製造されるのが一般的である。
【0003】
クリーンルームの構造としては、特許文献1の図4に示すように、クリーンルーム内を、空気清浄度を制御したプロセスエリアと、床下に設けられた床下エリアと、天井に設けられた天井エリアの3つのエリアに分けた構造がある。
【0004】
上記構造においては、プロセスエリア→床下エリア→天井エリア→プロセスエリアの順に空気を循環させ、天井エリアに設けられたフィルタによって空気を清浄化することにより、プロセスエリア内の空気の清浄度を一定に保っている。
【0005】
一方、近年、情報機器の発する電磁波が他の機器に与える影響が指摘されており、クリーンルームを構成する天井や床面を構成する材料には、電磁波遮蔽特性も要求されるようになっている。即ち、近年のクリーンルームは電磁波シールドルームとしての特性も要求されている。
【0006】
さらに、クリーンルームとは別に、電算室等のコンピュータを設置した室においては、電算室を、電磁波遮蔽特性を有する電磁波シールドルームとすることが要求される場合もある。
【0007】
いずれにしても、上記のようなクリーンルームや電磁波シールドルーム、これらの両機能を備えたルームのいずれにおいても、少なくとも空気清浄度の制御機能が必要であり、以下ではこれを環境制御室と総称することとする。
【0008】
このような環境制御室においては、環境制御室の使用目的に応じて、プロセスエリアに各種の製造装置や処理装置、各種の電子機器が設置される。そして、上記のような空気の循環を行わせるために、プロセスエリアの床には、グレーチング床パネルと呼ばれる床材が複数並べて敷設されている。グレーチング床パネルは、通常、矩形状であり、空気を流通し易くするために上下面を貫通する複数の貫通孔を有する。
【0009】
このような環境制御室においてはまた、床下エリアを、上記の各種製造装置や処理装置との間で原料を供給したり、排出物を受け取ったりするための各種機器、その他を設置するスペースとして利用するほか、上記の各種電子機器に対して電源を供給するための電源装置、その他を設置するスペースとしても利用するようにしている。つまり、床下エリアは、プロセスエリアに設置された各種設備のユーティリティ設備エリアとして利用されている。なお、床下エリアを配管や配線のみのスペースとして利用し、ユーティリティ設備は別場所に設置する場合もある。いずれにしても、床上の各種設備とユーティリティ設備との間を各種配管や配線で結ぶ必要があり、プロセスエリアの床には上記各種配管や配線を通すための貫通穴が必要となる。
【0010】
これまで、このような貫通穴は、上記の各種製造装置や処理装置、各種電子機器の施工業者が、その施工現場において、グレーチング床パネルに必要な大きさの貫通穴をカッター等で加工することで形成されていた。
【0011】
【特許文献1】特開2003−213917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、クリーンルーム内でのカッターによる切削作業は多量の塵を発生させるのでクリーンルームのクリーン度の復旧に時間を要するという問題がある。また上記のようにして形成された貫通穴を持つグレーチング床パネルは、切断面がそのままであると、切断箇所が以後の環境制御室における発塵源となるおそれがあるだけでなく、発塵、及び切断箇所からのアウトガス漏洩による汚染源となり易いという問題点を有している。また、グレーチング床パネルとしての機械的強度を考慮して穴が形成されるとは限らず、切断してはならない箇所が切断される場合もあって、以後の環境制御室における床面構造の機械的強度低下の原因となり易いという問題点も有している。
【0013】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、床面構造として施工後に発塵、アウトガスによる汚染の問題を生ずることの無い床パネルを提供することにある。
【0014】
本発明はまた、軽量化、機械的強度の向上に適した床パネルを提供しようとするものである。
【0015】
本発明は特に、少なくとも空気清浄度の制御機能を持つ環境制御室の床面構造への適用に適した床パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明による床パネルは、以下の態様をとることができる。
【0017】
(第1の態様)
環境制御室の床の少なくとも一部を構成する合金製の床パネルであって、配管および配線の少なくとも一方を通すための貫通穴を有し、表面に不動体皮膜が形成されていることを特徴とする床パネル。
【0018】
(第2の態様)
上記第1の態様において、該床パネルはアルミニウム合金又はマグネシウム合金からなり、前記貫通穴とは別にこれより小さな複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする床パネル。
【0019】
(第3の態様)
上記第2の態様において、該床パネルは、外枠を構成するリブとこの外枠の内側領域に格子状に形成されたリブとを有し、前記貫通穴は前記内側領域に形成され、前記格子状の網目が前記複数の貫通孔となることを特徴とする床パネル。
【0020】
(第4の態様)
上記第1〜第3の態様のいずれかにおいて、前記貫通穴の面積が、該床パネルの面積の1/4以下であることを特徴とする床パネル。
【0021】
(第5の態様)
上記第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記貫通穴の形状が、円形、多角形、楕円形のいずれかであることを特徴とする床パネル。
【0022】
(第6の態様)
上記第1〜第5の態様のいずれかにおいて、前記貫通穴が、該床パネルの中心に関して対称な2点の一方を中心とするように形成されていることを特徴とする床パネル。
【0023】
(第7の態様)
上記第1〜第6の態様のいずれかにおいて、前記貫通穴を塞ぐための着脱自在な蓋を備えることを特徴とする床パネル。
【0024】
(第8の態様)
本発明によればまた、上記第1〜第7の態様のいずれかの床パネルと、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなり、複数の貫通孔が形成されていると共に表面に不動体皮膜が形成されている床パネルとを並べて敷設することで構成される環境制御室の床面構造であって、上記第1〜第7の態様のいずれかの床パネルを、該環境制御室に設置される機器からの配管および配線の少なくとも一方を床下に引き出す箇所に敷設したことを特徴とする環境制御室の床面構造が提供される。この場合、前記環境制御室は、電磁波シールド機能、空気清浄度の制御機能のうち、少なくとも空気清浄度の制御機能を有するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、施工後に発塵、アウトガスによる汚染の問題を生ずることの無い床パネルを提供することができ、特に、少なくとも空気清浄度の制御機能を持つ環境制御室の床面構造に適した床パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明が適用される床面構造を持つ環境制御室の例として、電磁波シールドルームの概略構造について、図1を参照して説明する。ここでは電磁波シールドルームとして、電磁波遮蔽特性が要求されるクリーンルームが例示されている。
【0028】
図1に示すように、環境制御室としての電磁波シールドルーム2は、プロセスエリア10と、床下エリア20と、天井エリア30、空気循環エリア10aを有する。
【0029】
電磁波シールドルーム2は、地盤3上に構築され、電磁波シールドルーム2全体を支持するための複数の支柱5及び支柱5上に架け渡された複数の梁7を有している。支柱5、梁7には、導電性を持つ、例えば鉄骨材が用いられる。
【0030】
梁7上には複数の貫通孔を持つグレーチング床パネル9’が床材として設けられている。隣り合うグレーチング床パネル9’は連結部材14によって電気的に接続されている。そして、グレーチング床パネル9’と連結部材14とで床面構造1を形成している。
【0031】
プロセスエリア10の周囲には壁面としての複数の側壁パネル11が建て込まれている。更に、側壁パネル11の周囲には側壁パネル11と間隔をおいて電磁波シールドルーム2の外壁としての建築壁12が構築され、建築壁12の上端には、天井15が設けられている。
【0032】
更に、側壁パネル11の上端には格子天井13が設けられている。格子天井13は、例えば天井15に吊り下げられた図示しない吊り棒によって支持されている。格子天井13の図示しない格子面には空気を浄化するためのフィルタ16が設けられている。
【0033】
このようにして、グレーチング床パネル9’、側壁パネル11及び格子天井13で囲まれた領域がプロセスエリア10を形成している。また、建築壁12とグレーチング床パネル9’で囲まれた床下の領域が床下エリア20を形成している。更に、格子天井13、建築壁12及び天井15で囲まれた領域が天井エリア30を形成している。天井エリア30内には空気循環装置24が設置されている。
【0034】
一方、建築壁12、グレーチング床パネル9’及び格子天井13で囲まれた領域が空気循環エリア10aを形成している。
【0035】
プロセスエリア10は空気の清浄度や電磁波等の環境が制御されたエリアであり、例えば半導体製造装置やコンピュータ等の環境制御下での使用が求められる装置が配置されている。
【0036】
床下エリア20は、プロセスエリア10の空気が流れ込むエリアであるほか、上記の半導体製造装置やコンピュータ等と接続されるユーティリティ設備のためのエリアである。
【0037】
空気循環エリア10aは、床下エリア20の空気が流れ込むエリアである。
【0038】
天井エリア30は、空気循環エリア10aの空気が流れ込むエリアであり、また、空気を清浄化してプロセスエリア10に流すエリアである。
【0039】
即ち、プロセスエリア10内の空気は、空気循環装置24によりグレーチング床パネル9’の複数の貫通孔、床下エリア20、空気循環エリア10aを介して天井エリア30に流れ込む。そして、天井エリア30内に流れ込んだ空気はフィルタ16によって清浄化され、再びプロセスエリア10に流れ込む。
【0040】
このようにして、プロセスエリア10内の空気は常に、一定の清浄度に保たれる。
【0041】
次に、床面構造1について、図2を参照して説明する。
【0042】
図2に示すように、床面構造1は、梁7(図1)を利用して矩形のグレーチング床パネル9’を複数枚並べて敷設し、隣接するグレーチング床パネル9’をそれらの下面側において連結部材14で連結した構造を有している。グレーチング床パネル9’は、矩形の板状の本体に複数の貫通孔23が設けられている。
【0043】
このような床面構造1の上に、前述した各種機器が設置されるが、本発明による床パネルは、図2に示されるようなグレーチング床パネル9’に、あらかじめ所定形状及びサイズの貫通穴が形成されているものである。
【0044】
図3に本発明によるグレーチング床パネルの第1の例を示す。本例によるグレーチング床パネル9は、前述したグレーチング床パネル9’と同じ一辺が数十cmのサイズの矩形状であり、その中心に関して4等分したエリアの1つに矩形の貫通穴9aが形成されている。貫通穴9aは、切断加工ではなく本グレーチング床パネル9の製造段階で形成されるので、貫通穴9aの形状を規定する縁部9a−1を有し、切断加工した場合のような切断面を持たないことは言うまでもない。
【0045】
グレーチング床パネル9は、その外周において下側に延びるように形成された2枚のリブ9−1により外枠を構成している。貫通穴9aを除く外枠の内側領域には、リブ9−1と同程度まで下側に延びるリブ9−2が格子状に形成され、また格子状のリブ9−2の間にはその半分程度まで下側に延びるリブ9−3が形成され、更にリブ9−3の間にはその半分程度まで下側に延びるリブ9−4が形成されている。その結果、外枠の内側領域には、貫通穴9aを除く領域に複数のリブによる格子が形成される。これらのリブ9−1〜9−3は、すべて本グレーチング床パネルとしての機械的強度を所望の値以上にするためのものであり、それぞれのリブの間の空間、つまり格子の網目が前述した貫通孔23として機能する。つまり、図2では、グレーチング床パネル9’を簡略化して示しており、図2に示されている貫通孔23は、上記説明のように格子状のリブの網目で実現されている。
【0046】
ここで、本例によるグレーチング床パネル9は、電磁波シールドルームとして、電磁波遮蔽特性が要求されるクリーンルームに適用されるので、グレーチング床パネル9を構成する材料は、電磁波遮蔽特性に優れ、かつ軽量であることに加えて、アウトガスの発生源とならないことも要求される。
【0047】
このような要件を満たす材料としては、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金が挙げられる。上記理由により、グレーチング床パネル9は、アルミニウム合金やマグネシウム合金により一体に作られるが、表面全体には、製造段階での熱処理、陽極酸化処理、プラズマ処理のいずれかにより不動体皮膜が形成されている。アルミニウム合金やマグネシウム合金は、SUS等の構成材料に比べて非常に軽量であり、不動体皮膜を有していることにより、発塵の可能性が無いのは勿論のこと、アウトガスの漏洩もほとんど無い。特に、マグネシウム合金は、アルミニウム合金に比べて更に軽量で30%程度の軽量化が可能であり、機械的強度も大きいので、本グレーチング床パネル9の材料として最適である。
【0048】
本例によるグレーチング床パネル9はまた、矩形で4等分したエリアの1つに貫通穴9aが形成されているので、90度ずつ回転させることで、貫通穴9aの位置の異なる4通りの態様で利用することができる。これは以下のような利点を持つ。
【0049】
図7(a)を参照して説明すると、本例によるグレーチング床パネル9は、プロセスエリア10に設置される各種装置あるいは機器100に隣接した場所に設置され、貫通穴9aに各種装置あるいは機器100からの配管や配線110を通すようにされる。配管や配線を通す必要の無い場所には図2で説明したような、貫通穴9aを持たないグレーチング床パネル9’が敷設される。この場合、貫通穴9aが1つの態様でしか利用できない場合、各種装置あるいは機器100からの配管や配線110の引き出し位置によっては、配管や配線110を通すことができないことがある。これに対し、本グレーチング床パネル9の場合には、そのサイズで決まる領域内で4通りの貫通穴9aの位置を設定できるので、各種装置あるいは機器100からの配管や配線110の引き出し位置によって、配管や配線110を通すことができなくなるという事態は発生しない。換言すれば、本グレーチング床パネル9は、環境制御室の設計段階でプロセスエリアへの各種装置あるいは機器のレイアウトに応じて敷設箇所を決めることができると共に、決められた敷設箇所内における貫通穴9aの位置を決めることができる。加えて、設計段階で、本グレーチング床パネル9に作用する荷重を予測することができるので、この予測荷重に応じて、グレーチング床パネル9全体の構造、貫通穴9aのサイズ、形状を決めることができる。しかし、貫通穴9aのサイズは、荷重が小さい場合であっても、グレーチング床パネル9全体の面積の1/4以下とするのが好ましい。
【0050】
上記説明では、貫通穴9aを持たないグレーチング床パネル9’と、貫通穴9aを持つグレーチング床パネル9を組み合わせて使用するようにしているが、床面全体を貫通穴9aを持つグレーチング床パネル9のみで構成しても良い。この場合、使用しない貫通穴9aは、図3(c)、図3(d)に示すような矩形状の蓋91で塞がれる。蓋91は、下面側に補強のための複数のリブ91−1を有し、グレーチング床パネル9に対してねじ、その他により着脱自在にされている。蓋91の材料は、グレーチング床パネルと同じ材料でも良いし、アルミニウム合金、SUS等を用いても良い。
【0051】
図4は、貫通穴9aを蓋91で塞いだグレーチング床パネル9を示す。
【0052】
グレーチング床パネル9のサイズの一例を挙げると、一辺が600mmの正方形で、貫通穴9aのサイズは一辺が231mmである。貫通孔23については、図示のような長方形状の場合、短辺が数mm〜数十mm、長辺が数十mm程度とされるが、形状は任意である。一方。蓋91は一辺が260mmの正方形である。以上のサイズはあくまでも一例にすぎない。
【0053】
なお、図3では、グレーチング床パネル9の左半分の構造については図示を省略している。図3のように示したのはまた、貫通穴9aを除く領域は、カバー板によって覆うようにして格子状の部分が見えなくなるようにしても良いことを意味している。この場合、図7(b)に示すように、貫通穴9aにおける配管や配線110の周囲も2枚の割りめくら板92で塞ぐようにすることが好ましい。
【0054】
図5は、グレーチング床パネル9の他の例を示す。本例は、貫通穴9aの場所を、中心に関して2等分したエリアの一方の中央に設定したものであり、この点を除けば図3に示したグレーチング床パネル9とまったく同じである。
【0055】
なお、貫通穴9aは、グレーチング床パネル9の中心に関して対称な2点の一方を中心とするように形成されれば良く、貫通穴9aの形状は、図3(a)、図5(a)に示すような矩形に限らず、多角形や円形、更には楕円形等、要求に応じて様々な形状にすることができる。
【0056】
図6は、グレーチング床パネル9の更に他の例を示す。本例は、貫通穴9aが円形であることとこれを塞ぐ蓋91’も円形であることを除けば図3に示したグレーチング床パネル9とまったく同じである。グレーチング床パネル9のサイズの一例を挙げると、一辺が600mmの正方形で、貫通穴9aのサイズは直径が200mmである。蓋91’は直径が231mmである。
【0057】
以上、本発明によるグレーチング床パネルを3つの例について説明したが、上記の3つの例はあくまでも好ましい例であり、これらの例に限定されるものではない。例えば、貫通穴の位置はパネルの中央等、要求に応じて設定することができる。また、貫通孔23は、格子状のリブの網目を利用するのではなく、外観が図2に示されるような形状になるようにあらかじめ複数の貫通孔が形成されているものでも良い。但し、この場合、パネルの下面側には、隣接する貫通孔の間の部分を利用して補強用の複数のリブが格子状に形成されるのが好ましい。
【0058】
以上説明してきたように、本発明によれば、環境制御室の床を構成する床材を、配管や配線を通すための貫通穴を有すると共に表面に不動体皮膜を形成した床パネルとしたことにより、施工後に発塵、アウトガスによる汚染の問題を生ずることが無くなる。
【0059】
また、床パネルの材料としてアルミニウム合金又はマグネシウム合金を用い、貫通穴以外の領域をリブによって格子状にしてこの格子の網目を、プロセスエリアと床下エリアとを連通させるための複数の貫通孔とすることにより、機械的強度を低下させることなく軽量化を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
上記した実施形態では、本発明を電磁波遮蔽特性が求められるクリーンルーム用の床面構造に適用した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、少なくとも空気清浄度の制御機能を持つ環境制御室の床面構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明が適用される、クリーンルーム機能及び電磁波シールドルーム機能を持つ環境制御室の概観を示す側面図である。
【図2】図2は、図1の床面の一部を矢印A1の方向から見た図である。
【図3】図3は本発明による床パネルの第1の例を示し、図3(a)は構造を一部省略して示した平面図、図3(b)は図3(a)の断面図、図3(c)は床パネルの貫通穴を塞ぐための蓋を下面側から見た図、図3(d)は蓋の側面図である。
【図4】図4は、図3(a)に示す床パネルの貫通穴を蓋で塞いだ状態を平面図で示す。
【図5】図5は、本発明による床パネルの他の例を示し、図5(a)は構造を一部省略して示した平面図、図5(b)は図5(a)の断面図、図5(c)は床パネルの貫通穴を塞ぐための蓋を下面側から見た図、図5(d)は蓋の側面図である。
【図6】図6は、本発明による床パネルの更に他の例を示し、図6(a)は構造を一部省略して示した平面図、図6(b)は図6(a)の断面図、図6(c)は床パネルの貫通穴を塞ぐための蓋を下面側から見た図、図6(d)は蓋の側面図である。
【図7】図7は、本発明による床パネルを用いて環境制御室内に設置された機器からの配管や配線を床下に引き出す場合の状況を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 床面構造
2 電磁波シールドルーム
3 地盤
5 支柱
7 梁
9、9’ グレーチング床パネル
9−1〜9−4、91−1 リブ
10 プロセスエリア
10a 空気循環エリア
11 側壁パネル
12 建築壁
13 格子天井
14 連結部材
15 天井
16 フィルタ
20 床下エリア
30 天井エリア
91、91’ 蓋
100 各種装置あるいは機器
110 配管や配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境制御室の床の少なくとも一部を構成する合金製の床パネルであって、
配管および配線の少なくとも一方を通すための貫通穴を有し、
表面に不動体皮膜が形成されていることを特徴とする床パネル。
【請求項2】
該床パネルはアルミニウム合金又はマグネシウム合金からなり、前記貫通穴とは別にこれより小さな複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床パネル。
【請求項3】
該床パネルは、外枠を構成するリブとこの外枠の内側領域に格子状に形成されたリブとを有し、前記貫通穴は前記内側領域に形成され、前記格子状の網目が前記複数の貫通孔となることを特徴とする請求項2に記載の床パネル。
【請求項4】
前記貫通穴の面積が、該床パネルの面積の1/4以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床パネル。
【請求項5】
前記貫通穴の形状が、円形、多角形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床パネル。
【請求項6】
前記貫通穴が、該床パネルの中心に関して対称な2点の一方を中心とするように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の床パネル。
【請求項7】
前記貫通穴を塞ぐための着脱自在な蓋を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の床パネル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の床パネルと、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなり、複数の貫通孔が形成されていると共に表面に不動体皮膜が形成されている床パネルとを並べて敷設することで構成される環境制御室の床面構造であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の床パネルを、該環境制御室に設置される機器からの配管および配線の少なくとも一方を床下に引き出す箇所に敷設したことを特徴とする環境制御室の床面構造。
【請求項9】
前記環境制御室は、電磁波シールド機能、空気清浄度の制御機能のうち、少なくとも空気清浄度の制御機能を有するものであることを特徴とする請求項8に記載の環境制御室の床面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−24380(P2009−24380A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187894(P2007−187894)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(593022342)ベニックス株式会社 (13)
【出願人】(507244219)惠亞工程股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】