説明

環境試験用空調装置

【課題】 環境試験の実施に掛かる手間が少なく、装置を小型化することができ、ランニングコストを低く抑えることができる環境試験用空調装置を提供する。
【解決手段】 本発明の環境試験用空調装置は、環境試験装置本体20の一部分であって被試験体10が設置された状態の試験機構部21を含む部分の周囲を覆って内部に収容できるように構成され、環境試験装置本体20に気密に取り付けてその内部空間に恒温室2aを形成する恒温槽2と、恒温室2aの温度を被試験体20の恒温試験に応じて所定温度に温度調整する恒温ユニット4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車部品のような被試験体に対して環境試験を行うための環境試験用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、部品等(ワイパー、ウインカー等の自動車部品、電気部品、機械部品、等)のような被試験体を対象として、目的の環境下における作動状態を検査する環境試験(恒温試験)が行われる。従来、このような環境試験を実施するために、図6に示すような環境試験装置が用いられていた。
この環境試験装置100は、被試験体101を固定して試験に応じた所定の動作を行わせる試験装置本体102と、この試験装置本体102を収容し内部を所定温度(例えば、−40〜+95℃)に保持して所定の環境状態を作る空調装置103とを備えて構成されている。この空調装置103は、内部に恒温室104aをもつ恒温槽104と、恒温室104a内を所定温度に温度調整する空調室(図示せず)とを有している。なお、このような環境試験装置としては、例えば、下記特許文献1に示されたもの等、種々の提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−293972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の環境試験用の空調装置103は、試験装置本体102の全体を大型の恒温槽104(人が入ることができるものは「ウォークイン型チャンバー」と称されることがある。)に搬入して試験を行うものであるため、試験の実施に際し、試験装置本体102を恒温槽104が設置された場所まで移動させる手間が掛かる。
また、恒温槽104が大型であるため、広い設置スペースが必要であり、装置の設置に手間が掛かる。
さらに、恒温槽104が大型であるため、空調室において容量の大きいヒータや冷凍機が必要となる。このため、ランニングコストが高いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、環境試験の実施に掛かる手間が少なく、装置を小型化することができ、ランニングコストを低く抑えることができる環境試験用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の環境試験用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる環境試験用空調装置は、被試験体を設置して該被試験体に対して環境試験のための所定動作を行わせる試験機構部を有する環境試験装置本体における前記被試験体の周囲空気を環境試験に応じて所定温度に保持するための環境試験用空調装置であって、前記環境試験装置本体の一部分であって前記被試験体が設置された状態の前記試験機構部を含む部分の周囲を覆って内部に収容できるように構成され、前記環境試験装置本体に気密に取り付けてその内部空間に恒温室を形成する恒温槽と、前記恒温室の温度を被試験体の環境試験に応じて所定温度に温度調整する恒温ユニットと、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
このように、恒温槽は、環境試験装置本体の一部分に取り付けてその内部に環境試験を行うための恒温室が形成されるように構成されているので、恒温槽を環境試験装置本体に取り付けるだけで環境試験を実施できる。上述したように、従来の環境試験では、大型の恒温槽まで環境試験装置本体を移動し、搬入する必要があり、試験の実施に手間が掛かっていたが、本発明によれば、そのような手間が不要となる。したがって、試験の実施に掛かる手間が少ない。
また、恒温槽は、環境試験装置本体のうち被試験体及び試験機構部に被せて使用するものであるので、従来のものに比して小型化が可能であり、広い設置スペースを必要としない。
また、恒温槽の小型化が可能であるので、空調を行う恒温ユニットのヒータや冷凍機を従来のものに比して小容量のものとすることができる。したがって、製造コスト及びランニングコストを低減することができる。
【0008】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温槽は、前記恒温ユニットにより温度調整された空気を恒温室に導入する給気口及びその空気を排気する排気口を有し、前記恒温ユニットには、前記排気口を介して空気を取り入れて温度調整した空気を前記給気口に戻す通風路が形成されているとともに、該通風路内に、取り入れた空気を前記給気口側へ送出し前記恒温室内に空気を循環させる送風機と、空気を加熱する加熱手段と、空気を冷却する冷却手段と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
このように、恒温槽は給気口及び排気口を有し、恒温ユニットの通風路には送風機、加熱手段及び冷却手段を有するので、加熱手段及び冷却手段により温度調整をした空気を、恒温槽と恒温ユニットとの間で循環させることができる。したがって、この循環流により恒温室内の空気温度分布が均一化される。
【0010】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温槽と恒温ユニットとは、温度調整された空気を前記恒温室へ送給する可撓性を有する給気ダクトと、前記恒温室内の空気を前記通風路に戻す可撓性を有する還気ダクトとにより互いに接続されている、ことを特徴とする。
【0011】
このように、恒温槽と恒温ユニットとが、可撓性を有する給気ダクト及び還気ダクトにより接続されているので、試験の実施に際しては、環境試験用空調装置を環境試験装置本体の近傍に位置付けた後は、恒温ユニットを床上に配置したまま恒温槽のみを動かして環境試験装置本体に取り付けることができる。したがって、環境試験装置本体に恒温槽を被せる作業や、取り付け位置の調整作業を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温槽は、前記恒温室のうち前記被試験体の収容領域を挟む一端側に設けられ前記給気口から空気を導入し当該一端側の壁面に沿って吹き出す導入チャンバと、前記恒温室のうち前記被試験体の収容領域を挟む他端側に設けられ前記恒温室の空気を当該他端側の壁面に沿って取り込み前記排気口から排気する排気チャンバと、を有する、ことを特徴とする。
【0013】
このように、恒温室のうち被試験体の収容領域の一端側に導入チャンバが設けられ、他端側に排気チャンバが設けられており、それぞれ恒温室の壁面側から空気を吹出し、あるいは取り込むように構成されているので、恒温室内の空気の流れが、被試験体の収容領域の全体を通過するように形成される。したがって、恒温室内の空気温度分布が均一化される。
【0014】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温槽は、前記恒温室の一端側近傍に設けられ多数の通気穴を有し前記導入チャンバから流出した空気を当該通気穴から前記恒温室の他端側に向けて吹き出す給気側整流部材を備える、ことを特徴とする。
【0015】
このように、給気側整流部材に多数の通気穴が設けられているので、導入チャンバからの空気を、多数の通気穴により範囲を拡大して吹き出すことができる。したがって、被試験体へ流す空気の温度分布が均一化される。
【0016】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温槽は、前記恒温室の他端部側近傍に前記一端側に対向するように設けられ多数の通気穴を有し前記恒温室の空気を当該通気穴から吸い込んで前記排気チャンバへ流す排気側整流部材を備える、ことを特徴とする。
【0017】
このように、排気側整流部材に多数の通気穴が設けられているので、恒温室内の空気を、多数の空気穴により広い範囲で吸い込むことができる。このため、恒温室の排気側整流部材周辺の空気の流れが均一化される。したがって、恒温室内の空気温度分布が均一化される。
【0018】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温ユニットは、前記通風路を流れる空気を加湿する加湿手段と、外気を除湿して前記通風路に導入する除湿空気導入手段と、前記通風路内の空気の一部を排気する排気手段と、を有する、ことを特徴とする。
【0019】
このように、加湿手段により空気を加湿し、除湿空気導入手段により除湿空気を導入することができるので、恒温室内の空気の湿度調整を行うことができる。したがって、所望の湿度条件で被試験体の環境試験を行うことができる。
また、排気手段により通風路内の空気の一部を排気することができるので、除湿空気導入手段により導入した空気量に相当する分の空気を外部に排気し、恒温室内の圧力を一定に保持することができる。
【0020】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記恒温ユニットは、圧縮機と、凝縮器と、受液器と、開度可変膨張弁と、前記冷却手段である蒸発器と、を順次接続してなる冷凍回路をもつ冷凍機を備える、ことを特徴とする。
【0021】
このように、冷凍機の冷凍回路に開度可変膨張弁が組み込まれているので、その開度を調整することにより蒸発器の温度を調整することができる。したがって、空気の冷却温度調整能力が高く、温度均一性も良い。
【0022】
また、本発明にかかる環境試験用空調装置では、前記冷凍機は、前記冷凍回路上の前記蒸発器と前記圧縮機との間の位置であって前記通風路の外側に、前記蒸発器とは別の第2の蒸発器を有し、前記蒸発器で蒸発しなかった冷媒を前記第2の蒸発器により蒸発させるように構成されている、ことを特徴とする。
【0023】
このように、蒸発器で蒸発しなかった冷媒を第2の蒸発器により蒸発させるように構成されているため、蒸発器における冷媒の蒸発温度を上げた場合でも、その冷凍能力上昇分の熱負荷を外気から得て、ヒータは使用しない。
したがって、冷媒の蒸発温度を上げた場合でも、ヒータにより熱負荷を与える必要が無く、省エネルギーである。また、ヒータを使用しないため、温度調整した空気の温度分布が良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験用空調装置によれば、環境試験の実施に掛かる手間が少なく、装置を小型化することができ、ランニングコストを低く抑えることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る環境試験用空調装置1の概略構成、および環境試験装置本体20を示す図である。
環境試験装置本体20は、試験機構部21、ベース部22、機器格納部23及び台車24から構成されている。
試験機構部21は、被試験体10を固定又は載置することにより設置できるようになっており、被試験体10に対して環境試験のための所定動作を行わせるための機構である。被試験体10としては、例えば、部品等(ワイパー、ウインカー等の自動車部品、電気部品、機械部品、等)を対象とする。
ベース部22上には、試験機構部21が設置されている。ベース部22の下部には保温材(断熱材)が埋め込まれており、保温材の断熱効果により、試験機構部21側と機器格納部23側との間が断熱される。また、ベース部22の外周部には、後述する恒温槽2を取り付けるための取付け金具12b(固定具)が設けられている。
機器格納部23の内部には、試験機構部21を駆動するためのモータや制御機器(図示せず)が格納されている。
台車24の下部にはキャスター25が設けられている。
【0027】
環境試験用空調装置1は、上記環境試験装置本体20における被試験体10の周囲空気を環境試験に応じて所定温度に保持するための装置である。環境試験用空調装置1は、環境試験装置本体20に取り付けて内部に恒温室2aを形成する恒温槽2と、恒温室2aの温度を所定温度に調整する恒温ユニット4と、恒温槽2と恒温ユニット4とを接続する給気ダクト6及び還気ダクト7と、から構成されている。なお、恒温ユニット4の下部にはキャスター8が設けられている。
【0028】
恒温槽2は、環境試験装置本体1の一部分であって被試験体10が設置された状態の試験機構部21を含む部分の周囲を覆って内部に収容できるように構成されている。本実施形態において、恒温槽2は、ほぼ直方体状で、下方が開口した中空形状をなしている。
そして、恒温槽2は、環境試験装置本体20に気密に取り付けてその内部空間に恒温室2aを形成するようになっている。本実施形態では、恒温槽2は、環境試験装置本体20のベース部22に載せ、恒温槽2に設けられた取付け金具12aと上述したベース部22に設けられた取付け金具12bにより固定される。
また、恒温槽2の環境試験装置本体20との接触面には、恒温室2aの内外を気密に保持するための、例えばOリングのようなシール部材(図示せず)が設けられている。
なお、本実施形態において恒温槽2は直方体状をなしているが、本発明はこれに限られず、環境試験装置本体20の種類、形状、大きさ、等に合わせて、適宜形状、大きさを設定することができる。
【0029】
図2は、本実施形態における恒温槽2の構成を示す図である。恒温槽2を形成する壁部は、内部に保温材(断熱材)により形成した断熱層をもち、外壁は、アルミニウムなどの金属や、樹脂等により構成することができる。
また、図2に示すように、本実施形態では、恒温槽2は、上部壁部の一部2Aを取り外すことができるようになっており、その取り外した部分が観察窓11となっている。この観察窓11の部分は、アクリルガラスやポリカーボネートのような透明度の高い材料で構成することができる。このように構成されているため、環境試験の実施中に、必要に応じて、上部壁部の一部を取り外して、被試験体10の動作状態を確認することができる。
【0030】
また、恒温槽2には、恒温ユニット4により温度調整された空気を恒温室2aに導入する給気口14と、恒温室2a内の空気を排気する排気口15とが形成されている。
本実施形態では、給気口14及び排気口15は、恒温室2aのうち被試験体収容領域の両側上部に形成されているが、状況に応じて位置を決めることができる。
【0031】
また、恒温槽2は、導入チャンバ17及び排気チャンバ18を有している。
導入チャンバ17は、恒温室2aのうち被試験体収容領域を挟む一端側(図2で左側)に設けられている。導入チャンバ17は、恒温槽2の壁部と、導入チャンバ形成部材17aとにより囲まれた内部に形成されている。
導入チャンバ形成部材17aは、恒温槽2の上記一端側の壁部との間に、間隔tの隙間が形成されるように形成されている。この間隔tの隙間は、恒温室2a内の空気の流れ方向と直交する方向(図2で紙面に垂直な方向)に延びて形成されている。
このような構成の導入チャンバ17により、給気口14から空気を導入し、上記一端側の壁面に沿って吹き出すようになっている。
【0032】
排気チャンバ18は、恒温室2aのうち被試験体収容領域を挟む他端側(図2で右側)に設けられている。排気チャンバ18は、恒温槽2の壁部と、排気チャンバ形成部材18aとにより囲まれた内部に形成されている。
排気チャンバ形成部材18aは、恒温槽2の上記他端側の壁部との間に、間隔tの隙間が形成されるように形成されている。この間隔tの隙間は、上述した導入チャンバ17と同様に、恒温室2a内の空気の流れ方向と直交する方向(図2で紙面に垂直な方向)に延びて形成されている。
このような構成の排気チャンバ18により、恒温室2aの空気を上記他端側の壁面に沿って取り込み排気口15から排気するようになっている。
【0033】
なお、本実施形態における導入チャンバ形成部材17a及び排気チャンバ形成部材18aは、ともに断面L字型に形成されているが、上述した機能を発揮できる範囲で種々の形状変更が可能である。例えば、断面円弧状に形成されるものであってもよい。
また、導入チャンバと排気チャンバにおける隙間の間隔tは、必ずしも同じである必要な無い。
【0034】
図3は、本実施形態にかかる環境試験用空調装置1のシステム構成を示す図である。
図3に示すように、恒温槽2と恒温ユニット4とは、給気ダクト6及び還気ダクト7により互いに接続されている。
給気ダクト6は、一端が恒温槽2の給気口14に接続され、他端が後述する恒温ユニット4の通風路31出口に接続されており、温度調整された空気Aを恒温室2aへ送給するようになっている。
還気ダクト7は、一端が恒温槽2の排気口15に接続され、他端が恒温ユニット4の通風路31入口に接続されており、恒温室2a内の空気を通風路31に戻すようになっている。
また、給気ダクト6及び還気ダクト7は、ともに可撓性(フレキシブル)及び断熱性を有する材料により構成されている。
【0035】
恒温ユニット4は、通風路31、送風機32、ヒータ33、冷凍機40、制御部50、などを主要構成要素として備えている。
通風路31は、恒温槽2の排気口15を介して空気Aを取り入れて温度調整した空気Aを給気口14に戻す機能を有する。
送風機32は、通風路31内に設けられており、制御部50による制御の下、回転数を制御され、恒温槽2の排気口15から取り入れた空気を給気口14側へ送出し恒温室2a内に空気を循環させる。
ヒータ33は、制御部50による制御の下、温度調節器35により温度調整され、通風路31内を流れる空気を加熱する。つまり、ヒータ33は加熱手段として機能する。また、ヒータ33には温度計34が付設されており、温度を監視してその過熱を防止するようになっている。
【0036】
冷凍機40は、冷媒を圧縮する圧縮機41と、冷媒を凝縮液化する凝縮器42と、液化した冷媒を一時的に溜める受液器43と、受液器43からの冷媒を可変に減圧膨張させる開度可変膨張弁44と、通風路31内に設けられ冷媒を膨張気化させ通風路31を流れる空気を冷却する冷却手段である蒸発器45と、を順次接続してなる冷凍回路をもつ。
圧縮機41は、運転周波数が可変のインバータ圧縮機が好適であり、これにより冷媒循環量を変化させて冷凍能力を調整することができる。
また、開度可変膨張弁44の開度を調整することにより冷媒の減圧度を変化させ、蒸発器45の温度を調整することができる。開度可変膨張弁44は、電子膨張弁が好適であるが、手動膨張弁により開度の調節を行うようにしてもよい。
このように構成された冷凍機40により、制御部50による制御の下、通風路31内を流れる空気を冷却する。
【0037】
また、恒温ユニット4は、通風路31を流れる空気を加湿する加湿手段としての加湿器52と、外気を除湿して通風路31に導入する除湿空気導入手段54と、通風路31内の空気の一部を排気する排気手段60と、を有する。
加湿器52は、制御部50による制御の下、温度調節器53により温度調整され、通風路31内に加湿空気を供給するようになっている。
また、加湿器52からの加湿空気は、送風機32の上流側から通風路31内に導入されるようになっており、これにより、加湿空気を送風機32で撹拌させて均一化を図るようになっている。
【0038】
本実施形態において、除湿空気導入手段54は、通風路31内に外気を導入する空気導入管55と、外気に含まれる塵埃を除去するエアフィルター56と、外気を除湿する除湿器57と、流量計58と、流量調節弁59とを有する。
除湿器57は、例えばメンブレンエアドライヤで構成することができる。メンブレンエアドライヤは、水蒸気は通しやすいが空気(酸素や窒素)は通しにくい性質の高分子膜でできたフィルタをもつ除湿器である。
流量調節弁59は、制御部50による制御の下、外気の導入量を調整する。
【0039】
排気手段60は、加湿器52による加湿空気の導入や、除湿空気導入手段54による外気の導入による空気量に相当する分の空気を外部に排気し、恒温室2a内の圧力を一定に保持する。
【0040】
恒温槽2の恒温室2aには、温度計36及び湿度計37が設置され、その検出信号が制御部50に入力されるようになっている。なお、符号61は、通風路31内で発生した水滴を排出するドレンである。
【0041】
次に、以上のように構成された環境試験用空調装置1の動作について説明する。
まず、図1に示すように、被試験体10を設置した環境試験装置本体20の近傍に、環境試験用空調装置1を位置付ける。そして、恒温槽2を被せ、取付け金具12a、12bにより堅固に固定する。
次に、恒温ユニット4により、恒温槽2から空気を取り入れ、ヒータ33による加熱と蒸発器45による冷却のいずれか又はその組み合わせにより、空気を温度調整して、恒温槽2に戻して循環させ、恒温室2a内を所定温度(例えば、−40〜+95℃)に保持して所定の環境状態を作る。また、必要に応じて、加湿器52、除湿空気導入手段54により湿度を調整する。
このようにして環境条件をつくった恒温室2aにおいて、環境試験装置本体20の試験機構部21を駆動させ、被試験体10に所定の動作を行わせて、被試験体10の作動状態を検査する。
なお、恒温室2a内の温度は、上記の範囲に限られず、上記温度以下であっても、上記温度以上であってもよい。
【0042】
次に、本実施形態にかかる環境試験用空調装置1の作用・効果について説明する。
本実施形態にかかる環境試験用空調装置1によれば、恒温槽2は、環境試験装置本体20の一部分に取り付けてその内部に環境試験を行うための恒温室2aが形成されるように構成されているので、恒温槽2を環境試験装置本体20に取り付けるだけで環境試験を実施できる。
上述したように、従来の環境試験では、大型の恒温槽まで環境試験装置本体を移動し、搬入する必要があり、試験の実施に手間が掛かっていたが、本発明によれば、そのような手間が不要となる。したがって、試験の実施に掛かる手間が少ない。
また、恒温槽は、環境試験装置本体20のうち被試験体10及び試験機構部21に被せて使用するものであるので、従来のものに比して小型化が可能であり、広い設置スペースを必要としない。
また、恒温槽2の小型化が可能であるので、空調を行う恒温ユニットのヒータ33や冷凍機40を従来のものに比して小容量のものとすることができる。したがって、製造コスト及びランニングコストを低減することができる。
【0043】
また、本実施形態にかかる環境試験用空調装置1では、ヒータ33及び蒸発器45により温度調整をした空気を、恒温槽2と恒温ユニット4との間で循環させるので、この循環流により恒温室2a内の空気温度分布が均一化される。
【0044】
また、恒温槽2と恒温ユニット4とが、可撓性を有する給気ダクト6及び還気ダクト7により接続されているので、試験の実施に際しては、環境試験用空調装置1を環境試験装置本体20の近傍に位置付けた後は、恒温ユニット4を床上に配置したまま恒温槽2のみを動かして環境試験装置本体20に取り付けることができる。したがって、環境試験装置本体20に恒温槽2を被せる作業や、取り付け位置の調整作業を容易に行うことができる。
【0045】
また、図2に示したように、恒温室2aのうち被試験体収容領域の一端側に導入チャンバ17が設けられ、他端側に排気チャンバ18が設けられており、それぞれ恒温室2aの壁面側から空気を吹出し、あるいは取り込むように構成されているので、恒温室2a内の空気の流れが、被試験体収容領域の全体を通過するように形成される。したがって、恒温室2a内の空気温度分布が均一化される。
【0046】
また、加湿器52により空気を加湿し、除湿空気導入手段54により除湿空気を導入することができるので、恒温室2a内の空気の湿度調整を行うことができる。したがって、所望の湿度条件で被試験体10の環境試験を行うことができる。
また、排気手段60により通風路31内の空気の一部を排気することができるので、除湿空気導入手段54により導入した空気量に相当する分の空気を外部に排気し、恒温室2a内の圧力を一定に保持することができる。
【0047】
また、冷凍機40の冷凍回路に開度可変膨張弁44が組み込まれているので、その開度を調整することにより蒸発器45の温度を調整することができる。したがって、空気の冷却温度調整能力が高く、温度均一性も良い。
【0048】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態にかかる環境試験用空調装置に適用する恒温槽2の構成を示す断面図である。図4において、(B)は(A)におけるX−X矢視図である。
図4(A)に示すように、本実施形態における恒温槽2には、給気側整流部材63が設けられている。給気側整流部材63は、恒温室2aの一端側(図で左側)近傍に、導入チャンバ17出口側の領域と、被試験体収容領域とを仕切るように設けられている。
また、図4(B)に示すように、給気側整流部材63には、多数の通気穴63aが形成されている。
給気側整流部材63は、このように構成されているため、導入チャンバ17から流出した空気をその通気穴63aから恒温室2aの他端側(図で右側)すなわち被試験体収容領域に向けて吹き出すようになっている。
【0049】
また、本実施形態における恒温槽2には、排気側整流部材64が設けられている。排気側整流部材64は、恒温室2aの他端側(図で右側)近傍に、排気チャンバ18入口側の領域と、被試験体収容領域とを仕切るように設けられている。また。排気側整流部材64も、上述した給気側整流部材63と同様に、多数の通気穴64aを有している。
排気側整流部材64は、このように構成されているため、恒温室2aの空気をその通気穴64aから吸い込んで排気チャンバ18へ流すようになっている。
【0050】
本実施形態にかかる環境試験用空調装置の他の部分の構成は、上述した第1実施形態と同様である。
【0051】
次に、本実施形態にかかる環境試験用空調装置の作用・効果について説明する。
本実施形態にかかる環境試験用空調装置によれば、給気側整流部材63に多数の通気穴63aが設けられているので、導入チャンバ17からの空気を、多数の通気穴63aにより範囲を拡大して吹き出すことができる。したがって、均一な空気の流れになるため、被試験体10へ流す空気の温度分布も均一化される。
【0052】
また、排気側整流部材64に多数の通気穴64aが設けられているので、恒温室2a内の空気を、多数の空気穴64aにより広い範囲で吸い込むことができる。このため、排気側整流部材64周辺の空気の流れが均一化される。したがって、恒温室2a内の空気温度分布が均一化される。
【0053】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態に係る環境試験用空調装置に適用する冷凍機の構成を示す図である。
図5に示すように、本実施形態における冷凍機40の冷凍回路は、上述した第1実施形態における冷凍回路の構成に、第2の蒸発器46を追加したものである。
この第2の蒸発器46は、冷凍回路上の蒸発器45と圧縮機41との間の位置であって通風路31の外側に設けられており、蒸発器45で蒸発しなかった冷媒を全て蒸発させるように構成されている。この第2の蒸発器45内の冷媒と熱交換をさせる空気は外気(例えば、環境試験用空調装置が設置される試験室内の空気)である。
【0054】
本実施形態にかかる環境試験用空調装置の他の部分の構成は、上述した第1又は第2実施形態と同様である。
【0055】
次に、本実施形態にかかる環境試験用空調装置の作用・効果について説明する。
従来の冷凍機では、異なる蒸発温度毎(例えば、−40℃、−20℃、0℃)に設定された電磁弁と膨張弁の組を並列に接続し、蒸発器における冷媒の蒸発温度を変えるときは、電磁弁のON/OFFで冷媒が通過する膨張弁を切り替える。
また、上記の第1実施形態では、開度可変膨張弁44の開度を調整することにより蒸発器45における冷媒の蒸発温度を調節する。
ここで、蒸発器における冷媒の蒸発温度を上げると、冷凍機の冷凍能力は上がる(例えば、ある冷凍機では、−45℃時の冷凍能力は1.82kWであるのに対し、−5℃時の冷凍能力は8.48kWである。)。
このため、当初は冷媒が蒸発器で全て蒸発(ガス化)するが、温度調整された空気の温度が次第に冷えてくると、全てが蒸発しなくなり、未蒸発分(液体の冷媒)が残るようになる。
冷媒(液体)が圧縮機に入ると故障又は停止の原因となるため、上記の蒸発温度上昇にあたっては、ヒータで熱負荷を加え、冷媒を全て蒸発(ガス化)させるのが一般的である。
【0056】
しかし、このようなヒータでの熱負荷は、冷凍機の凝縮器で排熱されるため、エネルギー消費量が多く、また、温度分布が悪くなるという問題がある。
これに対し、本実施形態にかかる環境試験用空調装置は、前記蒸発器で蒸発しなかった冷媒を前記第2の蒸発器により蒸発させるように構成されており、冷媒を全て蒸発させるための熱負荷を外気から得るようになっている。すなわち、蒸発器45における冷媒の蒸発温度を上げた場合でも、その冷凍能力上昇分の熱負荷を外気から得て、ヒータ33は使用しない。
このように本実施形態にかかる環境試験用空調装置によれば、冷媒の蒸発温度を上げた場合でも、ヒータにより熱負荷を与える必要が無く、省エネルギーである。また、ヒータを使用しないため、温度調整した空気の温度分布が良い。
【0057】
以上説明したように、本発明の環境試験用空調装置によれば、環境試験の実施に掛かる手間が少なく、装置を小型化することができ、ランニングコストを低く抑えることができる、という優れた効果が得られる。
【0058】
なお、上記の実施形態(図3)では、送風機32はヒータ33及び蒸発器45の前に取り付けているが、ヒータ33及び蒸発器45の後に取り付ける場合がある。
その他、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる環境試験用空調装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる環境試験用空調装置に適用する恒温槽の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる環境試験用空調装置のシステム構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる環境試験用空調装置に適用する恒温槽の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる環境試験用空調装置に適用する冷凍機の構成を示す図である。
【図6】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1 環境試験用空調装置
2 恒温槽
2a 恒温室
4 恒温ユニット
6 給気ダクト
7 還気ダクト
8 キャスター
10 被試験体
11 観測窓
12a、12b 取付け金具
14 給気口
15 排気口
17 導入チャンバ
17a 導入チャンバ形成部材
18 排気チャンバ
18a 排気チャンバ形成部材
20 環境試験装置本体
21 試験機構部
22 ベース部
23 機器収納部
24 台車
25 キャスター
31 通風路
32 送風機
33 ヒータ
34 温度計
35 温度調節機
36 温度計
37 湿度計
40 冷凍機
41 圧縮機
42 凝縮器
43 受液器
44 開度可変膨張弁
45 蒸発器
46 第2の蒸発器
50 制御部
52 加湿器
53 温度調節機
54 除湿空気導入手段
55 空気導入管
56 エアフィルター
57 除湿器
58 流量計
59 流量調節弁
60 排気手段
61 ドレン
63 給気側整流部材
64 排気側整流部材
63a,63b 通気穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体を設置して該被試験体に対して環境試験のための所定動作を行わせる試験機構部を有する環境試験装置本体における前記被試験体の周囲空気を環境試験に応じて所定温度に保持するための環境試験用空調装置であって、
前記環境試験装置本体の一部分であって前記被試験体が設置された状態の前記試験機構部を含む部分の周囲を覆って内部に収容できるように構成され、前記環境試験装置本体に気密に取り付けてその内部空間に恒温室を形成する恒温槽と、
前記恒温室の温度を被試験体の環境試験に応じて所定温度に温度調整する恒温ユニットと、を備える、
ことを特徴とする環境試験用空調装置。
【請求項2】
前記恒温槽は、前記恒温ユニットにより温度調整された空気を恒温室に導入する給気口及びその空気を排気する排気口を有し、
前記恒温ユニットには、前記排気口を介して空気を取り入れて温度調整した空気を前記給気口に戻す通風路が形成されているとともに、該通風路内に、取り入れた空気を前記給気口側へ送出し前記恒温室内に空気を循環させる送風機と、空気を加熱する加熱手段と、空気を冷却する冷却手段と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の環境試験用空調装置。
【請求項3】
前記恒温槽と恒温ユニットとは、温度調整された空気を前記恒温室へ送給する可撓性を有する給気ダクトと、前記恒温室内の空気を前記通風路に戻す可撓性を有する還気ダクトとにより互いに接続されている、ことを特徴とする請求項2に記載の環境試験用空調装置。
【請求項4】
前記恒温槽は、前記恒温室のうち前記被試験体の収容領域を挟む一端側に設けられ前記給気口から空気を導入し当該一端側の壁面に沿って吹き出す導入チャンバと、前記恒温室のうち前記被試験体の収容領域を挟む他端側に設けられ前記恒温室の空気を当該他端側の壁面に沿って取り込み前記排気口から排気する排気チャンバと、を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の環境試験用空調装置。
【請求項5】
前記恒温槽は、前記恒温室の一端側近傍に設けられ多数の通気穴を有し前記導入チャンバから流出した空気を当該通気穴から前記恒温室の他端側に向けて吹き出す給気側整流部材を備える、ことを特徴とする請求項4に記載の環境試験用空調装置。
【請求項6】
前記恒温槽は、前記恒温室の他端部側近傍に前記一端側に対向するように設けられ多数の通気穴を有し前記恒温室の空気を当該通気穴から吸い込んで前記排気チャンバへ流す排気側整流部材を備える、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の環境試験用空調装置。
【請求項7】
前記恒温ユニットは、前記通風路を流れる空気を加湿する加湿手段と、外気を除湿して前記通風路に導入する除湿空気導入手段と、前記通風路内の空気の一部を排気する排気手段と、を有する、ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の環境試験用空調装置。
【請求項8】
前記恒温ユニットは、圧縮機と、凝縮器と、受液器と、開度可変膨張弁と、前記冷却手段である蒸発器と、を順次接続してなる冷凍回路をもつ冷凍機を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の環境試験用空調装置。
【請求項9】
前記冷凍機は、前記冷凍回路上の前記蒸発器と前記圧縮機との間の位置であって前記通風路の外側に、前記蒸発器とは別の第2の蒸発器を有し、前記蒸発器で蒸発しなかった冷媒を前記第2の蒸発器により蒸発させるように構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の環境試験用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−71457(P2007−71457A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259431(P2005−259431)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000198318)石川島検査計測株式会社 (132)
【Fターム(参考)】