説明

環式ホスファゼン化合物

本発明は、式(I)または(II)


(式中:
−RおよびR’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、独立して、繰返し単位R(好ましくは本質的にこれからなる)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(OF)]を表し、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖の全体に無作為に分布された前記繰返し単位は、
(i)−CFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(ii)−CFCFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−
のうちから選択され、
−ZおよびZ’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、式−Oの極性基(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子あるいは任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基である)のうちから選択される)、または式−OM’2+の極性基(式中、M’は、二価の金属、好ましくはCa、およびMgから選択されるアルカリ土類金属である)[基(P)]を表し、
−nは、1〜3、好ましくは1に等しい整数であり、
−nZ’は、1〜4、好ましくは1に等しい整数であり、
−nf’は、nZ’+nf’が8と等しくなるような整数であり、
−nは、n+nが6と等しくなるような整数である)に従う環式ホスファゼン化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油およびグリース用の耐磨耗添加剤として有用である環式ホスファゼン化合物に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、パーフルオロポリエーテル油およびグリースにおける向上した耐磨耗特性を向上した溶解度/分散性と併せて有する環式ホスファゼン、これらの製造方法、これらを含む組成物および前記環式ホスファゼンまたはその組成物の滑剤中での耐磨耗添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
滑剤は、可動機械部品を含むシステムにおいて、前記機械部品の磨耗を低減するために広範に用いられている。パーフルオロポリエーテルは、この用途における潤滑産業において30年にわたって確立されてきた。これらの化学的不活性、非引火性、優れた温度−粘度特性ならびに高い熱および酸化耐性により、これらの流体は、特に過酷な条件(300℃以下の温度)が要求される特殊な分野、または宇宙空間、軍事用、酸素および攻撃的な化学的操作等などのきわめて厳しい環境において用途が見出される。
【0004】
それでもなお、パーフルオロポリエーテルのこれらの際立った特性にも関わらず、前記パーフルオロポリエーテルは、一般に、耐磨耗特性に十分に寄与しておらず:これらの物質は、一般に、炭化水素または合成油で一般的に得られるものよりかなり高い磨耗値を示し、気体および水分に対するこれらの高い浸透性のために、腐食に対する保護を提供しない。
【0005】
従来の水素化滑剤において一般的に利用される耐磨耗添加剤は、パーフルオロポリエーテルへの劣った溶解度により、これらの流体用に用いることはできない。
【0006】
それ故、(特許文献1)(イーアイデュポンドゥヌムール(E.I.DU PONT DE NEMOURS))、1965年8月17日は、下記式に従う、ポリフルオロエーテルアルコール部分を有する環式ホスファゼンを開示する。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中:
−Xはハロゲン原子または下記式の基であり、
【0009】
【化2】

【0010】
−YはFまたはCFであり、
−nは1〜10の整数であり、および
−mは2〜3の整数である)
前記化合物は、高温滑剤として用いられるために好適である。
【0011】
(特許文献2)(アウシモンS.P.A.(AUSIMONT S.P.A.))、1994年5月18日は、以下の式に従う、環式構造または直鎖構造の完全置換ホスファゼンを開示する。
【0012】
【化3】

【0013】
式中:
−nは0または1であり、
−mは3〜7の整数であり、
−基Aは
(i)R−Q−(式中、Qは、−O−、−S−、−NR−(R=C1〜4アルキル)および−NH−NH−から選択される二価基であり;Rは、C〜C12アリール基である)、
(ii)R−CH−O(CHCHO)−(式中、s=0、1であり、およびRは400〜10000の分子量を有するパーフルオロポリエーテル鎖である)
から選択され、
前記化合物は、パーフルオロポリエーテルベースの油およびグリースに対する安定化剤として用いられている。
【0014】
(特許文献3)(マツラマオイルリサーチカンパニー(MATSURAMA OIL RESEARCH COMPANY))2002年7月3日は、下記式に従うホスファゼン化合物に関する。
A−OCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO−A
式中、Aは下記式の基であり:
【0015】
【化4】

【0016】
式中、Rは、水素原子、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロアルキル、アリール、実質的にアリール、アリールオキシまたは置換アリールオキシであり、pおよびqは1〜30の実数であり、前記化合物は、ハードディスクまたはビデオテープレコーダあるいはデジタルビデオカセットの金属蒸着テープなどの記録媒体用の滑剤に用いられるために有用である。
【0017】
また、下記式(B)に従う磁気媒体用の合成滑剤が過去に記載されている((特許文献4)(日立金属株式会社(HITACHI METALS))1988年10月26日)。
【0018】
【化5】

【0019】
式中、nは3〜10の整数を表し、ならびにRfおよびRf’は、以下の群から選択される1つまたは2つの基を表す:
Y(CO)−CFYCHO−
Y(CO)−(CFO)−CFYCHO−
Y(CO)−(CFO)−CFYCHO−
Y(CFl−1−CO−
Y(CFl−1−CHO−
H(CFl−1−CHO−
ここで、lは3〜250を表し、mは1〜250を表し、ならびにYは、F−、CF−、C−、CFO−、CO−およびCO−からなる群から選択される1つを表す。前記潤滑剤は、金属、炭素、セラミック、ガラスなどの無機材料の表面に対する向上した接着特性に寄与する。これらの滑剤は、油およびグリースに対する耐磨耗添加剤としての使用は示唆されていない。
【0020】
しかも、(特許文献5)(ソルヴェイソレクシスS.P.A.(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.))2003年08月20日は、下記式の環部分を1つ以上含む環式ホスファゼン化合物を開示し:
【0021】
【化6】

【0022】
すべてのリン原子に結合される置換基は、280〜5000の範囲の数平均分子量を有する(パー)フルオロアルキルオキシ鎖および−OCFX、−OCX、−OCXタイプの末端基(式中、X=F、Cl、Hである)を含み、ここで、前記環式ホスファゼンは、パーフルオロポリエーテル油およびグリース用の添加剤として用いられるために好適である。
【0023】
(非特許文献1)は、とりわけ、下記式(A)に従うフッ素化油およびグリース用の添加剤を開示する。
【0024】
【化7】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第3201445号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0597369 A号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1219629 A号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0287892 A号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1336614 A号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】マッコンP(MACCONE,P)ら、「フッ素化滑剤用新規の添加剤(New additives for fluorinated lubricants.)」第70回NLGI年次総会、ヒルトンヘッドアイランド(Hilton Head Island)、サウスカロライナ(South carolina)(2003年10月25日〜29日)。第318番。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
それにもかかわらず、従来のホスファゼン化合物は、たとえパーフルオロポリエーテル油およびグリースの磨耗を有効に低減させると共にその上方操作温度を有効に高めるとはいえ、前記油およびグリース中での溶解度/分散性が中程度であり、これは、関連する混和物における耐磨耗性能を損なう可能性がある。
【0028】
際立った耐磨耗特性にパーフルオロポリエーテル油およびグリースにおける好適な溶解度および/または分散性を組み合わせた耐磨耗および耐食添加剤に対する要求が未だある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
それ故、本発明の目的は、下記式(I)または(II)に従う環式ホスファゼン化合物を提供することである。
【0030】
【化8】

【0031】
式中:
−RおよびR’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、独立して、繰返し単位R(好ましくは本質的にこれからなる)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(OF)]を表し、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖の全体に無作為に分布された前記繰返し単位は、
(i)−CFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(ii)−CFCFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−
のうちから選択され、
−ZおよびZ’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、式−Oの極性基(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子あるいは任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基である)のうちから選択される)、または式−OM’2+の極性基(式中、M’は、二価の金属、好ましくはCa、およびMgから選択されるアルカリ土類金属である)[基(P)]を表し、
−nは、1〜3、好ましくは1に等しい整数であり、
−nZ’は、1〜4、好ましくは1に等しい整数であり、
−nf’は、nZ’+nf’が8と等しくなるような整数であり、
−nは、n+nが6と等しくなるような整数である。
【0032】
「(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖の全体にわたって無作為に分布された」という表記により、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖が異なるタイプの繰返し単位を含む場合、前記繰返し単位は前記鎖に沿って統計的に分布されていると理解される。
【0033】
本出願人は、上述の式(I)または(II)に従う環式ホスファゼン化合物は、上述のとおり1つ以上の基(P)の存在の結果、優れた耐磨耗特性と共に、有利に際立った溶解度/分散性をパーフルオロポリエーテル油およびグリース中に示すことを意外にも見出した。
【0034】
本発明の環式ホスファゼン化合物は、それ故、例えばパーフルオロポリエーテル滑剤といった滑剤における耐磨耗添加剤として有利に利用されることが可能である。
【0035】
本発明の他の目的は、前記環式ホスファゼン化合物、これを含む組成物の製造方法、ならびに前記環式ホスファゼン化合物またはその組成物の滑剤における耐磨耗添加剤としての使用である。
【0036】
鎖(OF)は、有利には少なくとも150、好ましくは少なくとも200、より好ましくは少なくとも250および有利には10000以下、好ましくは7500以下、より好ましくは5000以下の数平均分子量を有する。
【0037】
鎖(OF)が450〜600の数平均分子量を有していた場合に特に良好な結果が得られた。
【0038】
鎖(OF)の数平均分子量は、NMRにより有利に測定することが可能である。
【0039】
好ましくは、本発明の環式ホスファゼン化合物は上記の式(I)または(II)に従い、式中、基RO−およびR’O−は:
(a)T−O−(CFCFO)p’(CFO)q’−J−
(式中:
−Jは、式−CE’(Y)CEO(CHCHO)s1−または−CE’YO(CHCHO)s2−の基であり(式中、s1およびs2は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、0〜5の整数であり、YはFまたはCFであり、ならびにEおよびE’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、F、HおよびCFのうちから選択され、好ましくは、EはHであると共にE’はFまたはCFである)、
−Tは、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T)、または−(CF−CF(T)(T)から選択され(式中、fは0または1であり、TおよびTは、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−p’およびq’は、p’+q’が1〜100の範囲になると共に、比率q’/p’が0.1〜10の間に含まれるような数字である)、
(b)T’−O−(CFCF(CF)O)r’−(CFCFO)s’−(CFYO)t’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−T’は、−CF、−CFY−CF、−CF(Y)CF(Y)CF、−(CFY)−CFY(T’)、または−(CFY)−CY(T’)(T’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’およびT’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−YはFまたはCFであり、
−r’、s’およびt’は、r’+s’+t’が1〜100の範囲であり、比率t’/(r’+s’)が0.01〜0.1の間に含まれるような数字である)、
(c)T’’−(OCFY)t1’’(OCu1’’−OR’O−(CO)u2’’(CFYO)t2’’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−R’’はC〜Cパーフルオロアルキレンであり、
−YはFまたはCFであり、
−T’’は、−CF、−CFY−CF、−CF(Y)CF(Y)CF、−(CFY)−CFY(T’’)、または−(CFY)−CY(T’’)(T’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’およびT’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−t1’’、u1’’、t2’’、u2’’は、(t1’’+u1’’+t2’’+u2’’)が1〜100の範囲内であると共に、(t1’’+t2’’)/(u1’’+u2’’)が0.01〜0.1の間に含まれるような数字である)、
(d)T’’’−CFCFO−(CF−(CFx’CFO)v’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−T’’’は、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T’’’)、または−(CF−CF(T’’’)(T’’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’’およびT’’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−v’は1〜100の範囲内の数字であると共に、x’は1または2である)、
(e)T’’’’−CFCH−(OCFCFCHw’−OR’’O−(CHCFCFO)w’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−R’’は上記のとおりであり、
−T’’’’は、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T’’’’)、または−(CF−CF(T’’’’)(T’’’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’’’およびT’’’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−w’は1〜100の範囲内の数字である)
のうちから選択される。
【0040】
より好ましくは、本発明の環式ホスファゼン化合物は、下記式(III)または(IV)に従う。
【0041】
【化9】

【0042】
式中:
−Z、Z’、n、nZ’、nf’、は、上記の定義と同じ意味を有し、
−RO−およびRO−基は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、式:T−O−(CFCFO)p*(CFO)q*−CF−CHO(CHCHO)s*−の(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖を独立して表し、式中、
−sは0〜5の数字であり、
−Tは、−CF、−CFCF、−CFCFCFから選択され、
−pおよびqは、p+qが1〜50の範囲内であると共に、比率q/pが0.1〜10の間に含まれるような数字である。
【0043】
特に好ましくは、本発明の環式ホスファゼン化合物は、上記式(V)または(V−ビス)に従う。
【0044】
【化10】

【0045】
式中:
−MおよびM’は、上記の定義と同じ意味を有し、好ましくは、Mは、Li、Na、Kから選択されるアルカリ金属、または式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子またはC〜C12炭化水素基であり、好ましくはR=R=R=R=n−ブチルである)であり、ならびに好ましくはM’は、Ca、Mgから選択されるアルカリ土類金属であり、より好ましくはM’はCaであり、
−pi(i=1〜5)およびqi(i=1〜5)の各々は、独立して、pi+qiが2〜25の範囲内であると共に、比率qi/piが0.1〜10の間に含まれるような≧0の整数である。
【0046】
本発明のさらなる目的は、上述のとおり環式ホスファゼンを調製する方法である。
【0047】
環式ホスファゼンは、以下を含む方法により有利に調製される。
(i)式(VI)または(VII):
【0048】
【化11】

【0049】
(式中、Halは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうちから選択されるハロゲンを表し、好ましくはHalは塩素である)
のパーハロホスファゼンと、式ROHのフッ素化アルコール(式中、Rは上述の意味を有する)との、塩基の存在下での、P−Hal部分をP−OR部分に変換する反応、
(ii)−P−Z部分(式中Zは上述の意味を有し、すなわち、式−Oの極性基(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子あるいは任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基である)のうちから選択される)、または式−OM’2+の極性基(式中、M’は二価の金属であり、好ましくはCa、およびMgから選択されるアルカリ土類金属である)を表す)を得るための少なくとも1つの−P−OR部分/分子の選択的加水分解。
【0050】
好ましくは、フッ素化アルコールは下記式に従う。
−O−(CFCFO)p*(CFO)q*−CF−CHO(CHCHO)s*
式中:
−sは0〜5の数字であり、
−Tは、−CF、−CFCF、−CFCFCFから選択され、
−pおよびqは、p+qが1〜50の範囲内であると共に、比率q/pが0.1〜10の間に含まれるような数字である。
【0051】
より具体的には、本発明の環式ホスファゼン化合物を得る方法は、以下のステップを含む。
(A)上述のフッ素化アルコールと、式(VI)または(VII)のパーハロホスファゼンとの、少なくとも約1:1のアルコール/ホスファゼン当量比での縮合反応。この反応は、欧州特許第1 336 614号明細書および欧州特許第0 287 892号明細書に記載のものなどの公知の方法により実施されることが可能である。
前記反応は、一般に、1ステップで、有機溶剤中に、塩基および相間移動薬剤の存在下で実施される。
前記反応は、典型的には、20℃〜120℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲内の温度で実施される。
有機溶剤は、当業者に周知である、一般に、20℃〜150℃の範囲内に沸点を有する公知のフッ素化またはヒドロフルオロ化溶剤から選択される。好適なフッ素化溶剤は、とりわけ、ソルヴェイソレクシス(SOLVAY SOLEXIS)から商品名ガルデン(GALDEN)(登録商標)で市販されているパーフルオロポリエーテルである。
溶剤の量は、溶剤/フッ素化アルコール重量比が、有利に0.5〜10、好ましくは2〜5の範囲に維持されるよう選択される。
塩基としては、典型的には、MOHの水溶液/分散体(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子あるいは任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基)のうちから選択される)、またはM’(OH)の水溶液/分散体(式中、M’は、二価の金属、好ましくはCa、およびMgから選択されるアルカリ土類金属である)、好ましくはKOH、NaOHまたはCa(OH)の水溶液/分散体が用いられ、前記水溶液/分散体は、有利には20%〜60%w/w、好ましくは30%〜50%w/wの濃度を有し、有利にはフッ素化アルコールの2〜10倍の過剰MOHまたはM’(OH)モル濃度を有する量である。
「溶液/分散体」という表記は、上述のとおり塩基の水性組成物を示すことを意図し、ここで、前記塩基は、完全にあるいは部分的に可溶化されていること、または全く溶解されていないあるいは有意に溶解されておらず懸濁されていることが可能である。
相間移動薬剤は、好ましくは、当業者に周知であるホスホニウム塩または第4級アンモニウム塩であり;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、塩化テトラメチルアンモニウムを特に用いることが可能である。
前記相間移動薬剤は、有利には、1%〜10%フッ素化アルコールの間に含まれるモル濃度で用いられる。
温度に応じて、反応時間は、一般に、4〜24時間の間である。
縮合反応の終了時に、2つの相が一般に形成される。任意により、水に少なくとも部分的に混和性である有機溶剤を、有利に相が分離されるよう添加することが可能である。好ましくは、とりわけメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノールのような脂肪族アルコールが用いられる。前記相が分離させられ、重い有機相が回収される。
上述のとおり得られる重い有機相は、一般に、水で繰返し洗浄されて、相間移動薬剤および反応の最中に生成された可能性がある無機塩が除去される。−P−Hal部分がP−OR部分に転換された得られた生成物は、次いで、有利に、例えば減圧下での蒸発および/または分留による公知の方法により溶剤から分離される。
(B)ステップ(A)において得られた化合物の、アルコール媒体中における塩基での処理による加水分解。
塩基として、MOHまたはM’(OH)、またはM’COを用いることが可能であり、式中、MおよびM’は上述と同じ意味を有し;好ましい塩基はKOH、Ca(OH)および/またはNaOHである。塩基の量は、一般に、要求される目標加水分解転換に応じて選択される。
加水分解は、有利には、上述のとおり−P−Z基への−P−OR部分の要求される転換を得るために、31P−NMRにより監視される。
加水分解媒体はアルコール系であり、換言すると、少なくとも1種のアルコールが含まれる。好適なアルコールは、特に、エタノール、メタノール、イソプロパノールである。アルコールは、単独でまたは、非アルコール系溶剤との組み合わせて用いることが可能であり;例えば、アルコールと水との混合物を有利に利用することが可能である。
加水分解反応は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも40℃および有利には120℃以下、好ましくは100℃以下の温度で実施される。制御された加水分解のために特に好適であると見出された温度範囲は、60〜80℃の間に含まれる。
加水分解反応の終了時には、一般的に2つの相が形成され;前記相は分離させられると共に、重い有機相が回収される。
上述のとおり得られる重い有機相は、一般に、水で繰返し洗浄されて、塩基および反応の最中に生成された可能性がある無機塩が除去される。少なくとも1つの−P−OR部分/分子が−P−Z基に転換された得られた生成物は、次いで、有利に、例えば減圧下での蒸発および/または分留による公知の方法により溶剤から分離される。
【0052】
環式ホスファゼン化合物が式−OM’2+(式中M’は二価の金属、好ましくはCa、およびMgから選択されるアルカリ土類金属である)の式の基Zを含む場合には:
−上述のとおり、式−Oの式の基Z(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子または、任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基である)のうちから選択される)を含む関連する環式ホスファゼン化合物を調製する工程、
−式−OHの基を含む関連する誘導体を得るよう、前記後者の化合物を、一般に水性または水性アルコール酸溶液の存在下に加水分解に供する工程、次いで
−前記誘導体を、式M’(OH)またはM’CO、好ましくはM’(OH)の塩基で処理する工程(ここで、M’は、二価の金属、好ましくはCaおよびMgから選択されるアルカリ土類金属、より好ましくはCaである)
により、前記生成物を製造することが可能である。
【0053】
本発明のさらに他の目的は、上述のとおり環式ホスファゼン化合物を含む組成物である。
【0054】
本発明の第1の実施形態によれば、本発明の組成物は、上述のとおりタイプZおよびZ’の極性基を含まない他の環式ホスファゼン化合物(ホスファゼン(NP))を含むことが可能である。
【0055】
本出願人は、本発明の範囲を制限することなく、前記組成物において、本発明の環式ホスファゼンは、極性基により付与されるその界面活性剤タイプ特性の結果、好適な潤滑剤におけるホスファゼン(NP)の分散を有利に促進することが可能であり、それ故、ホスファゼン(NP)の耐磨耗特性を最大とすることができると考えている。
【0056】
本発明の第1の実施形態による組成物において用いられることが可能であるホスファゼン(NP)の例としては、欧州特許第1 336 614号明細書および欧州特許第0 287 892号明細書に記載のものなどの化合物を特に挙げることが可能である。
【0057】
ホスファゼン(NP)は、有利には、下記式(VIII)〜(X)に従う。
【0058】
【化12】

【0059】
式中、Rは上述のとおりの意味を有し、wは0または1に等しい整数であり、好ましくはwは0であり、RFは繰返し単位R(好ましくは本質的にこれからなる)を含む二価基であり、無作為に分布された前記繰返し単位は:
(i)−CFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(ii)−CFCFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−
のうちから選択される。
【0060】
本発明の第2の実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の潤滑剤を含む。
【0061】
好ましくは、本発明の第2の実施形態による組成物は、少なくとも1種(すなわち1種または2種以上の混合物)のパーフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤(すなわちパーフルオロオキシアルキレン鎖を含む潤滑剤、換言すると、少なくとも1つのエーテル結合および少なくとも1つのフルオロカーボン部分を有する繰返し単位を含む鎖)を含む。
【0062】
PFPE滑剤は油およびグリースに分類されることが可能であり;一般に、油は、20℃で、30〜30000cStの動粘性率(ASTM D445)を有する化合物であり;グリースは、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または例えばタルクといった無機化合物などの好適な増粘剤の付加によりこのような油から誘導されることが理解される。
【0063】
より好ましくは、本発明の第2の実施形態による組成物は、以下の群から選択される少なくとも1種の油を含む潤滑剤を含む。
(1)B−O−[CF(CF)CFO]b1’(CFXO)b2’−B’
式中:
−Xは−Fまたは−CFに等しく、
−BおよびB’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−b1’およびb2’、相互に同じかまたは異なっており、独立して、比率b1’/b2’が20〜1,000の間に含まれると共に、b1’+b2’が5〜250の範囲内にあるよう選択された≧0の整数であり;b1’およびb2’が共にゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、CA786877号明細書(モンテディソンS.P.A.(MONTEDISON S.P.A.))1968年4月6日に記載のとおりヘキサフルオロプロピレンの光酸化、ならびにGB1226566号明細書(モンテカティーニエディソンS.P.A.(MONTECATINI EDISON S.P.A.))1971年3月31日に記載されているとおり、末端基のその後の転換により入手することが可能である。
(2)CO−[CF(CF)CFO]o’−D
式中
−Dは−Cまたは−Cに等しく、
−o’は5〜250の整数である。
前記生成物は、米国特許第3242218号明細書(デュポン(DU PONT))1966年3月22日に記載のとおり、イオン性ヘキサフルオロプロピレンエポキシドオリゴマー化およびその後のフッ素での処理により調製することが可能である。
(3){CO−[CF(CF)CFO]dd’−CF(CF)−}
式中
−dd’は2〜250の整数である。
前記生成物は、米国特許第3214478号明細書(デュポン(DU PONT))1965年10月26日に報告されているとおり、ヘキサフルオロプロピレンエポキシドのイオン性テロメリゼーションおよびその後の光化学的二量体化により入手することが可能である。
(4)C’−O−[CF(CF)CFO]c1’(CO)c2’(CFX)c3’−C’’
式中
−Xは−Fまたは−CFに等しく、
−C’およびC’’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−c1’、c2’およびc3’は、相互に同じかまたは異なっており、独立して、およびc1’+c2’+c3’が5〜250の範囲内であるような≧0の整数であり;c1’、c2’およびc3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、米国特許第3665041号明細書(モンテディソンSPA(MONTEDISON SPA))1972年5月23日に記載されているとおり、CおよびCの混合物の光酸化ならびに、その後の、フッ素での処理により製造されることが可能である。
(5)D−O−(CO)d1’(CFO)d2’−D’
式中
−DおよびD’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−d1’およびd2’は、相互に同じかまたは異なっており、独立して、比率d1’/d2’が0.1〜5の間に含まれると共に、d1’+d2’が5〜250の範囲内にあるような≧0の整数であり;d1’およびd2’が共にゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、米国特許第3715378号明細書(モンテディソンSPA(MONTEDISON SPA))1973年2月6日において報告されているとおりCの光酸化、および米国特許第3665041号明細書(モンテディソンSPA(MONTEDISON SPA))1972年5月23日に記載されているとおりその後のフッ素での処理により製造することが可能である。
(6)G−O−(CFCFC(Hal’)O)g1’−(CFCFCHO)g2’−(CFCFCH(Hal’)O)g3’−G’
式中
−GおよびG’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−Hal’は、出現毎に同等または異なり、FおよびCl、好ましくはFのうちから選択されるハロゲンであり、
−g1’、g2’、およびg’3は、相互に同等または異なっており、独立して、g1’+g2’+g3’が5〜250の範囲内であるような≧0の整数であり;g1’、g2’およびg3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている。
前記生成物は、欧州特許第148482A号明細書(ダイキン工業株式会社(DAIKIN INDUSTRIES))1985年7月17日に記載されているとおり、2,2,3,3−テトラフルオロオキシエタンを重合開始剤の存在下に開環重合して、式:−CHCFCFO−の繰返し単位を含むポリエーテルを得、任意により、前記ポリエーテルをフッ素化および/または塩素化することにより調製され得る。
(7)L−O−(CFCFO)l’−L’
式中
−LおよびL’は、相互に同じかまたは異なっており、−Cまたは−Cから選択され、
−l’は、5〜250の範囲の整数である。
前記生成物は、米国特許第4523039号明細書(テキサス大学(THE UNIVERSITY OF TEXAS))1985年6月11日において報告されているとおり、ポリエチレンオキシドを例えば元素フッ素でフッ素化する工程、および任意により、熱的に断片化して、フッ素化ポリエチレンオキシドを得る工程を含む方法により入手することが可能である。
(8)R−{C(CF−O−[C(Rkk1’C(R−O}kk2’−R
式中
−Rは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
−Rは、−Fまたは1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基に等しく、
−kk1’は1〜2の整数であり、
−kk2’は、5〜250の範囲内の数字を表す。
前記生成物は、国際公開第87/00538号パンフレット(ラゴー(LAGOW)ら)1987年1月29日に記載されているとおり、ヘキサフルオロアセトンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エポキシ−ブタンおよび/あるいはトリメチレンオキシド(オキセタン)から選択される酸素含有環式コモノマーまたはその置換誘導体との共重合、ならびにその後の、得られるコポリマーの過フッ素化により製造されることが可能である。
【0064】
以下の好ましい滑剤が特に本発明の目的に好適である。
−ソルヴェイソレクシスS.p.A.(SOLVAY SOLEXIS,S.p.A.から商品名フォムブリン(FOMBLIN)(登録商標)(タイプY、M、W、またはZ)で市販されているもの;この系統の滑剤は、一般に、下記式の一方に従う少なくとも1種の油(すなわち、1種のみまたは2種以上の油の混合物)を含むもの、
【0065】
【化13】

【0066】
−デュポンドゥヌムール(Du Pont de Nemours)から、商品名クライトックス(KRYTOX)(登録商標)で市販されているものであって、前記滑剤は、一般に、少なくとも1種の(すなわち1種または2種以上の混合物)低分子量、フッ素末端封止された、以下の化学構造を有するヘキサフルオロプロピレンエポキシドのホモポリマーを含むもの、
【0067】
【化14】

【0068】
−ダイキン(Daikin)から商品名デムナム(DEMNUM)(登録商標)で市販されているものであって、前記滑剤は、一般に、下記式に従う少なくとも1種の(すなわち1種または2種以上の混合物)油を含むもの、
【0069】
【化15】

【0070】
より好ましい滑剤は、上述のとおり、商品名フォムブリン(FOMBLIN)(登録商標)で市販されているものである。
【0071】
本発明のさらに他の目的は、前記環式ホスファゼン化合物またはその組成物の滑剤における耐磨耗添加剤としての使用である。
【0072】
環式ホスファゼン化合物またはその組成物を用いることが可能である滑剤は、本明細書中に上述されているものである。
【0073】
本発明が、本発明の範囲を単に例示すると共にその範囲を制限しないことを目的とする、以下の実施例を参照してよりここに詳細に説明される。
【実施例】
【0074】
実施例1:六置換ホスファゼン(加水分解前駆体として用いられる)の合成
式:TO(CFCFO)p#(CFO)q#−CF−CHOHに従う1160g(2.15当量)のフッ素化アルコール(式中、T=CFであると共に、pおよびqは前記アルコールの数平均分子量が539であるよう選択される)、40重量%でのBuOHの水溶液43.2g、溶剤としての2900gのガルデン(GALDEN)(登録商標)HT110および125gのパークロロシクロトリホスファゼン(2.15当量)を、機械的攪拌機、温度計および還流凝縮器を備える10リットルガラス反応器中に導入した。30重量%でのKOHの水溶液2020gを、次いで、激しい攪拌下に導入した。反応混合物を60℃で加熱すると共に攪拌下に約6時間維持した。冷却後、260gのイソブチルアルコールおよび1400gの水を添加し、得られた混合物を30分間攪拌した。次いで、この相を分離させ、重い有機相を回収し、500gのメチルアルコールで洗浄した。より重い有機相の分離の後、溶剤を蒸留し、生成物を100℃で1時間ストリップした。1112gの生成物が92%の収率で得られた。IRおよびNMR分析(31P、H、13Cおよび19F)で、この生成物は、下記構造に従うことを確認した。
【0075】
【化16】

【0076】
式中、pおよびqは、上述の意味を有する。
【0077】
実施例2:極性基を含む五置換ホスファゼンの合成
上記実施例1に記載のとおり調製した7gの六置換ホスファゼンを、機械的攪拌機、温度計および還流凝縮器を備えるガラス反応器中に、3.3gの40重量%KOH水溶液および3.2gのエタノールと一緒に導入した。混合物を、60〜80℃で激しい攪拌下に反応させた。
【0078】
加水分解反応の後に31P−NMRを続けた。8時間後、この反応は完了した。次いで、反応混合物を室温に冷却させると共に、このように形成された2つの不混和性の相を分離した。重いフッ素化物相を回収し、減圧下での分留により溶剤残渣から分離した。
【0079】
下記式に従う5.25g(純度:95%)の生成物を得た。
【0080】
【化17】

【0081】
実施例3〜6−四球磨耗機械テスト
実施例1および2のホスファゼンを、そのまままたは混和物中でパーフルオロポリエーテル潤滑油に添加し、得られた組成物、ならびに基準としての純粋な潤滑油を、それらの耐磨耗特性について評価した。耐磨耗特性はASTM D4172規格に準拠して評価した。
【0082】
それ故、予め、n−ヘキサン(15分)中に浸漬し、その後、ガルデン(GALDEN)(登録商標)TM HT55(15分の間)中に浸漬して洗浄することにより清浄にすると共に、次いで乾燥させた、12.7mmの直径、25EP(余剰研磨)度を有する3つのAISI N.E−52100鋼球を、3点で接触するような好適なキャビティを備えるコンテナ中に入れ、次いで、これらを、テストされるべき潤滑剤組成物で被覆した。
【0083】
同様の前処理に供された同一の特性を有する4つ目の球を、これを回転させる電気式エンジンに接続し、3つの既述の球上に40+/−0.2kgf(392N)の荷重で配置した。全体を組み立て、閉塞し、および75°+/−2℃に加熱した。一旦前記温度に達したら、3つの基準上に位置された4つ目の球を、1200+/−60rpmの速度で60+/−1分間の間回転させた。テストの終了時に、コンテナを分解し、潤滑剤組成物を除去し、その中に含まれた3つの球の磨耗を、0.01mmの精度を有する光学顕微鏡法により評価した。mmで表記される磨耗値を、キャビティから取り出すことなく、各球について計測した回転方向の磨耗直径および第1の直径に直交する直径の6回の読み取り値の算術平均として得た。
結果が下記表1にまとめられている。
【0084】
実施例7:極性基を含む五置換ホスファゼンの合成(二価カチオン)
上記実施例2に記載のとおり調製した25gの五置換ホスファゼンを、機械的攪拌機、温度計および還流凝縮器を備えるガラス反応器に、3.35gの12重量%HCl水溶液および3.5gのメタノールと一緒に導入した。混合物を、80℃で激しい攪拌下に1時間反応させた。
【0085】
次いで、反応混合物を室温に冷却させ、このように形成された2つの不混和性の相を分離した。重いフッ素化物相を回収し、メタノール(2×10g)で2回洗浄し、最後に、減圧下での分留により溶剤残渣から分離した。式:
【0086】
【化18】

【0087】
に従う得られた生成物を、機械的攪拌機を備えるガラス反応器に、0.46gのCa(OH)、250mLの水、250gのメタノールおよび400gのガルデン(GALDEN)(登録商標)HT110と一緒に導入した。室温で30分間激しく攪拌した後、このように形成された2つの不混和性の相を分離した。重いフッ素化物相を回収し、および最後に、減圧下での分留により溶剤残渣から分離した。下記式に従う24g(純度:95%)の生成物を得た。
【0088】
【化19】

【0089】
実施例8−四球磨耗機械テスト
実施例7のホスファゼンをパーフルオロポリエーテル潤滑油に添加し、これらの混合物を、実施例3〜6に記載の手法に準拠してその耐磨耗特性について評価した。データが下記表1にまとめられている。
【0090】
【表1】

【0091】
フォムブリン(FOMBLIN)(登録商標)YR1800は、以下の構造を有すると共に、おおよそ7250の数平均分子量および20℃で1850cStの動粘性率(ASTM D445)を有する潤滑剤である:CFO(CO)(CFO)CF(式中、n/m=20である)。
【0092】
上記表1にまとめられたデータは、明らかに、極性基を含む本発明の環式ホスファゼン化合物は、パーフルオロポリエーテル滑剤中に添加剤として用いられた場合に優れた耐磨耗特性を有し;しかも、従来の過置換ホスファゼンと組み合わされて用いられる場合、混合物のよりよい分散性の結果、これらはまた、前記添加剤組成物の耐磨耗特性を実質的に増強することが可能であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(II)
【化1】

(式中:
−RおよびR’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、独立して、繰返し単位R(好ましくは本質的にこれからなる)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(OF)]を表し、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖の全体に無作為に分布された前記繰返し単位は、
(i)−CFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(ii)−CFCFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−
のうちから選択され、
−ZおよびZ’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、式−Oの極性基(式中、Mは、水素;一価の金属、好ましくはLi、Na、Kから選択されるアルカリ金属;式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子あるいは任意によりフッ素化されているC〜C12炭化水素基である)のうちから選択される)、または式−OM’2+の極性基(式中、M’は、二価の金属、好ましくはCaおよびMgから選択されるアルカリ土類金属である)[基(P)]を表し、
−nは、1〜3、好ましくは1に等しい整数であり、
−nZ’は、1〜4、好ましくは1に等しい整数であり、
−nf’は、nZ’+nf’が8と等しくなるような整数であり、
−nは、n+nが6と等しくなるような整数である)に従う環式ホスファゼン化合物。
【請求項2】
基RO−およびR’O−が:
(a)T−O−(CFCFO)p’(CFO)q’−J−
(式中:
−Jは、式−CE’(Y)CEO(CHCHO)s1−または−CE’YO(CHCHO)s2−の基であり(式中、s1およびs2は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、0〜5の整数であり、YはFまたはCFであり、ならびにEおよびE’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、F、HおよびCFのうちから選択され、好ましくは、EはHであると共にE’はFまたはCFである)、
−Tは、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T)、または−(CF−CF(T)(T)から選択され(式中、fは0または1であり、TおよびTは、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−p’およびq’は、p’+q’が1〜100の範囲になると共に、比率q’/p’が0.1〜10の間に含まれるような数字である)
(b)T’−O−(CFCF(CF)O)r’−(CFCFO)s’−(CFYO)t’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−T’は、−CF、−CFY−CF、−CF(Y)CF(Y)CF、−(CFY)−CFY(T’)、または−(CFY)−CY(T’)(T’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’およびT’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−YはFまたはCFであり、
−r’、s’およびt’は、r’+s’+t’が1〜100の範囲であり、比率t’/(r’+s’)が0.01〜0.1の間に含まれるような数字である)、
(c)T’’−(OCFY)t1’’(OCu1’’−OR’’O−(CO)u2’’(CFYO)t2’’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−R’’はC〜Cパーフルオロアルキレンであり、
−YはFまたはCFであり、
−T’’は、−CF、−CFY−CF、−CF(Y)CF(Y)CF、−(CFY)−CFY(T’’)、または−(CFY)−CY(T’’)(T’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’およびT’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−t1’’、u1’’、t2’’、u2’’は、(t1’’+u1’’+t2’’+u2’’)が1〜100の範囲内であると共に、(t1’’+t2’’)/(u1’’+u2’’)が0.01〜0.1の間に含まれるような数字である)、
(d)T’’’−CFCFO−(CF−(CFx’CFO)v’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−T’’’は、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T’’’)、または−(CF−CF(T’’’)(T’’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’’およびT’’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−v’は、1〜100の範囲内の数字であると共に、x’は1または2である)、
(e)T’’’’−CFCH−(OCFCFCHw’−OR’’O−(CHCFCFO)w’−J−
(式中:
−Jは上述と同一の意味を有し、
−R’’は上記のとおりであり、
−T’’’’は、−CF、−CFCF、−CFCFCF、−(CF−CF(T’’’’)、または−(CF−CF(T’’’’)(T’’’’)から選択され(式中、fは0または1であり、T’’’’およびT’’’’は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、Cl、BrおよびHのうちから独立して選択される)、
−w’は1〜100の範囲内の数字である)
のうちから選択される、請求項1に記載の環式ホスファゼン化合物。
【請求項3】
式(III)または(IV)
【化2】

(式中:
−Z、Z’、n、nZ’、nf’、は、上記の定義と同じ意味を有し、
−RO−およびRO−基は、相互に同じかまたは異なっており、出現毎に、式:T−O−(CFCFO)p*(CFO)q*−CF−CHO(CHCHO)s*−の(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖を独立して表し、式中、
−sは0〜5の数字であり、
−Tは、−CF、−CFCF、−CFCFCFから選択され、
−pおよびqは、p+qが1〜50の範囲内であると共に、比率q/pが0.1および10の間に含まれるような数字である)に従う請求項2に記載の環式ホスファゼン化合物。
【請求項4】
式(V)または(V−ビス)
【化3】

(式中:
−MおよびM’は、上記の定義と同じ意味を有し、好ましくは、Mは、Li、Na、Kから選択されるアルカリ金属、または式NRのアンモニウムラジカル(式中、R、R、R、Rの各々は、独立して、水素原子またはC〜C12炭化水素基であり、好ましくはR=R=R=R=n−ブチルである)であり、ならびに好ましくはM’は、Ca、Mgから選択されるアルカリ土類金属であり、より好ましくはM’はCaであり、
−pi(i=1〜5)およびqi(i=1〜5)の各々は、独立して、pi+qiが2〜25の範囲内であると共に、比率qi/piが0.1〜10の間に含まれるような≧0の整数である)に従う請求項3に記載の環式ホスファゼン化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の環式ホスファゼンを調製する方法。
【請求項6】
(i)式(VI)または(VII):
【化4】

(式中、Halは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうちから選択されるハロゲンを表し、好ましくはHalは塩素である)
のパーハロホスファゼンと、式ROHのフッ素化アルコール(式中、Rは上述の意味を有する)との、塩基の存在下での、P−Hal部分をP−OR部分に変換する反応、
(ii)−P−Z部分(式中Zは上述の意味を有する)を得るための少なくとも1つの−P−OR部分/分子の選択的加水分解
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の環式ホスファゼン化合物または請求項5あるいは6に記載の方法により調製された環式ホスファゼン化合物を含む組成物。
【請求項8】
上述のタイプZおよびZ’の極性基を含まない他の環式ホスファゼン化合物(ホスファゼン(NP))を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
下記式(VIII)〜(X):
【化5】

(式中、Rは上述のとおりの意味を有し、wは0または1に等しい整数であり、好ましくはwは0であり、RFは繰返し単位R(好ましくは本質的にこれからなる)を含む二価基であり、無作為に分布された前記繰返し単位は:
(i)−CFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(ii)−CFCFXO−(式中、XはFまたはCFである)、
(iii)−CFCFCFO−、
(iv)−CFCFCFCFO−
のうちから選択される)
に従うホスファゼン(NP)を含む請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
以下の群
(1)B−O−[CF(CF)CFO]b1’(CFXO)b2’−B’
(式中:
−Xは−Fまたは−CFに等しく、
−BおよびB’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−b1’およびb2’は、相互に同じかまたは異なっており、独立して、比率b1’/b2’が20〜1,000の間に含まれると共に、b1’+b2’が5〜250の範囲内にあるよう選択された≧0の整数であり;b1’およびb2’が共にゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている)
(2)CO−[CF(CF)CFO]o’−D
(式中
−Dは−Cまたは−Cに等しく、
−o’は5〜250の整数である)
(3){CO−[CF(CF)CFO]dd’−CF(CF)−}
(式中
−dd’は2〜250の整数である)
(4)C’−O−[CF(CF)CFO]c1’(CO)c2’(CFX)c3’−C’’
(式中
−Xは−Fまたは−CFに等しく、
−C’およびC’’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−c1’、c2’およびc3’は、相互に同じかまたは異なっており、独立して、c1’+c2’+c3’が5〜250の範囲内であるような≧0の整数であり;c1’、c2’およびc3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている)
(5)D−O−(CO)d1’(CFO)d2’−D’
(式中
−DおよびD’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−d1’およびd2’は、相互に同じかまたは異なっており、独立して、比率d1’/d2’が0.1〜5の間に含まれると共に、d1’+d2’が5〜250の範囲内にあるような≧0の整数であり;d1’およびd2’が共にゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている)
(6)G−O−(CFCFC(Hal’)O)g1’−(CFCFCHO)g2’−(CFCFCH(Hal’)O)g3’−G’
(式中
−GおよびG’は、相互に同じかまたは異なっており、−CF、−Cまたは−Cから選択され、
−Hal’は、出現毎に同等または異なり、FおよびCl、好ましくはFのうちから選択されるハロゲンであり、
−g1’、g2’、およびg’3は、相互に同等または異なっており、独立して、g1’+g2’+g3’が5〜250の範囲内であるような≧0の整数であり;g1’、g2’およびg3’の少なくとも2つがゼロでない場合、異なる繰返し単位は、一般に、鎖に沿って統計的に分布されている)
(7)L−O−(CFCFO)l’−L’
(式中
−LおよびL’は、相互に同じかまたは異なっており、−Cまたは−Cから選択され、
−l’は、5〜250の範囲の整数である)
(8)R−{C(CF−O−[C(Rkk1’C(R−O}kk2’−R
(式中
−Rは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
−Rは、−Fまたは1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基に等しく、
−kk1’は1〜2の整数であり、
−kk2’は、5〜250の範囲内の数字を表す)から選択される少なくとも1種の油を含む潤滑剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
滑剤中における耐磨耗添加剤としての、請求項1〜4のいずれか一項に記載の環式ホスファゼン化合物または請求項5あるいは6に記載の方法により調製された環式ホスファゼン化合物または請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−541427(P2009−541427A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517143(P2009−517143)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056272
【国際公開番号】WO2008/000706
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】