説明

環形蛍光ランプ、照明装置および環形蛍光ランプの製造方法

【課題】膜はがれや亀裂がなく、外側および内側の両方に最適な被着量の蛍光体層を形成し、バルブの曲げ工程における熱による劣化を抑制した蛍光体層を具備した環形蛍光ランプおよび環形蛍光ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】環形に形成され、放電媒体が封入されるとともに両端に電極手段が封装された透光性バルブと;単位面積あたりの被着量の最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満となるように前記透光性バルブの内面側に形成された蛍光体層と;を具備したことを特徴とする。この構成によって、環中心に対して内側と外側の蛍光体層の被着量をそれぞれ最適に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環形蛍光ランプ、この環形蛍光ランプを用いた照明装置およびこの環形蛍光ランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、一般にガラスバルブの内面側に蛍光体層を形成し、かつ、ガラスバルブの内部に放電媒体を封入し、ガラスバルブの内部に放電が生起するように一対の電極を配設した構造を備えている。ところで、蛍光体層は、蛍光体、溶媒、バインダーおよび無機質結着剤からなる蛍光体懸濁液を調整して、これを塗布し、乾燥焼成することによって形成するのが一般的な方法である。また、環形蛍光ランプの場合は直管状ガラスバルブの内面に予め蛍光体層を形成した後にバルブを軟化温度まで加熱して、円環状に曲成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−319468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガラスバルブを円環状に曲成すると、最外側のバルブの長さが伸びることになる。このとき、環最外側に予め形成された蛍光体層は膜はがれや亀裂が発生しやすくなる。
【0004】
また、蛍光体の被着量はガラスバルブの曲成により環最外側と環最内側とで異なるため、環最外側および環最内側の両者を最適な被着量の蛍光体層を形成することが困難である。被着量が多いと蛍光体層が可視光を吸収して光損失となり、少ないと可視光の変換効率が低下するため、最適な被着量の蛍光体層が形成されないとランプ効率が低下する原因になる。
【0005】
さらに、蛍光体層を形成した後にガラスバルブを軟化温度まで加熱して曲げ加工するため、蛍光体が劣化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、膜はがれや亀裂がなく、環最外側および環最内側の両者に最適な被着量で蛍光体層を形成した蛍光ランプまたはバルブの曲げ工程における熱による蛍光体層の劣化を抑制した環形蛍光ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の環形蛍光ランプは、環形に形成され、放電媒体が封入されるとともに両端に電極手段が封装された透光性バルブと;単位面積あたりの被着量の最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満となるように前記透光性バルブの内面側に形成された蛍光体層と;を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の照明装置は、請求項1に記載の環形蛍光ランプと;この蛍光ランプが取付けられた照明器具本体と;前記環形蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;を具備したことを特徴とする
【0009】
請求項3記載の環形蛍光ランプの製造方法は、環状に形成された透光性バルブの内面を帯電させる第1の工程と;前記透光性バルブの内部に蛍光体吐出ノズルを挿入して蛍光体塗布剤を蛍光体吐出ノズルから吐出し帯電させて静電塗装により透光性バルブの内面側に蛍光体塗布剤層を形成する第2の工程と;前記透光性バルブに放電手段を配設して、排気、封止を行う第3の工程と;からなることを特徴とする。
【0010】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0011】
透光性バルブは、コストが低いガラスを用いるのが好適である。なお、ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、などを適宜選択して用いることができる。
【0012】
蛍光体層は、透光性バルブの内面側に配設されて放電媒体が放電したときに放射する紫外線を可視光に波長変換する手段である。なお、透光性バルブの内面側とは、透光性バルブの内面に直接蛍光体層を形成する態様、ならびに保護膜または反射膜などを介して透光性バルブの内面に間接的に蛍光体層を形成する態様、のいずれをも含む意味である。また、蛍光体は、単一種を、または複数種の蛍光体を混合して、用いることができる。例えば、赤色・緑色・青色発光の各蛍光体を混合してなる白色発光の3波長発光形蛍光体を用いることができる。また、蛍光体層は単一の層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。後者の場合、層ごとに蛍光体の種類が異なっていてもよい。さらに、蛍光体層と蛍光体層との間に蛍光体ではない他の物質からなる第3の層たとえば導電層、金属酸化物を主体とする放電状態改善層などが介在していてもよい。
【0013】
また、蛍光体層は単位面積あたりの被着量が最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満である。従来のようにガラスバルブの曲成前に蛍光体を塗布する場合であっても鉛直方向に吊り下げたバルブの一方側から塗布した後、これらを反転させて他方側からも同様に蛍光体を塗布して2層化すれば、ガラスバルブの長手方向にわたって略均一な被着量の蛍光体層を形成することができる。しかし、ガラスバルブを曲成することによって環最外側と環最内側とでは被着量が異なってしまう。例えば定格電力が15〜40Wの環形蛍光ランプの場合、環内径と環外径の比が1.08〜1.48程度であり、同一管断面の内周面に形成される蛍光体層の単位面積あたりの被着量の差は最も小さくて9%であった。一方、点灯試験の結果、同一管断面の内周面における単位面積あたりの被着量が最も多い部位と最も少ない部位との差を8%未満にすれば、従来に比べ内面全体の被着量を最適化することができ、ランプ効率を向上させることができることが確認された。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の環形蛍光ランプによれば、単位面積あたりの被着量が最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満となるようにバルブの内面に蛍光体層が形成されている。このため、例えば環最内側と環最外側との蛍光体層の被着量の差を最適化することによりランプ効率を向上させることができる。
【0015】
請求項2記載の照明装置によれば、請求項1の環形蛍光ランプの特徴を備えた照明装置を提供することができる。
【0016】
請求項3記載の環形蛍光ランプの製造方法によれば、透光性バルブを環状に形成した後に蛍光体層を形成するので、蛍光体層に膜はがれや亀裂が発生することがなく、蛍光体層の熱劣化も抑制できる。また、静電塗装によって蛍光体層を形成するので、塗装面が環状に屈曲していても被着量を略均一に塗ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明による環形蛍光ランプを示す正面図、図2は図1の断面図である。
【0019】
図1において、環形蛍光ランプ1は、環状に曲成加工され、かつ水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性バルブとしてのガラスバルブ2からなる。ガラスバルブ2の両端側には封入ガス中で陽光柱放電を維持する後述するフィラメント電極を有するステムがそれぞれ封装されている。さらに、ガラスバルブ2の両端部には端子ピン5を導出した口金6が覆うように配設されている。
【0020】
図2に示すように、ガラスバルブ2の内壁面には保護膜7が形成され、保護膜7上に被着量が略均一な蛍光体層8が形成されている。従来は、透光性バルブの環中心に対して内側と外側とで蛍光体層の被着量が異なっていた。このため、内側で最適な被着量にしようとすると外側が薄くなり、可視光への変換効率が低下する。一方、外側を最適な被着量にすると内側が厚くなり過ぎ可視光損失が大きくなる。このためいずれの場合にもランプ効率の低下が発生していた。
【0021】
しかし、本発明によると単位面積あたりの付着量が最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満となるように透光性バルブの内面に蛍光体層を形成したので従来の環形蛍光ランプに比べてランプ効率が向上する。
【0022】
保護膜としては金属酸化物微粒子から構成したものが好適であり、金属酸化物微粒子には、アルミナ(Al2O3)の他にシリカ(SiO2)や酸化チタン(TiO2)など周知のものを用いることが可能である。
【0023】
図3は、本発明による環形蛍光ランプを搭載した照明器具の断面図である。
【0024】
Lは天井直付形の照明器具である。11は器具本体で、この器具本体11は、外観が円形でかつ薄形に形成されている。器具本体11の中央には内部に収納空間を有する収納部13が形成され、この収納部13内にインバータ点灯回路からなる高周波点灯装置14が配設されている。収納部13の周囲には、蛍光ランプ1、10が同心円状に配設されている。なお、器具本体11には、2本の各蛍光ランプ1、10の給電、保持を行う図示しないソケットホルダが配設されている。
【0025】
器具本体11には、器具本体11の下方および側方を覆ってセード15が取着される。このセード15は、透光性を有する乳白色材にて、下方へ大きな円弧面がなだらかに突出する薄形状に形成されており、周縁部には器具本体11に取付けられる図示しない取付部が形成されている。
【0026】
蛍光ランプ1、10の点灯時には、蛍光ランプ1、10から発せられた光がセード15を透光して照明される。
【0027】
次に、本発明による環形蛍光ランプの製造方法について説明する。
【0028】
図4は、本発明による環形蛍光ランプの製造方法の第1の実施形態の工程を示すブロック図である。
【0029】
まず、各工程に入る前に長尺な直管状の透光性バルブを用意する。この透光性バルブ2は、内壁面を帯電させることができる透光性の物質であればどのような物質を用いてもよい。例えばホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスなどのガラス材を用いることができる。
【0030】
透光性バルブ2は、少なくとも蛍光体塗布剤層8aを形成する段階において、環状または螺旋状に形成されている。保護膜は、膜剥れや亀裂などを防止するために透光性バルブを環状または螺旋状に形成した後に形成するのが好ましいが、直管の状態で内面に保護膜を形成した後に透光性バルブ2を環状または螺旋状に成形してもよい。
【0031】
また、透光性バルブ2は蛍光体吐出ノズル20を挿入することができる程度の開口を少なくとも一端に備えている必要がある。
【0032】
図4(a)は、透光性バルブ2を帯電させる第1の工程を示している。ガラス材は、一般に加熱によってアルカリイオンによる導電率が上昇する。このとき、ガラスの表面に吸着した水酸基(OH)が脱離することによって、ガラス表面が正に帯電すると考えられる。直管状のガラスバルブは環状に曲成加工されるときに軟化温度まで加熱されて、帯電に必要な温度まで十分に上昇するため、曲成加工すると同時に帯電工程が完了する。しかし、時間とともに帯電した透光性バルブ2は大気中の負イオンを吸着することによって除電される。このため、曲成加工から時間が経過する場合には再度加熱して帯電させてもよい。
【0033】
図4(b)は、静電塗装により蛍光体塗布剤層8aを形成する第2の工程を示す。
【0034】
静電塗装は、透光性バルブ2の内面をたとえば正に帯電し、蛍光体吐出ノズル20から吐出する蛍光体塗布剤を負に帯電させ、静電界により加速して透光性バルブ2の内面側に被着させる方法である。
【0035】
本発明による製造方法の第1の実施形態では、透光性バルブ2が環状に形成されているため、一端部と他端部との離間寸法が限定されている。このため、蛍光体吐出ノズル20を透光性バルブ2の内部深くまで挿入することが難しい。そこで、一端部に蛍光体吐出ノズル20を配設し、負に帯電させた蛍光体塗布剤8を噴射する。また、他端部には排気装置21を設置し排気する。この構成であれば、一端側から噴射した蛍光体塗布剤8を均一に他端側まで到達させることができる。
【0036】
透光性バルブ2は、帯電させるために温度が上昇した状態で蛍光体塗布剤8が塗布される。このため、蛍光体塗布剤層8は特に焼成工程などを行うことなく内壁面に強固に定着することができる。
【0037】
蛍光体はバルブ2の内面への塗着と同時に接触点の一部は極性を失うが、他の部分は帯電している。このため、層の厚さが増してくると層の表面が蛍光体の帯電極性と同じになり、同極の蛍光体が反発することになり、それ以上は塗着しなくなる。この特性により厚さの均一な層が形成される。しかし、一端部に蛍光体吐出ノズル20を固定して噴射する場合、蛍光体塗布剤8が一端側に多く存在するため、他端側に蛍光体塗布剤層8aを形成する速度が一端側に比べ遅くなる。そこで、第1の実施形態では他端部から排気を行うことによって、他端側に蛍光体塗布剤8を多く飛散させることができる。これによって、塗布時間が短縮されるとともに、さらに均一な膜厚を得ることができる。
【0038】
蛍光体塗布剤8は、シリカ(SiO2)を2質量%含有する三波長蛍光体を主体とする粉体から構成されている。シリカ(SiO2)は、蛍光体同士を結着する結着材として機能するとともに帯電することによって蛍光体を透光性バルブ2の内壁面へ被着しやすくする効果がある。帯電による効果はシリカ(SiO2)の方が高いが、アルミナ(Al2O3)を用いてもよく、これらを混合させることもできる。
【0039】
三波長発光形蛍光体のように発光色の異なる複数種の蛍光体を含む蛍光体塗布剤層8aを形成する場合、混合比率は所望により適宜設定することができる。また、それぞれの発光色ごとに粒径の異なる蛍光体を用意して、全ての種類の蛍光体を混合して蛍光体塗布剤層8aを形成してもよい。さらにまた、これらの蛍光体を混合せずに単一の蛍光体をそれぞれ層になるように形成し、重ねて形成してもよい。
【0040】
環形蛍光ランプは曲成加工する必要があるため内面に形成した蛍光体層は膜はがれや亀裂などの問題が発生しやすい。このため従来は、蛍光体層の膜はがれや亀裂を防止するために、蛍光体塗布剤に結着剤としてCa2P2O7やホウ素を含む酸化物などを用いていた。例えばホウ素を含む酸化物としては、ホウ素酸化物B2O3およびホウ素を含むアルカリ土類金属の複合酸化物などがある。また、ホウ素を含むアルカリ土類金属の複合酸化物としては、たとえばBaO・0.45CaO・2.57B2O3が使用されてきた。これらは発光管を曲成可能な温度まで上昇させると溶融し、蛍光体間を強固に固着することができるため、比較的膜はがれや亀裂などの不具合を抑制することができる。しかし、これらの結着剤はそれ自体が紫外線を吸収する、蛍光体と化学的に反応し蛍光体を劣化させる、紫外線によって着色するなどの不具合があった。このため、環形蛍光ランプは直管形蛍光ランプに比べて発光効率、光束維持率の点で不利であった。
【0041】
しかし、本発明のように透光性バルブ2を環状に曲成加工した後に内面に蛍光体層8を形成する構成であれば、蛍光体同士をそれほど強固に結着する必要がないため、アルミナなどの結着剤を含有する程度で膜強度を確保することができる。
【0042】
図4(c)は、透光性バルブ2に放電手段としてフィラメント電極3を配設して、排気を行う第3の工程を示す。
【0043】
まず、透光性バルブ2の両端にフィラメント電極3を有するステム4、4’を封着する。このとき、一端側のステム4には排気バルブ4aが配設されており透光性バルブ2の内側と連通している。次に、透光性バルブ2を排気した後、放電媒体を封入する。
【0044】
透光性バルブ2の両端部は放電手段としてのフィラメント電極3を有するステム4が封装されるので、封着性を考慮すると両端部には蛍光体塗布剤層8aは形成しないことが望ましい。透光性バルブ2の端部に蛍光体塗布剤が付着したときには、回転ブラシなどによって機械的に擦り取られる。
【0045】
図4(d)は、透光性バルブ2を封止する第4の工程を示す。排気バルブ4aの一部を過熱溶断して封止し、フィラメント電極3から導出されたアウターリード線3aと口金6に配設された端子ピン5を接続し、透光性バルブ2の両端を覆うように口金6を配設する。
【0046】
図5は、本発明による環形蛍光ランプの製造方法の第2の実施形態の工程を示すブロック図である。第2の実施形態は、蛍光体塗布剤層8aを形成する工程が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一の構成のものについては説明を省略する。
【0047】
図5(a1)および図5(a2)は、透光性バルブ2を帯電させる第1の工程を示す。図5(a1)は、透光性バルブ2の正面図、図5(a2)は図5(a1)の側面図である。
【0048】
まず、直管状のガラスバルブを軟化温度まで加熱し螺旋状に曲成加工する。このとき、ガラスバルブは加熱されることによって正に帯電するので、曲成加工すると同時に帯電工程が完了する。
【0049】
図5(b1)および図5(b2)は、静電塗装により蛍光体塗布剤層8aを形成する第2の工程を示す。図5(b1)は、透光性バルブ2の正面図、図5(b2)は図5(b1)の側面図である。
【0050】
蛍光体塗布装置22は、螺旋状に形成されたケーブル23およびこのケーブルの先端に配設された蛍光体吐出ノズル20からなる。蛍光体吐出ノズル20を透光性バルブ2の一端から他端まで挿入し、負に帯電させた蛍光体塗布剤8を噴射しながら一端側に移動させる。このとき、ケーブルは透光性バルブ2と同形状に形成されているので、蛍光体塗布装置と透光性バルブ2を相対的に回転させることによって、蛍光体吐出ノズル20を挿入したり取り出すことができる。
【0051】
そして、蛍光体塗布剤層aを形成後、透光性バルブ2を円環状に成形する。このとき、透光性バルブ2を変形させるためにバルブの温度を上げておく必要がある。しかし、直管状のバルブを円環状または螺旋状に曲成するとき程加熱する必要はなく、またバルブ2の変形度合いも少ないので蛍光体塗布剤層の亀裂や膜はがれおよび蛍光体の熱による劣化はほとんどない。この螺旋状のバルブを円環状に形成する工程は、次工程である排気工程時に同時に行ってもよい。
【0052】
バルブを螺旋状に曲成すると、その内周側よりも外周側の表面積が大きくなる。このため、バルブ断面に対して直交する向きに蛍光体塗布剤8を噴射すると内周側よりも外周側に蛍光体塗布剤層8aが形成される速度が遅くなる。そこで、蛍光体塗布剤8の噴射量を外周側が多くなるように非対称とすることで螺旋状に形成された透光性バルブ2の内周側および外周側に蛍光体塗布剤層8を形成する速度を均一にすることができる。噴射量は、噴射の向き、噴射口の位置、蛍光体吐出ノズル20の形状などをそれぞれ設定することによって非対称にすることが可能である。
【0053】
図5(c)は、透光性バルブ2に放電手段としてフィラメント電極3を配設して、排気を行う第3の工程を示す。
【0054】
透光性バルブ2の両端にフィラメント電極3を有するステム4、4’を封着する。このとき、一端側のステム4には排気バルブ4aが配設されており透光性バルブ2の内側と連通している。次に、透光性バルブ2を排気した後、放電媒体を封入する。
【0055】
図4(d)は、透光性バルブ2を封止する第4の工程を示す。排気バルブ4aの一部を過熱溶断して封止し、フィラメント電極3から導出されたアウターリード線3aと口金6に配設された端子ピン5を接続し、透光性バルブ2の両端を覆うように口金6を配設する。
【0056】
次に、上記各実施形態による作用効果を説明する。
【0057】
環形蛍光ランプの蛍光体層を静電塗装によって形成するので、蛍光体層の単位面積あたりの被着量が最も多い部分と最も少ない部分との差を8%未満にすることができる。このため、蛍光体層の単位面積あたりの被着量を最適な量に対して所定の範囲内にすることができる。また上記環形蛍光ランプの製造方法によれば、透光性バルブを環形に曲製加工した後に蛍光体層を形成するので、蛍光体層に曲成に伴う負荷がかからないので、膜はがれや亀裂がほとんど発生しない。また、蛍光体をバルブの軟化温度まで上昇させることがないので、熱による蛍光体の劣化がない。さらに、ランプ効率および光束維持率を低下させる原因の一つと考えられているカルシウムまたはバリウムを含有する必要がなくなる。これらの作用によって、従来の環形蛍光ランプに比べてランプ効率および光束維持率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による実施形態の蛍光ランプの構成を示す正面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】本発明による環形蛍光ランプを搭載した照明装置の断面図である。
【図4】本発明による製造方法の第1の実施形態の工程を示すブロック図である。
【図5】本発明による製造方法の第2の実施形態の工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1 環形蛍光ランプ
2 透光性バルブ
8 蛍光体層
8a 蛍光体塗布剤層
11 照明器具
20 蛍光体吐出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環形に形成され、放電媒体が封入されるとともに両端に電極手段が封装された透光性バルブと;
単位面積あたりの被着量の最も多い部位と最も少ない部位との差が8%未満となるように前記透光性バルブの内面側に形成された蛍光体層と;
を具備したことを特徴とする環形蛍光ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の環形蛍光ランプと;
この蛍光ランプが取付けられた照明器具本体と;
前記環形蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;
を具備したことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
環状に形成された透光性バルブの内面を帯電させる第1の工程と;
前記透光性バルブの内部に蛍光体塗布剤を噴射して静電塗装により透光性バルブの内面側に蛍光体層を形成する第2の工程と;
前記透光性バルブに電極手段を配設して、排気、封止を行う第3の工程と;
からなることを特徴とする環形蛍光ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−273263(P2007−273263A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97617(P2006−97617)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】