説明

環状アミン誘導体又はその塩からなる医薬

【課題】IL−6シグナル伝達阻害作用を有する化合物を見出し、IL−6の異常産生に伴う疾患に対する治療、予防又は抑制剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる医薬。


(式中、Xは−CH−等を示し、Y−Yは−NHC(O)CHN=等を示し、Zは単結合等を示し、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2cはハロゲン原子等を示し、A環はアリール基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状アミン誘導体又はその塩からなる医薬に関する。より詳細には、本発明は、インターロイキン−6(IL−6)シグナル伝達阻害作用を有する化合物又はその塩に関する。本発明は、また、IL−6の異常産生に伴う疾患の治療、予防又は抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、細胞間の情報伝達を担うタンパク質性因子である。サイトカインが持つ細胞増殖、分化などの生理活性は、細胞膜上のサイトカイン受容体とサイトカインが結合することによって発揮される。サイトカインの異常産生は、癌、炎症、アレルギー、自己免疫疾患等にも深く関与していることが報告されている(非特許文献1)。サイトカインの一つであるIL−6は多機能性サイトカインであり、1)活性化B細胞の抗体産生を誘導する、2)ハイブリドーマ、プラズマサイトーマ、ミエローマの増殖を誘導する、3)T細胞に作用し、増殖及び細胞傷害性T細胞への分化を誘導する、4)造血幹細胞を刺激し、多分化能コロニーを形成させる、5)肝細胞に作用し、炎症や組織の損傷に対する生体反応に起因する急性期タンパク質の合成を誘導する、6)骨髄性白血病細胞株の増殖を抑制し、マクロファージへの分化を誘導する、7)神経細胞の分化を誘導する等の機能を有することが知られている。従って、IL−6活性の制御の破綻は様々な重篤な疾患を引き起こす要因となる。そのような疾患の例として、関節リウマチ、血管炎症候群、二次性アミロイドーシス、キャッスルマン病、間質性肺炎(リンパ球性間質性肺炎;LIP)、増殖性糸球体腎炎、炎症性腸疾患(クローン病)、腎移植に伴う拒絶、骨粗鬆症、エイズ、IL−6産生腫瘍(多発性骨髄腫、腎癌、子宮頸癌、肺癌、心房粘液腫)及び悪液質等が挙げられる。
【0003】
これまでにIL−6の異常産生に伴う疾患に対して、ヒト型化抗ヒトIL−6受容体抗体(トシリズマブ)によるIL−6の機能阻害が、有効な治療法になることが示されている。しかし、トシリズマブはヒト型化抗体とはいえマウス由来の異種タンパク質を含むため、トシリズマブに対する抗体の出現を否定することはできず、トシリズマブの作用低下及びアナフィラキシー出現の危険性も完全に除外できない。また、トシリズマブは高分子(分子量150kD)であるため、静脈内投与を余儀なくされ、患者の利便性を著しく損なっている。さらにトシリズマブは高額であるため、経済的にも負担がかかる。従って、上記のIL−6の異常産生に伴う疾患の治療、予防又は抑制剤として優れた性質を有する化合物の開発が望まれている。
【0004】
現在、IL−6シグナル伝達阻害作用を有する化合物としては、特許文献1記載の下記式(A)で表される化合物や、特許文献2記載の下記式(B)で表される化合物が知られている。
【化1】

【化2】

【0005】
【特許文献1】特開2003−183161号明細書
【特許文献2】特開2002−265493号明細書
【非特許文献1】Kishimoto,T.ら、Science 258巻、p.593−597、1992年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、IL−6シグナル伝達阻害作用を有する化合物を見出し、IL−6の異常産生に伴う疾患に対する治療、予防又は抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、下記一般式(1)で表される環状アミン及びその塩が、IL−6シグナル伝達阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。
[1]下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる医薬。
【化3】

(式中、
Xは、単結合又は−CH−を示し、
−Yは、式
【化4】

で表される基を示し、
Zは、単結合、−CH−又は−C(O)−を示し、
1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2cは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いC〜Cアルキル基を示し、
A環は、置換基群Q1の中から選択される任意の基で置換されていてもよいアリール基又は置換基群Q1の中から選択される任意の基で置換されていてもよい複素環基を示し、アリール基及び複素環基上の隣接する2個の置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、
置換基群Q1は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、ニトロ基及びC〜Cアシル基を示す。)
[2]一般式(1)で表される化合物又はその塩において、
−Yが、式
【化5】

で表される基である、
上記[1]記載の医薬。
[3]一般式(1)で表される化合物又はその塩において、
A環が、置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよいアリール基又は置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよい複素環基であり、
置換基群Q2が、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基及びC〜Cアルコキシ基である、
上記[1]又は[2]記載の医薬。
[4]上記[1]〜[3]いずれかに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する、インターロイキン−6の異常産生に伴う疾患の治療、予防又は抑制剤。
[5]インターロイキン−6の異常産生に伴う疾患が、関節リウマチ、血管炎症候群、二次性アミロイドーシス、キャッスルマン病、間質性肺炎、増殖性糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎移植に伴う拒絶、骨粗鬆症、エイズ、多発性骨髄腫、腎癌、子宮頸癌、肺癌、心房粘液腫又は悪液質である、上記[4]記載の治療、予防又は抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る環状アミン誘導体及びその塩は、優れたIL−6シグナル伝達阻害作用を有する。従って、本発明に係る環状アミン誘導体及びその塩は、IL−6の異常産生に伴う疾患の治療、予防又は抑制に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本明細書において使用する用語及び記号の意味を説明し、本発明の内容をより詳細に説明する。
【0011】
本明細書において、化合物の構造式を一定の異性体を用いて表すことがあるが、その構造式に限定する意図はなく、化合物の構造上生ずる総ての異性体(幾何異性体、鏡像異性体、立体異性体、互変異性体及び回転異性体等)及び異性体の混合物も当該化合物に含まれる。また、本発明に係る化合物に鏡像異性体が存在する場合、光学活性体及びラセミ体のいずれもが含まれる。
【0012】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を意味する。
【0013】
「C〜Cアルキル基」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、具体例として、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基及び2,3−ジメチル−2−ブチル基が挙げられる。
【0014】
好ましい「C〜Cアルキル基」は、炭素数1〜3個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基(以下、「C〜Cアルキル基」という)であり、具体例として、メチル基、エチル基、1−プロピル基及び2−プロピル基が挙げられる。
【0015】
「ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基」とは、上記「C〜Cアルキル基」及び上記「C〜Cアルキル基」における水素原子の一部又は全部が上記「ハロゲン原子」により置換された基を示し、具体例として、上記「C〜Cアルキル基」の他、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、1−フルオロエチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基及び2,2,2−トリフルオロエチル基が挙げられる。
【0016】
好ましい「ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基」は、「ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基」である。
【0017】
「C〜Cアルコキシ基」とは、上記「C〜Cアルキル基」が結合したオキシ基を意味し、具体例として、メトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、2−メチル−1−プロポキシ基、2−メチル−2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、1−ペントキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブトキシ基、3−メチル−1−ブトキシ基、2−メチル−2−ブトキシ基、3−メチル−2−ブトキシ基、2,2−ジメチル−1−プロポキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペントキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペントキシ基、2−メチル−2−ペントキシ基、3−メチル−2−ペントキシ基、4−メチル−2−ペントキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブトキシ基、3,3−ジメチル−1−ブトキシ基、2,2−ジメチル−1−ブトキシ基、2−エチル−1−ブトキシ基、3,3−ジメチル−2−ブトキシ基及び2,3−ジメチル−2−ブトキシ基が挙げられる。
【0018】
好ましい「C〜Cアルコキシ基」は、上記「C〜Cアルキル基」が結合したオキシ基であり、具体例として、メトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基及び2−プロポキシ基が挙げられる。
【0019】
「C〜Cアシル基」とは、上記「C〜Cアルキル基」が結合したカルボニル基を意味し、具体例として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基及びピバロイル基が挙げられる。
【0020】
好ましい「C〜Cアシル基」は、上記「C〜Cアルキル基」が結合したカルボニル基であり、具体例として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基及びイソブチリル基が挙げられる。
【0021】
「アリール基」とは、炭素数が6〜14個の炭素原子で構成された芳香族炭化水素環基を意味し、具体例として、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フェナントレニル基及びアントラセニル基が挙げられる。
【0022】
好ましい「アリール基」はフェニル基である。
【0023】
「複素環基」とは、環を構成する原子の数が5〜7であり、環を構成する原子の中に1〜4個の硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を含有する5〜7員複素環基を意味し、さらに、6〜14員芳香族炭化水素環又は5〜7員複素環と縮合した5〜7員複素環基をも含む。5〜7員複素環基の具体例として、フリル基、チエニル基、ピロリル基、アゼピニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアジアゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基及びピラジニル基等の芳香族複素環基、並びに、モルホニル基、チオモルホリニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基及びピペラジニル基等の非芳香族複素環基が挙げられる。縮合した5〜7員複素環基の具体例として、イソベンゾフラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、クロメニル基、クロマノニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、インドリジニル基、イソインドリジニル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、アクリジニル基及びイソインドリニル基が挙げられる。
【0024】
好ましい「複素環基」は、5〜7員芳香族複素環基であり、より好ましい「複素環基」は、環を構成する原子の中に1〜2個の窒素原子を含有する5〜7員芳香族含窒素複素環基である。
【0025】
「アリール基及び複素環基上の隣接する2個の置換基は互いに結合して環を形成していてもよい」とは、オキソ基を含んでいてもよい5〜6員非芳香族炭化水素環又はオキソ基を含んでいてもよい5〜6員非芳香族複素環と縮合したフェニル基であることが好ましく、具体例として以下の環基を挙げられる。
【化6】

【0026】
以下、本発明に係る化合物及びその塩の各記号の好ましい態様について説明する。
【0027】
上記Xは、単結合であることが好ましい。
【0028】
上記Y−Yは、
【化7】

で表される基であることが好ましい。ここで、
【化8】

で表される基は、E型であることが好ましい。
【0029】
上記R1a及びR2aは、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子又はトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0030】
上記R1b、R1c、R2b及びR2cは水素原子であることが好ましく、R1a及びR2aは、式
【化9】

で表される位置で置換されていることが好ましい。このような位置で置換されているR1a及びR2aのうち、どちらか一方は水素原子であることがより好ましい。
【0031】
さらに好ましいR1a及びR2aの組合せとしては、以下の式で表される組合せが挙げられる。
【化10】

【0032】
この中でも、特に、以下の式で表される組合せが好ましい。
【化11】

【0033】
上記置換基群Q1は、上記置換基群Q2(すなわち、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基及びC〜Cアルコキシ基からなる置換基群)であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基及びメトキシ基からなる群(以下、「置換基群Q3」という)であることがより好ましい。
【0034】
A環は、置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよいアリール基又は置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよい複素環基であることが好ましい。より好ましいA環は、置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよいフェニル基又は置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよい5〜7員芳香族含窒素複素環基である。さらに好ましいA環は、置換基群Q3の中から選択される任意の基で置換されていてもよいフェニル基、置換基群Q3の中から選択される任意の基で置換されていてもよいピリジル基又は置換基群Q3の中から選択される任意の基で置換されていてもよいピリミジル基である。
【0035】
本発明に係る化合物の塩は、本発明に係る化合物と薬学上許容できる塩基(例えば、無機又は有機塩基)又は酸(例えば、無機又は有機酸)との塩を意味し、好ましくは酸との塩である。
【0036】
薬学上許容できる無機塩基から誘導される塩としては、例えば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン酸、カリウム及びナトリウム等の無機塩基との塩(特に好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マンガン、カリウム及びナトリウム塩)が挙げられる。
【0037】
薬学上許容できる有機塩基から誘導される塩としては、例えば、第一、第二、第三アミン、置換アミン(例えば天然に存在する置換アミン)、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂等の有機塩基(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)との塩が挙げられる。
【0038】
薬学上許容できる無機酸から誘導される塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸との塩が挙げられる。
【0039】
薬学上許容できる有機酸から誘導される塩としては、例えば、酢酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0040】
さらに、本発明に係る化合物及びその塩は、水和物又は溶媒和物として存在することもある。上述の好ましい化合物を含めて、上記一般式(1)で表される環状アミン誘導体及びその塩が形成する任意の水和物及び溶媒和物は、いずれも本発明の範囲に含まれる。溶媒和物を形成し得る溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0041】
本発明に係る化合物又はその塩は、種々の合成法によって製造することができるが、以下、代表的な製造法(A法、B法、C法、D法、E法、F法、G法、H法及びI法)について説明する。
【0042】
(A法)
【化12】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じであり、nは1〜3の整数を示す。)
【0043】
(第一工程)
本工程は、化合物(1)と化合物(2)とから化合物(3)を製造する工程である。本工程は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等の有機塩基又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム等の無機塩基の存在下又は非存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、ピリジン、キノリン、ジクロロメタン等の溶媒中で−20〜150℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0044】
(第二工程)
本工程は、化合物(3)のニトロ基を還元して、化合物(4)を製造する工程である。本反応は、例えば化合物(3)に対して1〜20当量の鉄を用いて、酢酸中で室温〜100℃で1〜24時間処理することにより実施することができる。また、パラジウムやラネーニッケルを用いて、室温〜100℃で1〜24時間、反応を行ってもよい。
【0045】
(第三工程)
本工程は、化合物(4)をアシル化して化合物(6)を製造する工程である。本工程は適当な塩基の存在下で行うことが好ましい。本工程に用いる塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機塩基又は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基が例示できる。本工程は、反応に関与しない不活性な溶媒を用いて行うことが好ましく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン又はトルエン等が例示できる。これらの溶媒は単独であるいは任意の比で混合して用いられる。本反応は−20〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0046】
(第四工程)
本工程は、化合物(6)と化合物(7)とから化合物(8)を製造する工程である。本反応は、化合物(7)を化合物(6)に対して1〜20当量用いて、塩基の存在下又は非存在下で行うことができる。塩基を用いる場合、適当な塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機塩基又は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基が挙げられる。溶媒を用いる場合には、反応に関与しない不活性な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、トルエン、エタノール又は水等が用いられる。本反応は−20〜150℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0047】
(B法)
【化13】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c及び環Aは上記定義と同じであり、Yは窒素原子又はメチン基を示し、PGは保護基を示す。PGで表される保護基としては、例えばアセチル基などのアシル基、tert−ブトキシカルボニル基などの低級アルコキシカルボニル基、及びベンジルオキシカルボニル基などの置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。)
【0048】
(第一工程)
本工程は、化合物(27)と化合物(9)との縮合反応によって化合物(10)を製造する工程である。本工程で用いられる縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、3−エチル−1−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)又はジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMC)等が挙げられ、これらは固体状又は適当な溶媒に溶かした溶液として添加される。本縮合反応において塩基を用いる場合には、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリ炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン又は1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等の3級アミン類が例示できる。本縮合反応に用いる溶媒としては反応に関与しない不活性な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、ジクロロメタン等が用いられる。本縮合反応は−20℃から80℃で実施することができる。
また、本工程の縮合反応は、カルボン酸のハライド、カルボン酸のイミダゾリド、カルボン酸の活性エステルを経由して行うこともでき、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基の存在下又は非存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン等の溶媒中、−20〜80℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0049】
(第二工程)
本工程は、化合物(10)の脱保護を行って化合物(10’)を製造する工程である。本工程は、公知の方法、例えば「Protecting Groups in Organic Synthesis (John Wily and Sons刊(1999年))」などに従い、化合物(10)における保護基PGを脱保護することで行うことができる。例えば、酸、塩基、ヒドラジン、テトラブチルアンモニウムフロリド、トリメチルシリルヨージドなどを使用する方法、還元法などが挙げられる。
【0050】
(第三工程)
本工程は、化合物(10’)と化合物(11)とを脱水縮合して化合物(12)を製造する工程である。本反応は、通常、トリアセトキシボロハイドライドやシアノボロハイドライド等の還元剤とともに、ジクロロメタン、トルエン等の溶媒を用いて溶媒中で、−20〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0051】
(C法)
【化14】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じであり、Rはアルキル基等の基を示す。)
【0052】
(第一工程)
本工程は、化合物(4)と化合物(13)とから化合物(14)を製造する工程である。本反応は、化合物(13)を化合物(4)に対して1〜20当量用いて、塩基の存在下又は非存在下で行うことができる。塩基を用いる場合、適当な塩基として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機塩基又は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基が例示できる。溶媒を用いる場合には、反応に関与しない不活性な溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、トルエン、エタノール又は水等が用いられる。本反応は−20〜150℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0053】
(第二工程)
本工程は、化合物(14)のエステル基を加水分解することにより化合物(15)を製造する工程である。本工程は、定法に従い、塩基存在下、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、水等が挙げられる。本工程は、通常、0〜150℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0054】
(第三工程)
本工程は、化合物(15)と化合物(7)との縮合反応によって化合物(16)を製造する工程である。本工程で用いられる縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、3−エチル−1−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)又はジメチルイミダゾリニウムクロライド(DMC)等が挙げられ、これらは固体状又は適当な溶媒に溶かした溶液として添加される。本縮合反応において塩基を用いる場合には、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウム等のアルカリ炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン又は1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等の3級アミン類が例示できる。本縮合反応に用いる溶媒としては反応に関与しない不活性な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、ジクロロメタン等が用いられる。本縮合反応は−20〜80℃で実施することができる。
また、本工程の縮合反応は、カルボン酸のハライド、カルボン酸のイミダゾリド、カルボン酸の活性エステルを経由して行うこともでき、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基の存在下又は非存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン等の溶媒中、−20〜80℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0055】
(D法)
【化15】


(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じである。)
【0056】
(第一工程)
本工程は、化合物(17)と化合物(2)とから化合物(18)を製造する工程である。本工程は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、DBU等の有機塩基又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム等の無機塩基の存在下又は非存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、ピリジン、キノリン、ジクロロメタン等の溶媒中で−20〜150℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0057】
(第二工程)
本工程は、化合物(18)と化合物(19)とから化合物(20)を製造する工程である。本工程は、例えば、水素化ナトリウム等の無機塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒中で−20〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0058】
(第三工程)
本工程は、化合物(20)のエステル基を加水分解することにより化合物(21)を製造する工程である。本工程は、上記C法・第二工程に準じて行うことができる。
【0059】
(第四工程)
本工程は、化合物(21)と化合物(7)との縮合反応によって化合物(22)を製造する工程である。本工程は、上記C法・第三工程に準じて行うことができる。
【0060】
(E法)
【化16】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じである。)
【0061】
(第一工程)
本工程は、化合物(20)のエステル基を還元して化合物(23)を製造する工程である。本工程で用いられる還元剤としては、ジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL)、リチウムアルミニウムハイドライド、リチウムボロハイドライド等が挙げられる。本工程に用いる溶媒としては反応に関与しない不活性な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、ジクロロメタン等が用いられる。本工程は−80〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0062】
(第二工程)
本工程は、化合物(23)から化合物(24)を製造する工程である。本工程は、通常のクロル化反応の条件で実施することができる。本工程は、例えば、メタンスルホン酸クロリドとリチウムクロリドを試薬として用いて、コリジン等の求核性を有さない塩基存在下、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、酢酸エチル、ジクロロメタン等の反応に関与しない不活性な溶媒中で、実施することができる。また、本工程は、通常、−20〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0063】
(第三工程)
本工程は、化合物(24)から化合物(25)を製造する工程である。本工程は、上記A法・第四工程に準じて行うことができる。
【0064】
(F法)
【化17】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じであり、Rはアルキル基等の基を示す。)
【0065】
(第一工程)
本工程は、化合物(18)から化合物(26)を製造する工程である。本工程は、例えば、メタノール溶媒中、シアン化ナトリウムと過マンガン酸カリウムで、0〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。なお、この場合の化合物(15)におけるRはメチル基となる。
【0066】
(第二工程)
本工程は、化合物(26)のエステル基を加水分解することにより化合物(27)を製造する工程である。本工程は、上記C法・第二工程に準じて行うことができる。
【0067】
(第三工程)
本工程は、化合物(27)と化合物(7)とから、Curtius転位反応により化合物(28)を製造する工程である。本工程は、例えば、トルエン溶媒中、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下、ジフェニルホスホリルアジドで、0〜100℃で30分〜48時間処理することにより実施することができる。
【0068】
(G法)
【化18】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じである。)
【0069】
(第一工程)
本工程は、化合物(27)と化合物(7)との縮合反応によって化合物(29)を製造する工程である。本工程は、上記C法・第三工程に準じて行うことができる。
【0070】
(H法)
【化19】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じであり、Yは窒素原子又はメチン基を示し、PGは保護基を示す。PGで表される保護基としては、例えばアセチル基などのアシル基、tert−ブトキシカルボニル基などの低級アルコキシカルボニル基、及びベンジルオキシカルボニル基などの置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。)
【0071】
(第一工程)
本工程は、化合物(4)と化合物(30)との縮合反応によって化合物(31)を製造する工程である。本工程は、上記C法・第三工程に準じて行うことができる。
【0072】
(第二工程)
本工程は、化合物(31)の脱保護を行って化合物(31’)を製造する工程である。本工程は、公知の方法、例えば「Protecting Groups in Organic Synthesis (John Wily and Sons刊(1999年))」などに従い、化合物(31)における保護基PGを脱保護することで行うことができる。例えば、酸、塩基、ヒドラジン、テトラブチルアンモニウムフロリド、トリメチルシリルヨージドなどを使用する方法、還元法などが挙げられる。
【0073】
(第三工程)
本工程は、化合物(31’)と化合物(11)との縮合反応によって化合物(32)を製造する工程である。本工程は、上記B法・第三工程に準じて行うことができる。
【0074】
(I法)
【化20】

(上記スキームにおいて、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b、R2c、Z及び環Aは上記定義と同じであり、nは0〜2の整数を示す。)
【0075】
(第一工程)
本工程は、化合物(33)と化合物(34)とから化合物(35)を製造する工程である。本工程は、上記A法・第一工程に準じて行うことができる。
【0076】
(第二工程)
本工程は、化合物(35)と化合物(5)とから化合物(36)を製造する工程である。本工程は、上記A法・第三工程に準じて行うことができる。
【0077】
(第三工程)
本工程は、化合物(36)と化合物(7)とから化合物(37)を製造する工程である。本工程は、上記A法・第四工程に準じて行うことができる。
【0078】
上述の方法等により合成される本発明に係る化合物は、通常の分離手段(例えば抽出、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等)によって単離、精製することができる。また、得られた化合物が塩を形成し得る場合には、通常の方法あるいはそれに準ずる方法(例えば中和等)によって各種の塩を製造することができる。
【0079】
本発明に係る化合物又はその塩は、単独で、又は適宜、薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤等と混合し、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等の製剤として経口的に、又は注射剤若しくは座剤等の製剤として非経口的に医薬組成物として投与することができる。
【0080】
これらの製剤は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0081】
賦形剤は、有機系賦形剤又は無機系賦形剤であり得る。有機系賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのようなデンプン誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルラン等であり得る。無機賦形剤は、例えば、軽質無機ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は硫酸カルシウムのような硫酸塩等であり得る。
【0082】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーガムのようなワックス類;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DL−ロイシン;脂肪酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水ケイ酸、ケイ酸水和物のようなケイ酸類;又は上記デンプン誘導体であり得る。
【0083】
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、又は上記賦形剤と同様の化合物であり得る。
【0084】
崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;又はカルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類であり得る。
【0085】
安定剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなクレゾール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又はソルビン酸であり得る。
【0086】
矯味矯臭剤は、例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料であり得る。
【0087】
希釈剤は、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖注射液等の通常使用されるものであり得る。
【0088】
本発明の化合物又はその塩の投与量は、その種類、投与ルート、患者の年齢、症状等により異なるが、例えば人を含む哺乳動物に対して、本発明の化合物又はその塩として0.001〜500mg/kg/日である。投与は例えば1日1回又は数回に分割して投与する。
【実施例】
【0089】
以下、参考例、実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明する。参考例は、本発明化合物の製造に用いる原料化合物の製造例を示したものである。ただし、以下の参考例、実施例及び試験例は例示的なものであり、本発明はいかなる場合も以下の具体例に限定されるものではない。
【0090】
(参考例1)
2−(4−クロロフェニルチオ)ニトロベンゼン
【化21】

4−クロロチオフェノール(5.20g)をN−メチル−2−ピロリジノン(50mL)に溶かし、0℃に冷却後、炭酸カリウム(15g)加えた。0℃で15分撹拌した後、2−フルオロニトロベンゼン(5.00g)を滴下した。反応液を室温に戻し、1時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をヘキサンに懸濁した。沈殿をろ取し、乾燥し、黄色固体として2−(4−クロロフェニルチオ)ニトロベンゼンを得た(8.86g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.86 (1H, dd, J = 7.5, 1.2 Hz), 7.24 (1H, td, J = 7.5, 1.2 Hz), 7.37 (1H, td, J = 7.5, 1.2 Hz), 7.46 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.6 Hz), 8.23 (1H, dd, J = 7.5, 1.2 Hz).
【0091】
(参考例2)
2−(4−クロロフェニルチオ)アニリン
【化22】

2−(4−クロロフェニルチオ)ニトロベンゼン(参考例1の化合物:200mg)を酢酸(10mL)に溶かし、鉄粉(840mg)を加え、60℃で1.5時間撹拌した。反応液を氷にあけ、炭酸水素ナトリウムで塩基性とした。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和重曹水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、無色油状物として2−(4−クロロフェニルチオ)アニリンを得た(181mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.11 (2H, br s), 6.72-6.78 (2H, m), 6.98 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.16 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.23 (1H, td, J = 7.6, 1.5 Hz), 7.42 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz).
【0092】
(参考例3)
2−クロロ−2’−(4−クロロフェニルチオ)−アセトアニリド
【化23】

2−(4−クロロフェニルチオ)アニリン(参考例2の化合物:180mg)をジクロロメタン(2mL)に溶かし、ピリジン(0.2mL)を加えた。0℃に冷却後、クロロアセチルクロリド(0.06mL,0.75mmol)のジクロロメタン(0.5mL)溶液をゆっくりと滴下した。0℃で1時間撹拌した後、少量の水を加え反応を止めた。反応液を水にあけ酢酸エチルで抽出し、有機層を希塩酸と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、褐色固体として2−クロロ−2’−(4−クロロフェニルチオ)−アセトアニリドを得た(258mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.10 (2H, s), 7.03 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.17-7.23 (3H, m), 7.48 (1H, td, J = 7.9, 1.2 Hz), 7.62 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 8.45 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 9.42 (1H, s).
【0093】
(参考例4)
4−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド
【化24】

2−クロロ−2’−(4−クロロフェニルチオ)−アセトアニリド(参考例3の化合物:258mg)と1−tert−ブトキシカルボニル−1−ピペラジン(185mg)とトリエチルアミン(0.6mL)をジクロロメタン(3mL)に溶解し、8時間加熱還流した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=5:1及び3:1)で精製し、黄色アモルファスとして4−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミドを得た(140mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.47 (9H, s), 2.41 (4H, br s), 3.08 (2H, s), 3.31 (4H, br s), 6.93 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.14 (1H, td, J = 7.6, 1.5 Hz), 7.19 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.46-7.51 (1H, m), 7.56 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.57 (1H, dd, J = 8.6, 1.5 Hz), 10.20 (1H, s).
【0094】
(参考例5)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド
【化25】

4−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド(参考例4の化合物:140mg)をジクロロメタン(2mL)に溶かし、氷冷下でトリフルオロ酢酸(2mL)を加えた。0℃で2時間撹拌後、反応液を氷水にあけ、炭酸水素ナトリウムを加えて塩基性とした。酢酸エチルで抽出後、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、黄色固体としてN−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミドを得た(65mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.44 (4H, t, J = 4.6 Hz), 2.79 (4H, t, J = 4.6 Hz), 3.05 (2H, s), 6.95 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.14 (1H, td, J = 7.8, 1.5 Hz), 7.19 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.46-7.51 (1H, m), 7.57 (1H, dd, J = 7.8, 1.5 Hz), 8.58 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.28 (1H, br s).
FABMS (+) 362 [M+H]+
HRMS (FAB) for C18H21ClN3OS [M+H]+: calcd, 362.1094; found, 362.1069.
【0095】
(参考例6)
2−(4−クロロフェニルチオ)ベンズアルデヒド
【化26】

4−クロロフェニルチオール(2.15g)をN−メチル−2−ピロリジノン(20mL)に溶解し、0℃に冷却した。そこに炭酸カリウム(4.90g)と2−フルオロベンズアルデヒド(1.50g)を順次加え、80℃に加熱して、2時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、黄色固体として2−(4−クロロフェニルチオ)ベンズアルデヒドを得た(3.28g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.08 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 7.33-7.38 (5H, m), 7.43 (1H, td, J = 7.6, 1.5 Hz), 7.89 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 10.36 (1H, s).
【0096】
(参考例7)
[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタノール
【化27】

2−(4−クロロフェニルチオ)ベンズアルデヒド(参考例6の化合物:1.50g)をメタノール(20mL)に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム(232mg)を加え4時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Chromatrex;ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製し、無色油状物の[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタノールを得た(1.49g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.77(2H, d, J = 6.7 Hz), 7.11(2H, d, J = 8.6 Hz), 7.20-7.31(3H, m), 7.34-7.41(2H, m), 7.53(1H, d, J = 7.3 Hz).
【0097】
(参考例8)
2−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオン
【化28】

[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタノール(参考例7の化合物:705mg)を無水テトラヒドロフラン(20mL)に溶解させ、フタルイミド(490mg)とトリフェニルホスフィン(880mg)、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(830μL)を加え、室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Chromatrex;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、無色粉末の2−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオンを得た(1.01g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.04(2H, s), 7.06(2H, d, J = 8.6 Hz), 7.15(2H, d, J = 8.6 Hz), 7.24-7.35(3H, m), 7.43(1H, d, J = 7.3 Hz), 7.67-7.75(2H, m), 7.78-7.84(2H, m).
【0098】
(参考例9)
[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタナミン
【化29】

2−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオン(参考例8の化合物:1.01g)をエタノール(10mL)に溶解させ、ヒドラジン一水和物(380μL)を加え、2時間加熱還流した。反応液をろ過し、酢酸エチルで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を濃縮し、無色油状物の[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタナミンを得た(620mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.94(2H, s), 7.12(2H, d, J = 8.6 Hz), 7.19-7.27(3H, m), 7.30-7.38(2H, m), 7.44(1H, dd, J = 7.3, 1.8 Hz).
【0099】
(参考例10)
2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]アセトアミド
【化30】

[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]メタナミン(参考例9の化合物:302mg)をジクロロメタン(5mL)に溶解させ0℃に冷却し、ピリジン(300μL)、クロロアセチルクロリド(100μL)を加え、3時間室温で撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を塩酸(1mol/L)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル60;ヘキサン:酢酸エチル=4:1)により精製し、無色粉末の2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]アセトアミドを得た(283mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.01(2H, s), 4.60(2H, d, J = 5.5 Hz), 6.93(1H, brs), 7.10(2H, d, J = 8.6 Hz), 7.21-7.28(2H, m), 7.30(1H, td, J = 7.3, 1.2 Hz), 7.41(1H, dd, J = 7.3, 1.2 Hz), 7.45(1H, dd, J = 7.3, 1.2 Hz).
【0100】
(参考例11)
2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド
【化31】

炭酸カリウム(2.2g)をN−メチル−2−ピロリジノン(5mL)に懸濁し、氷冷下、ベンジルメルカプタン(0.62mL)を加え、その後2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1.00g)を滴下した。室温で1日撹拌後、反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、淡黄色固体として2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを得た(1.77g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.22 (2H, s), 7.27-7.36 (5H, m), 7.53 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.69 (1H, dd, J = 8.0, 2.0 Hz), 8.05 (1H, d, J = 2.0 Hz), 10.25 (1H, s).
【0101】
(参考例12)
[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化32】

2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(参考例11の化合物:770mg)をメタノール(8mL)に溶かし、室温で水素化ホウ素ナトリウム(120mg)を加えた。反応液を室温で2時間撹拌した後、反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、淡黄色固体として[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノールを得た(721mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.90 (1H, t, J = 6.3 Hz), 4.17 (2H, s), 4.71 (2H, d, J = 6.3 Hz), 7.25-7.33 (5H, m), 7.41 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 8.3, 1.5 Hz), 7.67 (1H, d, J = 1.5 Hz).
【0102】
(参考例13)
2−[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオン
【化33】

[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(参考例12の化合物:720mg)、トリフェニルホスフィン(770mg)およびフタルイミド(430mg)をテトラヒドロフラン(THF;10mL)に溶かし、室温でジイソプロピル アゾジカルボキシレート(0.7mL)を加えた。反応液を室温で1日撹拌した後、反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカ;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、白色固体として2−[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオンを得た(617mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.22 (2H, s), 4.97 (2H, s), 7.27-7.34 (6H, m), 7.38-7.41 (2H, m), 7.76 (2H, dd, J = 6.0, 3.0 Hz), 7.90 (2H, dd, J = 6.0, 3.0 Hz).
【0103】
(参考例14)
[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタナミン
【化34】

2−[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)ベンジル]イソインドリン−1,3−ジオン(参考例13の化合物:300mg)をエタノール(3mL)に懸濁し、ヒドラジン一水和物(2mL)を加え、2時間加熱還流した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。無色油状物として[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタナミンを得た(229mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.90 (2H, s), 4.18 (2H, s), 7.27-7.33 (5H, m), 7.38 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.43 (1H, dd, J = 7.9, 1.5 Hz), 7.59 (1H, d, J = 1.5 Hz).
【0104】
(参考例15)
(E)−エチル 3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリレート
【化35】

トリエチル ホスホノアセテート(4.50g)をTHF(30mL)に溶かし、0℃に冷却し、水素化ナトリウム(750mg)を加えた。0℃で15分撹拌した後、2−(4−クロロフェニルチオ)ベンズアルデヒド(3.28g)のTHF(10mL)溶液を滴下し、滴下後反応液を室温に戻し、2時間撹拌した。その後、少量の水を加えて反応を止めた。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=100:1)で精製し、白色固体として(E)−エチル 3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリレートを得た(4.19g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.32 (3H, t, J = 7.2 Hz), 4.25 (2H, q, J = 7.2 Hz), 6.36 (1H, d, J = 15.9 Hz), 7.16 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.24 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.31-7.38 (3H, m), 7.64 (1H, dd, J = 7.0, 2.1 Hz), 8.21 (1H, d, J = 15.9 Hz).
【0105】
(参考例16)
(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペン−1−オール
【化36】

(E)−エチル 3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリレート(参考例15の化合物:2.19g)をTHF(20mL)に溶かし、氷冷下でジイソブチルアルミニウムハイドライド(DIBAL−H;1mol/Lトルエン溶液,20mL)を滴下し、反応液を0℃で3時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで希釈し、反応液を室温に戻した。析出した不溶物を、セライトを通したろ過により取り除き、ろ液を飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、無色油状物として(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペン−1−オールを得た(1.43g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.28 (2H, dd, J = 5.8, 1.5 Hz), 6.30 (1H, td, J = 5.8, 15.5 Hz), 7.05-7.11 (3H, m), 7.20-7.24 (3H, m), 7.30-7.36 (2H, m), 7.58 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz).
【0106】
(参考例17)
(E)−1−クロロ−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペン
【化37】

(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペン−1−オール(参考例16の化合物:1.43g)、塩化リチウム(220mg)、2,4,6−コリジン(0.82mL)をN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶かし、氷冷下でメタンスルホニルクロライド(0.6mL)を滴下し、0℃で3時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を希塩酸と水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色油状物として1−クロロ−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペンを得た(1.16g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.19 (2H, d, J = 7.0 Hz), 6.25 (1H, dt, J = 15.5, 7.0 Hz), 7.09 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.14 (1H, d, J = 15.5 Hz), 7.20-7.26 (3H, m), 7.30-7.36 (2H, m), 7.58 (1H, d, J = 7.9 Hz).
【0107】
(参考例18)
(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリル酸
【化38】

(E)−エチル 3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリレート(参考例15の化合物:2.00g)をエタノール(40mL)に溶かし、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(40mL)を加え、80℃で3時間撹拌した。反応液を氷にあけ、希塩酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、白色固体として(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリル酸を得た(1.70g)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.38 (1H, d, J = 15.9 Hz), 7.17 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.26 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.34-7.39 (3H, m), 7.67 (1H, dd, J = 7.0, 2.1 Hz), 8.32 (1H, d, J = 15.9 Hz).
【0108】
(実施例1)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(フェニルカルボニル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化39】

N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド(参考例5の化合物;50mg)をジクロロメタン(2mL)に溶かし、0℃でベンゾイルクロライド(0.03mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)を加えた。反応液を室温に戻し、室温で2時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、無色アモルファスとしてN−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(フェニルカルボニル)−1−ピペラジンアセトアミドを得た(58mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.41 (2H, br s), 2.55 (2H, br s), 3.12 (2H, s), 3.23 (1H, br s), 3.38 (1H, br s), 3.71 (2H, br s), 6.93 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.15 (1H, td, J = 7.5, 1.4 Hz), 7.20 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.35-7.43 (5H, m), 7.47-7.51 (1H, m), 7.56 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.58 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.19 (1H, s).
FABMS (+) 466 [M+H]+
HRMS (FAB) for C25H25ClN3O2S [M+H]+: calcd, 466.1356; found, 466.1398.
【0109】
(実施例2)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(4−クロロベンジル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化40】

N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド(参考例5の化合物;50mg)をジクロロメタン(2mL)に溶かし、4−クロロベンジルクロリド(0.05mL)とジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)を加え、室温で2日間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルにて抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=1:2)で精製し、白色固体のN−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(4−クロロベンジル)−1−ピペラジンアセトアミドを得た(46mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.30 (4H, br s), 2.49 (4H, t, J = 4.0 Hz), 3.07 (2H, s), 3.49 (2H, s), 6.93 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.11-7.16 (1H, m), 7.20 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.42 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.46-7.50 (1H, m), 7.55-7.59 (3H, m), 8.58 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.23 (1H, s).
FABMS (+) 520 [M+H]+
HRMS (FAB) for C26H26ClF3N3OS [M+H]+: calcd, 520.1437; found, 520.1437.
【0110】
(実施例3)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−ピペラジンアセトアミド
【化41】

実施例2と同様の方法により、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−ピペラジンアセトアミド(参考例5の化合物;50mg)及び4−(トリフルオロメチル)ベンジルクロリド(0.05mL)から、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(50.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.29 (4H, br s), 2.48 (4H, br s), 3.06 (2H, s), 3.40 (2H, s), 6.92 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.13 (1H, td, J = 7.6, 1.2 Hz), 7.19 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.23 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.29 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.46-7.50 (1H, m), 7.57 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 8.58 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 10.24 (1H, s).
FABMS (+) 486 [M+H]+
HRMS (FAB) for C25H26Cl2N3OS [M+H]+: calcd, 486.1174; found, 486.1198.
【0111】
(実施例4)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−ピリミジル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化42】

2−クロロ−2’−(4−クロロフェニルチオ)−アセトアニリド(参考例3の化合物:170mg)をジクロロメタン(3mL)に溶かし、1−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン(50mg)とジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)を加え、室温で1日撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、無色油状物としてN−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−ピリミジル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(60.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.53 (4H, t, J = 5.2 Hz), 3.11 (2H, s), 3.75 (4H, br s), 6.51 (1H, t, J = 4.9 Hz), 6.95 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.12-7.20 (3H, m), 7.47-7.51 (1H, m), 7.56 (1H, dd, J = 7.9, 1.8 Hz), 8.32 (2H, d, J = 4.9 Hz), 8.58 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.32 (1H, s).
ESIMS (+) 440 [M+H]+
HRMS (ESI) for C22H23ClN5OS [M+H]+: calcd, 440.13118; found, 440.12941.
【0112】
(実施例5)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−フルオロフェニル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化43】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アセトアミド(参考例3の化合物:50.0mg)及び1−(2−フルオロフェニル)ピペラジン(70mg)から、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−フルオロフェニル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(58.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.65 (4H, t, J = 4.6 Hz), 2.93 (4H, br s), 3.15 (2H, s), 6.82-6.87 (1H, m), 6.92 (2H, d, J = 8.6 Hz), 6.96-7.15 (4H, m), 7.17 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.48-7.52 (1H, m), 7.57 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.61 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.29 (1H, s).
FABMS (+) 456 [M+H]+
HRMS (FAB) for C24H24ClFN3OS [M+H]+: calcd, 456.1313; found, 456.1341.
【0113】
(実施例6)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−メチルフェニル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化44】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アセトアミド(参考例3の化合物:50.0mg)及び1−(2−メチルフェニル)ピペラジン(80mg)から、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−メチルフェニル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(66.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.27 (3H, s), 2.63 (4H, t, J = 4.6 Hz), 2.79 (4H, t, J = 4.6 Hz), 3.14 (2H, s), 6.92 (1H, d, J = 7.3 Hz), 6.95 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.01 (1H, td, J = 7.3, 1.2 Hz), 7.12-7.23 (5H, m), 7.47-7.52 (1H, m), 7.58 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.60 (1H, dd, J = 8.6, 1.2 Hz), 10.33 (1H, s).
FABMS (+) 452 [M+H]+
HRMS (FAB) for C25H27ClN3OS [M+H]+: calcd, 452.1563; found, 452.1605.
【0114】
(実施例7)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(3−メチルフェニル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化45】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アセトアミド(参考例3の化合物:50.0mg)及び1−(3−メチルフェニル)ピペラジン(80mg)から、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(3−メチルフェニル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(61.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.35 (3H, s), 2.61 (4H, t, J = 4.9 Hz), 3.01 (4H, t, J = 4.9 Hz), 3.13 (2H, s), 6.66-6.74 (3H, m), 6.89 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.12-7.20 (4H, m), 7.47-7.52 (1H, m), 7.56 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 8.62 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 10.30 (1H, s).
FABMS (+) 452 [M+H]+
HRMS (FAB) for C25H27ClN3OS [M+H]+: calcd, 452.1563; found, 452.1599.
【0115】
(実施例8)
N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化46】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アセトアミド(参考例3の化合物:50.0mg)及び1−(2−ピリジル)ピペラジン(80mg)から、N−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−4−(2−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(58.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.58 (4H, t, J = 5.2 Hz), 3.13 (2H, s), 3.40 (4H, t, J = 4.6 Hz), 6.59 (1H, d, J = 8.6 Hz), 6.66 (1H, dd, J = 7.3, 4.9 Hz), 6.91 (2H, d, J = 9.2 Hz), 7.12-7.17 (3H, m), 7.47-7.53 (2H, m), 7.56 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.21 (1H, dd, J = 4.9, 1.2 Hz), 8.60 (1H, dd, J = 7.9, 1.2 Hz), 10.30 (1H, s).
ESIMS (+) 439 [M+H]+
HRMS (ESI) for C23H24ClN4OS [M+H]+: calcd, 439.135393; found, 439.13656.
【0116】
(実施例9)
N−({2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}メチル)−4−フェニル−1−ピペラジンアセトアミド
【化47】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]アセトアミド(参考例10の化合物:50.0mg)及び1−フェニルピペラジン(60.0mg)から、N−[2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル]−2−(4−フェニルピペラジン−1−イル)アセトアミドが得られた(60.0mg)。
ESIMS (+) 452 [M+H]+
HRMS (ESI) for C25H26ClN3OS [M+H]+: calcd, 452.15634; found, 452.15726.
【0117】
(実施例10)
N−({2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}メチル)−4−(4−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化48】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−{2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル}アセトアミド(参考例10の化合物:40.0mg)及び1−(4−ピリジル)ピペラジン(40.0mg)から、N−({2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}メチル)−4−(4−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(26.0mg)。
ESIMS (+) 453 [M+H]+
HRMS (ESI) for C24H26ClN4OS [M+H]+: calcd, 453.15158; found, 453.14776.
【0118】
(実施例11)
N−({2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}メチル)−4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化49】

実施例4と同様の方法により、2−クロロ−N−{2−(4−クロロフェニルチオ)ベンジル}アセトアミド(参考例10の化合物:50.0mg)及び1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン(60.0mg)から、N−({2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}メチル)−4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(61.0mg)。
ESIMS (+) 482 [M+H]+
HRMS (ESI) for C26H28ClN3O2S [M+H]+: calcd, 482.16690; found, 482.16360.
【0119】
(実施例12)
N−{[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−(4−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミド
【化50】

実施例4と同様の方法により、[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メタナミン(参考例14の化合物:50mg)及び1−(4−ピリジル)ピペラジン(50mg)から、淡黄色固体としてN−{[2−(ベンジルチオ)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−(4−ピリジル)−1−ピペラジンアセトアミドが得られた(37.0mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.65 (4H, t, J = 5.0 Hz), 3.10 (2H, s), 3.31 (4H, t, J = 5.0 Hz), 4.20 (2H, s), 4.52 (2H, d, J = 6.0 Hz), 6.64 (2H, dd, J = 5.0, 1.5 Hz), 7.24-7.31 (5H, m), 7.40 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 8.3, 1.8 Hz), 7.53 (1H, d, J = 1.8 Hz), 7.57 (1H, t, J = 6.0 Hz), 8.29 (2H, dd, J = 5.0, 1.5 Hz).
ESIMS (+) 501 [M+H]+
HRMS (ESI) for C26H28F3N4OS [M+H]+: calcd, 501.19359; found, 501.19015.
【0120】
(実施例13)
(E)−1−(3−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−2−プロペニル)−4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン
【化51】

(E)−1−クロロ−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]−2−プロペン(参考例17の化合物:170mg)をジクロロメタン(3mL)に溶かし、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン(220mg)とジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)を加え、室温で1日撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、無色油状物として1−(3−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−2−プロペニル)−4−(2−メトキシフェニル)ピペラジンが得られた(251mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.55 (4H, br s), 3.06 (4H, br s), 3.16 (2H, dd, J = 7.0, 1.2 Hz), 3.87 (3H, s), 6.22 (1H, dt, J = 15.5, 7.0 Hz), 6.86 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.92-6.96 (2H, m), 6.98-7.06 (4H, m), 7.19 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.24 (1H, td, J = 7.6, 1.4 Hz), 7.32-7.36 (1H, m), 7.42 (1H, dd, J = 7.6, 1.4 Hz), 7.59 (1H, dd, J = 7.6, 1.4 Hz).
FABMS (+) 451 [M+H]+
HRMS (FAB) for C26H28ClN2OS [M+H]+: calcd, 451.1611; found, 451.1593.
【0121】
(実施例14)
(E)−1−(3−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−オキソ−2−プロペニル)−4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン
【化52】

(E)−3−[2−(4−クロロフェニルチオ)フェニル]アクリル酸(参考例18の化合物:100mg)、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン(100mg)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(60 mg) をジクロロメタン(5 mL)に溶かし、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(100mg)を加え、室温で一日撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60,0.040〜0.063mm;ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、無色アモルファスとして1−(3−{2−[(4−クロロフェニル)チオ]フェニル}−1−オキソ−2−プロペニル)−4−(2−メトキシフェニル)ピペラジンが得られた(169mg)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.04 (4H, br s), 3.73 (2H, br s), 3.88 (3H, s), 3.89 (2H, br s), 6.80 (1H, d, J = 15.3 Hz), 6.87-6.95 (3H, m), 7.03 (1H, m), 7.13 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.21 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.26-7.38 (3H, m), 7.62 (1H, dd, J = 7.6, 1.5 Hz), 8.08 (1H, d, J = 15.5 Hz).
FABMS (+) 465 [M+H]+
HRMS (FAB) for C26H26ClN2O2S [M+H]+: calcd, 465.1404; found, 465.1428.
【0122】
(試験例1)
本発明に係る化合物のIL−6阻害作用を以下の試験例で確認した。
IL−6によるSTAT3リン酸化作用試験
Simi T. Ahmed and Lionel B. Ivashkiv J. Immunol.,165,5227−5237(2000)を参考に、一部改変して行った。牛胎児血清を1%添加した培地(RPMI−1640に100U/mlペニシリンG、100μg/ml 硫酸ストレプトマイシン、10mM HEPES(pH7.4)、1mM ピルビン酸ナトリウム及び4.5mg/ml グルコースを添加)にて4×10cells/mlに調製したU266細胞(ATCCより入手)を12ウェルプレートに1ml/ウェルずつ添加し、37℃、5%CO下で22時間培養した。次に、被検化合物をDMSOで希釈し3μl/ウェルずつ添加し(最終濃度:1、3及び10μM)、30分間インキュベーションした。その後IL−6(Roche)をリン酸緩衝液(以下PBSと称する)で希釈し10μl/ウェルずつ添加し(最終濃度:1ng/ml)、15分間刺激した。その後PBS 3mlに細胞培養液を加え、4℃、1000rpm、5分間遠心し、上清を捨てた。沈殿した細胞にcell wash buffer(cell lysis kit,Bio−Rad)を1ml加え懸濁した後4℃、1000rpm、5分間遠心し、上清を捨てた。沈殿した細胞にcell lysis buffer(cell lysis kit,Bio−Rad)を40μl加え懸濁した後4℃、15000rpm、15分間遠心し上清を回収し、サンプルとした。各サンプルのタンパク質濃度をBCA(登録商標)Protein Assay Kit(PIERCE)を用いて測定し、cell lysis bufferを用いてタンパク質濃度を900μg/mlに調製した後、Bio−Plex(登録商標)System(Bio−Rad)を用いてSTAT3のリン酸化量を測定した。被検化合物のSTAT3リン酸化阻害率は以下の計算式を用いて算出した。
阻害率(%)=(IL−6刺激時のSTAT3リン酸化値−被検化合物存在下のIL−6刺激時のSTAT3リン酸化値)/(IL−6刺激時のSTAT3リン酸化値−IL−6刺激無しのSTAT3リン酸化値)×100
このようにして算出した被験化合物の各濃度(1、3及び10μg/ml)に於ける阻害率を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
被検化合物は以下の式で表される化合物であり、Enamine社より購入した(試薬番号:T0520−5154)。
【化53】

【0125】
表1から明らかなように、本発明に係る化合物及びその塩は優れたIL−6シグナル伝達阻害作用を示す。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る化合物及びその塩は、優れたIL−6シグナル伝達阻害作用を有し、かつ毒性も低い。従って、本発明の化合物及びその塩は、IL−6の異常産生に伴う疾患(関節リウマチ、血管炎症候群、二次性アミロイドーシス、キャッスルマン病、間質性肺炎、増殖性糸球体腎炎、炎症性腸疾患(クローン病等)、腎移植に伴う拒絶、骨粗鬆症、エイズ、IL−6産生腫瘍(多発性骨髄腫、腎癌、子宮頸癌、肺癌及び心房粘液腫等)及び悪液質等)の治療、予防又は抑制に対して有効な、有用性の高い医薬である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物又はその塩からなる医薬。
【化1】

(式中、
Xは、単結合又は−CH−を示し、
−Yは、式
【化2】

で表される基を示し、
Zは、単結合、−CH−又は−C(O)−を示し、
1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2cは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いC〜Cアルキル基を示し、
A環は、置換基群Q1の中から選択される任意の基で置換されていてもよいアリール基又は置換基群Q1の中から選択される任意の基で置換されていてもよい複素環基を示し、アリール基及び複素環基上の隣接する2個の置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、
置換基群Q1は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、ニトロ基及びC〜Cアシル基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物又はその塩において、
−Yが、式

で表される基である、
請求項1記載の医薬。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物又はその塩において、
A環が、置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよいアリール基又は置換基群Q2の中から選択される任意の基で置換されていてもよい複素環基であり、
置換基群Q2が、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルキル基及びC〜Cアルコキシ基である、
請求項1又は2記載の医薬。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する、インターロイキン−6の異常産生に伴う疾患の治療、予防又は抑制剤。
【請求項5】
インターロイキン−6の異常産生に伴う疾患が、関節リウマチ、血管炎症候群、二次性アミロイドーシス、キャッスルマン病、間質性肺炎、増殖性糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎移植に伴う拒絶、骨粗鬆症、エイズ、多発性骨髄腫、腎癌、子宮頸癌、肺癌、心房粘液腫又は悪液質である、請求項4記載の治療、予防又は抑制剤。

【公開番号】特開2008−266237(P2008−266237A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113340(P2007−113340)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】