説明

環状イミノペプチド誘導体

本発明は、抗菌性環状イミノペプチド誘導体およびそれらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用、特に細菌感染のためのものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性環状イミノペプチド誘導体およびそれらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用、特に細菌感染のためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
ボトロマイシン(bottromycin)の発酵は、JP43010998、JP47010036、US3650904、JP49116297およびHU52165に記載されている。US3380885は、ボトロマイシンをニワトリおよびシチメンチョウの処置用の抗生物質として、JP61165332は、家畜のマイコプラズマ病およびブタの赤痢の処置用に、記載している。当分野の現状でボトロマイシンについて記載されている構造は、間違った立体化学を示している。
【0003】
ボトロマイシンのアミドおよびヒドラジン誘導体は、JP42006905、DE1620027、J. Antibiotics 19, 1966, 149, J. Antibiotics 20, 1967, 162 および J. Med. Chem. 11, 1968, 746 において、間違ったボトロマイシンの基本構造を推定して、抗生物質として発表されている。
【0004】
これらの天然産物は、それらの特性の観点で、抗菌性医薬の要件を満たさない。抗菌活性を有する構造的に異なる物質が市場で入手可能であるが、耐性の発生は常にあることである。従って、良好かつより有効な治療のために、新しい物質が望ましい。
【発明の開示】
【0005】
従って、本発明の1つの目的は、ヒトおよび動物における細菌性疾患の処置用の、同等または改善された抗菌活性を有する新規かつ代替的な化合物を提供することである。
【0006】
驚くべきことに、これらの天然産物のエステル基が置換ヒドロキサム酸塩で置き換えられている天然産物のある種の誘導体が、抗菌活性および天然産物と比較して改善された薬物動態学的特性を有することが見出された。
【0007】
本発明は、式
【化1】

[式中、
およびRは、水素を表すか、
または、
およびRは、メチルを表すか、
または、
はメチルを表し、そして、
は水素を表し、
そして、
【0008】
およびRは、相互に独立して、C−C−アルキルを表すか
{これは、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−シクロアルキル、C−C10−アリールおよび5員または6員のヘテロアリールからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよく、C−C−アルキルがメチルではない場合、代替的にまたは付加的に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルコキシおよびC−C−アルキルアミノからなる群から相互に独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていてもよい}
または、C−C−シクロアルキルを表すか
{それは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルアミノ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルおよびC−C−アルキルアミノカルボニルからなる群から相互に独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていてもよい}、
または、
およびRは、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルアミノ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルおよびC−C−アルキルアミノカルボニルからなる群から相互に独立して選択される1個ないし2個の置換基で置換されていてもよいか、
または、
およびRは、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、式
【化2】

{ここで、*は、カルボニル基への結合部位である}
の基を形成している]
の化合物、並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物に関する。
【0009】
本発明の化合物は、式(I)および(Ia)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、式(I)および(Ia)に包含され、例示的実施態様として後述する化合物並びにそれらの塩、溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である(後述する、式(I)および(Ia)に包含される化合物が、まだ塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではない場合において)。
【0010】
本発明の化合物は、それらの構造次第で、立体異性体で存在できる(エナンチオマー、ジアステレオマー)。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマー、およびそれらの各々の混合物に関する。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、キラル相のクロマトグラフィーまたはキラルアミンもしくはキラル酸を用いる結晶化などの既知の方法により、立体異性的に均一な成分を単離できる。
本発明はまた、化合物の構造次第で、化合物の互変異性体にも関する。
【0011】
本発明の目的上、好ましいは、本発明の化合物の生理的に許容し得る塩である。
化合物(I)の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0012】
化合物(I)の生理的に許容し得る塩には、通常の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン類(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジヒドロアビエチルアミン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびメチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩も含まれる。
【0013】
本発明の目的上、溶媒和物は、溶媒分子との配位により固体または液体状態で錯体を形成している化合物の形態を表す。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。
【0014】
本発明の目的上、断りのない限り、置換基は以下の意味を有する:
アルキル自体、並びに、アルコキシ、アルキルアミノ、アルコキシカルボニルおよびアルキルアミノカルボニル中の「アルコ(alk)」および「アルキル」は、一般的には1個ないし6個、好ましくは1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカル、例えば、そして好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルを表す。
【0015】
アルコキシは、例えば、そして好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびtert.−ブトキシを表す。
【0016】
アルキルアミノは、1個または2個のアルキル置換基(相互に独立して選択される)を有するアルキルアミノラジカル、例えば、そして好ましくは、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、tert.−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−tert.−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノを表す。C−C−アルキルアミノは、例えば、1個ないし3個の炭素原子を有するモノアルキルアミノラジカル、または、アルキル置換基毎に1個ないし3個の炭素原子を有するジアルキルアミノラジカルを表す。
【0017】
アルコキシカルボニルは、例えば、そして好ましくは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、tert.−ブトキシカルボニル、n−ペントキシカルボニルおよびn−ヘキソキシカルボニルを表す。
【0018】
アルキルアミノカルボニルは、1個または2個のアルキル置換基(相互に独立して選択される)を有するアルキルアミノカルボニルラジカル(ここで、アルキル置換基は、相互に独立して、一般的には1個ないし6個、好ましくは1個ないし4個、特に好ましくは1個ないし3個の炭素原子を含む)、例えば、そして好ましくは、メチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、n−プロピルアミノカルボニル、イソプロピルアミノカルボニル、tert.−ブチルアミノカルボニル、n−ペンチルアミノカルボニル、n−ヘキシルアミノカルボニル、N,N−ジメチルアミノカルボニル、N,N−ジエチルアミノカルボニル、N−エチル−N−メチルアミノカルボニル、N−メチル−N−n−プロピルアミノカルボニル、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノカルボニル、N−tert.−ブチル−N−メチルアミノカルボニル、N−エチル−N−n−ペンチルアミノカルボニルおよびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノカルボニルを表す。C−C−アルキルアミノカルボニルは、例えば、1個ないし3個の炭素原子を有するモノアルキルアミノカルボニルラジカル、または、アルキル置換基毎に1個ないし3個の炭素原子を有するジアルキルアミノカルボニルラジカルを表す。
【0019】
シクロアルキルは、一般的には3個ないし6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を表し、例えば、そして好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルがシクロアルキルとして挙げられる。
【0020】
アリールは、一般的には6個ないし10個の炭素原子を有する単環式または二環式の芳香族性ラジカルを表し、例えば、そして好ましくは、フェニルおよびナフチルがアリールとして挙げられる。
【0021】
ヘテロアリールは、一般的には5個ないし6個の環原子を有し、S、OおよびNの系列から4個までのヘテロ原子を有する(ここで、窒素原子はN−オキシドを形成していてもよい)芳香族性の単環式ラジカル、例えば、そして好ましくは、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニルを表す。
【0022】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素および塩素を表す。
【0023】
本発明の化合物中のラジカルが置換されているならば、そのラジカルは、断りの無い限り、同一かまたは異なって、1回または数回置換されている。3個までの同一かまたは異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0024】
本発明の目的上、好ましい化合物は、式中、
およびRが、水素を表すか、
または、
およびRがメチルを表すか、
または、
がメチルを表し、かつ、
が水素を表し、
そして、
およびRが、相互に独立して、メチルまたはエチルを表すか、
または、
およびRが、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ヒドロキシおよびエトキシカルボニルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよいか、
または、
およびRが、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、式
【化3】

{ここで、*は、カルボニル基への結合部位である}
の基を形成している、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0025】
本発明の目的上、好ましい化合物は、また、式中、
がメチルを表し、かつ、
が水素を表し、
そして、
およびRが、相互に独立して、メチルまたはエチルを表すか、
または、
およびRが、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ヒドロキシおよびエトキシカルボニルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0026】
本発明の目的上、好ましい化合物は、また、式
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは、上記の意味を有する)
に相当する式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0027】
本発明はさらに、式(I)の化合物またはそれらの塩、それらの溶媒和物もしくはそれらの塩の溶媒和物の製造方法に関し、その方法では、
[A]式
【化5】

(式中、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を、1種またはそれ以上の脱水剤の存在下、式
【化6】

(式中、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物と反応させる、
または、
【0028】
[B]式(II)の化合物を、第1段階で、1種またはそれ以上の脱水剤の存在下で、式
【化7】

(式中、Rは、上記の意味を有する)
の化合物と反応させ、第2段階で、式
【化8】

(式中、Rは上記の意味を有し、Xは、ハロゲン、好ましくは臭素またはヨウ素を表す)
の化合物と、塩基の存在下で反応させる。
【0029】
方法[A]による反応および方法[B]による第一段階は、一般的に、不活性溶媒中、必要に応じて塩基の存在下、好ましくは0℃ないし40℃の温度範囲で、大気圧下で行う。
【0030】
ここで適する脱水剤は、例えば、カルボジイミド類、例えば、N,N'−ジエチル−、N,N'−ジプロピル−、N,N'−ジイソプロピル−、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノイソプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−シクロヘキシルカルボジイミド−N'−プロピルオキシメチルポリスチレン(PS−カルボジイミド)またはカルボニル化合物、例えばカルボニルジイミダゾール、または、1,2−オキサゾリウム化合物、例えば2−エチル−5−フェニル−1,2−オキサゾリウム−3−サルフェート、または、2−tert.−ブチル−5−メチルイソオキサゾリウムパークロレート、または、アシルアミノ化合物、例えば2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、または、プロパンホスホン酸無水物、または、イソブチルクロロホルメート、または、ビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスホリルクロリド、または、ベンゾトリアゾリルオキシトリ(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートまたはO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(2−オキソ−1−(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)またはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、または、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、または、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、または、これらの混合物、または、これらと塩基との混合物である。
【0031】
塩基は、例えば、アルカリ炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウムまたはカリウム、または、重炭酸塩、または、有機塩基、例えばトリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、4−ジメチルアミノピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンである。
【0032】
好ましくは、縮合は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いて、塩基、特にジイソプロピルエチルアミンの存在下で実施する。
【0033】
不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタンもしくはトリクロロメタンなどのハロ炭化水素類、ベンゼンなどの炭化水素、または、ニトロメタン、ジオキサン、ジメチルホルムアミドまたはアセトニトリルである。溶媒の混合物を使用することも可能である。ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0034】
方法[B]による第2段階の反応は、一般的に、不活性溶媒中、好ましくは0℃ないし40℃の温度範囲で、大気圧下で行う。
【0035】
塩基は、例えば、アルカリ炭酸塩、例えば、炭酸セシウム、ナトリウムもしくはカリウム、または重炭酸塩である;炭酸セシウムが好ましい。
【0036】
不活性溶媒は、例えば、塩化メチレン、トリクロロメタンもしくは1,2−ジクロロエタンなどのハロ炭化水素類、または、ジオキサン、テトラヒドロフランもしくは1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、または、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−ブタノンもしくはアセトニトリルなどの他の溶媒、または、これらの溶媒の水との混合物である;ジオキサン、ジオキサン/水またはジメチルホルムアミドが好ましい。
【0037】
式(III)、(IIIa)および(IIIb)の化合物は、知られているか、または、既知方法と同様に製造できる。
【0038】
式(II)の化合物は、知られているか、または、式
【化9】

(式中、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を、塩基と反応させることにより製造できる。
【0039】
この反応は、一般的に、不活性溶媒中、好ましくは0℃ないし40℃の温度範囲で、大気圧下で行う。
【0040】
塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、リチウムもしくはカリウムなどのアルカリ水酸化物、または、炭酸セシウム、炭酸ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ炭酸塩、好ましくは水酸化リチウムである。
【0041】
不活性溶媒は、例えば、塩化メチレン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、メチルtert.−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなどのアルコール類、または、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルもしくはピリジンなどの他の溶媒、または、溶媒の混合物であり、好ましい溶媒は、テトラヒドロフランおよび/またはメタノールである。
【0042】
式(IV)の化合物は、発酵により製造できる。それらは、例えば、ストレプトマイセス・ボトロペンシス(Streptomyces bottropensis) (DSM16814)種、または、ストレプトマイセス属(Streptomyces spec.)(DSM17025)種の菌株を、水性培養培地中、好気性条件下で発酵させるときに産生される。典型的には、これらの微生物を、炭素源および場合によりタンパク質性物質を含有する培養培地中で発酵させる。好ましい炭素源は、例えば、グルコース、黒砂糖、スクロース、グリセロール、デンプン、トウモロコシデンプン、ラクトース、デキストリンおよびモラセスである。好ましい窒素源は、例えば、綿実粉、酵母、自己消化パン酵母、乳固形分、大豆粉、トウモロコシ粉、カゼインの膵臓またはパパイン消化分解産物、固体蒸留産物(solid distillation products)、動物ペプトンのブロス、および、肉骨粉である。好ましくは、これらの炭素および窒素源の組合せを使用する。水道水および未精製の成分を培地の成分として使用するならば、例えば亜鉛、マグネシウム、マンガン、コバルトおよび鉄などの微量元素を発酵培地に添加する必要はない。
【0043】
製造は、微生物の十分な増殖を確実にする任意の温度を含み得る。この温度は、好ましくは21℃ないし32℃、特に好ましくは約28℃である。
【0044】
最適な製造は、一般的に、4ないし8日の内に、好ましくは約7日で達成される。発酵ブロスは、通常、発酵中にわずかに塩基性(pH7.2ないしpH8.4)のままである。最終pHは、部分的には任意の使用するバッファーに、そして部分的には培養培地の当初pHに依存する。好ましくは、滅菌前にpHを約6.5ないし7.5に、特に好ましくはpH7.2に調節する。
【0045】
製造は、振盪フラスコ中、および撹拌発酵槽中の両方で実施する。培養を振盪フラスコまたは大型バットおよびタンク中で実施する場合、好ましくは、代謝物の産生における明白な遅滞期を回避し、かくして設備の非効率的な利用を回避するために、微生物の胞子形態ではなく栄養形態を播種に使用する。従って、この培地に土壌培養または斜面培養のアリコートを播種することにより、水性培養培地中の栄養形態の種菌を調製するのが有利である。一度この方法で新鮮な活発な栄養形態の種菌を調製したら、微生物の発酵のためにこれを無菌的に他の振盪フラスコまたは他の適する設備に移す。栄養形態の種菌を産生する培地は、微生物の十分な増殖を確実にするならば、本発明の化合物の製造に使用する培地と同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
一般に、製造は、上述の微生物を使用して、好気条件下で、撹拌発酵槽中で実施する。しかしながら、製造は、使用する発酵槽および出発培養物とは無関係である。これらの前駆物質は、振盪培養を使用して得ることもできる。大容量発酵には、栄養形態の種菌を使用するのが好ましい。栄養状態の種菌は、少量の培養培地に、その微生物の胞子形態、菌糸体断片または凍結乾燥ペレットを播種することにより産生する。次いで、栄養形態の種菌を発酵バットに移す。そこで、適当な培養時間の後、式(IV)の化合物が最適収率で産生される。通常、好気的液内発酵法では、無菌の空気を培養培地に通す。微生物の効率的な増殖のために、使用する空気の体積は、約0.25ないし約0.5倍の空気の体積/培養培地の体積/分の範囲にある(vvm)。30lのバットにおける最適な割合は約0.3vvmであり、撹拌を伴い、それは常套のプロペラ回転で約200−500回転/分、好ましくは240回転/分でもたらされる。泡の形成が問題であるならば、少量、例えば1ml/lのシリコンなどの消泡剤を発酵培地に添加することが必要である。
【0047】
産生は、一般的には、約96時間後に始まり、発酵期間中、少なくとも3日間起こる。ピークの産生には、約6ないし7日の発酵時間で到達する。
【0048】
式(IV)の化合物は、発酵培地から、通常の方法により単離できる。
式(IV)の化合物は、発酵した微生物の培養濾液中に主に含有されるが、それらは、微生物の菌糸体中にも少量で存在し得る。簡単な方法で分離器を使用する分離により、培養ブロスを得ることができる。
【0049】
式(IV)の化合物を発酵ブロスから分離し、それらを精製するのに、クロマトグラフィー的吸着方法(例えば、カラムクロマトグラフィー、液体−液体分離クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィーにより)、それに続く適当な溶媒による溶出、溶媒からの結晶化、およびそれらの組合せなどの、様々な方法を使用できる。好ましい精製方法では、式(IV)の化合物を、菌糸体から、または、上清の抽出物から抽出する。後者は、吸着樹脂、例えば XAD、HP20 または Lewapol を使用して調製できる。最初の精製を実施するのに、カラムクロマトグラフィーの方法、好ましくは Biotage C18 KP を使用する。化合物の最終的精製は、好ましくは、C18 カラム物質を使用する分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施する。
【0050】
好ましい発酵条件および培地は、実施例1Aないし3Aに記載する。
【0051】
上述の菌株ストレプトマイセス・ボトロペンシスDSM16814およびストレプトマイセス属DSM17025は、the Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ), Mascheroder Weg 1b, D-38124 Brunswick, Germany に、ブタペスト条約に従い寄託されている。
【0052】
本発明の化合物は、予測し得なかった価値ある抗菌的および薬物動態的特性を示す。
従って、それらは、ヒトおよび動物の疾患の処置および/または予防用の医薬としての使用に適する。
【0053】
本発明の化合物は、それらの薬理特性を理由として、単独で、または他の活性化合物と組み合わせて、感染性疾患、特に細菌感染の処置および/または予防のために使用できる。
【0054】
例えば、以下の病原体または以下の病原体の混合物に起因する局所および/または全身的疾患を処置および/または予防することが可能である:
グラム陽性球菌、例えばブドウ球菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)および連鎖球菌(ストレプトコッカス・アガラクチア、フェカリス菌、肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌);グラム陰性球菌(淋菌)並びにグラム陰性桿菌、例えば腸内細菌科、例えば大腸菌、インフルエンザ菌、シトロバクター属(シトロバクター・フロインデイ、シトロバクター・ジベルニス(divernis))、サルモネラ属および赤痢菌属;また、クレブシエラ属(肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトシ(oxytocy))、エンテロバクター属(エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロバクター・アグロメランス(agglomerans))、ハフニア属、セラチア属(セラチア・マルセセンス)、プロテウス属(プロテウス・ミラビリス、プロテウス・レッチゲリ(rettgeri)、プロテウス・ブルガリス)、プロビデンシア属、エルシニア属およびアシネトバクター属。さらに、抗菌スペクトルには、シュードモナス属(緑膿菌、シュードモナス・マルトフィリア)、並びに、厳密に嫌気性の細菌、例えば、バクテロイデス・フラジリス、ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属およびクロストリジウム属の代表例;さらに、マイコプラズマ属(肺炎マイコプラズマ、マイコプラズマ・ホミニス、マイコプラズマ・ウレアリチカム)、並びに、ミコバクテリア、例えば結核菌が含まれる。
上記の病原体のリストは例示にすぎず、決して限定とみなされるべきではない。
【0055】
上述の病原体または混合感染に起因し、そして本発明に従い使用できる製剤により予防、改善または治癒できる疾患として言及し得る例は、以下のものである:
ヒトの感染性疾患、例えば、敗血性感染、骨および関節の感染、皮膚感染、術後創感染、膿瘍、蜂窩織炎、創傷感染、感染熱傷、火傷、口腔領域の感染、歯科手術後の感染、敗血症性関節炎、乳腺炎、扁桃炎、性器感染症および眼感染。
【0056】
ヒトの他に、他の種でも細菌感染を処置できる。言及し得る例には、以下のものがある:
ブタ:大腸菌性下痢症(coli diarrhea)、腸毒血症、敗血症、赤痢、サルモネラ症、子宮炎−乳腺炎−アガラクチア症候群、乳腺炎;
反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ):下痢、敗血症、気管支肺炎、サルモネラ症、パスツレラ症、マイコプラズマ病、性器感染;
ウマ:気管支肺炎、関節の病気、産褥性および産褥後感染、サルモネラ症;
イヌおよびネコ:気管支肺炎、下痢、皮膚炎、耳炎、尿路感染、前立腺炎;
家禽(ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ハト、観賞用鳥類など):マイコプラズマ病、大腸菌感染、慢性呼吸器疾患、サルモネラ症、パスツレラ症、オウム病。
【0057】
生産用および観賞用の魚類の飼育および管理における細菌性疾患の処置も同様に可能であり、そこでは抗菌スペクトルは前述した病原体を超えて、例えば、パスツレラ属、ブルセラ属、カンピロバクター属、リステリア属、エリシペロスリス属(Erysipelothris)、コリネバクテリウム属、ボレリア属(Borellia)、トレポネーマ属、ノカルジア属、リケッチア属、エルシニア属などのさらなる病原体に及ぶ。
【0058】
本発明はさらに、疾患、好ましくは細菌性疾患、特に細菌感染の処置および/または予防のための、本発明の化合物の使用に関する。
本発明はさらに、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防のための、本発明の化合物の使用に関する。
本発明はさらに、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明の化合物の使用に関する。
本発明はさらに、本発明の化合物の抗菌的有効量を使用する、疾患、特に上述の疾患の処置および/または予防方法に関する。
【0059】
本発明の化合物は、全身的および/または局所的に作用し得る。それらは、この目的のために、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、もしくは、耳に、または、インプラントもしくはステントとして、適する方法で投与できる。
【0060】
本発明の化合物をこれらの投与経路に適する投与形で投与できる。
経口投与に適するのは、当分野の現状に準じて機能し、本発明の化合物を、迅速に、かつ/または、修飾された様式で放出し、そして、本発明の化合物を結晶形および/または無定形および/または溶解形で含有する投与形、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、遅れて溶解するか、もしくは不溶であり、本発明の化合物の放出を制御する被覆を有する)、口腔中で急速に崩壊する錠剤またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤または液剤である。
【0061】
非経腸投与は、吸収段階を避けて(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内)、または、吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)行うことができる。非経腸投与に適する投与形には、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌散剤の形態の、注射および点滴用製剤が含まれる。
【0062】
他の投与経路に適するのは、例えば、吸入用医薬形(なかんずく、散剤吸入器、噴霧器)、点鼻薬、液、スプレー;舌に、舌下に、または頬側に投与するための、錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳または眼用製剤、膣カプセル剤、水性懸濁剤(ローション剤、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えばパッチなど)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
【0063】
本発明の化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に許容し得る補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えばアスコルビン酸などの抗酸化剤)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および味および/または臭気の隠蔽剤。
【0064】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性、医薬的に許容し得る補助剤と共に含む医薬、および上述の目的のためのそれらの使用に関する。
【0065】
非経腸投与で24時間につき約5ないし250mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると、一般に明らかになった。経口投与では、量は24時間につき約5ないし100mg/体重kgである。
【0066】
それにも拘わらず、特に体重、投与経路、活性化合物に対する個体の挙動、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る数個の個別用量に分割するのが望ましいことがある。
【0067】
断りの無い限り、以下の試験および実施例における百分率のデータは、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度は、各場合で体積を基準とする。
【実施例】
【0068】
A. 実施例
使用する略号:
【表1】

【0069】
LC−MSおよびHPLCの方法:
方法1(ボトロマイシン誘導体を精製するための分取用HPLCの標準的条件):カラム:VP 250/21Nukleodur 100-5, C18 ec, Macherey&Nagel: 762002;溶離剤A:水中の0.01%トリフルオロ酢酸、溶離剤B:アセトニトリル/0.01%トリフルオロ酢酸;グラジエント:0分0%B、20分20%B、40分20%B、60分30%B、100分30%B、110分100%B、132分100%B;流速:5ml/分;オーブン:30℃;UV検出:210nm。
【0070】
方法2(ボトロマイシン誘導体の分析用HPLCの標準的条件):カラム:XTerra 3.9 x 150 WAT 186000478;温度:40℃;流速:1ml/分;溶離剤A:水中の0.01%トリフルオロ酢酸、溶離剤B:アセトニトリル+0.01%トリフルオロ酢酸、グラジエント:0.0分20%B→1分20%B→4分90%B→6分90%B→6.2分20%B。
【0071】
方法3(ボトロマイシン誘導体の分析用LC−MS測定の標準的条件):装置:HPLC Agilent Series 1100 を有する Micromass LCT;カラム:Waters Symmetry C18; 3.5 μm; 50 mm x 2.1 mm;溶離剤A:水1l+98−100%ギ酸1ml;溶離剤B:アセトニトリル1l+98−100%ギ酸1ml;グラジエント:0分100%A→1分100%A→6分10%A→8分0%A→10分0%A→10.1分100%A→12分100%A;流速0分から10分まで0.5ml/分→10.1分1ml/分→12分0.5ml/分;オーブン:40℃;UV検出DAD:208−500nm。
【0072】
NMR測定:プロトン周波数500.13MHzの Bruker DMX500 で NMR測定を実施した。溶媒は、DMSO−dであり、温度は302Kであった。較正は、2.5ppmのDMSOシグナルに基づいた。
【0073】
出発化合物
ボトロマイシンA2(実施例1A)の構造をX線構造解析により確認した。挙げた他のボトロマイシン(実施例2Aないし5A)は、類似のNMRスペクトルを示すので、同じ立体化学を有すると想定される。従って、これらの構造は、当分野の現状とは異なる立体化学を有する。
【0074】
発酵中に形成される化合物1Aないし5Aを、さらなる反応に使用する(実施例1参照)。もし化合物1Aないし5Aの立体化学の属性が実際は異なるならば、二次的産物の立体化学も対応して異なる。
【0075】
実施例1A
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−メトキシ−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド(ボトロマイシンA2)
【化10】

【0076】
実施例2A
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−メトキシ−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド(ボトロマイシンB2)
【化11】

【0077】
実施例3A
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14,14−ジメチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−メトキシ−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド(ボトロマイシンC2)
【化12】

【0078】
実施例4A
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−2−カルボキシ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド(酸としてのボトロマイシンA2)
【化13】

【0079】
実施例5A
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14,14−ジメチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−2−カルボキシ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド(酸としてのボトロマイシンC2)
【化14】

【0080】
化合物1A、2A、3A、4Aおよび5Aの合成
使用する株
表1:前駆物質ボトロマイシンAおよびBを産生できる菌株:
【表2】

ATCC = American Type Culture Collection, Manassas, Virginia, U.S.A.
DSM = Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkuluren, Brunswick, Germany.
CBS = Centraalbureau voor Schimmelcultures, Baarn, The Netherlands
【0081】
ストレプトマイセス・ボトロペンシスは、Koninklijke Nederlandsche Gisten Spiritusfabriek, N.V. により単離および同定され、菌株寄託番号 CBS 163.64 で CBS, Baarn, The Netherlands (BP 762736, 1954) に寄託された。本特許の確認のために、その菌株は Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkuluren, Brunswick, Germany に受託番号 DSM 16814 で再度寄託された。
【0082】
ストレプトマイセス属 DSM 17025 は、Eifel/ドイツ由来の土壌サンプルから単離され、Bayer Healthcare AG の保存培養物所蔵品に、菌株番号BC16019で含まれた。
【0083】
実施例1A、2Aおよび3Aの製造
S.ボトロペンシスDSM16814の予備培養物の調製
予備培養物の調製のために、菌株S.ボトロペンシスDSM16814を以下の培地中で培養した:培地1:酵母−麦芽培地:D−グルコース0.4%、酵母抽出物0.4%、麦芽抽出物1.0%、水道水1lまで。水酸化ナトリウム水溶液を使用して培地のpH値を7.2に調節した。各場合で、121℃、1.1barの過圧下で20分間培地を滅菌した。
【0084】
各場合で、50%グリセロール中の菌糸体懸濁液2mlを、種菌として、1000mlの三角フラスコ中の15x150mlの培地1用に調製し、96時間、毎分240回転(回転/分)、28℃で、回転式振盪機上でインキュベートした。これらの培養物を、−20℃で保存される新しいグリセロール保存サンプルの調製に使用するか、または、それらを製造用培養物の種菌として供した。
【0085】
S.ボトロペンシスDSM16814の製造用培養物(30lの規模)
製造用培養物の調製のために、上記の15x150mlの予備培養物を、22lの以下の培地2:グルコース(1%)、デンプン(1.5%)、酵母抽出物(0.5%)、脱脂大豆粉(1.0%)、塩化ナトリウム(0.5%)、炭酸カルシウム(0.3%)、に種菌として使用した。播種に先立ち、消泡剤 SAG 5693 (Union Carbide, USA) 1ml/lを培地に添加し、60分間、1.1bar下で、蒸気で培地を滅菌した。この製造用培養物を、120−160時間、28℃、撹拌速度240回転/分で、通気速度0.3vvmで、30lの Bioengineering (Switzerland)の撹拌発酵槽(ブレード式撹拌機)でインキュベートした。無菌条件で得た毎日のサンプル20mlで、分析用HPLCを使用して試験し、製造過程を監視した。これらの条件下で、ボトロマイシンA(実施例1A)の収量20mg/lを得た。
【0086】
S.属DSM17025の予備培養物の調製
予備培養物の調製のために、菌株S.属DSM17025を、以下の培地中で培養した:培地1:酵母−麦芽培地:D−グルコース0.4%、酵母抽出物0.4%、麦芽抽出物1.0%、水道水1lまで。水酸化ナトリウム水溶液を使用して培地のpH値を7.2に調節した。各場合で、121℃、1.1barの過圧下で20分間培地を滅菌した。
【0087】
各場合で、50%グリセロール中の菌糸体懸濁液2mlを、種菌として、1000mlの三角フラスコ中の2x150mlの培地1用に調製し、96時間、毎分240回転(回転/分)、28℃で、回転式振盪機上でインキュベートした。これらの培養物を、−20℃で保存される新しいグリセロール保存サンプルの調製に使用するか、または、それらを製造用培養物の種菌として供した。
【0088】
S.属DSM17025の製造用培養物(30lの規模)
製造用培養物の調製のために、上記の2x150mlの予備培養物を、30lの以下の培地2:グルコース(1%)、デンプン(1.5%)、酵母抽出物(0.5%)、脱脂大豆粉(1.0%)、塩化ナトリウム(0.5%)、炭酸カルシウム(0.3%)、に種菌として使用した。播種に先立ち、消泡剤 SAG 5693 (Union Carbide, USA) 1ml/lを培地に添加し、60分間、1.1bar下で、蒸気で培地を滅菌した。この製造用培養物を、90−140時間、28℃、撹拌速度240回転/分で、通気速度0.3vvmで、40lの Bioengineering (Switzerland)の撹拌発酵槽(ブレード式撹拌機)でインキュベートした。無菌条件で得た毎日のサンプル20mlで、分析用HPLCを使用して試験し、製造過程を監視した。これらの条件下で、ボトロマイシンA(実施例1A)の収量20mg/lを得た。
【0089】
分析用HPLC
UV/可視(HPLC−UV/Vis)検出および質量分析による検出を用いる分析用HPLC法を、生合成中の検出に使用した。
HPLC分析の前に、水性の発酵サンプルを菌糸体と培養上清とに分け、得られた両方の産物にメタノールを添加した:培養濾液をメタノールで1:4に希釈し、遠心分離した菌糸体を、当初量のメタノールで、超音波槽中で15分間抽出した。メタノール性のサンプルを、0.45μmのフィルターで濾過し、分析用HPLCまたはLC−MSに各々注入した。
【0090】
HPLC−MSによる分析を、Micromass-LCT 質量分析機 (Micromass, Manchester, Great Britain) と組み合わせた HP 1100 HPLC システムで、ESIおよびESIモードで実施した。質量スペクトルをm/z=100ないし1650の範囲で記録した。個々のボトロマイシンは、以下の保持時間を有する:
ボトロマイシンA2(実施例1A):R=4.54分
ボトロマイシンB2(実施例2A):R=4.51分
ボトロマイシンC2(実施例3A):R=4.61分
ボトロマイシンA2遊離酸(実施例4A):R=4.51分
ボトロマイシンC2遊離酸(実施例5A):R=4.48分
【0091】
使用したHPLC−MSシステムは、以下のパラメーターを用いて操作した:固定相:Waters Symmetry C18, 3.5 μm 2.1 x 50 mm;移動相:グラジエント0.1%ギ酸を含む水(A)および0.1%ギ酸を含むアセトニトリル(B):0−1分100%A;1−6分90%Bまで直線状グラジエント;6−8分90%B−100%B;8−10分100%B;流速0.5ml/分;カラムオーブン40℃、UV検出:DAD208−700nm。ボトロマイシンの検出は、プロトン化分子イオン(M+H)および脱プロトン化分子イオン(M−H)、二重荷電分子(M+2H)++およびギ酸付加物(M+AS)に基づき行った。
【0092】
ボトロマイシンA2(実施例1A):(M+H)=823.8;(M+2H)++=412.5;(M−H)=821.6;(M+AS)=867.7
ボトロマイシンB2(実施例2A):(M+H)=809.8;(M+2H)++=405.5;(M−H)=807.6;(M+AS)=853.6
ボトロマイシンC2(実施例3A):(M+H)=837.7;(M+2H)++=419.5;(M−H)=835.6;(M+AS)=881.6
ボトロマイシンA2遊離酸(実施例4A):(M+H)=809.6;(M+2H)++=405.5;(M−H)=807.5
ボトロマイシンC2遊離酸(実施例5A):(M+H)=823.7;(M+2H)++=412.5;(M−H)=821.5;(M+AS)=867.5
【0093】
G 1312A バイナリポンプシステム、G 1315A ダイオードアレイ検出器、G 1316A カラム 温度制御システム、G 1322A 脱気システムおよび G 1313A 自動注入器からなる Hewlett Packard Series 1100 Analytical HPLC System (HP, Waldbronn, Germany) を使用して、HPLC−UV/Vis分析を実施した。流速0.4ml/分の0.05%トリフルオロ酢酸を含む水(A)および0.05%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル(B)を移動相として使用し、10mmのプレカラムを有する Waters Symmetry C18, 3.5 μm 2.1 x 50 mm カラムを固定相として供した。段階的グラジエント0−100%B(0−1−2−3.5−6.7−6.8−7.8−8.4分で25−25−45−45−65−100−25%B)でサンプルを分離した。HPLC−UVクロマトグラムを210nm(不純物の検出)、225nmおよび254nmで記録した。200−600nmの範囲のダイオードアレイ検出は、HPLC−UV/Visスペクトルをもたらした。カラムオーブンは45℃に設定した。
【0094】
記載した化合物は、以下のUVスペクトルを有する:206−207nmにUVmax、230nmに弱いショルダー、以下の保持時間:
ボトロマイシンA2(実施例1A):R=4.68分
ボトロマイシンB2(実施例2A):R=4.54分
ボトロマイシンC2(実施例3A):R=4.88分
ボトロマイシンA2遊離酸(実施例4A):R=3.44分
ボトロマイシンC2遊離酸(実施例5A):R=4.22分
【0095】
撹拌発酵槽培養(30lの規模)からの実施例1A、2A、3A、4Aおよび5Aの化合物の単離
30l規模の菌株ストレプトマイセス・ボトロペンシスDSM16814発酵物からの菌糸体を、上清から遠心分離により分離した(2300回転/分で15分間)。
遠心分離後に得られる培養上清を、2500mlの Lewapol カラム (吸着樹脂、OC 1064, Bayer AG, Leverkusen, Germany)に負荷した。通過物および洗浄水(約30l)を廃棄した。次いで、後の洗浄を、カラムの6倍の体積の60%メタノールおよびカラムの3倍の体積の80%メタノールで実施した。得られる画分を廃棄し、吸着樹脂に結合したボトロマイシンを、少なくともカラム体積の10倍の100%メタノールで溶出した。次いで、溶出液を真空で乾燥した。
【0096】
遠心分離後に得られた菌糸体を、Ultra-Turrax P50 DPX (Janke&Kunkel Labortechnik)中、メタノール各5lで2回処置し、次いで分離し、廃棄した。菌糸体の温浸から得たメタノール性抽出物を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、水性残渣(約2.6l)を酢酸エチル各2lで4回抽出した。酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で乾燥させた。
【0097】
菌糸体(約11g、ボトロマイシンA2の含有量→主要な代謝物、約3%)および培養上清(約5g、ボトロマイシンA2の含有量約10%)の後処理の残渣を合わせ、部分的にメタノールに溶解し、Biotage クロマトグラフィーカラム (Flash 75, 75 x 300 mm, Biotage C18 KP-WP, 15-20 μM)でさらに精製した。溶離剤0.05%トリフルオロ酢酸を含む水(A)および0.05%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル(B)を流速80ml/分で、12、16、20、25、28、31、31、35および50%Bの段階で、段階的グラジエントを使用した。31%Bで溶出されるボトロマイシンを、真空で乾燥するまで濃縮し(残渣約0.9g、収率約61%のボトロマイシンA2)、メタノールに溶解した。全体量を3つの部分に分割し、次いで、分取HPLCシステムを使用して、3回の個別の実施で分離した: hardware Gilson Abimed HPLC(UV検出器210nm、バイナリポンプシステム、フラクションコレクター);固相:プレカラム Nucleosil C18, 7 μm, 20 x 30 mm を有する Inertsil ODS-3 C18, 5 μm; 30 x 250 mm;流速:41.2ml/分;画分サイズ20.6ml/0.5分、50分から開始);0.05%トリフルオロ酢酸を含む水(A)から0.05%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル(B)への段階的グラジエント:0−15−75−105−115−125分で10−10−30−30−100−100%B。
【0098】
ボトロマイシンは、グラジエント領域31−35%Bで溶出した。HPLCおよびHPLC−MS分析の後、個々の画分を標的物質に従って合わせ、真空で乾燥させた。
【0099】
主要な代謝物ボトロマイシンA2(実施例1A)について、>97%純度の320mgの収量が達成された。第2の代謝物ボトロマイシンB2(実施例2A)およびボトロマイシンC2(実施例3A)について、>98%純度の12mgおよび>90%純度の約15mgが達成された。ボトロマイシンA2(実施例4A)およびボトロマイシンC2(実施例5A)の遊離酸は、少量の成分として、<5mgの量で存在する。第2の代謝物(実施例3A)および少量の成分(実施例4A)、(実施例5A)を、同じ分取用HPLC法で、さらなる精製段階で>98%純度にさらに精製した。
【0100】
精製後、ボトロマイシンは、トリフルオロ酢酸の塩として存在し、メシルおよびギ酸塩への塩交換は完全に可能である。
【0101】
実施例4A
代替的合成:
ボトロマイシンA2 265mg(322μmol)を、メタノール125mlに溶解し、2M水酸化リチウム水溶液2.4mlを添加する。溶液を還流下で1時間加熱し、次いで、室温に冷却し、1M塩酸5.4mlでpH1−2に調節する。混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチル300mlと水100mlとに分配した。水相を分離し、塩化アンモニウムで飽和させ、酢酸エチル100mlで再度抽出する。合わせた酢酸エチル相を濃縮し、残渣をジクロロメタン/メタノール1:1に取る。ジエチルエーテルおよび石油エーテルの添加により、標的生成物を冷やして沈殿させる。吸引濾過による回収および乾燥の後、酸199mg(理論値の76%)を得る。
HPLC(方法2):R=4.14分;
LC−MS(方法3):R=4.34分;m/z=809(M+H)
【0102】
実施例5A
代替的合成:
実施例4Aの代替的合成と同様に、表題化合物をボトロマイシンC2 28mg(33.45μM)から製造する。
収量:20mg(理論値の73%)
HPLC(方法2):R=4.16分;
LC−MS(方法3):R=4.47分;m/z=821(M−H)
【0103】
実施例6A
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザ−シクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−2−カルボキシ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化15】

実施例4Aの代替的合成と同様に、ボトロマイシンB2 22mg(27μM)から表題化合物を製造する。
収量:21mg(理論値の97%)
HPLC(方法2):R=4.01分;
LC−MS(方法3):R=4.34分;m/z=793(M−H)
【0104】
例示的実施態様
実施例1
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[メトキシ(メチル)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化16】

【0105】
実施例4A由来の化合物75mg(92.7μM)を、DMF3mlに溶解し、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール18.8mg(139μmol)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩21.3mg(111.2μmol)、および、次いで、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン28.3mg(463.5μmol)を添加する。混合物を室温で16時間撹拌する。次いで、混合物を濃縮する。残っている残渣をジクロロメタン300mlに取り、5%クエン酸50mlと振盪することにより抽出する。水相を分離し、塩化アンモニウムで飽和させ、ジクロロメタンで再度抽出する。合わせた有機相を濃縮し、残渣を分取用HPLC(方法1)により精製する。対応する画分を合わせ、溶媒を蒸発させ、残っている残渣をジオキサン/水1:1から凍結乾燥する。標的化合物55mg(理論値の70%)を得る。
HPLC(方法2):R=4.31分;
LC−MS(方法3):R=4.59分;m/z=852(M+H)
1H-NMR (500MHz, DMSO-d6): δ = 0.8 および 0.89 (2d, 6H), 0.84 (s, 9H), 0.9 (s, 9H), 0.97 (d, 3H), 1.12 (d, 3H), 1.68 (m, 1H), 1.88 (m, 1H), 2.2 (m, 1H), 2.55 (m, 1H), 2.9-3.3 (m, 6H), 3.65-3.8 (m, 5H), 3.4 および 3.9 (2m, 2H), 3.95 (d, 1H), 4.12 (d, 1H), 4.2 (dd, 1H), 4.7 (t, 1H), 5.0 (d, 1H), 5.63 (m, 1H), 6.7 (d, 1H), 7.1-7.3 (m, 5H), 7.45 (m, 1H), 7.63 および 7.73 (2d, 2H), 7.8-8.0 (m, 2H), 8.95 (d, 1H), 9.22 (d, 1H).
【0106】
実施例2
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−イソオキサゾリジン−2−イル−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化17】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物5mg(6.2μM)、イソオキサゾリジン塩酸塩 (Perkin 2, 2000, 1435 or J. Chem. Soc. 1942, 432 と同様に製造)1.35mg(12.4μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール1.25mg、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩1.4mgおよびエチル−ジイソプロピルアミン3μlから、表題化合物を製造する。
収量:2.1mg(理論値の40%)
HPLC(方法2):R=4.26分;
LC−MS(方法3):R=4.0分;m/z=864(M+H)
【0107】
実施例3
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−ベータ−メチル−N−[(1R)−3−(1,2−オキサジナン−2−イル)−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−L−フェニルアラニンアミド
【化18】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物10mg(12.4μM)、1,2−オキサジナン塩酸塩(Perkin 2, 2000, 1435 または J. Chem. Soc. 1942, 432 と同様に製造)3.1mg(24.7μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール2.5mg、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩2.9mgおよびエチル−ジイソプロピルアミン6.5μlから、表題化合物を製造する。
収量:3.8mg(理論値の35%)
HPLC(方法2):R=4.36分;
LC−MS(方法3):R=4.6分;m/z=878(M+H)
【0108】
実施例4
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザ−シクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−ベータ−メチル−N−[(1R)−3−(1,2−オキサジナン−2−イル)−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−L−フェニルアラニンアミド
【化19】

実施例1の合成と同様に、実施例6A由来の化合物11mg(13.85μM)、1,2−オキサジナン塩酸塩(Perkin 2, 2000, 1435 または J. Chem. Soc. 1942, 432と同様に製造) 5.1mg(41.5μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール2.8mg、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩3.2mgおよびエチル−ジイソプロピルアミン7μlから、表題化合物を製造する。
収量:1.7mg(理論値の14%)
HPLC(方法2):R=4.26分;
LC−MS(方法3):R=4.60分;m/z=864(M+H)
【0109】
実施例5
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザ−シクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[メトキシ(メチル)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化20】

実施例1の合成と同様に、実施例6A由来の化合物11mg(13.9μM)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン4.2mg(69μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール2.8mgおよびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩3.2mgから、表題化合物を製造する。
収量:8.8mg(理論値の76%)
HPLC(方法2):R=4.17分;
LC−MS(方法3):R=4.49分;m/z=838(M+H)
【0110】
実施例6
N−[(3S,6S,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14,14−ジメチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[メトキシ(メチル)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化21】

実施例1の合成と同様に、実施例5A由来の化合物10mg(12μM)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン3.7mg(61μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール2.5mgおよびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩2.8mgから表題化合物を製造する。
収量:1.7mg(理論値の16%)
HPLC(方法2):R=4.31分;
LC−MS(方法3):R=4.54分;m/z=866(M+H)
【0111】
実施例7
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[エトキシ(エチル)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化22】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物10mg(12.4μM)、N,O−ジエチルヒドロキシルアミン(DE2113355(1971)と同様に製造)5.5mg(62μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール3.3mgおよびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩3.6mgから、表題化合物を製造する。
収量:5.4mg(理論値の50%)
HPLC(方法2):R=4.35分;
LC−MS(方法3):R=4.78分;m/z=880(M+H)
【0112】
実施例8
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[エトキシ(メチル)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化23】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物10mg(12.4μM)、N−メチル−O−エチルヒドロキシルアミン(DE2113355(1971)と同様に製造)4.6mg(62μM)、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール3.3mgおよびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩3.6mgから、表題化合物を製造する。
収量:5mg(理論値の47%)
HPLC(方法2):R=4.23分;
LC−MS(方法3):R=4.63分;m/z=866(M+H)
【0113】
実施例9
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−(4−ヒドロキシイソオキサゾリジン−2−イル)−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化24】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物10mg(12.4μM)およびイソオキサゾリジン−4−オール(Synthesis 1982, 5, 426と同様に製造)2.2mg(25μM)から、表題化合物を製造する。ここで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩/1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールの代わりに、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU)7.1mg(18.6μM)を、エチルジイソプロピルアミン3.2mgの存在下でカップリング剤として使用する。16時間室温で撹拌した後、混合物を濃縮し、分取用HPLC(方法1)により残渣を直接精製し、表題化合物を実施例1と同様に単離する。
収量:6.8mg(理論値の63%)
HPLC(方法2):R=3.86分;
LC−MS(方法3):R=4.7分;m/z=880(M+H)
【0114】
実施例10
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[5−(エトキシカルボニル)イソオキサゾリジン−2−イル]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化25】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物10mg(12.4μM)およびエチルイソオキサゾリジン−5−カルボキシレート(J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1984, 9, 606と同様に製造)3.6mg(25μM)から、表題化合物を製造する。ここで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩/1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールの代わりに、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU)9.4mg(24.7μM)を、エチルジイソプロピルアミン3.2mgの存在下で、カップリング剤として使用する。室温で16時間撹拌した後、混合物を濃縮し、分取用HPLC(方法1)により残渣を直接精製し、実施例1と同様に、表題化合物を単離する。
収量:6mg(理論値の52%)
HPLC(方法2):R=4.3分;
LC−MS(方法3):R=5.1分;m/z=936(M+H)
【0115】
実施例11
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−[6−(エトキシカルボニル)−1,2−オキサジナン−2−イル]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化26】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物17mg(21μM)およびエチル−1,2−オキサジナン−6−カルボキシレート(J. Org. Chem. 2000, 65, 7667から製造)6.7mg(42μM)から、表題化合物を製造する。ここで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩/1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールの代わりに、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU)16mg(42μM)を、エチルジイソプロピルアミン5.4mgの存在下で、カップリング剤として使用する。16時間室温で撹拌した後、混合物を濃縮し、残渣を分取用HPLC(方法1)により直接精製し、表題化合物を実施例1と同様に単離する。
収量:16.7mg(理論値の84%)
HPLC(方法2):R=4.5分;
LC−MS(方法3):R=5.3分;m/z=948(M−H)
【0116】
実施例12
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−ベータ−メチル−N−[(1R)−3−(2−オキサ−3−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−3−イル)−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−L−フェニルアラニンアミド
【化27】

実施例1の合成と同様に、実施例4A由来の化合物5mg(6.2μM)および2−オキサ−3−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エントリフルオロアセテート(Organic Letters 2004, 11, 1805 から製造)4.2mg(19μM)から、表題化合物を製造する。ここで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩/1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールの代わりに、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU)3.5mg(9.5μM)を、エチルジイソプロピルアミン1.6mgの存在下で、カップリング剤として使用する。室温で16時間撹拌した後、混合物を濃縮し、残渣を分取用HPLC(方法1)により直接精製し、表題化合物を実施例1と同様に単離する。
収量:5mg(理論値の90%)
HPLC(方法2):R=4.3分;
LC−MS(方法3):R=5.0および5.1分;m/z=902(M+H)
【0117】
実施例13
N−[(3S,6S,14R,14aS)−6−tert−ブチル−3−イソプロピル−14−メチル−1,4,10−トリオキソドデカヒドロピロロ[1,2−a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン−7(8H)−イリデン]−3−メチル−L−バリル−(ベータS)−N−[(1R)−3−ベンジル(メトキシ)アミノ]−3−オキソ−1−(1,3−チアゾール−2−イル)プロピル]−ベータ−メチル−L−フェニルアラニンアミド
【化28】

実施例4A由来の化合物40mg(49.4μmol)を、DMF20mlに溶解し、N−ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩11.8mg(74.2μmol)、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU)37.6mg(98.8μmol)およびエチルジイソプロピルアミン12.8mgを添加する。16時間室温で撹拌した後、混合物を濃縮し、残渣をアセトニトリル/水1:2に取り、分取用HPLC(方法1)により精製する。対応する画分を合わせ、溶媒を蒸発させ、残っている残渣をジオキサンから凍結乾燥する。標的化合物44.8mg(理論値の99%)を得る。
HPLC(方法2):R=4.38分
【0118】
この中間体25mg(27.3μmol)を、10mlのジオキサン/水1:1に溶解し、炭酸セシウム26.7mg(82μmol)を添加する。10分間室温で撹拌した後、混合物を凍結乾燥する。残渣をDMF10mlに取り、ヨウ化メチル85μl(1.4mmol)を室温で添加する。反応は30分後に完了する。混合物を濃縮し、残渣を分取用HPLC(方法1)により精製する。表題化合物8.4mg(理論値の33%)を得る。
HPLC(方法2):R=4.3分;
LC−MS(方法3):R=5.65分;m/z=928(M+H)
【0119】
B. 生理活性の評価
使用する略号:
【表3】

【0120】
本発明の化合物のインビトロおよびインビボの活性は、以下のアッセイで立証できる:
最低阻害濃度(MIC)の決定
最低阻害濃度(MIC)は、試験微生物の増殖が18−24時間にわたり阻害される抗生物質の最低濃度である。これらの場合、阻害剤の濃度は、標準的な微生物学的方法により決定できる(例えば、The National Committee for Clinical Laboratory Standards. Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically; approved standard-fifth edition. NCCLS document M7-A5 [ISBN 1-56238-394-9]. NCCLS, 940 West Valley Road, Suite 1400, Wayne, Pennsylvania 19087-1898 USA, 2000 参照)。本発明の化合物のMICは、96−ウェルマイクロタイタープレートの規模での液体希釈試験で決定する。5%ヒツジ血液を用いるコロンビア血液寒天プレート(Becton Dickinson)[インフルエンザ菌用のチョコレート−寒天プレート(Becton Dickinson)]上の新鮮な細菌の画線を、生理塩水中でOD5780.1に調節する。試験物質をDMSO10mMに溶解し、1:2希釈段階でDMSOによりさらに希釈する。各場合で、希釈した試験物質1μlを96ウェルマイクロタイタープレートに加え、Mueller-Hinton ブロス(インフルエンザ菌用のHTM)で1:300に希釈した微生物懸濁液100μlを添加する。肺炎球菌および化膿性連鎖球菌には、微生物希釈は、2%溶血ウマ血液を添加した Mueller-Hinton ブロス中で1:100である。マイクロタイタープレートを、好気的に18−24時間37℃でインキュベートする;連鎖球菌およびインフルエンザ菌を微好気的に5%COの存在下でインキュベートする。
各場合で、目視できる細菌の増殖が起こらなくなる最低物質濃度を、MICと定義する。
【0121】
表A
【表4】

濃度のデータ:μM表記のMIC
【0122】
黄色ブドウ球菌133による全身感染:
本発明の化合物の細菌感染の処置への適合性は、様々な動物モデルで立証できる。この目的で、一般的に、動物を適当な病原性微生物に感染させ、次いで、特定の治療モデルに適合させた製剤中に存在する試験しようとする化合物で処置する。特に、本発明の化合物の細菌感染の処置への適合性は、黄色ブドウ球菌による感染後のマウス敗血症モデルで立証できる。
【0123】
この目的で、黄色ブドウ球菌133細胞を、BHブロス(Oxoid, Germany)中で終夜培養する。終夜培養物を新鮮なBHブロス中で1:100に希釈し、3時間増殖させた。対数増殖期にある細菌を遠心分離し、緩衝化生理食塩水で2回洗浄する。次いで、吸光度50ユニットの塩水中の細胞懸濁物を、光度計(Dr Lange LP 2W)で調節する。希釈段階(1:15)の後、この懸濁液を10%ムチン(mucine)懸濁液と1:1で混合する。マウス20g当たりにこの感染溶液0.2mlをi.p.投与する。これは、微生物約1−2x10個/マウスの細胞数に相当する。i.v.治療を、感染の30分後に行う。雌のCFW1マウスをこの感染実験に使用する。動物の生存率を5日間記録する。動物モデルを、非処置動物が感染後24時間以内に死亡するように調節する。ED100は、全ての動物が観察期間中に感染から生き残る最低用量に相当する。
【0124】
肺炎球菌L3TVによる肺感染
本発明の化合物の細菌感染の処置への適合性を、肺炎球菌による感染後のマウスの肺感染モデルでも立証できる。
この場合、雌のCFW1マウスを、8x10個の微生物肺炎球菌L3TVで鼻腔内感染させる。凍結保存培養物の希釈により接種菌液を調節する。感染の1日目および2日目に、i.v.治療を各場合で1日2回適用する。感染後3日目に、肺を取り出し、組織をホモジナイズし、微生物の計数を実施する。
【0125】
インビボの薬物動態的特性の決定
一般に、化合物の薬物動態的特性(例えば、クリアランス、分布量など)は、特定の種における化合物の血漿濃度の測定により決定する。このために、例えば化合物の静脈投与後に、血液を様々な時間(例えば、2、5、10、20、40分、1、2、4、6、8、24時間)で採取し、遠心分離する。次いで、LC/MSMSによる適当な分析方法で化合物の血漿濃度を測定する。
【0126】
マウスでは、各サンプル採取時間に1匹の動物が必要である。血液は、尾静脈から採取する。ラットでは、カテーテル処置した動物から血液を得る:シリコンカテーテルを、右外頸静脈を介して心臓まで進めるか、または、尾静脈中に置いて確保し、頸筋中に固定し、皮下で背中にもたらし、皮膚を通して導き出し、プラスチックの閉塞物で閉じる。このカテーテルは、1匹の動物における完全な血中動態を得ることを可能にするように、恒常的な静脈への接近をもたらす。
イヌの場合、血液を頸静脈から採取する。再度、1匹の動物における完全な血中動態を得る。
【0127】
医薬組成物の例示的実施態様
本発明の化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
静脈内投与できる液剤:
組成:
実施例1の化合物1mg、ポリエチレングリコール400 15gおよび注射用水250g。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコール400と共に撹拌しながら水に溶解する。溶液を濾過滅菌し(孔直径0.22μm)、加熱滅菌した点滴瓶に無菌条件下で分注する。後者を点滴用の栓およびクリンプキャップで閉じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
およびRは、水素を表すか、
または、
およびRは、メチルを表すか、
または、
はメチルを表し、そして、
は水素を表し、
そして、
およびRは、相互に独立して、C−C−アルキルを表すか
{これは、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−シクロアルキル、C−C10−アリールおよび5員または6員のヘテロアリールからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよく、C−C−アルキルがメチルではない場合、代替的にまたは付加的に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルコキシおよびC−C−アルキルアミノからなる群から相互に独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていてもよい}
または、C−C−シクロアルキルを表すか
{それは、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルアミノ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルおよびC−C−アルキルアミノカルボニルからなる群から相互に独立して選択される1個ないし3個の置換基で置換されていてもよい}、
または、
およびRは、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルキルアミノ、シアノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルおよびC−C−アルキルアミノカルボニルからなる群から相互に独立して選択される1個ないし2個の置換基で置換されていてもよいか、
または、
およびRは、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、式
【化2】

{ここで、*は、カルボニル基への結合部位である}
の基を形成している]
の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つ。
【請求項2】
式中、
およびRが、水素を表すか、
または、
およびRがメチルを表すか、
または、
がメチルを表し、かつ、
が水素を表し、
そして、
およびRが、相互に独立して、メチルまたはエチルを表すか、
または、
およびRが、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ヒドロキシおよびエトキシカルボニルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよいか、
または、
およびRが、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、式
【化3】

{ここで、*は、カルボニル基への結合部位である}
の基を形成している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つ。
【請求項3】
式中、
がメチルを表し、かつ、
が水素を表し、
そして、
およびRが、相互に独立して、メチルまたはエチルを表すか、
または、
およびRが、一体となって(CHまたは(CHを表し、そして、それらが各々結合している窒素または酸素原子と一体となって、5員または6員の環を形成しており、ここで、その環は、ヒドロキシおよびエトキシカルボニルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つ。
【請求項4】

【化4】

(式中、R、R、RおよびRは、請求項1、請求項2または請求項3に記載の意味を有する)
に相当することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つ。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つの製造方法であって、
[A]式
【化5】

(式中、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物を、1種またはそれ以上の脱水剤の存在下、式
【化6】

(式中、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物と反応させる、
または、
[B]式(II)の化合物を、第1段階で、1種またはそれ以上の脱水剤の存在下、式
【化7】

(式中、Rは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物と反応させ、第2段階で、式
【化8】

(式中、Rは請求項1に記載の意味を有し、Xは、ハロゲン、好ましくは臭素またはヨウ素を表す)
の化合物と、塩基の存在下で反応させる、
を特徴とする、方法。
【請求項6】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
細菌性疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
少なくとも1種の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を、少なくとも1種の不活性、非毒性、医薬的に許容し得る補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項10】
細菌感染の処置および/または予防のための、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
抗菌的有効量の少なくとも1種の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物または請求項9もしくは請求項10に記載の医薬を投与することによる、ヒトおよび動物における細菌感染の制御方法。

【公表番号】特表2008−534538(P2008−534538A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503405(P2008−503405)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002565
【国際公開番号】WO2006/103010
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506207901)アイキュリス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】AiCuris GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】