説明

環状グアニジン化合物からなる二酸化炭素吸着剤及び環状グアニジン化合物の製造方法

【課題】二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、高収率で安価に製造が可能な環状グアニジン化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素吸着剤は、環状グアニジン化合物、例えば、2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン又はその誘導体からなる。製造方法では、アルキルチオ環状アミジン塩又はその誘導体とアミノ化合物を、エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒中で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、高収率で安価に製造が可能な環状グアニジン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素濃度の上昇による地球温暖化の問題は、ますます深刻化しており、その対策が至急に求められている中で、二酸化炭素の化学的なトラップ法の開発にも大きな期待が寄せられている。このようなトラップ法に利用可能な化合物として、環状アミジン骨格を有する1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が知られている(特許文献1)。しかしながらDBUは二酸化炭素の吸着能力が不十分という問題があった。
【0003】
また、環状アミジンよりも強塩基である環状グアニジンの1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)を用いると、DBUよりも高い二酸化炭素吸着力があることが報告されている(非特許文献1)。しかしながらTBDは非常に高価であるため、二酸化炭素吸着材料のように多量な量を必要とする用途に適しておらず、実用化が困難であるという問題があった。
すなわち、TBDの反応に用いるテトラメトキシメタンが非常に高価であり、そのことは別にしたとしてもジメチルスルホキシド溶液中120℃で二日間を要するなど生産効率上の問題があり、大量合成に適さない。また、TBDは反応性置換基を持たないため、高分子化や担体への化学反応による担持が難しく、二酸化炭素のトラップの実用化が困難であった。
【0004】
また、TBD以外の環状グアニジンが二酸化炭素の吸着能を有することについては知られていない。
そこで、二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、高収率で安価に製造が可能な環状グアニジン化合物及びその製造方法が求められていた。
なお、環状グアニジン類の製造法はいくつかの報告がなされており、アルキルチオ環状アミジン塩とアミンを反応させる方法(例えば、非特許文献2)やハロイミニウム塩とヒドロキシエチルグアニジン類を反応させる方法(特許文献2)が知られている。
【0005】
前者は、アミンを過剰に用いる反応が多く、このため特に六員環を有するグアニジンの合成では収率が50%前後と非常に低い。最近、160℃条件下でのマイクロウェーブ反応による合成も報告されている(非特許文献3)が、このように高エネルギーを投じても収率は70%前後である。
後者は、原料であるヒドロキシエチルグアニジン類の合成が容易ではなく、更に環状グアニジンが生成する際にハロイミニウム塩と同程度の量の副生成物が生じ、また収率も中程度のため、カラム精製による工程が必要となり、生産効率に劣るものであった。
従って、TBDと同様の、二酸化炭素吸着力を有する環状グアニジンを実用化するため、TBDに替わる環状グアニジンをより安価で効率よく製造することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−261315号公報
【特許文献2】特開2000−198775号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tetrahedron 2008,64,10097−10106
【非特許文献2】J.Med.Chem.2007,50,6307−6315
【非特許文献3】J.Org.Chem.2004,69,1571−1580
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、TBDと同様の、二酸化炭素吸着力を有する環状グアニジンを実用化するため、TBDに替わる環状グアニジンであって、二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、高収率で安価に製造が可能な環状グアニジン化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
[1]一般式(1):
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、−Y−Z、−N(R11)(R12)であり、
Yは、単結合、二重結合、若しくは三重結合、又は炭素数1〜20のアルキル基であり(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
Zは、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ビニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり(前記アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であるか(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、あるいは、隣接する基同士で環を形成することができ、
nは、0〜3の整数である]
で表される環状グアニジン化合物又はその誘導体からなることを特徴とする二酸化炭素吸着剤;
[2]前記一般式(1)において、R〜Rが水素原子である、[1]の二酸化炭素吸着剤;
[3]前記環状グアニジン化合物が、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、
又はこれらの誘導体である、[1]又は[2]の二酸化炭素吸着剤;
[4][1]〜[3]のいずれかの二酸化炭素吸着剤を、粒子もしくは繊維に担持させた担持物を含む二酸化炭素吸着シート;
[5]アルキルチオ環状アミジン塩又はその誘導体とアミノ化合物を、エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒中で反応させることを特徴とする、環状グアニジン構造を骨格とする環状グアニジン化合物の製造方法;
[6]前記エーテル系の非プロトン性極性溶媒がテトラヒドロフランである、[5]の製造方法;
[7]前記アルキルチオ環状アミジン塩が、一般式(2):
【化2】

[式中、R〜R及びnは、前記一般式(1)における定義と同じであり、
10は、水素原子、−Y−Z、−N(R11)(R12)であり、
Y、Z、R11及びR12は、前記一般式(1)における定義と同じであり、
Xは、ハロゲン原子、HCO、CHCO、CHClCO、CFCO、ArCO、CHSO、CFSO、ArSOである]
で表される化合物であり、前記環状グアニジン化合物が、[1]に記載の一般式(1)で表される化合物又はその誘導体である、[5]又は[6]に記載の製造方法;
[8]前記一般式(1)及び(2)において、R〜Rが水素原子であり、Xがヨウ素原子である、[7]の製造方法;
[9]前記アルキルチオ環状アミジン塩が、
2−(1−メチルチオ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−ヨウ化水素塩、又は
2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩
であり、
前記環状グアニジン化合物が、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、
又はこれらの誘導体である、[5]〜[8]のいずれかの製造方法;
[10][1]〜[3]のいずれかの二酸化炭素吸着剤を用いて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法;
[11]一般式(4):
【化3】

[式中、pは0又は1であり、
mは0〜3(小数である場合を含む)であり、
n=3−mである]
で表される化合物
に関する。
【発明の効果】
【0010】
二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、高収率で安価に製造が可能な環状グアニジン化合物及びその製造方法を提供することが可能となった。
TBDと同様の、二酸化炭素吸着力を有する環状グアニジンの実用化が可能となり、TBDに替わる環状グアニジンをより安価で効率よく製造することが可能となった。
本発明の環状グアニジン化合物の製造方法によれば、当該環状グアニジン化合物の合成は、安価な一級アミン又は二級アミンを用いて温和な条件で定量的に反応が進行するために反応・精製操作も容易であり、安価かつ大量に環状グアニジン化合物を供給することができる。原料であるメチルチオ環状アミジンも、安価な一級アミン・二硫化炭素・ヨウ化メチルより簡便に合成できる。また、反応性水酸基や重合性のビニル基などを有する環状グアニジンも簡便に合成できるため、二酸化炭素の吸着/脱着などの分野において実用化に有利な高分子化や担体への化学反応による担持も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の二酸化炭素吸着シートの一態様を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の二酸化炭素吸着剤は、前記一般式(1)で表される、環状グアニジン構造を骨格とする環状グアニジン化合物、あるいは、その誘導体(以下、一般式(1)で表される環状グアニジン化合物と、その誘導体を総称して、本発明で用いることのできる環状グアニジン化合物、あるいは単に、環状グアニジン化合物と称する)からなる。
【0013】
前記一般式(1)において、炭素数1〜20のアルキル基には、直鎖又は分岐のアルキル基が含まれ、非置換のアルキル基だけでなく、置換のアルキル基も含まれる。置換アルキル基の例としては、例えば、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子)で置換されていてもよい。また、前記アルキル基の主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていてもよい。これらの置換は、いずれか1つの置換であっても、2箇所以上の置換であってもよい。なお、1〜3級アミノ基とは、それぞれ、アンモニア、1級アミン、2級アミンから水素1原子を除いた残基を意味する。
また、前記一般式(1)における炭素数1〜10のアルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基においては、非置換であることもできるし、水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていてもよい。
【0014】
前記一般式(1)では、R〜Rに関して、隣接する2又はそれ以上の基が一緒になって環を形成することができ、例えば、RとRとが一緒になって、炭素数2〜5のアルキレン基(例えば、−CHCH−や−CHCHCH−)であることができるが、これらに限定されることはない。
【0015】
前記一般式(1)において、例えば、
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、i−プロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、アリールメチレン基、ヘテロアリールメチレン基、Yが炭素数1〜20の直鎖アルキル基であり、Zが水素原子、水酸基、メトキシ基、ビニル基である−Y−Zで表される基、−NH、−N(CHであることができ、
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、i−プロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、炭素数1〜20の直鎖アルキル基であることができ、
nは、0〜3の整数であることができる。
【0016】
製造原料の価格、及び二酸化炭素の吸着効果の点からいえば、一般式(1)で表される環状グアニジン化合物において、R〜Rは低分子量の基であることが好ましく、R〜Rは水素原子であることがより好ましい。また、nは0又は1であることが好ましい。また、Rは、炭素数1〜20の直鎖アルキル基又はアリールメチレン基であることが好ましい。
このような条件を満たすものとして、前記環状グアニジン化合物が、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、
又はこれらの化合物の誘導体であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)で表される環状グアニジン化合物に由来する誘導体としては、例えば二酸化炭素の吸着/脱着などの分野において実用化に有利な高分子化や担体への化学反応による担持が可能なように、R〜Rに反応性水酸基や重合性のビニル基などを有する基を採用したものを挙げることができる。
例えばRの末端基にシリル基を導入して、シリカに担持可能な環状グアニジン誘導体とすることが可能である。
このようなシリカに担持可能な環状グアニジン誘導体としては、例えば、式:
【化4】

で表される、新規物質である2−[3−(トリヒドロキシシリル)プロピルアミノ]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールを挙げることができる。
【0018】
一般式(1)で表される環状グアニジン化合物の具体例としては、例えば下記の環状グアニジン化合物(一般式(1)においてR〜R=H、n=0〜1)を挙げることができる。これらの環状グアニジン化合物は、後述の実施例で説明するように、何れも本発明の製造方法によって得ることができる化合物である。
【0019】
【化5】

【0020】
これらの環状グアニジン化合物には優れた二酸化炭素の吸着効果がある。
例えば、後述の実施例で説明するように、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンを、
乾燥アセトニトリル中に溶解し、室内空気をバブリングすると炭酸塩の結晶を得ることができることから、二酸化炭素の吸着効果を確認することができる。
これら3種の環状グアニジン化合物を比較すると、ブチル基を有する五員環グアニジン化合物が六員環グアニジン化合物よりも吸着効果が優れており、五員環グアニジン化合物であることが好ましい。
【0021】
本発明の環状グアニジン構造を骨格とする環状グアニジン化合物の製造方法は、アルキルチオ環状アミジン塩又はその誘導体とアミノ化合物を、エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒中で反応させることを特徴とする。
本発明の製造方法で用いるアルキルチオ環状アミジン塩としては、例えば、前記の一般式(2)で表される構造を骨格とする化合物を挙げることができる。
製造原料の価格、及び二酸化炭素の吸着効果の点からいえば、一般式(2)で表されるアルキルチオ環状アミジン塩において、R〜Rは低分子量の基であることが好ましく、R〜Rは水素原子であることがより好ましい。また、nは0又は1であることが好ましい。
【0022】
前記アルキルチオ環状アミジン塩としては特に限定されないが、ハロゲン化水素塩が好ましく、ヨウ化水素塩であることがより好ましい。
このような条件を満たすものとして、
前記アルキルチオ環状アミジン塩が、
2−(1−メチルチオ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−ヨウ化水素塩、
2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩、
又はこれらの化合物の誘導体であることが好ましい。
【0023】
前記アルキルチオ環状アミジン塩の誘導体としては、例えば二酸化炭素の吸着/脱着などの分野において実用化に有利な高分子化や担体への化学反応による担持が可能なように、R〜Rに反応性水酸基や重合性のビニル基などを有する基を採用したものを挙げることができる。
【0024】
本発明の製造方法で用いる前記アミノ化合物としては、一般式(3):
−NH−R (3)
[式中、R及びRは、前記一般式(1)における定義と同じである]
で表されるアミノ化合物(第一級アミン化合物又は第二級アミン化合物)又はその誘導体を挙げることができる。
一般式(3)で表されるアミノ化合物としては、RがHである第1級アミン化合物であることが、環状グアニジン製造の収率及び環状グアニジンの二酸化炭素吸着力が大きいため、好ましい。
また、後述の実施例や下記に例示するように、Rの末端基にシリル基を導入して、シリカに担持可能な環状グアニジン誘導体を製造することも可能である。
【化6】

【0025】
なお、前述のシリル基を導入した環状グアニジン誘導体の製造に際して得られる、前記の一般式(4)で表される化合物は新規な物質である。
【0026】
本発明の製造方法では、前記アルキルチオ環状アミジン塩又はその誘導体と前記アミノ化合物を、エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒中で反応させることが必要である。このような方法により、後述の実施例で示すように、環状グアニジン化合物又はその誘導体を、従来の製造方法と比較して、より安価で効率よく製造することが可能である。
【0027】
エーテル系の非プロトン性極性溶媒としては、例えばジオキサンやテトラヒドロフランなどを挙げることができ、特にTHF(テトラヒドロフラン)を使用することが好ましい。その理由としては、エーテル系の非プロトン性極性溶媒は、プロトン性極性溶媒と比較して、水酸基による副生成物が抑制されるため収率が向上するのではないかと考えられる。また、この抑制効果は同じ非プロトン性極性溶媒であるDMFやCHClよりも優れるためではないかと考えられる。
前述の「エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒」とは、エーテル系の非プロトン性極性溶媒と他の溶媒とが混合された溶媒において、エーテル系の非プロトン性極性溶媒の質量が50%以上含まれる溶媒のことを意味する。
【0028】
溶媒がエーテル系の非プロトン性極性溶媒であれば温和な条件下でも高効率の反応が可能であり、例えば0〜80℃で可能であり、25〜60℃であることが好ましく、25〜45℃であることがより好ましい。
【0029】
本発明の二酸化炭素の処理方法は本発明の二酸化炭素吸着剤を用いて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする。
具体的には、例えば、初めに前記二酸化炭素吸着剤を粒状で又は液状で、粒子若しくは繊維(好ましくは、多孔質の粒子若しくは繊維)、又は当該繊維からなる織物、編物、不織布などの通気性のシート状物に担持させた担持物を形成する。次いで、これらの担持物又はこれらの担持物と他の素材とを複合させた複合物からなる二酸化炭素吸着シートを形成する。次いで、これらの担持物や二酸化炭素吸着シートをフィルタとして、空調設備に配置して、大気中の二酸化炭素を吸着させ、必要に応じて脱着させることで、室内空気中の二酸化炭素濃度を調整することができる。
【0030】
本発明の二酸化炭素吸着剤を多孔質粒子に担持させた担持物と通気性のシート状物とを複合させる方法としては、例えば、前記二酸化炭素吸着剤を溶媒に希釈した溶液を用意して、この溶液を活性炭粒子に散布して、攪拌した後、50〜100℃の比較的低温で乾燥(好ましくは真空乾燥)を行い、添着活性炭粒子を作製する。
次いで、図1に例示するように、ホットメルト不織布10の表面に添着活性炭粒子3を配した後、加熱処理によって該ホットメルト不織布と該添着活性炭粒子3とが接する部分に樹脂凝集部2を形成し、かつ樹脂凝集部2とホットメルト樹脂からなる連結部1とからなるウエブを形成する第一の工程と、該添着活性炭粒子のうち、該ウエブに固着された添着活性炭粒子のみを残存せしめて積層単位4を形成する第二の工程と、積層単位4の添着活性炭粒子3に接してホットメルト不織布10”を積層し、続いて、ホットメルト不織布10”の表面に添着活性炭粒子3’を配した後、前記第一の工程と前記第二の工程とを順次行う方法がある。
【0031】
この方法によれば、ホットメルト不織布10の表面に添着活性炭粒子3を配した後、この状態の積層物を乾熱若しくは湿熱による加熱を行うことによって、ホットメルト樹脂が可塑化し、その一部は繊維形態を残したまま連結部1となり、原材料であるホットメルト不織布を構成していた比較的細い繊維成分は溶融切断されて、添着活性炭粒子3との接触部分に凝集して樹脂凝集部2を構成することとなる。なお、ホットメルト不織布10のかわりに、不織布等の通気性のシート状物5及び5’にホットメルト不織布を付着させたシートを用いることにより、二酸化炭素吸着剤を多孔質粒子(活性炭粒子)に担持させた担持物(添着活性炭粒子)と通気性のシート状物(不織布)とを複合させた二酸化炭素吸着シート13を得ることができる。
【0032】
粒子担体としては活性炭以外にも、例えば、鱗片状シリカ、シリカゲル、ゼオライトなどの金属酸化物粒子を挙げることができる。また、これらの金属酸化物粒子は比表面積の大きい粒子であることが好ましい。
前記鱗片状シリカ粒子は、具体的な形状として、例えば薄片1次粒子の粒子径が厚さ0.05μm以下の鱗片形状粒子であり、葉状シリカ2次粒子の厚さが0.05〜0.5μm(平均粒子径が0.1〜1.5μm)である鱗片状シリカ粒子を挙げることができ、市販されているものを適用することができる。例えば、市販のSiO一次粒子が三次凝集した白色粉体である、サンラブリーC(AGCエスアイテック株式会社製)(平均粒径:4〜6μm、比表面積67m/g、シラノール基:55μmol/m)を適用することができる。
【0033】
本発明では、二酸化炭素吸着剤をこのような金属酸化物からなる粒子や繊維へ担持させるに際して、例えばRに反応性水酸基や重合性のビニル基などを有する基を採用し、好ましくはシリル基を導入して、シリル基と金属酸化物とを化学的に結合させて担持することも可能である。また、このように環状グアニジン化合物が金属酸化物粒子に結合した二酸化炭素吸着粒子や二酸化炭素吸着繊維を更に前述の通気性のシート状物に担持させることにより、二酸化炭素吸着シートを構成することができる。
【0034】
通気性のシート状物としては、通気性を有する限り特に限定されず、例えば織物、編物、不織布、又は多孔膜などが適用可能である。
前記不織布としては、例えばバインダ接着不織布、水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、繊維融着不織布、スパンボンド不織布、或いは紙などを単独で、又は適宜組み合わせた不織布を適用することができる。
また、不織布の材質は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維及び合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、綿及びパルプ繊維などの天然繊維、あるいはガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維などを単独で、又は適宜組み合わせて適用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
《実施例1》
(1)N,N’−トリメチレンチオウレアの合成
【化7】

1,3−プロパンジアミン37.1g(500mmol)に95%エタノール90mLと水90mLを加え、氷浴0℃で攪拌を開始した。次いで二硫化炭素45.7g(≒36.3mL,600mmol)のうち4mLを15分かけて滴下した。室温に戻したのち油浴60℃で反応液を加温し、残りの二硫化炭素32.3mLを1.5時間かけて滴下した。次に油浴を100℃に加温し2時間攪拌後、濃塩酸4.3mLを加えて100℃で10時間攪拌した。その後空冷・氷浴で反応液を冷却し、析出した結晶を吸引濾過した。結晶をエーテル50mL×2で洗浄後、60℃で24時間真空乾燥し無色針状結晶として51.6g(収率89%)の目的物を得た。
H及び13C NMR分析より、純粋な目的物であることを確認した(GC99.9%)。
【0037】
(2)2−(1−メチルチオ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−ヨウ化水素塩の合成
【化8】

エチレンチオウレア10.2g(100mmol)と乾燥エタノール100mLの懸濁液を室温で攪拌し、そこヘヨウ化メチル17.0g(120mmol)を加えた。少しの発熱を伴い反応液が溶解し、その後再び固体が析出した。6時間後TLCチェック(SiO;CHCl/MeOH=30:1)又はGC(50℃→200℃,サンプルはCHCl/40%NaOH処理)により原料の消失を確認し、反応を停止した。溶媒留去後に残渣をエーテル50mLで洗浄し、40℃で12時間真空乾燥し無色粉末として24.4g(収率100%)の目的物を得た。
H及び13C NMR分析より、純粋な目的物であることを確認した(GC>99.9%,サンプルはCHCl/40%NaOH処理後のフリーアミジン)。
【0038】
(3)2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩の合成
【化9】

トリメチレンチオウレア11.6g(100mmol)と乾燥エタノール100mLの懸濁液を室温で攪拌し、そこヘヨウ化メチル17.0g(120mmol)を加えた。少しの発熱を伴い反応液が溶解し、その後再び固体が析出した。6時間後TLCチェック(SiO;CHCl/MeOH=30:1)又はGC(50℃→200℃,サンプルはCHCl/40%NaOH処理)により原料の消失を確認し、反応を停止した。溶媒留去後に残渣をエーテル50mLで洗浄し、40℃で12時間真空乾燥し無色粉末として25.8g(収率100%)の目的物を得た。
H及び13C NMR分析より、純粋な目的物であることを確認した(GC99.5%,サンプルはCHCl/40%NaOH処理後のフリーアミジン)。
【0039】
《実施例2》
五員環及び六員環グアニジン化合物の合成
【化10】

各種アミン22mmolに乾燥テトラヒドロフラン20mLを加え、そこに、各種メチルチオアミジンヨウ化水素酸20mmol、すなわち、前記実施例1(2)で合成した2−(1−メチルチオ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−ヨウ化水素塩20mmol、又は前記実施例1(3)で合成した2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩20mmolを加えて油浴40℃にて加熱攪拌した。GC(サンプルはCHCl/40%NaOHaq処理)でメチルチオアミジンの消失を確認後、溶媒を留去した。結晶又は油状物の残さをエーテルで洗浄し(殆どの油状物もここで結晶化が起こる)、真空乾燥後にNMR測定でほぼ純粋な環状グアニジンヨウ化水素塩(99〜100%)を得た。得られたヨウ化水素塩に40%NaOH水溶液20mLを加え、更にジクロロメタン40mL(又はアセトニトリル40mL)を加えて5分間激しく攪拌した。分液後に水層をジクロロメタン40mL(又はアセトニトリル40mL)で再度抽出し、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後真空乾燥して環状グアニジン化合物98〜100%を得た。
【0040】
合成した環状グアニジン化合物の構造式を以下に示す。枠内の化合物は新規の環状グアニジン化合物である。また、各化合物の下に記載した「時間」は、各種アミンと各種メチルチオアミジンヨウ化水素酸との反応を実施した時間であり、「パーセンテージ」は、環状グアニジン化合物の収率である。
なお、反応の後処理に際して水酸基を有する五員環及び六員環グアニジン化合物については、Amberlist A−26(OH)/MeOHでヨウ化水素の除去を行った。
【0041】
【化11】

【0042】
《比較例1》
従来法による2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンの合成
実施例2に記載の2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンの合成(原料として、1−ブチルアミンと、実施例1(3)で合成した2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩を使用)において、テトラヒドロフランをプロトン性極性溶媒のメタノールに代えたこと以外は実施例2と同様にして、六員環グアニジン化合物を合成した。
得られた六員環グアニジン化合物は、純度および収率の点で、実用化には耐えられないものであった。
【0043】
《実施例3》
室温付近での2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン合成における反応条件のスクリーニング
【化12】

本実施例における反応は、前記実施例1(3)で合成した2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩258mg(1mmol)、乾燥溶媒1mL、1−ブチルアミン109μL(1.1mmol)及び基準物質としてクロロベンゼン50μL(GC分析用内部標準)を試験管に加え、25℃(又は40℃)で実施した。反応液をCHCl/40%NaOH(5:1)で処理し、GCでモニタリングした。
結果を表1に示す。表1において、「生成物収率(%)」及び「原料残存率(%)」は、GC分析による測定値から算出した値であり、「副生成物(%)」は、下記式:
100(%)−〔生成物収率(%)+原料残存率(%)〕
により算出した値である。
【0044】
【表1】

【0045】
最初にメタノールを用いたところ、室温でも反応が進行した(run1)。しかし副反応のほうが支配的であり、室温下でもプロトン性の極性溶媒は六員環のグアニジン化には適さないと考えられた。なお、プロトン性の極性溶媒でも級数の増加に伴い副反応は抑制された(run1−4)が、非プロトン性極性溶媒を用いると全般的に副反応は抑制され、中でもTHFが最も適した溶媒であることを見出した(run11−14)。
また、メタノールを用いると収率が非常に低く、これに対して非プロトン性極性溶媒を用いると、収率は向上するが、特にエーテル系の非プロトン性極性溶媒であるTHFを用いると収率が非常に高くなることが分かった。
【0046】
《実施例4》
(1)3−アミノプロピルトリメトキシシランのグアニジル化
【化13】

アミンとして3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用したこと以外は、実施例2に記載のグアニジン化合物の合成と同様の方法で反応させた。但しGC分析はできないため、H NMRより反応の終了を確認した。この結果、高い収率でグアニジル化が進行することが確認された。
【0047】
(2)ヨウ化水素塩のフリーグアニジル化
2−[3−(トリヒドロキシシリル)プロピルアミノ]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
【化14】

前記実施例4(1)で得られたグアニジンヨウ化水素塩3.66g(10mmol)をメタノール20mLに溶解し、そこヘアンバーライトIRA−400(OH)10gを加えて室温で12時間攪拌した。反応終了後にアンバーライトをろ別し、更にメタノール40mLを用いて残さを十分に洗浄した。ろ液をエバポレートした後に得られた固体を60℃で12時間減圧乾燥することで、遊離(フリー体)のグアニジン化合物2.02g(収率98.4%)を無色粉末ガラス状結晶として得た。
得られたグアニジン化合物は、粉末ガラス状結晶であり、担体に担持して使用することもでき、また担持させずにそのまま、二酸化炭素吸着剤として使用することもできる。
【0048】
《実施例5》
五員環及び六員環グアニジン化合物のCO吸着反応
【化15】

実施例2で得られた各種グアニジン化合物(5mmol)を乾燥アセトニトリル10mLに溶解し、室温で2時間CO(HO;5ppm)を溶液にバブリング(200mL/min)した。析出した結晶をろ過し、更に乾燥アセトニトリル10mLで2回、乾燥エーテル10mLで2回洗浄した。合わせたろ液を溶媒留去し、原料を回収した。結晶はCO(HO;5ppm)気流(200mL/min)で12時間乾燥し、以下に示すように、無色結晶の炭酸塩又は双性イオンを得た。
すなわち、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン(776mg)から無色結晶の炭酸塩(685mg)が得られ(収率63.1%)、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(706mg)から無色結晶の炭酸塩(635mg)が得られ(収率82.2%)、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(706mg)から双性イオン(700mg)が得られた(収率99.2%)。
このように、五員環及び六員環グアニジン化合物に優れたCO吸着性能があることが確認された。
【0049】
【化16】

【0050】
《比較例2》
五員環アミジン化合物及び五員環チオアミジン化合物のCO吸着反応
【化17】

上記の五員環アミジン化合物、五員環チオアミジン化合物を用いて、実施例5と同様にして、CO吸着反応を行った。五員環グアニジン化合物の吸着性能が82.2%であったのに対して(前記実施例5参照)、五員環アミジン化合物(421mg)からは無色結晶の炭酸塩387mg(53.0%)を得た。五員環チオアミジン化合物(581mg)は無反応であった。
【0051】
これらの結果が示すとおり、全般的に吸着力の劣っていた五員環アミジン化合物に対して、グアニジン基の効果は非常に大きなものであった。これは、グアニジンのエナミン構造による塩基性の増大が吸着力及び炭酸塩の安定性に寄与しているためと考えられる。
このように、五員環アミジン化合物のCO吸着性能(53%)は、五員環グアニジン化合物の吸着性能(82.2%)よりも劣ることが確認された。
【0052】
《実施例6》
実施例2で合成した2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールを、メタノールで10倍に希釈した溶液を用意した。
次いで、市販の活性炭粒子『クラレコールGW 32/60メッシュ』〔クラレケミカル(株)製〕50gに対し、上述の溶液を20g散布して、十分攪拌した後、60℃、8時間の真空乾燥を行い、グアニジン化合物3.8mass%が担持された添着活性炭粒子を得た。
また、熱可塑性ポリアミド系樹脂(190℃におけるメルトインデックス:80)を溶融紡糸して、面密度20g/mの蜘蛛の巣状のホットメルト不織布を形成した後、直ちに面密度20g/mのポリエステルスパンボンド不織布〔ユニチカ(株)製マリックス70020WSO〕の上に積層した。ホットメルト不織布は冷却されると同時にそれぞれのカバー材に付着して、図1に示すように、ポリエステルスパンボンド不織布5にホットメルト不織布10が付着した面密度40g/mの支持体を得た。
次いで、図1に例示するように、ホットメルト不織布10の表面に、添着活性炭粒子3を面密度130g/mとなるようにして散布した。続いて、約5kg/cmの水蒸気処理をカバー材5側(ホットメルト不織布10側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1と樹脂凝集部2とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2を介して添着活性炭粒子3を固着させた。続いて、固着した添着活性炭粒子以外を除去することにより、添着活性炭粒子3が、各々の粒径に応じて固着され、しかもポリエステルスパンボンド不織布5と接着された1層目の積層単位4を得た。更に、この状態の積層単位4に面密度20g/mのホットメルト不織布10”を積層し、面密度150g/mとなるようにして添着活性炭粒子3’散布、水蒸気処理、並びに固着されていない添着活性炭粒子の除去を経て2層目の積層単位4’を形成した。
次に前述の支持体と同様のポリエステルスパンボンド不織布5にホットメルト不織布10が付着した面密度40g/mの支持体である5’を、ホットメルト不織布10’側が積層単位4’に接するようにして積層単位4’の上に積層し、約5kg/cmの水蒸気処理をカバー材5’側(ホットメルト不織布10’側)から約7秒間行い、ホットメルト不織布10’を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部1’と樹脂凝集部2’とで構成されたウエブに、樹脂凝集部2’を介して添着活性炭粒子3’を固着させて二酸化炭素吸着シート13を得た。
この二酸化炭素吸着シートの厚さは約1mmであり、面密度は380g/mであり、グアニジン化合物添着活性炭の担持量は約280g/mであり、風速10cm/sec.での圧力損失は12Paであり、フィルタとして好適な二酸化炭素吸着シートであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の二酸化炭素吸着剤は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させる用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・連結部;2,2’,2”・・・樹脂凝集部;3,3’・・・添着活性炭粒子;
4,4’・・・積層単位;5,5’・・・通気性のシート状物、スパンボンド不織布;
10,10’,10”・・・ホットメルト不織布;13・・・二酸化炭素吸着シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、−Y−Z、−N(R11)(R12)であり、
Yは、単結合、二重結合、若しくは三重結合、又は炭素数1〜20のアルキル基であり(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
Zは、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ビニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり(前記アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であるか(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、あるいは、隣接する基同士で環を形成することができ、
nは、0〜3の整数である]
で表される環状グアニジン化合物又はその誘導体からなることを特徴とする二酸化炭素吸着剤。
【請求項2】
前記一般式(1)において、R〜Rが水素原子である、請求項1に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項3】
前記環状グアニジン化合物が、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、
又はこれらの誘導体である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着剤を、粒子もしくは繊維に担持させた担持物を含む二酸化炭素吸着シート。
【請求項5】
アルキルチオ環状アミジン塩又はその誘導体とアミノ化合物を、エーテル系の非プロトン性極性溶媒を主成分とする溶媒中で反応させることを特徴とする、環状グアニジン構造を骨格とする環状グアニジン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記エーテル系の非プロトン性極性溶媒がテトラヒドロフランである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルキルチオ環状アミジン塩が、一般式(2):
【化2】

[式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基であるか(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、あるいは、隣接する基同士で環を形成することができ、
nは、0〜3の整数であり、
10は、水素原子、−Y−Z、−N(R11)(R12)であり、
Yは、単結合、二重結合、若しくは三重結合、又は炭素数1〜20のアルキル基であり(前記アルキル基は、主鎖又は側鎖の炭素原子の少なくとも1つが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子で置換されていることがあり、また、主鎖又は側鎖の水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
Zは、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ビニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり(前記アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ独立して、水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子、1〜3級アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、チオカルボニル基で置換されていることがある)、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、
Xは、ハロゲン原子、HCO、CHCO、CHClCO、CFCO、ArCO、CHSO、CFSO、ArSOである]
で表される化合物であり、前記環状グアニジン化合物が、請求項1に記載の一般式(1)で表される化合物又はその誘導体である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(1)及び(2)において、R〜Rが水素原子であり、Xがヨウ素原子である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記アルキルチオ環状アミジン塩が、
2−(1−メチルチオ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−ヨウ化水素塩、又は
2−(1−メチルチオ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−ヨウ化水素塩
であり、
前記環状グアニジン化合物が、
2−(1−ブチルアミノ)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−ベンジルアミノ−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、
2−(1−ブチルアミノ)−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、
又はこれらの誘導体である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着剤を用いて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法。
【請求項11】
一般式(4):
【化3】

[式中、pは0又は1であり、
mは0〜3であり、
n=3−mである]
で表される化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−206671(P2011−206671A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76703(P2010−76703)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【出願人】(592055392)富士アミドケミカル株式会社 (5)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】