説明

環状トリアゾナトリウムチャネル遮断薬

本発明は、ナトリウムチャネル遮断特性を有するトリアジン化合物、および、当該化合物の、関連障害の治療のための医薬の調製のための使用、に関する。当該化合物は、zが、単結合であるか、もしくは、所望により置換されていてもよい連結基であり、R1がハロ‐アルキル基であり、;かつ、Aが、所望により置換されていてもよい芳香族複素環式もしくは炭素環式環系である、式(I)に属するものであるか、またはその塩である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムチャネル遮断特性を有するトリアジン化合物、および、当該化合物の、関連障害の治療のための医薬の調製のための使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,649,139号では、式(A):
【0003】
【化1】

【0004】
の化合物が開示されており、式中、Rは、C1‐10アルキル、C2‐10アルケニル、C2‐10アルキニルもしくはC3‐10シクロアルキルであり、そのうちのいずれかは所望により置換されていてもよく、かつ、R〜Rは、独立して、水素、ハロゲン、C1‐6アルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアルコキシ(これらはすべて、所望により、ハロゲン、ヒドロキシおよびアリールの1つ以上により置換されていてもよい)、アミノ、モノ‐もしくはジ‐置換されたアミノ、アルケニルオキシ、アシル、アシルオキシ、シアノ、ニトロ、アリールおよびアルキルチオ基から選択されるか、または、R〜Rのうちの任意の隣接する2つは連結して、(‐CH=CH‐CH=CH‐)基を形成する。これらの化合物は心障害の治療において活性があり、また、不整脈の治療に特に有用である、とのことが開示されている。
【0005】
我々の先の特許出願WO2008/007149では、式(B):
【0006】
【化2】

【0007】
の化合物であって、式中、Rは、水素(および=NHはNH)であるか、または、カルボキサミド、C1‐10アルキル、C2‐10アルケニル、C1‐3アルキル‐アリール、C1‐3アルキル‐ヘテロシクリル、もしくはC3‐10シクロアルキルであり、そのうちのいずれかは、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキサミド、ハロC1‐6アルキル、C1‐6アルキルもしくはC1‐6アルコキシにより所望により置換されていてもよく、;かつ、R〜Rは、独立して、水素、ハロゲン、C1‐6アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ(これらはすべて、所望により、ハロゲン、ヒドロキシおよびアリールの1つ以上により置換されていてもよい)、アミノ、モノ‐またはジ‐置換されたアミノ、アルケニルオキシ、アシル、アシルオキシ、シアノ、ニトロ、アリールおよびアルキルチオ基から選択される化合物の、;
(a)哺乳類における障害および、特にヒトにおける、特にてんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、の治療のための電位依存性ナトリウムチャネル遮断薬としての、;ならびに
(b)哺乳類における障害の治療のための、および、特に哺乳類の癌の治療のための、葉酸代謝拮抗薬としての、ならびに、特にヒトにおける、三日熱マラリア原虫および熱帯熱マラリア原虫によるマラリアに対する抗マラリア薬としての、
使用が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、式(I):
【0009】
【化3】

【0010】
の化合物が提供されるが、式中、Zは、単結合であるか、または、所望により置換されていてもよい連結基であり、;
R1がハロ‐アルキル基であり、;かつ
Aは、(所望により置換されていてもよい)芳香族複素環式または炭素環式環系である。
【0011】
環系Aは、任意の数の環成分を含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当該芳香族炭素環式環系は、典型的には、フェニルであり、所望により置換されていてもよいフェニルである。
【0013】
当該芳香族複素環式環系は、典型的には、(ベンゾ)チエニルまたは(ベンゾ)フリルまたは(ベンゾ)ピランまたは(イソ)インドールまたは(イソ)キノリンまたはピリジンであり、所望により置換されていてもよい。
【0014】
好ましくは、R1は、C1‐10ハロ‐アルキルである。より好ましくは、R1は、好ましくはクロロ、ブロモまたはフルオロ、などのハロゲンの1つ以上により置換された、メチル、エチル、i‐プロピル、n‐プロピル、i‐ブチルまたはn‐ブチルである。最も好ましくは、R1は、ジ‐またはトリ‐ハロ(特にクロロおよび/またはフルオロ)置換されている。
【0015】
適宜、Zは、1つまたは2つの所望により置換されていてもよいアルキルまたはフェニル基を有する、炭素原子を含む連結基である。
【0016】
好ましくは、Aは、芳香族炭素環式環系、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニルもしくはフルオレニルなど、であり、所望により、ハロゲン、例えばクロロ、ブロモもしくはフルオロなど;または、フルオロアルキル、例えばCF3など;アルコキシ、例えばメトキシもしくはエトキシなど;および/または、アリールオキシ、例えばフェノキシまたはベンジルオキシなど、の1つ以上で置換されていてもよい。
【0017】
1つのグループにおいては、Aは、例えばジクロロフェニルもしくはトリクロロフェニル、例えば2,3‐、2,6‐および3,5‐ジクロロ‐、ならびに2,3,5‐トリクロロフェニルなどの、クロロフェニル;例えば2‐ブロモ‐および3‐ブロモフェニルなどの、ブロモフェニル;例えばジ‐トリフルオロメチル、例えば3,5‐トリフルオロメチルなどの、トリフルオロメチルフェニル;例えばジ(メ)エトキシ‐およびトリ(メ)エトキシ‐フェニル、例えば4,5ジメトキシフェニル、3,4,5トリメトキシフェニルなどの、(メ)エトキシフェニル;例えばジ(フルオロ(メ)エトキシ)フェニル、例えば2‐フルオロ(メ)エトキシ、4‐フルオロ(メ)エトキシおよび2,4‐ジ(フルオロ(メ)エトキシフェニルなどの、フルオロ(メ)エトキシフェニル、から選択される。
【0018】
さらなる1つのグループにおいては、Aは二環式基である。適宜、当該二環式基は、例えば1‐ナフチルおよび2‐ナフチルもしくはテトラヒドロナフチルなどの、ナフチル;または(メ)エチレンジオキシフェニルもしくはベンゾジオキソロなどの、アルキレンジオクスフェニル(alkylenedioxphenyl)、から選択される。この基は、例えば6‐ブロモナフチルなどの、ブロモなど;または、例えば2,2‐ジフルオロベンゾジオキソロなどのフルオロなど、のハロゲンの1つ以上により、;または2‐もしくは3‐(メ)エトキシナフチルまたは1,4‐、2,5‐もしくは3,7‐ジ(メ)エトキシナフチルなどの、(メ)エトキシなどのアルコキシ基の1つ以上により、置換されていてもよい。
【0019】
さらにさらなる1つのグループにおいては、Aは三環式基である。当該三環式基は、適宜、例えばアントラセニルもしくはフルオレニルなどの、1つ以上の芳香環を含有する縮合環系;または、例えばアダマンチルなどの、非芳香環であり、所望により、上述のように置換されていてもよい。
【0020】
さらなる1つのグループにおいては、Aは、上述の環系のいずれかの環状置換基を2つ含むビス環状(bis‐cyclic)基である。
【0021】
式(I)の化合物の一分類においては、当該A環上の置換基としては、フェニルおよびフェノキシ、ベンジルおよびベンジルオキシが挙げられ、所望により、そのフェニル環が、ハロゲンもしくはアルコキシまたは上述のような他の置換基で置換されていてもよい。
【0022】
化合物のさらなる一分類においては、Aは、所望により置換されていてもよい複素環式環系;例えば、酸素または硫黄または窒素原子の1つ以上を有する、単環式または二環式の複素環式基;特に、芳香族複素環式環系、である。
【0023】
適宜、Aが複素環式基である式(I)の化合物は、式(II):
【0024】
【化4】

【0025】
の化合物であり、式中、Wは硫黄、酸素または窒素であり、かつ、nは1、2または3であり、かつ、R3は1つ以上の置換基である。
【0026】
適宜、当該複素環式基は、(i)チエニルおよびベンゾチエニル基から選択される硫黄含有複素環;(ii)フリル、フェニルフリルおよびベンゾピラニルから選択される酸素含有複素環;または、ピリジル、インドリル、キノリルおよびイソキノリルから選択される窒素含有複素環、である。有利には、上述の構造に関しては;炭素環式A環については、例えばハロゲン、アルキルまたはアルコキシにより、特に、1、2または3個の塩素または臭素原子により、置換される。窒素含有複素環は、所望により、例えばメチルなどのアルキルによりN‐置換されていてもよく、または、フェノキシもしくはフェニルチオにより置換されていてもよく、当該フェニルは、所望により、例えばクロロなどのハロゲンにより置換されていてもよい。
【0027】
所望により、複素環式環Aは、ビス複素環式化合物である。
【0028】
一実施形態では、式(I)の化合物は、以下式(III)の化合物である:
【0029】
【化5】

【0030】
この実施形態には、2つの式(I)の化合物が、共通のA環を共有している化合物;および、ビス環構造の化合物、が包含される。
【0031】
本発明は、上記化合物のうちのいずれかの塩も提供する。好ましい塩は、薬剤的に許容できる酸付加塩である。適切な、薬剤的に許容できる酸付加塩としては、例えば塩酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、マロン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、ナフトエ酸、およびイセチオン酸からなどの、有機酸および無機酸の両方で形成されているもの、が挙げられる。エタンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、マンダル酸(mandalate)塩、安息香酸塩、およびサリチル酸塩も適している。
【0032】
本発明は、式(I)の化合物のうちのいずれかまたはその塩の溶媒和物も提供する。当該化合物またはその塩は、当該化合物の調製において、反応溶媒もしくは結晶化溶媒の溶媒和物、またはその成分、として得てもよい。適切な、薬剤的に許容できる溶媒和物としては、水和物が挙げられる。
【0033】
式(I)の化合物は、キラル中心を有していてもよく、また、ラセミ体、ラセミ混合物として、および、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして、生じてもよい。このような異性体型はすべて、本発明の範囲内に含まれる。式(I)の化合物のすべての幾何異性体も、個々の異性体としてか、それらの混合物としてかを問わず、本発明の範囲内に含まれる。よって、互変異性型およびその混合物ならびに多形結晶形状であるので;トランス‐およびシス‐配置の式(I)の化合物は本発明により包含される。
【0034】
式(I)の特定の化合物は、上記米国特許第4,649,139号において開示されている手順により調製してもよく、当該文献の全開示事項は、参照により本明細書に組み入れられるものとし、また、当該文献に対し、さらなる参照がなされるべきものとする。式(I)の特定の化合物は、また、EP 0 021 121 Aにおいて開示されている方法により調製してもよく、当該文献の全開示事項は、参照により本明細書に組み入れられるものとし、また、当該文献に対し、さらなる参照がなされるべきものとする。
【0035】
上記で言及した特定の化合物の調製は、本明細書において、後ほど説明する。本発明の範囲内の関連化合物は、式(I)の範囲内の化合物の所望の置換基および部分を導入するために、適切な出発物質を用いて、開示されているプロセスの自明のまたはお決まりの変形により調製してもよい。
【0036】
式(I)の化合物の塩は、当該調製プロセスに残留酸を存在させることにより得てもよい。あるいは、塩は、遊離塩基としての式(I)の化合物を、薬剤的に許容できる酸と、適切な溶媒中で混合し、その溶媒を除去して塩を回収するか、または、その溶媒から塩を結晶化させることにより調製してもよい。
【0037】
さらなる一態様では、本発明は、薬剤的に許容できる担体との混和物中に、式(I)の化合物またはその薬剤的に許容できる塩または溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。当該化合物は、例えばてんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、などの、障害の治療;哺乳類の癌の治療;ならびに、マラリアの治療、に適している。
【0038】
式(I)の化合物は、本発明の組成物中に、効果的な単位剤形で、すなわち、in vivoでこれらの障害に対して効果的であるのに十分な量で、存在する。
【0039】
本発明の組成物中に存在する薬剤的に許容できる担体は、医薬を投与する目的で従来から用いられている物質であってもよい。これらは、液体または固体物質であってもよく、そうでなければ不活性であるかまたは医学的に許容できるものであり、かつ、活性成分に適合性のものである。
【0040】
これらの医薬組成物は、経口的にまたは非経口的に、例えば、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、粉剤または経皮パッチとして、与えられてもよい。しかしながら、当該組成物の経口投与および静脈内注射が好ましい。
【0041】
経口投与用には、微粉末または顆粒は、希釈剤、分散剤および/または界面活性剤を含有することとなり、また、頓服水剤中、水中もしくはシロップ中に、乾燥状態のカプセル剤もしくはサッシェ剤中に、または、懸濁化剤が含まれていてもよい非水性懸濁剤中に、または、水もしくはシロップ中の懸濁剤中に、提供されてもよい。望ましいかまたは必要な場合には、香味剤、保存剤、懸濁化剤、または増粘剤を含めることができる。乾燥粉末または顆粒は、圧縮して錠剤を形成させてもよく、または、カプセル剤中に含有させてもよい。
【0042】
注射用には、当該化合物は、抗酸化剤または緩衝剤を含有していてもよい無菌の水性注射剤中に提供されてもよい。
【0043】
当該遊離塩基またはその塩または溶媒和物は、また、他の添加剤を伴わないそれの純粋な形で投与されてもよく、その場合には、カプセル剤またはサッシェ剤が好ましい担体である。
【0044】
あるいは、当該活性化合物は、効果的な単位投与量で純粋な形で提供され、例えば、錠剤等として圧縮される。
【0045】
含まれていてもよい他の化合物は、例えば、医学的に不活性な成分、例えば、錠剤またはカプセル剤については、例えばラクトース、デンプン、またはリン酸カルシウムなどの、固体および液体の希釈剤;軟カプセル剤については、オリーブ油またはオレイン酸エチル;ならびに、懸濁剤または乳剤については、水または植物油;例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;例えばコロイド粘土などのゲル化剤;例えばガムトラガカントまたはアルギン酸ナトリウムなどの増粘剤;ならびに、こうした製剤における担体として有用な、例えば湿潤剤、防腐剤、緩衝剤、および抗酸化剤などの、他の、治療上許容できる副成分、である。
【0046】
個々の単位として提供される錠剤または他の表現型は、そうした投与量においてまたはその倍数として効果的である、例えば5mg〜500mg、通常は10mg〜250mg前後を含有する単位などの、量の、式Iの化合物を都合よく含有していてもよい。
【0047】
本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物の、薬剤的に許容できる担体との混和物により調製してもよい。必要に応じて、従来の医薬賦形剤を混和してもよい。適切な製剤の例は、上述した米国特許第4,649,139号中に提示されている。
【0048】
本発明は、毒性のない効果的な量の、式(I)の化合物もしくはその薬剤的に許容できる塩もしくは溶媒和物、または、本明細書において上記で定義されているような組成物、の投与による治療の方法を提供する。当該方法は、ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、ならびに、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、のような障害、の治療;哺乳類の癌の治療;ならびに、マラリアの治療、に特に適している。
【0049】
本発明は、医薬、のための、または、その調製のための、式(I)の化合物もしくはその薬剤的に許容できる塩もしくは溶媒和物、または、本明細書において上記で定義されているような組成物も提供する。当該医薬は、ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、ならびに、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、のような障害、の治療;哺乳類の癌の治療;ならびに、マラリアの治療、に特に適している。
【0050】
上記で示したように、式(I)の化合物は、そうした障害の、経口投与または静脈内注射による治療において、一般に有用である。
【0051】
式(I)の化合物は、通常、1日当たり0.01mg/kg〜20mg/kg、好ましくは1日当たり0.1〜5.0mg/kg、の用量で投与される。
【0052】
構造的に類似した化合物、例えばラモトリギン、および式(I)の範囲内の他の(oher)公知化合物、の、ヒトにおける公知の使用に鑑みて、式(I)の化合物の使用において、主だった毒性に関する問題は予期されない。しかしながら、臨床使用の前に、適切な試験手順が行なわれるべきである。
【0053】
以下、本発明の上記のおよび他の態様を、さらに詳細に、付随する例を参照して、説明する。
【0054】
試験において用いた例示の式(I)の化合物および他の化合物の調製のための方法論を以下に報告する。これを適合させて、本明細書において言及されている追加のまたは代替の置換基または部分を有する類似化合物を調製してもよい。
【0055】
以下手順では、融点はすべて℃で表されている。
【0056】
3,5‐ジアミノ‐6‐アリール‐1,2,4‐トリアジン化合物
【0057】
【化6】

【0058】
3,4‐ジメトキシベンゾイルシアニド(3;Ar=3,4‐ジメトキシフェニル)
3,4‐ジメトキシベンゾイルクロリド[AcrosOrganics](14.05g;0.070mol)、乾燥トルエン(32cm)、乾燥アセトニトリル(8.0cm)、シアン化銅I(8.5;0.095mol)およびセライト(5g)の、よく撹拌した混合物[パドルスターラー]を、還流下で、酸塩化物が残らなくなるまで(およそ1.5時間)、加熱した。この暗反応混合物を、およそ70°に冷却し、トルエン(150cm)で希釈した。さらにおよそ30分間撹拌した後、その結果として生じたスラリーを、クロマトグラフィー用シリカゲル床(およそ2.5cm)に通して濾過し、その淡黄色の濾液を、真空中で一定重量まで蒸発させて、表題化合物を、レモンイエローの固体として得た。収量(収率)=11.41g(85.3%)、Mpt=143〜145℃。この生成物は、すぐに、次の段階で使用した。
【0059】
アミノグアニジンビスメシレート4
40°の、メタノール(720cm)中、99.5%メタンスルホン酸[アルドリッチ](422g;4.40mol)の、撹拌した溶液に、重炭酸アミノグアニジン[アルドリッチ](272.0g;2.00mol)を30分かけて少しずつ添加した。この添加が完了したときに、当該溶液を、温度がおよそ40°に下がるまで撹拌し、次いで、冷エーテル(500cm)でゆっくり処理した。この添加の間、無色の針状結晶(needles)が析出し始めた。その結果として生じたスラリーを、0°で4時間静置し、濾過し、その生成物を、冷エーテルで洗浄し、真空中で50°にて一晩乾燥させた。収量(収率)=528g(99.25%)、mpt=149〜150°(文献:WO/2004/026845;147.5°)
【0060】
シッフ塩基、シアノヒドラゾン(5、Ar=3,4‐ジメトキシフェニル)
65〜70°の、99.5%メタンスルホン酸(22g)中、アミノグアニジンビスメシレート(14.0g;0.053mol)の、撹拌した溶液に、アセトニトリル(30cm)中3,4‐ジメトキシベンゾイルシアニド(5.7g;0.030mol)の温溶液を、およそ25分かけて滴加した。次いで、この混合物を、68°で、水中で試料が澄んだ溶液を生ずるまで(およそ2.5時間)、撹拌し、次いで、砕氷/水(125g)上に注ぎ、淡黄色の沈殿物を生じさせた。この撹拌した混合物を、48%水酸化ナトリウム(19.0cm)で中和し(pH8〜9)、鮮黄色の沈殿物を生じさせた。この生成物を濾過し、冷水で洗浄し、真空中で45°にて乾燥させた。収量(収率)=6.21g(83.8%)、Mpt=98〜100℃、TLC[SiOプレート、クロロホルム中10%メタノール]、R=0.52。この生成物は、すぐに、次の段階で使用した。
【0061】
6‐アルキル/アラルキル‐3,5‐ジアミノ‐1,2,4‐トリアジン化合物
【0062】
【化7】

【0063】
トリフェニルアセチルクロリド[3;R=R=R=Ph]
乾燥ジクロロメタン(100cm)中、トリフェニル酢酸(21.7g;0.075mol)および乾燥ジメチルホルムアミド(2滴)の、撹拌した混合物を、塩化オキサリル(14g;0.11mol)で処理したが、これは、ほぼ4等分に分けておよそ25分にわたり添加した。この混合物を、35°で、塩化水素の発生が止むまで(およそ4時間)、撹拌した。その結果として生じた無色の溶液を、真空中で40°にて一定重量まで蒸発させて、表題化合物を、無色の結晶性固体として得た。収量(収率)=23.24g(100.0%)。この生成物は、すぐに、次の段階で使用した。
【0064】
同様に、以下を調製した:
【0065】
トリフェニルアセチルシアニド[4;R=R=R=Ph]
トリフェニルアセチルシアニド(23.24g;0.075mol)、乾燥トルエン(40cm)、乾燥アセトニトリル(10cm)、シアン化銅I(9.20g;0.103mol)、セライト(3.5g)および微粉状ヨウ化カリウム(2g)の、よく撹拌した混合物[パドルスターラー]を、還流下で、酸塩化物が残らなくなるまで(およそ18時間)、加熱した。この暗反応混合物を、およそ75°に冷却し、トルエン(150cm)で希釈した。さらにおよそ30分間撹拌した後、その結果として生じたスラリーを、クロマトグラフィー用シリカゲル床(およそ2.5cm)に通して濾過し、その無色の濾液を、真空中で一定重量まで蒸発させて、表題化合物を、無色の固体として得た。収量(収率)=21.97g(98.7%)、Mpt=67〜69°。この生成物は、すぐに、次の段階で使用した。
【0066】
シッフ塩基、シアノヒドラゾン、(4;R=R=R=Ph]
65〜70°の、99.5%メタンスルホン酸(22.5g)中、アミノグアニジンビスメシレート(15.00g;0.0564mol)の、撹拌した溶液に、アセトニトリル(25cm)中トリフェニルアセチルシアニド(8.91g;0.030mol)溶液を、およそ25分かけて滴加した。次いで、この混合物を、68°で、水中で試料が澄んだ溶液を生ずるまで(およそ28時間)、撹拌し、次いで、砕氷/水(150g)上に注ぎ、半固体状の無色の沈殿物を生じさせた。この混合物を、48%水酸化ナトリウム(17.5cm)で中和し(pH8〜9)、表題化合物を、クリーム色の粒状固体として生じさせた。この生成物を濾別し、水で洗浄し、真空中で45°にて乾燥させた。収量(収率)=8.47g(80.0%)、Mpt=112〜114°、TLC[SiOプレート、クロロホルム中10%メタノール]、R=0.68。この生成物は、すぐに、次の段階で使用した。
【0067】
トリアジン化合物
【0068】
【化8】

【0069】
5(3)‐アミノ‐6‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐2,3(2,5)‐ジヒドロ‐3(5)‐イミノ‐2‐(2,2,2‐トリクロロエチル)‐1,2,4‐トリアジントリフルオロメタンスルホネート[CEN‐216]:
【0070】
【化9】

【0071】
3,5‐ジアミノ‐6‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐1,2,4‐トリアジン(ラモトリギン)(0.9g;3.50ミリモル)、2,2,2‐トリクロロエチルトリフラート(1.0g;3.55ミリモル)、ブタン‐2‐オン(10cm)およびジメチルホルムアミド(5滴)を、窒素下で、還流させながら25時間撹拌した。
【0072】
その溶液を蒸発乾固させ、黄褐色の残渣をアセトンから結晶化させ、淡黄褐色の微結晶性粉末を得た。収量(収率)=510mg。Mpt―236〜238、tlc(10%メタノール‐クロロホルム)、Rf=0.38。
【0073】
2,2,2‐トリクロロエチルトリフラート
2,2,2‐トリクロロエタノール(7.5g;0.05モル)およびトリフリック無水物(14.1g;0.05モル)の混合物を、80℃で60分間加熱した。
【0074】
室温に冷却した後、この反応混合物を、エーテル(100cm)で希釈し、氷冷5%炭酸水素ナトリウム溶液(3×50cm)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で20℃未満にて蒸発乾固させた。無色の油が結果として生じた。これを、4℃で静置しながら、無色の柱状結晶(prisms)へと凝固させた。収量(収率)=10.91g(77.8%) 融点 28〜30℃。この生成物は、さらなる精製を行うことなく、すぐに使用する。
【0075】
2,2,‐ジクロロエチルトリフラート
2,2‐ジクロロエタノール(5.75g;0.05モル)およびトリフリック無水物(14.1g;0.05モル)の混合物を、80℃で60分間加熱した。
【0076】
室温に冷却した後、この反応混合物を、エーテル(100cm)で希釈し、氷冷5%炭酸水素ナトリウム溶液(3×50cm)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で20℃未満にて蒸発乾固させた。無色の油が結果として生じた。この生成物は、さらなる精製を行うことなく、すぐに使用する。
【0077】
2,2,2‐ブロモロエチルトリフラート
2,2,2‐トリクロロエタノール(14.15g;0.05モル)およびトリフリック無水物(14.1g;0.05モル)の混合物を、80℃で120分間加熱した。
【0078】
室温に冷却した後、この反応混合物を、エーテル(100cm)で希釈し、氷冷5%炭酸水素ナトリウム溶液(3×50cm)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で20℃未満にて蒸発乾固させた。無色の固体が結果として生じた。融点 41〜43℃。この生成物は、さらなる精製を行うことなく、すぐに使用する。
【0079】
生物学的試験
式(I)の化合物を、種々の活性について、以下のようにして試験した:
【0080】
スクリーニング戦略
適切なナトリウムチャネル遮断活性を有し、かつ、副作用の起こりやすさ(side effect liability)が低い化合物を選択するためにスクリーニング戦略を設計する。この目的のために、すべての化合物を、一次ナトリウムチャネルアッセイ(ラット前脳シナプトソームへの[14C]グアニジンのベラトリン誘発性取り込み)により処理し、IC50値を、作成した濃度‐効果曲線から算出する。このデータを補完するべく、選択した化合物についての[H]BTX‐Bの結合を阻害するIC50値も測定する。
【0081】
先の研究では、置換トリアジンが、ジヒドロ葉酸還元酵素(ydroolate eductase;DHFR)活性の潜在的な阻害剤である、とのことが示されてきた(McCullough and Bertino 1971、Cashmore et al,1975、Booth et al,1987)およびSapse et al,1994)。DHFRの阻害剤(例えばメトトレキサートなど)は、様々な癌の治療に用いられており(Suster et al,1978およびNiculescu‐Duvaz et al,1982)、これは、この酵素の阻害により細胞増殖が妨げられるためであるが、この(細胞増殖に対する)効果ゆえに、DHFRの阻害剤は催奇形性であることもある(Skalko and Gold,1974、Feldcamp and Carey,1993およびBuckley et al,1997)。もし万一DHFRの強力な阻害剤である化合物を見い出せば、かかる化合物は、それら自身、抗癌剤としての潜在性を有する可能性がある。DHFR活性の阻害の測定には、いくつかの方法が利用可能であり、また、この研究のために、我々は、化合物の、[H]メトトレキサートの結合を阻害する効果を調べてきた(Myers et a1,1975およびRothenberg et al,1977)。
【0082】
もう1つの一般的な副作用マーカーは、ヒトEther‐a‐go‐go関連遺伝子カリウム(uman ther‐a‐go‐go elated ene;hERG)カリウムチャネル(内向き整流(Inward rectifying)、IKr)活性の阻害であり、これは、QT延長症候群の発症により引き起こされる心不全に起因して致死となり得る。このチャネルに影響を及ぼす潜在性を評価するための、有用な予備スクリーニングは、hERGを発現する細胞膜への[3H]アステミゾールの結合の阻害の測定により評価する。選択した化合物は、10μMにおける阻害の測定により、この活性について試験する。阻害値が10%〜90%の間にあると仮定すると、各化合物について、外挿IC50を算出することが可能である。
【0083】
上記スクリーニングカスケードにより、上述の副作用の起こりやすさの傾向が(より)低い、適切なナトリウムチャネル遮断活性を有する化合物が同定される。これらの化合物をさらに開発するためには、それらの薬力学的特性に関するある程度の知識が必要である。
【0084】
ラットにおける中大脳動脈閉塞後の神経学的欠陥および梗塞部体積を共に減少させる(Smith et al,1997)、例えばシパトリジン(Sipatrigine)などのナトリウムチャネル遮断薬、ならびに、フェニトイン(これは、緑内障の実験モデルにおける網膜神経節細胞死を防ぐ(Hains and Waxman,2005)は、神経変性モデルの範囲において、神経保護効果を示す。酸素供給不全により解糖と酸化的リン酸化との両方が損なわれるため、虚血性の損傷は、最終的には、電気的不全(神経シグナル伝達)およびポンプ不全(細胞膜電位の回復)につながる。これらの(電気およびイオンポンプ活性の)不全は、ATPの局所濃度の低下に関連している(Astrup et al 1981)。よって、重度の代謝障害(metabolic insult)後のラット海馬の0.4mm切片における、化合物の、ATPの濃度を維持する効果を用いた。
【0085】
実験手順
ラット前脳シナプトソームおよびホモジネートの調製
重さが175〜250gであるオスのWistar系ラットからの前脳(全脳から小脳/髄質を除いたもの)を用いて実験を行なった。使用する動物数を少なくするためにあらゆる努力をし、かつ、すべての実験は、1986年の英国動物(科学的処置)法(UK Animals (Scientific Procedures) Act)および1986年11月24日の欧州共同体理事会指令(European Community Council Directive)(86/609/EEC)に従って行なった。スタンニングおよび断頭によって動物を屠殺した後、前脳(全脳から小脳/髄質を除いたもの)を速やかに解剖し、氷冷0.25Mスクロースを含有する、重さを計ったチューブに移した。
【0086】
シナプトソーム(シナプトソームを含有する重および軽ミトコンドリア分画)は、当該(既知の湿重量の)前脳を、9倍容量の氷冷0.25Mスクロースを入れたガラス製Potter容器に移し、テフロン(登録商標)内筒を用いて、900rpmに設定したBraun Potter Sモーター駆動ホモジナイザーの8回の「上下ストローク(up and down stroke)」によりホモジナイズすることにより調製した。その結果として生じたホモジネートを、1036×gで4°にて10分間遠心し、上清を回収した。残ったペレットを、上記のようにして、新しい氷冷0.25Mスクロース中に再懸濁し、遠心分離工程を繰り返した。この上清分画をプールし、40,000×g(平均)で4°にて15分間遠心し、また、その結果として生じたペレットを、適切なアッセイ緩衝液1ml当たり20〜25mg湿重量という濃度で、適切なアッセイ緩衝液中に再懸濁した。
【0087】
ホモジネートは、既知重量の前脳を、9倍容量の氷冷50mM pH7.4 HEPES緩衝液を含有する冷却したチューブに移すことにより調製した。この混合物を、最高速度に設定したUltra‐Turrax(商標)ホモジナイザーの、3×5秒のバーストにより、4°でホモジナイズした。その結果として生じたホモジネートを、40,000×g(平均)で4°にて15分間遠心し、上清を破棄した。その結果として生じたペレットを、(上記のようにして)9倍容量の新しい氷冷pH7.4緩衝液中に再懸濁し、遠心分離工程を繰り返し、また、その結果として生じたペレットを、アッセイ緩衝液1ml当たり20〜25mg湿重量という濃度で、[H]BTX‐B結合緩衝液中に再懸濁した。
【0088】
14C]グアニジンフラックスおよび[H]BTX‐Bの結合
両アッセイとも、ある範囲の濃度の試験に供する化合物を添加した14mlポリプロピレン製テストチューブを用いて行なった。試験化合物は、DMSO中に溶解させ、DMSOの最大濃度が2%v/vを超えないよう、アッセイに加えた。
【0089】
14C]グアニジンフラックス:
14C]グアニジニン(guanidinine)フラックスアッセイは、Pauwels PJ et al(1986)の方法を用いて測定したが、30°で、2と1/2分間行なった。
参考文献:
Pauwels PJ, Leysen JE, Laduron PM. [H]Batrachotoxinin A 20‐alpha‐benzoate binding to sodium channels in rat brain: characterization and pharmacological significance. Eur J Pharmacol. 1986 May 27;124(3):291‐8。
【0090】
H]BTX‐Bの結合
H]BTX‐B結合は、ウシ血清アルブミンとTTXの両方をインキュベーションメディウムから除外した以外は、Catterall et al(1981)により記述された方法を用いて行なった。
参考文献:
Catterall WA, Morrow CS, Daly JW, Brown GB. Binding of batrachotoxinin A 20‐alphabenzoate to a receptor site associated with sodium channels in synaptic nerve ending particles. J Bio. Chem. 1981 Sep.10;256(17):8922‐7。
【0091】
H]メトトレキサートの結合
すべての工程は、4°(または氷上)で行なった。新たな解剖ラット肝臓を、解剖して、0.25M氷冷スクロース中に入れ、その後、15mMジチオスレイトールを含有する50mM pH6.0リン酸緩衝液(10ml/g組織)中でホモジナイズ(U‐turrax)した。その結果として生じたホモジネートを、47,500×gで20分間遠心し、上清を、(生綿に通して濾過して脂肪塊を除去し、)使用前に−80°で保存した(Rothenberg et al)。
ラット肝臓ホモジネート上清分画への[H]メトトレキサートの結合の阻害は、基本的には、Arons et al,1975により記述されているようにして行なった。結果は、濃度‐効果曲線から導き出されるIC50値(以下参照)としてか、または、対照および冷メトトレキサート(10μM終濃度)の結合値との比較により決定されるパーセンテージ阻害値としてか、のいずれかで計算した。
参考文献:
Elliot Arons, Sheldon P. Rothenberg, Maria da Costa, Craig Fischer and M. Perwaiz Iqbal; Cancer Research 35, August 1,1975,2033‐2038,
【0092】
IC50値の算出
データは、括弧内に示す実験数の、平均±標準誤差、として提示する。IC50値は、放射性リガンド置換、または、以下の等式に従って、結合リガンド/グアニジン取り込みに対してlog10濃度をプロットすることによるグアニジンフラックス阻害曲線、から得た:‐
y=Rmin+Rsp/{1+exp[−n(x−C)]}
式中、 y =結合(dpm)
x =log10化合物濃度
Rmin=下側漸近線 (すなわち、100%阻害)
Rsp =上側漸近線−Rmin (すなわち、特異的結合)
n =傾き(log
および C =IC50(すなわち、特異的結合の50%を阻害するのに必要な濃度
【0093】
海馬切片アッセイ
神経保護効果は、ヨード酢酸(400μM)を代謝障害(metabolic insult)として用いた以外は、Fowler and Li(1998)により記述された方法を用いてラット海馬の0.4mm切片において測定した。化合物(通常30μM)は、解糖の阻害後のATPの切片濃度を維持する能力について、いつも、テトロドトキシン(1μM)と直接比較した。
参考文献:
1. Fowler J C, Li Y. Contributions of Na flux and the anoxic depolarization to adenosine 5’‐triphosphate levels in hypoxic/hypoglycemic rat hippocampal slices. Neuroscience 1998, 83, 717‐722。
2. Reiner PB, Laycock AG, Doll CJ. A pharmacological model of ischemia in the hippocampal slice. Neurosci Lett 1990;119:175‐8
3. Boening JA, Kass IS, Cottrell JE, Chambers G. The effect of blocking sodium influx on anoxic damage in the rat hippocampal slice. Neuroscience. 1989. vol 33(2),263‐268。
【0094】
ATPおよびタンパク質の測定
個々の切片を超音波処理により粉砕し、その結果として生じたホモジネートを、10000×gで5分間、4°にて遠心した。上清を新しいチューブの中へデカントし、残ったあらゆる上清を真空吸引により除去した。このペレットを、超音波処理により、0.5mlの0.1M KOH中に再懸濁し、また、その結果として生じた懸濁液を、穏やかに撹拌しながら37°で30分間温めた。
【0095】
ATPの濃度は、6μlの上清を用いて、ルシフェラーゼ試薬(パーキンエルマー社からのATPLite)と混合し、96ウェルプレートカウンターにてその後の発光を測定することにより測定した。
【0096】
タンパク質濃度は、参照標準としてのウシ血清アルブミンと共にBCA(商標)タンパク質アッセイ(Pierce社)を用いて測定した。
【0097】
ATP濃度は、ナノモル/mgタンパク質、で表し、また、神経保護の指標(%保護)は、1μM TTXの効果との直接比較により計算した。
【0098】
hERG:
ヒト組換えhERGを発現するHEK‐293細胞への[H]アステミゾールの結合の、10μM濃度における阻害の測定のために、化合物をMDSファーマに送った。結合の傾きが1.0であろうと仮定して、結合の5%〜95%阻害を呈する化合物について、IC50値を計算することができた(上記参照)。
【0099】
L型カルシウムチャネル
ラット大脳皮質膜への[H]ニトレンジピンの結合の、10μM濃度における阻害の測定のために、化合物をMDSファーマに送った。結合の傾きが1.0であろうと仮定して、結合の5%〜95%阻害を呈する化合物について、IC50値を計算することができた(上記参照)。
【0100】
ラットミクロソーム安定性
ラット肝ミクロソームとともに37°で40分間インキュベーションした後の、1μM濃度における安定性の測定のために、化合物をBioFocusに送った。
【0101】
MES方法論(最大電気ショック;Maximal ElectroShock)
(チャールズ・リバー・ラボラトリーズの技術ライセンシー下の)BioLasco Taiwan社により提供されたオスのWistar系ラットを用いた。5匹の動物に対するスペースの割り当ては45×23×21cmであった。動物は、動物ケージ中に収容し、制御された温度(21〜23℃)および湿度(50%〜70%)環境にて、12時間の明/暗サイクルで、MDSファーマサービス―台湾研究所にて使用前に少なくとも3日間維持した。ラット用の標準実験用飼料[MF‐18(オリエンタル酵母工業株式会社、日本)]と逆浸透(RO)水とへの自由なアクセスを無制限に(ad libitum)与えた。動物の収容、実験法および処分を含むこの作業のすべての態様は、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(ナショナル・アカデミー・プレス、ワシントンD.C.、1996年)に全般的に従って行なった。
【0102】
試験化合物は、2%Tween80中に懸濁/溶解し、また、最大電気ショック(MES、60Hz正弦波、150mA、200ミリ秒の持続時間)を角膜電極を通して適用する1時間前に、10ml/Kgの投与体積で、重さが180+/−20gである5匹のWistar系のオスのラットの各グループに経口投与した。最大電気ショックにより誘導される強直性痙攣の出現(MES)を、各動物について判定した。試験物質による強直性痙攣の50パーセント以上の(50%)阻害は、有意な抗痙攣活性を指し示す。
【0103】
機器/化学薬品:
【0104】
動物ケージ(アレンタウン社、米国)、電気ショック発生装置(組織内(In‐house)、R.O.C.)、経口投与用の針(夏目、日本)、および、ラットの秤(500g、大和、日本)。ジフェニルヒダントインナトリウム塩(シグマ社、米国)、および、Tween80(シグマ社、米国)。
【0105】
14、42または100mg/kgでの試験物質(CEN‐216、CEN‐145、CEN‐148、CEN‐152およびCEN‐154)を、重さが180±20gである5匹のWistar系由来のオスのラットの各グループに経口投与した。
【0106】
結果
【0107】
種々の試験手順からのデータを以下表に記載する:
【0108】
【表1】

【0109】
99μM
** 198μM
*** 上清の新たなバッチを使用
ラット(wistar系)の脳に結合する[3H]バトラコトキシニンの結合の阻害
データは、10μMにおける%阻害および外挿IC50(傾き=1と仮定)、として提示する。
<5%阻害を与える化合物は、>200μMのIC50に帰する
>95%阻害を与える化合物は、<0.5μMのIC50に帰する
【0110】
[3H]BTX‐Bの結合の阻害
【0111】
【表2】

【0112】
[3H]バトラコトキシニン結合方法の概要―279510ナトリウムチャネル、部位2
試料源:Wistar系ラット脳
リガンド:5nM[.H]バトラコトキシン
媒体:1%DMSO
インキュベーション時間/温度:37.Cにて60分
インキュベーションバッファー:50mM HEPES、50mM Tris‐HCl、pH7.4、130mM 塩化コリン、5.4mM KCl、0.8mM MgCl.、5.5mM グルコース、40μg/ml LqTx
:0.052μM
非特異的リガンド:100μM ベラトリジン
Bmax:0.7ピコモル/mgタンパク質
特異的結合:77%
定量方法:放射性リガンド結合
有意性判定基準:最大刺激または阻害の、>/=50%
【0113】
海馬切片データ
【0114】
【表3】

【0115】
N‐アルキル置換トリアジンについてのMESの結果
【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

【0118】
「ショック」の1時間前に化合物を経口投与した、てんかんのラットモデル(最大電気ショック―MES)において、CEN‐216についてのED50(50%のラットを、四肢の伸展等から保護するための有効量)は、およそ9mg/kg遊離塩基である。
【0119】
上記MES試験における100mg/kg遊離塩基では、CEN‐217および218は、それぞれ、60%および40%保護、すなわち、それぞれ、(ごく概算で)80および120mg/kg遊離塩基の化合物についてのED50、を示した。
【0120】
てんかんのマウスモデル(MES)において、化合物CEN‐079およびCEN‐216を、「ショック)の1時間、6時間および24時間前において、経口投与した(それぞれ、100および72mg/kg遊離塩基)。両化合物とも、24時間におけるCEN‐079保護効果は40%保護まで低下していた以外は、すべての時点において100%保護が見られたことから、すべての時点において有意な保護を示した。
【0121】
本発明の代表的な化合物に関して得られたスクリーニングデータは、一般式(I))の化合物が、ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、ならびに、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、のような障害、の治療;哺乳類の癌の治療;ならびに、マラリアの治療、に適切であること、を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
zが、単結合であるか、もしくは、所望により置換されていてもよい連結基であり、
R1がハロ‐アルキル基であり、;かつ
Aが、所望により置換されていてもよい芳香族複素環式もしくは炭素環式環系である、
式I:
【化1】

の化合物;またはその塩。
【請求項2】
R1が、C1‐10ハロ‐アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、ハロ‐メチル、エチル、i‐プロピル、n‐プロピル、i‐ブチルまたはn‐ブチル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、ジ‐またはトリ‐ハロ‐置換された基である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、‐CHCCl:‐CHCBr;‐CHCHCl;‐CHCHBr;‐CHCF;‐CHCHCFまたは‐CHCFCFまたは‐CH2,CFCHFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
zが、連結基であり、かつ、1つまたは2つの所望により置換されていてもよいアルキルまたはフェニル基を有する炭素原子である、先行するいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、(ベンゾ)チエニル、(ベンゾ)フリル、フェニルフリル、(ベンゾ)ピラニル、(イソ)インドール、(イソ)キノリンまたはピリジンであり、所望により置換されていてもよい、先行するいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、芳香族炭素環式環系、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニルもしくはフルオレニルであり、所望により、ハロゲン、例えばクロロ、ブロモもしくはフルオロ;ハロアルキル、例えばCF3;アルコキシ、例えばOMeもしくはOEt;または、アリールオキシ、例えばフェノキシもしくはベンジルオキシの1つ以上で置換されていてもよい、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Aが、例えばジクロロフェニルまたはトリクロロフェニル、例えば2,3‐、2,6‐もしくは3,5‐ジクロロ、または2,3,5‐トリクロロである、クロロフェニル;例えば2‐ブロモまたは3‐ブロモである、ブロモフェニル;例えばジ‐トリフルオロメチル、例えば3,5‐トリフルオロメチルである、トリフルオロメチル‐フェニル;例えばジ(メ)エトキシまたはトリ(メ)エトキシ‐フェニル、例えば4,5ジメトキシまたは3,4,5トリメトキシである、(メ)エトキシ‐フェニル;例えばジ(フルオロ(メ)エトキシ)‐フェニル、例えば2‐フルオロ(メ)エトキシ、4‐フルオロ(メ)エトキシまたは2,4‐ジ(フルオロ(メ)エトキシ)である、フルオロ(メ)エトキシ‐フェニル、である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Aが、二環式置換基、例えば、例えば1‐ナフチルおよび2‐ナフチルもしくはテトラヒドロナフチルである、ナフチル;または、例えば(メ)エチレンジオキシフェニルもしくはベンゾジオキソロである、アルキレンジオクスフェニル(alkylenedioxphenyl)であり;所望により、例えば6‐ブロモナフチルなどの、ブロモ、または、例えば2,2‐ジフルオロベンゾジオキソロなどの、フルオロなどのハロゲンの1つ以上により、または、例えば2‐もしくは3‐(メ)エトキシナフチル、または1,4‐、2,5‐もしくは3,7‐ジ(メ)エトキシナフチルなどの、(メ)エトキシなどのアルコキシ基の1つ以上により、置換されていてもよい、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Aが、三環式置換基、例えばアントラセニルもしくはフルオレニルなどの、1つ以上の芳香環を含有する縮合環系、または、例えばアダマンチルなどの、非芳香族、であり、;所望により、ハロゲンまたはアルコキシ基の1つ以上により置換されていてもよい、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記A環が、例えば単環式、二環式および三環式の環構造などの、環状置換基を2つ含むビス型を有する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
zが単結合であり、かつ、
i) Aが2,3‐ジクロロフェニルであり、かつ、Rが、‐CHCClもしくは‐CHCFCFもしくはCH2,CFCHFであるか、;
ii) Aが2,3,5‐トリクロロフェニルであり、かつ、Rが、‐CHCClもしくは‐CHCHClもしくはCHCBrであるか、;
iii) Aが3,5,‐ビストリフルオロメチルフェニルであり、かつ、Rが、‐CHCClもしくは‐CHCHClもしくはCHCBrであるか、;
iv) Aがビスフェニルメチルであり、かつ、Rが、‐CHCClもしくは‐CHCHClもしくはCHCBrであるか、;または
v)) Aが2‐(3,4,5,‐トリクロロ‐ビス‐フェニルであり、かつ、Rが、‐CHCClもしくは‐CHCHClもしくはCHCBrである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Wが硫黄、酸素または窒素であり;nが1、2または3であり、;かつ、R3は1つ以上の置換基である、式(II):
【化2】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
R2がNHである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
A、zおよびR1が、請求項1〜請求項13のいずれか一項において定義されている、
式(III):
【化3】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
Aが、所望により置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり、かつ、zが、メチレンまたはエーテル架橋である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
薬剤的に許容できる担体との混和物中に、先行するいずれか一項に記載の化合物またはその薬剤的に許容できる塩または溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項19】
ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、の治療;哺乳類の癌の治療;または、マラリアの治療、のための、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、ならびに、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、のような障害、の治療;哺乳類の癌の治療;または、マラリアの治療、のための、または、それらのための医薬の調製のための、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬剤的に許容できる塩もしくは溶媒和物、または、請求項18もしくは請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ナトリウムチャネル遮断薬および葉酸代謝拮抗薬に感受性である哺乳類における障害、ならびに、特に、てんかん、多発性硬化症、緑内障およびブドウ膜炎、脳外傷および脳虚血、脳卒中発作、頭部損傷、脊髄損傷、外科的外傷、神経変性疾患、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、慢性炎症性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛、双極性障害、気分、不安および認知障害、統合失調症ならびに三叉神経・自律神経性頭痛、のような障害、の治療;哺乳類の癌の治療;または、マラリアの治療、のための、または、それらのための医薬の調製のための、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬剤的に許容できる塩もしくは溶媒和物、または、請求項18もしくは請求項19に記載の組成物、の使用。

【公表番号】特表2012−532857(P2012−532857A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519065(P2012−519065)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051126
【国際公開番号】WO2011/004195
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(509012865)ユニバーシティ オブ グリニッジ (4)
【Fターム(参考)】