説明

環状ヒドロフルオロエーテル化合物類並びにそれらの調製及び使用方法

ヒドロフルオロエーテル化合物は、少なくとも1つの5員環又は6員環のペルフルオロ化ヘテロシクロ環を有し、各々の環は4個又は5個の環炭素原子と、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される1個又は2個の鎖中で連結されたヘテロ原子とを有し、その鎖中で連結されたヘテロ原子の少なくとも1つは2価のエーテル酸素原子であり、そして2価のエーテル酸素原子に隣接した環炭素原子の各々は、その環炭素原子に直接結合したテトラフルオロエチリデン部分(−(CF)CF−)を有するフルオロケミカル基を有し、そのフルオロケミカル基は2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される、少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の申告)
本出願は、2006年5月19日出願の米国特許仮出願番号第60/747,742号、及び2006年12月6日出願の米国特許仮出願番号第11/567,602号の優先権を主張し、それらの内容は参照により本明細書に記載されているものとみなす。
【0002】
(発明の分野)
本発明は部分的フッ素化エーテル化合物に関する。別の態様では、本発明はまた、部分的フッ素化エーテル化合物の調製方法及びそれらの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロフルオロエーテル化合物(HFE)は商業的に高価な化学化合物の部類を構成する。CFCがその環境に及ぼしていると確信されている悪影響に起因して現在では不利益と見なされ規制されている、クロロフルオロカーボン(CFC)の代替物として多くの用途の中で、ヒドロフルオロエーテルは、有用であることが判明している。CFCとは異なり、ヒドロフルオロエ−テル化合物は唯一のハロゲンとしてフッ素を含有し、地球のオゾン層に対して実質的に何の影響も与えない。このようなヒドロフルオロエーテル化合物は、従って「オゾン層破壊係数」がゼロを示すといわれている。加えて、このようなHFEは、一般的に、地球の大気中でより容易に分解し、結果として低い地球温暖化係数になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒドロフルオロエーテル化合物は、種々の異なった方法によって調製されてきており、例えば、ペルフルオロ化酸フルオライド(電解フッ素化又は直接フッ素化によって調製される)のアルキル化、ペルフルオロ化ケトン(ペルフルオロ化酸フルオライドとペルフルオロ化オレフィンとの反応によって調製される)のアルキル化、及びテトラフルオロエチレン(TFE)の光酸化反応と後続の還元安定化が挙げられる。このような方法には、様々な利点と欠点がある。例えば、後者の方法では比較的危険な反応剤であるTFEの取り扱いが必要であり、また一般的に大規模な精製を必要とする広範な生成混合物を与える。このような方法はまた、一般的に環状のHFEを直接的に形成する(即ち、アルキル化の段階で環構造形成のため)のに好適ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
環境に優しい化合物(好適には、オゾン破壊係数がゼロである及び/又は地球温暖化係数が低い化合物)に対する需要がますます増加している点を鑑み、様々な異なった用途(例えば、150℃よりも高い沸点)の性能要件に適合できるHFE、並びにそれらの調整のための効率的でかつ費用対効果の大きい方法に対する継続的な需要が存在していると認識している。そのような方法は、好適には、広範な混合生成物を製造しないで、特化された構造及び物理的特性を有するヒドルフルオロエーテル化合物をフレキシブルにかつ制御可能に製造できる方法である。
【0006】
つまり、一態様において、本発明は、少なくとも1つの(好ましくは1又は2の)5員環又は6員環のペルフルオロ化ヘテロシクロ環を有するヒドロフルオロエーテル化合物であって、各環は4個又は5個の炭素原子と、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される1個又は2個の鎖中で連結された(即ち鎖中にある)ヘテロ原子とを有し、鎖中で連結されたヘテロ原子の少なくとも1つは2価のエーテル酸素原子であり、且つ、その2価のエーテル酸素原子に隣接した環炭素原子の各々は環炭素原子に直接結合するテトラフルオロエチリデン部分(−(CF)CF−)を有し、そのフルオロケミカル基は、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される鎖中で連結されたヘテロ原子少なくとも1つ場合により有する、ヒドロフルオロエーテル化合物を提供する。
【0007】
好ましくは、1つフルオロケミカル基を有する環炭素原子の1つは1つのフッ素原子を更に有し、残りの炭素原子は、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基を若しくは、少なくとも1つの第2の環が存在する場合には、第2の(又はそれ以上の)環の環炭素原子に結合した、2価のオキシアルキレンオキシ基又はオキシフルオロアルキレンオキシ基を更に有する。より好ましくは、残りの炭素原子(即ち、2価のエーテル酸素原子に隣接していないもの)は、独立して、非置換(フッ素のみを有する)であるか、又はペルフルオロアルキルの1置換(フッ素原子と少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有するペルフルオロアルキル基とを有する)であることができる。
【0008】
ヒドロフルオロエーテルの環は好ましくは同一である。好ましくは、各々の環は1つだけの鎖中で連結されたヘテロ原子を有し、及び/又は各々のフルオロケミカル基は、分枝したペルフルオロアルキル基であり、そのペルフルオロアルキル基は、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される(好ましくは2価のエーテル酸素原子)、少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含む。
【0009】
簡単な方法によってヒドロフルオロエーテル化合物の新しい汎用性の部類を高収率で製造できることが発見され、その方法には、特定のフルオロケミカルのジケトン類(2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択された少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含む、分枝鎖フルオロアルキル末端基又はペルフルオロアルキル末端基を有するもの)を、無水のアルカリ金属フッ化物(例えば、フッ化カリウム又はフッ化セシウム)、若しくは無水のフッ化銀(好ましくは、無水の極性の、非プロトン性溶媒中)で反応させることによって調製されるフルオロケミカルアルコキシド類のアルキル化が含まれる。意外にも、環化反応は、嵩高い、分枝した末端基があるにも拘らず、アルキル化の段階で生じる。出発物のジケトン類の構造を変更することによって、設計した構造及び物理特性を有する環状HFEが制御可能に得ることができる。
【0010】
本発明のHFEは数多くの異なった用途に使用でき、例えば、コーティング付着における溶媒に、洗浄又は乾燥液体に、ドライクリーニング液体に、重合反応媒体に、書類保存媒体に、熱伝達剤に、発泡体のブロー成形に使用されるセルサイズ調整剤に、気相半田付けに使用される熱伝達剤に、及び金属の切削又は成形における金属加工剤に、の用途が挙げられる。少なくとも幾つかのHFEは予想外の高い熱安定性を示し、それらは高温用途に特に有用になる。このように、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、前記のHFEに対する継続する需要を満たし、種々の異なった用途に対する要求特性(並びに効率的で費用対効果の良い調製に対する需要)を満たすことができる。
【0011】
別の態様では、本発明によって本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を調製する際の出発物質に有用であるフルオロケミカルジケトン化合物が提供される。そのようなフルオロケミカルケトン化合物は、末端にある2個の分枝鎖フルオロアルキルカルボニル基又は分枝鎖ペルフルオロアルキルカルボニル基を有し、それらは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子と(好ましくは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有するペルフルオロアルキルカルボニル基)、2個又は3個だけの鎖中にある原子を有する直鎖又は分枝鎖で(好ましくは、分枝鎖の)介在するペルフルオロアルキレンのセグメントとを場合により有し、そのペルフルオロアルキレンセグメントは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有し、但しペルフルオロアルキレンセグメントが鎖中で連結されたヘテロ原子を含有しない場合にペルフルオロアルキレンセグメントは分枝している、そして、末端のフルオロアルキルカルボニル基又はペルフルオロアルキルカルボニル基の分枝が、その基のカルボニル部分に隣接したその基のフルオロアルキル部分又はペルフルオロアルキル部分の炭素原子において発生している。
【0012】
さらに別の態様において、本発明はヒドロフルオロエーテル化合物を調製する方法をも提供し、その方法は、(a)少なくとも1種のフルオロケミカルケトン化合物を少なくとも1種のフルオライド源と反応させ、少なくとも1種のフルオロケミカルアルコキシドを形成させる工程であって、そのフルオロケミカルケトン化合物は、末端に2つある、分枝鎖フルオロアルキルカルボニル基又は分枝鎖ペルフルオロアルキルカルボニル基を有し、それらは2価のポリエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含み(好ましくは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有するペルフルオロアルキルカルボニル基)と、直鎖又は分枝鎖で(好ましくは直鎖で)介在するペルフルオロアルキレンセグメント、とを有し、ペルフルオロアルキレンセグメントは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される鎖中で連結されたヘテロ原子を1つ以上場合により含有し、そして末端のフルオロアルキルボカルボニル基又はペルフルオロアルキルカルボニル基の分枝が、当該基のカルボニル部分に隣接した当該基のフルオロアルキル部分又はペルフルオロアルキル部分の炭素原子において発生している、工程と、そして(b)そのフルオロケミカルアルコキシドを少なくとも1種のアルキル化剤と反応させて少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物を形成する工程、とを含む。
【0013】
なお別の態様において、本発明によって本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を利用するための以下の方法が提供される:
物品を少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む組成物と接触させることを含む、物品から汚染物質(例えば、油、又はグリース、粒子状物質、又は水)を除去する方法。
【0014】
少なくとも1種の発泡性ポリマー又は少なくとも1種の発泡性ポリマーの前駆体の存在下で発泡剤混合物を蒸発させることを含む、発泡プラスチックの調製方法であって、その発泡剤混合物が、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む、方法。
【0015】
半田を含む少なくとも1つの部品を、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含むフルオロケミカル液体蒸気体に浸漬することによって、半田を融解させることを含む、気相半田付け方法。
【0016】
少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む熱伝達剤の使用を介して、熱源とヒートシンクとの間で熱を伝達させることを含む、熱伝達方法。
【0017】
基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に、(a)少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテルを含む溶媒組成物と、(b)その溶媒組成物に溶解性又は分散性のある少なくとも1種のコーティング材料(例えば、フルオロケミカルポリエーテル又は書類保存材料)とを含む組成物を塗布する工程を含む、基材上にコーティング物を付着させる方法。
【0018】
金属、サーメット、又は複合材の加工部品及び工具に作動流体を塗布する工程を含む金属サーメット、又は複合材の加工方法であって、その作動流体が、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物及び少なくとも1種の潤滑剤を含む、方法。
【0019】
少なくとも1種の重合開始剤及び少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物の存在下で少なくとも1種のモノマー(好ましくは、フッ素含有モノマー)を重合することを含む重合方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義
本特許出願で使用する時:
「鎖中で連結されたヘテロ原子」とは、炭素−ヘテロ原子−炭素の連鎖を形成するようにカーボン連鎖において炭素原子に結合している炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する、
「フルオロ」(例えば、「フルオロアルキレン」又は「フルオロアルキル」又は「フルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)若しくは「フッ素化」とは、少なくとも1つの、炭素に結合した水素原子があるような部分的フッ素化だけを意味し、
「フルオロケミカル」は、フッ素化又はペルフルオロ化を意味し、そして
「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)若しくは「ペルフルオロ化」とは、完全にフッ素化されたことを意味し、その結果、特に指示が無い限り、フッ素と置換できる炭素に結合した水素原子がないことを意味する。
【0021】
ヒドロフルオロエーテル化合物
本発明の新規な化合物は、少なくとも1つの(好ましくは、1つ又は2つ)5員環又は6員環のペルフルオロ化へテロシクロ環(1つ又は複数)を有し、各々の環は4又は5の環炭素原子と、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される1つ又は2つの鎖中で連結された(即ち、鎖中にある)ヘテロ原子を有し、その鎖中で連結されたヘテロ原子の少なくとも1つは2価のエーテル酸素原子であり、そして2価のエーテル酸素原子に隣接した環炭素原子の各々が、環炭素原子に直接結合したテトラフルオロエチリデン部分(−(CF)CF−)を有するフルオロケミカル基を有し、そのフルオロケミカル基は、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有する。
【0022】
好ましくは、フルオロケミカル基を有する環炭素原子の1つは、1つのフッ素原子を更に有し、そして残りの炭素原子は、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基又は、第2の(又はそれ以上の)環が存在する場合には、第2の(又はそれ以上の)環の環炭素原子に結合した2価のオキシアルキレンオキシ基又はオキシフルオロアルキレンオキシ基を更に有する。より好ましくは、残りの環炭素原子(即ち、2価のエーテル酸素原子に隣接しないもの)は、独立して非置換であるあるか(フッ素だけを有する)又はペルフルオロアルキルのモノ置換(フッ素原子及び少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有するペルフルオロアルキル基を有する)であることができる。
【0023】
ヒドロフルオロエーテル化合物の環は好ましくは同一である。好ましくは、各々の環は1つだけの鎖中で連結されたヘテロ原子を有し、及び/又は各フルオロケミカル基は、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される、少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有する分枝したペルフルオロアルキル基である。より好ましくは、ヒドロフルオロエーテル化合物は1つだけの環を有し、及び/又は分枝したペルフルオロアルキル基は、少なくとも1つの鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子(最も好ましくは、分枝したペルフルオロアルキル基はヘキサフルオロイソプロピル基である)を場合により有する。
【0024】
本発明の2つの部類の化合物が、以下の一般式(I)及び(II):
【0025】
【化1】

【0026】
で示すことができるものである。式中、各々のRは、独立して、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有る、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり、そして、−CFH、−CFHCF、及び−CFOCHから選択される末端部分を場合により有し、(好ましくは、1個〜約6個の炭素原子を有し、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基;より好ましくは、1個〜約3個の炭素原子を有し、少なくとも1個の鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基;最も好ましくは、ペルフルオロメチル基);各々のR’は、独立して、フッ素原子、又は少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基(好ましくは、1個〜約4個の炭素原子を有し及び/又は鎖中で連結されたヘテロ原子を有さず);Yは、共有結合の、−O−、−CF(R’)−、又は−N(R”)−、であり、式中、R”は、少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり(好ましくは、1個〜約4個の炭素原子を有し及び/又は鎖中で連結されたヘテロ原子を有さず);Rは、少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有し、直鎖、分枝岐、シクロ、又はこれらの組み合わせである、アルキル基又はフルオロアルキル基(好ましくは、直鎖又は分枝鎖の及び/又は1個〜約8個の炭素原子を有する及び/又は鎖中で連結されたヘテロ原子を有さない);並びに、R’は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであり、少なくとも2つの炭素原子を有し、及び少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、アルキレン基又はフルオロアルキレン基である(好ましくは、直鎖又は分枝鎖であり、及び/又は2個〜約8個の炭素原子を有し、及び/又は少なくとも4個の水素原子を有し、及び/又は鎖中で連結されたヘテロ原子を有さない)。
【0027】
より好ましくは、各々のR’が、独立して、フッ素原子又はペルフルオロメチル基であり;Yは、共有結合又はペルフルオロメチル基であり;Rは、1個〜約4個の炭素原子を有するアルキル基であり;及びR’は、2個〜約4個の炭素原子を有するアルキレン基である。最も好ましくは、各々のR’は、フッ素原子であり;Yが共有結合であり;Rは、エチル基であり;及びR’はプロピレン基である。式(I)の化合物が一般的に好ましい。
【0028】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物の代表例には以下のものが挙げられ、環構造の中央における「F」は明示的に示していない全ての環置換基がフッ素であることを示している。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
等、及びこれらの混合物。
【0039】
好適なヒドロフルオロエーテル化合物には、
【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
及びそれらの混合物が挙げられ、
更に好適には、以下のものと
【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
及びそれらの混合物がある。
【0048】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物は疎水性であり、それらのペルフルオロエーテル類似体よりも少ない疎油性、比較的化学的に非反応性で、熱安定性、水不溶性であり、そして、それらは本発明に従って高収率、高純度、及び広範囲の分子量を有して製造できる。それらの共有結合性の炭素−水素結合は、一般的に大気中の光酸化によって分解可能であり、これによりヒドロフルオロエーテル化合物は環境的に許容されまたは環境的に適合するようになる。
【0049】
ヒドロフルオロエーテル化合物の調製
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物(HFE)は、フルオロケミカルケトンの反応によって調製されたフルオロケミカルアルコキシドのアルキル化によって調製でき、(より詳細には、(a)2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含む、分枝したフルオロアルキルカルボニル末端基又はペルフルオロアルキルカルボニル末端基を有し、(b)直鎖又は分枝鎖で介在するペルフルオロアルキレンセグメントを有する、フルオロケミカルジケトンと、無水のアルカリ金属フッ化物(例えば、フッ化カリウム又はフッ化セシウム)又は無水のフッ化銀(好ましくは、無水の極性、非プロトン性溶媒中で)との反応である。)、好ましくは、ペルフルオロアルキレンセグメントは、2つ又は3つの鎖中にある原子を有する。例えば、フランス国特許公開第2,287,432号及びドイツ国特許公開第1,294,949号に記載されている調整方法、並びに米国特許第5,750,797号(ヴィトカク(Vitcak)等)に詳細に記載される方法を参照すること。その記載内容は参照として本明細書に組み込まれている。
【0050】
フルオロケミカルジケトン出発化合物は、少なくとも1種のフルオロケミカルジアシルフルオライドと少なくとも1種のペルフルオロオレフィン(例えば、ヘキサフルオロプロペン)若しくはフルオロビニルエーテル又はペルフルオロビニルエーテルとを、少なくとも1種の無水フルオライド源(例えば、無水フッ化カリウム)並びに少なくとも1種の無水の、極性で、非プロトン性溶媒(例えば、ジグリム(即ち、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はビス(2−メトキシ)エチルエーテル))の存在下で化合させることによって、対応するフルオロケミカルジアシルフルオライドから調製できる。所望ならば、相間移動触媒を使用できる。
【0051】
例えば、フルオロケミカルジアシルフルオライド、無水フルオライド源(一般には触媒量)、溶媒、及び任意に相間移動触媒(一般には触媒量)をいずれかの順番でいずれかの好適な反応器(例えば、金属反反応器、好ましくは圧力反応器)中にて混合させることができ、これを次に密閉し、そして、自生圧力下で所望の反応温度(例えば、約75℃)まで加熱することができる。少なくとも化学量論量(stoichiometric amount) (100%以上の化学量論過剰量(stoichiometric excess)まで)のペルフルオロオレフィン又はフルオロビニルエーテル又はペルフルオロビニルエーテルを、反応器の内容物を概ねかき混ぜながら又は攪拌しながら、そして、好ましくは、温度を制御しながら、次いで反応器に添加することができる(若しくは連続的に又は少しずつ分けて添加することができる)。
【0052】
ペルフルオロオレフィン若しくはフルオロエーテル又はペルフルオロビニルエーテルを添加した後、若しくは反応が完結した後で、反応器を冷却し、ガス抜きし、内容物を任意の好適な分離方法によって精製することができる。例えば、得られた反応混合物を、ろ過し(例えば、フルオライド源を除去するために)、相分離し(例えば、溶媒及び触媒を除去するために)、洗浄溶媒により洗浄し(例えば、残留溶媒及び残留触媒を除去するためにアセトンで洗浄し)、相分離し(例えば、洗浄溶媒を除去するために)、そして回転蒸発及び/又は蒸留を行う(例えばいずれかの残留揮発性物質を除去するため及び得られたジケトン生成物を精製するために)ことができる。
【0053】
フルオロケミカルジアシルフルオライド(出発物のフルオロケミカルジケトンを調製するために使用される)は、例えば、相当するヒドロカーボンジアシルフルオライド類又はヒドロカーボンジアシルクロライド類(後者は市販されている)、若しくは特定のラクトン類、酸無水物類、又はジメチルエステル類を無水フッ化水素中の電解フッ素化又は元素状フッ素を使用する直接フッ素化することによって調製できる。
【0054】
出発物のフルオロケミカルジケトンを調製するのに有用であるペルフルオロオレフィン類には、オレフィン系二重結合の炭素原子の一つに結合した少なくとも1つの炭素原子を含有するものが挙げられる。このようなペルフルオロオレフィン類により、一般に、分枝したペルフルオロアルキルカルボニル末端基の存在によって特徴付けられるフルオロケミカルケトン化合物が与えられる。
【0055】
ペルフルオロオレフィン類は、当該技術分野において周知である種々の標準的な合成手順のいずれかによって調製できる。幾つかのペルフルオロオレフィン(例えば、CFCF=CF、C11CF=CF、及びCCF=CF)は、市販もされている(例えば、シンクエスト(Synquest)から又はアポロ・サイエンティフィック社(Apollo Scientific, Ltd.)から)。
【0056】
有用なペルフルオロオレフィン類の代表例としては、CFCF=CF、CCF=CF、C11CF=CF、CFCFCF=CF、等、及びそれらの混合物が挙げられる。(所望ならば、混合物を使用できるが、精製が必要となる可能性のある生成物混合物(product mixtures)が結果として生成されることから、混合物は一般にあまり好ましくない。)CFCF=CFが好ましい。
【0057】
調製プロセスの実施において有用なフルオロ−及びペルフルオロビニルエーテル類としては、末端ペルフルオロビニル基を有するものが挙げられる。このようなフルオロビニルエーテル及びペルフルオロビニルエーテル出発化合物は、1個以上の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により更に含有することもでき(当該フルオロビニルエーテル及びペルフルオロビニルエーテル類のエーテル酸素に加えて)、フルオロケミカル酸フルオライド又はフルオロケミカルケトンをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて中間体である分枝状酸フルオライド付加物を形成させることにより調製されることができる。次に、この付加化合物を塩基と反応させて、中間体であるカルボン酸塩を形成することができ、次に高温にて(任意に、不活性溶媒の存在下で)脱カルボキシル化することができる。幾つかのペルフルオロビニルエーテル(例えば、COCF=CF、COCF(CF)CFOCF=CF、及びCFOCF=CFのようなペルフルオロビニルエーテル類)はまた市販もされている(例えば、シンクエスト社(Synquest)から又はアポロ・サイエンティフィック社(Apollo Scientific, Ltd.)から)。
【0058】
ヒドロフルオロエーテル化合物を調製するに有用なフルオロビニルエーテル類及びペルフルオロビニルエーテル類には、COCF=CF、COCF(CF)CFOCF=CF、CFOCF=CF、COCF=CF、CFOCOCF=CF、が挙げられる。
【0059】
OCF=CF、(CFCFCFOCF=CF、C11OCF=CF
HCFCFCFOCF=CF、CHOCFCFCFOCF=CF、CFCFHCFCFOCF=CF
【0060】
【化17】

【0061】
及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましいビニルエーテルとしては、COCF=CF、COCF=CF、CFOCOCF=CF、及びこれらの混合物が挙げられる。COCF=CF、COCF=CF、及びこれらの混合物が、より好ましい。(所望される場合、出発化合物の混合物を使用することができるが、精製が必要となる可能性のある生成混合物が結果として生成されるために、混合物は一般にあまり好ましくない。)
好適な無水のフルオライド源としては、解離して無水のフッ化物イオン源を提供できる無水のフッ素含有化合物が挙げられる。このような化合物としては、金属フッ化物(例えば、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、及び同様のもの、並びにこれらの混合物)、酸性フッ化金属、第四級アンモニウムフルオライド類、第四級ホスホニウムフルオライド類、及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい無水フルオライド源としては、フッ化カリウム、フッ化セシウム、及びこれらの混合物が挙げられ、フッ化カリウムがより好ましい。
【0062】
好適な溶媒には、グリコールエーテル溶媒(例えば、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、等、及びそれらの混合物)、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトン、アセトニトリル、等、及びそれらの混合物、のような無水の、極性の、非プロトン性溶媒が挙げられる。好ましい溶媒としては、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物が挙げられ;グリム、ジグリム、ジメチルホルムアミド、及びこれらの混合物がより好ましく、そしてジグリムが最も好ましい。
【0063】
好適な相間移動触媒としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、クラウンエーテル類、クリプタンド類及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい塩の対イオンとしては、市販されているもの(例えば、クロライド)、並びにモノアルキルサルフェート類、モノアルキルスルホネート類、及び同様のもの、並びにこれらの混合物のようなものが挙げられる。有用なクラウンエーテルとしては、4’−アミノベンジル−15−クラウン−5、1−アザ−12−クラウン−5、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−5、ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−15−イルメチル]ピメレート、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4’−ホルミルベンゾ−15−クラウン−5、2−(ヒドロキシメチル)−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、ポリ[(ジベンゾ−18−クラウン−6)−コホルムアルデヒド]、及び同様のもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。有用な市販のクリプタンドとしては、クリプトフィックス(KRYPTOFIX)21、211、222、及び222b(シグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能)が挙げられる。好ましい触媒は、比較的豊富に存在し及びコスト効率がよいことから、第四級アンモニウム塩である。有用な市販の第四級アンモニウム塩としては、アドゲン(ADOGEN)464(シグマ・アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Sigma-Aldrich Chemical Company)から入手可能なメチルトリアルキル(C−C10)アンモニウムクロライド)が挙げられる。別の好ましい相間移動触媒は、トリオクチルアミンのジメチルサルフェートとの反応によって調製することができる、(C17CHOSOCHである。使用される場合、相間移動触媒は典型的に、反応混合物の約0.001モル%〜約5.0モル%を構成する濃度で添加される。
【0064】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を調製するには、フルオロケミカルジケトン、無水フルオライド源(一般に化学量論過剰量)、アルキル化剤(一般に化学量論過剰量)、溶媒、及び場合により、相間移動触媒(一般に触媒量)をいずれかの順番でいずれかの好適な反応器(例えば、金属反応器、好ましくは圧力反応器)中にて混合することができる。次いで、反応器を密閉し、自生圧力下で所望の反応温度(例えば、約30℃〜約50℃)に、所望の転化レベルが達成されるに十分な期間で(例えば、約16〜72時間)、一般に反応器の内容物を攪拌しながら又はかき混ぜながら、及び好ましくは温度を制御しながら加熱できる。
【0065】
反応が完結した後で、反応器を冷却し、ガス抜きし、内容物をいずれかの好適な分離方法によって精製できる。例えば、得られた反応混合物をろ過し(例えば、フルオライド源を除去するため)、相分離し(例えば、溶媒及び触媒を除去するため)、洗浄溶媒で洗浄し(例えば、残存溶媒及び残存触媒を除去するためにアセトンで洗浄して)、相分離し(例えば、洗浄溶媒を除去するために)、そして回転蒸発及び/又は蒸留を行う(例えば、いずれかの残存揮発性物質を除去するため及び得られたHFE生成物を精製するために)ことができる。
【0066】
代わりに、反応器を冷却した後、反応内容物を水酸化カリウム水溶液で処理し、続いて追加の加熱期間(例えば、60℃で約1〜約3時間)によって過剰のアルキル化剤を反応させ、除去できる。次いで得られた反応混合物を上記のように精製でき又は、代わりに、水蒸気蒸留を行い、得られた蒸留物の得られたフルオロケミカルの下方相を分離し、そして、例えば、分別蒸留によって更に精製できる。
【0067】
本発明のヒドロフルオロエーテルの調製用に適切な(そして好適な)無水フルオライド源及び相間移動触媒には、上記のものが挙げられる。好適なフルオロケミカルジケトン出発化合物には、
CFCFC(O)CC(O)CF(CF
CFOCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OCF
OCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OC
CFOCOCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OCOCF
OCF(CF)CFOCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OCFCF(CF)OC
(CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF
CFOCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OCF
OCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OC
CFOCOCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OCOCF
OCF(CF)CFOCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OCFCF(CF)OC
(CFCFC(O)CF(C)CFC(O)CF(CF
OCF(CF)C(O)CF(C)CFC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CF(C)CFC(O)CF(CF3)OC
(CFCFC(O)CF(CF)CF(CF)C(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CF
CFOCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OCF
OCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OC
CFOCOCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OCOCF
OCF(CF)CFOCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OCFCF(CF)OC
(CFCFC(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF
CFOCF(CF)C(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF)OCF
OCF(CF)C(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF)OC
CFOCOCF(CF)C(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF)OCOCF
OCF(CF)CFOCF(CF)C(O)CFCF(CF)CFC(O)CF(CF)OCFCF(CF)OC
(CFCFC(O)CFCF(C)CFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFCF(C)CFC(O)CF(CF
OCF(CF)C(O)CFCF(C)CFC(O)CF(CF)OC
(CFCFC(O)CFCF[CF(CF]CFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CF(CF)CF(CF)CFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFOCFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF
CFOCF(CF)C(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF)OCF
OCF(CF)C(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF)OC
OCF(CF)C(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF)OC
CFOCOCF(CF)C(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF)OCOCF
OCF(CF)CFOCF(CF)C(O)CFN(CF)CFC(O)CF(CF)OCFCF(CF)OC
(CFCFC(O)CFN(C)CFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFN(C)CFC(O)CF(CF
(CFCFC(O)CFN[CF(CF]CFC(O)CF(CF
CHOCFCFCFOCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OCFCFCFOCH
CHOCFCFCFOCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OCFCFCFOCH
CHOCFCFCFOCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OCFCFCFOCH
HCFCFCFOCF(CF)C(O)CC(O)CF(CF)OCFCFCF
HCFCFCFOCF(CF)C(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF)OCFCFCF
HCFCFCFOCF(CF)C(O)CFCFCFC(O)CF(CF)OCFCFCFH、
【0068】
【化18】

【0069】
等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
好適なアルキル化剤には、ジアルキルサルフェート類(例えば、ジメチルサルフェート);アルキルハライド類(例えば、ヨウ化メチル);アルキルp−トルエンスルホネート類(例えば、p−トルエンスルホン酸メチル);アルキルペルフルオロアルカンスルホネート類(例えば、ペルフルオロメタンスルホン酸メチル);フルオロアルキルペルフルオロアルカンスルホネート類(例えば、2,2,2−トリフルオロエチルペルフルオロアルカンスルホネート);ジトシレート類(例えば、1,3−プロパンジオールジ−p−トルエンスルホネート)、ジメシレート類(例えば、1,4−ブタンジオールビス(メタンスルホネート))、及びビス(ペルフルオロアルカンスルホネート類(例えば、1,3−プロパンジオールビス(ノナフルオロブタンスルホネート))を含む2官能性アルキル化剤;等;及びそれらの混合物。好適なアルキル化剤にはジアルキルサルフェート類及びそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
適切な(及び好適な)極性、非プロトン性溶媒には、上記のもの、並びに、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテルのような非環式エーテル類;メチルホルメート、エチルホルメート、及びメチルアセテートのようなカルボン酸エステル類;ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、及びエチレンカーボネートのようなカーボネートエステル類;アセトニトリルのようなアルキルニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドンのようなアルキルアミド類;ジメチルスルホキシドのようなアルキルスルホキシド類;ジメチルスルホン、テトラメチルスルホン、およびその他のスルホラン類のようなアルキルスルホン類;N−メチル−2−オキサゾリドンのようなオキサゾリドン類;及び同様なもの;並びにそれらの混合物も挙げられる。
【0072】
ヒドロフルオロエーテル化合物の利用
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物(又は、それらを含む、それらからなる、それらから本質的になる、液体組成物)は、様々な用途で使用できる。例えば、その化合物は、ディスク又は回路基板のような電子物品の精密洗浄又は金属洗浄のための溶剤に;熱伝達剤に(例えば、ハイブリッド車両の冷却用、若しくは半導体産業における集積回路工具の冷却又は加熱用、その工具には、ドライエッチャ、集積回路テスタ、ホトリソグラフィ露光工具(ステッパー)、アッシャー、化学的気相堆積装置、自動化テスト装置(プローバ)、及び物理的蒸着装置(スパッタ)が含まれる。);発泡断熱材(例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、及び熱可塑性樹脂の発砲体)の製造におけるセルサイズ調整剤に;書類保存材料及び潤滑剤用の担持流体又は溶媒に;ヒートポンプのような発電サイクルの作動流体に;重合反応用の不活性媒体に;金属のような研磨表面からバフ研磨剤を除去するためのバフ研磨研削剤に;宝石又は金属部品等からの水を除去するための置換乾燥剤に;塩素型の現像剤を含む通常の回路製造技術におけるレジスト現像剤に;及び例えば、1,1,1−トリクロロエタン又はトリクロロエチレンのような塩素化炭化水素と併用した場合のホトレジスト剥離剤に、使用できる。
【0073】
ヒドロフルオロエーテル化合物は一般的に、高い絶縁耐力を示し(例えば、約10オーム−cmより大の)、それにより半導体産業用に好適である。予想外に高い熱安定性を示すヒドロフルオロエーテル化合物は、半導体産業及びフラットスクリーンパネル製造における熱伝達用途におけるような高温用途に特に有用である。
【0074】
ヒドロフルオロエーテル化合物は、単独で、若しくはそれら同士の又はその他の通常的に使用される溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、アルカン類、アルケン類、ペルフルオロカーボン類、ペルフルオロ化第三級アミン類、ペルフルオロエーテル類、シクロアルカン類、エステル類、ケトン類、芳香族化合物類、シロキサン類、ヒドロクロロカーボン類、ヒドロクロロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロカーボン類、及び同様なもの、並びにそれらの混合物)との混合物として使用できる。このような共溶媒は、特定の用途のために組成物の特性を改良又は増強するために選択でき、及び結果として得られた組成物が好ましくは引火点を有さないような(共溶媒(1種又は複数)とヒドロフルオロエーテル(1種又は複数)との)比率で使用できる。必要であればヒドロフルオロエーテル化合物は、特定の用途に関連した特性において非常に類似した別の化合物(例えば、その他のヒドロフルオロエーテル化合物)と組み合わせて使用し、本発明のヒドロフルオロエーテル化合物から「本質的になる」組成物を形成できる。
【0075】
特定用途のために特別に所望される特性を付与するために、本化合物に微量の任意構成成分を添加することができる。有用な組成物は、従来の添加剤、例えば、界面活性剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、及び同様のもの、並びにこれらの混合物を含むことができる。
【0076】
ヒドロフルオロエーテル化合物は、洗浄及び乾燥の用途に対する溶媒に有用であり、それらは例えば、米国特許第5,125,089号(フリン(Flynn)等)、同第3,903,012号(ブランドレス(Brandreth))、同第4,169,807号(ズバー(Zuber))、及び同第5,925,611号(フリン(Flynn)等)に記載されているものであり、それらの記載は本明細書に組み入れられる、有機及び無機の両方の基材は、それらを少なくとも1種の本発明のHFEを含む組成物と接触させることによって洗浄できる。炭化水素汚染物、フルオロカーボン汚染物、微粒子、及び水を含む大抵の汚染物を除去できる。
【0077】
物品(回路基板のような)の表面の乾燥に又は水分置換に本化合物を使用するときには、例えば、米国特許第5,125,978号(フリン(Flynn)ら)に記載される乾燥又は水分置換の方法を使用できる。概略的には、このような方法は物品の表面を、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物で、好ましくは非イオン性のフッ素化脂肪族の界面活性剤との混合物を用いて、液体組成物と接触させることを含む。湿った物品を液体組成物に浸漬し及びその中でかき混ぜ、置換された水を液体組成物から分離し、そして得られた水が取り除かれた物品を液体組成物から取り出す。その方法及び処理可能な物品の更なる説明は、前記米国特許第5,125,978号に見出され、その記述は本明細書に組み込まれている。
【0078】
気相半田付けにおける本発明の化合物の利用するときには、その方法は、例えば米国特許第5,104,034号(ハンセン(Hansen))に記載の方法が使用でき、その記述は本明細書に組み込まれている。つまり、そのような方法は、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む蒸気の本体の中に半田付けされるべき1つの構成成分を浸漬して半田を融解させる工程を含む。そのような方法を実行するときには、ヒドロフルオロエーテル組成物の液溜をタンク中で沸騰するまで加熱し、沸騰液体と凝縮手段との間の空間に飽和蒸気を形成させ、半田付けすべき加工部品を蒸気の中に浸漬し、それによってその蒸気が加工部品の表面で凝縮して半田を融解しリフローするようにし、その後半田付けされた加工部品を蒸気を含有する空間から取り出す。
【0079】
本発明の化合物をプラスチック発砲体(例えば、発泡ポリウレタン)を製造する際のセルサイズ調整剤に使用するときには、例えば、米国特許第5,210,106号(ダムズ(Dams)等)、及び同第5,539,008号(ダムズ(Dams)等)に記述されるプロセス反応剤及び反応条件が使用でき、それらの記述は本明細書に組み込まれている。そのような方法の一つは、少なくとも1種の発泡性ポリマー又は少なくとも1種の発泡性ポリマーの前駆体の存在下で、発泡剤混合物を蒸発させる工程を含み、この発砲剤混合物が、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む。
【0080】
本発明の化合物を熱伝達剤に使用するときには、例えば米国特許再発行第37,119E号(シャーウッド(Sherwood)及び米国特許第6,374,907B1号(トゥシグナントTousignant)等)に記載の方法が使用でき、それらの記述は本明細書に組み込まれている。そのような方法を実行するときには、少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む熱伝達剤の使用を介して、熱源(例えば、シリコンウエハ又はフラットパネルディスプレイの部品)とヒートシンクとの間で熱が伝達される。熱伝達剤として使用されている一部のHFEとは異なって、本発明のHFEは、幅広く異なった分子量成分の混合物ではない。どちらかと言えば、このHFEは概ね単分散(即ち、単一の分子量の)である。このことは、それらの物理的特性が、ある期間にわたって比較的一定に保持され、それにより熱伝達性能特性の顕著な劣化が回避される。加えて、本発明のHFEは一般に、広い液体範囲、その範囲にわたって有用な粘度、及び最終使用温度において比較的高い熱安定性を示し、熱伝達流体として利用するのに好適になる。
【0081】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物をコーティング用途又は書類保存用途における付着溶媒に使用するときに、例えば、米国特許第5,925,611号(フリン(Flynn)等)、及び同第6,080,448号(レイナー(Leiner)等)に記載される方法が使用でき、それらの記述は本明細書に組み込まれている。基材(例えば、磁気記録媒体又はセルロース系材料)上にコーティングを付着させるためのそのような方法は、基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に、(a)少なくとも1種の本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物;及び(b)その溶媒組成物に溶解可能又は分散可能な少なくとも1種のコーティング材料;を含む組成物を塗布する工程を含む。その方法によって付着されることのできるコーティング材料には、顔料、潤滑剤、安定剤、接着剤、酸化防止剤、染料、ポリマー、医薬品、離型剤、無機酸化物、書類保存材料(例えば、紙の脱酸に使用されるアルカリ性材料)及び同様のもの、並びにこれらの組合せが挙げられる。好適な材料には、ペルフルオロポリエーテル、炭化水素、及びシリコーン潤滑剤;テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー類;ポリテトラフルオロエチレン;書類保存材料類;及びそれらの組み合わせが挙げられる。最も好適には、その材料はペルフルオロポリエーテル潤滑剤又は書類保存材料である。
【0082】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を切削又は研磨の加工作業に使用するときに、例えば、米国特許第6,759,374号(ミルブラス(Milbrath)等)に記載される方法が使用でき、それらの記述は本明細書に組み込まれている。このような金属、サーメット又は複合材の加工方法は、金属、サーメット、又は複合材の加工部品及び工具に作動流体を塗布する工程を含み、その作動流体が、本発明の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物及び少なくとも1種の潤滑剤を含む。作動流体は、1種以上の従来の添加剤(例えば、腐食防止剤、酸化防止剤、消泡剤、染料、殺菌剤、凝固点降下剤、金属不活性化剤、共溶媒、及び同様のもの、並びにこれらの混合物)を更に含むことができる。
【0083】
本発明のヒドロフルオロエーテル化合物を重合媒体又は連鎖移動剤に使用するときには、例えば、研究の開示(Research Disclosures)40576号、81頁(1998年1月)及び米国特許第5,182,342号(フェイリン(Feiring)等)及び同第6,399,729号(ファーナム(Farnham)等)に記載される方法が使用でき、それらの記述は本明細書に組み込まれている。そのような方法は、少なくとも1種の重合開始剤及び本発明の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物の存在下で、少なくとも1種のモノマー(好ましくは、少なくとも1種のフッ素含有モノマー)を重合させる工程を含む。
【実施例】
【0084】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付の請求項の範囲を制限することを意味するものではない。
【0085】
特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等はすべて、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、明記が無ければ、ミズーリ州セント・ルイスのアルドリッチ(Aldrich)ケミカル社から得た。
【0086】
以下の実施例において、分子中での2つ(又はそれ以上)の光学中心の存在によってジアステレオマー混合物が得られた。これらのジアステレオマーは、互いに非常に接近した沸点を有し、従ってジアステレオマーを蒸留によって分離しなかった。しかし、一部の場合では、ジアステレオマーはガスクロマトグラフィによって容易に分離できる。
【0087】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H&19F−NMRスペクトルは、バリアン(Varian)ユニティプラス400(UNITYplus 400)フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインストルメンツ社(Varian NMR Instruments)(カルフォルニア州、パロアルト(Palo Alto))から入手可能)にて測定した。
【0088】
ガスクロマトグラフィ/質量分析(GCMS)
GCMSサンプルは、例えば、フィニガン(Finnigan)TSQ7000質量分析計(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)(マサチューセッツ州、ウォルサム(Waltham))から入手可能)にて測定した。
【0089】
ガスクロマトグラフィ(GC)
GCサンプルを、カルフォルニア州パロアルトのアジレント(Agilent)テクノロジーズから得られた、ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)6890シリーズガスクロマトグラフにかけた。
【0090】
赤外線(IR)分光法
IRスペクトルは、サーモ・ニコレット(THERMO-NICOLET)、アベーター(Avatar)370フーリエ変換赤外線(FTIR)スペクトロメーター(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)(マサチューセッツ州、ウォルサム(Waltham))から入手可能)にて測定した。
【0091】
【表1】

【0092】
材料
フッ化カリウム:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。スプレードライし、125℃オーブン中に貯蔵し、使用直前に乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
【0093】
無水ジグリム(無水ジエチレングリコールジメチルエーテル):ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0094】
アドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒((メチルトリアルキル(C〜C10)アンモニウムクロリド、ジグリム中49%溶液):ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。一般的に、アドゲン(Adogen)(商標)464含有ジグリム溶液として、イソプロピルアルコールを除去するために分別蒸留で精製して使用した。
【0095】
ヘキサフルオロプロペン(HFP):ミネソタ州セント・ポール、ダイニオン(Dyneon)より入手した。
【0096】
ジエチルサルフェート:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0097】
ジプロピルサルフェート:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0098】
水酸化カリウム:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0099】
硫酸マグネシウム:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0100】
ジ−n−プロピルサルフェート:オレゴン州ポートランドのTCIアメリカより入手した。
【0101】
1,3−プロパンジオールジ−p−トシレート:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0102】
ジメチルメチルスクシネート:ミズーリ州セント・ルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手した。
【0103】
ノベック(Novec)(商標)HFE−7100流体(ヒドロフルオロエーテル):ミネソタ州セント・ポ−ルの3M社より入手した。
【0104】
ペルフルオロプロピルビニルエーテル(COCF=CF):ミネソタ州セント・ポール、ダイニオン(Dyneon)又はフロリダ州アラチュアのシンクエスト(Synquest)ラボラトリーズより入手した。
【0105】
テトラフルオロスクシニルフルオライド(FCOCCOF)中間体:テトラフルオロスクシニルフルオライドは、米国特許第2,713,593号(ブライス(Brice)等)に、及びR.E.バンクス(Banks)著「有機フッ素化合物の調製と工業的利用」19頁〜43頁、ニューヨーク州ハルステッド(Halsted)出版、(1982年)に、記載のタイプから本質的になるシモンズ(Simons)ECF電解槽における電解フッ素化(ECF)によって調製した。電解槽から得られたガス状生成物を分別蒸留によって精製し約83%の収率でテトラフルオロスクシニルフルオライド並びに幾つかのその他の酸フルオライド及び不活性物質を得た。この混合物を更なる精製無しに後続の反応に使用した。
【0106】
ヘキサフルオログルタリルフルオライド(FCO(CFCOF)中間体:ヘキサフルオログルタリルフルオライドは、本質的に上記のテトラフルオロスクシニルフルオライド中間体のようにして、無水グルタル酸の電解フッ素化と後続の分別蒸留によって調製した。これにより、直鎖の異性体を主要生成物とする多数の異性体が本質的に100%得られ、この混合物を更なる精製無しに後続の反応に使用した。本明細書で使用する時、用語「ペルフルオログルタリルフルオライド」はこの混合物を指すものとする。
【0107】
ペルフルオロメチルスクシニルフルオライド(FC(O)CF(CF)CFC(O)F)中間体:ペルフルオロメチルスクシニルフルオライドは、本質的に上記のテトラフルオロスクシニルフルオライド中間体のようにして、ジメチルメチルスクシネートの電解フッ素化と後続の分別蒸留によって調製した。得られた材料は、約63.3%のペルフルオロメチルスクシニルフルオライド及び9.5%のヘキサフルオログルタリルフルオライド、並びに幾つかのその他の不活性物質を含有した。この混合物を更なる精製無しに後続の反応に使用した。本明細書で使用する時、用語「ペルフルオロメチルサクシニルフルオライド」はこの混合物を指すものとする。
【0108】
ドデカフルオロ−2,7−トリフルオロメチル−3,6−オクタジオン((CFCFCOCCOCF(CF)中間体:この中間体は以下のように調製した:清浄な乾燥した、600mLのステンレススチール製パール(Parr)圧力反応器(イリノイ州モリーンのパール(Parr)インスツルメント社から得られた)に、23.2g(0.40モル)のスプレードライしたフッ化カリウム、130gの無水ジグリム、及び15.0g(0.016モル)のアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(50.4重量%の触媒を含有するジグリム溶液)を投入した。反応器を密閉し、3.0kPa(0.03気圧)まで真空にし、次いで真空系から分離して、ドライアイス−アセトン浴で冷却し、191g(0.91モル)のペルフルオロスクシニルフルオライドを装填し、続いて攪拌しながら80℃に加熱した。4時間に渡って292g(1.95モル)のヘキサフルオロプロペンを添加し、得られた反応物を16時間反応させた。16時間後に、混合物を室温に冷却し、500mLの丸底フラスコに移し真空蒸留(5.1kPa(0.05気圧)で)した。得られた2相の留出物を分離し、ペルフルオロスクシニルフルオライド基準で78モル%収率を得た。その材料を10段の内部ベローズ多孔板塔を使用して98.3%純度に精製した。
【0109】
(CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF及び(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CF中間体:これらの中間体を以下のように調製した:清浄な、乾燥した600mLステンレススチール製パール(Parr)圧力反応器に9.0g(0.15モル)のスプレードライしたフッ化カリウム及び130gの無水ジグリムを投入した。反応器を密閉し、ドライアイス−アセトン浴で約−50℃に冷却し、真空排気し、135g(0.40モル)のペルフルオロメチルスクシニルフルオライドを装填した。反応器を攪拌しながら75℃に加熱し、約8時間に渡って144g(0.96モル)のヘキサフルオロプロペンを添加した。反応器を75℃に保持し追加の16時間攪拌した。反応器を冷却し、過剰の圧力をガス抜きし、開放し、反応器内容物を分液ロートに加えた。得られた下相のフルオロケミカルを分離し、181gを得た。それを同心円管塔で分留し、99%以上の純度のジケトンを115g得た。
【0110】
OCF(CF)COCCOF及びCOCF(CF)COCCOCF(CF)OC中間体:これらの中間体を以下のようにして調製した:清浄な乾燥した500mLのステンレススチール製パール(Parr)圧力反応器に、5.1g(0.088モル)のスプレードライしたフッ化カリウム、238gの無水ジグリム、8.3gのアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(49重量%の触媒を含有するジグリム溶液)、及び150.8g(0.57モル)のペルフルオロビニルエーテルを投入した。反応器を密閉し、約0.67kPa(0.006579気圧)の真空にし、次いで真空系から分離して、ドライアイス−アセトン浴で約−18℃に冷却し、54g(0.28モル)のペルフルオロスクシニルフルオライドを装填した。次いで反応器を攪拌しながら約48時間に渡って5℃に加熱した。続いて反応器を冷却し、開放し、続いてチーズクロスを介したろ過によって固形フッ化カリウムを除去した。得られたフルオロケミカルの下相を分離し、蒸留した(120−145℃の範囲の留出物、約87%純度のモノ付加物(1:1付加生成物))。蒸留容器の残留物はビス付加物(182℃より高い範囲の留出物、COCF(CF)COCCOCF(CF)OC、純度96%)であった。IRスペクトルは、1883.2cm−1にCOFバンドを、並びにCO伸縮を、モノ付加物に対して1782.1cm−1に、ビス付加物に対して1779.2cm−1に、示した。
【0111】
(実施例1):
2−エトキシ−3,3,4,4−テトラフルオロ−2,5−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロフランの調製
【0112】
【化19】

【0113】
500mL丸底スラスコに、頭上式攪拌機、加熱マントル、熱電対温度制御機、窒素バブリング装置、及びコンデンサーを装備し、32.3g(0.56モル)のスプレードライしたフッ化カリウム、104gの無水ジグリム、12.7g(0.014モル)のアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒、89.1g(0.58モル)のジエチルサルフェート、及び220g(0.445モル)の98.3%純度ドデカフルオロ−2,7−トリフルオロメチル−3,6−オクタジオンを投入した。フラスコを54℃で16時間維持し、次いで冷却した。25℃に冷却後、50g(0.40モル)の水酸化カリウム水溶液(45%水溶液)及び75gの水をフラスコに添加した。得られた溶液を80℃に加熱し、4時間保持し、得られた粗生成物を水蒸気蒸留で単離し、等重量の水で2回洗浄し、2−エトキシ−3,3,4,4−テトラフルオロ−2,5−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロフランを82モル%の収率、96.7%純度で得た。真空分別蒸留によって98.6%純度にまでの精製を達成した。GCMS及び19F−NMRにより所望の生成物を確認した。
【0114】
(実施例2):
2−プロポキシ−3,3,4,4−テトラフルオロ−2,5−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロフランの調製
【0115】
【化20】

【0116】
実施例2を、実施例1に記述したものと本質的に同じ手順及び方法で実施し、但し、ジエチルサルフェートをジプロピルサルフェートの代わりに使用しドデカフルオロ−2,7−トリフルオロメチル−3,6−オクタジオンに対して同じモル比で投入し、及びアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒のモル比を0.036に増加させた点は例外である。
【0117】
アルキル化の収率は85%であった。得られた物質を分別蒸留によって97.1%、大気圧での沸点185℃(約98.3kPa(0.97気圧))に精製した。生成物構造はGCMS及び19F NMRによって確認した。
【0118】
(実施例3):
2−メトキシ−3,3,4,4−テトラフルオロ−2,5−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロメチルエチル)テトラヒドロフランの調製
【0119】
【化21】

【0120】
清浄な、乾燥した600mLステンレススチール製パール(Parr)圧力反応器に、42.7g(0.74モル)のフッ化カリウム、196gのジグリム、及び121の75%純度ペルフルオロスクシニルフルオライド(0.47モル)を投入し、70℃に加熱した。208g(1.39モル)のヘキサフルオロプロペンを反応器に4時間に渡って添加し、得られた反応物を追加の1時間反応継続させた。1時間後に、反応器をドライ−アイス浴を使用して0℃未満に冷却し、開放し、そして26.6g(0.027モル)アドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒及び73.2g(0.58モル)のジメチルサルフェートを更に投入した。反応器を再度密閉し、攪拌し、32℃で17時間加熱した。50g(0.40モル)の水酸化カリウム水溶液(45%水溶液)及び30gの水を分離したシリンダからその反応器に圧入し、そして反応を別の24時間32℃で継続させた。得られた反応混合物を1Lの丸底フラスコに移し、追加の水を用いて反応器をすすぎ洗いした。得られた粗生成物を水蒸気蒸留し、次いで等重量の水で2回洗浄し、2−メトキシ−3,3,4,4−テトラフルオロ−2,5−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロフランをペルフルオロスクシニルフルオライドに対して76モル%収率、87%純度で得た。得られた生成物を蒸留によって、沸点170℃を有する95.4%に精製した。生成物構造はGCMS及び19F NMRによって確認した。
【0121】
(実施例4):
2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−6−メトキシ−2,6−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロメチルエチル)テトラヒドロピランの調製
【0122】
【化22】

【0123】
実施例4を、実施例3に記載のものと本質的に同じ方法及び条件で実行し、但し、ヘキサフルオログルタリルフルオライドをヘキサフルオロスクシニルフルオライドの代わりに使用した点は例外である。39%のアルキル化収率を得た。得られた材料を分別蒸留によって90%の純度に精製した。GCMSによって、得られた生成物は所望の物質の3つの異性体を含有すると確認した。
【0124】
(実施例5):
2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−6−エトキシ−2,6−ビス−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロピランの調製
【0125】
【化23】

【0126】
実施例5を、以下のように実施例3と本質的に同一の方式で実行した:清浄な、乾燥した600mLのステンレススチールパール(Parr)圧力反応器に、36.3g(0.625モル)のスプレードライしたフッ化カリウム、174gのジグリム、及び122g(0.50モル)のペルフルオログルタリルフルオライドを投入し、攪拌しながら80℃〜85℃に加熱した。得られた混合物に、172.5g(1.15モル)のヘキサフルオロプロペンを8時間に渡って添加し、そして80℃で追加の16時間保持した。16時間後で、反応器を25℃に冷却し、開放し、そして14.3gのアドゲン(Adogen)(商標)464の相間移動触媒及び106.3g(0.69モル)のジエチルサルフェートを投入した。その反応器を再度密閉し、攪拌しながら54℃で72時間加熱した。50g(0.40モル)の45%水酸化カリウム水溶液及び50gの水を投入シリンダを使用して添加し、65℃で24時間保持した。得られた反応混合物をいくらかの反応器すすぎ洗い水と一緒に1Lの丸底フラスコに移し、続いて水蒸気蒸留した。得られた生成物を上の水相から分離し、水で2回洗浄し、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−6−エトキシ−2,6−ビス(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル)テトラヒドロピランを77%の純度で、ペルフルオログルタリルフルオライドに対して29モル%収率で得た。生成物はGCMSによって所望の物質の3つの異性体を含有すると確認した。
【0127】
(実施例6):
(CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF及び(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CFとジエチルサルフェートとの反応
1Lの丸底フラスコに、本質的に上記のようにして調製された115.0g(0.21モル)の異性体混合物、(CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF及び(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CF、33g(0.57モル)のフッ化カリウム、11gの(0.024モル)アドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(50重量%触媒を含有するジグリム溶液)、88.0g(0.57モル)のジエチルサルフェート、及び182gの溶媒としてのジグリムを投入した。フラスコの温度を52℃に設定し、得られた混合物を2日間攪拌した。得られた反応物を88gの蒸留水及び106gの45%KOHでクエンチし、そして得られた混合物を水蒸気蒸留にかけた。混合物を同心円管塔を使用して蒸留した(沸点=189℃)。下に示した構造をGCMS及びNMRによって検証した。
【0128】
【化24】

【0129】
(実施例7):
(CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF及び(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CFとジ−n−プロピルサルフェートとの反応
2Lの丸底フラスコに、本質的に上記のようにして調製された、231.6g(0.43モル)の異性体混合物CFCFC(O)CF(CF)CFC(O)CF(CF及び(CFCFC(O)CFCFCFC(O)CF(CF、30g(0.51モル)のフッ化カリウム、11gの(0.024モル)アドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(50重量%の触媒を含有するジグリム溶液)、93.9g(0.52モル)のジ−n−プロピルサルフェート、及び溶媒としてのジグリム400mLを投入した。フラスコの温度を75℃に設定し、得られた混合物を3日間攪拌した。得られた反応物を200mLの蒸留水でクエンチし、得られた混合物をポットから水蒸気蒸留した。混合物を同心円管塔を使用して蒸留し(沸点=196℃〜199℃)、純度99%の55gの所望生成物の異性体を得た。下に示した構造をGCMS及びNMRによって検証した。
【0130】
【化25】

【0131】
(実施例8):
(CFCFCOCCOCF(CFと1,3−プロパンジオールジトシレートとの反応
清浄な乾燥した600mLのステンレススチール製パール(Parr)圧力反応器に、12.8g(0.22モル)のスプレードライしたフッ化カリウム、200mLの無水ジグリム、6.6gのアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(49重量%の触媒を含有するジグリム溶液)、74.4g(0.14モル)の95%の(CFCFC(O)CC(O)CF(CF、及び25g(0.065モル)の99%1,3−プロパンジオールジ−p−トシレートを投入した。75℃で96時間反応後、反応器を開放し、内容物を真空ろ過し、得られたフルオロケミカルの下相を分離した。フルオロケミカル相を真空蒸留し、次いで少量のプレカット(それは廃棄した)を採った後、125℃〜128℃/0.3kPa(0.003気圧)での蒸留物が、放置すると固化する粘稠な油で得られると分かった。GLCによって、この留分は4つの主成分が27/62/7/4の比率で構成されていると測定された。2つの主成分はGCMSによって下に示した予想生成物の異性体であると決定した。
【0132】
【化26】

【0133】
得られた生成物を等容積の45%水酸化カリウム水溶液で18時間還流して処理した。ノベック(Novec)(商標)HFE−7100流体を添加し、得られたフルオロケミカルの下相を分離し、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒を回転蒸発で除去した。得られた生成物のGLCは上述の最初の2成分だけを示した。そのIRスペクトルはカルボニル基がないことを示した。
【0134】
(実施例9):
CFOCF(CF)COCCOCF(CF)OCとジメチルサルフェートとの反応
8.2g(0.011モル)のCOCF(CF)COCCOCF(CF)OC、1.4g(0.024モル)のフッ化カリウム、3.8gのアドゲン(Adogen)(商標)464相間移動触媒(49重量%の触媒を含有するジグリム溶液)、75gのジグリム、及び3.1g(0.025モル)のジメチルサルフェートを、磁気攪拌器を備えた250mLの丸底フラスコ中で混合した。得られた混合物を32℃で18時間加熱した。次いで、3.6g(0.029モル)の水酸化カリウム水溶液(45%水溶液)及び100gの水の溶液をその混合物に添加し、混合物を60℃で1時間加熱した。続いて得られた生成物を共沸蒸留し、水で1回洗浄し6.3gの生成物を得た。その生成物は、所望の構造と一致する同一質量(m/e=760)を有する2つの主成分(約88%)からなった。非常に少量のカルボニル吸収もまた、認められた。しかし、水性KOHで生成物を追加処理した後、カルボニルピークは完全に消失し、生成物のIRスペクトルは所望の構造と一致した。
【0135】
【化27】

【0136】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に収録される参照記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以上のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5又は6員環のペルフルオロ化ヘテロシクロ環を有するヒドロフルオロエーテル化合物であって、前記環は4個又は5個の環炭素原子と、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される1個又は2個の鎖中で連結されたヘテロ原子を有し、前記鎖中で連結されたヘテロ原子の少なくとも1つが、2価のエーテル酸素原子であり、そして、前記2価のエーテル酸素原子に隣接した環炭素原子の各々が、前記環炭素原子に直接結合したテトラフルオロエチリデン部分(−(CF)CF−)を有するフルオロケミカル基を有し、前記フルオロケミカル基は2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される、少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により有する、ヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項2】
フルオロケミカル基を有する前記環炭素原子の1個が、更にフッ素原子を有し、そして、他の環炭素原子が、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基を有するか又は、1個より多くの前記環が存在する場合、別の前記環の環炭素原子に結合した2価のオキシアルキレンオキシ基又はオキシフルオロアルキレンオキシ基を有する、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項3】
前記2価のエーテル酸素原子に隣接していない環炭素原子が、独立して非置換であるか若しくはペルフルオロアルキル−モノ置換である、請求項2に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項4】
各々の前記環が、同一の化学構造を有する、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項5】
前記ヒドロフルオロエーテル化合物が、1個だけ又は2個の前記環を含む、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項6】
前記ヒドロフルオロエーテル化合物が、1個だけの前記環を含む、請求項5に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項7】
各々の前記環が、1個だけの鎖中で連結されたヘテロ原子を含む、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項8】
各々の前記フルオロケミカル基が、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含む分枝ペルフルオロアルキル基である、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項9】
前記分枝ペルフルオロアルキル基が、少なくとも1個の鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子を場合により含む、請求項8に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項10】
前記化合物が、以下の一般式(I)及び(II):
【化1】

の1つで表される部類の1つであって、式中、各々のRは、独立して、少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有し且つ−CFH、−CFHCF、及び−CFOCHから選択される末端部分を場合により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり;各々のR’が、独立してフッ素原子、若しくは直鎖又は分枝鎖であって且つ少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有するペルフルオロアルキル基であり;Yは、共有結合、−O−、−CF(R’)−、又は−N(R”)−、であり、式中、R”が、直鎖又は分枝鎖であって且つ少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有するペルフルオロアルキル基であり;Rは、直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせであって且つ少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、アルキル基又はフルオロアルキル基であり;そして、R’が、直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせであり、少なくとも2個の炭素原子を有し、及び少なくとも1つの鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、アルキレン基又はフルオロアルキレン基である、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項11】
各々の前記Rが、1個〜6個の炭素原子を有し且つ少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり;各々の前記R’は、独立して、フッ素原子、又は1個〜4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり;前記Rが、1個〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の、アルキル基又はフルオロアルキル基であり;前記R’は、2個〜8個の炭素原子及び少なくとも4個の水素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の、アルキレン基又はフルオロアルキレン基である、請求項10に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項12】
各々の前記Rが、1個〜3個の炭素原子を有し且つ少なくとも1個の鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロエーテル基であり;各々の前記R’が、独立して、フッ素原子又はペルフルオロメチル基であり;前記Yが、共有結合又はペルフルオロメチレン基であり;前記Rが、1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり;そして、前記R’が、2個〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である、請求項10に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項13】
各々のRが、ペルフルオロメチル基であり;各々の前記R’が、フッ素原子であり;前記Yが共有結合であり;前記Rが、エチル基であり;そして、前記R’が、プロピレン基である、請求項10に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項14】
前記化合物が、前記一般式(I)で表される部類の1つである、請求項10に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項15】
前記化合物が、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項16】
1個又は2個の5員環のペルフルオロ化ヘテロシクロ環を含むヒドロフルオロエーテル化合物であって、各々の前記環が、4個の環炭素原子と1個の鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子とを含み、そして、前記2価のエーテル酸素原子に隣接した環炭素原子の各々が、少なくとも1つの鎖中で連結された2価のエーテル酸素原子を場合により含有し且つ前記環炭素原子に直接結合するテトラフルオロエチリデン部分(−(CF)CF−)を有する、分枝鎖ペルフルオロアルキル基を有し;前記ペルフルオロアルキル基を有する前記環炭素原子の1つは、フッ素原子を更に有し、且つ他の炭素原子がアルコキシ基又は、第2の前記環が存在する場合は、前記第2の環の環炭素原子に結合する2価のオキシアルキレンオキシ基を有し;そして、前記2価のエーテル酸素原子に隣接していない環炭素原子が、独立して非置換であるか又はペルフルオロアルキル−モノ置換である、ヒドロフルオロエーテル化合物。
【請求項17】
(a)少なくとも1種のフルオロケミカルケトン化合物と少なくとも1種のフルオライド源を反応させて少なくとも1種のフルオロケミカルアルコキシドを形成する工程であって、前記フルオロケミカルケトン化合物は、(1)2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含み、末端にある2個の、分枝鎖フルオロアルキルカルボニル基又は分枝鎖ペルフルオロアルキルカルボニル基と、(2)2価のエーテル酸素原子および3価の窒素原子から選択される、1つ又は複数の、鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含有する、直鎖又は分枝鎖で介在するペルフルオロアルキレンセグメント、とを有し、前記末端の、フルオロアルキルカルボニル基又はペルフルオロアルキルカルボニル基の分枝は、当該基のカルボニル部分に隣接する当該基のフルオロアルキル部分又はペルフルオロアルキル部分の炭素原子において発生している、ものであり;(b)前記フルオロケミカルアルコキシドを少なくとも1種のアルキル化剤と反応させて少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物を形成する工程;とを含む、請求項1に記載のヒドロフルオロ化合物を調製する方法。
【請求項18】
物品から汚染物を除去する方法であって、前記物品を、少なくとも1種の請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物を含む組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項19】
少なくとも1種の発泡性ポリマー又は少なくとも1種の発泡性ポリマーの前駆体の存在下で、発泡剤混合物を蒸発させる工程を含む発泡プラスチックの調製方法であって、前記発泡剤混合物が、少なくとも1種の請求項1に記載のヒドロフルオロエーテル化合物を含む、調製方法。
【請求項20】
請求項1の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物を含むフルオロケミカル液体蒸気体の中に半田を含む少なくとも1つの構成成分を浸漬して半田を融解させる工程を含む、気相半田付け方法。
【請求項21】
請求項1の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物を含む熱伝達剤の使用を介して、熱源とヒートシンクとの間で熱を伝達させる工程を含む、熱伝達方法。
【請求項22】
基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に、(a)請求項1の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物を含む溶媒組成物;及び
(b)前記溶媒組成物に溶解可能又は分散可能な少なくとも1種のコーティング材料;を含む組成物を塗布する工程を含む、基材上にコーティング物を付着させる方法。
【請求項23】
金属、サーメット、又は複合材の加工部品および工具に作動流体を塗布する工程を含む切削又は研磨加工の方法であって、前記作動流体が、請求項1の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物および少なくとも1種の潤滑剤を含む、方法。
【請求項24】
少なくとも1種の重合開始剤及び請求項1の少なくとも1種のヒドロフルオロエーテル化合物の存在下で少なくとも1種のモノマーを重合させることを含む、重合方法。
【請求項25】
(a)2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される少なくとも1個の鎖中で連結されたヘテロ原子を場合により含み、末端にある2個の、分枝鎖フルオロアルキルカルボニル基又は分枝鎖ペルフルオロアルキルカルボニル基と、(b)2個又は3個だけの原子を鎖中に有して、直鎖又は分枝鎖で介在するペルフルオロアルキレンセグメントであって、当該ペルフルオロアルキレンセグメントは、2価のエーテル酸素原子及び3価の窒素原子から選択される鎖中に連結されたヘテロ原子を場合により含有し、但し当該ペルフルオロアルキレンセグメントが鎖中で連結されたヘテロ原子を含有しない場合には当該ペルフルオロアルキレンセグメントは分枝している、ペルフルオロアルキレンセグメントとを有するフルオロケミカルケトン化合物であって、そして前記末端の、フルオロアルキルカルボニル基又はペルフルオロアルキルカルボニル基の分枝は、当該基のカルボニル部分に隣接する、当該基のフルオロアルキル部分又はペルフルオロアルキル部分の炭素原子で発生している、フルオロケミカルケトン化合物。

【公表番号】特表2009−537634(P2009−537634A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512196(P2009−512196)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/066707
【国際公開番号】WO2007/136948
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】