説明

環状糖の二硫化物、硫化物、スルホキシド及びスルホン誘導体とその使用

【課題】ジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの新たな誘導体などを得る。
【解決手段】本発明において、構造式(I)に相当するジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの新たな誘導体、その互変異性体、その製薬上許容可能な塩、そのプロドラッグ及びその溶媒和物のみならず、これらの化合物を含む製薬上の組成物、およびそれらの使用を明らかにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野 本発明は、1,4:3,6‐ジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの二硫化物、硫化物、スルホキシド及びスルホン誘導体、並びに血管障害の予防及び/又は治療のためのそれらの利用に関する。
【0002】
技術背景 酸化窒素(NO)は、自然界の生物学的活性を有する分子のなかで最小で最も単純な分子の1つである。さらに、NOは哺乳類で最も普遍的に存在する分子の1つであるらしい。最も広範に存在するシグナル分子の1つとして、NOは、体のほぼ全ての細胞及び器官の機能を制御するのに大きな役割を果たす。NOは、神経伝達物質、オータコイド、構成的メディエーター、誘導的メディエーター、細胞保護的分子及び細胞毒性分子として機能することのできる唯一の内因性分子である。
【0003】
NOは多数で多様な器官の機能の制御において多面的な生理的役割を果たすので、NO経路が欠損すると様々な病態が発現する。このような障害には、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、心不全、肺高血圧症、脳卒中、インポテンス、糖尿病に伴う血管合併症、胃腸潰瘍、喘息並びに中枢性及び全身性神経系障害がある。
【0004】
全ての一酸化窒素ドナー(NODs)は、生物系に適応した場合にNO関連活性を生み出す共通の特性を有し、これにより内因性のNO応答を模倣する。しかし、NOを産生/放出する経路は、化合物のクラスによって著しく異なり、これは化学反応性についても同様である。酵素触媒作用を必要とする化合物もあるが、非酵素的にNOを産生する化合物もある。ある化合物では、還元反応又は酸化反応が起きてから、NOが放出される。この過程は、pH、酸素、光及び温度に対する化合物それぞれの感受性、並びに分解又は代謝中に起こる副産物形成が異なることにより、更により複雑になる。加えて、所定の化合物からのNO放出の反応速度はしばしば、放出されたNOの絶対量よりも重要である。さらに、NODの組織分布及びNOが産生される部位もまた非常に重要である。これら全てを考慮することにより、文献に記載された様々なNODにより得られる非常に様々な薬理学的プロファイルが説明され、研究開発において新たに開発されたNODの薬理学的プロファイルを明らかにすることが必要となるので、これら全てを考慮することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/20420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イソソルビドモノニトラート骨格を有する薬学的に有用なNODが、WO00/20420に開示されている。ここに開示されているような化合物は、本発明の一部を形成するものではない。この出願では、強い血管拡張作用を有すると同時に耐性が少ない又は全くない有機ニトレートが記載されている。しかし、血小板活性化、血栓症、脳卒中、虚血に及び/又は虚血/再潅流による組織障害、酸化ストレスが病因論的に重要な役割を果たす病態、及びアテローム性動脈硬化症のいずれか又は任意の組み合わせを治療するための前記化合物のありうる使用については指摘されていない。従って、前記化合物の新たな使用は本発明の一部を形成する。
【0007】
文献に記載された、又は臨床的に使用されている有機硝酸化合物の主要な問題の1つに、有機硝酸化合物の作用メカニズムは血管平滑筋の弛緩であり、心臓血管疾患に関する他の病理学的プロセスを改善しない、という事実がある。
【0008】
組織の虚血により、細胞内のアデノシン三リン酸の蓄積が枯渇し、これにより、内皮細胞における膜関連ATP依存イオンポンプの機能が損なわれる。このような膜の機能不全により、細胞内にカルシウム、ナトリウム及び水が流入してしまう。結果としてカルシウム及びその他のイオンが細胞内に蓄積することにより、細胞が膨張し、細胞内の酵素が不適当に活性化することになる。虚血中に細胞内のカルシウムの上昇により活性化させる酵素の1つにキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)がある。通常の状況下では、ヒポキサンチン(ATP代謝の分解産物)は、XDHによりNADPH依存的に酸化され、キサンチン及び尿酸を生じる。しかし、虚血による低酸素状態では、ATPの加水分解により細胞内のヒポキサンチンレベルが上昇し、カルシウム依存的にプロテアーゼの活性化が起き、これによりNADPH還元XDHは酸素還元型、すなわちキサンチンオキシダーゼ(XO)に転換される。組織の血流量が回復(再潅流)して酸素分子が導入されると、XOはヒポキサンチンをキサンチンと尿酸に転換し、酸素分子の還元を触媒してスーパオキシドアニオンラジカル(O2−)及び過酸化水素(H)を形成する。酸素ラジカル産生のXO依存的なメカニズムは、腸管、脳、心臓及び骨格筋を含む、様々な臓器に対する再潅流傷害においてO2−及びHの関与を説明するために考え出された。
【0009】
虚血後の組織における酸素ラジカルの発生は、内皮細胞及び実質細胞を保護するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンのような、内因性抗酸化物質の処理能力を越えるらしい。SODやカタラーゼのような外因性の酸化防止剤は、虚血及び再潅流により引き起こされる白血球浸潤及び組織傷害を弱めることが示されている。
【0010】
一酸化窒素の生物学的利用能は再潅流時に減少しているようであり、これは再潅流において内皮のNO産生が減少し、内細胞由来のO2−によりNOの不活性化が減弱していることによるらしい。NOの生物学的利用能が限られているために、再潅流中に異常な細胞間相互作用及び血管の機能不全が起きてしまう。一酸化窒素を供与する化合物は、虚血−再潅流実験モデルにおいて保護剤として保証されている。しかし、虚血再潅流による損傷を起こしたプロセスを考慮すると、NO供与体であると同時に抗酸化特性も有するという、両方の特性を有する分子を手に入れることは非常に有益であろう。
【0011】
アテローム性動脈硬化症は、血管内皮の持続的な損傷により始まる進行中の過程である。アテローム性動脈硬化症は内皮の損傷に対する反応であるという考えは、アテローム性動脈硬化症とリスクファクター(高LDL血漿レベル、低HDL血漿レベル、高血圧、酸化ストレス、喫煙、糖尿病、高Lp(a)血漿レベル、又は酸化や糖化といった特定の受容体からのLDLの除去を阻害するLDLの修飾)との関連が研究されたときに生まれた。LDLは血管内皮細胞の能動輸送により血管壁に蓄積される。この過程で、LDLは分子の一部が酸化される。酸化LDL(ox−LDL)が存在することは、アテローム硬化型病変の発生に非常に重要である。同程度に、酸化型LDLがアテローム硬化型病変のいくつかの病理学的特徴の原因となるという理論は培養細胞システムの所見に由来し、その培養細胞システムでは、酸化型LDLは、動脈の既知の病変の形態と相関している細胞変化が生じるが、それは病変化していないLDLによっては生じない。内皮傷害、内膜間質のLDL保持、内膜への単球の補充、リポ蛋白質誘導脂質によるマクロファージの腫大、平滑筋細胞遊走並びに増殖、壊死性物質の蓄積、並びに血管収縮及び凝血促進活性傾向は、アテローム性動脈硬化症の特性である。
【0012】
心臓同種移植後血管障害(Cardiac allograft vasculopathy)は、冠動脈硬化症が異常に加速された、びまん性の形をとり、心臓移植の長期成績を制限している。冠動脈内皮の血管拡張機能不全は、心臓同種移植後血管障害の進行の一般的な初期の指標となる。
【0013】
従って、新たな硝酸有機化合物は、血管拡張性活性に加えて、例えばアテローム性動脈硬化症、並びに虚血及び/又は虚血再潅流による組織損害といった、心臓血管疾患に関する他の病理学的プロセスを改善する活性を組み合わせることができ、現在使用されている化合物に比べ非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の概略 本発明の目的は、新たな種類の化合物、すなわちジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの誘導体であり、強い血管拡張作用を発揮すると同時に、心臓血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、心臓同種移植後血管障害、並びに虚血及び/又は虚血再潅流による組織損傷に関与する他の病理学的プロセスを改善する。
【0015】
本発明の他の目的は、新たな種類の化合物、すなわちジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの誘導体であって、これは血圧を変化させない投与量でも抗血栓作用を示すことができる。
【0016】
本発明の他の目的は、新たな種類の化合物、すなわちジアンヒドロヘキサイトモノニトレートの誘導体であり、血栓溶解薬、抗凝固薬、抗血栓薬、抗酸化薬及び高脂血症治療薬との相乗効果を発揮しうるものである。
【0017】
本発明の更に他の目的は、アテローム性動脈硬化症に関連した心血管障害を治療するための医薬品組成物を製造するための、ジアンヒドロヘキサイトモノニトレート誘導体の新たな使用方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な記載 本発明の目的は、構造式(I)の化合物又はその互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物を提供することであり、
【化1】


ここで、
nは0、1、又は2の整数であり、
Xは、−S(O)m−、−(C=O)−、又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であるが、但し、Xが−(C=O)−である場合には、nは0であり、
Rは水素又は残基Rを示し、Rは、
1−6アルキル;
2−6アルケニル;
3−8シクロアルキル;
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されているもの;
4−8シクロアルケニル;
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されているもの;
フェニル;
ピリジル;
チオフェニル;
ニトロシル;
S−システイニル;
S−グルタチオニル;および
【化2】


からなるグループから選択され、
ここで、Rは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意に置換される。
【0019】
構造式(I)の化合物において、RXS(O)n−及び−ONOが、構造式(Ia)及び(Ib)に示すように、環平面について互いにトランスにある場合には、
【化3】


RXS(O)n−は
【化4】


ではなく、ここでZはC−Cアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるのが好ましい。
【0020】
驚くべきことに、強い血管拡張作用を有し、耐性は小さいか全くないだけでなく、構造式(I)に示される化合物は、抗血小板活性化作用、抗血栓作用、抗脳卒中作用、抗酸化作用、虚血及び/又は虚血/再潅流による組織傷害/損傷に抵抗する作用、並びに抗アテローム硬化作用を有する。
【0021】
本発明の他の態様は、構造式(I)で示されるジアンヒドロヘキサイトモノニトレート誘導体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、プロドラッグまたは溶媒和化合物を、有効成分として少なくとも1つ有する医薬品組成物に関する。
【0022】
本発明の更なる態様は、構造式(I)に従うジアンヒドロヘキサイトモノニトレート誘導体、互変異性体、薬学的に許容できる塩、プロドラッグまたは溶媒和化合物の少なくとも1つを、アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、血管攣縮、心臓同種移植後血管障害、循環系機能不全、血小板活性化、血栓症、脳卒中、アルツハイマー病、酸化ストレスがその病因に重要な役割を果たす病態の予防及び/又は治療のための医薬品組成物を製造するために、有効成分として使用することに関し、その病態において、一酸化窒素の不足がその病因、及び/又は虚血及び/又は虚血再潅流による組織障害に重要な役割を果たす。
【0023】
上述の表現について以下で詳述する。
「その薬学的に許容できる塩、その溶媒和化合物またはそのプロドラッグ」とは、患者に(直接または間接的に)投与され、本願明細書において記載されている化合物を提供するいかなる薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和化合物又は他のいかなる化合物も示す。しかし、薬学的に許容されない塩もまた、本発明の範囲に含まれると考えられる。その理由は、これらの化合物は薬学的に許容される塩を調製するうえで有用でありえるからである。塩、プロドラッグ及び誘導体は、当該技術分野において周知の方法により調製することができる。
【0024】
例えば、本願明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩とは、従来の化学的手法により作られた酸性基又は塩基性基を有する対応化合物から合成される。一般に、これらの塩は、例えば、化学量論的量のこれらの化合物の遊離酸又は塩基の型を、水又は有機溶媒又はこれらの混合物に溶解した対応する塩基又は酸と反応させることにより調製する。エーテル、酢酸エチル、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性溶媒が一般に好適である。酸性塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、よう化水素塩、硫酸塩、ニトレート、リン酸塩のような無機酸塩、並びに、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、マンデル酸塩、メチルスルホナート並びにp−トルエンスルホナートのような有機酸塩がある。塩基性塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウムおよびリチウムの塩のような無機塩、並びにエチレンジアミン、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン及びアミノ酸の塩基性塩のような有機塩がある。
【0025】
特に好適な誘導体又はプロドラッグは、このような化合物が患者に投与された際に、本発明の化合物の生物学的利用能を増加させる(例えば、経口剤型の投与された化合物が血中により素早く吸収されるようにするなど)もの、又は対応する化合物の生物学的コンパートメント(例えば、脳又はリンパ系)への放出を増加させるものである。
【0026】
構造式(I)の化合物のプロドラッグであるいかなる化合物も本発明の範囲に含まれる。「プロドラッグ」は最も広い意味で用いられており、「体内で」本発明の化合物へと代謝される誘導体を含む。このような誘導体には、分子の有する官能基に従うものであって限定されるものではないが、エステル、アミノ酸のエステル、リン酸エステル、スルホン化された化合物の金属塩、カルバミン酸エステル並びにアミドエステルが含まれる。
【0027】
本発明の化合物は、好ましくは、結晶状、又は遊離化合物様、若しく溶媒和化合物様であってもよい。適用することのできる溶媒化方法は、当該技術分野において一般的に知られている方法である。好適な溶媒和化合物は、薬学的に許容される溶媒和化合物である。溶媒和化合物を水和物とするのが好ましい。
【0028】
構造式(I)の化合物、又はその塩若しくは溶媒和化合物は、薬学的に許容される実質的に純粋な状態であることが好ましい。薬学的に許容できる形態であるということから、「とりわけ」、薬学的に許容される純度であり、希釈剤やキャリアのような通常の薬学的添加物は除去され、通常の投与量では無毒性であると考えられる材料を含有することが理解される。薬剤の純度は、50%以上、好ましくは70%、更により好ましくは90%以上である。更により好ましい態様として、構造式(I)の化合物、又はその塩、溶媒和化合物若しくはプロドラッグは、95%以上の純度を有する。
【0029】
構造式(I)により示される本発明の化合物は、キラル中心又は異性体中心の存在、及び/又は多重結合の存在(例えば、Z、E)の存在による鏡像異性体を含むことができる。純粋な異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体、及びこれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のことであり、これらの中で臭素が好ましい。
【0031】
本願明細書において使用する用語「C1−6アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル部分を示し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル及びヘキシルである。
【0032】
本願明細書において使用する用語「C2−6アルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル部分を示し、該当する場合には、E又はZ立体異性体の2重結合を少なくとも1つ有する。この用語は、例えば、ビニル、アリル、1−及び2−ブテニル並びに2−メチル−2−プロペニルを含む。
【0033】
本願明細書において使用する用語「C3−8シクロアルキル」とは、3〜8個の炭素原子を有する脂環基を示す。このようなシクロアルキル基の具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルがある。
【0034】
従って、用語「C3−8シクロアルキルであって、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されたもの」とは、3〜8個の炭素原子を有する脂環基であって、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されたものを示す。このような基の具体例として、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピペリジン及びテトラヒドロチオフェンがある。
【0035】
用語「C4−8シクロアルケニル」とは、4〜8個の炭素原子を有する脂環基を示す。このようなシクロアルケニル基の具体例として、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル及びシクロオクテニルがある。
【0036】
Rが水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、(C1−6アルキル)C4−8シクロアルキル、(C1−6アルキル)C4−8シクロアルケニル、フェニル又は(C1−6アルキル)フェニルであることが好ましいが、C1−6アルキルが特に好ましい。
【0037】
構造式(I)において、m及びnの一方又は両方が0であることは更に好ましい。
【0038】
また、Xは単結合又は−S−であることが好ましい。
【0039】
構造式(I)の化合物が構造式(Ia)及び/又は構造式(Ib)により示される化合物に対応することは特に好ましい。
【化5】

【0040】
構造式(I)の化合物は、構造式(Ic)及び(Id)に示す、(R)及び(S)ジアステレオマも含む。
【化6】

【0041】
構造式(I)で示される特に好ましい化合物は、
2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド、
2−メチルチオイソソルビド5−モノニトレート、
2−[(R)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−[(S)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−メチル−スルフィニルイソソルビド5−モノニトレート、
2−メチルスルフォニルイソソルビド5−モノニトレート、
S−ニトロソ−2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
2−(テトラヒドロピラン−2−イル−チオイソソルビド5−モノニトレート、
2−(イソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート、及び
2−(5’−アセチルオキシイソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート、である。
【0042】
更に、2−アセチルチオイソソルビド−5−モノニトレート(化合物(12))、その互変異性体、その薬学的に許容できる塩、そのプロドラッグ及び/又はその溶媒和化合物を、
【化7】


血栓症、虚血、虚血及び/又は虚血再潅流による細胞/組織損害、高血圧、血管攣縮、アテローム性動脈硬化症及び/又は心臓同種移植後血管障害の予防及び/又は治療のための医薬品組成物を製造するための有効成分として用いるのが特に好まれる。
【0043】
加えて、構造式(I)、特に2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレート(12)、これらの互変異性体、薬学的に許容される塩、プロドラッグ及びその溶媒和化合物を、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植後血管障害、血小板活性化、血栓症、脳卒中、酸化的ストレスが発症に重要な役割を果たす病態、及び/又は虚血及び/又は虚血再潅流による組織障害の予防及び/又は治療のための療法に用いてもよい。これらの化合物は特に、例えば、アレルギー、脳卒中、アルツハイマー病、及び/又は虚血性心臓血管疾患のような、酸化ストレスが発症に重要な役割を果たす病態の予防及び/又は治療に用いることができる。この医薬品組成物は異なる経路により投与してもよい。例えば、錠剤、カプセル、シロップ及び懸濁液のような薬学的に調製された形で経口的に投与してもよい。非経口的には、溶液又は乳剤などの形状で投与してもよい。クリーム、ポマード、バルサムなどの形で局所的に、また例えばパッチ又は包帯の使用によりで経皮的に投与してもよい。座薬として直腸に直接投与してもよい。調製の際に、生理的に許容されるキャリア、医薬品添加物、活性剤、キレート剤、安定化剤、などを含むことができる。注入する場合には、生理的に許容されるバッファー、可溶化剤又は等張液に組み込んでもよい。
【0044】
本発明による医薬品組成物は更に、血栓溶解薬、好ましくはプラスミノーゲンアクチベータ、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ又はアニストレプラーゼを含んでもよい。本発明による医薬品組成物はまた、抗凝固剤、好ましくはヘパリン、ジクマロール、アセノクマロール、エノキサパリン又はペントサンポリ硫酸を含むことができる。更に、本発明による医薬品組成物は加えて抗血栓薬剤、好ましくはアセチルサリチル酸、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドロゲル(clopidrogel)、トリフザール、ペントサンポリ硫酸又はアブシキマブを含むことができる。本発明による医薬組成物は更に、糖蛋白質IIb/IIIa特異的な免疫グロブリン又はその断片を含むことができる。
【0045】
或いは又、本発明による医薬品組成物は、抗高脂血症薬、好ましくはシンバスタチン、ロバスタチン、アトロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、エプタスタチン、リフィブロール、アシフラン、アシテメート、グルニカート、又はロスバスタチンを含むことができる。本発明による医薬品組成物はまた、抗酸化剤/フリーラジカルスカベンジャー薬剤、好ましくはニカラベン、ラノラジン、エモキシピン、グルタチオン、エダラボン、ラキソフェラスト、リコペン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−D−システイン、N−アセチル−L−システインとN−アセチル−D−システインのラセミ混合物、又はカルベジロールから選択された薬剤を含むこともできる。
【0046】
本発明による医薬品組成物は、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植後血管障害、血小板活性化、血栓症、脳卒中、虚血及び/又は虚血再潅流による組織損害、及び/又は酸化ストレスが発症に重要な役割を果たす病態(例えば、アレルギーに限らず、脳卒中、アルツハイマー病、虚血性心疾患など)、及び/又はNOの不足が発症に重要な役割を果たす病態の治療及び/又は予防をするために用いてもよい。本発明による医薬品組成物は、循環器系の機能不全、好ましくは心血管及び冠状動脈機能不全を治療及び/又は予防をするために用いてもよい。
【0047】
1日量は特異的症状、年齢、患者の体重、特異的投与形態等によって異なっていてもよく、成人の通常1日量は0.1〜500mgであり、1日に1回又は数回に分割してもよい。
【0048】
本発明の化合物は、当該技術分野において公知の調製方法により、当業者に既知の工程を用いることにより、又は後述の新たな工程を用いることにより調製できる。
【0049】
従って、本発明の他の態様は、構造式(I)に示す化合物、その互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ、及びそれの溶媒和化合物調製する工程に関する。
【0050】
本発明によると、構造式(I)の化合物、その互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物を以下に概説した製造方法により調製するのが好ましく、
【化8】


ここで:
nは、0、1又は2の整数であり、
Xは、−S(O)m−、又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、
Rは水素又は残基Rを示し、R
1−6アルキル;
2−6アルケニル;
3−8シクロアルキル;
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの;
4−8シクロアルケニル;
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの;
フェニル;
ピリジル;
チオフェニル;
ニトロシル;
S−システイニル;
S−グルタチオニル;および
【化9】


からなる群から選択され、
ここで、Rは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換され、
この製造方法は、以下の工程の実施を含む。
(a)構造式(IIa)の化合物を加水分解し:
【化10】


ここで、R’はC−Cアルキル、好ましくはメチルであって、
以下の化合物
【化11】


を得る工程、および
(b)任意であるが、工程(a)により調製した化合物において以下を達成する工程。
I.酸化反応を行ない、以下の化合物
【化12】


を得る工程:
任意であるが、引き続いての2回目の酸化反応により、以下の化合物を得る工程であって、
【化13】


ここで、
nは1、2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2であり、
また、Rはヒドロキシル又はONOである、当該工程;
II.置換反応を行なって構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは単結合であり、
Rはニトロシルではなく、
任意であるが、引き続いての酸化反応により、構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0又は1であり、
Rはニトロシルではない、当該工程;
III.置換反応により構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S−である当該化合物であって、
任意であるが、引き続いての酸化反応により、構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数1又は2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2である、当該工程、または、
IV.ニトロソ化反応により以下の化合物
【化14】


を得る工程である当該工程。
【0051】
本発明の上記製造方法によれば、構造式(Ia)の化合物、その互変異性体、その薬学的に許容できる塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物を調製するのが好ましく、
【化15】


ここで、n、X、m及びRは上記の意味を有し、
ここで、前記製造方法は次の工程を行うことを含む。
(a)構造式(II)の化合物の加水分解し、
【化16】


ここで、R’はC1−6アルキル、好ましくはメチルであって、
2−チオイソソルビド5−モノニトレート(1)
【化17】


を得る工程、および、
(b)任意であるが、工程(a)により調製した化合物(1)において以下を達成する工程、
I.酸化反応を行ない、以下の化合物:
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド(2)又は2−(イソソルビジル−2’−ジチオイソソルビド5−モノニトレート(8)、
を得る工程、
任意であるが、引き続いての2回目の酸化により、構造式(Ie)に記載の化合物を得る工程であって、
【化18】


ここで:
nは1又は2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2であり、
はヒドロキシル又はONOである、当該工程、
II.置換反応により構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは単結合で、
Rはニトロシルではなく、
任意であるが、引き続いての酸化により、構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは整数0又は1であり、
Rはニトロシルではない、当該工程、
III.置換反応により構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S−であり、
任意であるが、引き続いての酸化により、構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで、
nは整数1又は2であり、
Xは−S(O)m−で、ここでmは0、1又は2である当該工程、または
IV.ニトロソ化反応によりS−ニトロソ2−チオイソソルビド5−モノニトレート(6)を得る、当該工程。
【0052】
本発明のこの新たな工程である任意の工程(b)は、本発明の特異的な化合物を調製するためのスキーム1〜4に模式的に記載されている。これらスキーム1〜4はそれぞれ、酸化反応I、置換反応II、置換反応III及びニトロソ化反応IVに関連する。
【0053】
本発明の特に好ましい製造方法は、工程(a)及び工程(b)IIを含んでおり、2−[(R)−アルキルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート及び/又は2−[(S)−アルキルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレートを調製する。
【0054】
両方のジアステレオマーがその後分離されるのが更に望ましく、この分離は当該分野において既知である従来の方法を用いて行うことができる。
【0055】
本発明の更なる好ましい調製の製法は、構造式(11)または互変異性体の化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグまたはその溶媒和化合物の調製に関するものであり、
【化19】


この製法は下記の、
a)構造式(III)の化合物の酸化反応を行ない、
【化20】


ここでR’はC−Cアルキル、好ましくはメチルであり、
2,2’−ジチオジイソソルビド(10)
【化21】


を得る工程、および
(b)無水カルボン酸、好ましくは無水酢酸存在下でニトロ化剤により工程(a)で調製した化合物をニトロ化反応する工程を含む。
【0056】
最終的に、本発明の他の態様は、2,2’−ジチオジイソソルビド、化合物(10)に関するものであり、この化合物は本発明の化合物(11)を調製する際の中間化合物である。
【0057】
本願明細書の実施例(下記参照)において、一般式(I)による様々な化合物を得る好適な工程を詳細に記載する。これらの実施例を見て、本願明細書の実施例を適切に改変することで、本願明細書において明示していない化合物を得ることは、当業者一般の知識の範囲内である。これらの実施例が単に図示する目的だけのためものであって、本発明を制限するために考慮されてはならないことは当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0058】
以下に示す実施例において得られた化合物は、水素(H-NMR)及び炭素-13(13C-NMR)核磁気共鳴スペクトロスコピーのデータにより同定された。
【0059】
核磁気共鳴スペクトルは、Varian Gemini−2000又はVarian Gimini−300スペクトロメータにより測定した。
【0060】
スペクトルを記録するのに用いた操作周波数(operating frequency)及び溶媒を1H-NMRスペクトル中に示す。信号の位置は、δ(ppm)で示され、溶媒プロトンの信号を基準とした。重水素を含むクロロホルムの基準値は7.24ppmであり、重水素を含むジメチルスルホキシドの基準値は2.49ppmであった。テトラメチルシラン(TMS)プロトンから得られた信号を、場合によっては内部基準とし、基準値として0ppmとした。電気的積分(electronic integration)及び信号の種類として計測される、各信号でのプロトンの数を括弧内に示し、以下の略語を用いる。s (シングレット)、d (ダブレット)、t (トリプレット)、dd (ダブレットのダブレット), ddd (ダブレットのダブレットのダブレット)、bs (広いシグナル)、cs (複合的なシグナル)、s. a.D2O (重水素化によりシンプリファイする)、d. a.D2O (重水素化により消失する)
【0061】
スペクトルを記録するのに用いた操作周波数及び溶媒を13C-NMRスペクトル中に示す。信号の位置は、δ(ppm)で示され、溶媒炭素の信号を基準とした。重炭素を含むクロロホルムの基準値は77.00ppmであり、重炭素を含むジメチルスルホキシドの基準値は39.50ppmであった。
【0062】
幾つかの場合には、APT (Attached Proton Test)、HETCOR (Heteronuclear Chemical Shift Correlation) またはCOSY (Correlated Spectroscopy) のパルスシークエンスも同定する補助として用いて、核磁気共鳴実験を行なった。
【0063】
実験に関する部分では、以下の略号を用いる。
AcOEt 酢酸エチル
AcOH 酢酸
DMSO−d6 ヘキサ重水素を含むジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
EtOEt エチルエーテル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
Hx ヘキサン
MeI ヨウ化メチル
MeOH メタノール
LC−(ApcI)MS 大気圧化学イオン化液体クロマトグラフ質量分析
s.d. 標準偏差
s.e.m. 標準誤差
THP テトラヒドロピラニル
【0064】
実施例1
2−チオイソソルビド5−モノニトレート(1)を得る方法。
【化22】


50mLのフラスコ内で、WO00/20420により得られた2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレート(12)1.00g(4.02mmol)をメタノール20.0mLに溶解する。水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液10.0mLを一気に加える。すぐに覆って1分間室温(約25℃)で撹拌した後、濃塩酸2.23mLを一気に加えた。撹拌ながら乾燥するまで濃縮し、減圧下で30℃未満にして溶媒を除去した。
【0065】
残留物をクロロホルム中に懸濁した。このクロロホルム溶液をフィルターに通し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。フィルターを通した後に、減圧下で溶媒を除去した。減圧下で乾燥し、ここで関心のある産物に相当する、0.83gの橙黄色の油を得る。収率:100%。
【0066】
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 5.36-5.26 (1H, m, CHONO2), 4.95 (1H, t, J=5.0 Hz, CHCHONO2), 4.42 (1H, d, 4.8 Hz, CHCHS), 4.07 (1H, dd, J=4.6 Hz, J=4.4 Hz, H-CHCHS), 3.97 (1H, dd, J=5.64 Hz, J=2.5 Hz, H-CHCHONO2), 3.87-3.76 (2H, cs, H-CHCHS, HCHCHONO2), 3.45-3.35 (1H, m, CHS), 1.77 (1H, d, J=8.6 Hz, SH)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3) : 91.21 (CHCHS), 81.22 (CHONO2), 81.07 (CHCHONO2), 76.15 (CH2CHS), 69.26 (CH2CHONO2), 42.82 (CHS)
【0067】
実施例2
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド(2)を得る方法
【化23】


手順1:
WO00/20420により得られた2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレート(12)0.5gをメタノール10.0mLに溶解する。この溶液を、強力磁石撹拌装置付き250mLフラスコにいれたヒト血漿200mLに一滴ずつゆっくり加える。反応混合液液を15時間室温で撹拌した。この反応粗製液を激しく撹拌しながらアセトニトリル500.0mLに注ぐと、血漿タンパク質に相当する凝集した白い固形物がすぐに沈澱するのが観察された。3000回転/分20℃で30分間で遠心し、液体を分離し、固形物(タンパク質塊)をアセトニトリル250.0mLに懸濁した。懸濁液を撹拌し、上述した条件と同じ条件(3000回転/分/20℃/30分)にて遠心した。
【0068】
上澄液をうつし、先ほどのものとあわせた。溶媒を減圧下30℃未満で蒸発させた。得られた水性残留物(約200mL)をクロロホルム500mLで4回抽出した。これらの有機相を混ぜ、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。フィルターを通した後、減圧下で溶媒を濃縮した。フィルタリングの後、溶剤を減圧下で濃縮した。それはクロマトグラフィー(CHC13/AcOEt 6:1)によって純化される白色固体の350mgを得、2-チオイソソルビド5-モノニトレート二硫化物製品(2)に対応する白色固体の250mgを分離する結果となった。収率:60%。
【0069】
手順2:
50mLのフラスコ内で、WO00/20420に従って得られた2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレート(12)1.00g(4.02mmol)をメタノール20.0mLに溶解し、水酸化カリウムの10%メタノール溶液10.0mLを加えた。反応混合液を覆い、5時間室温で撹拌した。二硫化物(2)に相当する白色固体の沈澱が反応中に観察される。沈殿物をフィルターにかけ、メタノールで数回洗浄した。減圧下で乾燥し、ここで関心のある2−チオイソソルビド5−モノニトレート二硫化物産物(2)に相当する白色固体0.58gを得た。収率:70%。
【0070】
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): 5.51-5.43 (2H, m, 2CHONO2), 4.96 (2H, t, J=5.4 Hz, 2CHCHONO2), 4.51 (2H, d, J=4,8 Hz, 2CHCHS), 4.04-3.73 (10H, cs, 2CH2CHONO2, 2CH2CHS, 2CHS)
13C-NMR (50 MHz, DMSO-d6): 88.46 (2CHCHS), 83.31 (2CHONO2), 81.50 (2CHCHONO2), 73.24 (2CH2CHS), 69.95 (2CH2CHONO2), 54.01 (2CHS)
【0071】
実施例3
2−メチルチオイソソルビド5−モノニトレート(3)を得る方法
【化24】


50mLのフラスコ内で、WO00/20420に従って得られた2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレート(12)1.00g(4.02mmol)をメタノール20.0mLに溶解し、水酸化カリウムの10%メタノール溶液5.0mLを一気に加えた。反応混合液を覆い、5分間室温で撹拌した。ヨウ化メチル(32.00mmol)2.0mLを一気に加え、混合液を覆って2時間室温で撹拌した。濃縮して乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。残留物をクロロホルム250mLに溶解し、水50mLで洗浄した。有機相を分離し、水50mLで3回洗浄した。
【0072】
無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、フィルターを通し、溶媒を減圧下で除去した。減圧下で乾燥した後、ここで関心のある産物に相当する、0.68gの白色固形物が得られる。収率:76%。
【0073】
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 5.34-5.26 (1H, m, CHONO2), 4.93 (1H, t, J=5.2 Hz, CHCHONO2), 4.48 (1H, d, J=4.8 Hz, CHCHS), 4.14 (1H, dd, J=9.7 Hz, J=4.8 Hz, H-CHCHS), 4.01 (1H, dd, J=11.2 Hz, J=3.0 Hz, H-CHCHONO2)m 4.01-3.81 (2H, cs, H-CHCHS, H-CHCHONO2), 3.30-3.24 (1H, m, CHS), 2.15 (3H, s, CH3)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 88.65 (CHCHS), 81.55 (CHCHONO2), 81.26 (CHONO2), 73.87 (CH2CHS), 69.10 (CH2CHONO2), 50.74 (CHS), 14.74 (CH3)
【0074】
実施例4
2−[(R)-メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート(4)及び2−[(S)-メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート(4bis)を得る方法
【化25】


500mLフラスコ中で、実施例3によって得られた2−メチルチオイソソルビド5−モノニトレート7.3g(32.9mmol)をジオキサン75mLに溶解した。NaIO7.04g(32.9mmol)を水110mL溶かした溶液を非常にゆっくりと一滴ずつ加え、1時間室温で撹拌した。混合物をフィルターに通し、減圧下でフィルターからジオキサンを除去した。水150mLを加えた。混合物をクロロホルム300mLで2回抽出した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥してフィルターを通し、減圧下で溶媒を除去した。これにより、65%の(4)及び35%の(4bis)のジアステテオマーを含む反応粗製物6.6gを得た。この粗製物をジオキサンから2回再結晶化し、ここで関心のある生成物(4)2.9gを得、HPLCによる純度は95%であった。1回目の再結晶化からの母液を用いて、溶媒を減圧下で除去し、生じた残留物をジオキサンから再結晶化しHPLCにより純度95%のここで関心のある生成物(4bis)1gを得た。
【0075】
2−[(R)-メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート(4):
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 5.39-5.28 (1H, m, CHONO2), 5.02 (1H, dd, J=5.6 Hz, J=1.6 Hz, CHCHS), 4.89 (1H, t, J=5.5 Hz, CHCHONO2), 4.29 (1H, dd, J=10.4 Hz, J=6.4 Hz, H-CHCHS), 4.20-3.91 (3H, cs, H-CHCHS, CH2CHONO2), 3.38-3.31 (1H, m, CHSO), 2.61 (3H, s, CH3)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 82.11 (CHCHONO2), 81.51 (CHCHS), 80.55 (CHONO2), 69.65 (CH2CHS), 69.28 (CH2CHONO2), 66.24 (CHSO), 37.28 (CH3)
【0076】
微量分析
予測値(%): 35.44 C; 4.67 H; 5.90 N; 13.51 S; 40.47 O
実験値(%): 35,31 C; 4.67 H; 5.98 N; 13.5 S; 40.60 O
質量分析(LC- (ApcI) MS to 20V): 238 (M+1)+
融点: 153℃(示熱走査熱量計による)
単結晶X線回折: ジアステレオマー(4)の立体配置は次のように決定した。: (R)-S, (S)-C2, (S)-C3, (S)-C4, (R)-C5
【0077】
2−[(S)-メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート(4bis):
1H-NMR (200 MHz, CDCl3) : 5.39-5.28 (1H, m, CHONO2), 4.89 (1H, t, J=5,6 Hz, CHCHONO2), 4.68 (1H, d, 5,4 Hz, CHCHS), 4.40-3.88 (4H, cs, CH2CHS, CH2CHONO2), 3.48-3.40 (1H, m, CHSO), 2.58 (3H, s, CH3)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 82.89 (CHCHS), 82.26 (CHCHONO2), 80.55 (CHONO2), 69.19 (CH2CHONO2), 67.88 (CH2CHS), 66.94 (CHSO), 36.64 (CH3)
【0078】
微量分析
予測値(%) : 35.44 C; 4.67 H; 5.90 N; 13.51 S; 40.47 O
実験値(%) : 35.65 C; 4.66 H; 5.87 N; 13.56 S; 40.57 O
質量分析(LC- (ApcI) MS to 20V): 238 (M+H)+
融点: 115℃(示熱走査熱量計による)
単結晶X線回折: 立体異性体(4bis)の立体配置は次のように決定した。: (S) -S, (S) -C2, (S)-C3, (S) -C4, (R)-C5
【0079】
実施例5
2−メチルスルフォニルイソソルビド5−モノニトレート(5)を得る方法
【化26】


フラスコ内で、実施例3によって得られた2−メチルイソソルビド5−モノニトレート1.0g(4.5mmol)をアセトニトリル20mLに溶解した。過ヨウ素酸(HIO)溶液4.11g(18.1mmol)を一度に加え、48時間室温で撹拌した。NaSO飽和溶液50mLを加えた。これを塩化メチレン30mLで2回抽出した。有機層を合わせ、NaSO飽和溶液30mLで2回洗浄した。これを無水マグネシウム硫酸で乾燥し、フィルターを通し、減圧下で溶媒を除去した。ここで関心のある生成物(5)を662mgえた。粗製物640mgをヘキサン25mLに懸濁し、フィルターを通し、クロロフォルム7.5mLで洗浄し、HPLCにより純度99.7%の生成物(5)450mgを得た。
【0080】
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): 5.53-5.47 (1H, m, CHONO2), 5.00-4.88 (2H, cs, CHCHONO2, CHCHS), 4.38 (1H, dd, J=9.8 Hz, J=1.8 Hz, H-CHCHS), 4.12-3.86 (4H, cs, H-CHCHS, CH2CHONO2, CHSO2), 3.07 (3H, s, CH3)
13C-NMR (50 MHz, DMSO-d6): 82.77 (CHCHS), 82.36 (CHCHONO2), 81.81 (CHONO2), 68.95 (CH2CHONO2), 68.46 (CH2CHS), 67.48 (CHSO2), 39.31 (CH3).
【0081】
微量分析
予測値(%): 33.20 C; 4.38 H; 5.53 N; 12.66 S; 44.23 O
実験値(%): 33.45 C; 4.34 H; 5.52 N; 12.69 S; 44.43 O
質量分析(LC-(ApcI) MS to 20V): 254 (M+H)+
融点: 173℃(示熱走査熱量計による)
【0082】
実施例6
S−ニトロソ−2−チオイソソルビド5−モノニトレート(6)を得る方法
【化27】


アンバーバイアル内で、実施例1によって得られる2−チオイソソルビド5−モノニトレート(1)0.5g(2.41mmol)をメタノール4.0mLに溶解し、蓋をして氷浴にて撹拌した。tert−ブトキシニトレート320μL(0.249g、2.41mmol)を加え、蓋をして低温条件で7時間撹拌した。白い固形物を濾過して除去し、濾過液を遮光しながら室温で、減圧下で濃縮し、乾燥させた。これにより深紅色の固体0.48g(収率:84%)が得られ、S−ニトロソ−2−チオイソソルビド5−モノニトレート(6)であると同定された。
【0083】
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): 5.40-5.25 (sc, 1H, CHONO2), 4.84-4.64 (sc, 2H, CHSNO, CHCHONO2), 4.40-4.30 (m, 2H, H-CHCHSNO, CHCHSNO), 4.12 (dd, 1H, J=11.4 Hz, J=2.6 Hz, H-CHCHONO2), 4.00-3.80 (sc, 2H, H-CHCHSNO, H-CHCHONO2)
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): 88.2 (CHCHSNO), 81.9+81. 1 (CHCHONO2, CHONO2), 73.4 (CH2CHSNO), 69.5 (CH2CHONO2), 51.6 (CHSNO)
【0084】
実施例7
2−(テトラヒドロピラン−2−イル−チオ)イソソルビド5−モノニトレート(7)を得る方法
【化28】


実施例1によって得られる2−チオイソソルビド5−モノニトレート(1)0.5g(2.41mmol)を3,4−ジヒドロ−2H−ピラン6mLに懸濁し、混合液を氷浴にて冷却した。p−トルエンスルホン酸ピリジニウム0.10g(0.40mmol)を加え、窒素雰囲気中で室温にて一晩にわたって撹拌した。ジエチルエーテル50mLを加え、混合液を飽和塩化ナトリウム溶液40mLにて2回洗浄した。これにより反応粗製物1.15gが得られ、さらにクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)により、ここで関心のある生成物が純度83%で0.65g得られた。ヘキサンから再結晶化し、純度95%の生成物0.45gが得られ、スペクトロメトリーのデータから2−(テトラヒドロピラン−2−イル−チオ)イソソルビド5−モノニトレート(7)であると同定された。
【0085】
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): 5.28 (ddd, 1H, J=11.0 Hz, 5.4 Hz, 2.8 Hz, CHONO2), 5.0-4.85 (sc, 2H, CHSTHP, CHCHONO2), 4.59 (dd, 1H, J=11.2 Hz, 4. 6 Hz, CHCHSTHP), 4.20-3.80 (sc, 5H, CH2CHSTHP, H-CHCHONO2, CH2 THP), 3.60-3.40 (sc, 2H, H-CHCHONO2, CHTHP), 2.00-1.45 (sc, 6H, 3CH2 THP)
13C-NMR (CDCl3, 50 MHz): 89.5及び89. 1 (CHCHS), 83.0及び81. 6 (CHCHONO2), 81.4及び81.3 (CHSTHP, CHONO2), 74.9及び74.1 (CH2 THP), 69.0及び68.9 (CH2CHSTHP), 64.8及び64.7 (CH2CHONO2), 49.1及び47. 6 (CH2 THP), 31.3及び31.2 (CH2THP), 25.4 (CH2 THP), 21. 7及び21.6 (CH2 THP).
【0086】
実施例8
2−(イソソルビジル−2‘−ジチオ)イソソルビド)5−モノニトレートを得る方法
【化29】


スクシンイミド0.170g(1.72mmol)のエタノール溶液を2−チオイソソルビド0.323g(1.56mmol)に加えた。白い沈殿物が生じた後、NaHCO30.168mg(2mmol)を加えた。室温で3時間45分撹拌した後、NaHCO3100mg(1.19mmol)及び水10滴を更に加えた。更に1時間30分撹拌した後、混合液を還流した。還流して2時間後、減圧下でエタノールを除去し、水150mL及び酢酸エチル150mLを加えた。乳濁液ができ、これにNaCl(s)を2層に分離するまで加えた。有機層を分離し、水層を酢酸エチル150mLで2回洗浄した。これら3つの有機層をそれぞれ水100mLで別々に洗浄し、有機層を合わせ、無水NaSOにて乾燥した。これをフィルターを通して、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で濾過液から溶媒を除去し、反応粗製物336mgを得、これにフラッシュクロマトグラフィーを行なった。クロロホルム/酢酸エチル1:1混合液をクロマトグラフ分離の溶離液として用い、ここで関心のある生成物(8)98mgを得た。
【0087】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): 5.40-5.32 (1H, cs, CHONO2), 5.04-4.98 (1H, cs, CHCHONO2), 4.70-4.60 (3H, cs, 3CH), 4.36-4.26 (1H, cs, CHOH), 4.22-4.12 (2H, cs, 2H-CH), 4.10-4.00 (3H, cs, 3H-CH), 3.94-3.86 (2H, cs,2H-CH), 3.68-3.56 (3H, cs, 2CH-S, 1H-CH), 2.55 (1H, d, J=6.9 Hz, OH)
【0088】
赤外分光法(臭化カリウムペレット中): 3461 cm-1, 2987 cm-1, 1642 cm-1, 1465cm-1, 1279 cm-1, 1077 cm-1, 846 cm-1
微量分析:
実験値(%) : 39.53 C, 34.70 H, 4.77 Of 3.96 N, 17.04 S.
予測値 (%) : 39.23 C, 34.84 H, 4.66O, 3.81 N, 17.45 S.
質量分析:
電子スプレー: 368(M+1).
電子衝撃(m/z, (% 相対存在量) ): 367 (7.4) (M+), 261 (3.8), 160 (8.6), 129 (15.5), 127 (14.2), 85 (35.7), 69 (100)
【0089】
実施例9
工程1
2−チオイソソルビド(9)及び2,2‘−ジチオジイソソルビド(10)を得る方法
【化30】


500mLフラスコ中で、WO00/20420によって得られた2−アセチルチオイソソルビド(13)15g(74mmol)をエタノール225mLに溶解した。水酸化カリウム11.3gを水150mLに溶解した83%溶液を加えた。このようにして得られた混合液を室温で2時間撹拌し、酢酸(c)により中和し、減圧下でエタノールを除去した。この溶液を、水酸化ナトリウム(s)を加えて塩基性pHにし、バブリングにより空気を通じながら室温で撹拌した。溶液を塩酸(c)により酸性化し、pHを4にした。減圧下で水を除去し、生じた残留物をジクロロメタンに再び溶解し、フィルターを通し、無水NaSOにより乾燥した。溶液をフィルターに通し、洗浄し、減圧下で溶媒を除去し、反応粗製物9.22gを得、ジクロヘキサン/酢酸エチルからなる様々な混合液を溶離液として用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。溶出は、1:1混合液3Lから始め、その後、極性溶媒を増やし、次に3:5混合液2L、更に1:2混合液2L、最終的には、酢酸エチルのみで溶出した。溶出液から、チオール(9)2.64gと二硫化物(10)3.06gを分離した。
【0090】
2−チオイソソルビド(9)
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 4.68-4.58 (1H, cs, CHCHOH), 4.48-4.40 (1H, cs, CHCHSH), 4.34-4.18 (1H, bs, s.a. D2O, CHOH), 4.16-4.06 (1H, m, H-CHCHSH), 3.96-3.78 (2H, cs, H-CHCHOH, H-CHCHSH), 3.62-3.50 (1H, cs, 1H-CHCHOH), 3.48-3.36 (1H, cs, s.a. D2O, CHS), 2.80-2.60 (1H, bs, d.a. D2O, OH), 1.75 (1H, d, J=8 Hz, d.a. D2O, SH)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 90.42 (CHCHSH), 81.47 (CHCHOH), 76.27 (CH2CHSH), 74.00 (CH2CHOH), 72.04 (CHOH), 43.81 (CHSH)
【0091】
2,2‘−ジチオジイソソルビド(10)
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 4.68-4.56 (4H, cs, 2CHCHS, 2CHCHOH), 4.34-4.19 (2H, cs, s.a. D2O, 2CHOH), 4.19-3.97 (4H, cs, 2CH2CHS), 3.92-3.80 (2H, cs, 2H-CHCHOH), 3.66-3.52 (4H, cs, 2H-CHCHOH, 2CHS), 2.63 (2H, d, J=6.6 Hz, d.a. D2O, 2OH).
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 87.42 (2CHCHS), 81.98 (2CHCHOH), 73.93 (2CH2CHOH), 72.89 (2CH2CHS), 72.07 (2CHOH), 54.74 (2CHS)
【0092】
工程2
5,5‘−ジアセチルオキシ−2,2’−ジチオジイソソルビド(14)及び2−(5‘−アセチルオキシイソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート(11)を得る方法
【化31】


60%HNO31.8mLを、無水酢酸7.5mLと酢酸12.5mLの混合液に、ゆっくり注意しながら0℃下で加え、硫酸化混合液を調製する。還流冷却器、温度計、マグネティックスターラーを取り付けた100mLフラスコ中で、実施例8によって得られた2,2‘−ジチオ−ジイソソルビド(10)2.77g(8.6mmol)を酢酸17mLに溶解し、無水酢酸3.5mLを加えた。混合液を氷塩浴で0℃に冷却した。先程調製した硝酸化混合液4mLを1滴ずつ15分かけて加えた。これを0℃2時間撹拌し、反応粗製物の固化が観察された。この後、2時間30分室温で撹拌した。反応粗製物を水100mLに注ぎ、フィルターを通し、大量の水で洗浄した。得られた固体を減圧下でP存在下で乾燥した。これにより反応粗製物2.69gが得られ、分取逆相クロマトグラフィーで精製した。クロマトグラフィーの溶離液には、アセトニトリル:水の1:1混合液を用いた。二酢酸(R=COCH)の分画1.01g及び酢酸−硝酸(R=NO)の分画0.5gが得られた。
【0093】
5,5‘−ジアセチルオキシ−2,2’−ジチオジイソソルビド(14)
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 5.16-5.02 (2H, cs, 2CHOCO), 4.85-4.76 (2H, cs,2CH-O-C), 4.63-4.56 (2H, cs, 2CHOC), 4.17-4.05 (2H, cs, 2H-CH), 4.00-3.74 (6H, cs, 6H-CH), 3.56-3.48 (2H, cs, 2CHS), 2.09 (6H, s,CH3)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 170.27 (2CO), 87.73 (2CHCHS), 80.76 (2CHCHO), 73.79 (2CHO), 72.66 (2CH2CHS), 70.46 (2CH2CHO), 54.42 (2CHS), 20.63 (2CH3)
【0094】
2−(5‘−アセチルオキシイソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート(11)
1H-NMR (200 MHz, CDCl3): 5.37-5.28 (1H, cs, CHONO2), 5.18-5.06 (1H, cs, CHOCO), 5.02-4.94 (1H, cs, CHOC), 4.87-4.78 (1H, cs, CHOC), 4.64-4.56 (2H, cs, 2CHOC), 4.18-3.75 (8H, cs, 4CH2), 3.59-3.50 (2H, cs, 2CHS), 2.10 (3H, s, CH3)
13C-NMR (50 MHz, CDCl3): 170.29 (CO), 88.25 (CH), 87.43 (CH), 81.58 (CH), 81.16 (CH), 80.79 (CH), 73.80 (CH), 72.78 (CH2), 72.66 (CH2), 70.51 (CH2), 69.32 (CH2), 54.42 (CHS), 53.72 (CHS), 20.65 (CH3)
【0095】
質量分析:
化学イオン化法(NH3): 410 (M+1)+, 427 (M+18)+
【0096】
血管弛緩試験
本分析で用いた方法は、以下の参考文献に記載されたものとほぼ同じものである。
* Furchgot, R.F., “Methods in nitric oxide research”; Feelisch & Stamler, eds., John Wiley & Sons, Chichester, England, pp 567-581.
* Trongvanbichnam K., et al., Jpn. J. Pharmacol. 71 (1996); 167-173.
* Salas, E., et al., Eur. J. Pharmacol. 258 (1994); 47-55
【0097】
異なった化合物を、0.0001〜10mMの範囲における5種類の濃度で、6〜9個の動脈のリングについて測定した。得られた結果を、対照生成物として用いたイソソルビド5−モノニトレートと比較した。
【0098】
結果を下記表1にEC50(半数影響濃度)として示した。EC50とは、1μMのフェニレフリンにより収縮させた動脈のリングを最大の50%相当まで血管拡張させる、試験した各化合物の濃度である。
【0099】
【表1】

【0100】
表から分かるように、試験を行った全ての化合物は、対照生成物に比べてより血管弛緩能を有する。
【0101】
生体内血小板凝集阻害試験
本分析で用いた方法は、以下の参考文献に記載されたものとほぼ同じものである。
* Salas, E., et al., Br. J. Pharmacol. 112 (1994); 1071-1076
【0102】
化合物は、4種類の異なった濃度で、6人の異なった健常な供与者から採取した血小板を豊富に含む血漿を用いて試験した。得られた結果を、対照生成物として用いたイソソルビド5−モノニトレートと比較した。
【0103】
結果を下記表1にIC50(半数阻害濃度)として示した。IC50とは、最大下(submaximal)濃度(1〜4μM)のADPにより得られる凝集の50%相当に阻害する化合物の濃度である。(ADPの最大下濃度とは、最大の凝集を引き起こすADPの最小量である。)
【0104】
【表2】

【0105】
表2から分かるように、試験を行った全ての化合物は高い血小板阻害凝集活性を有し、これは対照化合物よりも優れている。
【0106】
ヒト単球及び血小板のヒト内皮細胞への接着阻害
血小板及び単球のヒト内皮細胞への接着に対する化合物の効果を測定するための分析で用いた方法は、以下の参考文献に記載されたものとほぼ同じものである。
Del Maschio A. et al., J Cell Biol 1996; 135: 497-510
Bombeli T. et al., Blood 1999; 93: 3831-3838
Colome C. et al; Atherosclerosis 2000; 149: 295 302
Martin-Satue M. et al; British Journal of Cancer 1999; 80: 1169-1174
【0107】
細胞接着の阻害効果の測定に用いた方法は、U937単球細胞のTNF−α(50ng/ml)により活性化されたコンフルエントのヒト微小血管内皮細胞(HMED−1)への接着、及び血小板へのヒト臍帯静脈内皮細胞への接着である。カルセインAM(Molecular Probes)により予め標識された単球のTNF−αにより活性化されたHMEC−1への接着を、細胞の発する蛍光を測定することにより調べた。抗CD36−FITCモノクローナル抗体により予め標識された洗浄ヒト血小板の活性化HUVEC(最小改変されたLDLを50μg/ml、LDLmm)への接着を、レーザー走査サイトメトリー(LSC、オリンパス)により細胞の発する蛍光を測定することにより測定した。結果は対照群(化合物の無い状況での細胞の接着)に対する阻害の割合として示した。表3はU937の活性化HMEC−1への接着に対する化合物の効果を示す。表4は血小板の活性化HUVECへの接着に対する化合物の効果を示す。
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
ヒト微小血管内皮細胞におけるLDLトランスサイトーシスの阻害
化合物のヒト微少血管内皮細胞におけるLDLトランスサイトーシスに対する効果を測定するための分析で用いられている方法は、文献Colome C. et al; Atherosclerosis 2000; 149: 295-302に記載されているものとほぼ同じものである。この試験により、化合物の抗動脈硬化能を予測することが可能となる。その理由は、血管内皮細胞の能動輸送の結果として起こる血管壁へのLDL蓄積は動脈硬化発症の最初の段階の一つだからである。
【0111】
LDL粒子を新鮮ヒト血漿から分離し、Dilにより標識する方法は、文献Pedreno J. et al., Atherosclerosis 2001; 155: 99-112及び文献Stephan Z. F. and Yuracheck E. C., J. Lipid Res 1993; 34: 325-330に記載されているものとほぼ同じものである。
【0112】
活性化した(ヒスタミン100μM)及び非活性化HMEC−1を共培養用インサート(inserted of coculture)の上側のウェルで、密集状態になるまで培養した。その後、LDL−Dil(最大200μg/ml)を加え、細胞を化合物存在下又は非存在下で2時間培養した。2時間後、LDL−Dil粒子の内皮細胞を通じてのトランスサイトーシスを蛍光の存在を測定することにより調べた。結果は対照群(化合物非存在下)に対する阻害の割合により示した。表5は化合物のHMEC−1と通じてのトランスサイトーシスに対する効果を示している。
【0113】
【表5】

【0114】
LDL酸化の阻害
化合物のLDL酸化に対する効果を測定する分析に用いる方法は、以下の参考文献に記載されたものとほぼ同じものである。
Spranger T., et al., Chem. Phys. Lipids 1998; 91: 39-52
Lynch S. M., et al., Biochim Biophys. Acta 2000; 1485: 11-22
Pedreno J., et al., Thromb. Res. 2000; 99: 51-60
【0115】
LDL粒子を新鮮ヒト血漿から分離する方法は、文献Pedreno J. et al., Atherosclerosis 2001; 155: 99-112に記載されたものとほぼ同じものである。
【0116】
低密度リポタンパク質の酸化修飾が、動脈硬化性新血管病の発症における中心的な事象であると現在信じられている。LDLを、循環赤血球中のヘモグロビン由来のでグロブリンを含まないヘミン(鉄イオン(Fe3+)とプロトポルフィリンIXの複合体)に暴露することにより、LDL酸化を促進する酸化促進剤Fe3+の生理的発生源となる。化合物を生体内に加え、ヘミン及び過酸化水素により引き起こされるLDL酸化の阻害活性を測定した。最終濃度0.2mg/mlのLDLをヘミン2.5μM及び過酸化水素5μM存在下で培養した。LDL粒子の酸化的飾を共役ジエンを測定することにより調べた。実験群の標本を37℃で培養し、234nmにおける吸収の増加を5分ごとに少なくとも5時間にわたって自動的に記録した。ヘミンにより引き起こされたLDL酸化に対する化合物の効果を7種類の濃度で、7人の健康な供与者からのLDL調製液を用いて試験した。表6に化合物の10μMでの阻害活性を、対照群に対する遅延時間(共役ジエンの形成反応が始まるのに要する時間)の増加割合として示す。
【0117】
【表6】

【0118】
血漿酸化の阻害
化合物の血漿酸化能に対する効果を測定する分析に用いる方法は、文献Spranger T. et al., Chem phys Lipids 1998; 91: 39-52に記載されたものとほぼ同じものである。
【0119】
生体内の血漿中におけるリポタンパク質の酸化は動脈壁内におけるリポタンパク質の酸化の重要なモデルを示すと考えられる。血漿リポタンパク質の酸化を、ヘパリン添加血漿の酸化能として調べ、234nmにおけるの吸収の増加としてスペクトロメトリーにより測定した。化合物を生体内に加え、Cu(CuSO)により誘導された血漿酸化能に対する阻害活性を測定した。ヘパリン添加血漿をNaClを0.16M含むリン酸緩衝生理食塩水溶液により希釈し、50μMのCuSOにより酸化を開始した。実験標本を37℃で培養し、15分ごとに少なくとも12時間にわたって、234nmにおける吸収の増加を自動的に記録した。Cuにより誘導された血漿酸化能に対する化合物の効果を、7人の異なった健常な供与者から得たヘパリン添加血漿を用いて、7種類の濃度で試験した。表7は化合物10μMの阻害活性を対照群に対する遅滞期の増加割合を示す。
【0120】
【表7】

【0121】
高コレステロール食を与えたウサギにおけるアテローム性動脈硬化に対しての予防及び治療効果
用いた方法は、文献Shore B, Shore V., In: Day CE (ed) Atherosclerosis Drug Discovery, Plenum Press, New York and London, pp 123-141, 1976に記載されたものとほぼ同じものである。
【0122】
21匹のオスのニュージーランド白ウサギ(プロトコル開始時に10週齢)を標準化した条件下(22℃、湿度40%〜60%)で、通常の昼・夜周期にて、水を自由に摂取できるようにして飼育した。動物を、3グループのうちの1つにランダムに割り振った。グループ1(n=5)には通常の維持食を75日間与えた。グループ2(n=16)には1%(wt/wt)コレステロールを追加した以外の点で同じ食事を45日間与えた。この期間の終わりに、グループ2を2つのグループにランダムに割り振った。治療グループ(n=9)は、化合物12を1.9mg/kg/日でその後の30日間投与し(食事は1%コレステロールを継続)、非治療グループ(n=7)は1%コレステロールを加えた食事をその後30日間与えた。
【0123】
研究対象とする変数には、トリグリセリド及び総コレステロールがある。動物は、プロトコル開始から75日の時点で、ペントバルビタールを静脈注射して安楽死した。全大動脈を腸骨動脈に1又は2cm入ったところで摘出し、グルタールアルデヒド(4%)を含む0.1Mのリン酸バッファー(pH7.4)で固定した。標本の肉眼的及び顕微鏡的分析を盲検にて行った。大動脈を解剖し、オイルレッドにて染色した。外膜の脂肪を除去し、動脈を長手方向に切開し、オイルレッド溶液に一晩浸し、プロピレングリコールで洗浄して平面に固定した。大動脈の写真を標準のカメラで撮影した。その後、大動脈弓部、胸部大動脈、腹部大動脈から3つの部分を取り出した。これらの部分を、パラフィンに補上手いし、ミクロトームウルトラカット(スペイン)で切り、ヘマトキシリンエオジンにて通常の方法で染色した。オイルレッド及びヘマトキシリンエオジンにて染色した大動脈の写真を通常のカメラにて撮影した。写真をAGFAスライドスキャナを用いてフォトショップ(アドビ)に取り込んだ。Little RD(Little, R.D., 1994, Stain Technology, vol. 19, pp 55)により以前に記載された方法により、全ての動脈の傷害部位の表面、及び組織学標本における大動脈内膜の厚さを測定した。アテローム性動脈硬化による傷害の表面又は領域(オイルレッドで染色した大動脈で評価)を写真のピクセル数をmm2に変換して測定した。大動脈の内膜の厚さ(ヘマトキシリンエオジンにて染色した組織学的標本において評価)を、アテローム性動脈硬化による傷害の表面又は領域について記載したのと同様の方法で、mmにて定量した。このために、脂肪線条による傷害を有する部分を選び、内膜の厚さを測定した(動脈中膜〜内膜)。傷害領域の平均の厚みを各部分で大動脈4分の1周について計測し、統計的な平均を算出した。空腹時の血漿総コレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリドレベルを表8に示す。統計的な検定(スチューデントt)により、血漿の脂質については、治療グループと対照グループ(治療はしなかったが、高コレステロールを与えたグループ)とでは有意な差がないことが示された。
【0124】
【表8】

【0125】
アテローム性動脈硬化病変により被覆された領域の割合を表9に示す。
【0126】
【表9】

【0127】
大動脈の内膜層の厚みを表10に示す。
【0128】
【表10】

【0129】
表8において、対照グループと治療グループでは血漿の脂質に違いがないことが示されており、化合物(12)は脂質代謝に影響を及ぼさないことが示されている。表9及び表10に見るように、アテローム性動脈硬化病変の領域の割合及び内膜の厚さは、対照グループに比べて、化合物(12)で治療したグループにおいては、有意に減少していた。
【0130】
アポE欠損マウスにおけるアテローム発生に対する予防及び治療効果
化合物のアテローム発生に対する予防及び治療効果も、以下の標本を用いて示す。
【0131】
化合物のアテローム発生に対する予防及び治療効果をアポE欠損マウスにおいて通常の食事モデルで調べた。オス及びメスの月齢3ヶ月のアポE欠損マウス(OLA129X C57/BL6J)に通常の食事を与えた。対照グループには8匹のオス及び7匹のメスが含まれ、治療グループは8匹のオス及び7匹のメスから成る。実験開始時点では、全ての動物は同様のコレステロール及び体重であった。対照グループ及び治療グループを12週にわたって研究した。治療グループには、化合物(12)を5mg/kg/日で投与した。
【0132】
血漿脂質パラメーター(総コレステロール、HDLコレステロール及びトリグリセリド)及び酸化ストレス(8−イソ−プロスタグランジンF2αレベルとして測定)を所定の間隔をおいて測定した。投与期間終了後、胸部大動脈を取り出して染色し、オイルレッド法(Little, R.D., 1994, Stain Technology, vol. 119, pp 55)に従い、血管内壁に沈着したアテローム性動脈硬化による傷害の領域を測定した。
【0133】
総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドの及び8−イソ−プロスタグランジンF2αレベルの空腹時における血漿レベルを表11に示す。
【0134】
【表11】

【0135】
血管内壁のアテローム性動脈硬化病変に被覆された領域の割合及びマクロファージにより被覆された領域を表12に示す。
【0136】
【表12】

【0137】
表11において、化合物(12)はこれらの動物においてトリグリセリドレベルを減少させると同時に、酸化ストレスを減少させることが示されている。表12では化合物(12)により、アテローム性動脈硬化病変の領域及びマクロファージにより被覆された領域がどれほど減少するかが示されている。
【0138】
生体内抗血栓効果
用いた方法は、Kurz (Kurz K.D., et al., Thromb. Res. 1990, 60: 269-280)により記載され、Feuerstin (Feuerstein G.Z., et al., Artherioscler. Thromb. Vasc. Biol. 1999, 19: 2554-25562)により改変されたものとほぼ同じものである。
【0139】
ラットに、化合物を100mg/Kgにて、経口で1回投与した。
【0140】
投与してから45分後に、ラットにナトリウムペントバルビタール(40mg/kg、腹腔内注射)で麻酔をかけた後、温めた(37℃)手術台に仰臥位で設置した。
【0141】
左頸動脈を剥離し、パラフィルムMシート(7×20mm、American National Can)をその下に設置した。電磁探査血流計(Transonic Systems Inc.)を、血流を測定するために動脈に設置した。
【0142】
生成物を投与してから60分後に、FeCl溶液(70%)を染み込ませた紙パッチを左頸動脈の探査血流計より下流に設置し(全実験時間にわたって取り外さなかった)、血栓形成を開始させた。動脈にパッチを設置してから60分間、血流を調節した。
【0143】
血流が検出されなくなった時点(0.0ml/min)で、血栓形成により血管が完全に閉塞したと判断した。このモデルでは、治療しなかった動物において血栓は通常15〜20分で形成された。調べた時間(FeCl持続パッチを設置してから60分)内に血栓により血管が閉塞されなかった場合には、治療により動物は完全に保護されたと判断した。
【0144】
結果を表13に、治療により完全に保護された動物の割合として示す。
【0145】
【表13】

【0146】
表13に観察されるように、試験した全ての化合物は強い生体内抗血栓活性を有する。
【0147】
生体内における抗血栓相乗効果
用いた方法は、Kurz (Kurz K.D., et al., Thromb. Res. 1990, 60: 269-280)により記載され、Feuerstin (Feuerstein G.Z., et al., Artherioscler. Thromb. Vasc. Biol. 1999, 19: 2554-25562)により改変されたものとほぼ同じものである。
【0148】
ラットに、1種類の化合物又は2種類の化合物の組み合わせを、表14に記載されているように経口で1回投与した。用いた化合物の投与量は、動物の血圧及び心拍数を変化させるものではなかった。
【0149】
投与してから45分後に、ラットにナトリウムペントバルビタール(40mg/kg、腹腔内注射)で麻酔をかけた後、温めた(37℃)手術台に仰臥位で設置した。
【0150】
左頸動脈を剥離し、パラフィルムMシート(7×20mm、American National Can)をその下に設置した。電磁探査血流計(Transonic Systems Inc.)を、血流を測定するために動脈に設置した。
【0151】
生成物を投与してから60分後に、FeCl溶液(70%)を染み込ませた紙パッチを左頸動脈の探査血流計より下流に設置し(全実験時間にわたって取り外さなかった)、血栓形成を開始させた。動脈にパッチを設置してから60分間、血流を調節した。
【0152】
血流が検出されなくなった時点(0.0ml/min)で、血栓形成により血管が完全に閉塞したと判断した。このモデルでは、治療しなかった動物において閉塞血栓は通常15〜20分で形成された。調べた時間(FeCl持続パッチを設置してから60分)内に血栓により血管が閉塞されなかった場合には、治療により動物は完全に保護されたと判断した。
【0153】
フラクショナル・プロダクト・コンセプト(fractional product concept)を用いて、化合物間の相乗効果を同定した。この考え方に従えば、動物の完全な保護を次のようにみなした。
【数1】


ここで、Aは治療グループにおける血栓閉塞を生じた動物の割合であり、Bは対照グループにおける血栓閉塞を生じた動物の割合である。
【0154】
2種類の独立に作用する薬物については、次のようである。
【数2】


ここで、A1は治療グループA1における血栓閉塞を生じた動物の割合であり、A2は治療グループにおける血栓閉塞を生じた動物の割合であり、Bは対照グループにおける血栓閉塞を生じた動物の割合である。
【0155】
薬物を組み合わせる事による保護が、2種類の薬物を別々に作用させたときの阻害率よりも高かった場合には、相乗効果があったと考える。
【0156】
結果を表14に各グループにおける血栓閉塞を生じた動物の割合として示す。
【0157】
【表14】

【0158】
【数3】


2種類の薬物(アセチルサリチル酸+化合物12)を組み合わせることにより保護された動物の割合は75パーセント以上(ここでは100%)であり、2種類の化合物の間には相乗効果がある。
【0159】
【数4】


2種類の薬物(クロピドロゲル+化合物12)を組み合わせることにより保護された動物の割合は75パーセント以上(ここでは83%)であり、2種類の化合物の間には相乗効果がある。
【0160】
HUVEC細胞においてXTTに基づく方法を用いての、酸素ラジカルにより引き起こされる細胞毒性に対するインビトロの保護
用いた方法はCaveda L., et al (J. Clin. Invest. 1996; 98: 886-893)に記載されているものとほぼ同じものである。
【0161】
酸素ラジカルにより引き起こされる細胞毒性の阻害能を測定するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVED)を用いた。HUVECはM199及び20%FCS(胎児ウシ血清)中で分離し培養した。
【0162】
XTT試験は、代謝の活発な細胞によるXTTテトラゾリウム塩を加水分解して橙色の生成物を形成する反応に基づくものであり、このフォルマザン色素は可溶性でスペクトロメータにより直接定量できる。
【0163】
HUVEC細胞を96ウェル組織培養プレートで準密集状態まで培養し、50μMの化合物で1時間前処理した。この後、細胞を800μMの過酸化硝酸で1晩処理した。
【0164】
1晩処理した後、細胞を黄色のXTT溶液(最終濃度0.3mg/ml)中で4時間培養した。この培養時間の後、橙色のフォルマザン溶液ができ、この溶液を450nmでELISAプレートリーダを用いて分光光度法により定量した。
【0165】
結果を表15に死細胞の割合として示した。
【0166】
【表15】

【0167】
表15に見られるように、試験した化合物は全て、酸素ラジカルにより引き起こされる細胞障害に対する細胞保護活性(p<0.05)を有する。
【0168】
生体内における心臓での虚血再還流後障害
実験は、Hirata Y et al (Journal of Cardiovascular Pharmmacology. 1998, 31: 322-326)らにより以前に記載されたモデルに従い行った。
【0169】
6時間の絶食期間の後、動物を少なくとも8匹が各々に含まれるグループに分けた。生成物を虚血を引き起こす約1時間前に経口にて投与した。動物にペントバルビタール(40mg/kg、腹腔内注射)により麻酔をかけ、標準肢誘導II心電図を記録しS波の低下を検出した。0.3U/kgアルギニン−バソプレシン(AVP)(Sigma Chemicals、)を頸動脈に注射し、小さな冠動脈に血管収縮を引き起こさせ、冠動脈抵抗を増加させた。全てのグループで、AVPは試験薬物の投与から60分後に投与した。全てのグループで、AVPを注射してから10分後に心電図記録を行った。
【0170】
結果を表16にS波の低下(μVolts)として示した。
【0171】
【表16】

【0172】
表16に見られるように、試験した全ての化合物は、心臓における虚血再還流後の障害を防ぐ。
【0173】
スキーム1

【0174】
スキーム2

【0175】
スキーム3

【0176】
スキーム4




【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)記載の化合物、又はその互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物であって、
【化1】


ここで、
nは0、1、又は2の整数であり、
Xは、−S(O)m−、−(C=O)−、又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、但し、Xが−(C=O)−である場合には、nは0であり、
Rは水素又は残基Rを示し、Rは、
1−6アルキル;
2−6アルケニル;
3−8シクロアルキル;
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されているもの;
4−8シクロアルケニル;
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH又はNCHにより置換されているもの;
フェニル;
ピリジル;
チオフェニル;
ニトロシル;
S−システイニル;
S−グルタチオニル;および
【化2】


からなる群から選択され、
ここで、Rは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここで、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換され、
但し構造式(I)の化合物において、構造式(Ia)及び(Ib):
【化3】


に示すように、RXS(O)n−及び−ONOが環平面について互いにトランスにある場合には、RXS(O)n−は
【化4】


ではなく、ZはC−Cアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるのが好ましい、上記化合物。
【請求項2】
m及びnの双方又はいずれか一方が0である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが単結合又は−S−である、請求項1〜2のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項4】
Rが水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、(C1−6アルキル)C3−8シクロアルキル、(C1−6アルキル)C4−8シクロアルケニル、フェニル、(C1−6アルキル)フェニル、5−アセチルオキシイソソルビド−2−イル、5−ヒドロキシイソソルビド−2−イル、又は5−ニトラートイソソルビド−2−イルである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
RがC1−6アルキルである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
構造式(Ic)又は(Id)に記載の化合物である、
【化5】


請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド、
2−メチルチオイソソルビド5−モノニトレート、
2−[(R)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−[(S)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−メチル−スルフィニルイソソルビド5−モノニトレート、
2−メチルスルフォニルイソソルビド5−モノニトレート、
S−ニトロソ−2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
2−(テトラヒドロピラン−2−イル−チオ)イソソルビド5−モノニトレート、
2−(イソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート、及び
2−(5’−アセチルオキシイソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレートから選択された、請求項1〜6のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
任意の1種類以上の生理的に許容される賦形剤、活性化剤、キレート剤及び/又は安定化剤の一つ又はそれ以上と共に、請求項1〜7の化合物のいずれか1つに記載の化合物の少なくとも一つを有効成分として含む薬学的な組成物。
【請求項9】
更に血栓溶解薬、好ましくはプラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ又はアニストレプラーゼを含む、請求項8記載の薬学的な組成物。
【請求項10】
更に抗凝固剤、好ましくはヘパリン、ジクマロール、アセノクマロール、エノキサパリン又はペントサンポリ硫酸を含む、請求項8又は9に記載の薬学的な組成物。
【請求項11】
更に抗血栓薬剤、好ましくはアセチルサリチル酸、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドロゲル、トリフザール、ペントサンポリ硫酸又はアブシキマブを含む、請求項8〜10のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項12】
更に糖蛋白質IIb/IIIaに特異的な免疫グロブリンまたはその断片を含む、請求項8〜11のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項13】
更に抗高脂血症薬、好ましくはシンバスタチン、ロバスタチン、アトロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、エプタスタチン、リフィブロール、アシフラン、アシテメート、グルニカート、又はロスバスタチンを含む、請求項8〜12のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項14】
更に抗酸化剤/フリーラジカルスカベンジャー薬剤、好ましくはニカラベン、ラノラジン、エモキシピン、グルタチオン、エダラボン、ラキソフェラスト、リコペン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−D−システイン、N−アセチル−L−システインとN−アセチル−D−システインのラセミ混合物、又はカルベジロールを含む、請求項8〜13のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項15】
アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、血管攣縮、心臓同種移植後血管障害、循環器系機能不全、血小板活性化、血栓症、脳卒中、酸化ストレスがその発症に重要な役割を果たす病態、NOの不足がその発症に重要な役割を果たす病態、及び/又は虚血及び/又は虚血再潅流による組織損害を、治療及び/又は予防するための、請求項8〜14のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項16】
酸化ストレスがその発症に重要な役割を果たす病態がアレルギー、脳卒中、アルツハイマー病、及び虚血性心疾患の中から選択される、請求項15記載の薬学的な組成物。
【請求項17】
循環器系の機能不全、好ましくは心血管及び/又は冠状動脈機能不全を、治療及び/又は予防するための、請求項8〜14のいずれか1つに記載の薬学的な組成物。
【請求項18】
構造式(I)の化合物、その互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物のうち少なくとも1つの使用方法であって、
【化6】


ここで、nは、0、1又は2の整数であって、
Xは、−S(O)m−、−(C=O)−又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、但し、Xが−(C=O)−である場合にはnは0であり、
Rは水素又は残基Rを示し、Rは、
1−6アルキル、
2−6アルケニル、
3−8シクロアルキル、
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
4−8シクロアルケニル、
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
フェニル、
ピリジル、
チオフェニル、
ニトロシル、
S−システイニル及び
S−グルタチオニル;および
【化7】


からなる群から選択され、
ここでRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換されるものである上記化合物の、
アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、血管攣縮、心臓同種移植後血管障害、循環器系機能不全、血小板活性化、血栓症、脳卒中、酸化ストレスがその発症に重要な役割を果たす病態、NOの不足がその発症に重要な役割を果たす病態、及び/又は虚血及び/又は虚血再潅流による組織損害を、治療及び/又は予防するための医薬品組成物を製造するための有効成分としての使用。
【請求項19】
構造式(I)の化合物の少なくとも1つ
【化8】


又はその互変異性体、その薬学的に許容できる塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物の、アテローム性動脈硬化症、内皮機能不全、血管攣縮、心臓同種移植後血管障害、血小板活性化、血栓症、脳卒中、酸化ストレスがその発症に重要な役割を果たす病態、NOの不足がその発症に重要な役割を果たす病態、及び/又は虚血及び/又は虚血再潅流による組織損害を、治療及び/又は予防するための活性成分としての使用方法であって、該方法は、
前記化合物、又はその互変異性体、その薬学的に許容できる塩、そのプロドラッグまたはその溶媒和化合物を必要な患者に投与することを含み、
ここで:
nは、0、1又は2の整数であって、
Xは、−S(O)m−、−(C=O)−又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、但し、Xが−(C=O)−である場合にはnは0であり、
Rは水素又は残基Rを示し、その残基Rは、
1−6アルキル、
2−6アルケニル、
3−8シクロアルキル、
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
4−8シクロアルケニル、
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
フェニル、
ピリジル、
チオフェニル、
ニトロシル、
S−システイニル及び
S−グルタチオニル;および
【化9】


からなる群から選択され、
ここでRは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換されるものである、上記使用方法。
【請求項20】
m及びnの双方又はいずれか一方が0である、請求項18又は請求項19記載の使用方法。
【請求項21】
Xが単結合又は−S−である、請求項18〜20のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項22】
Rが水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、(C1−6アルキル)C3−8シクロアルキル、(C1−6アルキル)C4−8シクロアルケニル、フェニル又は(C1−6アルキル)フェニルである、請求項18〜21のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項23】
RがC1−6アルキルである、請求項18〜22のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項24】
構造式(I)に記載の化合物が構造式(Ic)又は(Id)
【化10】


に記載の化合物である、請求項18〜23のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項25】
構造式(I)に記載の化合物が、
2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド、
2−メチルチオイソソルビド5−モノニトレート、
2−[(R)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−[(S)メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、
2−メチル−スルフィニルイソソルビド5−モノニトレート、
2−メチルスルフォニルイソソルビド5−モノニトレート、
S−ニトロソ−2−チオイソソルビド5−モノニトレート、
2−(テトラヒドロピラン−2−イル−チオイソソルビド5−モノニトレート、
2−(イソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート、及び
2−(5’−アセチルオキシイソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレートから選択される、請求項18〜24のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項26】
化合物が、以下の構造式
【化11】


により示される2−アセチルチオイソソルビド5−モノニトレートである、請求項18又は19に記載の使用方法。
【請求項27】
医薬品組成物が更に血栓溶解薬、好ましくはプラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ又はアニストレプラーゼを含む、請求項18〜26のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項28】
医薬品組成物は更に抗凝固薬、好ましくはヘパリン、ジクマロール、アセノクマロール、エノキサパリン又はペントサンポリ硫酸を含む、請求項18〜27のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項29】
医薬品組成物は更に抗血栓薬、好ましくはアセチルサリチル酸、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドロゲル、トリフザール、ペントサンポリ硫酸又はアブシキマブを含む、請求項18〜28のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項30】
医薬品組成物は更に糖蛋白質IIb/IIIa特異的な免疫グロブリンまたはその断片を含む、請求項18〜29のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項31】
医薬品組成物は更に抗高脂血症薬、好ましくはシンバスタチン、ロバスタチン、アトロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、エプタスタチン、リフィブロール、アシフラン、アシテメート、グルニカート、又はロスバスタチンを含む、請求項18〜30のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項32】
医薬品組成物は更に抗酸化剤//フリーラジカルスカベンジャー薬剤、好ましくはニカラベン、ラノラジン、エモキシピン、グルタチオン、エダラボン、ラキソフェラスト、リコペン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−D−システイン、N−アセチル−L−システインとN−アセチル−D−システインのラセミ混合物、又はカルベジロールを含む、請求項18〜31のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項33】
酸化ストレスがその発症に重要な役割を果たす病態が、アレルギー、脳卒中、アルツハイマー病及び虚血性心疾患から選択された、請求項18〜32のいずれか1つに記載の使用方法。
【請求項34】
構造式(I)の化合物、その互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物を調製する製造方法であって、
【化12】


ここで:
nは、0、1又は2の整数であり、
Xは、−S(O)m−、又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、
Rは水素又は残基Rを示し、その残基Rは、
1−6アルキル、
2−6アルケニル、
3−8シクロアルキル、
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
4−8シクロアルケニル、
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH、NCH3により置換されたもの、
フェニル、
ピリジル、
チオフェニル、
ニトロシル、
S−システイニル及び
S−グルタチオニル;および
【化13】


からなる群から選択され、
ここで、Rは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換され、
この製造方法は以下の;
(a)構造式(IIa)の化合物を加水分解し、
【化14】


ここで、R’はC−Cアルキル、好ましくはメチルであって、
以下の化合物
【化15】


を得る工程;および、
(b)任意であるが、工程(a)により調製した化合物において以下を達成する工程、
I.酸化反応を行い、以下の化合物
【化16】


を得る工程:
任意であるが、引き続いての2回目の酸化反応により、以下の化合物を得る工程であって、
【化17】


ここで:
nは1、2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2であり、
はヒドロキシル又はONOである、当該工程;
II.置換反応を行なって構造式(I)記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは単結合であり、
Rはニトロシルではなく、
任意であるが、引き続いての酸化反応により、構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0又は1であり、
Rはニトロシルではない、当該工程;
III.置換反応により構造式(I)記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S−であって、
任意であるが、引き続いての酸化反応により、構造式(I)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数1又は2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2である、当該工程、または
IV.ニトロソ化反応により以下の化合物
【化18】


を得る工程である当該工程;
を含む上記製造方法。
【請求項35】
構造式(Ia)の化合物、その互変異性体、その薬学的に許容できる塩、そのプロドラッグ又はその溶媒和化合物を調製する製造方法であって、
【化19】


ここで:
nは、0、1又は2の整数であり、
Xは、−S(O)m−、又は単結合であり、mは0、1又は2の整数であり、
Rは水素又は残基Rを示し、該残基Rは、
1−6アルキル、
2−6アルケニル、
3−8シクロアルキル、
3−8シクロアルキルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
4−8シクロアルケニル、
4−8シクロアルケニルで、CH基の1つがO、S、NH、NCHにより置換されたもの、
フェニル、
ピリジル、
チオフェニル、
ニトロシル、
S−システイニル、
S−グルタチオニル;および
【化20】


からなる群から選択され、
ここで、Rは、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より選択され、
ここでRは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−8シクロアルキル、C4−8シクロアルケニル、アセチルオキシ、ヒドロキシル、ONO及びハロゲンからなる群より独立に選択された1から3個の官能基によって任意で置換され、
且つここで前記工程は以下の、
(a)構造式(II)の化合物を加水分解し、
【化21】


ここで、R’はC1−6アルキル、好ましくはメチルであって、
2−チオイソソルビド5−モノニトレート(1)
【化22】


を得る工程、および
(b)任意であるが、工程(a)により調製した化合物(1)において以下を達成する工程、:
I.酸化反応を行ない、以下の化合物:
5,5’−ジニトラート−2,2’−ジチオジイソソルビド(2)又は2−(イソソルビジル−2’−ジチオ)イソソルビド5−モノニトレート(8)、
を得る工程、
任意であるが、引き続いての2回目の酸化により、構造式(Ie)に記載の化合物を得る工程であって、
【化23】


ここで:
nは1又は2であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは0、1又は2であり、
はヒドロキシル又はONOである、当該工程;
II.置換反応により構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは単結合で、
Rはニトロシルではなく、
任意であるが、引き続いての酸化により、構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S(O)m−であり、ここでmは整数0又は1であり、
Rはニトロシルではない、当該工程、
III.置換反応により構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数0であり、
Xは−S−であり、
任意であるが、引き続いての酸化により、構造式(Ia)に記載の化合物を得る工程であって、ここで:
nは整数1又は2であり、
Xは−S(O)m−で、ここでmは0、1又は2である、当該工程;または
IV.ニトロソ化反応により、S−ニトロソ2−チオイソソルビド5−モノニトレート(6)を得る当該工程、
を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
2−[(R)−メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレート、及び/又は2−[(S)−メチルスルフィニル]イソソルビド5−モノニトレートを調製するための工程(a)及び(b)IIを含む、請求項34又は35に記載の製造方法。
【請求項37】
両方のジアステレオマーを分離する工程を含む、請求項35に記載の製造方法。
【請求項38】
構造式(11)の化合物またはその互変異性体、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグまたはその溶媒和化合物を調製する製造方法であって、
【化24】


(a)構造式(III)の化合物の酸化を行ない、
【化25】


ここでR’はC−Cアルキル、好ましくはメチルであり、
2,2’−ジチオジイソソルビド(10)
【化26】


を得る工程、および
(b)無水カルボン酸、好ましくは無水酢酸存在下でニトロ化剤により工程(a)で調製した化合物をニトロ化する反応を行なう工程、
を含む、上記製造方法。
【請求項39】
2,2’−ジチオジイソソルビド。

【公開番号】特開2011−12081(P2011−12081A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228789(P2010−228789)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2006−530042(P2006−530042)の分割
【原出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(501140360)レイサー ソシエダッド アノニマ (2)
【Fターム(参考)】