説明

生ゴミ処理装置

【課題】本発明は、生ゴミおよび微生物が収容される分解処理槽内の酸素濃度、温度および湿度を調整することにより、微生物の活動を活性化させて分解処理能力を向上させることが可能な生ゴミ処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】微生物によって生ゴミ68を分解させる生ゴミ処理装置10であって、生ゴミ68および微生物が収容される分解処理槽24と、該分解処理槽24内の空気を循環させる循環経路50と、空気中の酸素濃度を高めて微生物の活動を活性化させるための酸素発生器58とを備え、前記分解処理槽24には、投入された生ゴミ68を攪拌させる攪拌手段30があり、前記循環経路50には、空気を循環させるための送風機52と、空気の温度調整および除湿を行うための冷却器54および加熱器56とがあることを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物によって生ゴミを分解処理する生ゴミ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生ゴミの処理に関する技術や生ゴミの処理装置が多数開発されている。生ゴミの処理方法としては、例えば、生ゴミが収容される分解処理槽内を加熱・攪拌して微生物の活性化を促すことにより、生ゴミを分解させて堆肥化させるもの(例えば、特許文献1参照。)や、生ゴミを水と二酸化炭素とに分解消滅させるもの(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
【特許文献1】特開平9−314115号公報
【特許文献2】特開2000−354849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、生ゴミを分解消滅させる方式の生ゴミの処理方法においては、微生物が生ゴミを分解する過程において、熱、水および二酸化炭素が発生する。そのため、分解処理槽内は、温度および湿度が高くなり、空気の酸素濃度が低下してしまう。その結果、分解処理槽内の微生物の分解処理能力が低下し、生ゴミの分解に時間がかかってしまうという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点を鑑み、生ゴミおよび微生物が収容される分解処理槽内の酸素濃度、温度および湿度を調整することにより、微生物の活動を活性化させて分解処理能力を向上させることが可能な生ゴミ処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、微生物によって生ゴミを分解させる生ゴミ処理装置であって、生ゴミおよび微生物が収容される分解処理槽と、該分解処理槽内の空気を循環させる循環経路と、空気中の酸素濃度を高めて微生物の活動を活性化させるための酸素発生器とを備え、前記分解処理槽には、投入された生ゴミを攪拌させる攪拌手段があり、前記循環経路には、空気を循環させるための送風機と、空気の温度調整および除湿を行うための冷却器および加熱器とがあることを特徴とした。
【0006】
これにより、生ゴミと微生物とが収容される分解処理槽内の空気の酸素濃度、温度および湿度を、微生物が活動するのに最適なものに調整することができる。その結果、微生物による生ゴミの分解処理能力を安定して維持させることができ、生ゴミを迅速に分解させることができる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1に記載の発明において、前記酸素発生器によって空気中の酸素濃度が25〜35%まで高められることを特徴とした。
【0008】
これにより、分解処理槽内の空気の酸素濃度を、微生物の活動に好適なものとすることができる。また、空気中の酸素濃度を10%前後高めるだけなので、安価な酸素発生器を用いることができ、生ゴミ処理装置の製造コストを抑えることができる。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、冷却器および加熱器によって分解処理槽内の温度が25〜30℃に調整されることを特徴とした。
【0010】
従来の装置(40℃前後)よりも常温に近い温度で分解処理槽内が調整されるので、冷却器および加熱器による温度の調整を少なくすることができ、生ゴミ処理装置のランニングコストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、生ゴミと微生物とが収容される分解処理槽内の空気の酸素濃度、温度および湿度を微生物を活動させるのに最適なものに調整することができる。そのため、微生物による生ゴミの分解処理能力が高まり、生ゴミを迅速に分解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10の構成を概念的に示す構成図であり、図3は、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10を示す正面図であり、図4は、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10を示す側面図である。
【0013】
本実施形態の生ゴミ処理装置10は、木材チップ等の菌床70を充填した分解処理槽24に生ゴミ68を投入し、菌床70を攪拌しながら微生物によって生ゴミを水と二酸化炭素に分解消滅させるものである。図1や図3、図4に示すように、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10は、装置本体12の上部に蓋14があり、装置本体12の下部にキャスター等の移動手段16が取り付けられた箱型のものである。生ゴミ処理装置10は、中心に分解処理槽24を有し、その周りに循環経路50が配置されている。
【0014】
図2に示すように、分解処理槽24は、生ゴミ68および微生物を着床させた菌床70が収容される空間であり、上部には生ゴミを投入するための投入口18が設けられている。投入口18には、蓋14が取り付けられており、該蓋14は、板体20と把手22とを備えている。板体20は、前記投入口18を塞ぐものである。板体20の周縁部にはパッキン等の密閉手段(図示せず)が備えられ、投入口18が板体20によって塞がれた際に、分解処理槽24内の空気が外部に漏れるのを防止する。蓋14は、図示しない蝶番等の公知の手段によって装置本体12に取り付けられており、使用者は、把手22をつかんで蓋14を上下させることにより、生ゴミ処理装置10の投入口18を開閉させることができる。
【0015】
本実施形態の生ゴミ処理装置10では、生ゴミ68を分解消滅させる微生物として、5〜30℃の温度で活動する微生物が用いられている。そのため、微生物が人体(35〜40℃)に付着しても活動する危険性はない。
また、微生物を着床させる菌床70としては、微生物が着床できる多数の微細孔を持ち、微生物によって分解されにくく、攪拌による消耗の少ないものが好ましい。具体的には落葉樹から得た木材チップ、籾殻等が適している。
【0016】
図4に示すように、分解処理槽24の底部は、下に凸形状の半円の断面形状を有する半円筒状に形成されている。また、図2に示すように、分解処理槽24の下部には、生ゴミ68および菌床70を攪拌させるための攪拌手段30が取り付けられている。
【0017】
攪拌手段30は、攪拌部材32と駆動装置34とに大別される。攪拌部材32は、棒状の回転軸36に攪拌羽根38が取り付けられて構成されており、駆動装置34は、図4に示すように、モータ40と、モータ40の駆動軸に装着される小歯車42と、攪拌部材32の回転軸36に装着される大歯車44と、小歯車42よび大歯車44に張設されるベルト46とを備えている。
【0018】
攪拌部材34は、分解処理槽24の対向する側面の下方に架け渡され、分解処理槽24の側方に配置された駆動装置34によって回転させる。また、本実施形態に係る分解処理槽24の底部が反円筒状に形成されているため、攪拌部材34を回転させることにより分解処理槽24に収容された生ゴミ68および菌床70を満遍なく攪拌させることができる。
【0019】
図2や図3に示すように、分解処理槽24の側面上方には、分解処理槽24内の空気を吸い出すための空気排出口26と、吸い出された空気を分解処理槽24内に戻すための空気供給口28とが設けられている。そして、前記空気排出口24と空気供給口28とを連通させるように循環経路50が分解処理槽24の回りに設けられている。循環経路50は、分解処理槽24内の空気が吸い出されて、該空気の酸素濃度、温度および湿度が調整される空間であり、循環経路50において調整された空気は、空気供給口28から再び分解処理槽24に戻される。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る循環経路50には、上流から順に、送風機52、冷却器54、加熱器56および酸素発生器58が配置されている。
【0021】
送風機52を駆動させると、分解処理槽24内の空気は、空気排出口26から吸い出されて循環経路50に送り込まれる。そして、循環経路50に送り込まれた空気は、循環経路50を通って、空気供給口28から再び分解処理槽24に戻される。
【0022】
冷却器54および加熱器56は、循環経路50を通る空気の温度を調整するのに使用される。また、冷却器54は、空気の除湿にも使用され、循環経路50の冷却器54が配置される領域には、除湿によって発生する水分を生ゴミ処理装置の外部に排出するための排水口60が設けられている。
【0023】
酸素発生器58は、空気中の酸素を濃縮させることができるものであり、空気中の酸素濃度(約21%)を25〜35%程度に濃縮させることができる。空気中の酸素濃度を10%前後高めるだけなので、安価な酸素発生器を用いることができ、生ゴミ処理装置10の製造コストを安価に抑えることができる。
【0024】
以下、図2を参照しながら、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10の作用について説明する。生ゴミ処理装置10の蓋14が開放され、投入口18から生ゴミ68が投入されると、生ゴミ68は分解処理槽24に収容される。このとき分解処理槽24内の攪拌部材34は、駆動装置34によって回転されており、生ゴミ68と菌床70とが攪拌され混合される。その後、分解処理槽24に投入された生ゴミ68は、微生物によって二酸化炭素と水とに分解され、熱を発生する。生ゴミ68が分解される際も、攪拌手段30は駆動されており、菌床70内には、微生物を活性化させるための空気が取り入れられ、かつ、生ゴミ68の分解によって生じた水分が空気中に逃がされる。その結果、分解処理槽24内の空気は、生ゴミ68の分解によって二酸化炭素が増加するため酸素濃度が低下し、分解によって生じる水分および熱により湿度および温度が上昇する。
【0025】
本実施形態に係る生ゴミ処理装置10では、分解処理槽24の空気が、送風機52によって空気排出口26から循環経路50に送り込まれる。このとき、空気排出口26に取り付けられたフィルター62によって、空気中に含まれる埃等が取り除かれる。
【0026】
その後、循環経路50に送り込まれた空気は、冷却器54および加熱器56により、所望の温度に調整される。本実施形態の生ゴミ処理装置10では、分解処理槽24に温度センサ(図示せず)が取り付けられており、分解処理槽24内の雰囲気温度が27℃程度になるように調整される。本実施形態の生ごみ処理装置10は、分解処理槽24内の温度が従来の装置(40℃前後)よりも常温に近い温度で分解処理槽24内が調整されるので、冷却器54および加熱器56による温度の調整を少なくすることができ、生ゴミ処理装置1のランニングコストを低く抑えることができる。また、冷却器54は、空気中の水分を結露させて空気の湿度を下げることができる。循環経路50で除湿により生じた水は、排水口60から生ゴミ処理装置10の外部に排出される。
【0027】
循環経路50の下流領域であって空気供給口28近傍には、酸素発生器58が配置されている。本実施形態では、酸素発生器58によって空気中の酸素濃度が25%程度にまで濃縮される。このため、循環経路50の下流領域にまで送り込まれた空気は、空気中の酸素濃度が高められ、空気供給口28から分解処理槽24に戻される。
【0028】
上記のように、本実施形態に係る生ゴミ処理装置10は、分解処理槽24の空気を、循環経路50を介して循環させることにより、分解処理槽24内の空気を微生物にとって活動しやすい酸素濃度、温度および湿度に調整することができる。その結果、微生物による分解処理能力を安定して維持させることができ、迅速に生ゴミを分解させることができる。
【0029】
上記実施形態において、酸素発生器58は循環経路50の下流領域である空気供給口28の近傍に配置されたが、本発明はこのような構成に限られるわけではない。空気発生器58を蓋14の裏側に取り付ける構成であってもよいし、分解処理槽24に直接酸素発生器58を取り付けて、分解処理槽24に酸素を供給する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る生ゴミ処理装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る生ゴミ処理装置の構成を概念的に示す構成図である。
【図3】本実施形態に係る生ゴミ処理装置を示す正面図である。
【図4】本実施形態に係る生ゴミ処理装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 生ゴミ処理装置
24 分解処理槽
30 攪拌手段
50 循環経路
52 送風機
54 冷却器
56 加熱器
58 酸素発生器
68 生ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物によって生ゴミを分解させる生ゴミ処理装置であって、
生ゴミおよび微生物が収容される分解処理槽と、
該分解処理槽内の空気を循環させる循環経路と、
空気中の酸素濃度を高めて微生物の活動を活性化させるための酸素発生器とを備え、
前記分解処理槽には、投入された生ゴミを攪拌させる攪拌手段があり、
前記循環経路には、空気を循環させるための送風機と、
空気の温度調整および除湿を行うための冷却器および加熱器とがあることを特徴とする生ゴミ処理装置。
【請求項2】
前記酸素発生器によって空気中の酸素濃度が25〜35%まで高められることを特徴とする請求項1に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項3】
冷却器および加熱器によって分解処理槽内の温度が25〜30℃に調整されることを特徴とする請求項1又は2に記載の生ゴミ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−253918(P2008−253918A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99208(P2007−99208)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(507111542)紀州エルム有限会社 (1)
【Fターム(参考)】