説明

生体コラーゲン合成促進剤

【課題】 安価且つ安全で効果の高い生体コラーゲン合成促進剤を提供する。
【解決手段】 グリセロリン脂質、好ましくは、グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール及びリゾホスファチジルグリセロールからなる群から選ばれる1又は2以上のものとコラーゲン又はその加水分解物との混合物を有効成分とすることを特徴とする生体コラーゲン合成促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体コラーゲン合成促進剤及びそれを配合した飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、皮膚、血管、腱、歯などほとんどの組織に存在する繊維状の蛋白質で、体を構成する全蛋白質の約30%を占めている。全コラーゲン量の40%は皮膚に、20%は骨や軟骨に存在しており、その他血管や内臓など全身に広く分布している。コラーゲン産生細胞としては、皮膚に存在する繊維芽細胞、軟骨に存在する軟骨細胞、骨を形成する骨芽細胞などが知られている。コラーゲンはこれらの細胞から分泌されたのち、細胞間を立体的に埋めて他の糖タンパク質とともに細胞間マトリックスを形成し細胞や臓器の形態維持に役立っている。また、軟骨や骨では、基質蛋白質の構成成分として重要な役割を果たしている。
【0003】
ところで、皮膚の老化(しわ、たるみ等)や肌荒れは、美容上の大きな悩みである。皮膚の老化、肌荒れ等の原因は様々であるが、その根本的な現象は皮膚繊維芽細胞のコラーゲン産生活性の低下、ヒアルロン酸合成活性の低下、紫外線によるコラゲナーゼ活性の上昇、紫外線や環境から生じる活性酸素による障害等による皮膚の構成成分の劣化、変性、減少等であると考えられている。環境等の外的要素や食事、嗜好品等の内的要因、さらには加齢等により皮膚の保湿機能が低下すると皮膚は乾燥し、弾力性も失われ、乾燥肌やしわ等の状態を引き起こし、アトピー性皮膚炎等の発症につながると考えられている。
【0004】
皮膚は表面から順に表皮、真皮、皮下組織の3つの組織からできている。表皮は主に皮膚のうるおいやなめらかさに関係していると言われている。表皮は最も下の部分から基底層、有棘層、顆粒層、角層の4層に分かれており、外界からの刺激や異物、細菌の侵入などを防ぐためのバリアー機能の役割を担っている。角層の細胞は表皮最下部である基底層で作り出され、4週間かけて細胞の分裂と増殖を繰り返し、細胞内の核の消失を伴いながら、皮膚最上部である角層に蓄積される。そして、2週間後には垢となって剥がれ落ちていくことが知られている。この一連のサイクルをターンオーバーという。
【0005】
一方、真皮は表皮の下にあり、コラーゲンや弾力繊維(エラスチン)などが網目状に存在し、主に皮膚の弾力とはりを保つための機能を持っている。また真皮中に存在する繊維芽細胞ではコラーゲンやヒアルロン酸が作り出されている。
【0006】
前記したように、コラーゲンは、皮膚に最も多く存在するが、紫外線、電離放射線、オゾンなどによって発生する活性酸素により質、量共に変化する。また、加齢により繊維芽細胞による合成が低下してしまうため、分解量が合成量を上回り、その結果として、しわやしみが発生していわゆる皮膚の老化が起こる。皮膚の老化は、角層の劣化とともに真皮の細胞外マトリックスであるコラーゲンやエラスチン量の低下とコラーゲン繊維束の分解によって起こる。
【0007】
そこで、コラーゲン若しくはその加水分解物を経口摂取することにより皮膚中のコラーゲン量を増加させる試みが多くなされてきた(特許文献1、特許文献2)。実際、コラーゲンを含む主に美容向けの素材が多数販売されている。しかしながら、コラーゲンを摂取することによって、コラーゲンの原料となるアミノ酸やペプチドを補給することはできるのは確かであるが、実際に皮膚・骨・軟骨のコラーゲン含量が増加するかどうかはその効果が弱いこともあって科学的に十分に証明されているわけではない。
【0008】
他方、グリセロリン脂質は、細胞の膜様構造部位に特異的に存在し、タンパク質と共に生体膜の主要な構成成分として知られている。脳、神経、内臓、血液、卵、種子などの部位に多く含まれ、生命維持のために多くの機能を果たしている。
【0009】
その他として、近年各種リン脂質の機能性が明らかとなりつつある。例えば、レシチンの主要成分であるホスファチジルコリン(PC)には、美白効果を得る作用(特許文献3、4)、炎症刺激で誘導されるコラーゲン産生を抑制する作用(非特許文献1)、損傷部皮膚の収縮を抑制して回復を調節する作用(非特許文献2)などが報告され、ホスファチジン酸(PA)にはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化して毛髪再生を促進する作用(特許文献5)、腫瘍細胞の膜流動性を向上させ多剤耐性を一変させる作用(特許文献6)、またリゾホスファチジン酸(LPA)には細胞増殖作用、環状リゾホスファチジン酸(cPA)には細胞増殖抑制活性(非特許文献3)が報告されている。他にも、ホスファチジルセリン(PS)には脳機能改善効果(非特許文献4)や神経突起伸張活性(非特許文献5)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)には神経栄養作用(非特許文献6)が報告されている。
【0010】
しかしながら、グリセロリン脂質を摂取することによって、コラーゲン若しくはその加水分解物を経口摂取することによる生体コラーゲン合成促進作用が増強されることは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−278012号公報
【特許文献2】特開2001−131084号公報
【特許文献3】特開2004−59496号公報
【特許文献4】特開2005−272444号公報
【特許文献5】特開2006−76967号公報
【特許文献6】特開2006−143744号公報
【特許文献7】特願2007−221384号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Lab.Clin.Med.,139(2002)、202−210
【非特許文献2】J.Invest.Surg.,17(2004)、15−22
【非特許文献3】蛋白質 核酸 酵素、Vol.44、No.8(1999)、1118−1125
【非特許文献4】FOOD Style 21、Vol.6、No.11(2002)、108−116
【非特許文献5】日本農芸化学 2004年大会、3A19p23、「卵黄由来ホスファチジルセリンが神経突起伸張に与える影響」
【非特許文献6】J.Lipid Research、47(2006)、1434−1443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、コラーゲンの摂取による生体コラーゲン合成作用を飛躍的に高めることができる生体コラーゲン合成促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、意外にもグリセロリン脂質とコラーゲン又はその加水分解物との混合物を経口摂取することにより、生体コラーゲンの合成が促進することにより各組織中のコラーゲン含量が増加することを見出した。更に該混合物が皮膚の新陳代謝を促進し、表皮のターンオーバーを促進すると共に、真皮でのコラーゲン産生を促し、皮膚賦活剤として有効に機能することを見出し本発明の完成に至った。
【0015】
すなわち、本発明の第一は、グリセロリン脂質とコラーゲン又はその加水分解物との混合物を有効成分とすることを特徴とする生体コラーゲン合成促進剤を要旨とするものであり、好ましくは、グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール及びリゾホスファチジルグリセロールからなる群から選ばれる1又は2以上のものである生体コラーゲン合成促進剤である。
【0016】
本発明の第二は、前記した生体コラーゲン合成促進剤を含むことを特徴とする皮膚賦活剤を要旨とするものである。
【0017】
本発明の第三は、前記した生体コラーゲン合成促進剤を含むことを特徴とする飲食品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価且つ安全で、副作用がなく効果の高い生体コラーゲン合成促進剤又は皮膚賦活剤を大量にかつ安価に製造し得る。また、これらを含む飲食品が提供出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、必須成分としてグリセロリン脂質を単独又は2つ以上組み合わせたものを含有する。グリセロリン脂質としては、エステル型(モノアシル型、ジアシル型)、エーテル型(アルキル型、アルキルアシル型、アルケニルアシル型、ジアルキル型)、ホスホノ型(C−P化合物)の存在が知られている。
【0020】
本発明に用いられるグリセロリン脂質は、エステル型グリセロリン脂質が望ましく、より具体的にはホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール及びリゾホスファチジルグリセロールなどが挙げられる。これらの中でも、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸の効果が高い。
【0021】
本発明に用いられるエステル型グリセロリン脂質を構成する脂肪酸は、少なくとも一つ以上が不飽和脂肪酸であることが望ましく、その不飽和脂肪酸の不飽和度が1以上で炭素数が4以上であることがより望ましい。より具体的にはブテン酸(C4:1、例えばクロトン酸、イソクロトン酸など)、ペンテン酸(C5:1)、ヘキセン酸(C6:1)、ヘプテン酸(C7:1)、オクテン酸(C8:1)、ノネン酸(C9:1)、デセン酸(C10:1)、ウンデセン酸(C11:1)、ドデセン酸(C12:1、例えばラウロレイン酸など)、トリデセン酸(C13:1)、テトラデセン酸(C14:1、例えばミリストレイン酸、ミリステライジン酸など)、ペンタデセン酸(C15:1)、ヘキサデセン酸(C16:1、例えばパルミトレイン酸、パルミテライジン酸など)、ヘプタデセン酸(C17:1)、オクタデセン酸(C18:1、例えばペトロセリン酸、ペトロセライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸など)、ノナデセン酸(C19:1)、エイコセン酸(C20:1、例えばガドレイン酸、ゴンドレン酸など)、ドコセン酸(C22:1、例えばエルカ酸、ブラッシジン酸、セトレイン酸など)、テトラコセン酸(C24:1、例えばネルボン酸など)、ヘキサコセン酸(C26:1)、オクタコセン酸(C28:1)、トリアコンテン酸(C30:1)、ペンタジエン酸(C5:2)、ヘキサジエン酸(C6:2、例えばソルビン酸など)、ペプタジエン酸(C7:2)、オクタジエン酸(C8:2)、ノナジエン酸(C9:2)、デカジエン酸(C10:2)、ウンデカジエン酸(C11:2)、ドデカジエン酸(C12:2)、トリデカジエン酸(C13:2)、テトラデカジエン酸(C14:2)、ペンタデカジエン酸(C15:2)、ヘキサデカジエン酸(C16:2)、ヘプタデカジエン酸(C17:2)、オクタデカジエン酸(C18:2、例えばリノール酸、リノエライジン酸など)、エイコサジエン酸(C20:2)、ドコサジエン酸(C22:2)、テトラコサジエン酸(C24:2)、ヘキサコサジエン酸(C26:2)、オクタコサジエン酸(C28:2)、トリアコンタジエン酸(C30:2)、ヘキサデカトリエン酸(C16:3)、オクタデカトリエン酸(C18:3、例えばα−リノレン酸、γ−リノレン酸、など)、エイコサトリエン酸(C20:3、例えばジホモ−γ−リノレン酸、ミード酸など)、ドコサトリエン酸(C22:3)、テトラコサトリエン酸(C24:3)、ヘキサコサトリエン酸(C26:3)、オクタコサトリエン酸(C28:3)、トリアコンタトリエン酸(C30:3)、オクタデカテトラエン酸(C18:4、例えばステアリドン酸など)、エイコサテトラエン酸(C20:4、例えばアラキドン酸など)、ドコサテトラエン酸(C22:4、例えばアドレン酸など)、テトラコサテトラエン酸(C24:4)、ヘキサコサテトラエン酸(C26:4)、オクタコサテトラエン酸(C28:4)、トリアコンタテトラエン酸(C30:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサペンタエン酸(C22:5、例えばクルパドノン酸など)、テトラコサペンタエン酸(C24:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、テトラコサヘキサエン酸(C24:6、例えばニシン酸など)、などが挙げられる。
【0022】
上記に示した直鎖不飽和脂肪酸以外にも、ルメン酸(C18:2)、カレンジン酸(C18:3)、ジャカリン酸(C18:3)、エレオステアリン酸(C18:3)、カタルピン酸(C18:3)、プニカ酸(C18:3)、ルメレン酸(C18:3)のような共役脂肪酸、リシノレイン酸(C18:1)やリシネライジン酸(C18:1)、ジモルフェコリン酸(C18:2)のような水酸化不飽和脂肪酸、ベモリン酸(C18:1)のようなエポキシ脂肪酸、ウロフラン酸のようなフラノイド脂肪酸、ミコリン酸のような高分子量の分岐鎖不飽和脂肪酸、その他メトキシ不飽和脂肪酸や環状不飽和脂肪酸などであってもよく、不飽和度が1以上で炭素数が4以上であれば構造や種類は特に限定されない。
【0023】
上記したようなグリセロリン脂質は、グリセロリン脂質を含む素材から水や有機溶媒で抽出することにより得ることができる。例えば、大豆、菜種などの植物素材由来、卵黄などの動物素材由来、菌類や細菌類由来のグリセロリン脂質などが挙げられ、さらにはこれらを精製や化学処理やホスホリパーゼなど酵素処理等をしたグリセロリン脂質、あるいは化学合成品や酵素合成品を用いることも可能である。
【0024】
酵素処理の例としては、天然レシチンを酵素により酵素反応させる方法がある。天然レシチンとしては、例えば、大豆、菜種、魚などの水産物、卵黄などに由来するレシチンが挙げられる。酵素としては、好ましくは、リパーゼ、ホスホリパーゼD、ホスホリパーゼA1、およびホスホリパーゼA2からなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。酵素反応条件は、用いる酵素に応じて、当業者により適宜決定され得る。
【0025】
ここで用いられる有機溶媒としては、有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素、エタノール、アセトニトリル、酢酸エステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、グリコール、石油エーテル、THF、アセトン、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。抽出にはこれら溶剤を単独で又は2種類以上を混合して用いることができるが、特にエタノール、アセトン、ヘプタン、石油エーテルが好ましい。
【0026】
抽出に用いる溶剤の量に特に制限はないが、グリセロリン脂質を含有する素材の重量に対して2〜10倍量を用いることが好ましい。2倍量以下では操作性が、10倍量以上では作業効率が悪い。
【0027】
また、抽出は1種又は複数種の溶剤を用いて、複数回行うこともできる。複数回行う場合は、グリセロリン脂質を含有する素材からの抽出でもよいし、グリセロリン脂質を含有する素材から得られた抽出画分をさらに抽出してもよい。また、それらを組み合わせて行うことができる。
【0028】
抽出操作の際の温度は、特に制限はないが10〜60℃が好ましい。10℃以下では抽出効率が悪く、60℃以上ではグリセロリン脂質以外の不純物も抽出されやすくなり、純度が低下してしまう。抽出時間にも特に制限はないが、1時間〜2日間程度が好ましい。1時間以下では抽出量が少なく、2日間以上では作業効率が低い。また、抽出は静置のまま行うこともできるが、撹拌又は振盪などすることによって抽出効率を高めることができる。
【0029】
上述のような方法により得られたグリセロリン脂質は、そのままで本発明の生体コラーゲン合成促進剤の配合成分として使用してもよく、また本発明の効果を損なわない限りで濃縮、脱色、脱塩、分配、粉末化等の処理を施したものを使用してもよい。例えば、減圧濃縮して溶媒を溜去して固形分含量を高めたものとしてもよく、活性炭処理により着色成分を除去したものでもよく、水層と有機溶媒層との液/液分配により水溶性成分を除去したものでもよい。また、順相系や逆相系の各種クロマトグラフィー等で精製してもよい。さらに、それら抽出物あるいは処理品にデキストリンや乳糖等の賦形剤を添加して粉末化したものでもよい。
【0030】
本発明に用いられるコラーゲンには、例えば牛、豚、鶏や魚類などの動物の皮膚、鱗、骨および腱などの結合組織から抽出したもの、もしくはコラーゲンの熱変性物であるゼラチンがある。中でもテロペプチド部分を酵素或いはアルカリで加水分解して架橋を外し可溶化することにより製造される可溶化コラーゲンが取り扱いの点から好適である。
【0031】
また、本発明に用いられるコラーゲンの加水分解物とは、コラーゲン又はゼラチンを加水分解したものである。中でもGly−X−Y(X、Yはアミノ酸)であらわされる分子量が400以下のペプタイドが、吸収性が高く好適である。コラーゲンの加水分解は加水分解酵素による方法でもよく、酸あるいはアルカリによる加水分解であっても問題ない。酵素分解に用いる加水分解酵素としては、例えばコラーゲナーゼ酵素においては、Clostridium histoticum、Streptomyces parvulusなどの細菌、放線菌あるいは真菌など由来のものを使用できる。また、これらの微生物により発酵させることも有効である。さらに、その他のタンパク質加水分解酵素の混合物であってもよい。好ましくはGly−X−Y(X、Yはアミノ酸)であらわされるペプタイドを生成するものである。
【0032】
コラーゲンの加水分解物は既に市販されている。これらの加水分解は、酵素などで分子量数百〜数千程度に加水分解して製造する。また、高温水処理を経たゼラチンを加水分解したものもある。粉末・顆粒製品はこれを噴霧乾燥させる。
【0033】
本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、上記したグリセロリン脂質とコラーゲン又はその加水分解物との混合物を有効成分とするものであり、この混合物におけるグリセロリン脂質と、コラーゲン又はその加水分解物の混合比は、期待される効果が得られる限り制約はないが、20:1〜1:20であることが好ましく、1:1〜1:20の範囲であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、グリセロリン脂質と、コラーゲン又はその加水分解物を粉末状のまま適宜混合することによって製造してもよいし、それぞれの水溶液を適宜混合して製造してもよい。
【0035】
本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、優れた生体コラーゲン合成促進作用を示すことから、これを経口摂取することにより骨・関節疾患に伴う症状の緩和、腱損傷治癒促進作用、骨形成促進作用、美容効果、皮膚損傷や褥創の治癒促進効果がみられることになる。したがって、本発明の生体コラーゲン合成促進剤は皮膚賦活作用を有することとなるため皮膚賦活剤としても使用できる。
【0036】
本発明の生体コラーゲン合成促進剤又は皮膚賦活剤の摂取量は、効果を奏する量であれば特に制限はないが、0.1〜10g/日が望ましい。一般的に0.1g/日より少ない量では、効果が充分に得られず、10g/日より多い量では経済的に不利になる。もちろん、摂取する者の年齢、体重、症状、投与期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて摂取することもできる。
【0037】
また、本発明の皮膚賦活剤には、上記グリセロリン脂質とコラーゲン又はその加水分解物との混合物に加えて、ヒアルロン酸、セラミド、エラスチンなど美肌作用が報告されている成分を一緒に含有することもできる。
【0038】
また、本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、経口摂取可能な形態、例えば粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセルなどの剤型にすることができ、また飲料などの食品に配合して本発明の飲食品とすることもできる。
【0039】
本発明の飲食品の摂取量は、特に制限はないが、通常、生体コラーゲン合成促進剤の量が0.1〜10g/日となるような量である。さらに外用剤として軟膏や化粧品に配合しても問題ない。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1、2
卵黄レシチンPL−30S(キユーピー株式会社製)200gにヘプタンとアセトンとの混液(3:1(容量比))を加えて溶解し、全量を2Lとした(卵黄レシチン溶液とする)。次いで、20,000UのホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)を含む酵素溶液(pH=8.0)740mLを調製した。この酵素溶液を卵黄レシチン溶液に添加して、撹拌しながら30℃で20時間酵素反応させた。次いで、分液後、ホスファチジン酸(PAという場合がある)を含む有機溶媒層を、エバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)した。濃縮後、濃縮物の5倍容量のアセトンを加え、不溶物として得られるPAを減圧乾燥してPA晶析物54gを得た。なお、純度は95%であった。
【0042】
次いで、15,000UのホスホリパーゼA2(PLA2ナガセ:ナガセケムテックス株式会社製)を含む緩衝液(0.1Mトリス緩衝液、50mM塩化カルシウム、pH8)に、得られたPA晶析物10gを分散させ、100mLとなるように調製した。次いで、撹拌しながら30℃で20時間酵素反応させた。反応終了後、反応液にエタノール1Lを添加してリゾホスファチジン酸(LPAという場合がある)を抽出し、減圧ろ過によってLPA抽出液を得た。このLPA抽出液をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)した。濃縮後、濃縮物の5倍容量のアセトンを加え、不溶物として得られるLPAをろ過によって回収し、減圧乾燥してLPA晶析物5.5gを得た。
【0043】
一方、コラーゲン・トリペプチドHACP―01(ゼライス株式会社製)を準備し、上記で得られたPAとを質量比で9:1になるように混合して本発明のコラーゲン合成促進剤1とした(実施例1)。また同様に、コラーゲン・トリペプチドHACP―01(ゼライス株式会社製)と上記で得られたLPAとを質量比で9:1になるように混合して本発明のコラーゲン合成促進剤2とした(実施例2)。
【0044】
試験例(皮膚コラーゲン合成促進作用及び皮膚賦活作用の評価;動物実験)
Wistar系ラット(オス、4週齢、5匹/群)をタンパク質6%の飼料で3週間飼育し、擬似老化モデルラットとした。実施例1の生体コラーゲン合成促進剤1と、実施例2の生体コラーゲン合成促進剤2を1mg/mlとなるように水道水に懸濁し擬似老化モデルラットの体重100gに対して1mLを一日一回、5週間連続でそれぞれ経口摂取させた(10mg/day/kg−BW相当)。同様に、コラーゲン・トリペプチドHACP―01(比較例1)を0.9mg/mlとなるように水道水に懸濁し、擬似老化モデルラットの体重100gに対して1mLを一日一回、5週間連続でそれぞれ経口摂取させた(9mg/day/kg−BW相当)。尚、水道水を擬似老化モデルラットの体重100gに対して1mLを一日一回、5週間連続でそれぞれ経口摂取させた群を対照例とした。
【0045】
表皮のターンオーバーは、ダンシルクロライド法により行った。投与開始2週間後にラット背部を剃毛し2%ダンシルクロライド/EtOH溶液5μLをラット背部(ラット自身で触れることができない部分)に塗布した。塗布後、24時間目よりUV照射下目視で蛍光を観察し蛍光の消失日を観察した。結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の生体コラーゲン合成促進剤は比較例1のコラーゲン・トリペプチド単独の場合と較べて、表皮のターンオーバーを亢進したことが分かる。
【0047】
投与終了後、ラット背部の体毛を除去し、皮膚を2×2.5cmの長方形に皮下組織ごと摘出した。秤量後摘出皮膚を氷冷した蒸留水10mLを加えて十分にホモジナイズし、遠心分離(7000rpm×20min)で沈殿を回収した。氷冷した0.1N水酸化ナトリウム10mLを沈殿に加えて冷蔵下(6℃)で一晩振盪し、遠心分離で沈殿を回収し、再度同様の操作を行った。遠心分離で回収した沈殿を氷冷した蒸留水で洗浄し、遠心分離後に再度回収した沈殿に氷冷した0.5M酢酸15mLを加えて冷蔵下(6℃)で一晩コラーゲン抽出を行ない、遠心分離により抽出上清を得た。得られた抽出溶液中の可溶性コラーゲンを、Sircol Collagen Assay Kit(フナコシ社)を用いて定量した。結果を表2に示した。
【0048】
【表2】

表2から明らかなように、本発明の生体コラーゲン合成促進剤は、比較例1のコラーゲン・トリペプチド単独の場合よりも皮膚重量及び皮膚可溶性コラーゲン量を増加させていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロリン脂質とコラーゲン又はその加水分解物との混合物を有効成分とすることを特徴とする生体コラーゲン合成促進剤。
【請求項2】
グリセロリン脂質が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール及びリゾホスファチジルグリセロールからなる群から選ばれる1又は2以上のものである請求項1記載の生体コラーゲン合成促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の生体コラーゲン合成促進剤を含むことを特徴とする皮膚賦活剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の生体コラーゲン合成促進剤を含むことを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−195701(P2010−195701A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40754(P2009−40754)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】