生体センサーおよび生体情報検出装置
【課題】発光素子24と受光素子26とを備える生体センサーにおいて微弱な光成分を精度良く検出する。
【解決手段】基板22の一方の面である装着面側に形成され、基板22とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子24と、基板22の装着面において発光素子24と離間して形成され、生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子26と、光透過性を有し、発光素子24を覆うように基板22に接着される第1導光部材25と、光透過性を有し、受光素子26を覆うように、第1導光部材25とは離間して設けられた第2導光部材27とを備える。
【解決手段】基板22の一方の面である装着面側に形成され、基板22とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子24と、基板22の装着面において発光素子24と離間して形成され、生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子26と、光透過性を有し、発光素子24を覆うように基板22に接着される第1導光部材25と、光透過性を有し、受光素子26を覆うように、第1導光部材25とは離間して設けられた第2導光部材27とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波などの生体情報を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子によって生体に光を照射する一方、脈拍数や酸素飽和度などの生体情報を反映した光を受光素子によって受光し、電気信号に変換して出力する生体センサーが知られている。当該生体センサーから出力された信号を処理すると、生体情報を非侵襲で検出することができる。
生体センサーを構成する発光素子と受光素子とは、物理的に異なる素子であるので、互いに離間した状態で配置せざるを得ない。この状態において発光素子からの光が受光素子に直接入射してしまうと、直接入射光は、生体情報を反映した光に対してノイズとなってしまう。
そこで、発光素子と受光素子とを光遮蔽性を有するホルダーによって隔てて収納するとともに、生体センサーの密着性を向上させるために被験者との接触面に板状の透明板を設ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生体情報を反映した光は、例えば血管内の血液によって反射した光であるために、照射した光に対して微弱である。このため、被験者との接触面に透明板を設けた技術では、発光素子から射出された光の一部が透明板の内部反射によって受光素子に入射し、微弱な光成分を精度良く検出することができない、という問題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、微弱な光成分を精度良く検出することが可能な生体センサーおよび生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る生体センサーにあっては、基板の一方の面に形成され、前記基板とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子と、前記基板の一方の面に前記発光素子と離間して形成され、前記生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子と、光透過性を有し、前記発光素子を覆うように設けられた第1導光部材と、光透過性を有し、前記受光素子を覆うように、前記第1導光部材とは離間して設けられた第2導光部材と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、発光素子を覆う第1導光部材と受光素子を覆う第2導光部材とは互いに離間して設けられるので、発光素子から受光素子に直接入射してノイズとなる成分が抑えられる。このため、生体情報を反映した微弱な光成分を精度良く検出することができる。
【0006】
本発明において、前記基板は不透明である態様が好ましい。この態様によれば、基板の他方の面側から入射する迷光の影響を抑えることができる。
また、本発明において、前記発光素子は、前記基板から向かって順に、第1電極層、発光層、第2電極層および第1封止層を少なくとも含んだ積層体である構成も好ましい。この構成によれば、基板側とは反対方向に光を出射するトップエミッション構造の発光素子を、薄膜技術を用いて形成することができる。
同様に本発明において、前記受光素子は、前記基板から向かって順に、第3電極層、受光層、第4電極層および第2封止層を少なくとも含んだ積層体である構成も好ましい。この構成によれば、基板側とは反対方向から光を入射する構造の受光素子を、薄膜技術を用いて形成することができる。
なお、本発明は、このような生体センサーから出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路を持たせた生体情報検出装置としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る生体情報検出装置の装着状態を示す図である。
【図2】生体情報検出装置の構造を示す要部断面図である。
【図3】生体情報検出装置に用いられる生体センサーを示す斜視図である。
【図4】生体センサーを示す平面図である。
【図5】生体センサーの構造を示す要部断面図である。
【図6】生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
【図7】生体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【図8】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図9】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図10】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図11】比較例に係る生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る生体情報検出装置について図面を参照して説明する。
なお、以下の各図については、各部、特に各層については認識可能な大きさとするために、縮尺を異ならせている場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る生体情報検出装置を示す図である。実施形態に係る生体情報検出装置1は、被験者の生体情報として例えば脈拍数などを検出して出力するものである。
図1に示されるように、生体情報検出装置1の筐体10は、腕時計を模した形状となっている。筐体10の外周部のうち、中心部を挟んで対向する部分には、被験者の左手首に巻回されたリストバンド12の一端と他端とが取り付けられている。これによって、筐体10の裏側が被験者に接触して装着されることになる。図1では省略されているが、後述する演算処理回路が、各種の処理を実行して、その処理結果を出力する。
【0010】
図2は、生体情報検出装置1の要部構成を示す断面図である。なお、図2において上側が筐体10の裏側であって、被験者に装着される側である。
図に示されるように、筐体10の内部は中空部15を有する形状となっており、当該中空部15において被験者への装着側に生体センサー20が設けられている。生体センサー20は、基板22と、基板22の装着側に形成された発光素子24および受光素子26を含む。
【0011】
図3は、生体センサー20の構成を示す斜視図であり、図4は、生体センサー20の構成を示す平面図である。
これらの図に示されるように、生体センサー20は、装着側から平面視したときに、本実施形態では、長方形状の基板22を有する。
この基板22のうち、被験者に装着される側の面には、ほぼ正方形の発光面を有する発光素子24と、ほぼ正方形の受光面を有する受光素子26とが互いに離間した状態で形成されている。
基板22に形成された発光素子24を覆うように、第1導光部材25が取り付けられ、基板22に形成された受光素子26を覆うように、第1導光部材25から離間した状態で第2導光部材27が取り付けられている。
【0012】
ここで、第1導光部材25および第2導光部材27は、それぞれ光透過性を有し、例えば樹脂やガラスなどの材質からなる。
なお、第1導光部材25および第2導光部材27の外部形状は、それぞれ発光素子24、受光素子26の形状に合わせて、直方体としているが、任意である。ただし、第1導光部材25および第2導光部材27において被験者と接触する接触面25a、27aは、当該接触面25a、27aを介して光を出射・入射する点を考慮すると、それぞれ平坦である形状が好ましい。
また、光透過性とは、発光素子24からの出射される光の波長帯域に含まれる光成分を透過する性質をいう。
【0013】
図5は、生体センサー20の構造を示す模式図である。
図に示されるように、生体センサー20では、発光素子24および受光素子26が、シリコンなどのような不透明な基板22のうち、装着側(図において上側)の面において種々の薄膜を積層することによって形成される。
詳細には、発光素子24は、例えば有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)であり、基板22を起点として順に、反射層241、電極層242、有機層243、電極層244および封止層245を積層した構造となっている。
【0014】
このうち、反射層241は、アルミニウムや銀などのように反射性を有する金属層または合金層の成膜後、次に形成される電極層242を含むように、さらに、電極層242に重ねられる有機層243の周縁を含むように、電極層242よりもひとまわり広くパターニングしたものである。
【0015】
電極層242は、発光素子24の陽極であって、第1電極層として機能するものであり、透明性を有する導電層、例えばITO(Indium Tin Oxide)などをパターニングしたものである。
有機層243は、電極層242と重なるように形成されたものであり、本実施形態では、電極層242からみて順に正孔輸送層243aと発光層243bと電子輸送層243cとの積層体で構成されている。
【0016】
このうち、正孔輸送層243aは、陽極から供給される正孔を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する電子のストッパーであり、例えばトリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等によって形成される。発光層243bは、例えばアントラセン誘導体等をホスト材料とし、クマリン誘導体等をドーパントとして形成される。電子輸送層243cは、陰極から供給される電子を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する正孔のストッパーであり、例えばアルミキノリノール錯体(Alq3)等によって形成される。
なお、有機層243(正孔輸送層243a、発光層243b、電子輸送層243c)については、例えば真空蒸着法で形成されるが、インクジェットによる塗布法などによって形成されても良い。
【0017】
電極層244は、発光素子24の陰極であって、第2電極層として機能するものであり、光透過性および反射性を有する導電層、例えばマグネシウムと銀との合金層を、発光層243bと重なるようにパターニングしたものである。
封止層245は、酸素や水分の侵入による発光素子が劣化するのを防ぐための第1封止層であり、電極層244から反射層241までの積層構造を覆うように設けられている。封止層245は、光透過性を有する例えば硬質のシリコン酸窒化膜(SiON)で、軟質の有機膜を挟持した積層体からなる。積層体で構成された封止層245は、素子劣化を防止する機能に加えて、第1導光部材25を取り付ける際の緩衝材として機能することにもなる。
【0018】
発光素子24は、陽極としての電極層242と、陰極としての電極層244とで、有機層243を挟持した構成となる。
このような構成において、陽極から陰極に向かって順方向にバイアスがかかると、正孔輸送層243aから注入される正孔と電子輸送層243cから注入される電子とが発光層243bで結合して、発光層243bの材料に応じたスペクトルの光が発生する。本実施形態では、例えば波長500〜550nm付近でピークを有するようなスペクトルの光を発生させるように、発光層243bの材料が選定されている。
【0019】
なお、発光素子24において有機層243で必要な機能は、陽極側から供給される正孔と陰極側から供給される電子との結合によって光を発生させることにある。このため最低限、有機層243には発光層243bがあれば良い。ただし、正孔輸送層243aおよび電子輸送層243cを設けた方が、キャリア(正孔、電子)の移動度が改善されて、発光効率を高めることができる点において有利である。発光効率を高めるという観点からいえば、電極層242(陽極)と正孔輸送層243aとの間に、陽極から正孔を取り入れる正孔注入層を設けても良いし、電極層244(陰極)と電子輸送層243cとの間に、陰極から電子を取り入れる電子注入層を設けても良い。
また、発光素子24としては、有機発光ダイオードに限られず、基板22に形成されて装着側に光を出射する素子であれば良い。
【0020】
一方、受光素子26は、例えば光吸収型の有機フォトダイオード(Organic Photodiode)であり、発光素子24に隣り合う位置において、基板22を起点として順に、電極層261、受光層263、電極層264および封止層265を積層した構造となっている。
【0021】
このうち、電極層261は、第3電極層として機能するものであり、フォトダイオードの陰極と反射層とを兼ねている。この電極層261は、例えばアルミニウムをパターニングしたものである。
受光層263は、光の照射によって導電性が向上する、例えばペリレン誘導体やピラゾリン誘導体等によって形成されている。なお、受光層263は、有機層243と同様に例えば真空蒸着法で形成されるが、インクジェットによる塗布法などによって形成されても良い。
電極層264は、第4電極層として機能するものであり、フォトダイオードの陽極となる。この電極層264は、例えばITOをパターニングしたものである。
封止層265は、受光素子が劣化するのを防ぐための第2封止層であり、電極層264から反射層261までの積層構造を覆うように設けられている。封止層265は、封止層245と同様に例えば硬質のシリコン酸窒化膜(SiON)で軟質の有機膜を挟持した積層体からなる。
【0022】
受光素子26は、陰極としての電極層261と、陽極としての電極層264とで、受光層263を挟持した構成となる。
このような構成において、受光層263に、第2導光部材27(接触面27a)を介して光が基板22とは反対側から入射すると、電子および正孔の対が発生する。ここで、陰極としての電極層261と、陽極としての電極層264とで逆方向にバイアスをかけると、電子および正孔が分離・移動するので、受光素子26には、入射光量に応じた電流が流れることになる。
【0023】
なお、受光素子26としては、有機フォトダイオードに限られない。例えば、受光素子26としては、CCD(Charge Coupled Device)などを用いても良いし、ナノ(マイクロ)クリスタル薄膜や、CIGS(Copper:銅、Indium:インジウム、Gallium:ガリウム、Selenium:セレン)の化合物からなる薄膜を受光層263に用いたものでも良い。いずれにしても、受光素子26としては、基板22に形成された光電変換素子であれば良い。
【0024】
このように形成された発光素子24には第1導光部材25が、受光素子26には第2導光部材27が、それぞれ取り付けられる。詳細には、内面25bが発光素子24の外形に合わせた形状となるように加工された第1導光部材25は、当該第1導光部材25に近い屈折率を有する接着剤によって発光素子24の全体を覆うように基板22に接着される。同様に、内面27bが受光素子26の外形に合わせた形状となるように加工された第2導光部材27は、当該第2導光部材27に近い屈折率を有する接着剤によって受光素子26の全体を覆うように基板22に接着される。
【0025】
図6は、生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
筐体10が被験者に装着された場合、被験者の皮膚が第1導光部材25の接触面25aと第2導光部材27の接触面27aとにそれぞれ接触することになる。
一方、発光素子24に順方向にバイアスがかかったとき、キャリア同士の結合によって発生した光が周囲に出射される。ただし、反射層241が発光層243bの周縁を含むように、発光層243bよりも一回り広く形成されているので、発光層243bで発生した光のうち、図6において下側に向かって出射された光は、反射層241によって反射する。この結果、発光層243bからの光は、ほぼ図において上側に向かうことになる。すなわち、発光素子24は、光を基板22とは反対側に出射するトップエミッション構造となる。
【0026】
ところで、 第1導光部材25の屈折率は、空気の屈性率よりも高い。このため、上側に向かう光のうち、界面である接触面25aに、空気に対する第1導光部材25の臨界角よりも小さい角度θaで到達した光は、図において符号Pで示されるように、第1導光部材25から角度θbで屈折して出射し、被験者の皮膚に侵入する。
一方、上側に向かう光のうち、接触面25aに上記臨界角以上の角度θcで到達した光は、図において符号Qで示されるように、接触面25aで反射した後、内部反射を繰り返す。このため、本実施形態では、被験者の皮膚に侵入しない光が、受光素子26に直接入射することが阻止される。
【0027】
被験者の皮膚に侵入した光は、表皮を透過してその奥の血管(図示省略)に到達する。血管に到達した光は当該血管を流れる血液により吸収、反射され、あるいは血液を透過する。血管に流れる血液によって反射した光は、図において符号Sで示されるように、第2導光部材27を経て、受光素子26の受光層263に入射する。
このため、受光素子26は、入射光量に応じた電流を出力する。ここで、被験者の血管は、心拍と同じ周期で膨張・収縮を繰り返している。したがって、血管の膨張・収縮の周期と同じ周期で光の反射量が増減するので、受光素子26から出力される電流の変化は、血管の容積変化を示すことになる。
【0028】
ここで、本実施形態との比較のための比較例について図11を参照して説明する。
図11に示す比較例は、被験者との密着性を向上させるために、発光素子24および受光素子26に対して平板状の透明板29を設けた構成である。
比較例においても、被験者側(上側)に向かう光のうち、界面である接触面29aに臨界角よりも小さい角度θaで到達した光については、実施形態と同様に符号Pで示されるように、透明板29から角度θbで出射する。
一方、上側に向かう光のうち、接触面29aに上記臨界角以上の角度θcで到達した光は、図において符号Nで示されるように、接触面29aで反射した後に下面29cで反射する内部反射を繰り返して、漏れ光として受光素子26の受光層263に入射する。この漏れ光は、生体情報を反映した光ではないので、生体情報を反映した光Sに対してノイズNとして作用してしまう。
したがって、この比較例によれば、受光素子26から出力される信号のS/N比が低下してしまうため、生体情報を反映した光成分を精度良く検出することができない。
【0029】
これに対して、本実施形態では、上記漏れ光が受光素子26に入射することが阻止されるので、ノイズとして作用する成分が抑えられる結果、生体情報を反映した光成分を精度良く検出することが可能となるのである。
また、本実施形態では、基板22が不透明であるので、漏れ光が基板22を介して受光素子26に伝播することも抑えられる。
本実施形態では、基板22に対して発光素子24および受光素子を薄膜積層技術によって形成しているので、生体センサー20の薄型化を図ることができる。
【0030】
図7は、生体情報検出装置1の電気的な構成を示すブロック図である。なお、この構成については、概略的な説明にとどめることにする。
この図において、駆動回路30は、演算処理回路50による制御したがって電流を常時または間欠的に供給して、発光素子24を駆動するものである。ここで、電流を間欠的に駆動する方が低消費電力化を図る上で好ましい。一方、変換回路40は、受光素子26に流れる電流を電圧に変換するとともに、当該電圧を予め定められたサンプリング間隔でデジタルデータに変換するものである。
【0031】
演算処理回路50は、発光素子24を駆動したときに、変換回路40によって変換されたデジタルデータを処理する。例えば、演算処理回路50は、当該デジタルデータから脈拍数を算出したり、内部タイマーで計測された時刻に関連付けて脈拍数を逐一記録したりする。なお、これらの情報・データを外部のコンピューターに転送したり、図示省略した表示部に表示させたり、音声合成によって出力したりしても良い。
【0032】
本発明は、上述した実施形態のほかにも、種々の応用・変形が可能である。
発光素子24と受光素子26との配列・個数については、互いに離間した状態が保たれていれば、任意である。例えば、図8に示されるように、複数個の発光素子24と複数個の受光素子26とがそれぞれ交互にマトリクス状に配列する構成であっても良い。このような構成によれば、複数個の発光素子24によって出射光の面積が広がるとともに、複数個の受光素子26によって入射光の面積が広がるので、生体情報を反映した光成分を、より精度良く検出することができる。
また、図9に示されるように、発光素子24の周辺を囲むように複数個の受光素子26が配列する構成であっても良い。このような構成によれば、同様に生体情報を反映した光成分を、より精度良く検出することができる。
なお、発光素子24と受光素子26とが複数個配列する構成では、第1導光部材25、第2導光部材27を、個々の素子の各々に対応して設ける必要はなく、発光素子24と、受光素子26とがそれぞれ互いに離間した異なる導光部材で覆われていれば良い。このため、例えば図10に示されるように、第1導光部材25から離間した1個の第2導光部材27が、複数個の受光素子26をまとめて覆う構成としても良い。
反対に、特に図示しないが、第2導光部材27から離間した1個の第1導光部材25が、複数個の発光素子24をまとめて覆う構成としても良い。
【0033】
また、図6において、第1導光部材25の側面25dまたは第2導光部材27の側面27dの一方もしくは双方に反射コーティングを施しても良い。このような反射コーティングによって、より確実に漏れ光の影響を抑えることができる。
一方、側面25d、27dの間に、
発光素子24を覆う第1導光部材25の屈折率よりも小さい屈折率の樹脂等を充填しても良い。また、充填する樹脂等の屈折率については、受光素子26を覆う第2導光部材27の屈折率よりも大きくすると、側面25dで反射しやすくなる。
【0034】
各実施形態では、被験者の測定部位を左手首としたが、例えばカフ体に生体センサーを組み込むことによって、指先を測定部位にしても良い。換言すれば、指尖脈波を検出するようにしても良い。
【0035】
また、生体センサー20は、脈波を検出する構成を例示したが、動脈血の酸素飽和度を検出するセンサーにも適用可能である。血液中のヘモグロビンは、酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なる。そこで、赤色光を発光・受光する素子、赤外光を発光・受光する素子、などのように発光波長および受光波長を異ならせた素子組を複数組用意する一方、これらの反射光を測定・解析することによって酸素飽和度を検出することができる。
また、血管としては、動脈・静脈のいずれでも良い。
生体情報としては、生体の血管のパターンでも良く、この血管パターンから当該生体を認証する認証装置にも適用可能である。
測定対象は、ヒトに限らず、動物でも良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
1…生体情報検出装置、20…生体センサー、22…基板、24…発光素子、25…第1導光部材、26…受光素子、27…第2導光部材、50…演算処理回路、241…反射層、242…電極層、243…有機層、243b…発光層、244…電極層、245…封止層、261…電極層、263…受光層、264…電極層、265…封止層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波などの生体情報を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子によって生体に光を照射する一方、脈拍数や酸素飽和度などの生体情報を反映した光を受光素子によって受光し、電気信号に変換して出力する生体センサーが知られている。当該生体センサーから出力された信号を処理すると、生体情報を非侵襲で検出することができる。
生体センサーを構成する発光素子と受光素子とは、物理的に異なる素子であるので、互いに離間した状態で配置せざるを得ない。この状態において発光素子からの光が受光素子に直接入射してしまうと、直接入射光は、生体情報を反映した光に対してノイズとなってしまう。
そこで、発光素子と受光素子とを光遮蔽性を有するホルダーによって隔てて収納するとともに、生体センサーの密着性を向上させるために被験者との接触面に板状の透明板を設ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−360530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生体情報を反映した光は、例えば血管内の血液によって反射した光であるために、照射した光に対して微弱である。このため、被験者との接触面に透明板を設けた技術では、発光素子から射出された光の一部が透明板の内部反射によって受光素子に入射し、微弱な光成分を精度良く検出することができない、という問題があった。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、微弱な光成分を精度良く検出することが可能な生体センサーおよび生体情報検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る生体センサーにあっては、基板の一方の面に形成され、前記基板とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子と、前記基板の一方の面に前記発光素子と離間して形成され、前記生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子と、光透過性を有し、前記発光素子を覆うように設けられた第1導光部材と、光透過性を有し、前記受光素子を覆うように、前記第1導光部材とは離間して設けられた第2導光部材と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、発光素子を覆う第1導光部材と受光素子を覆う第2導光部材とは互いに離間して設けられるので、発光素子から受光素子に直接入射してノイズとなる成分が抑えられる。このため、生体情報を反映した微弱な光成分を精度良く検出することができる。
【0006】
本発明において、前記基板は不透明である態様が好ましい。この態様によれば、基板の他方の面側から入射する迷光の影響を抑えることができる。
また、本発明において、前記発光素子は、前記基板から向かって順に、第1電極層、発光層、第2電極層および第1封止層を少なくとも含んだ積層体である構成も好ましい。この構成によれば、基板側とは反対方向に光を出射するトップエミッション構造の発光素子を、薄膜技術を用いて形成することができる。
同様に本発明において、前記受光素子は、前記基板から向かって順に、第3電極層、受光層、第4電極層および第2封止層を少なくとも含んだ積層体である構成も好ましい。この構成によれば、基板側とは反対方向から光を入射する構造の受光素子を、薄膜技術を用いて形成することができる。
なお、本発明は、このような生体センサーから出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路を持たせた生体情報検出装置としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る生体情報検出装置の装着状態を示す図である。
【図2】生体情報検出装置の構造を示す要部断面図である。
【図3】生体情報検出装置に用いられる生体センサーを示す斜視図である。
【図4】生体センサーを示す平面図である。
【図5】生体センサーの構造を示す要部断面図である。
【図6】生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
【図7】生体情報検出装置の構成を示すブロック図である。
【図8】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図9】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図10】生体センサーにおける発光素子と受光素子との配置例を示す図である。
【図11】比較例に係る生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る生体情報検出装置について図面を参照して説明する。
なお、以下の各図については、各部、特に各層については認識可能な大きさとするために、縮尺を異ならせている場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る生体情報検出装置を示す図である。実施形態に係る生体情報検出装置1は、被験者の生体情報として例えば脈拍数などを検出して出力するものである。
図1に示されるように、生体情報検出装置1の筐体10は、腕時計を模した形状となっている。筐体10の外周部のうち、中心部を挟んで対向する部分には、被験者の左手首に巻回されたリストバンド12の一端と他端とが取り付けられている。これによって、筐体10の裏側が被験者に接触して装着されることになる。図1では省略されているが、後述する演算処理回路が、各種の処理を実行して、その処理結果を出力する。
【0010】
図2は、生体情報検出装置1の要部構成を示す断面図である。なお、図2において上側が筐体10の裏側であって、被験者に装着される側である。
図に示されるように、筐体10の内部は中空部15を有する形状となっており、当該中空部15において被験者への装着側に生体センサー20が設けられている。生体センサー20は、基板22と、基板22の装着側に形成された発光素子24および受光素子26を含む。
【0011】
図3は、生体センサー20の構成を示す斜視図であり、図4は、生体センサー20の構成を示す平面図である。
これらの図に示されるように、生体センサー20は、装着側から平面視したときに、本実施形態では、長方形状の基板22を有する。
この基板22のうち、被験者に装着される側の面には、ほぼ正方形の発光面を有する発光素子24と、ほぼ正方形の受光面を有する受光素子26とが互いに離間した状態で形成されている。
基板22に形成された発光素子24を覆うように、第1導光部材25が取り付けられ、基板22に形成された受光素子26を覆うように、第1導光部材25から離間した状態で第2導光部材27が取り付けられている。
【0012】
ここで、第1導光部材25および第2導光部材27は、それぞれ光透過性を有し、例えば樹脂やガラスなどの材質からなる。
なお、第1導光部材25および第2導光部材27の外部形状は、それぞれ発光素子24、受光素子26の形状に合わせて、直方体としているが、任意である。ただし、第1導光部材25および第2導光部材27において被験者と接触する接触面25a、27aは、当該接触面25a、27aを介して光を出射・入射する点を考慮すると、それぞれ平坦である形状が好ましい。
また、光透過性とは、発光素子24からの出射される光の波長帯域に含まれる光成分を透過する性質をいう。
【0013】
図5は、生体センサー20の構造を示す模式図である。
図に示されるように、生体センサー20では、発光素子24および受光素子26が、シリコンなどのような不透明な基板22のうち、装着側(図において上側)の面において種々の薄膜を積層することによって形成される。
詳細には、発光素子24は、例えば有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)であり、基板22を起点として順に、反射層241、電極層242、有機層243、電極層244および封止層245を積層した構造となっている。
【0014】
このうち、反射層241は、アルミニウムや銀などのように反射性を有する金属層または合金層の成膜後、次に形成される電極層242を含むように、さらに、電極層242に重ねられる有機層243の周縁を含むように、電極層242よりもひとまわり広くパターニングしたものである。
【0015】
電極層242は、発光素子24の陽極であって、第1電極層として機能するものであり、透明性を有する導電層、例えばITO(Indium Tin Oxide)などをパターニングしたものである。
有機層243は、電極層242と重なるように形成されたものであり、本実施形態では、電極層242からみて順に正孔輸送層243aと発光層243bと電子輸送層243cとの積層体で構成されている。
【0016】
このうち、正孔輸送層243aは、陽極から供給される正孔を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する電子のストッパーであり、例えばトリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等によって形成される。発光層243bは、例えばアントラセン誘導体等をホスト材料とし、クマリン誘導体等をドーパントとして形成される。電子輸送層243cは、陰極から供給される電子を能率的に輸送する一方で、反対方向から到来する正孔のストッパーであり、例えばアルミキノリノール錯体(Alq3)等によって形成される。
なお、有機層243(正孔輸送層243a、発光層243b、電子輸送層243c)については、例えば真空蒸着法で形成されるが、インクジェットによる塗布法などによって形成されても良い。
【0017】
電極層244は、発光素子24の陰極であって、第2電極層として機能するものであり、光透過性および反射性を有する導電層、例えばマグネシウムと銀との合金層を、発光層243bと重なるようにパターニングしたものである。
封止層245は、酸素や水分の侵入による発光素子が劣化するのを防ぐための第1封止層であり、電極層244から反射層241までの積層構造を覆うように設けられている。封止層245は、光透過性を有する例えば硬質のシリコン酸窒化膜(SiON)で、軟質の有機膜を挟持した積層体からなる。積層体で構成された封止層245は、素子劣化を防止する機能に加えて、第1導光部材25を取り付ける際の緩衝材として機能することにもなる。
【0018】
発光素子24は、陽極としての電極層242と、陰極としての電極層244とで、有機層243を挟持した構成となる。
このような構成において、陽極から陰極に向かって順方向にバイアスがかかると、正孔輸送層243aから注入される正孔と電子輸送層243cから注入される電子とが発光層243bで結合して、発光層243bの材料に応じたスペクトルの光が発生する。本実施形態では、例えば波長500〜550nm付近でピークを有するようなスペクトルの光を発生させるように、発光層243bの材料が選定されている。
【0019】
なお、発光素子24において有機層243で必要な機能は、陽極側から供給される正孔と陰極側から供給される電子との結合によって光を発生させることにある。このため最低限、有機層243には発光層243bがあれば良い。ただし、正孔輸送層243aおよび電子輸送層243cを設けた方が、キャリア(正孔、電子)の移動度が改善されて、発光効率を高めることができる点において有利である。発光効率を高めるという観点からいえば、電極層242(陽極)と正孔輸送層243aとの間に、陽極から正孔を取り入れる正孔注入層を設けても良いし、電極層244(陰極)と電子輸送層243cとの間に、陰極から電子を取り入れる電子注入層を設けても良い。
また、発光素子24としては、有機発光ダイオードに限られず、基板22に形成されて装着側に光を出射する素子であれば良い。
【0020】
一方、受光素子26は、例えば光吸収型の有機フォトダイオード(Organic Photodiode)であり、発光素子24に隣り合う位置において、基板22を起点として順に、電極層261、受光層263、電極層264および封止層265を積層した構造となっている。
【0021】
このうち、電極層261は、第3電極層として機能するものであり、フォトダイオードの陰極と反射層とを兼ねている。この電極層261は、例えばアルミニウムをパターニングしたものである。
受光層263は、光の照射によって導電性が向上する、例えばペリレン誘導体やピラゾリン誘導体等によって形成されている。なお、受光層263は、有機層243と同様に例えば真空蒸着法で形成されるが、インクジェットによる塗布法などによって形成されても良い。
電極層264は、第4電極層として機能するものであり、フォトダイオードの陽極となる。この電極層264は、例えばITOをパターニングしたものである。
封止層265は、受光素子が劣化するのを防ぐための第2封止層であり、電極層264から反射層261までの積層構造を覆うように設けられている。封止層265は、封止層245と同様に例えば硬質のシリコン酸窒化膜(SiON)で軟質の有機膜を挟持した積層体からなる。
【0022】
受光素子26は、陰極としての電極層261と、陽極としての電極層264とで、受光層263を挟持した構成となる。
このような構成において、受光層263に、第2導光部材27(接触面27a)を介して光が基板22とは反対側から入射すると、電子および正孔の対が発生する。ここで、陰極としての電極層261と、陽極としての電極層264とで逆方向にバイアスをかけると、電子および正孔が分離・移動するので、受光素子26には、入射光量に応じた電流が流れることになる。
【0023】
なお、受光素子26としては、有機フォトダイオードに限られない。例えば、受光素子26としては、CCD(Charge Coupled Device)などを用いても良いし、ナノ(マイクロ)クリスタル薄膜や、CIGS(Copper:銅、Indium:インジウム、Gallium:ガリウム、Selenium:セレン)の化合物からなる薄膜を受光層263に用いたものでも良い。いずれにしても、受光素子26としては、基板22に形成された光電変換素子であれば良い。
【0024】
このように形成された発光素子24には第1導光部材25が、受光素子26には第2導光部材27が、それぞれ取り付けられる。詳細には、内面25bが発光素子24の外形に合わせた形状となるように加工された第1導光部材25は、当該第1導光部材25に近い屈折率を有する接着剤によって発光素子24の全体を覆うように基板22に接着される。同様に、内面27bが受光素子26の外形に合わせた形状となるように加工された第2導光部材27は、当該第2導光部材27に近い屈折率を有する接着剤によって受光素子26の全体を覆うように基板22に接着される。
【0025】
図6は、生体センサーにおける光の出射・入射を示す図である。
筐体10が被験者に装着された場合、被験者の皮膚が第1導光部材25の接触面25aと第2導光部材27の接触面27aとにそれぞれ接触することになる。
一方、発光素子24に順方向にバイアスがかかったとき、キャリア同士の結合によって発生した光が周囲に出射される。ただし、反射層241が発光層243bの周縁を含むように、発光層243bよりも一回り広く形成されているので、発光層243bで発生した光のうち、図6において下側に向かって出射された光は、反射層241によって反射する。この結果、発光層243bからの光は、ほぼ図において上側に向かうことになる。すなわち、発光素子24は、光を基板22とは反対側に出射するトップエミッション構造となる。
【0026】
ところで、 第1導光部材25の屈折率は、空気の屈性率よりも高い。このため、上側に向かう光のうち、界面である接触面25aに、空気に対する第1導光部材25の臨界角よりも小さい角度θaで到達した光は、図において符号Pで示されるように、第1導光部材25から角度θbで屈折して出射し、被験者の皮膚に侵入する。
一方、上側に向かう光のうち、接触面25aに上記臨界角以上の角度θcで到達した光は、図において符号Qで示されるように、接触面25aで反射した後、内部反射を繰り返す。このため、本実施形態では、被験者の皮膚に侵入しない光が、受光素子26に直接入射することが阻止される。
【0027】
被験者の皮膚に侵入した光は、表皮を透過してその奥の血管(図示省略)に到達する。血管に到達した光は当該血管を流れる血液により吸収、反射され、あるいは血液を透過する。血管に流れる血液によって反射した光は、図において符号Sで示されるように、第2導光部材27を経て、受光素子26の受光層263に入射する。
このため、受光素子26は、入射光量に応じた電流を出力する。ここで、被験者の血管は、心拍と同じ周期で膨張・収縮を繰り返している。したがって、血管の膨張・収縮の周期と同じ周期で光の反射量が増減するので、受光素子26から出力される電流の変化は、血管の容積変化を示すことになる。
【0028】
ここで、本実施形態との比較のための比較例について図11を参照して説明する。
図11に示す比較例は、被験者との密着性を向上させるために、発光素子24および受光素子26に対して平板状の透明板29を設けた構成である。
比較例においても、被験者側(上側)に向かう光のうち、界面である接触面29aに臨界角よりも小さい角度θaで到達した光については、実施形態と同様に符号Pで示されるように、透明板29から角度θbで出射する。
一方、上側に向かう光のうち、接触面29aに上記臨界角以上の角度θcで到達した光は、図において符号Nで示されるように、接触面29aで反射した後に下面29cで反射する内部反射を繰り返して、漏れ光として受光素子26の受光層263に入射する。この漏れ光は、生体情報を反映した光ではないので、生体情報を反映した光Sに対してノイズNとして作用してしまう。
したがって、この比較例によれば、受光素子26から出力される信号のS/N比が低下してしまうため、生体情報を反映した光成分を精度良く検出することができない。
【0029】
これに対して、本実施形態では、上記漏れ光が受光素子26に入射することが阻止されるので、ノイズとして作用する成分が抑えられる結果、生体情報を反映した光成分を精度良く検出することが可能となるのである。
また、本実施形態では、基板22が不透明であるので、漏れ光が基板22を介して受光素子26に伝播することも抑えられる。
本実施形態では、基板22に対して発光素子24および受光素子を薄膜積層技術によって形成しているので、生体センサー20の薄型化を図ることができる。
【0030】
図7は、生体情報検出装置1の電気的な構成を示すブロック図である。なお、この構成については、概略的な説明にとどめることにする。
この図において、駆動回路30は、演算処理回路50による制御したがって電流を常時または間欠的に供給して、発光素子24を駆動するものである。ここで、電流を間欠的に駆動する方が低消費電力化を図る上で好ましい。一方、変換回路40は、受光素子26に流れる電流を電圧に変換するとともに、当該電圧を予め定められたサンプリング間隔でデジタルデータに変換するものである。
【0031】
演算処理回路50は、発光素子24を駆動したときに、変換回路40によって変換されたデジタルデータを処理する。例えば、演算処理回路50は、当該デジタルデータから脈拍数を算出したり、内部タイマーで計測された時刻に関連付けて脈拍数を逐一記録したりする。なお、これらの情報・データを外部のコンピューターに転送したり、図示省略した表示部に表示させたり、音声合成によって出力したりしても良い。
【0032】
本発明は、上述した実施形態のほかにも、種々の応用・変形が可能である。
発光素子24と受光素子26との配列・個数については、互いに離間した状態が保たれていれば、任意である。例えば、図8に示されるように、複数個の発光素子24と複数個の受光素子26とがそれぞれ交互にマトリクス状に配列する構成であっても良い。このような構成によれば、複数個の発光素子24によって出射光の面積が広がるとともに、複数個の受光素子26によって入射光の面積が広がるので、生体情報を反映した光成分を、より精度良く検出することができる。
また、図9に示されるように、発光素子24の周辺を囲むように複数個の受光素子26が配列する構成であっても良い。このような構成によれば、同様に生体情報を反映した光成分を、より精度良く検出することができる。
なお、発光素子24と受光素子26とが複数個配列する構成では、第1導光部材25、第2導光部材27を、個々の素子の各々に対応して設ける必要はなく、発光素子24と、受光素子26とがそれぞれ互いに離間した異なる導光部材で覆われていれば良い。このため、例えば図10に示されるように、第1導光部材25から離間した1個の第2導光部材27が、複数個の受光素子26をまとめて覆う構成としても良い。
反対に、特に図示しないが、第2導光部材27から離間した1個の第1導光部材25が、複数個の発光素子24をまとめて覆う構成としても良い。
【0033】
また、図6において、第1導光部材25の側面25dまたは第2導光部材27の側面27dの一方もしくは双方に反射コーティングを施しても良い。このような反射コーティングによって、より確実に漏れ光の影響を抑えることができる。
一方、側面25d、27dの間に、
発光素子24を覆う第1導光部材25の屈折率よりも小さい屈折率の樹脂等を充填しても良い。また、充填する樹脂等の屈折率については、受光素子26を覆う第2導光部材27の屈折率よりも大きくすると、側面25dで反射しやすくなる。
【0034】
各実施形態では、被験者の測定部位を左手首としたが、例えばカフ体に生体センサーを組み込むことによって、指先を測定部位にしても良い。換言すれば、指尖脈波を検出するようにしても良い。
【0035】
また、生体センサー20は、脈波を検出する構成を例示したが、動脈血の酸素飽和度を検出するセンサーにも適用可能である。血液中のヘモグロビンは、酸素との結合の有無により赤色光と赤外光の吸光度が異なる。そこで、赤色光を発光・受光する素子、赤外光を発光・受光する素子、などのように発光波長および受光波長を異ならせた素子組を複数組用意する一方、これらの反射光を測定・解析することによって酸素飽和度を検出することができる。
また、血管としては、動脈・静脈のいずれでも良い。
生体情報としては、生体の血管のパターンでも良く、この血管パターンから当該生体を認証する認証装置にも適用可能である。
測定対象は、ヒトに限らず、動物でも良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
1…生体情報検出装置、20…生体センサー、22…基板、24…発光素子、25…第1導光部材、26…受光素子、27…第2導光部材、50…演算処理回路、241…反射層、242…電極層、243…有機層、243b…発光層、244…電極層、245…封止層、261…電極層、263…受光層、264…電極層、265…封止層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に形成され、前記基板とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子と、
前記基板の一方の面に前記発光素子と離間して形成され、前記生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子と、
光透過性を有し、前記発光素子を覆うように設けられた第1導光部材と、
光透過性を有し、前記受光素子を覆うように、前記第1導光部材とは離間して設けられた第2導光部材と、
を具備することを特徴とする生体センサー。
【請求項2】
前記基板は不透明である
ことを特徴とする請求項1に記載の生体センサー。
【請求項3】
前記発光素子は、
前記基板から向かって順に、第1電極層、発光層、第2電極層および第1封止層を少なくとも含んだ積層体である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生体センサー。
【請求項4】
前記受光素子は、
前記基板から向かって順に、第3電極層、受光層、第4電極層および第2封止層を少なくとも含んだ積層体である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の生体センサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の生体センサーと、
前記受光素子から出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路と、
を備える生体情報検出装置。
【請求項1】
基板の一方の面に形成され、前記基板とは反対側の生体に向けて光を照射する発光素子と、
前記基板の一方の面に前記発光素子と離間して形成され、前記生体からの光を受光して、当該受光に応じた信号を出力する受光素子と、
光透過性を有し、前記発光素子を覆うように設けられた第1導光部材と、
光透過性を有し、前記受光素子を覆うように、前記第1導光部材とは離間して設けられた第2導光部材と、
を具備することを特徴とする生体センサー。
【請求項2】
前記基板は不透明である
ことを特徴とする請求項1に記載の生体センサー。
【請求項3】
前記発光素子は、
前記基板から向かって順に、第1電極層、発光層、第2電極層および第1封止層を少なくとも含んだ積層体である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の生体センサー。
【請求項4】
前記受光素子は、
前記基板から向かって順に、第3電極層、受光層、第4電極層および第2封止層を少なくとも含んだ積層体である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の生体センサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の生体センサーと、
前記受光素子から出力される信号に基づいて生体情報を出力する演算処理回路と、
を備える生体情報検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−378(P2013−378A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134864(P2011−134864)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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