説明

生体光計測装置

【課題】 生体光計測装置において、被検体へ与える負荷を低減するため、光ファイバを除去し、且つ小型軽量な装置構成を提供する。
【解決手段】 プローブ装置101の内部に、1つの光源駆動装置1014、1つの分配器1015を有する事により、複数の光照射部1011へ光源駆動信号を伝送するとともに、制御演算装置102とプローブ装置101の信号送受を1列の直列デジタル信号とする構成とし、光ファイバを除去し小型軽量な生体光計測装置とした。
【効果】 本発明における生体光計測装置によれば、装置を小型化且つ軽量化する事が可能で、且つ高精度な生体信号を獲得する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて生体内部の情報を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の情報を、簡便で生体に害を与えずに計測する装置が、臨床医療や脳科学等の分野で用いられている。その中でも、特に光を用いた計測法は非常に有効な手段である。その第一の理由は、生体内部の酸素代謝機能は生体中の特定色素(ヘモグロビン、チトクロームaa、ミオグロビン等)の濃度に対応しており、これらの色素の濃度は、光の吸収量から求められるからである。また、光計測が有効である第二、第三の理由は、光は光ファイバにより扱いが簡便であり、さらに安全基準の範囲内での使用により生体に害を与えないことが挙げられる。
【0003】
このような光計測の利点を活かして、可視から赤外の波長の光を用いて生体内部を計測する生体光計測装置が、例えば、特許文献1もしくは特許文献2に記載されている。これらの文献に記載の生体光計測装置は、半導体レーザで光を発生させ、発生させた光を光ファイバで導いて被検体に照射し、生体内を透過あるいは反射してきた光を検出し、検出した光を光ファイバによってフォトダイオードまで導き、検出光量から血液循環、血行動態、ヘモグロビン変化などの生体情報を得ている。
【0004】
また、このような生体光計測を実現するために、被検体に光ファイバを接触させる生体光計測プローブが用いられている。これは、光を照射する光照射部と、生体内を透過あるいは反射してきた光を検出する光検出部と、前記光照射部と前記光検出部を格子状あるいは網目状に配列させて固定する固定部材とによって構成されている。また、この固定部材をバンドもしくはゴム紐もしくはヘアバンドなどを用いて光照射部と光検出部を被検体に接触させる形状になっている。この生体光計測プローブの例として、特許文献3などが挙げられる。また、通常光ファイバは複数あり、これら複数の光ファイバを束ねる構造を有する生体光計測プローブが、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9などに記載されている。
【0005】
上述の特許文献では、装置本体で発せられた光を光ファイバで生体へ導く事で光計測を実現しているが、より簡便で被験体への負荷を低減するためには光ファイバを用いない事が望ましい。光ファイバを除去し、簡便な計測を実現する従来技術は、特許文献10、特許文献11などに記載されている。これらは、光源および受光器を生体光計測プローブに備え、無線制御により生体情報を獲得する技術である。
【0006】
【特許文献1】特開平9−98972号公報
【特許文献2】特開平9−149903号公報(対応US2001/0018554)
【特許文献3】特開平8−117209号公報
【特許文献4】特開2001−286449号公報
【特許文献5】特開2002−11012号公報
【特許文献6】特開2003−322612号公報
【特許文献7】特開2004−205493号公報(対応US2006/0058594)
【特許文献8】特開2004−248961号公報
【特許文献9】実開平5−93403号公報
【特許文献10】特開平9−140715号公報
【特許文献11】特開2002−150123号公報(対応US2003/009336)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生体光計測において、生体に与える負荷を限りなく低減する事は最重要課題の一つである。生体光計測を実現するために光ファイバで構成された生体光計測プローブ(以下、プローブ)を被検体である生体に接触させると、生体の可動範囲が光ファイバの長さにより制限されたり、光ファイバの重量が生体に負荷を与えたりすることが考えられる。このことから、より自然な状態で生体光計測を実現するためには、光ファイバを用いず且つ小型軽量な生体光計測装置が求められて来た。そのため、従来技術ではプローブ内部に光源と検出器を配置することで光ファイバを除去しているが、その際、光源駆動装置を光源とアナログ電気信号で接続可能な箇所に設置する必要があり、電気的な、あるいは想定し得る全ての雑音をできるだけ抑制するためには、光源駆動装置をプローブ内部に配置する必要があった。また、多くの生体情報を獲得するためにプローブ内部に光源を複数配置すると、複数の光源駆動装置が必要となるため重量および体積が増大し、被検体に与える負荷が大きくなる事が挙げられる。以上より、光ファイバを用いず且つ小型軽量で、多くの生体情報を獲得する事が可能な生体光計測装置は、これまで実現されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生体光計測装置において、被検体に光を照射し被検体内部を透過あるいは反射した光を検出するためのプローブ装置と、プローブ装置と光制御信号および受光信号を送受し生体信号を獲得する制御演算装置とを有し、プローブ装置内部の最も簡易な構成として、光を照射するための1つまたは複数の光照射部と、生体を透過あるいは反射した光を検出するための1つまたは複数の光検出部と、1つの光源駆動装置と、1つの分配器を、配置するものとする。本構成において1つの分配器を配置した事により、複数の光照射部より生体に光を照射する場合においても、光源駆動装置は1つあれば良い事から、プローブ装置の重量を大幅に低減するとともに装置の小型化が可能である。
【0009】
また本構成において、プローブ装置内部の光源駆動装置の前段にデジタル/アナログ変換器と、光検出部の後段にアナログ/デジタル変換器と並列直列変換器を設けるものとし、プローブ装置と制御演算装置との間ではデジタル信号を送受するものとする。アナログの光制御信号および受光信号の送受をプローブ装置内部に納める事により、雑音を抑制するとともに、複数の光制御信号および受光信号をそれぞれ1列の直列信号として扱い、プローブ装置と制御演算装置との間の信号送受を簡易な構成で実現可能とする。
【0010】
またプローブ装置内部に分配器を2つあるいはそれ以上配置する事により、上記構成より少なくとも2倍の光検出部を配置する事が可能であり、重量低減の効果を維持しつつより多くの生体情報を獲得する事ができる。また必要に応じてプローブ装置内部に光源駆動装置とこれに対応する分配器を2つあるいはそれ以上配置する事により、多くの生体情報を獲得する事ができる。
【0011】
また上記構成において、各光照射部で照射される光は時間的に独立に発せられ且つ強度変調されており、受光信号は制御演算装置において位相同期検波処理されるものとする。このため外乱光などの雑音の除去が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明における生体光計測装置によれば、装置を小型化且つ軽量化する事が可能で、且つ高精度な生体信号を獲得する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明において、発明の実施の形態とともに図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、本発明による生体光計測装置の第一の実施の形態について説明する。図1は、本発明による生体光計測装置の装置構成の一部を表す概略図である。生体光計測装置100は、プローブ装置101と、演算装置102と、プローブ装置101と演算装置102との間で信号を伝送するケーブル900と、制御装置103から成り、演算装置102の図示しない無線送受信部1021および制御装置103の図示しない無線送受信部1031により、プローブ装置101および演算装置102での光駆動信号および受光信号を制御し、生体光計測を可能とする。演算装置102と制御装置103の信号のやり取りは、無線である必要はなく、ケーブルによる有線の信号伝送であっても良く、さらに演算装置102と制御装置103を分離する必要はなく一体構成としても良い。また、演算装置102は、計測データおよび計測手続き等を記録するための記録部104を具備し、外部メモリ1041を記録部104に着脱する事により、記録したデータを取り出したり、あらかじめ記録された計測手続きを読み出したりする事ができる。記録部104および外部メモリ1041により、にあらかじめ記録された計測手続きに従い計測を制御しつつ、計測データを記録部104にて外部メモリ1041に記録する事により、制御装置103を用いず,プローブ装置101および演算装置102のみでの計測が可能である。ここでは、プローブ装置101および演算装置102のみでの計測について記述する。
【0015】
図2は、図1に示した装置構成における信号の流れについて概略を示したものである。プローブ装置101には生体に光を照射する1つまたは複数の光照射部1011と、照射光が生体で透過あるいは反射され、これを検出する1つまたは複数の光検出部1012がある。本発明によれば、光照射部1011で照射される光駆動信号は、演算装置102の内部にある変調器1022において、ある特定の周波数、またはある種の符号に基くデジタルの振幅変調信号として発生され、プローブ装置101に至る。プローブ装置101において光駆動信号はD/A変換機1013によってアナログの振幅変調信号に変換され、1つの光源駆動装置1014に伝えられる。光源駆動装置1014では、アナログの振幅変調信号を光駆動信号に変換し、マルチプレクサ1015によって1つまたは複数の光照射部1011各々へ図6のようにタイミングをずらして伝える。光照射部1011では、光駆動信号に基づき強度変調光を発生させ、生体に順次照射する。光検出部1012では、生体を透過または反射した強度変調光がアナログの振幅変調信号として出力される。このアナログの振幅変調信号は、各光検出部1012に対応したA/D変換機1016においてデジタルの振幅変調信号に変換される。このデジタルの振幅変調信号は、パラレル/シリアル変換機1017によって1つにまとめられ、演算装置102へ1つのデジタル信号として送られる。このように、D/A変換機1013、光源駆動装置1014、マルチプレクサ1015、A/D変換機1016、パラレル/シリアル変換機1017をプローブ装置101内部に有する事で、プローブ装置101と演算装置102との間を、光源駆動側および光検出側の信号のやり取りをそれぞれ1本ずつのケーブルで伝送する事ができる。
【0016】
本発明による生体光計測装置により、マルチプレクサ1015を用いる事で全ての光照射部1011から光照射する事ができる。そのため、各光照射部1011に対応した光源駆動装置を用意する必要はなく、1つの光源駆動装置1014を用いるだけで良い事になり、この装置構成は装置の小型化に必要不可欠なものである。
【実施例2】
【0017】
生体や周囲の温度変化等の種々の原因により照射光量が変動した場合に、検出光量を補正する例について説明する。図3は、本発明における実施の形態の1つを示したもので、プローブ装置101内の光検出部1012とA/D変換機1016とパラレル/シリアル変換機1017を省略してある。本実施例によれば、各光照射部1011には、モニターフォトダイオード109が具備されていて照射光量を常時検出しており、検出信号をバッファメモリ1018を通して1つにまとめ、A/D変換器1019へ送り、一連のデジタル信号として演算装置102へ伝送している。またこの演算装置102へ伝送するまでの処理は、図2に示す構成と同じく光検出部1012に対応するA/D変換器とパラレル/シリアル変換器を用いても良い。本来照射すべき光量がPsであった場合、周囲の温度変化等の種々の原因により、ある時刻tにおける実際の照射光量が本来のk(t)倍に変化すると、時刻tにおける実際の照射光量はPs×k(t)となる。この時、モニターフォトダイオード109で観測された照射光量Ps×k(t)が演算装置102へ伝送され、既知の値Psよりk(t)を算出できる。一方、本来照射すべき光量Psに対し、光検出部1012にて本来検出されるべき検出光量をPd(t)とすると、Pd(t)には、光が被検体である生体内を透過あるいは反射する事で得られる生体情報の時間的変動が含まれている。そのため、照射光量の時間的変動k(t)が生じると、検出光量はPd(t)×k(t)となり、生体情報の時間的変動と照射光量の時間的変動とがともに含まれて検出される。ここで、モニターフォトダイオード109と演算装置102より照射光量の時間的変動k(t)をあらかじめ獲得しているため、リアルタイムでも事後処理であっても、k(t)にて検出光量を除算する事により、本来の信号であるPd(t)を回復する事ができるため、周囲の温度変化等の種々の原因に伴う照射光量の変動によらない生体情報計測データを記録する事ができる。
【0018】
また、光源駆動信号をV(t)とし、得られたk(t)をリアルタイムに光源駆動信号にフィードバックする事により、照射光量を調節する事も可能である。すなわち、ある時刻tにおいて、直前に得られたk(t−1)を用い、V(t)÷k(t−1)を光源駆動信号として伝送すれば良い。これにより、光照射部で発生させる光の強度をほぼ一定に保つ事ができる。
【実施例3】
【0019】
図4は、本発明における実施の形態の1つを示したもので、プローブ装置101に配置された光照射部1011および光検出部1012を示している。この配置において、各光検出部1012は、複数の光照射部1011より照射された光を検出し、このとき図2におけるマルチプレクサ1015によって光照射部1011の光照射は時間的に分離されているため、演算装置102において処理される照射タイミングにより、どの光照射部1011からの信号かを分離する事ができる。また、本発明による生体光計測装置によれば、各光照射部1011で照射される光は強度変調光であるため、演算装置102において同期位相検波処理を行うため、光検出部1012に入り込む迷光などの種々の原因から生じる雑音を除去し、本来の生体信号を精度良く取得する事が可能である。
【実施例4】
【0020】
本実施例では、生体光計測における光照射部1011の光量レベル設定として、光検出部1012で検出される複数の光照射部1011からの光量レベルを調整し、A/D変換機1016の検出範囲を効率的に設定する例について説明する。図5に示す例では、各光照射部1011には波長λ1の光源1011aと、λ1とは異なる波長λ2の光源1011bと、これら2光源の光強度を監視するモニターフォトダイオード109があり、光検出部1012においては少なくとも2つの光照射部1011から4つの光が到達する。このとき、光検出部1012に到達した光の4つの検出光量をP1、P2、P3、P4(光量の大きさはP1<P2<P3<P4)とする。これらは、マルチプレクサ1015により時間的に分離して照射された光に基づくため、独立に光量を評価する事ができる。P4に対し、P1、P2、P3が弱い場合、演算装置102において光駆動信号をそれぞれ(P4/P1)倍、(P4/P2)倍、(P4/P3)倍とするフィードバックを与える事で、検出光量レベルを合わせて照射光量を調整する事ができる。一方で、照射光量の安全性を確保する必要があるため、安全基準レベルPbがあらかじめ設定されており、モニターフォトダイオード109にて検出される照射光量がPbを超えないように演算装置102において制御される。例えば上述の例において4光源の照射光量をPs1、Ps2、Ps3、Ps4とし、Ps2<Pb<Ps3であった場合、照射光量をそれぞれ(Pb/Ps1)倍、(Pb/Ps2)倍、(Pb/Ps3)倍、(Pb/Ps4)倍とするように、演算装置102において光駆動信号にフィードバックを与える。
【実施例5】
【0021】
次に、2つの変調器と、2つのD/A変換器と、2つの光源駆動装置と、2つのマルチプレクサを用いる事により、少なくとも2倍の数の光照射部1011を持ち、且つ全光照射部1011の照射時間を変える事のない生体光計測装置を構成する実施例について説明する。すなわち、図7に示す通り、演算装置102に備えた第1の変調器1022において第1の変調周波数または第1の符号に基づくデジタルの振幅変調信号を発生させ、これをケーブル900を通じて第1のD/A変換器1013に伝送し、これに基づき第1の光源駆動装置1014において第1の光駆動信号を生成して第1のマルチプレクサ1015に伝送し、第1のマルチプレクサ1015によって第1の光駆動信号をm1個の光照射部1011に分配して被検体に光を照射するとともに、演算装置102に備えた第2の変調器2022において、第1の変調周波数とは相関のない第2の変調周波数または第1の符号とは相関のない第2の符号に基づくデジタルの振幅変調信号を発生させ、これをケーブル900を通じて第2のD/A変換器2013に伝送し、これに基き第2の光源駆動装置2014において第2の光駆動信号を生成して第2のマルチプレクサ2015に伝送し、第2のマルチプレクサ2015によって第2の光駆動信号をm2個の光照射部2011に分配して被検体に光を照射する。この時、光照射部1011および光照射部2011においては、第1の変調周波数または第1の符号を持つ光と第2の変調周波数または第2の符号を持つ光が同時に被検体に照射されるが、演算装置102で行う位相同期検波処理により、対象とする周波数または符号とは異なる光信号は除去されるため、異なる周波数または符号を持つ光信号に影響されず、また雑音に対する精度と計測時間を劣化させる事なく、より多くの生体情報を得る事が可能である。
【実施例6】
【0022】
上記実施例5に示した例において、第1のマルチプレクサ1015により光駆動信号を分配される光照射部1011と、第2のマルチプレクサ2015により光駆動信号を分配される光照射部2011とが、空間的に充分離れ、一方の光照射部1011で照射された光が被検体内を伝播し他方の光照射部2011近傍で無視できるほど減衰していると判断される場合、第1の変調周波数または符号と第2の変調周波数または符号を同一にする事が可能である。この場合、図8に示すように、第1のマルチプレクサ1015および第2のマルチプレクサ2015を備えるとともに、変調器1022、D/A変換器1013、光源駆動装置1014はそれぞれ1つのみ備える事により、より簡素化した装置構成で多くの生体情報を得る事が可能である。また、本実施例による構成と、実施例6に示した装置構成を組み合わせる事により、さらに多くの生体情報を得る事が可能である。
【実施例7】
【0023】
また上述の実施例5および実施例6の装置構成において、第1の光源駆動装置と第2の光源駆動装置でそれぞれ発せられる光駆動信号の位相を反転させる事で、電源由来のノイズを抑制する事ができる。図9のように、第1の光源駆動装置1014および第2の光源駆動装置2014および光検出部1012が同一の電源部500より電源を供給された状況において、第1の光源駆動装置1014および第2の光源駆動装置2014より出力されるアナログの光駆動信号がある特定の周波数で変調された矩形波の振幅変調である場合、電源部500から見ると、振幅変調に伴いインピーダンス変動が生じる。そのため変調に伴う変動が光検出部1012にノイズとして回りこむ可能性がある。この時、第1の光源駆動装置1014より発せられる第1の光駆動信号と、第2の光源駆動装置2014より発せられる第2の光駆動信号を同一の周波数で変調された矩形波とし、且つ位相が反転しているものとすると、図10のように、電源部500から見たインピーダンス変動はほぼ一定となる。本発明による生体光計測装置において、上述の第1および第2の光駆動信号を用いる事により、不要なノイズを抑制する事が可能である。
【実施例8】
【0024】
次に、図11に示す通り、プローブ装置101に表示部301と1つの処理部300を備える事により、プローブ装置101上に計測結果を即時に表示する実施例について説明する。演算装置102にて処理され獲得された生体情報は、演算装置102とプローブ装置101とを結ぶケーブル302により処理部300へ即時に伝送され、処理部300より各表示部301へ送られる。表示部301は、LED、液晶など視覚的な表示装置や、スピーカなどの音声呈示装置やバイブレータなどの振動装置、サーミスタなどを利用した温度呈示装置であっても良い。表示する生体情報が2種類の場合で、且つプローブ装置101の表面に表示部301、裏面に光照射部1011および光検出部1012を備えた場合の実装例を図12に示す。破線で示した光照射部1011および光検出部1012は裏面に存在する事を示す。図12では、光照射部1011と光検出部1012の略中点で生体情報が得られた場合の例を示しており、生体情報が得られていると想定される箇所に表示部301を配置しているが、表示部301は必要に応じて適切な配置箇所に実装すれば良い。この例では生体情報が2種類あるため、各表示部301には、第1の生体情報を表示する第1の表示部3011と、第2の生体情報を表示する第2の表示部3012が存在する。例えば、第1の表示部3011および第2の表示部3012がともにLEDであり且つ生体情報として生体内の特定の2種類の物質の濃度を示す表示部である場合、物質の濃度が増大に伴い発光量を増大させ、また物質の濃度の減少に伴い発光量を減少させる事で、生体情報である各物質の濃度変化を即時に表示する事が可能である。また図13に示すように、ケーブル302に換えて、プローブ装置101の内部に備えたケーブル303により、光検出部102により得られた信号を、演算装置102を介さずに処理部300へ伝送し、処理部300にて生体情報獲得のための必要な処理を施し、表示部301を制御する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明による生体光計測装置は、プローブ装置内部にD/A変換器、光源駆動装置、分配器、A/D変換器、パラレル/シリアル変換器を具備する事を特徴とした装置構成により、従来の生体光計測装置で用いられていた光ファイバを除去するのみならず、現実的な装置の小型化を提案し実現した。小型化に伴い、被検体に対する拘束性も低減され、医療・福祉機関や研究機関といった専門機関のみならず、スポーツやアミューズメント、教育など幅広い分野での活用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明における生体光計測装置の概略図。
【図2】本発明における生体光計測装置において、信号の流れを示す概略図。
【図3】本発明における生体光計測装置において、信号の流れを示す概略図。
【図4】本発明における生体光計測装置において、光照射部および光検出部の一例を示す概略図。
【図5】本発明における生体光計測装置において、1つの光検出部の近傍に、異なる波長の2つの光源と1つのモニターフォトダイオードを有する光照射部を2つ備えた例を示す概略図。
【図6】本発明における生体光計測装置において、複数の光照射部で照射する光が同一の変調周波数を持ち、各光照射部での照射タイミングが時間的に重ならない事を示す概念図。
【図7】本発明における生体光計測装置において、2つの異なる変調周波数を持つ光駆動信号を利用し、多くの計測信号を得る事を実現する構成の一例。
【図8】本発明における生体光計測装置において、1つの変調周波数を持つ光駆動信号により、多くの計測信号を得る事を実現する構成の一例。
【図9】光源駆動装置と光検出部に電源を供給するための構成の一例。
【図10】2つの光源駆動装置で生成する光駆動信号に同一の周波数を持たせ且つ位相を反転させた時の信号の振幅変化と、その際に生じるインピーダンス変動の一例。
【図11】本発明における生体光計測装置において、表示部に生体情報を表示する構成の一例。
【図12】本発明における生体光計測装置において、表示部に生体情報を表示するための実装例。
【図13】本発明における生体光計測装置において、表示部に生体情報を表示する構成の一例。
【符号の説明】
【0027】
101…プローブ装置、
1011…光照射部、
1011a…波長λ1の光源、
1011b…波長λ2の光源、
1012…光検出部、
1013…D/A変換器、
1014…光源駆動装置、
1015…マルチプレクサ(分配器)、
1016…A/D変換器、
1017…パラレル/シリアル変換器、
1018…バッファメモリ、
1019…A/D変換器、
102…演算装置、
1022…変調器、
103…制御装置、
104…記録部、
1041…外部メモリ、
109…モニターフォトダイオード、
2011…光照射部、
2013…D/A変換器、
2014…光源駆動装置、
2015…マルチプレクサ(分配器)、
2022…変調器、
300…処理部、
301…表示部、
3011…第1の表示部、
3012…第2の表示部、
302…ケーブル、
303…ケーブル
500…電源部、
900…ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光を照射し前記被検体内部を透過あるいは反射した光を検出するためのプローブ装置と、
前記プローブ装置に光制御信号を送り且つ前記プローブ装置から受光信号を受け取り生体信号を獲得する制御演算装置とを有し、
前記プローブ装置内部には、
光を照射するための光照射部と、
前記光制御信号をデジタル信号からアナログ信号に変換するためのデジタル/アナログ変換器と、
アナログ信号に変換された前記光制御信号を受け取り光源駆動信号を発生させる少なくとも1つの光源駆動装置と、
前記光源駆動装置に対応し前記光源駆動信号を前記光照射部に時間的に順次分配する分配器と、
被検体内部を透過あるいは反射した光を検出する光検出部と、
前記光検出部で発生した受光信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、
デジタル信号に変換された受光信号を並列信号から直列信号へ変換する並列直列変換器とを有し、
前記プローブ装置と前記制御演算装置との間でデジタル信号を送受信する事を特徴とする生体光計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体光計測装置において、前記プローブ装置内部に、前記光照射部で被検体に照射する光の強度を観測するためのモニターフォトダイオードと、前記モニターフォトダイオードで発生した観測信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換器とを有し、前記観測信号を前記制御演算装置へ伝送し、前記光検出部より前記制御演算装置へ伝送された前記受光信号を前記観測信号で除算する事を特徴とする生体光計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体光計測装置において、前記プローブ装置内部に、前記光照射部で被検体に照射する光の強度を観測するためのモニターフォトダイオードと、前記モニターフォトダイオードで発生した観測信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ/デジタル変換器とを有し、前記観測信号を前記制御演算装置へ伝送し、前記観測信号に基づき前記光制御信号を調整し前記光照射部で発生させる光の強度をほぼ一定に保つ事を特徴とする生体光計測装置。
【請求項4】
前記分配器は複数有り、
1つの前記光源駆動装置から、前記複数の分配器に、前記光源駆動信号を伝送することを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項5】
前記光源駆動装置と前記分配器は複数有り、
前記複数の光源駆動装置それぞれに、互いに異なる変調周波数または符号の変調信号を伝送し、
前記分配器それぞれには、前記互いに異なる変調周波数または符号の変調信号に変調された前記光源駆動信号が伝送されることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【請求項6】
被検体に光を照射し前記被検体内部を透過あるいは反射した光を検出するためのプローブ装置と、
前記プローブ装置に光制御信号を送り且つ前記プローブ装置から受光信号を受け取り生体信号を獲得する制御演算装置とを有し、
前記プローブ装置内部には、
前記被検体に光を照射するための少なくとも2つの光照射部と、
前記被検体内部を透過あるいは反射した光を検出する少なくとも1つの光検出部とを有し、
各光照射部で照射される光は時間的に独立に発せられ且つ強度変調されており、
前記制御演算装置において前記受光信号を位相同期検波処理する事を特徴とする生体光計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−178563(P2008−178563A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14436(P2007−14436)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】