説明

生体光計測装置

【課題】 生体光計測によって唾液腺機能を計測する装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、被験体の唾液腺近傍に光を照射し、反射または透過した光を受光する光計測手段と、前記光計測手段が受光した計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化を血中物質濃度変化の信号波形として描出する信号処理手段と、前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備えた生体光計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に光を照射し、表面に近い人体内部で反射或いは散乱した光(以下、生体通過光ともいう)を計測し、生体機能を計測する装置(生体光計測装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
生体光計測装置は、可視から近赤外の光を用いて生体通過光を検出し、無侵襲的に生体機能を計測する装置である(例えば特許文献1、2)。近年、光ファイバを用いて複数の位置から光を照射し複数の検出点で生体通過光強度を計測し、これら検出点を含む比較的広い領域の通過光強度情報を得て、脳活動の応答信号を時間波形(タイムコース))や2次元の画像として表示する生体光計測装置も開発されている(例えば特許文献3)。
【0003】
これらの生体光計測は、主として、刺激等負荷前後の血中物質の相対的変化と脳機能との関連性に基づくものであり(例えば、視覚刺激を与え、視覚野の脳活動を知る)、一般的に脳機能計測手法として利用されている。しかしながら、同様の手法を用いて、脳以外の器官の機能変化・生理変化を計測する装置はほとんどない。唾液腺機能を計測する場合、MRIや超音波エコー、シンチグラフィーが利用されているが、拘束性や侵襲性があること、計測時間が長いこと、ベッドサイドでは計測できないこと、また、リアルタイムに機能変化をモニタすることは困難である。
【0004】
また、唾液分泌量の変化は、口腔状態(ドライマウス、口臭、嚥下や咀嚼のしやすさ、発話)、精神状態の変化とも関連している。唾液分泌量を計測する場合には、脱脂綿を噛む、数分間にわたり自分で唾液を吐き出すという方法がとられており、無侵襲にリアルタイムで計測することは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開昭57-115232号公報
【特許文献2】特開昭63-275323号公報
【特許文献3】特開平9-98972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の生体光計測装置は、脳機能計測手法として利用されており、脳以外の器官の機能変化・生理変化の計測を試みてはおらず、脳以外の器官の機能変化を計測できるかどうか不明であった。脳以外の器官である唾液腺の機能変化を臨床検査する場合、一般的には、MRIや超音波エコー、シンチグラフィーが利用されているが、計測時間が長く、拘束性や侵襲性があり、リアルタイムに機能変化をモニタすることができなかった。また、唾液は、食べ物の消化作用のほか、口腔内環境を維持する作用がある。例えば、汚れの洗浄作用、発話や咀嚼の円滑作用、抗菌作用、pH維持作用(細菌繁殖を防ぐ)、などがある。したがって、唾液腺分泌能の変化は、口臭や虫歯の状態、嚥下や咀嚼、発話の活動などにも深く関連している。こうした唾液分泌能を計測するためには、数分〜数十分かけて、唾液を吐き出す、コットンを口腔内へ入れて取り出すという手法がとられているが、リアルタイムに唾液腺分泌能を計測することはできなかった。そこで、本発明は、唾液腺機能の計測ができる生体光計測装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生体光計測装置は、側頭部から顎下部にかけての唾液腺近傍に、光を照射し、反射または透過した光を受光する光計測手段と、前記光計測手段が受光した計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として描出する信号処理手段と、前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
唾液腺の機能変化を計測する場合、MRIや超音波エコー、シンチグラフィーが利用されているが、拘束性や侵襲性があること、計測時間が長いこと、リアルタイムに機能変化をモニタできないことなどの課題があった。本発明によれば、生体光計測手法を用いることで、無侵襲、低拘束、短時間で、リアルタイムに唾液腺の状態を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はじめに、唾液腺について説明する。図1に唾液腺の位置を示した。唾液腺は、大唾液腺と小唾液腺から成り、大唾液腺には耳下腺1、顎下腺2、舌下腺3がある。最も大きな耳下腺は、耳の前から頬骨の先端部に位置し、長さ5-6cm、太さ2-3mmの漿液腺である。顎下腺は、顎の下の三角部分に位置し、長さ約5cmの漿液腺と粘液腺の混合腺である。舌下腺は、口腔底粘膜の下に左右1つずつ存在し、大きさは約1-2mm程度で、ほぼ粘液腺である。形状は房状である。
【0010】
唾液生成・分泌の機能について説明する。唾液は血液から生成され、能動輸送によって水に近い成分へ変えられ、房状の腺房から出ている導管部分より分泌される。したがって、唾液腺近傍の側頭部から顎下部までの領域では、唾液生成・分泌が起こると、エネルギー消費に伴う酸素消費が生じ、血中ヘモグロビン濃度が変化すると考えられる。
【0011】
次に、唾液分泌量と唾液腺機能の変化に伴うヘモグロビン信号変化との関連について検討した結果を説明する。分泌される唾液は耳下腺直近の奥歯と頬の間に挿入したコットンによって採取し、ヘモグロビン信号変化は、左右側頭部から頬、顎下までの領域で計測した。図2は、1モル濃度のスクロース溶液を脱脂綿に浸した味刺激を1-2秒間、舌の上に当てたときの、代表的な反応部位での酸素化ヘモグロビン信号変化である。唾液はコットンを挿入しただけでも分泌されるため、コットンを口腔内へ入れてから、90秒間の唾液腺反応をベース刺激の唾液分泌反応とし(図2-a)、引き続き、次の90秒間で、味刺激呈示を行い、唾液刺激反応(図2-b)を計測した。終了時に、口腔内からコットンを取り出し、コットンの重さの変化から分泌量を算出した。刺激は1-2秒間の呈示で、1)刺激なし、2)市販の速溶解性フィルム(グレープフルーツミント)を舌上へのせる、3)1モル濃度スクロースを浸した脱脂綿を舌上へのせる、4)市販の口臭防止スプレー(クールミント)を噴射する、の4種類を実施した。
【0012】
図3は、刺激呈示によるヘモグロビン信号変化のピーク値と、唾液分泌量の相関図を示している。刺激によって、唾液分泌量が増加し、これに伴い、ヘモグロビン信号変化のピーク値が増大していた。唾液腺機能変化をヘモグロビン信号変化で計測できることが示された。また、唾液分泌量とHb信号の相関係数rは、0.79であった。この関係より、唾液分泌量は、Hb信号と線形関係(y(Hb信号)=0.848x(唾液分泌量)+0.5442)にあることが分かった。それゆえ、唾液分泌量は、Hb信号との線形式から算出することができる。生体光計測装置を用いて、唾液量の分泌量を測定できるので、リアルタイムの唾液量測定が可能となる。
【0013】
また、図4に示すように、刺激呈示方法、刺激の種類によって、唾液分泌量とヘモグロビン信号変化が異なっていた。刺激呈示の種類による唾液腺機能変化をヘモグロビン信号変化で計測できることが示された。
【0014】
さらに、刺激に対するヘモグロビン信号変化の反応部位は、図5に示すように、頬上部と頬下部、こめかみ部において顕著であったため、各部位で、生体光計測装置により、唾液腺機能を計測できる。また、顎下部については、顎下線が近傍にあるので、顎下部を測定しても、唾液腺機能を計測できる。
【0015】
さらに、本発明の生体光計測装置は、3つの唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)のうちいずれか、または全ての唾液腺を同時に計測できる光計測手段を備えている。唾液腺は、耳介から顎骨の下部、頤部の下に位置しているため、この領域を計測する。耳介より上の側頭部のこめかみ部分においても味刺激による唾液腺反応が観測されたことから、側頭部に光計測手段を備えてもよい。
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<唾液腺計測の生体光計測装置>
図6は本発明の生体光計測装置の全体を示すブロック図である。この生体光計測装置は、主として光計測部10と信号処理部20と刺激制御装置30とからなる。光計測部は、例として図17の手段を当てはめているが、図18、図19の手段であっても構わない。
【0017】
光計測部10は、光源部11と光検出部12とからなる。光源部11は、所定の波長の光を発生するレーザー等の光源と、光源が発生した光を測定点の数に対応する数の異なる周波数の光に変調する光変調部と、変調された光を被検体40の頭部〜顔面または顎下部分に導くための光ファイバー13とを備えている。光源11が発生する光の波長は、計測の対象である血中物質がヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン及び脱酸素化ヘモグロビン)の場合、800nm近傍である。計測対象物質が異なる場合には異なる波長を採用することができる。本実施の形態では、血中物質がヘモグロビンである場合を説明する。
【0018】
生体光計測における計測点は、光照射位置と光検出位置とのほぼ中央に位置する点で、その位置及び数は、光照射位置と光検出位置の数及び配置によって決まる。通常、複数の光照射位置と複数の光検出位置は、3×3、4×4などのマトリクス上の点に交互に配置され、それぞれの距離は適度に離れている(本発明では3センチ)。3×3マトリクスの場合、計測点は12となる。本発明の適用において測定点は単一でも複数でもよい。
【0019】
光検出部12は、先端が光検出位置に配置された光ファイバー13からの光を受光する受光素子と、受光した光を変調周波数または時間分割により弁別し、計測点ごとのヘモグロビン変化信号を生成する検出回路などからなる。また、1点の照射光に対し、2点の受光素子の距離を変え、反射光が検出された時間に対する強度分布を利用しヘモグロビン濃度を生成する空間分解分光法を備えた検出回路などを備えてもよい。この場合、照射点を2点にすることもできる。また、透過光から断層の画像構成を行う光トモグラフィ法を利用することもできる。
【0020】
信号処理部20は、ヘモグロビン変化信号に対し、生体内の血行動態変化の時系列処理(タイムコースデータの作成)や画像化(信号波形の作成)を行うヘモグロビン信号処理部21と、信号処理後の計測データを記憶する記憶部22と、被検体情報を入力し、解析データを表示する表示部23を備え、さらに外部装置として、ヘモグロビン信号処理部21や表示部23における信号処理や解析に必要な指令を入力するためのキーボード、マウスなどの操作部24を備えている。データ表示部24は、結果画像の表示のほか、操作部24と連動したGUIの表示を行う。
【0021】
信号処理部20は、操作部24からの指令に基づき、被験体情報の入力、計測部位の選択、計測回数の選択、信号処理方法の選択を行い、被検体の唾液腺機能状態の表示などを行う。
【0022】
刺激制御装置30は、被検体40に与える刺激や指示を制御する装置であり、刺激用の画像・音・音声・言語データなどをアナログまたはデジタルデータとして記憶する記憶部31、刺激用の画像・音・音声・言語データを被検体に呈示するためのスピーカ或いはPC画面等の刺激発生部32、刺激発生部からの刺激の発生タイミングを制御する制御部(図示せず)などからなる。このような刺激制御装置30は、生体光計測装置の一部として設けても良いが、独立の装置とすることもできる。その場合、刺激が出されたタイミング、時間、時刻などの情報を生体光計測装置(の信号処理部20)に送る。或いは生体光計測装置から刺激制御装置30に指示を送り、その指示によって記憶部に記憶された画像・音・音声・言語データの指示された刺激を指示されたタイミング、時間で発生させるようにしてもよい。
<唾液腺計測の生体光計測装置の計測手順GUI>
次にこのような構成における生体光計測装置の動作を説明する。なお、図示したグラフィカルユーザーインターフェースはあくまで一例であり、本発明をこの形態に限定するものではない。
【0023】
図7は、計測手順のフローを示している。図8〜図15は、表示部23におけるグラフィカルユーザーインターフェース例を示している。
【0024】
被験体または計測者は、被験体情報を入力する(図8)。被験体情報は例えば、年齢・性別・食事の時間・ストレスの有無・虫歯の有無などである。この情報は被験体の唾液腺機能の変化を理解するために利用する。また、他の唾液腺機能の変化を理解するための情報を追加することもできる。例えば、口臭の有無や口腔乾燥の有無などが挙げられる。これらの情報は、計測結果表示の際に、同時に表示し、唾液腺機能の変化の意味理解を促す。
【0025】
次に、計測部位を、こめかみ部、頬上部、頬下部、顎下部の左右それぞれから選択する(図9)。左右を選択するのは、両側の唾液腺機能が異なる場合があるためで、一般的に、唾液腺腫瘍などによって左右の唾液分泌能が異なることが分かっている。ここでは、左右の頬上部、頬下部の計測を選択する。また、唾液分泌は、口腔内を刺激しただけで生じるため、異なる刺激に対する唾液腺機能の変化を計測する場合、ベース刺激を選択し、これを利用することで、刺激の種類による反応差異を計測することができる。例えば砂糖水に対する唾液分泌を調べる場合には、一回目にベース刺激として水を飲み、二回目から、計測目的である砂糖水を飲む。
【0026】
なお、咽頭部を計測する場合には、嚥下に伴う筋肉活動の変化を利用してもよい。
【0027】
次に、計測回数を選択する(図10)。計測は、刺激の呈示時間と休息時間とを1組とする試行期間中に行い、ヘモグロビン変化信号を求める。口腔刺激による唾液生成・分泌は数秒後から始まり、数分でピークとなるため、この刺激に対する血中物質の変化もこのオーダーで生じると考えられる。したがって、刺激呈示後の休息時間はおよそ90秒を目安として決定しているが、必要に応じて変更してもよい。この開始−刺激までの時間および、刺激−終了までの時間は、自由に変更できる。この試行を1回または複数回行い、各回で得られた信号波形に関して、平均処理、フィルター処理、ベースライン処理を行うことができる。ここでは、計測回数を1回とする。
【0028】
次に、光計測部10を被験体に装着し、装着後には、光照射-光検出ができているか確認してから計測開始へ進む。計測開始から終了まで、刺激制御装置30からタイミングと指示が与えられる(図11)。被験体は、この合図にしたがい、休息時間には呼吸を整えて待ち、90秒経過後、口腔刺激として準備された試料を摂取する(図12)。
計測が終了すると、そのまま結果を表示するか、詳細な解析処理へ進むか選択する(図13)。「そのまま結果を表示する」場合、計測結果の表示項目を選択する(図14)。ヘモグロビン変化信号の時系列変化の波形、多点計測の場合には画像化して表示することができる。複数回の試行を行う場合、平均加算波形、平均画像を描出できる。ここでは波形の表示を選択する。
【0029】
「詳細に解析処理」を選択する場合、ベースライン補正やフィルター処理などを選択し、これらの処理を行った結果を表示することができる(図14)。ここでは、ベースライン補正を選択し、唾液腺機能の波形変化を表示する(図15)。
【0030】
なお、図14に示す「表示項目の選択」中の1.波形については、図2に示すようなグラフである。また、2.画像については、波形の数値の多い少ないを色であらわすグラフである。また、3.加算波形、4.加算画像については、何度も計測した結果を重ね合わせたグラフである。5.左右差インデックスについては、被検体の左右の差示したグラフである。また、「処理項目の選択」の1.ベースライン補正とは、先述したとおりである。また、2.フィルター補正とは、得られた信号から、0.8〜1Hzの信号を除去することにより、心拍の影響を除去する処理である。3.唾液量算出は、得られたHb量を上述した線形式により唾液量に換算し、かつ積分することにより、総唾液量を算出する処理である。なお、刺激は口腔刺激のみならず映像や音声、匂いなどを利用できる。
<唾液腺計測の生体光計測装置のプローブ>
図16〜図21は、実施例の唾液腺機能の生体光計測装置において、被検体40の唾液腺機能の変化を計測する光計測手段の実施例の形態を示している。
<唾液腺を測るためのプローブホルダ>
図16は、光計測手段と被験体を示したブロック図である。光計測部10は、光源部11と検出部12から構成され、有線または無線で信号処理部(図6-20参照)へと通信する機能を持つ(信号処理部は図示せず)。耳下腺の位置する耳前〜頬にかけて、顎下腺の位置する顎側面下、舌下腺の位置する頤部に装着し、光源部10および検出部11からの光ファイバ13を導くプローブホルダ14を備えている。図16では、ヘアバンドで固定しているが、ヘッドフォン型でもよい。
<光源部と検出部に関する実施形態>
図17は、光源部50と検出部51が1組となった一体型の光計測部52を示している。光源部50と検出部51は、ナノプリントで作成することで薄型となり、シールなどを利用して該当部位に貼ることができる。光計測部52は、専用枠53に装着され、専用枠53は有線または無線で信号処理部(図6-20参照)に通信する機能を有する。このような光計測手段を顔面部に固定する専用枠を有し、光計測部分のみ取り外す構成により、顔面部に装着する部分の衛生管理がしやすくなる。
【0031】
図18は、光源部と検出部が内蔵された光計測手段の機能を有する手持ち型の光計測部60である。このような手持ち型の光計測部60を被験体40の唾液腺部位にあてながら計測する。図18−60では、具体的には、こめかみ部、頬上部、頬下部のいずれか、もしくは全ての部位に照射する。顎下部に照射しない理由は、顎下部と他の部位をつなぐ顎は、カーブがきついため、装着しずらいからである。また、光照射手段と光受光手段を搭載する基板は、被検体の頬の形に添った湾曲形状である。また、光計測部60に表示部61を装備し、信号処理部(図6-20参照)からの結果の表示を行ってもよい。
【0032】
また、手持ちの光計測部61を電話型にすることもできる。この場合には、光照射手段と光受光手段を搭載する基板は、側頭部から顎下部の唾液腺部位のカーブに応じて、顔面部カーブに合わせて、折りたたみ式形態電話のように、自由に角度を変えられる。電話型の光計測部62に表示部63を装備し、結果の表示を行ってもよい。このような形態により、被験者自身が光計測部を安定的に持ち、測定部位に光計測部を当てることができる。また、このような電話型の光計測部は、顎下部と、こめかみ部、頬上部、頬下部のいずれか、もしくは全ての部位に光を照射する。
【0033】
さらに、本発明の他の実施様態として、図19は、口腔内へ光を照射するためのマウスピース型の光計測部を示している。マウスピースの両端には光源部70があり、このマウスピースを口に挟むことで光源部70を口腔内へ固定することができる。この構成により、測定位置がずれにくく、再現性が高く、装着しながら運動をしても、ずれない効果をそうする。また、検出部は口腔外に配置する。図19の実施例では、検出部をヘッドフォン型としている。また、照射部と検出部の位置を逆にしてもいい。
【0034】
また、光源部82を導くためのライトガイド80を利用してもよい。このライトガイド80に沿って光源部82を口腔内へ入れれば、安全性が高くなる。これらの検出部71、81は、図19で示すように、口腔外から頬などの部位に当てて計測する。これらの検出部71、81は、ヘアバンドやヘッドフォンのように固定してもよいが、図18のような実施形態で、検出部のみを有した手持ち型、電話型としてもよい。また、検出部71、81に表示部を備え、信号処理部(図6-20参照)からの結果を表示してもよい。また、光源部と検出部を反転させ、検出部を口腔内へ備え、光源部を口腔外へ備え計測してもよい。検出部を口腔内に備える場合には、照射光をライトガイドを介して、検出部が検出することとする。
【0035】
また、本発明の他の実施様態では、光計測手段または口腔外に備えた検出部に、処理結果を表示する表示手段を備えている。これによって、計測した部位に処理結果を表示することができる。
【0036】
また、本発明の生体光計測装置において、1つの光源部に対し、少なくとも2つの検出部の距離を変化させ、空間分解分光法を利用することで、前記各唾液腺機能変化に相応する血中物質の絶対値を抽出する信号処理手段と、前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段を備えている。
【0037】
また、本発明の生体光計測装置において、光トモグラフィ法を利用することで、前記各唾液腺の断層像を構成する信号処理手段と、前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段を備えている。
【0038】
本実施例で示した唾液腺機能を計測する生体光計測装置により、これまで困難であった唾液腺機能の変化を、無侵襲に、低拘束で、短時間のうちに計測することができ、その変化の様子はリアルタイムで観測できる。唾液腺機能の変化からは、唾液分泌能の低下や口腔状態の変化を知ることができ、唾液腺腫瘍、ドライマウス、口臭、咀嚼機能の低下、虫歯のなりやすさなどの判別支援に有効である。また、ベース刺激の利用により、味刺激による反応差異を計測できる。
【0039】
また、唾液腺機能の変化は、飲食物を想起した場合にも生じることはよく知られている。そこで、飲食物の想起を、自分の意思でコントロールすれば、本生体光計測装置で計測信号を観測できる。これを、意思伝達の手段がない筋萎縮性側索硬化症などの患者の意思疎通に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】唾液腺の位置を示す図
【図2】唾液分泌量とヘモグロビン信号変化の計測プロトコルの図
【図3】唾液腺分泌量とヘモグロビン信号変化との相関図
【図4】刺激方法による唾液分泌量とヘモグロビン信号変化の違いを示す図
【図5】唾液腺機能変化によるヘモグロビン信号変化の反応部位を示す図
【図6】本発明の一実施形態の装置構成を示すブロック図
【図7】本発明の本発明の一実施形態の計測フローチャートを示す図
【図8】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図9】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図10】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図11】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図12】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図13】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図14】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図15】本発明の計測グラフィカルユーザーインターフェース表示例を示す図
【図16】本発明の一実施形態の装置構成を示すブロック図
【図17】本発明の一実施形態のプローブホルダ例を示す図
【図18】本発明の一実施形態の計測インターフェース例を示す図
【図19】本発明の一実施形態の計測インターフェース例を示す図
【符号の説明】
【0041】
40…被験体、10…光計測部、11…光源部、12…光検出部、13…光ファイバー、14…プローブホルダ、20…信号処理部、21…ヘモグロビン信号処理部、22…記憶部、23…表示部、24…操作部、25…操作表示部、30…刺激制御装置、31…刺激制御記憶部、32…刺激発生部、50…光源部、51…検出部、52…光計測部、53…専用枠、60…光計測部、61…表示部、62…光計測部、63…表示部、64…光計測部、70…光源部、71…検出部、80…ライトガイド、81…検出部、82…光源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にこめかみ部、頬上部、頬下部、顎下部のいずれか、もしくは全ての部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光する光受光手段と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
1組の前記光照射手段と前記光受光手段を固定し、かつ前記光照射手段及び前記光受光手段が着脱可能な専用枠と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備えた生体光計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体光計測装置であって、
前記専用枠から、前記信号処理手段は、無線により通信することを特徴とする生体光計測装置。
【請求項3】
被検体にこめかみ部、頬上部、頬下部のいずれか、もしくは全ての部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光する光受光手段と、
複数の前記光照射手段と前記光受光手段を搭載する前記被検体の頬の形に添った湾曲形状である基板と、
前記基板に取り付けられた手持ち部と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備えた生体光計測装置。
【請求項4】
被検体に、こめかみ部、頬上部、頬下部のいずれかと、顎下部の部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光する光受光手段と、
複数の前記光照射手段と前記光受光手段を搭載する基板と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備え、
前記基板は、前記顎下部とその他の部位の間において、角度を変えられることを特徴とする生体光計測装置。
【請求項5】
被検体に頬下部の部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光する光受光手段と、
前記光照射手段を搭載するマウスピース型の基板と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備え、
前記光受光手段は、前記被検体の口腔外に配置されることを特徴とする生体光計測装置。
【請求項6】
被検体に頬下部の部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光する光受光手段と、
前記光受光手段を搭載するマウスピース型の基板と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段とを備え、
前記光照射手段は、前記被検体の口腔外に配置されることを特徴とする生体光計測装置。
【請求項7】
被検体にこめかみ部、頬上部、頬下部、顎下部のいずれか、もしくは全ての部位に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から照射された光を受光し、前記被検体の口腔外に配置された光受光手段と、
前記光受光手段が受信した光から算出された計測信号をもとに、前記被検体に刺激を与えた場合の唾液腺機能変化に伴う血中物質濃度変化を信号波形として算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段の処理結果を表示する表示手段と、
前記光照射手段が照射した光を、全被検体の前記部位に誘導するライトガイド部とを備えた生体光計測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の生体光計測装置において、
前記信号処理手段は更に、前記血中物質濃度変化から、唾液分泌量を算出することを特徴とする生体光計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−100(P2010−100A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158622(P2008−158622)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】