説明

生体刺激用導子および生体刺激装置

【課題】導子の移動速度や移動範囲が不適切な場合に、警告や指示を出し得るような生体刺激用導子および生体刺激装置を提供する。
【解決手段】導子10は、生体Sの表面上を移動可能なように携帯保持できるようになっており、発振回路44からの刺激信号を受けて刺激を生体Sに与えるように構成される。また導子10は、導子10の移動状態を感知信号として出力するセンサー14を備えている。この感知信号を利用して、実際の導子10の位置,移動速度,移動方向などを算出し、これらが予め設定した必要な最低限の移動速度に達していなかったり、必要な移動範囲を外れていたりしたら、導子10の移動速度や移動範囲が不適切であるとして、警報や指示を出すことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激信号発生手段からの刺激信号を受けて、生体に超音波,高周波または温熱などの刺激を与える生体刺激用導子と、これらの刺激発生手段および生体刺激用導子を含む刺激発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、体の肥満などを解消する方法として、生体に超音波刺激を与えて筋肉を収縮させ、運動を行なわずに脂肪の燃焼を促進させるものがある。この脂肪の燃焼促進によれば、生体の発熱による活動性を高めることにより、生体内に蓄積された脂肪の一部を熱に変換して消費させることで効果をあげている。他に超音波刺激は、痛みを取る作用もあり、腰などの痛みを緩解したり、例えばスポーツ後における疲労を回復させたり、筋肉疲労を取って、筋肉のこりをほぐしたり、温熱効果により血行をよくしたりする効果がある。こうした超音波刺激を生体に与える装置は、例えば特許文献1などに開示されている。
【0003】
また高周波刺激は、より高い周波数成分(例えば、20〜100kHz)を有することにより、生体の深部にまで刺激を与え、当該深部を活性化させることが可能であり、超音波刺激と同様に温熱効果による脂肪燃焼や、痛みの緩和などに効果的である。こうした高周波刺激を生体に与える装置は、例えば特許文献2などに開示されている。
【0004】
さらに温熱刺激は、生体に熱的な刺激を与えるものであり、これも例えば特許文献3などに、疲労低減や体質改善などの効果を有する装置が開示されている。
【0005】
こうした刺激を生体に与える生体刺激用導子は、生体(例えば患部)の表面上に配置されるが、これは一般に、導子のヘッド部を生体の患部部位に固定して施術を行なう固定法と、導子のヘッド部分を移動させながら施術を行なう移動法が知られている。
【0006】
固定法は、導子から同じ患部に刺激を集中して付与し続けるため、刺激強度が一定値以上にならないように、何らかの制御を行なう必要がある。
【0007】
また移動法においても、導子を動かさずに同じ位置で使用すると、患部にエネルギーが集中して温度が上昇し、火傷や痛み、或いは組織破壊を起こす可能性があることから、施術者が患部周辺のある範囲に対して、導子のヘッド部を手で移動しながら、刺激信号を与える施術を行なわなければならない。こうした導子の移動操作に関して、どの程度の移動範囲と移動速度が適切であるのかは、施術者の知識や経験に任されていた。
【特許文献1】特開2002−613号公報
【特許文献2】特許3503135号公報
【特許文献3】特開2007−209446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した生体の表面上を移動可能な導子を用いた場合、施術者が未熟であったり、施術者の不注意が原因で、導子の動きが止まったり、或いは導子の移動速度が不足して、火傷や痛み、或いは組織破壊を起こす可能性が懸念される。また、導子の移動範囲が患部を外れていた場合には、必要の無い箇所に刺激が継続的に与えられることになり、導子の取り扱いに注意を要していた。
【0009】
そこで本発明の目的は、導子の移動速度や移動範囲が不適切な場合に、警告や指示を出し得るような生体刺激用導子および生体刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における請求項1の生体刺激用導子は、上記目的を達成するために、生体の表面上を移動可能であり、刺激信号発生手段からの刺激信号を受けて、前記生体に刺激を与える生体刺激用導子において、前記導子の移動状態を感知信号として出力する感知手段を備えている。
【0011】
また本発明は、請求項1記載の導子と、前記刺激信号発生手段とを備えた生体刺激装置であって、前記感知手段からの前記感知信号をリアルタイムに取り込んで、前記導子の位置と移動速度を算出する感知信号解析手段と、前記感知信号解析手段で算出した前記導子の移動速度が、設定した速度に達していない場合、若しくは前記感知信号解析手段で算出した前記導子の位置が、設定した移動範囲を外れている場合に、警報信号を出力する警報判定手段を備えている。
【0012】
また本発明の請求項3における生体刺激装置は、前記警報信号の出力と同時に、生体に与える刺激を減弱させる構成としている。
【0013】
また、本発明の請求項4における生体刺激装置の前記感知信号解析手段は、前記感知手段から出力される最初の前記感知信号により、前記移動範囲を設定するものであると共に、前記感知信号解析手段で算出した前記導子の移動速度が、前記設定した速度を越え、且つ前記感知信号解析手段で算出した前記導子の位置が、前記設定した移動範囲内となるように、前記導子の操作を指示するための誘導信号を出力する操作誘導手段を備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の生体刺激用導子によれば、導子の移動状態を感知手段が感知し、その移動状態に見合う感知信号を出力する。そのため、この感知信号を利用して、実際の導子の位置,移動速度,移動方向などを算出し、これらが予め設定した必要な移動速度に達していなかったり、必要な移動範囲を外れていたりしたら、導子の移動速度や移動範囲が不適切であるとして、音や表示などによる警報や指示を出すことが可能になる。
【0015】
請求項2の生体刺激装置によれば、導子に設けられた感知手段からの感知信号を、判定手段に取り込むことにより、実際の導子の位置や移動速度を算出し、この導子の移動速度が設定した速度に達していない場合や、導子の位置が設定した範囲を外れている場合に、警報判定手段から警報信号を出力することができる。したがって、この警報判定手段からの警報信号を利用して、導子の移動速度や移動範囲が不適切な場合に、音や表示などによる警報や指示を行なうことが可能になる。
【0016】
請求項3の生体刺激装置によれば、警報信号を出力すると、例えば発振信号の出力パワーを低下させて、生体に危険でないレベルにまで、自動的に刺激を減弱させるようになっている。したがって、警報信号が出力されているにもかかわらず、導子を動かさず同じ位置に使用しても、生体への特定の部位にエネルギーが集中することがないため、火傷や痛み、あるいは、組織破壊を未然に防止することができる。
【0017】
請求項4の生体刺激装置によれば、施術開始時に感知手段から出力される最初の感知信号を受けて、導子の原点位置を中心とした適正な移動範囲を自動的に設定し、それ以後は、感知手段から出力される後続の感知信号により、実際の導子の位置と移動速度を算出して、この導子の移動速度が予め設定した速度を越え、且つ導子の位置が、前記設定した適正な移動範囲内となるように、操作誘導手段からの誘導信号によって、導子の操作を正しく指示することができる。そのため、熟練度の低い施術者に対しても、導子の操作を正しく誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る導子を備えた例えば美容器具に適用される生体刺激装置の実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施例における生体刺激装置の全体構成を示すもので、これは超音波による刺激を生体Sに与える導子10と、後述する発振回路44を収納した例えば直方体形状の装置本体30と、導子10と装置本体30との間を電気的に接続する可撓性のケーブル21,22とにより構成される。
【0020】
導子10は、生体Sの複数箇所の患部への施術を容易にするために、生体Sの表面上を任意に移動できるようになっており、具体的には手で掴むことができる形状に形成された支持体11と、支持体11の先端側に設けられる振動体12と、支持体11の側部に設けられる表示体としての表示ランプ13と、導子10の動きを検出するためのセンサー14と、施術者からの押動操作により施術の開始と停止を指示する施術指示手段としてのスタートスイッチ15と、支持体11の内部に設けられ、A/D変換器とワンチップマイコンを内蔵する信号処理部16とにより構成される。振動体12は、板状をなす振動子17と、この振動子17の両面を挟む様に設けられた電極18とを、例えばキャップ状に形成された絶縁材料からなるヘッド部19の内側に装着して構成される。そして、前記ケーブル21の先端を電極18に接続する一方で、電極18の基端を後述する発振回路44に接続することで、当該発振回路44からの超音波発振信号が、刺激信号としてケーブル21を通して振動体12の電極18に供給され、これにより振動体12内の振動子17が共振して、振動子17から超音波による刺激が発生するようになっている。
【0021】
なお、ここでは振動子17から発する超音波エネルギーを、刺激として生体Sに与える構成となっているが、他に、熱や電磁波などのエネルギーを、生体Sへの刺激として供給できるようにしてもよい。その場合、本実施例における超音波導子10に代わり、熱エネルギーを発する温熱導子や、高周波エネルギーを発する高周波導子を用いることが可能である。例えば温熱導子では、超音波や高周波で共振する振動子17の他に、ヒータなどの加熱素子を用いることも可能である。
【0022】
前記センサー14は、施術者が操作する導子10の移動状態(位置,速度,加速度)を、電気的な感知信号として出力するために、導子10の生体Sと接する部分(実施例ではヘッド部19)や、若しくはその近傍にある部分(実施例では支持体11)に設けられ、加速度センサー,磁気センサー,光センサー,音センサー,温度センサーなどの感知素子を、単独若しくは複数埋め込んで構成される。このセンサー14からのアナログ感知信号は、信号処理部16によってリアルタイムに処理されてディジタル変換され、ケーブル22を通して装置本体30に送出される。また信号処理部16は、スタートスイッチ15からのアナログ操作信号をディジタル変換し、ケーブル22を通して装置本体30に送出する機能と、装置本体30からケーブル22を通して送出されたディジタル制御信号を、アナログ化した警報信号や誘導信号に処理変換し、表示ランプ13に送出する機能を有する。なお、ここでの信号処理部16は、導子10と装置本体30との間のケーブル本数を減らすために設けているが、そうした要求が無ければ、信号処理部16としての上記機能を、後述する装置本体30の制御部43に兼用させてもよい。
【0023】
装置本体30は、画面による表示が可能な例えばLCDなどの表示体31と、音或いは音声による出力が可能な報知部としてのスピーカー32と、装置本体30を起動するための主電源スイッチ33と、タイマー,使用モード,インターバルなどを設定する操作部としてのセットボタン34と、コード付きの電源プラグ35とを備えている。
【0024】
次に、装置の内部構成を図2に基づき説明する。なお図2では、各部間の信号のやり取りを明確にするために、導子10に設けられる信号処理部16の機能が、制御本体30の制御部43に含まれているものとして便宜的に記載されている。装置本体30の内部は、前述した主電源スイッチ33の他に、当該装置本体30の主回路40と、交流電圧を整流平滑する整流平滑回路41とを備えている。主電源スイッチ33は、電源プラグ35と整流回路41との間に接続され、主電源スイッチ33をオン操作することにより、電源プラグ35からの交流電圧が整流回路41により直流に変換され、電源電圧として主回路40の各部に供給されるようになっている。
【0025】
主回路40は、図1にも示されている表示体31,スピーカー32,セットボタン34の他に、導子10を含めた生体刺激装置全体の動作を制御する制御部43と、制御部43からの指令信号を受けて、所定の周波数の発振信号を増幅し出力する刺激信号発生手段としての発振回路44と、発振回路44から振動体12に供給される発振信号の電流値を検出する電流検出回路45とをそれぞれ備えている。
【0026】
図3は、主に制御部43の機能的な構成を示したもので、ここでの制御部43は、スタートスイッチ15をオンにして施術開始を指示すると、セットボタン34からの入力により設定された条件(例えば、発振強度,発振持続時間など)で、発振回路44から振動体12への発振信号の出力が開始するように、発振回路44に指令信号を供給する発振制御手段51と、電流検出回路45により検出された発振信号の電流値から、導子10が負荷である生体Sに接しているか否かを判断し、その結果を発振制御手段51に出力する負荷判定手段52と、前記スタートボタン15をオンにした直後に、センサー14から出力される最初の感知信号から、導子10の原点位置と、この原点位置を含む導子10の適切な移動範囲を設定すると共に、その後で発振回路44が発振信号を出力している間に、センサー14からの感知信号をリアルタイムに取り込んで、導子10の位置,移動速度およびその速度の方向を平面的または立体的に算出(解析)する感知信号解析手段53と、感知信号解析手段53からの算出結果により、現在の導子10の移動速度が予め設定した速度を越え、且つ現在の導子10の位置が予め設定した前記移動範囲内となるように、装置本体30の表示体31およびスピーカー32や、導子10の表示ランプ13の何れか若しくは双方に、導子の操作を指示するための誘導信号を出力する操作誘導手段54と、感知信号解析手段53からの算出結果により、現在の導子10の移動速度が予め設定した速度未満である場合や、現在の導子10の位置が予め設定した前記移動範囲を外れている場合に、装置本体30の表示体31およびスピーカー32や、導子10の表示ランプ13の何れか若しくは双方に、その旨を通知させるための警報信号を出力する警報判定手段55と、を備えている。
【0027】
次に、上記構成について、一連の動作手順を図4のフローチャートに基づき説明する。
【0028】
まずステップS1において、施術者が主電源スイッチ33をオンにすると、電源プラグからの交流電圧が整流回路41により直流に変換され、主回路40の各部に電源電圧が投入される。ここで制御部43は、セットボタン34からの入力を受け付けて、その入力により設定された発振強度や発振持続時間などの条件を、図示しない記憶手段に記憶すると共に、この記憶した条件を表示体31に表示させる(ステップS2)。なお、この設定ボタン40による条件の入力は必須のものではなく、例えば不揮発性の記憶手段により、主回路40に電源電圧が投入されているか否かに拘らず、記憶手段に前もって記憶された設定条件が、そのまま保持され続けるように構成してもよい。
【0029】
続いて制御部43は、ステップS3において、施術者の操作によりスタートスイッチ15がオンに切替ったか否かを、当該スタートスイッチ15からの操作信号により判断する。このスタートスイッチ15は、施術者が押動操作する間にオン状態を維持し、押動操作しなくなるとオフに切替るモメンタリスイッチや、施術者が押動操作を行なう毎に、オンとオフが交互に切替るオルタネートスイッチの何れであってもよい。
【0030】
施術者がスタートスイッチ15をオン状態にすると、制御部43を構成する感知信号解析手段53は、次のステップS4において、最初にセンサー14から取り込んだ感知信号を基に、移動可能な導子10の原点位置と、この原点位置を施術の中心点とした適正な移動範囲とをそれぞれ設定し記憶する。また、このステップS4では、前記ステップS2で設定した条件から、導子10の適正な移動速度を制御部43で設定し記憶する。
【0031】
次のステップS5において、制御部43の発振制御手段51は、前記ステップS2で設定した条件で発振回路44から振動体12に発振信号が出力されるような指令信号を、発振回路44に供給する。これにより、所望の強度と、周波数と、インターバルを有する刺激エネルギーが、振動体12に当接する生体Sに与えられ、患部に対する施術が行なわれる。このとき、導子10を動かさずに同じ位置で使用すると、生体Sの特定の部位にエネルギーが集中し、火傷や痛み、或いは組織破壊を起こす虞れがあることから、通常は施術者が幹部周辺のある範囲に対して、手で保持した導子10を動かしながら施術を行なうことになる。
【0032】
また施術中は、負荷判定手段52が電流検出回路45からの検出信号を取り込んで、導子10が負荷である生体Sに接しているか否かを判断し、その結果を発振制御手段51に出力する。これにより発振制御手段51は、導子10が生体10に接していると負荷判定手段52が判断した場合には、ステップS2で設定した発振強度の発振信号が出力されるように、発振回路44に指令信号を供給する一方で、導子10が生体10に接していないと負荷判定手段52が判断した場合には、ステップS2で設定したものよりも弱い発振強度の発振信号が出力されるように、発振回路44に指令信号を供給する。なお、導子10が生体Sに接していないと判断した時点で、発振信号をどのように変化させて、どの程度パワーダウンさせるのかは、特に限定しない。
【0033】
また施術中において、制御部43の感知信号解析手段53は、導子10の移動状態をセンサー14からの感知信号により監視し、導子10の移動速度と位置が適切であるか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、感知信号解析手段53はセンサー14からの感知信号をリアルタイムに取り込み、前記ステップS4における原点位置を中心とした二次元空間若しくは三次元空間において、現在の導子10の位置,移動速度および速度の方向を時々刻々と算出し、この算出した実際の導子10の位置が、ステップS4で設定した適正な移動範囲内にあるか否かと、算出した実際の導子10の移動速度が、ステップS4で設定した移動速度に達しているか否かを判定する。このとき警報判定手段55は、実際の導子10の位置が適正な移動範囲を外れている場合や、実際の導子10の移動速度が設定した移動速度未満である場合には、好ましくは一定時間その状態が継続した時に、施術者による導子10の動きが適切でないと判断して警報信号を出力し、例えば装置本体30の表示体31に警報表示を行なわせたり、表示ランプ13を赤色点灯させたり、スピーカー32から警報音を発生させたりして、その旨を通知する(ステップS7)。このとき、安全性を向上させるために、警報信号の出力と同時に発振信号の出力パワーを低下させてもよい。なお、導子10の動きが適切でないと判断した時点で、発振信号をどのように変化させて、どの程度パワーダウンさせるのかは、特に限定しない。
【0034】
この警報信号の出力と同時に発振信号の出力パワーを低下させる機能については、警報信号の出力のタイミングに基づいて、生体Sに危険でないレベルまで、刺激を自動的に減弱(停止を含む)させる減弱手段を生体刺激装置に備えればよい。したがって、導子10を動かさず同じ位置に使用しても生体Sへの特定の部位にエネルギーが集中することがなく、火傷や痛み、あるいは、組織破壊を未然に防止することができる。なお刺激を減弱させるには、発振信号の振幅を小さくする他に、周波数を広げたり、オンパルスの時間幅を狭めたりしてもよい。
【0035】
また操作誘導手段54は、実際の導子10の位置が適正な移動範囲を外れておらず、しかも実際の導子10の移動速度が設定した移動速度以上である場合に、実際の導子10の位置と移動速度がどの程度であるのかを、誘導信号として出力する(ステップS8)。この誘導信号を受けて、例えば実際の導子10の位置が、前記設定した適切な移動範囲よりも狭い移動範囲内にあって、且つ実際の導子10の移動速度が前記設定した最低限の移動速度よりも速い適切な範囲である場合には、表示ランプ13を緑色に点灯させ、どちらか一方がそうでない場合には、表示ランプ13を別な黄色に点灯させることで、導子10の操作を正しく誘導することができる。
【0036】
ここで、上記警報信号や誘導信号による報知や表示は、装置本体30よりもむしろ、施術者10が操作する導子10に設けた表示手段や報知手段によって行なうのが好ましい。こうすると、施術者の手元で表示や報知の確認を行なうことができ、使い勝手が向上する。また、前述した警報信号による表示や報知も、誘導信号とみなすことができる。
【0037】
こうして、施術中は次のステップS9で、スタートスイッチ15をオフにするまで、生体Sに対して必要なエネルギーの刺激が与えられると共に、警報判定手段55からの警報信号と、操作誘導手段54からの誘導信号によって、施術者は正しい位置と移動速度で導子10を操作することが可能になる。ステップS9でスタートスイッチ15をオフにすると、前記ステップS2の手順に戻り、別な設定条件で別な患部を施術することができる。また、スタートスイッチ15をオフにした状態で、そのまま主電源スイッチ33をオフにすれば、主回路30への電源電圧供給は断たれ、生体刺激装置としての動作は終了する(ステップS10)。
【0038】
以上のように、本実施例における生体刺激用の導子10に着目すると、この導体10は、生体Sの表面上を移動可能なように携帯保持できるようになっており、また刺激信号発生手段である発振回路44からの刺激信号を受けて、超音波,電磁波または熱による刺激を生体Sに与えるようになっており、さらに導子10の移動状態として、この導子10がどのように移動したのかを感知信号として出力するセンサー14を備えている。
【0039】
このような導子10があれば、導子10の移動状態を感知手段であるセンサー14が感知し、その移動状態に見合う感知信号を出力する。そのため、この感知信号を利用して、実際の導子10の位置,移動速度,移動方向などを算出し、これらが予め設定した必要な最低限の移動速度に達していなかったり、必要な移動範囲を外れていたりしたら、導子10の移動速度や移動範囲が不適切であるとして、例えば音や表示などによる警報や指示を出すことが可能になる。
【0040】
また本実施例では、上述した特徴を有する導子10と、発振回路44とを備えた生体刺激装置であって、センサー14からの感知信号をリアルタイムに取り込んで、導子10の位置と移動速度を算出する感知信号解析手段53と、感知信号解析手段53で算出した導子10の移動速度が、設定した最低限の速度に達していない場合、若しくは感知信号解析手段53で算出した導子10の位置が、設定した適切な移動範囲を外れている場合に、警報信号を出力する警報判定手段55を備えている。
【0041】
このような生体刺激装置により、導子10に設けられたセンサー14からの感知信号を、警報判定手段55に取り込むことにより、実際の導子10の位置や移動速度を算出し、この導子10の移動速度が設定した速度に達していない場合や、導子10の位置が設定した範囲を外れている場合に、警報判定手段55から警報信号を出力することができる。したがって、この警報判定手段55からの警報信号を利用して、導子10の移動速度や移動範囲が不適切な場合に、音や表示などによる警報や指示を行なうことが可能になる。
【0042】
また、ここでの感知信号解析手段53は、スタートスイッチ15を操作したときに、センサー14から出力される最初の感知信号により、適切な移動範囲を設定するものであると共に、感知信号解析手段53で算出した導子10の移動速度が、設定した最低限の速度を越え、且つ感知信号解析手段53で算出した導子10の位置が、設定した移動範囲内となるように、導子10の操作を指示するための誘導信号を、操作誘導手段54から出力する構成となっている。
【0043】
つまり、施術開始時にセンサー14から出力される最初の感知信号を受けて、導子10の原点位置を中心とした適正な移動範囲を自動的に設定し、それ以後は、センサー14から出力される後続の感知信号により、実際の導子10の位置と移動速度を算出して、この導子の移動速度が予め設定した最低限の速度を越え、且つ導子10の位置が設定した適正な移動範囲内となるように、操作誘導手段54からの誘導信号によって、導子10の操作を正しく指示することができる。そのため、熟練度の低い施術者に対しても、導子10の操作を正しく誘導することができる。
【0044】
また本実施例は、上記の生体刺激装置において警報判定手段55からの警報信号の出力と同時に、生体Sに与える刺激を減弱させる構成としている。
【0045】
このようにすると、警報信号が出力されているにもかかわらず、導子10を動かさず同じ位置に使用しても、生体Sへの特定の部位にエネルギーが集中することがないため、火傷や痛み、あるいは、組織破壊を未然に防止することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲において種々の変形実施が可能である。例えば、操作誘導手段54からの誘導信号や、警報判定手段55からの警報信号を受けて、表示手段である表示ランプ13若しくは表示体31がどのような表示を行ない、また報知手段であるスピーカー32がどのような報知を行なうのかは特に限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の好ましい一実施例を示す生体刺激装置の全体外略図である。
【図2】同上、生体刺激装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】同上、制御部およびその周辺の構成を示すブロック図である。
【図4】同上、動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
10 導子(生体刺激用導子)
14 センサー(感知手段)
44 発振回路(刺激信号発生手段)
53 感知信号解析手段
54 操作誘導手段
55 警報判定手段
S 生体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の表面上を移動可能であり、刺激信号発生手段からの刺激信号を受けて、前記生体に刺激を与える生体刺激用導子において、
前記導子の移動状態を感知信号として出力する感知手段を備えたことを特徴とする生体刺激用導子。
【請求項2】
請求項1記載の導子と、前記刺激信号発生手段とを備えた生体刺激装置であって、
前記感知手段からの前記感知信号をリアルタイムに取り込んで、前記導子の位置と移動速度を算出する感知信号解析手段と、
前記感知信号解析手段で算出した前記導子の移動速度が、設定した速度に達していない場合、若しくは前記感知信号解析手段で算出した前記導子の位置が、設定した移動範囲を外れている場合に、警報信号を出力する警報判定手段を備えたことを特徴とする生体刺激装置。
【請求項3】
前記警報信号を出力すると、生体に与える刺激を減弱させる構成としたことを特徴とする請求項2記載の生体刺激装置。
【請求項4】
前記感知信号解析手段は、前記感知手段から出力される最初の前記感知信号により、前記移動範囲を設定するものであると共に、
前記感知信号解析手段で算出した前記導子の移動速度が、前記設定した速度を越え、且つ前記感知信号解析手段で算出した前記導子の位置が、前記設定した移動範囲内となるように、前記導子の操作を指示するための誘導信号を出力する操作誘導手段を備えたことを特徴とする請求項2または3記載の生体刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−82269(P2009−82269A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253051(P2007−253051)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(391009800)株式会社テクノリンク (11)
【Fターム(参考)】