説明

生体器官拡張器具

【課題】バルーン上に装着したステントの移動および離脱を十分に抑制し、ステントの装着時にバルーンが損傷を受けることが少ない生体器官拡張器具を提供する。
【解決手段】 生体器官拡張器具1は、バルーンカテーテル2と、バルーン3上に装着されたステント10とを備える。ステントは、軸方向に複数配列され、隣り合う環状体11が接続部12、13により接続されている。ステント10の先端側から奇数番目の環状体11aと偶数番目の環状体11b間を接続する接続部12は、ステントの基端側に傾斜した傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部22を内面に備える。偶数番目の環状体11bと奇数番目の環状体間11aを接続する接続部13は、第1形態傾斜凹部22と反対方向に傾斜した傾斜内面を有する第2形態傾斜凹部23を内面に備える。そして、バルーン3の一部が、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部内に侵入している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善を行うための生体器官拡張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体器官拡張器具は、狭窄部の改善のためにステントを備えるものが一般的となっている。ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。
ステントは、体外から体内に挿入するため、挿入時は直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブルステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。
【0004】
そして、バルーンエクスパンダブルステントでは、折り畳まれたバルーン上にステントを配置した後、ステントを圧縮することにより縮径させて、バルーン上に装着する。ステントがバルーンに確実に装着されないと、留置作業時にステントが離脱するおそれがある。
特開2007−135880号公報(特許文献1)には、バルーンが折り畳まれた状態においてステントストラットによって少なくとも1つの、該バルーンの二次的な突出部が挟み込まれているステントデリバリーシステムが開示されている。
具体的には、特許文献1のステントデリバリーシステムでは、折り畳まれた場合に、表面上に二次的な突出部1Dを備えるバルーンが用いられている。バルーンは、折り畳まれた時に、表面上に少なくとも1つのウイング1Eを有し、さらに、二次的な突出部1Dが、ウイングの表面上に形成される。そして、折り畳まれたバルーン1の外面、好ましくは直管部1Aの外面に収縮状態のステント10を配設することにより、バルーンの二次的な突出部1Dは、図2のようにステント10のステントストラット11に挟まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものでは、ステントのバルーンからの高い離脱抑制効果を備えるものと思われる。しかし、バルーンの複数の二次的な突出部をステントのストラットにより挟持するものであり、ストラットの挟持時にバルーンを損傷させるおそれがある。
本発明の目的は、バルーン上に装着したステントの移動および離脱を十分に抑制し、かつ、ステントの装着時にバルーンが損傷を受けることが少ない生体器官拡張器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) チューブ状の本体部と、該本体部の先端部に設けられた拡張可能かつ折り畳まれたバルーンとを有するバルーンカテーテルと、該折り畳まれたバルーン上に圧縮されることにより装着され、かつ前記バルーンの拡張により拡張するステントとを備える生体器官拡張器具であって、
前記ステントは、線状構成要素にて形成された環状体がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う環状体が接続部により接続された略管状体であり、さらに、前記ステントの先端側から奇数番目の前記環状体と偶数番目の前記環状体間を接続する前記接続部は、前記ステントの周方向に延び、かつ、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部を内面に備え、前記ステントの先端側から偶数番目の前記環状体と奇数番目の前記環状体間を接続する前記接続部は、前記ステントの周方向に延び、かつ、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した傾斜内面を有する第2形態傾斜凹部を内面に備え、さらに、前記バルーンの一部が、前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部内に侵入している生体器官拡張器具。
【0008】
(2) 前記第1形態傾斜凹部は、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した断面形状を有するものであり、前記第2形態傾斜凹部は、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した断面形状を有するものである上記(1)に記載の生体器官拡張器具。
(3)前記各環状体は、複数の前記ステントの先端側屈曲部と複数の前記ステントの基端側屈曲部とを備え、前記接続部は、隣り合う前記環状体の近接する前記屈曲部間を接続するものであり、かつ、前記傾斜凹部は、一端は前記接続部を越え隣り合う一方の前記環状体の前記屈曲部に位置し、他端は前記接続部を越え隣り合う他方の前記環状体の前記屈曲部に位置するものとなっている上記(1)または(2)に記載の生体器官拡張器具。
(4)前記第1形態傾斜凹部は、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(5)前記第2形態傾斜凹部は、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(6)前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部の両端は、前記ステントの中心軸に対してほぼ直交するものとなっている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(7)前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部は、中央部に比べ両端部の幅が広いものとなっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(8)前記隣り合う環状体間に複数の接続部を有し、複数の前記接続部のすべてに前記第1形態傾斜凹部もしくは前記第2形態傾斜凹部が設けられている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(9)前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部は、断面が鋭角の端部を有し、該鋭角の端部は、丸味を帯びた端部となっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(10)前記バルーンは、前記ステントは拡張せず、かつ前記バルーンが若干拡張した状態となっており、該バルーンの拡張によりバルーンの一部が前記ステントの前記傾斜凹部内に侵入している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
(11) 前記各環状体は、複数の前記ステントの一端側屈曲部と複数の前記ステントの他端側屈曲部と、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部間を繋ぎかつ前記ステントの軸方向に延びる線状構成要素とを有する波線状環状体である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生体器官拡張器具では、折り畳まれたバルーンを被包するように装着され、バルーンの拡張により拡張するステントは、線状構成要素にて形成された環状体がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う環状体が接続部により接続された略管状体であり、さらに、ステントの先端側から奇数番目の環状体と偶数番目の環状体間を接続する接続部は、ステントの周方向に延び、かつ、ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部を内面に備え、ステントの先端側から偶数番目の環状体と奇数番目の環状体間を接続する接続部は、ステントの周方向に延び、かつ、第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した傾斜内面を有する第2形態傾斜凹部を内面に備え、さらに、バルーンの一部が、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部内に侵入している。
この生体器官拡張器具のステントは、傾斜方向が異なる傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部と第2形態傾斜凹部がステントの軸方向に交互に位置するとともに、各凹部にバルーンの一部が侵入した状態となっているので、バルーン上に装着されたステントの移動および離脱を抑制する。また、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部は、バルーンを強く挟持するものではないので、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部がバルーンを損傷させる可能性は少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例の生体器官拡張器具の正面図である。
【図2】図2は、図1に示した生体器官拡張器具の先端部の拡大図である。
【図3】図3は、図1に示した生体器官拡張器具に用いられているバルーンカーテルの先端部を説明するための説明図である。
【図4】図4は、図1に示した生体器官拡張器具の基端部の拡大断面図である。
【図5】図5は、図2のX部分の断面構造を説明するための説明図である。
【図6】図6は、図2のY部分の断面構造を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の生体器官拡張器具に装着された状態のステントの正面図である。
【図8】図8は、図7のステントの展開状態の内面図である。
【図9】図9は、図8の部分拡大図である。
【図10】図10は、図9のA−A線拡大断面図である。
【図11】図11は、図9のB−B線拡大断面図である。
【図12】図12は、本発明の生体器官拡張器具に用いられるステントの断面形状を説明するための説明図である。
【図13】図13は、図7のステントの拡張状態かつ展開状態の内面図である。
【図14】図14は、本発明の生体器官拡張器具に用いられる他の例のステントの展開状態内面図である。
【図15】図15は、本発明の生体器官拡張器具に用いられる他の例のステントの展開状態内面図である。
【図16】図16は、本発明の生体器官拡張器具に用いられる他の例のステントの傾斜凹部の形態を説明するための説明図である。
【図17】図17は、本発明の生体器官拡張器具に用いられる他の例のステントの傾斜凹部の形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の生体器官拡張器具について以下の好適実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官拡張器具1は、チューブ状の本体部6と、本体部6の先端部に設けられた拡張可能かつ折り畳まれたバルーン3とを備えるバルーンカテーテル2と、折り畳まれたバルーン3上に圧縮されることにより装着され、かつバルーン3の拡張により拡張するステント10とを備える。ステント10は、線状構成要素にて形成された環状体11がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う環状体11が接続部12、13により接続された略管状体である。ステント10の先端側から奇数番目の環状体11aと偶数番目の環状体11b間を接続する接続部12は、ステント10の周方向に延び、かつ、ステント10の先端側もしくは基端側に傾斜した傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部22を内面に備える。ステント10の先端側から偶数番目の環状体11bと奇数番目の環状体間11aを接続する接続部13は、ステント10の周方向に延び、かつ、第1形態傾斜凹部22と反対方向に傾斜した傾斜内面を有する第2形態傾斜凹部23を内面に備える。そして、バルーン3の一部が、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23内に侵入している。
【0012】
この実施例の生体器官拡張器具1は、図1ないし図3に示すように、ステント10と、ステント10が装着されたバルーンカテーテル2とからなる。
バルーンカテーテル2は、チューブ状の本体部6と、本体部6の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン3とを備え、ステント10は、折り畳まれた状態のバルーン3を被包するように装着され、かつバルーン3の拡張により拡張されるものである。
ステント10は、生体内管腔への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向に広がる力が付加されたときに拡張可能ないわゆるバルーン拡張型ステントである。
この実施例の生体器官拡張器具1では、図3に示すように、本体部6は、本体部6の先端にて一端が開口し、本体部6の後端部にて他端が開口するガイドワイヤールーメン15aを備えている。
このバルーンカテーテル2は、本体部6と、本体部6の先端部に固定されたステント拡張用バルーン3とを備え、このバルーン3上にステント10が装着されている。本体部6は、内管15と外管16と分岐ハブ5とを備えている。
【0013】
内管15は、図3および図4に示すように、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン15aを備えるチューブ体である。内管15としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径は、0.1〜1.0mm、より好ましくは、0.3〜0.7mm、肉厚は10〜250μm、より好ましくは、20〜100μmのものである。そして、内管15は、外管16の内部に挿通され、その先端部が外管16より突出している。この内管15の外面と外管16の内面によりバルーン拡張用ルーメン18が形成されており、十分な容積を有している。外管16は、内部に内管15を挿通し、先端が内管15の先端よりやや後退した部分に位置するチューブ体である。
外管16としては、長さは、100〜2500mm、より好ましくは、250〜2000mm、外径は、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.7〜1.1mm、肉厚は25〜200μm、より好ましくは、50〜100μmのものである。
この実施例の生体器官拡張器具1では、外管16は、先端側外管16aと本体側外管16bにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管16aは、本体側外管16bとの接合部より先端側の部分において、テーパー状に縮径し、このテーパー部より先端側が細径となっている。
【0014】
先端側外管16aの細径部での外径は、0.50〜1.5mm、好ましくは0.60〜1.1mmである。また、先端側外管16aの基端部および本体側外管16bの外径は、0.75〜1.5mm、好ましくは0.9〜1.1mmである。
そして、バルーン3は、先端側接合部3aおよび後端側接合部3bを有し、先端側接合部3aが内管15の先端より若干後端側の位置に固定され、後端側接合部3bが外管16の先端に固定されている。また、バルーン3は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン18と連通している。
内管15および外管16の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
【0015】
バルーン3は、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内管15の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン3は、図3に示すように、装着されるステント10を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、略円筒部分)となった拡張可能部を有している。略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン3は、上述のように、先端側接合部3aが内管15にまた後端側接合部3bが外管16の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。また、このバルーン3では、拡張可能部と接合部との間がテーパー状に形成されている。
バルーン3は、バルーン3の内面と内管15の外面との間に拡張空間3cを形成する。この拡張空間3cは、後端部ではその全周において拡張用ルーメン18と連通している。このように、バルーン3の後端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン18よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
【0016】
バルーン3の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン3は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。
バルーン3の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の外径が、2〜4mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、長さが10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、先端側接合部3aの外径が、0.9〜1.5mm、好ましくは1〜1.3mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1〜3mmである。また、後端側接合部3bの外径が、1〜1.6mm、好ましくは1.1〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは、2〜4mmである。
【0017】
そして、この生体器官拡張器具1は、図3に示すように、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部)の両端となる位置の本体部の外面に固定された2つのX線造影性部材14a、14bを備えている。なお、ステント10の中央部分の所定長の両端となる位置の本体部6(この実施例では、内管15)の外面に固定された2つのX線造影性部材を備えるものとしてもよい。さらに、ステントの中央部となる位置の本体部の外面に固定された単独のX線造影性部材を設けるものとしてもよい。
X線造影性部材14a、14bは、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
そして、バルーン3を被包するようにステント10が装着されている。ステントは、ステント拡張時より小径かつ折り畳まれたバルーンの外径より大きい内径の金属パイプを加工することにより作製される。そして、作製されたステント内にバルーンを挿入し、ステントの外面に対して均一な力を内側に向けて与え縮径させることにより製品状態のステントが形成される。つまり、上記のステント10は、バルーンへの圧縮装着により完成する。
内管15と外管16との間(バルーン拡張用ルーメン18内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、生体器官拡張器具1の可撓性をあまり低下させることなく、屈曲部位での生体器官拡張器具1の本体部6の極度の折れ曲がりを防止するとともに、生体器官拡張器具1の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、外管16の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好ましく、線径0.05〜1.50mm、好ましくは0.10〜1.00mmのステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
【0018】
この実施例の生体器官拡張器具1では、図1および図4に示すように、基端に分岐ハブ5が固定されている。分岐ハブ5は、ガイドワイヤールーメン15aと連通しガイドワイヤーポートを形成するガイドワイヤー導入口19を有し、内管15に固着された内管ハブ8と、外管16に固着された外管ハブ7とからなっている。外管ハブ7は、バルーン拡張用ルーメン18と連通するインジェクションポート17を有する。そして、外管ハブ7と内管ハブ8とは、固着されている。この分岐ハブ5の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。また、外管16の基端には、補強チューブ9が設けられている。外管ハブ7と内管ハブ8の固着は、外管16の基端部に取り付けられた外管ハブ7の後端から内管15をその先端から挿入し接合することにより行われている。またこの時、内管ハブ8と外管ハブ7との接合部に接着剤を塗布して行うことにより確実に両者を固着することができる。なお、生体器官拡張器具1の基端の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、分岐ハブ5を設けず、ガイドワイヤールーメン15a、バルーン拡張用ルーメン18それぞれに、例えば後端に開口部を形成するポート部材を有するチューブを液密に取り付けるようにしてもよい。
なお、生体器官拡張器具の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、生体器官拡張器具の中間部分にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
【0019】
ステント10は、折り畳まれたバルーン3上に圧縮されることにより装着されている。また、このステント10は、線状構成要素にて形成された環状体11がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う環状体11が接続部12、13により接続された略管状体である。ステント10の先端側から奇数番目の環状体11aと偶数番目の環状体11b間を接続する接続部12は、ステント10の周方向に延び、かつ、ステント10の先端側もしくは基端側に傾斜した断面形状を有する第1形態傾斜凹部22を内面に備える。ステント10の先端側から偶数番目の環状体11bと奇数番目の環状体間11aを接続する接続部13は、ステント10の周方向に延び、かつ、第1形態傾斜凹部22と反対方向に傾斜した断面形状を有する第2形態傾斜凹部23を内面に備える。
【0020】
この実施例のステント10では、各環状体11(11a,11b)は、複数のステントの一端側屈曲部35、37と複数のステントの他端側屈曲部36,38と、一端側屈曲部35、37と他端側屈曲部36,38間を繋ぎかつステントの軸方向に延びる線状構成要素31,32、33,34とを有する波線状環状体である。
具体的には図7ないし図9に示すように、各波線状環状体11a,11bは、ステント10の軸方向の一端側に頂点を有する複数の一端側屈曲部35,37およびステント10の軸方向の他端側に頂点を有する複数の他端側屈曲部36,38を有するとともに、環状に連続した無端の波線状体により構成されている。環状体11a,11bにおける一端側屈曲部35,37と他端側屈曲部36,38は、交互に形成されており、かつそれぞれの数は同じとなっている。
1つの波線状環状体11a,11bにおける一端側屈曲部35および一端側屈曲部37の総数は、図7および図8に示すものでは、8となっている。同様に、1つの波線状環状体11a,11bにおける他端側屈曲部36および他端側屈曲部38の総数も、8となっている。この波線状環状体11a,11bにおける一端側屈曲部および他端側屈曲部の数としては、4〜12が好ましく、特に、6〜10が好ましい。また、環状体11の軸方向の長さとしては、0.5〜2.0mmが好ましく、特に、0.9〜1.5mmが好ましい。
【0021】
各環状体11(11a、11b)は、複数のステントの先端側屈曲部35(35a)と複数のステントの基端側屈曲部38(38a)とを備え、接続部12,13は、隣り合う環状体の近接する屈曲部35aと屈曲部38a間を接続している。
具体的には、ステント10の先端側から奇数番目の環状体11aと偶数番目の環状体11b間は、接続部12により接続されており、ステント10の先端側から偶数番目の環状体11bと奇数番目の環状体間11aは、接続部13により接続されている。そして、接続部12は、ステント10の周方向に延び、かつ、ステント10の先端側もしくは基端側に傾斜した断面形状を有する第1形態傾斜凹部22を内面に備える。接続部13は、ステント10の周方向に延び、かつ、第1形態傾斜凹部22と反対方向に傾斜した断面形状を有する第2形態傾斜凹部23を内面に備える。このため、軸方向に隣り合う接続部12と接続部13は、それぞれが備える傾斜凹部の傾斜方向が異なるものとなっている。また、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23は、少なくとも接続部12,13の内面をその全幅に渡り削り取るように形成されており、図9ないし図11に示すように、傾斜凹部22,23は、両側面が露出している。
【0022】
そして、この実施例のステント10では、第1形態傾斜凹部22は、一端が接続部12を越え隣り合う一方の環状体の屈曲部35aに位置し、他端は接続部12を越え隣り合う他方の環状体の屈曲部38aに位置するものとなっている。同様に、第2形態傾斜凹部23は、一端が接続部を越え隣り合う一方の環状体の屈曲部35aに位置し、他端が接続部13を越え隣り合う他方の環状体の屈曲部38aに位置するものとなっている。つまり、この実施例のステント10では、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23の一端および他端は、接続部12,13が接続する環状体の屈曲部に位置するものとなっている。また、この実施例のステント10では、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23は、中央部に比べ両端部の幅(ステント10の周方向長)が広い(長い)ものとなっている。
そして、第1形態傾斜凹部22は、ステント10の先端側もしくは基端側(具体的には、図10に示すように基端側)に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものとなっている。同様に、第2形態傾斜凹部23は、第1形態傾斜凹部22と反対方向(具体的には、図11に示すように先端側)に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものとなっている。さらに、第1形態傾斜凹部22は、図10に示すように基端側断面が鋭角の端部(内側エッジ)22aを有し、この鋭角の端部22aは、丸味を帯びた端部となっている。同様に、第2形態傾斜凹部23は、図11に示すように先端側断面が鋭角の端部(内側エッジ)23aを有し、この鋭角の端部23aは、丸味を帯びた端部となっている。また、図7ないし図9に示すように、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23の両端は、ステント10の中心軸に対してほぼ直交するものとなっていることが好ましい。
【0023】
そして、この実施例のステント10では、隣り合う環状体11a,11b間に複数の接続部12,13を有し、複数の接続部12,13のすべてに第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23が設けられている。なお、環状体11a,11b間に複数の接続部12,13を有する場合、複数の接続部12,13の少なくとも一つに第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23も設けるものとしてもよい。
また、本発明の生体器官拡張器具1では、図5および図6に示すように、バルーン3の一部が、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23内に侵入している。図5に示すように、バルーン3の一部3dが、第1形態傾斜凹部22内に侵入しており、ステント10の先端方向(図5における上方)に応力が付与された時、基端方向に傾斜する傾斜面部分が、侵入したバルーンと係合するため、バルーン3に対するステントの動きを抑制する。また、図6に示すように、バルーン3の一部3eが、第2形態傾斜凹部23内に侵入しており、ステント10の基端方向(図6における下方)に応力が付与された時、先端方向に傾斜する傾斜面部分が、侵入したバルーンと係合するため、バルーン3に対するステントの動きを抑制する。
また、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23は、バルーンが侵入可能な大きさおよび形状であることが必要である。ステント10を折り畳まれたバルーン3上に圧縮されることにより装着することにより、バルーンの一部が、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23に侵入する。なお、バルーン3は、ステント10を拡張せず、かつバルーン3が若干拡張した状態とすることによるバルーン3の拡張により、バルーン3の一部をステント10の傾斜凹部22,23内により確実に侵入させてもよい。
そして、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部の大きさとしては、以下のようなものが好ましい。図12に示す第1形態傾斜凹部モデルを用いて説明する。
バルーンの肉厚をA、ステントの凹部の深さをt、凹部におけるステントの肉厚をZ、凹部の鋭角部の傾斜角をθ、図12に示す凹部の幅をbとする。
この場合、凹部の幅bは、バルーンの肉厚の2〜30倍であることが好ましい。また、深さtは、バルーンの肉厚の1〜4倍であることが好ましい。また、肉厚Zは、凹部の深さ以上であることが好ましい。また、傾斜角θは、90度未満であり、60度以下であることが好ましい。
また、第1形態傾斜凹部および第2形態傾斜凹部の形状は、上述した断面が平行四辺形状のものに限定されるものではない。例えば、図16および図17に示すように、第1形態傾斜凹部52は、ステント10aの先端側もしくは基端側(具体的には、基端側)に鋭角に傾斜した傾斜面52aを有し、この傾斜面52aと向かい合う面は、傾斜面となっていない(直交面)断面四角形状を有するものとなっている。同様に、第2形態傾斜凹部53は、第1形態傾斜凹部52と反対方向(具体的には、先端側)に鋭角に傾斜した傾斜面53aを有し、この傾斜面53aと向かい合う面は、傾斜面となっていない(直交面)断面四角形状を有するものとなっている。そして、第1形態傾斜凹部52は、図16に示すように、鋭角に傾斜した傾斜面52aの鋭角の端部(内側エッジ)52bを有し、この鋭角の端部52bは、丸味を帯びた端部となっている。同様に、第2形態傾斜凹部53は、図17に示すように鋭角に傾斜した傾斜面53aの鋭角の端部(内側エッジ)53bを有し、この鋭角の端部53bは、丸味を帯びた端部となっている。
【0024】
この実施例のステント10では、環状体11(11a,11b)は、図8、図9および図13に示すように、平行直線状部31の一端と屈曲部35(35a)を介して接続し、かつ、少なくともステント10の拡張時にステント10の中心軸に対して所定角度斜めとなる第1の傾斜直線状部32と、第1の傾斜直線状部32の一端と屈曲部36を介して接続し、かつ、ステントの中心軸に対して所定角度斜めに伸びる傾斜線状部(この実施例では、傾斜曲線状部)33と、傾斜曲線状部33の一端と屈曲部37を介して接続し、かつ、少なくともステント10の拡張時にステント10の中心軸に対して所定角度斜めとなる第2の傾斜直線状部34の4つの線状部からなる変形M字線状部が複数連続したものとなっている。そして、隣り合う変形M字線状部は、第2の傾斜直線状部34の一端と平行直線状部31の他端を接続する屈曲部38(38a)により接続されることにより、無端の波線状環状体11を構成している。このため、ステントの拡張時における波線状環状体11の軸方向長のショートニングを抑制するとともに、波線状環状体11に十分な拡張保持力を付与する。
【0025】
特に、この実施例におけるステント10では、図8(ステント拡張前、ステント圧縮時)および図10(ステントの拡張時)に示すように、波線状環状体11は、平行直線状部31の一端と屈曲部35(35a)を介して接続し、かつ、ステント10の中心軸に対してほぼ平行であり(ステント拡張前)かつステントの拡張時に所定角度斜めとなる第1の傾斜直線状部32と、第1の傾斜直線状部32の一端と屈曲部36を介して接続し、かつ、ステントの中心軸に対して所定角度斜めに伸びる傾斜曲線状部33と、傾斜曲線状部33の一端と屈曲部37を介して接続し、かつ、ステント10の中心軸に対してほぼ平行であり(ステント拡張前)かつステント10の拡張時に所定角度斜めとなる第2の傾斜直線状部34の4つの線状部からなる変形M字線状部が複数連続したものとなっている。つまり、第1の傾斜直線状部32および第2の傾斜直線状部34は、ステントの拡張前、言い換えれば、ステントの圧縮時には、ステント10の中心軸に対してほぼ平行なものとなっている。このため、ステントの圧縮時における外径を小径なものとすることができる。
【0026】
また、この実施例のステント10では、一端側屈曲部35,37の頂点および他端側屈曲部36,38の頂点が、ステントの軸方向に対してほぼ直線状に並んだものとなっている。
そして、隣り合う波線状環状体11は、接続部12,13により接続されている。特に、この実施例のステント10では、隣り合う波線状環状体11の平行直線状部31の端部同士は、近接しかつ短い接続部12,13により接続されている。このため、隣り合う波線状環状体11間の距離が短いものとなり、隣り合う波線状環状体11間に起因する低拡張力部分の形成が極めて少ないものとなる。
また、この実施例のステント10では、接続部12,13で接続された2つの平行直線状部31は、ほぼ直線状となっている。このため、ステント10の拡張時における隣り合う波線状環状体11間におけるステントのショートニングを防止できる。そして、このステント10では、隣り合う波線状環状体11を接続する複数の接続部12,13を備えている。このため、隣り合う波線状環状体が不必要に離間することがなく、ステント全体として十分な拡張力を発揮する。
【0027】
また、本発明の生体器官拡張器具に用いられるステントとしては、図14に示すようなものであってもよい。
この実施例のステント20は、図14に示すように、各環状体11a,11bは、ステントの一端側に位置する複数の一端側屈曲部(山部)46と、他端側に位置する複数の他端側屈曲部(谷部)47と、一端側屈曲部46と他端側屈曲部47を繋ぐとともにステントの軸方向に延びる線状構成要素45を有する波線状環状体となっている。ステントの先端側より軸方向に隣り合う環状体11a,11bは、接続部12,13により接続されている。特に、この実施例のステント20では、隣り合う2つの環状体は、一方の環状体の他端側屈曲部47と他方の環状体の一端側屈曲部46とが近接するものとなっており、かつ、その近接部において接続部12,13により接続されている。
具体的には、ステント20の先端側から奇数番目の環状体11aと偶数番目の環状体11b間は、接続部12により接続されており、ステント20の先端側から偶数番目の環状体11bと奇数番目の環状体間11aは、接続部13により接続されている。そして、接続部12は、ステント20の周方向に延び、かつ、ステント20の先端側もしくは基端側に傾斜した断面形状を有する第1形態傾斜凹部22を内面に備える。接続部13は、ステント20の周方向に延び、かつ、第1形態傾斜凹部22と反対方向に傾斜した断面形状を有する第2形態傾斜凹部23を内面に備える。このため、軸方向に隣り合う接続部12と接続部13のそれぞれが備える傾斜凹部は、傾斜方向が異なるものとなっている。また、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23は、少なくとも接続部12,13の内面をその全幅に渡り削り取るように形成されている。また、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23は、接続部12,13の全長(ステントの軸方向全長)の内面をその全幅に渡り削り取るように形成されている。
【0028】
この実施例のステント20における波状環状体11a,11bは、図14に示すように、ほぼ同じピッチの複数の山部と谷部を有し、環状に連続した無端の波状体により構成されている。なお、波状環状体の山(もしくは谷)の数は、4〜10が好適である。そして、この実施例のステント20では、隣り合う環状体11a,11b間には、複数(具体的には、3つ)の接続部12,接続部13が設けられている。そして、すべての接続部12および接続部13の内面に、第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23が設けられている。なお、接続部12,13は、隣り合う環状体間に複数備えることが好ましいが、1つのみ備えるものであってもよい。さらには、隣り合う環状体間の近接するすべての一端側屈曲部と他端側屈曲部を接続部12,13により接続してもよい。また、環状体11a,11b間に複数の接続部12,13を有する場合、複数の接続部12,13の少なくとも一つに第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23を設けるものとしてもよい。
また、上述したすべての実施例のステントにおいて、図15に示すステント30のように、ステント30の両端部に位置する接続部12,13に第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23を設けるものとし、ステント30の軸方向中央部分の接続部12,13には、第1形態傾斜凹部22および第2形態傾斜凹部23を設けないものとしてもよい。なお、第1形態傾斜凹部22もしくは第2形態傾斜凹部23が設けられているステント30の両端部に位置する接続部12、13としては、各一つずつでもよいが、少なくとも各2つずつ設けることが好ましい。
【0029】
そして、上述したすべてのステントにおいて、ステントの非拡張時の直径は、0.8〜1.8mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.6mmがより好ましい。また、ステントの非拡張時の長さは、8〜40mm程度が好適である。また、一つの波線状環状体11の長さは、1.0〜2.5mm程度が好適である。
そして、ステントの成形は、管状体(具体的には、金属パイプ)よりフレーム構造体となる部分以外を除去することにより行われる。具体的には、金属パイプを、例えば、フォトファブリケーションと呼ばれるマスキングと化学薬品を使用したエッチング方法、型による放電加工法、切削加工(例えば、機械研磨、レーザー切削加工)などにより不要部分を除去することによりステントが形成される。また、フレーム構造体を作製した後に、化学研磨あるいは電解研磨を用いて、構造体のエッジを研磨することが好ましい。
【0030】
また、本発明のステントは、内面または外面、さらには両面に生体適合性材料を被覆してもよい。生体適合性材料としては、生体適合性を有する合成樹脂または金属が考えられる。ステントの表面を不活性な金属で被覆する方法としては、電気メッキ法を用いた金メッキ、蒸着法を用いたステンレスメッキ、スパッタ法を用いたシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン、窒化チタンメッキ、金メッキなどが考えられる。また、合成樹脂としては、熱可塑系または熱硬化系の樹脂から選択できるが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が使用でき、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルあるいはポリウレタン、シリコーン樹脂、また、生体内分解性樹脂(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、両者のコポリマー)である。合成樹脂被膜は、ステントを構成するフレームの湾曲の妨げにならない程度に柔軟であることが好ましい。合成樹脂被膜の肉厚は、3〜300μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0031】
ステントの表面に合成樹脂を薄く被覆する方法としては、例えば、溶融状態または溶液状態の合成樹脂の中に、ステントを挿入して被覆する方法、モノマーをステントの表面で重合させながら被覆する化学蒸着などがある。極薄な樹脂被覆が要求される場合は、希薄溶液を用いた被覆、または化学蒸着が好適である。さらに、より生体適合性材料を向上させるために、上記樹脂被膜に抗血栓性材料を被覆または固定してもよい。抗血栓性材料として、公知の各種の樹脂を単独または混合して使用することができるが、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 生体器官拡張器具
2 バルーンカテーテル
3 バルーン
6 本体部
10 ステント
11(11a,11b) 環状体
12、13 接続部
22 第1形態傾斜凹部
23 第2形態傾斜凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状の本体部と、該本体部の先端部に設けられた拡張可能かつ折り畳まれたバルーンとを有するバルーンカテーテルと、該折り畳まれたバルーン上に圧縮されることにより装着され、かつ前記バルーンの拡張により拡張するステントとを備える生体器官拡張器具であって、
前記ステントは、線状構成要素にて形成された環状体がステントの軸方向に隣り合うように複数配列され、隣り合う環状体が接続部により接続された略管状体であり、さらに、前記ステントの先端側から奇数番目の前記環状体と偶数番目の前記環状体間を接続する前記接続部は、前記ステントの周方向に延び、かつ、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した傾斜内面を有する第1形態傾斜凹部を内面に備え、前記ステントの先端側から偶数番目の前記環状体と奇数番目の前記環状体間を接続する前記接続部は、前記ステントの周方向に延び、かつ、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した傾斜内面を有する第2形態傾斜凹部を内面に備え、さらに、前記バルーンの一部が、前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部内に侵入していることを特徴とする生体器官拡張器具。
【請求項2】
前記第1形態傾斜凹部は、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した断面形状を有するものであり、前記第2形態傾斜凹部は、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した断面形状を有するものである請求項1に記載の生体器官拡張器具。
【請求項3】
前記各環状体は、複数の前記ステントの先端側屈曲部と複数の前記ステントの基端側屈曲部とを備え、前記接続部は、隣り合う前記環状体の近接する前記屈曲部間を接続するものであり、かつ、前記傾斜凹部は、一端は前記接続部を越え隣り合う一方の前記環状体の前記屈曲部に位置し、他端は前記接続部を越え隣り合う他方の前記環状体の前記屈曲部に位置するものとなっている請求項1または2に記載の生体器官拡張器具。
【請求項4】
前記第1形態傾斜凹部は、前記ステントの先端側もしくは基端側に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項5】
前記第2形態傾斜凹部は、前記第1形態傾斜凹部と反対方向に傾斜した略平行四辺形状の断面形状を有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項6】
前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部の両端は、前記ステントの中心軸に対してほぼ直交するものとなっている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項7】
前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部は、中央部に比べ両端部の幅が広いものとなっている請求項1ないし6のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項8】
前記隣り合う環状体間に複数の接続部を有し、複数の前記接続部のすべてに前記第1形態傾斜凹部もしくは前記第2形態傾斜凹部が設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項9】
前記第1形態傾斜凹部および前記第2形態傾斜凹部は、断面が鋭角の端部を有し、該鋭角の端部は、丸味を帯びた端部となっている請求項1ないし8のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項10】
前記バルーンは、前記ステントは拡張せず、かつ前記バルーンが若干拡張した状態となっており、該バルーンの拡張によりバルーンの一部が前記ステントの前記傾斜凹部内に侵入している請求項1ないし9のいずれかに記載の生体器官拡張器具。
【請求項11】
前記各環状体は、複数の前記ステントの一端側屈曲部と複数の前記ステントの他端側屈曲部と、前記一端側屈曲部と前記他端側屈曲部間を繋ぎかつ前記ステントの軸方向に延びる線状構成要素とを有する波線状環状体である請求項1ないし10のいずれかに記載の生体器官拡張器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−72441(P2011−72441A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225638(P2009−225638)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】