説明

生体情報モニタシステム

【課題】心電図とともに心電図の基線の変動を計測し、心臓の状態と心理的動揺の両方をモニタすることにより、より正確なモニタリングが可能な生体情報モニタシステムを提供する。
【解決手段】生体情報モニタシステムは被検体4の胸部に装着され、可変利得増幅器を備えたセンサユニット2と、センサユニット2の出力に基づいて被検体4の心電図の異常を判定するセンタ装置1とから構成される。センタ装置1は、被検体4の正常時における第1の心電図波形と、受信した通常計測時のセンシング信号に基づく第2の心電図波形とを比較して、第1の心電図波形と第2の心電図波形との差異を検出する心電図波形比較部113と、可変利得増幅器により利得が増幅された基線波形計測時の心電図データに基づいて、基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部114と、心電図波形比較部113での比較結果と、基線波形計測部114での計測結果とに基づいて被検体4の心電図の異常を判定する心電図異常判定部115と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図センサを用いて被検体の心電図の異常を判定する生体情報モニタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心電図の異常を判定する場合には、医師が、心電図センサにより取得した被検体の心電図データを被検体の通常時における心電図データと比較して両者の違いに基づいて心電図の異常を判断していた。
【0003】
心電図データに基づく被検体のモニタリングについては例えば、「心電図のABC」、1992年9月20日、「日本医師会」発行、に開示されている。
【非特許文献1】「心電図のABC」、1992年9月20日、「日本医師会」発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法は心電図データに基づいてその異常を判定するのみであり、これらの判定に加えて、モニタリングをより正確に行うための具体的な方法の提案はなされていなかった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、心電図とともに心電図の基線の変動を計測し、心臓の状態と心理的動揺の両方をモニタすることにより、より正確なモニタリングを可能にした生体情報モニタシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、生体情報モニタシステムであって、被検体の胸部に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の心電図の異常を判定するセンタ装置と、を具備し、前記センサユニットは、前記被検体の心電図を計測する心電図センサと、前記心電図センサにより計測された心電図データをセンシング信号として送信する送信部と、前記センタ装置からの制御信号を受信する受信部と、を具備し、前記センタ装置は、前記センサユニットを制御するための制御信号を送信する送信部と、前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、前記受信部を介して受信した通常計測時の前記センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された前記基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、を具備する。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センタ装置から送信された制御信号に基づいて設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0008】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センタ装置から送信された制御信号に基づいて設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0009】
また、本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0010】
また、本発明の第5の態様は、第1又は第4の態様において、前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センサユニット内部で設定され、記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0011】
また、本発明の第6の態様は、第1乃至第5のいずれか1つの態様において、前記基線波形計測部はさらに、前記増幅されたセンシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の周期を計測する。
【0012】
また、本発明の第7の態様は、第1乃至第6のいずれか1つの態様において、前記センタ装置の前記送信部から送信される制御信号は、前記通常計測時におけるセンシング信号の取得と、前記基線波形計測時におけるセンシング信号の取得とを切り替えるための切り替え信号を含み、前記センサユニットは、前記センタ装置からの切り替え信号に基づいて、前記通常計測時におけるセンシング動作と、前記基線波形計測時におけるセンシング動作とを切り替える。
【0013】
また、本発明の第8の態様は、生体情報モニタシステムであって、被検体の胸部に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の心電図の異常を判定するセンタ装置と、を具備し、前記センサユニットは、前記被検体の心電図を計測する心電図センサと、前記心電図センサにより計測された心電図データをセンシング信号として送信する送信部と、を具備し、前記センタ装置は、前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、前記受信部を介して受信した通常計測時の前記センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された前記基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、を具備する。
【0014】
また、本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0015】
また、本発明の第10の態様は、第8又は第9の態様において、前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測する。
【0016】
また、本発明の第11の態様は、第8乃至第10の態様のいずれか1つにおいて、前記基線波形計測部はさらに、前記増幅されたセンシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の周期を計測する。
【0017】
また、本発明の第12の態様は、第8乃至第11の態様のいずれか1つにおいて、前記センサユニットは、前記通常計測時におけるセンシング動作と、前記基線波形計測時におけるセンシング動作とを切り替える切り替え信号を生成する切り替え信号生成部を有する。
【0018】
また、本発明の第13の態様は、被検体の胸部に装着され、該被検体の心電図を検出する心電図センサと、前記心電図センサにより検出されたセンシング信号を蓄積するセンシング信号蓄積部と、を備えたセンサユニットと、前記センサユニットとは別個に設けられたセンタ装置であって、該センタ装置は、前記センシング信号蓄積部に蓄積された通常計測時のセンシング信号を取り込んで、当該センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、を具備する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被検体の心電図とともに心電図の基線の変動を計測して、心臓の状態と心理的動揺の両方をモニタするようにしたので、より正確なモニタリングが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる生体情報モニタシステムの概略構成を示す図である。
【0022】
センサユニット2はモジュール化されており、監視対象としての被検体4の胸部に装着される。センサユニット2は後述する心電図センサを備えており、この心電図センサにより被検体4の心電図データを取得する。取得された心電図データはセンシング信号として無線ネットワーク3を介して、医療施設や介護施設などに設置されるセンタ装置1に送信される。
【0023】
ここで、無線ネットワーク3としては、例えばBlueTooth(登録商標)等の近距離データ通信システムや、無線LAN(Local Area Network)、PHS(Personal Handyphone System)(登録商標)、携帯電話システム等が使用される。
【0024】
なお、センタ装置1とセンサユニット2との間は必ずしも直接接続する必要はなく、無線中継器を介して接続するようにしてもよい。この場合、センサユニット2と無線中継器との問の無線通信方式としてはBTや無線LAN等の微弱又は小電力型の方式が、一方、無線中継器とセンタ装置1との問の無線通信方式として携帯電話システム等の長距離通信が可能な方式がそれぞれ使用される。
【0025】
センタ装置1は、アンテナ部11と、信号分配部12と、受信部13と、送信部14と、センサデータ収集処理部15と、センサ制御部16とから構成される。アンテナ部11は、センサ制御部16で生成された制御信号を送信する送信アンテナ機能と、センサユニット2からのセンシング信号を受信する受信アンテナ機能とを有し、この機能の切替はアンテナ部11に接続されたサーキュレータ等の信号分配部12により行われる。
【0026】
受信部13は、センサユニット2から無線ネットワーク3、アンテナ部11を介して送信された無線信号を受信したのち復調し、この復調により得られるセンシング信号をセンサデータ収集処理部15へ出力する。送信部14は、センサ制御部16で生成された制御信号を変調したのち無線信号に変換し、この無線信号をアンテナ部11からセンサユニット2に向けて送信する。
【0027】
センサ制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を備えたもので、センサユニット2によるセンシング開始や終了に関する指令を含む制御信号を生成する。制御信号としては、心電図の計測の開始時刻、終了時刻などの指令の他に、可変利得増幅器の利得を決める利得信号、可変帯域通過フィルタの帯域を決める帯域信号、通常計測時におけるセンシング信号の取得と、基線波形計測時におけるセンシング信号の取得とを切り替えるための切り替え信号があるが詳細は後で説明する。
【0028】
センサデータ収集処理部15は、センサユニット2からのセンシング信号に基づいて被検体4の心電図の異常を判定する部分であるが、詳細な機能については後述する。
【0029】
図2は、センサユニット2の本体部を示す外観図である。センサユニット2にはケーブル7−1,7−2を介して電極クリップ6−1,6−2が接続されている。
【0030】
図3は、センサユニット2を電極パッド5を介して被検体4に装着したようすを示す図である。被検体4に密着された電極パッド5の凸部を電極クリップ6−1,6−2により挟むと、導通がとれてセンサによる検出が可能になる。電極パッド5の裏面、すなわち被検体4の皮膚に接する面には導電性の粘着テープが2箇所に貼り付けられ、一方の導電性の粘着テープが電極クリップ6−1に、他方の導電性の粘着テープが電極クリップ6−2に接続されており、電極パッド5を被検体4に装着することにより、2箇所の導電性の粘着テープを介して心電図データが取得できるようになる。
【0031】
図4は、センサユニット2内部の部品配置図であり、電極クリップ6−1(6−2)へのケーブル出口には電源スイッチ27が、その反対側にはアンテナ部21が配置されている。また、センサユニット2の中央部には可変利得増幅器213、センサ駆動制御部24、制御部用水晶発振器245が配置されている。さらに、上記中央部の各部品に隣接して電源スイッチ27側には、可変帯域通過フィルタ212、前置増幅部210、バッテリ26が配置されている。さらに、上記中央部の各部品に隣接してアンテナ部21側には、センサ信号送受信部230、送受信部用水晶発振器246が配置されている。
【0032】
上記した前置増幅部210と可変帯域通過フィルタ212と可変利得増幅器213とは心電図センサ200を構成する。
【0033】
図5は、センサユニット2の概略構成を示しており、アンテナ部21と、送受信信号分配部226と、センサ信号送受信部230と、センサ駆動制御部24と、センサ本体25と、バッテリ26と、送受信部用水晶発振器246と、制御部用水晶発振器245と、を備えている。図6は、図5に示すセンサユニット2のセンサ本体25とセンサ駆動制御部24の構成を示し、図7は、図5に示すセンサユニット2のセンサ信号送受信部230の構成を示している。
【0034】
図6に示すように、センサ本体25には、前置増幅器210と可変帯域通過フィルタ212と可変利得増幅器213とを有する心電図センサ200が配置されている。前置増幅器210はケーブルを介して電極クリッパ6−1(6−2)に接続されている。
【0035】
一方、センサ駆動制御部24は、CPU(中央制御部)243と、記憶部242と、AD変換部241と、サーバ・プログラミング・インターフェース(SPI)244とを備えている。
【0036】
制御部用水晶発振器245は、CPU243のクロック制御信号に基づいて所定周期のクロック信号を発生する。記憶部242は、CPU243により実行されるプログラムを記憶している。CPU243は、センサ本体25の心電図センサ200を始めとして、図7のセンサ信号送受信部230を駆動制御するもので、上述したセンタ装置1から送られてくるセンシング開始や終了、その他の指令の内容を図示せぬメモリに記憶する。そして、以後この保存された指令と記憶部242に記憶された設定データに基づいてクロック制御信号を生成して制御部用水晶発振器245に出力する。制御部用水晶発振器245より発生されるクロック信号により、駆動信号として、センシング開始や終了等に関する信号を生成する。
【0037】
CPU243は、心電図センサ200を駆動するための心電図センサ制御信号を当該心電図センサ200に出力する。心電図センサ制御信号は、心電図センサ200の計測の開始時刻、終了時刻などの指令の他に、可変帯域通過フィルタ212の帯域を決める帯域信号、可変利得増幅器213の利得を決める利得信号、通常計測時におけるセンシング信号の取得と、基線波形計測時におけるセンシング信号の取得とを切り替えるための切り替え信号がある。
【0038】
AD変換部241は、心電図センサ200からの検出データをデジタル信号に変換するもので、CPU243よりSPI244を介してセンシング信号として出力する。
【0039】
バッテリ26は、例えばボタン型リチウム電池からなるもので、このバッテリ26から発生するDC電圧を、センサ本体25、センサ駆動制御部24、センサ信号送受信部230に駆動電源として供給するようになっている。
【0040】
また、図7に示すように、センサ信号送受信部230は、送信部の構成として、SPI221と、デジタル信号制御部222と、信号変調部223と、混合部224と、電力増幅部225と、送受信信号分配部226とを備えるとともに、受信部の構成として、低雑音増幅部238と、混合部237と、信号復調部235と、デジタル信号制御部233と、SPI231とを備えている。センサ信号送受信部230はさらに、送受信部用水晶発振器246の出力を位相安定化回路234を介して受けて所定の周波数信号を生成する電圧制御型発振器236を備える。
【0041】
上記した構成において、センサ信号送受信部230は、センサ駆動制御部24からのセンシング信号をSPI221を介してデジタル信号制御部222に取り込む。さらに信号変調部223でデジタル変調、例えばQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調し、混合部224を介して電圧制御型発振器236の出力と混合した所定のフォーマットに変換してセンシングデータを作成し、この作成されたセンシングデータを電力増幅部225で電力増幅し、送受信信号分配部226よりアンテナ部21を介して、センタ装置1に向け送信させる。
【0042】
一方、センサ信号送受信部230は、センタ装置1から送られた無線信号をアンテナ部21で受信すると、送受信信号分配部226、低雑音増幅部238を介して混合部237に取り込む。ここで無線信号を電圧制御形発振器236の出力と混合した所定周波数に変換した後、信号復調部235でデジタル復調し、このデジタル復調により得られた制御信号をデジタル信号制御部233よりSPI231を介してセンサ駆動制御部24に供給する。
【0043】
図8は、センタ装置1において、特にセンサデータ収集処理部15の構成を示す図であり、心電図データ記憶部111と、正常時心電図波形記憶部112と、心電図波形比較部113と、基線波形計測部114と、心電図異常判定部115とを備える。
【0044】
センタ装置1の受信部13は、可変帯域通過フィルタ212により帯域が制限され、可変利得増幅器213により利得が増幅されたセンシング信号を受信する。心電図データ記憶部111は、このセンシング信号を、心電図データとして心電図データ記憶部111にいったん記憶する部分である。
【0045】
心電図波形比較部113は通常計測時において、心電図データ記憶部111に記憶されている測定時の心電図データと、正常時心電図波形記憶部112に記憶されている正常時の心電図データとの間で相互相関等によるパターン照合を行い、両者の差異を検出する機能を備える。
【0046】
基線波形計測部114は基線波形計測時において、心電図データ記憶部111に記憶されている心電図の基線の変動が把握できる程度に増幅された心電図データに基づいて、当該基線の変動の振幅と周期を計測する機能を備える。心電図異常判定部115は、心電図波形比較部113でのパターン照合の結果としての差異が閾値を超えたかどうかに基づいて心電図の異常を判定する。そして、当該差異が閾値を超えた場合、心電図異常判定部115は、増幅された心電図データを用いて基線の変動の振幅と周期を計測して心電図の異常を判定する。
【0047】
図9の(a)は、通常計測時においてセンサユニット2から送られてくるセンシング信号としての心電図データの信号波形を示している。図9の(b)は、基線波形計測時においてセンサユニット2の可変利得増幅器213により心電図の基線50の変動が把握できる程度に利得が増幅されて送られてくる心電図データの信号波形を示している。概して人間に心理的動揺があると心電図が影響を受けて基線が変動するが、ここでは図9の(a)に示すような通常計測時の心電図データに対して増幅処理を施すことにより基線50の変動がより明確になるようにしている。
【0048】
以下に、図10のフローチャートを参照して心電図異常判定の手順を説明する。まず通常計測時では、センタ装置1から制御信号の1つとしての利得信号を送信してセンサユニット2内部の可変利得増幅器213の増幅度を設定する(ステップS1)。ここでは、基線を決めるためにまず小さな利得に設定する。同様にしてセンタ装置1から制御信号の1つとしての帯域信号を送信して可変帯域通過フィルタ212の帯域を設定する(ステップS1)。ここでの帯域は、ノイズを除去してより明確な心電図波形が得られるような帯域に選択する。
【0049】
次に、センサユニット2のセンシング動作を開始し、一定時間(T)内における心電図データを取得する(ステップS2)。
【0050】
次に、心電図波形比較部113において、正常時心電図波形記憶部112に記憶されている正常時の心電図データに基づく信号波形と、心電図データ記憶部111に記憶されている計測時における心電図データに基づく信号波形の間で例えば相互相関等を算出することによりパターン照合を行い、両者のパターンのずれ量を差異として検出する(ステップS3)。
【0051】
次に、当該差異が閾値を超えるか否かを判断し(ステップS4)、NOの場合にはステップS2に戻り、YESの場合には心電図異常判定部115において当該心電図が異常であると判断する。
【0052】
この場合には基線波形の計測を行うために、センタ装置1からの制御信号の1つとしての切り替え信号をセンサユニット2に送信して、可変利得増幅器213の利得及び可変帯域通過フィルタ212の帯域の再設定を行うように指示する。続いて、制御信号の1つとしての利得信号をセンサユニット2に送信する。これによって、センサユニット2内の可変利得増幅器213の増幅度は新たなより大きな増幅度に再設定される。同様にして、制御信号の1つとしての帯域信号をセンサユニット2に送信する。これによって、センサユニット2内の可変帯域通過フィルタ212の帯域は新たな帯域に再設定される。ここでの再設定では図8の(b)に示すように、基線の変動が把握できる程度に増幅された信号波形が得られるように可変利得増幅器213の利得を大きくし、可変帯域通過フィルタ212の帯域を調整する。
【0053】
次に、前記Tに続く一定時間(2T)内における心電図データを取得する(ステップS6)。次に、基線波形計測部114において、増幅されて送信された心電図データに基づく信号波形(図8の(b))から、心電図の基線の変動の振幅と周期を計測する(ステップS7)。
【0054】
次に、心電図異常判定部115は、ステップS7で求めた基線の変動の振幅が閾値を超えるか否かを判断し(ステップS8)、YESの場合には当該心電図が異常であると判断する(ステップS10)。また、心電図異常判定部115は、ステップS7で求めた基線の変動の周期が閾値以下か否かを判断し(ステップS9)、YESの場合には当該心電図が異常であると判断する(ステップS10)。ステップS8あるいはステップ9においてNOと判断された場合にはステップS2に戻る。
【0055】
上記した実施形態によれば、心電図とともに基線の変動を計測することによって、心臓の状態と心理的動揺の両方をモニタするようにしたので、被検体に対してより正確なモニタリングが可能となる。
【0056】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態の構成を示す図である。第2実施形態では、図6で説明した心電図センサ200の構成要素に、被検体4の身体の動きを検出するための加速度センサ250と、被検体4の表皮温度を検出するための温度センサ251とを追加するとともに、センサ駆動制御部24の構成要素として、加速度センサ250からの加速度データをディジタルデータに変換するためのAD変換部246と、温度センサ251からの温度データをディジタルデータに変換するためのAD変換部247とを追加したことを特徴とする。加速度センサ250及び温度センサ251のセンシング開始、終了のタイミングはCPU243からのスタンバイ信号により与えられる。
【0057】
心電図データに加えて加速度データ及び/または温度データを検出することにより、被検体の心電図が異常であると判断されたときの当該被検体の身体の動き及び体温の状態を把握することができる。
【0058】
なお、第1及び第2実施形態では、センタ装置1のセンサ制御部16で生成された制御信号を送信部14を介してセンサユニット2に送信することにより、可変利得増幅器213の利得と、可変帯域フィルタ212の帯域とを設定することとしたが、センサ本体25の心電図センサ200に可変利得増幅器213と可変帯域通過フィルタ212とが設けられておらず、前置増幅器210のみが設けられている場合がある。このような構成の場合には、センタ装置1のセンサデータ収集処理部15において、センサ制御部16で生成された制御信号に基づき、センサユニット2からセンタ装置1へ送信されるセンシング信号を所定の振幅に増幅し、センシング信号に所定の帯域通過特性を持たせてもよい。
【0059】
(第3実施形態)
以下に、本発明の第3実施形態を説明する。第1及び第2実施形態では、センタ装置1からの制御信号により心電図センサ200の動作(心電図の計測の開始、終了、可変利得増幅器の利得の設定、可変帯域通過フィルタの帯域の設定、通常計測時におけるセンシング動作と、前記基線波形計測時におけるセンシング動作の切り替え)を制御するようにしたが、上記各動作の制御はセンサユニット2のセンサ駆動制御部24で行うようにしても良い。図12は、第3実施形態の構成の一例を示している。この場合、センサ本体25内の心電図センサ200は、センサ駆動制御部24からの指令に従って、可変利得増幅器の利得の設定、可変帯域通過フィルタの帯域の設定を行った上で、センサ駆動制御部24からの指令に従ってセンシング動作の開始、終了を行う。さらに、通常計測時におけるセンシング動作と、基線波形計測時におけるセンシング動作を切り替えるにあたっての、可変利得増幅器の利得と可変帯域通過フィルタの帯域の再設定についてもセンサ駆動制御部24からの指令に従って行う。
【0060】
このような構成によれば、センサユニット2のセンサ信号送受信部230の受信部分の構成を省略することができる。さらに、センタ装置1内部の信号分配部12、送信部14、センサ制御部16を省略することができる。
【0061】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態の構成を示す図である。ここでは、センサ駆動制御部24からの指定によって心電図センサ200が駆動されるが、検出された心電図データはセンシング信号としてセンシング信号蓄積部27にいったん蓄積される。その後、センシング信号は記録媒体等に格納されてセンタ装置1にオフラインで届けられる。
【0062】
このような構成によれば、センサ信号送受信部230を省略することができる。さらに、センタ装置1内部のアンテナ部11、信号分配器12、受信部13、送信部14、センサ制御部16を省略することができる。
【0063】
その他、センタ装置1及びセンサユニット2の構成、センシング対象物の種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。要するに本発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0064】
さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示されている複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出できる。例えば、実施の形態に示されている全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題を解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる生体情報モニタシステムの概略構成を示す図である。
【図2】センサユニット2の本体部を示す外観図である。
【図3】センサユニット2を電極パッド5を介して被検体4に装着したようすを示す図である。
【図4】センサユニット2内部の部品配置図である。
【図5】センサユニット2の概略構成を示す図である。
【図6】センサユニット2のセンサ本体25及びセンサ駆動制御部24の構成を示す図である。
【図7】センサユニット2のセンサ信号送受信部230の構成を示す図である。
【図8】センタ装置1において、特にセンサデータ収集処理部15の構成を示す図である。
【図9】(a)は、心電図波形比較部113で得られた測定時の心電図データに基づく信号波形を示し、(b)は、基線波形計測部114において振幅が増幅された心電図データに基づく信号波形を示す図である。
【図10】心電図異常判定の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態の構成を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態の構成を示す図である。
【図13】本発明の第4実施形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 センタ装置
2 センサユニット
3 無線ネットワーク
4 被検体
5 電極パッド
6−1(6−2) 電極クリップ
11 アンテナ部
12 信号分配器
13 受信部
14 送信部
15 センサデータ収集処理部
16 センサ制御部
21 アンテナ部
24 センサ駆動制御部
25 センサ本体
26 バッテリ
27 電源スイッチ
111 心電図データ記憶部
112 正常時心電図波形記憶部
113 心電図波形比較部
114 基線波形計測部
115 心電図異常判定部
200 心電図センサ
210 前置増幅器
212 可変帯域通過フィルタ
213 可変利得増幅器
230 センサ信号送受信部
245 制御部用水晶発振器
246 送受信部用水晶発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の胸部に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の心電図の異常を判定するセンタ装置と、を具備し、
前記センサユニットは、
前記被検体の心電図を計測する心電図センサと、
前記心電図センサにより計測された心電図データをセンシング信号として送信する送信部と、
前記センタ装置からの制御信号を受信する受信部と、
を具備し、
前記センタ装置は、
前記センサユニットを制御するための制御信号を送信する送信部と、
前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、
前記受信部を介して受信した通常計測時の前記センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、
所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、
前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された前記基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、
を具備することを特徴とする生体情報モニタシステム。
【請求項2】
前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センタ装置から送信された制御信号に基づいて設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタシステム。
【請求項3】
前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センタ装置から送信された制御信号に基づいて設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生体情報モニタシステム。
【請求項4】
前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項1記載の生体情報モニタシステム。
【請求項5】
前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項1又は請求項4記載の生体情報モニタシステム。
【請求項6】
前記基線波形計測部はさらに、前記増幅されたセンシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の周期を計測することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の生体情報システム。
【請求項7】
前記センタ装置の前記送信部から送信される制御信号は、前記通常計測時におけるセンシング信号の取得と、前記基線波形計測時におけるセンシング信号の取得とを切り替えるための切り替え信号を含み、前記センサユニットは、前記センタ装置からの切り替え信号に基づいて、前記通常計測時におけるセンシング動作と、前記基線波形計測時におけるセンシング動作とを切り替えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の生体情報モニタシステム。
【請求項8】
被検体の胸部に装着されたセンサユニットと、このセンサユニットと通信可能に接続され、前記センサユニットからのセンシング信号に基づいて前記被検体の心電図の異常を判定するセンタ装置と、を具備し、
前記センサユニットは、
前記被検体の心電図を計測する心電図センサと、
前記心電図センサにより計測された心電図データをセンシング信号として送信する送信部と、
を具備し、
前記センタ装置は、
前記センサユニットから送信されたセンシング信号を受信する受信部と、
前記受信部を介して受信した通常計測時の前記センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、
所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、
前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された前記基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、
を具備することを特徴とする生体情報モニタシステム。
【請求項9】
前記心電図センサは可変利得増幅器を有し、該可変利得増幅器の利得は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された利得で増幅された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項8記載の生体情報モニタシステム。
【請求項10】
前記心電図センサは可変帯域通過フィルタを有し、該可変帯域通過フィルタの帯域は前記センサユニット内部で設定され、前記基線波形計測部は、前記設定された帯域でろ波された心電図データを前記センシング信号として前記センタユニットから受信して、前記心電図の基線の変動の振幅を計測することを特徴とする請求項8又は請求項9記載の生体情報モニタシステム。
【請求項11】
前記基線波形計測部はさらに、前記増幅されたセンシング信号に基づいて前記心電図の基線の変動の周期を計測することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1つに記載の生体情報システム。
【請求項12】
前記センサユニットは、前記通常計測時におけるセンシング動作と、前記基線波形計測時におけるセンシング動作とを切り替える切り替え信号を生成する切り替え信号生成部を有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1つに記載の生体情報モニタシステム。
【請求項13】
被検体の胸部に装着され、該被検体の心電図を検出する心電図センサと、前記心電図センサにより検出されたセンシング信号を蓄積するセンシング信号蓄積部と、を備えたセンサユニットと、
前記センサユニットとは別個に設けられたセンタ装置であって、該センタ装置は、前記センシング信号蓄積部に蓄積された通常計測時の前記センシング信号を取り込んで、当該センシング信号に基づく第1の心電図波形と、前記被検体の正常時における第2の心電図波形とを比較する心電図波形比較部と、
所定の方法により増幅された基線波形計測時の前記センシング信号に基づいて基線の変動の振幅を計測する基線波形計測部と、
前記心電図波形比較部での比較結果と、前記基線波形計測部で計測された基線の変動の振幅とに基づいて、前記被検体の心電図の異常を判定する心電図異常判定部と、
を具備することを特徴とする生体情報モニタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−117481(P2007−117481A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314934(P2005−314934)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(505005865)株式会社 医療電子科学研究所 (28)
【Fターム(参考)】