説明

生体情報測定用プローブ

【課題】被検者の手指の太さにかかわらず、長時間にわたって、正確に生体情報を測定することができるとともに、装着時の被検者の不快感、苦痛を低減することができるプローブを提供する。
【解決手段】一対のハウジング1、2と、一対のハウジング1、2の先端部分11、21が接近離反するようにハウジング1、2同士を連結する連結部3とを備え、作動時にハウジング1、2の先端部分11、21の離反を抑制し、非作動時にはハウジング1、2の動きを規制しない開き量調整機構5が備えられている生体情報測定用プローブA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
手指に装着され、血中酸素飽和度、脈拍等の生体情報の測定に用いられるプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脈拍や血中酸素飽和度等の生体情報を測定することで、被検者の身体の状態を客観的に観察することが可能である。この生体情報の測定において、人体の手指に装着されるプローブを備えた光電脈波計やパルスオキシメータ等の光電脈波測定装置が用いられている。例えば、前記パルスオキシメータは、まず、被検者の手指に装着された前記プローブから異なる2波長の光(赤色光と赤外光)を投光し、生体(手指)を経由した光の光量変化を検出する。そして、検出された光量変化より得られる2波長脈波波形に基づいて、血中酸素飽和度(SpO2)を求めるものである。
【0003】
前記光電脈波測定装置は血中酸素飽和度及び(又は)脈拍を測定するときに、血液を採取する必要がないので被検者の身体への侵襲が非常に少なく、長時間の継続した(連続した)測定が可能である。このことにより、慢性の呼吸器疾患患者の病状の診断、患者の呼吸状態の日常的な把握といった短時間の測定以外にも、重症患者の呼吸状態の急変の監視、手術中の患者の状態(呼吸、血中酸素飽和度)の監視のような長時間測定にも用いられる。また、最近では、装置が小型化され、日常生活や運動中ような長時間の装着でも邪魔になりにくいことから、睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の血中酸素飽和度の測定(およそ8時間以上連続して測定が必要)や、スポーツトレーニング時の血中酸素飽和度の測定等にも用いられている。
【0004】
従来の手指に装着するプローブとして、例えば、特開平11−188019号公報や特開平7−236625号公報に記載されているプローブがある。特開平11−188019号公報に記載のプローブは、対向して配置された一対のハウジングと、一対のつまみ部と、前記一対のつまみ部を離間させる方向に付勢するばねとを備えており、前記一対のつまみ部が相互に接近すると前記一対のハウジングは離間し、逆に前記一対のつまみ部が相互に離間すると前記一対のハウジングが接近するように構成されている。この構成のプローブを用いることで、前記一対のハウジングの一方に備えられている発光素子と、他方に備えられている受光素子との光軸が指の太さに関係なく一定となる。
【0005】
また、特開平7−236625号公報に記載のプローブは、一対のアームと、前記一対のアームを連結する弾発性のある湾曲部材を備えている。そして、前記一対のアームは、被測定部位の接触する軟質部材と、その外側に設けられた硬質部材とを備えている。この構成によると、前記軟質部材が被検者の指と接触し、前記軟質部材が変形することで前記指への接触圧が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−188019号公報
【特許文献2】特開平7−236625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平11−188019号公報に記載のプローブでは、被検者の手指の太さによってばねの変位が大きく変わる。この場合、細い手指に装着したときに不快感、苦痛のない締め付け力となるようにばねを調整すると、太い手指に装着したときの締め付け力が高くなり、被検者に不快感、苦痛を与えてしまう。逆に、太い手指に装着したときに適切な締め付け力となるようにばねを調整すると、細い手指に装着したときの締め付け力が不足し、前記プローブが不安定になり、正確な測定ができなくなる。
【0008】
特開平7−236625号公報に記載のプローブでは、軟質部材の取り付けによって前記プローブは大きく、重くなり、それだけ、被検者の負担が大きくなる。例えば、大人と子供のように、手指の大きさに大きな差があると、前記軟質部材による接触圧の調整能力だけでは不十分となり、手指を必要以上に締め付け、被検者に不快感、苦痛を与えてしまったり、取り付けが不安定で、正確な測定ができなかったり等の不具合が生じる場合がある。
【0009】
そこで本発明は、装着される手指の太さにかかわらず、長時間にわたって、正確に生体情報を測定することができるとともに、被検者が装着されている手指に不快感、苦痛を低減することができるプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、一対のハウジングと、前記一対のハウジングの先端部分が接近離反するように前記一対のハウジング同士を連結する連結部とを備え、生体情報を測定するプローブであって、作動時に前記一対のハウジングの手指を挟持する部分の離反を抑制し、非作動時には前記一対のハウジングの動きを規制しない開き量調整機構が備えられている。
【0011】
この構成によると、前記開き量調整機構が備えられていることで、装着時に手指を挟持するときの接触圧力を調整することができ、手指の太さが変化しても、手指の太さに合わせて一定の接触圧力で手指に装着することが可能である。
【0012】
これにより、手指の太さにかかわらず、長期間連続して正確に、被験者が感じる不快感、苦痛を低減して生体情報を測定することができる生体情報測定用プローブを提供することが可能である。
【0013】
上記構成において、前記一対のハウジングはそれぞれ前記連結部を中心に回転可能であり、前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転方向を規制するものであってもよい。
【0014】
上記構成において、前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転中心軸を曲率の中心とする凸曲面を有し、曲面の外周部に周方向に配列されたラチェット歯を備えた一方のハウジングに固定されたラチェットと、他方のハウジングに回動可能に支持され、前記ラチェット歯にもたれかかりラチェットリングの逆回転を抑制する逆止片とを備えているものを挙げることができる。
【0015】
上記構成において、前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転中心軸を曲率の中心とする凹曲面を有し、曲面の外周部に周方向に配列されたラチェット歯を備えた一方のハウジングに固定されたラチェットと、他方のハウジングに回動可能に支持され、前記ラチェット歯にもたれかかりラチェットリングの逆回転を抑制する逆止片と、前記逆止片を摺動可能に支持する支持枠と、前記逆止片の前記ラチェット歯と係合する部分を前記ラチェットに向けて付勢するばねとを備えている物を挙げることができる。
【0016】
上記構成において、前記開き量調整機構は一方のハウジングに配置された回転軸と、前記回転軸に固定されたシャフトと、他方のハウジングに固定され、前記シャフトの外側に遊嵌された円筒状の外輪と、前記外輪の内周面に形成され、周方向に向かって前記シャフトとの距離が狭くなるカムに配置されたローラと、前記ローラを付勢するばねとを備えており、前記回転軸は前記一方のハウジングに対し、固定された状態と、回動可能な状態とを選択することができる回転阻止機構を備えているものであってもよい。
【0017】
上記構成において、前記一対のハウジングの先端部分が開くように前記一対のハウジングに力を付勢するばねを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、装着される手指の太さにかかわらず、長時間にわたって、正確に生体情報を測定することができるとともに、被検者が装着されている手指に不快感、苦痛を低減することができるプローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるプローブを手指に装着した状態の斜視図である。
【図2】図1に示すプローブの断面図である。
【図3】手指に装着する前のプローブの断面図である。
【図4】閉じている途中のプローブの断面図である。
【図5】手指に装着されたプローブの断面図である。
【図6】本発明にかかるプローブの他の例の断面図である。
【図7】本発明にかかるプローブのさらに他の例の開き量調整機構の周囲を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかるプローブを手指に装着した状態の斜視図であり、図2は図1に示すプローブの断面図である。本発明にかかるプローブAは、ケーブルCaで測定装置に接続されおり、被検者の手指に装着し血中酸素飽和度(SpO2)及び脈拍を測定するパルスオキシメータ用のプローブである。
【0021】
図1に示すように、プローブAは、手指の甲側に配置される上側ハウジング1と、手指の掌側に配置される下側ハウジング2と、上側ハウジング1と下側ハウジング2とを連結する連結部3と、一方の端部を上側ハウジング1に他方の端部を下側ハウジング2に支持されたばね4と、プローブAの開き量を調整するための開き量調整機構5とを備えている。
【0022】
上側ハウジング1は手指の甲側と接触する上側ホールド部11を備えている。また、下側ハウジング2は手指の掌側と接触する下側ホールド部21を備えている。上側ホールド部11と下側ホールド部21とは手指を押圧する部材である。上側ホールド部11又は下側ホールド部21は手指に密着するものが好ましく、発泡ウレタン樹脂や、ゲル状の樹脂のように手指の形状にあわせて変形可能な柔軟性を有する材料を採用することができる。
【0023】
上側ホールド部材11には、手指に対して、測定に必要な波長の光(パルスオキシメータの場合、約660nm:赤色光、約880nm:赤外光の異なる2波長)を出射できる発光部12を備えられている。発光部12としては、LEDが用いられているが、それに限定されるものではなく、所定波長の光を出射することができる光源(例えば、放電管、レーザ光源等)を広く採用することが可能である。また、下側ホールド部21には、発光部12より出射され手指を透過した光を受光し、その光量を電気信号に変換する受光部22が備えられている。受光部22は、シリコンフォトダイオードである。しかしながら、これに限定されるものではなく、発光部12より出射され、手指を透過した光を電気信号に変換することができる素子を広く採用することができる。
【0024】
連結部3は、上側ハウジング1の中間部に形成された上側連結部31と、下側ハウジング2の中間部に形成された下側連結部32とを有している。上側連結部31と下側連結部32とは重なるように配置され、それぞれ、下側ハウジング2及び上側ハウジング1に摺動可能に支持されている。上側ハウジング1及び下側ハウジング2は連結部3を中心に可動範囲内で自在に回動することで、上側ホールド部11と下側ホールド部21とが接近又は離反する。なお、上側連結部31又は下側連結部32は回動中心がずれないように、軸が挿通されていてもよい。また、上側ハウジング1及び下側ハウジング2は連結部3を挟んで上側ホールド部11及び下側ホールド部21が備えられているのと反対側の端部を接近/離反させることで、上側ホールド部11と下側ホールド部21とを離反/接近させることができる。
【0025】
ばね4は、ねじれることで反発力が発揮されるねじりコイルばねである。ばね4はコイル部41と、そのコイルの両端部より接線方向に突出した支持部42とを備えている。ばね4は、連結部3に配置されるものであり、コイル部41の中心が、上側ハウジング1及び下側ハウジング2が回動するときの回動中心と重なるように配置されている。片方の支持部42は上側ハウジング1に取り付けられ、もう一方の支持部42は下側ハウジング2に取り付けられている。
【0026】
ばね4は予め反発力が発生するようにねじられた状態でプローブAに取り付けられるものであり、ばね4が取り付けられることで、上側ハウジング1及び下側ハウジング2は、上側ホールド部11及び下側ホールド部21が離れる方向に付勢されている。なお、プローブAは手指に装着されていない状態(初期状態)において、最も開いた状態(上側ホールド部11と下側ホールド部21とが最も離れた状態)となっている。
【0027】
開き量調整機構5は、上側ハウジング1と下側ハウジング2の連結部3を支点とする回動量を調整し、上側ホールド部11と下側ホールド部21の距離を調整するものである。開き量調整機構5は、中心軸が下側ハウジング2の回動中心と重なるように下側ハウジング2に固定されたラチェットリング51と、上側ハウジング1に回動可能に支持された逆止片52とを備えている。上側ハウジング1と下側ハウジング2とが回動するとき、ラチェットリング51と係止片52とは互いに逆方向に回転するように配置されている。
【0028】
ラチェットリング51の外周には一方の傾斜がゆるいのこ歯状のラチェット歯511が周方向に等間隔で配列されている。そして、逆止片52は上側ハウジング1に回動可能に支持されており、先端部がラチェット歯511にもたれ掛かるように配置されている。開き量調整機構5において、逆止片52がラチェット歯511を乗り越える方向の回転が正転(図中矢印a1)である。開き量調整機構5が逆転(図中矢印b1)しようとすると逆止片52がラチェット歯511にかみこみ、逆転は阻止される(開き量調整機構5の逆転防止機能が作動している)。なお、図2に示すプローブAでは図示を省略しているが、実際の逆止片52には、先端がラチェットリング51と接触するように付勢する付勢部材(例えば、ばね)が備えられている。なお、逆止片52は複数個設けられていてもよい。
【0029】
プローブAにおいて、プローブAが閉じられるとき、開き量調整機構5が正転するように配置されている。プローブAが閉じられるとき、開き量調整機構5が正転し、逆止片52はラチェット歯511を乗り越え、上側ハウジング1及び下側ハウジング2はプローブAが閉じる方向に円滑に回動する。
【0030】
逆に、プローブAが開くよう上側ハウジング1及び下側ハウジング2に力が付勢された場合、開き量調整機構5は逆転しようとする。開き量調整機構5が逆転しようとすると、逆止片52がラチェット歯511にかみこみ、逆転は阻止される。これにより、プローブAは開く方向には移動しない。
【0031】
開き量調整機構5において、逆止片52は、先端をラチェットリング51からはなれる方向に回動操作するための操作部521を備えている。逆止片52の先端がラチェットリング51のラチェット歯511から離れることで、ラチェットリング51と逆止片52とはフリーな状態になる。これにより、開き量調整機構5は正転だけでなく、逆転も可能となる(開き量調整機構5の逆転防止機能が解除されている)。
【0032】
逆止片52の操作部521が操作され開き量調整機構5の回動がフリーとなると、上側ハウジング1及び下側ハウジング2はばね4の力量によって、上側ホールド部11と下側ホールド部21とが開く方向に回動することができる。
【0033】
以上のことより、開き量調整機構5の逆回転防止機能が作動中のとき、プローブAは閉じることのみ可能であり、逆回転防止機能が解除されているときは、プローブAは開閉いずれも可能である。
【0034】
プローブAの動作について図面を参照して説明する。図3は手指に装着する前のプローブの断面図であり、図4は閉じている途中のプローブの断面図であり、図5は手指に装着されたプローブの断面図である。図3に示すように、プローブAは連結部3を支点として上側ホールド部11と下側ホールド部21とが離れるように、上側ハウジング1及び下側ハウジング2にばね4の力量が作用している。すなわち、プローブAは開かれた状態となっている。逆止片52の先端はラチェットリング51に向けて付勢されている。これにより、開き量調整機構5の逆回転防止機能は作動しており、プローブAは閉じることのみ可能である。
【0035】
まず、開いた状態のプローブAの下側ホールド部21に手指を載置する。このとき、掌側を下側ホールド部21と接触させ、甲側を上側ホールド部11と対向させるように手指がプローブAに配置する。そして、上側ホールド部11を手指の甲側に接触させるように上側ハウジング1を連結部3を支点に回転させる。
【0036】
プローブAにおいて、プローブAが閉じられるとき、開き量調整機構5は正転し、逆止片52とラチェットリング51とは相対的に逆方向に円滑に回転する。これにより、上側ハウジング1が回動し、上側ホールド部11は手指の甲側に接近する(図4参照)。
【0037】
上側ハウジング1をさらに回動させることで上側ホールド部11が手指の甲側と接触する。接触した後、上側ハウジング1を押えることで、上側ホールド部11が手指を適度な押圧力で圧接される。上側ホールド部11及び下側ホールド部21が変形し、手指に対して所定の接触圧力が作用する。このとき、上側ハウジング1及び下側ハウジング2には、上側ホールド部11及び下側ホールド部21の反発力による力が作用しているが、開き量調整機構5の逆転防止機能が作動中であり、プローブAは開くことがなく、手指を挟持した状態に維持される(図5参照)。
【0038】
手指への接触圧力によって、上側ホールド部11及び下側ホールド部21と手指との間に摩擦力が発生する。この摩擦力を所定の摩擦力よりも大きくすることで、プローブAが手指よりずれるのを抑制することが可能である。また、プローブAが装着された手指は一定の接触圧力よりも大きな接触圧力が作用すると、うっ血したり、筋肉が硬直したりして不快感、苦痛を感じるようになる。
【0039】
上側ホールド部11及び下側ホールド部21から手指に作用する接触圧力は、プローブAがずれないようにする接触圧力よりも、不快感、苦痛を感じる接触圧力のほうが高い。そこで、上側ホールド部11及び下側ホールド部21とで手指に作用する接触圧力を、プローブAがずれるのを抑制できる接触圧力と、不快感、苦痛を感じる接触圧力の間となるように調整する。このように接触圧力を調整して取り付けることで、長時間の測定にかかわらずプローブAがずれにくく正確な測定を行うことができる。また、長時間の連続した装着においても被検者が手指に不快感、苦痛を感じにくい。
【0040】
プローブAは逆止片52がラチェットリング51のラチェット歯511を乗り越えるごとに、上側ホールド部11と下側ホールド部21との距離が縮む。よってラチェットリング51のラチェット歯511が細かく、個数が多いほど、上側ホールド部11と下側ホールド部21との距離を細かく調整することができる。
【0041】
プローブAにおいて手指には、上側ホールド部11が手指に接触してから接触圧力が作用する。よって、手指に作用する接触圧力にはばね4は関与しておらず上側ホールド部11及び下側ホールド部21と手指との圧接で決定される。このことにより、プローブAは手指の太さ(プローブAの開き量)にかかわらず、同じ接触圧力で手指を挟持することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では上側ハウジング1と下側ハウジング2とに対して、連結部3を中心に上側ホールド部11と下側ホールド部21との距離が開くように力を付勢するばね4を備えているが、開き量調整機構5の逆転防止機能が解除されたときに、手動で開くようにすれば、ばね4は備えられていなくてもよい。また、開き量調整機構5では、ラチェットリング51が下側ハウジング2に固定され、逆止片52が上側ハウジング1に支持されているが、これに限定されるものではなく、ラチェットリング51と逆止片52とが上側ハウジング1及び下側ハウジング2のそれぞれに分かれて取り付けられていればよい。
【0043】
本発明にかかるプローブの他の例について図面を参照して説明する。図6は本発明にかかるプローブの他の例の断面図である。図6に示すプローブBは、開き量調整機構の構成が異なる以外は図1〜図5に示すプローブAと同じ構成を有しており、実質上同じ部分には同じ符号が付してある。なお、実質上同じ部分についての詳細な説明は省略する。また、便宜上、プローブを開く方向に付勢するばねの図示は省略している。
【0044】
プローブBは、開き量調整機構6を備えている。開き量調整機構6は下側ハウジング2に形成されたラチェットリング61と、上側ハウジング1に形成された支持枠62と、支持枠62に摺動可能に支持され、ラチェットリング61と係合する逆止片63と、逆止片63をラチェットリング61の向かって付勢するばね64とを備えている。
【0045】
図6に示すように、下側ハウジング2は連結部3を支点として回転するときの中心軸を中心とする断面円弧状の壁部20を備えており、ラチェットリング61は壁部20の凹側に形成されている。ラチェットリング61には三角形状の断面を有するラチェット歯611が周方向に配列されている。ラチェット歯611の一方の傾斜面は逆止片63が容易に乗り越えられるゆるい傾斜であり、反対側の傾斜面は逆止片63が乗り越えることができないきつい傾斜である。
【0046】
支持枠62は上側ハウジング1の回転中心に形成されている。支持枠62は逆止片63を摺動可能に支持しており、ラチェットリング61と対向する部分より逆止片63が突出できるように開口が形成されている。逆止片63は先端部がラチェット歯611のゆるい傾斜面を乗り越えることができるように斜めに形成されたエッジ部631を備えている。また、エッジ部631の反対側はばね64が係合されるばね係合部632を備えており、ばね係合部632のエッジ部631側の端部には、ばね64を押えるばね留め部633が形成されている。
【0047】
ばね64は、コイルばねである。ばね64は逆止片63のばね係合部632に外嵌されており、ばね留め部633と接触している。ばね64のばね留め部633と反対側の端部は支持枠62の開口と反対側の壁面と接触している。ばね64の力量によって逆止片63は開口より外側に突出するように付勢されており、エッジ部631がラチェットリング61のラチェット歯611に押し当てられる。
【0048】
開き量調整機構6において、逆止片63のエッジ部631がラチェット歯611を乗り越えるように回転しているときが正転状態である。開き量調整機構6が逆転しようとすると逆止片63がラチェット歯611にかみこみ、逆転防止機能が作動して逆転は阻止される。また、逆止片63をばね64の力量に抗して摺動させることで、逆止片63のエッジ部631がラチェット歯611から離間させる。これにより、ラチェットリング61は逆止片63に移動を制限されなくなり、開き量調整機構6の逆転防止機能は解除される。開き量調整機構6の逆転防止機能が解除されると、開き量調整機構6は正転、逆転いずれにも回転できるようになる。
【0049】
プローブBもプローブAと同様、開き量調整機構6の逆転防止機能が作動中は閉じるのみ可能であり、逆転防止機能が解除されると開閉いずれも可能となる。プローブBを手指に装着するときは開き量調整機構6の逆転防止機能を作動させた状態で手指に装着する。これにより、プローブBは閉じる方向にのみ動き、閉じる方向にはばね4の力量が作用しないので、手指の太さ(プローブBの開き量)にかかわらず、手指を一定の接触圧力で押圧することができる。また、プローブBを手指から外す場合、逆止片63を動かし、開き量調整機構6の逆転防止機能を解除することで、プローブBは開閉可能となり、上側ホールド部11及び下側ホールド部21は手指から外れる。
【0050】
なお、逆止片63をばね64に抗して摺動させたとき、摺動させた状態で固定する固定部材を備えていてもよく、固定することなく、操作者による操作の間のみ逆転防止機能を解除できるものであってもよい。
【0051】
本発明にかかるプローブのさらに他の例について図面を参照して説明する。図7は本発明にかかるプローブのさらに他の例の開き量調整機構の周囲を拡大した拡大断面図である。図7に示すプローブCは開き量調整機構7が異なる以外はプローブAと同じ構成を有しているものであり、実質上同じ部分には、同じ符号が付してある。なお、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0052】
図7に示すプローブCに用いられている開き量調整機構7は、一方向回転クラッチと同じ構造を有している。すなわち、下側ハウジング2に備えられた回転軸70と、回転軸70に固定されたシャフト71と、シャフト71に外嵌された外輪72と、シャフト71と外輪72との間に配置されたローラ73と、ローラ73をシャフト71の周方向に押すばね74とを備えている。
【0053】
回転軸70は下側ハウジング2に形成された円柱形状の孔に取り付けられ、回転を規制する回転規制機構を備えている。回転規制機構は、回転軸70の端部に形成され回転軸70の径方向に突出したキー701と、下側ハウジング2に形成された孔にキー701が挿入されるキー溝(不図示)が形成されている。回転軸70のキー701がキー溝に嵌合しているとき、回転軸70の回転はキーとキー溝の嵌合で妨げられ、下側ハウジング2に固定されている。回転軸70を軸方向に摺動させ、キーをキー溝からずらすと、回転軸70は回転可能な状態となる。
【0054】
シャフト71は中心に回転軸70が貫通した円柱形状の部材である。シャフト71と回転軸70とは完全に固定されている。外輪72はシャフト71の外部に回動可能に遊嵌されている。外輪72は内側に、周方向に沿ってシャフト71との距離が狭くなるカム721を複数個備えている。カム721は一方から他方に向かって内側に近づくように曲面状に傾斜しており、最も広い部分は接線に対して直交する受け面を備えている。シャフト71の外周面と接触するようにカム721の内部にローラ73が配置されており、受け面とローラ73との間にはばね74が備えられている。ばね74によってローラ73はカム721のシャフト71との距離が狭くなる方向に向かって押されている。
【0055】
図7において、上側ハウジング1を上側ホールド部11が下側ホールド部21に接近するように回動されたとき、外輪72はシャフト71に対して矢印C1の方向に回転する。このとき、ローラ73はカム721の広い方向に転がり移動する。ローラ73はシャフト71及び外輪72に対してフリーな状態で回転し、上側ホールド部11が下側ホールド部21に近づくように上側ハウジング1が移動する。
【0056】
上側ハウジング1を上側ホールド部11が下側ホールド部21から離れるように移動させると、外輪72はシャフト71に対して矢印C1と逆の方向に回転しようとする。このとき、ローラ73は外輪72によって、カム721の狭くなっている方向に押される。ローラ73がカム721の狭い部分に押されると、カム721とシャフト71との間にローラ73が食い込み、外輪72の回転を阻止する。これにより、上側ハウジング1は開き量調整機構7によって、上側ホールド部11が下側ホールド部21から離れる方向に移動するのが阻止される。
【0057】
そして回転軸70を軸方向に移動させると、回転軸70のキー701が下側ハウジング2のキー溝(不図示)からはずれ、回転軸70が回転可能となる。回転軸70が回転自在となることで、上側ハウジング1及び下側ハウジング2とは回転軸70を軸に、上側ホールド部11と下側ホールド部21とが接近、離反するように移動する。
【0058】
なお、上述では下側ハウジング2を固定し、上側ハウジング1を移動させる場合を例に説明しているが、上側ハウジング1を固定し、下側ハウジング2を移動させる場合でも、上側ハウジング1及び下側ハウジング2の両方を同時に移動させる場合でも、外輪72はシャフト71に対して上述しているのと同じ方向に移動するので、同じ効果を得ることができる。
【0059】
また、開き量調整機構7では、ローラ73がシャフト71とカム721との間に食い込むことで逆回転を阻止するので、シャフト71と外輪72との位置にかかわらず逆回転を阻止することができる。そして、上側ホールド部11と下側ホールド部21との距離を連続して調整することができる。これにより、上側ホールド部11と下側ホールド部21との距離を微調整することができ、接触圧力も微調整することが可能である。
【0060】
以上のことより、開き量調整機構7を備えたプローブCを用いることで、手指の大きさにかかわらず、一定又は略一定の接触圧力で手指を挟持することができ、長時間の装着において、ずれにくく、不快感、苦痛を感じにくい。
【0061】
上述の実施形態において、開き量調整機構として、ラチェット機構或いは一方向クラッチ機構を利用したものを例に挙げているが、これに限定されるものではなく、作動状態のときハウジングの回転を一方向に規制することができ、ハウジングの回転方向の規制を簡単に解除することができる機構を広く採用することが可能である。
【0062】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかるプローブは手指に装着し、長時間、継続して脈拍や血中酸素飽和度を測定する光電脈波測定装置の測定用プローブとして用いることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
A プローブ
1 上側ハウジング
11 上側ホールド部
12 発光部
2 下側ハウジング
21 下側ホールド部
22 受光部
3 連結部
4 ばね
5 開き量調整機構
51 ラチェットリング
511 ラチェット歯
52 逆止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハウジングと、
前記一対のハウジングの先端部分が接近離反するように前記一対のハウジング同士を連結する連結部とを備え、生体情報を測定するプローブであって、
作動時に前記一対のハウジングの手指を挟持する部分の離反を抑制し、非作動時には前記一対のハウジングの動きを規制しない開き量調整機構が備えられていることを特徴とする生体情報測定用プローブ。
【請求項2】
前記一対のハウジングはそれぞれ前記連結部を中心に回転可能であり、
前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転方向を規制する請求項1に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項3】
前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転中心軸を曲率の中心とする凸曲面を有し、曲面の外周部に周方向に配列されたラチェット歯を備えた一方のハウジングに固定されたラチェットと、他方のハウジングに回動可能に支持され、前記ラチェット歯にもたれかかりラチェットリングの逆回転を抑制する逆止片とを備えている請求項2に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項4】
前記開き量調整機構は前記一対のハウジングの回転中心軸を曲率の中心とする凹曲面を有し、曲面の外周部に周方向に配列されたラチェット歯を備えた一方のハウジングに固定されたラチェットと、
他方のハウジングに回動可能に支持され、前記ラチェット歯にもたれかかりラチェットリングの逆回転を抑制する逆止片と、
前記逆止片を摺動可能に支持する支持枠と、
前記逆止片の前記ラチェット歯と係合する部分を前記ラチェットに向けて付勢するばねとを備えている請求項2に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項5】
前記開き量調整機構は一方のハウジングに配置された回転軸と、
前記回転軸に固定されたシャフトと、
他方のハウジングに固定され、前記シャフトの外側に遊嵌された円筒状の外輪と、
前記外輪の内周面に形成され、周方向に向かって前記シャフトとの距離が狭くなるカムに配置されたローラと、
前記ローラを付勢するばねとを備えており、
前記回転軸は前記一方のハウジングに対し、固定された状態と、回動可能な状態とを選択することができる回転阻止機構を備えている請求項2に記載の生体情報測定用プローブ。
【請求項6】
前記一対のハウジングの先端部分が開くように前記一対のハウジングに力を付勢するばねを備えている請求項1から請求項5のいずれかに記載の生体情報測定用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264115(P2010−264115A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118885(P2009−118885)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】