生体検知において信号対バックグランド比を向上する磁気的な回転
本発明は、磁性ナノ粒子(11)が表面に付着している間に磁界を加えるとともに磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出することによって、少なくとも一つの磁性ナノ粒子(11)と他の物体の表面との間において特定結合を非特定の結合と区別する方法及び装置(10)を提供する。方法及び装置(10)を、生体内又は生体外生体分子診断に適用することができる。本発明によるセンサは、一つのセンサ(10)において、磁性粒子又はラベル(11)の検出と、他の物体の表面に結合した磁性粒子又はラベル(11)の結合の性質及び特性の決定とを組み合わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出又は診断、特に、生体内及び生体外アプリケーションの医療及び食物診断のような生体分子診断の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、液体又は液体媒体のようなサンプル流体、すなわち、生体内及び生体外のターゲット分子を検出するとともに、磁気ナノ分子と他の物体の表面との間で特定結合(specific binding)を非特定結合(less specific binding)から区別する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体検知の課題は、高濃度、例えば、mmol/Lのバックグランド物質(例えば、アルブミンのような蛋白質)を有する複雑な混合物(例えば、血液、培養細胞、組織)中の低濃度の特定ターゲット分子(例えば、pmol/L範囲又はそれ以下の腫瘍マーカ及び病原体誘導物質(pathogen-derived material)を検出することである。
【0003】
バイオセンサは、一般に、検出を容易にするために特定の補足分子2,3及びラベル4を有する表面1を用いる。これを、第1の補足分子2が結合されたバイオセンサ表面1を表す図1に示す。溶液5において、ターゲット6と、第2の補足分子3が結合されたラベル4とが存在する。ターゲット6及びラベル4をバイオセンサ表面1に結合することができる。図2において、バイオセンサ表面1に対するラベル4のあり得る結合の幾何学的配置の一部の例を示す。例えば、タイプ1は、所望の特定結合であり、更に詳しくは、ターゲット分子6がバイオセンサ表面1上の第1の補足分子2とラベル4上に存在する第2の補足分子3との間に挟まれている構造である。さらに、ラベル4は、特定されない方法でバイオセンサの表面1に付着することもでき、すなわち、特定のターゲット分子6の介在なく表面1に結合することができる。図2のタイプ2は、[ラベル4及び/又はラベル4に結合した第2の補足分子3]と[バイオセンサ表面1及び/又はバイオセンサ表面1に結合した第1の補足分子2]との間の単一の非特定結合(non-specific bond)を表す。タイプ2bは、交差反応とも称される。通常、タイプ2の種類の結合は、表面1に弱く結合され、洗浄や磁気力のような厳密な手順によって除去しうる。図2のタイプ3は、[ラベル4及び/又はラベル4に結合した第2の補足分子3]と[バイオセンサ表面1及び/又はバイオセンサ表面1に結合した第1の補足分子2]との間の広い領域に亘る複数の非特定結合を表す。タイプ3の種類の結合は、タイプ1の結合に比べて表面に強固に結合される。図2のタイプ4は、タイプ1の変性形態を示し、この場合、ラベル4は、特定結合及び非特定結合によってバイオセンサ表面1に結合される。
【0004】
図3は、表面7に嵌め込まれたターゲット6に結合したラベル4を有する生体検知を示す。ターゲット63を、例えば、細胞膜上の受容体分子、蛋白質又は組織中の他の生物分子とすることができる。この状況は、例えば、専用の(dedicated)造影剤を用いた分子イメージングで発生し、この場合も、生物的な特定結合が要求される。ラベル4の存在又は濃度は、ターゲット分子6の存在、濃度又は活動度に関連する。イメージングを、従来知られている複数の方法、例えば、励起領域(excitation field)の走査、位置に依存する励起の使用、検知システムの走査、調査下の物体の走査、センサアレイの使用等によって行うことができる。
【0005】
検出の制限及び補足に基づく生体検知の特定を向上するために、種々のラベル結合タイプの集団を区別することができる技術を開発することが重要である。非特定信号を減少する既知の解決は、厳格な手順を化学的(例えば、高塩分濃度の洗浄)又は物理的(例えば、温度、せん断流、磁気力)に適用することによるものである。厳格なステップは、特定結合(図2のタイプ1)が妨害されない状態である間に弱い結合ラベル(例えば、図2のタイプ2)を除去することである。このようにして、信号対バックグランド比を増大する。しかしながら、タイプ3及び4によるバイオセンサ表面1に結合したラベル4は、ラベル4がタイプ1による特定結合より強く表面1に結合されたときには表面1上に存在したままである。これは、非特定の相互作用に対して利用できる大きな表面領域を有するナノ粒子ラベル4には重要な事項である[‘High-fluorescence nano-particles’, Perrin et al., J. Immunological Methods 224,77 (1999)]。磁性ナノ粒子ラベル4の非特定結合(non-specific binding)は、GMRバイオセンサにおいて知られた問題でもある[Rife et al., Sens. Act. A107,209(2003)]。
【0006】
生物分子及び分子結合の機械的な特性を調べる既知の研究方法は、いわゆる磁気ピンセット(magnetic tweezer)である[例えば、Harada et al., Nature vol.409, p.113(2001); Assi et al., J. Appl. Phys. Vol.92, p.5584(2002)]。器具は、磁性粒子に磁気力及び磁気回転を加えることに基づき、この場合、生物分子が粒子の一端に付着するとともに静止表面が粒子の他端に付着する。典型的には、磁性粒子は、1〜5μmの径及び10−13A.m2のオーダの磁気モーメントを有する。磁界は、典型的には0.1〜1Tの領域の外部磁石及び103T/mまでの磁界勾配の機械的な制御によって加えられる。この場合、磁気ビーズ上の力Fは、
に等しくなり、この場合、mを、ビーズすなわち磁性ナノ粒子の磁気モーメントとし、Bを磁界とする。右側の近似は、例えば磁気飽和によって生じた一定の粒子モーメントに適用する。磁気ピンセットの実験は、一般に、pN及びnN範囲の力が加えられる単一分子を調べるのに用いられる。低周波数の分子の回転及び分子のねじれは、外部磁石を回転することによって調べられる。ビーズを光学的に検出することによって、ビーズの偏移を測定することができる。加えられる力を、ビーズの熱振動の光学的なイメージングによって決定することができる。
【0007】
しかしながら、この方法は、以下の制約を有する。第1に、実際の用途に対して器具をコンパクト、小型化かつ使用が容易なバイオセンサアレイにするのが困難なことである。第2に、用いられるビーズは、十分大きい磁気モーメントを有するとともに光学的な検出を容易にするために大きくなる。しかしながら、バイオセンサにおいて、ビーズの寸法は、高速な拡散、低い沈降、高い表面対容量比及びセンサの小さい立体障害に対して、好適には1μmより下、更に好適には500nmより下である。さらに、磁気ピンセット技術は、一般に、研究環境において単一の分子を調べるのに適用される。実用的なバイオセンサにおいて、多数のラベル、例えば、意味のある統計を有するために100を超えるラベルが100/mm2〜1000/μm2の密度で存在する。更なる不都合は、現在の磁気ピンセットにおいて、回転の研究が低周波数、典型的には1Hzに制約され、ビーズの回転状態を検出するのが非常に困難なことである。高周波測定は、比較的低速で不正確な光イメージングのために実行するのが困難である。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、高濃度のバックグランド物質を有する混合物のターゲット分子を、向上した信号対バックグランド比で検出する方法及び装置を提供することである。
【0009】
上記目的は、本発明による方法及び装置によって達成される。
【0010】
本発明の第1の態様は、少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するセンサ装置を提供する。センサ装置は、
偏光され又は偏光可能な、例えば、ナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記ナノ粒子ラベルと前記他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とする
【0011】
本発明の利点は、バイオセンサ表面のような他の物体の表面上の種々のタイプのラベル結合間又はビーズ、細胞、センサ表面、組織等の他の物体の表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行えることである。
【0012】
電界又は磁界発生手段は、回転磁界を発生することができる。他の例において、電界又は磁界発生手段は、一方向すなわち1次元磁界、例えば、パルス1方向磁界又は正弦変調磁界を発生することができる。この場合、運動の自由度を、流体、例えば、液体又は気体を通じて所定の方向の並進速度に関連させることができる。
【0013】
電界又は磁界発生手段を、センサ装置に配置することができ、例えば、電流ワイヤ又は2次元ワイヤ構造とすることができる。磁気センサ素子を、AMRセンサ素子、GMRセンサ素子、TMRセンサ素子の一つとすることができる。
【0014】
本発明の一例において、装置は、一つの磁気センサ素子のいずれかの側、すなわち、左右又は上下に配置された二つの電界又は磁界発生手段を具えることができる。
【0015】
他の例において、センサ装置は、二つの電流ライン間に配置される。このようにして、磁気センサに対する磁気的なクロストークを最小にすることができる。電流ラインを、例えば、平行な電流シートとすることができる。本発明の本例による磁気センサの利点は、電流シートを流れる電流を部分的に又は完全に検知せずに磁性粒子の存在に起因する磁界のみ感知することである。この容量に磁界センサを配置することによって、センサが磁性粒子からの磁界を測定する間に電流が存在する場合のセンサのあり得る飽和を回避する。
【0016】
本発明は、種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを前記単一のナノ粒子ラベルから区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置も含む。
【0017】
検出手段を、光学的、磁気的又は電気的にすることができる。方法及びセンサの利点は、物理的な分子ステップ又は例えば顕微鏡を通じた視覚的な観察に依存する必要なくビーズのような不所望なクラスタ又はナノ粒子を自動的に区別できることである。
【0018】
本発明の他の態様において、少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別する方法を設ける。この方法は、
少なくとも一つのナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記ナノ粒子ラベルと前記表面との間で特定結合を非特定結合と区別することを特徴とする。
【0019】
本発明の利点は、バイオセンサ表面のような他の物体の表面上の種々のタイプのラベル結合間又はビーズ、細胞、センサ表面、組織等の他の物体の表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行えることである。
【0020】
本発明の方法の他の利点は、特定結合を有する集団と非特定結合を有する集団との間及び/又は単一の特定結合を有する集団と複数の少ない特定結合を有する集団との間の区別を行うことである。
【0021】
磁性ナノ粒子ラベルは強磁性ナノ粒子を具えることができる。磁気モーメントと磁性粒子物質との間に存在するトルクは、内部磁界を発生する磁性粒子の磁気異方性及び内部摩擦を生じる粒子の磁気の荒さに起因する。強磁性粒子は、熱エネルギーよりも大きな磁気異方性エネルギーを有し、したがって、KV>kB.Tとなる。磁気異方性エネルギーは、加えられた磁界の磁気双極子エネルギーよりも大きく、すなわち、K.V>m.Bとなり、この場合、粒子の配向及びモーメントの配向が強固に結合される。
【0022】
本発明の他の例において、強磁性ナノ粒子以外の磁性粒子、例えば、超磁性粒子のように関連のタイムスケール(例えば、磁界変調の周期)で粒子の配向と磁気モーメントの配向との間の角度が可変の粒子を用いることができる。
【0023】
本発明によれば、加えられる電界又は磁界を、回転磁界とすることができる。ビーズの回転を、例えば、生化学アッセイの露出速度、すなわち、衝突及び粘着速度又は有効結合速度(kon)を最適化するのに用いることができる。ラベルを、他のボディ、例えば、バイオチップの表面又は細胞の表面に対して回転するとき、ラベルと他のボディとの間の相互作用を高めることができる。
【0024】
他の例において、加えられる電界又は磁界を、パルス一方向磁界のような一方向すなわち一次元磁界とすることができる。この場合、運動の自由度を、液体や気体のような流体を通じた所定の方向の並進速度に関連させることができる。
【0025】
本発明による、磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、好適には磁気的に行うことができる。光学的な検出を行うこともできるが、回転の光学的な検出は、磁気ナノ粒子内又はその付近に光学的なラベルを伴う必要があり、光学的なラベル又は光学的な励起がナノ粒子の磁気異方性軸に対して配向される。光学的な検出の場合、磁気力又は起電力によるラベルの機械的な励起は、表面に結合した生物の複合体(biological complex)中の光学的な素子からの信号を変調する。一例において、ラベルの回転は光信号を変化させる。その理由は、光学的な能動素子が偏光軸を有するからである。他の例において、光学素子の運動によって、光学的なエバネッセント場において変化率を有する内部結合(in-coupling)及び/又は光学的な外部結合(optical out-coupling)が生じる。更に別の例において、光学素子の運動によって、表面のように光学的に散乱する要素(optically perturbing element)、消失要素(quenching element)又はプラズマナノ粒子のような増強要素に対して種々の距離又は向きが生じる。光信号の変調の分析を、SNRを更に増大するのに用いることができる。その理由は、ラベルからの光学的な信号がラベルの動作に従って変調するからである。バックグランド信号を抑制することができる。その理由は、例えば、生物的な環境の自己発光がラベルの起動によって変調しないからである。光信号を化学発光又は電気化学発光によって発生することもでき、それに対して、光信号をラベルの起動によって変調することができる。検出を、例えば、酸化還元酵素を検出ラベルとして用いるときに電流又は電圧によって行うことができる。電気信号の変調をラベルの起動によって行うこともできる。さらに、光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによる発光偏光(luminescence polarization)検出を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を用いることもできる。さらに、磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、時間の関数としての信号緩和を測定することによって行う。
【0026】
本発明による方法は、回転の自由度を増大するために内部回転の自由度を有する結合部を持つ磁性ナノ粒子ラベル、例えば、自由な炭素−炭素結合、オリゴ−アルカン鎖又はオリゴ−エチレングリコール鎖を有するリンカー分子を具えることもできる。リンカー分子の他の例は、”Polymer Chemistry”, by Hiemenz, P.C. Dekker, New York, 1984で見つけることができる。回転の自由度に起因して、タイプ1の結合状態の磁性粒子ラベルは自由に回転し、それに対して、タイプ3及び4のラベルの回転は強力に妨げられる。このようにして、特定結合と非特定結合との間の区別を向上することができる。
【0027】
磁性粒子の回転動作又は回転の自由度は、局部粘性摩擦の強さ及び他の物体の表面に対する結合の存在に依存する。さらに、磁性粒子の回転動作又は回転の自由度は、結合の種類に依存する。本発明の方法を用いることによって、種々のターゲット分子及びターゲット分子を含む種々の錯体を同時に検出することができる。
【0028】
本発明による方法を、生体分子診断、すなわち、生体内又は生体外の生体分子診断で用いることができる。
【0029】
さらに、本発明による方法を、種々の特性、例えば、種々の磁気モーメント及び/又は回転摩擦特性を有する磁気粒子を区別するのに用いることができる。したがって、回転分光を、ビーズの多重化を行う、すなわち、種々の固有の特性を有するビーズすなわち磁性粒子を区別するのに用いることができる。
【0030】
本発明による方法をバイオセンサのアレイ、いわゆるバイオチップ又は3次元解像度を有するイメージングに適用することができる。
【0031】
本発明は、種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別する方法であって、
ナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別することを特徴とする方法も含む。検出手段を、光学的、磁気的又は電気的にすることができる。ナノ粒子の寸法を、1nm〜5μm、好適には5nm〜500nmとすることができる。
【0032】
本発明のこれら及び他の特徴、形態及び利点を、本発明の原理を例示によって示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかにする。この説明は、例示のためにのみ与えられ、本発明の範囲を制限するものではない。以下で引用する参照図は添付図面を言及する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図面中、同一参照番号は、同一又は同様の構成要素を表す。
本発明を、特定の実施の形態に対して所定の図面を参照して説明するが、本発明は、それに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。図示した図面は線形的なものであり、限定的なものではない。図面中、図示のために構成要素の一部の寸法を誇張しており、寸法通りではない。単数の名詞を参照する際に定義されていない又は定義された個数を用いる場合、特に言及しない場合には複数の個数を含む。
【0034】
さらに、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の用語「第1」、「第2」、「第3」等は、同様な構成要素間の区別を行うために用いられ、順序又は時系列を表す必要はない。そのように用いられる用語は、適切な状況下で入れ替えることができ、ここで説明する本発明の実施の形態を、ここで説明し又は図示した順序以外の順序で実施することができる。
【0035】
さらに、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の用語「上」、「下」等は、説明のために用いられ、相対的な位置を説明する必要はない。そのように用いられる用語は、適切な状況下で入れ替えることができ、ここで説明する本発明の実施の形態を、ここで説明し又は図示した向き以外の向きで実施することができる。
【0036】
特許請求の範囲の用語「具える」は、以降に挙げる手段を限定するものと解釈すべきでなく、他の構成要素又はステップを除外するものではない。したがって、表現「手段A及びBを具える装置」の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるものではない。それは、本発明に対して装置の関連する構成要素がA及びBのみであることを意味する。
【0037】
本発明は、バイオセンサアレイのようなセンサ10を提供し、この場合、ラベルは、例えば、導体(例えば、電流ワイヤ)を含む回転磁界発生手段又は電界発生手段とすることができる電界又は磁界発生手段によって発生する磁界によって影響が及ぼされるように配置され、センサ10は、例えば、GMR,TMR又はAMRセンサ素子とすることができる少なくとも一つの磁界センサ素子も具える。
【0038】
本発明の一態様において、ラベルにトルクが発生するように電界又は磁界を加える。このようにして、ラベルは、磁界又は電界を用いることによって他のボディ(例えば、他のビーズ、チップ、細胞、組織)に対して回転するように配置される。ラベルは磁性材料を含む。ラベルは、例えば、磁気ビーズ、磁性粒子、磁気ロッド、一連の磁性粒子又は合成粒子、例えば、非磁性マトリックス内に磁気的又は光学的な活性材料又は磁性材料を含む粒子とすることができる。更なる説明において、ラベルを、ラベル、磁性ナノ粒子又はビーズ及びナノ粒子と称する。結合状態におけるナノ粒子の回転又は運動の自由度に関するパラメータは、センサ素子によって検出される。本発明による方法によって、高周波数の運動の自由度又は回転の自由度の測定が可能になる。結合の強さを、ラベルの他のオブジェクトからの離脱力を測定する方法によって見つけることができるとしても、そのような方法は、壊さない結合が特定の結合であるか他のタイプの結合であるかを決定する必要がない。本発明の方法は、結合ラベルの運動又は回転の自由度に関する他の情報を提供し、これによって、特定の結合を更に正確に確認することができる。したがって、本発明は、バイオセンサの信号対バックグランド比を向上し、従って、バイオセンサの特定を向上する。
【0039】
本発明によるセンサ10は、センサ10において、他のビーズや、細胞や、センサ表面や、組織のような他の物体の表面に結合したナノ粒子又はラベルの検出と、センサ10の周辺の3次元のxyz空間の磁性粒子又はラベル11の結合の性質及び特性の決定とを組み合わる。回転自在のラベル12と十分に固定されたラベル13(図4)との間の区別を行うために、(x軸、y軸及び/又はz軸の周辺の)3次元回転ポテンシャルは、(後に説明するように)有用な方法である。
【0040】
本発明の方法及び装置を、センサ表面に結合したラベル又はナノ粒子11によって説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。既に説明したように、本発明の方法及び装置を、ラベル又はナノ粒子11が組織や細胞のような他の物体の表面に結合するときにも適用することができる。さらに、本発明の方法を、生体内及び生体外の生体分子診断に適用することができる。
【0041】
加えられる磁界を、粒子11の磁気モーメントの配向を生じる程度に十分大きくする必要がある。要求される磁界は、粒子11の寸法及びタイプ、例えば、超磁性、強磁性、球体又は非球体に依存する。例えば、100nmの径を有する超磁性粒子は、約10−16A.m2の飽和磁気モーメントmを有することができ、それに対して、1μmの径を有する超磁性粒子は、10−13A.m2の飽和磁気モーメントを有することができる。それに対して、100nmの径を有する高密度の磁性材料から構成された粒子は、10−15A.m2の飽和磁気モーメントを有することができる。
【0042】
回転磁界を加えることによって磁気モーメントmの磁性ナノ粒子又はビーズに加えられる磁気トルクτは、式2によって与えられる。[Reitz et al., ‘Foundations of electromagnetic theory’, chapter 8, Addison-Wesley, 3rd ed.(1979)参照]
【0043】
ビーズ又は磁性ナノ粒子の磁気モーメントのトルクは、ビーズ又は粒子のモーメントを、加えられた磁化に対して平行な向きに向ける。バイオセンサにおいて、加えられたトルクは、(i)粒子それ自体に対する磁気モーメントの回転、(ii)粒子が存在する粘性環境に対する粒子の回転、及び(iii)バイオセンサの表面に結合する粒子からの力に起因するトルクによって逆にされる。
【0044】
液体中の小粒子11に対して、慣性力を、一般に粘性力に対して無視することができる。これは、共振が減衰されるとともに粒子11の質量が運動の式において重要でないことを意味する。例えば、トルクを加えた後に安定状態に到達する時間は、ρR2/3ηによってほぼ与えられ、この場合、ρを、粒子の密度とし、Rを粒子半径とし、ηを流体の粘性とする。密度1.5.103kg/m3,R=50nm及びη=10−3Pa.sの粒子に対して、約1ナノ秒の時間安定状態を達成することができ、これは、(後に説明するように)一般に粒子11の回転周期より著しく短い。
【0045】
本発明をガス液体(gaseous fluid)とともに用いる場合、粘性力に対して慣性力を無視するのは正確でなく、更に完璧なアッセイが必要となることがある。
【0046】
磁界B及び粒子の磁気モーメントmが同一平面、例えば、xz平面にあると仮定すると、磁界Bのベクトルは、基準軸、例えば、図3に示すようなx軸に対して角度φBで整列してこの平面に配置され、mは、基準軸、例えば、図3に示すようなx軸に対して角度φmで整列してこの平面に配置される。この場合、加えられるトルクは、
となる。
【0047】
磁気モーメントと磁性粒子材料との間に存在するトルクは、内部磁界を発生する磁性粒子の磁気異方性及び内部摩擦を発生する粒子の磁気的な荒れ(magnetic roughness)に起因する。簡単のために、磁性粒子が基準軸、例えば、x軸に対して角度φpを成す異方軸を有する1軸対称の楕円形状を有すると仮定する。
この場合、Kを、磁気異方性(単位J/m3)とし、Vを、粒子の磁気容量(magnetic volume)とし、γを、磁気的な摩擦係数とする。
【0048】
粘性トルクは、環境の回転摩擦によって決定される。これが粘性ηの解によって支配される場合、粘性トルクは、
にほぼ等しくなり、dを、粒子の流体力学的な径とする。バイオセンサの場合のような粒子に近接する表面の存在によって、式(6)から幾分逸脱することがある。ラベルの表面への結合に起因するトルクは、ラベル−表面結合の種類に応じて著しく変化する。
【0049】
回転摩擦は、非常に小さい摩擦(例えば、後に説明するように回転可能なリンカーが存在するときに摩擦が溶媒中でなくなることができる図2のタイプ1)から非常に大きい摩擦又は完全に抑制された回転(例えば、図2のタイプ3b)まで変化することができる。以下、1μmの径で表面に強固に結合した(ほぼ共有結合(near-covalent bond))比較的大きな粒子の結合エネルギーを見積もる。二つの材料が共有結合するとき、単位領域ごとの結合エネルギーは、10−18J/nm=1N/mのオーダとなる。粒子11が例えば0.1μm2の広い領域に亘って結合すると仮定した場合、結合エネルギーは、1N/m×0.1μm2=10−13Jとなる。加えることができる磁気トルクを計算することができる。例えば、1Tの磁界が、10Tの磁界が10−13A.m2の磁気モーメントのμサイズの粒子に加えられると、加えられる磁気トルクが10−13Jに等しくなり、換言すれば、磁気回転によって、非常に強力な結合ラベルさえも動かすことができる。
【0050】
本発明を主に磁界及び磁界発生器を参照して例示するとしても、本発明は、起電力による、例えば、電界発生器からの電界による回転及び配向粒子も含む。起電力に起因する粒子のトルクは、
に等しくなる。この場合、pを、粒子の電気双極子モーメントとし、Eを、加えられた電界とする。磁気的な場合において、双極子モーメントを、永続的にも一時的にもすることができ、一様でない形状(例えば、ロッド状)の粒子、周辺の材料とは異なる電気的な分極率、用いられた材料の強誘電性、材料の(超)常誘電性等に起因することができる。
【0051】
電気トルクが熱的な確率化(thermal randomization)に反して粒子を配向できるか否かを知るために、電気的なエネルギーを計算する。
この場合、Φを、粒子の容量とし、εを、電気的な分極率とし、Eを、加えられる電界とする。例えば、100nmの径の粒子、10−11F/mのオーダの分極率及びE=106〜108V/mの範囲の電界に対して、10−21〜10−17Jの静電エネルギーとなる。換言すれば、電気的な配向エネルギーは、室温の熱エネルギー(kBT=4.10−21J)より著しく大きいオーダとなる。
【0052】
粒子を包囲する流体はしばしば、例えばイオン価、電気双極子、材料に導入された電気双極子等に起因して電気的に活性化する。この電気的な活性化は、加えられた電界から粒子を部分的に遮蔽することができる。さらに、加えられた電界によって、電気化学的な反応又は電気的な破壊が生じることがある。したがって、加えられた電界が時間変動する(AC)場合が好適である。
【0053】
以下の説明において、本発明による方法を、種々の実施の形態によって説明する。しかしながら、本発明は、本発明の例示に過ぎない説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
本発明の第1の実施の形態において、強磁性粒子11を、生物的な流体材料、例えば、血液中の蛋白質や核酸のようなターゲット分子の検出の際にラベルとして用いられる。強磁性粒子11に、図1を参照して既に説明した第1の補足分子を設けることができる。
【0055】
強磁性粒子11は、熱エネルギーに比べて大きな磁気異方性エネルギーを有し、したがって、K.V>kB.Tとなる。磁気異方性エネルギーが、加えられた磁界の磁気双極子エネルギーより大きいとき、すなわち、K.V>m.Bのとき、粒子配向及びモーメント配向は強固に結合される。自由に回転できるとともに表面に対して強固でない又は部分的に結合した(τbinding=0)強磁性粒子11に対して、φm=φpであると仮定すると、運動の式は、
となる(式(3)〜(6)参照)。
【0056】
磁界が一定の大きさ及び変動する向きを有すると仮定すると、式(9)は、
に簡単化される。
【0057】
例えば、η=10−3Pa.s,d=100nm及びm=10−16A.m2である場合、α/Bは31.8MHz/Tに等しくなる。10mTの大きさの磁界が加えられると仮定すると、周波数αは、約300kHzのオーダに到達する。熱振動は、粒子に影響を及ぼすとともに理論的な角度と実際の角度との間に約kBT/mBの誤差が生じることがある。この場合、kBをボルツマン定数とし、Tを温度とする。T=300K,m=10−16A.m2及びB=10mTにおいて、約0.2度の角度の誤差しか存在しない。
【0058】
加えられる磁界が角周波数ωでxy平面(図5参照)において回転すると仮定すると、磁性粒子11は、
に従って磁界と磁気モーメントとの間の種々の角遅延Δ=φB−φpの集団に分離する。
【0059】
α>ωの強磁性粒子11は、一定の角遅延で磁界に従う。α<ωの強磁性粒子11は、磁界に従わず、最終的な向きが固定されない。
【0060】
回転磁界を、例えば、(回転又は非回転)磁気材料及び/又は電流ワイヤ14(図6及び7参照)のような導体とすることができる磁界発生手段によって強磁性粒子11に加えることができる。本実施の形態において、回転磁界を、好適には電流ワイヤ14a,bによって発生することができる。ナノ粒子回転の検出を、好適には磁気的に行う。光学的な検出を行うこともできるが、回転の光学的な検出は、光学的なラベルを磁気的なナノ粒子内又はその上に含むことを必要とし、光学的なラベル又は光学的な励起がナノ粒子11の磁気的な異方性軸に対して配向される。光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによるルミネッセンス偏光検出(luminescence polarization detection)を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を検出の際に用いることもできる。
【0061】
この第1の実施の形態において、磁気検出を、好適には集積磁気センサ10を用いることによって行うことができる。ホールセンサや、磁気インピーダンスや、SQUIDや、他の任意の適切な磁気センサのような種々のタイプのセンサを用いることができる。図6及び7は、磁気センサ素子15を具える集積磁性ナノ粒子センサ10を示し、磁気センサ素子15は、磁気抵抗素子、例えば、GMR,TMR又はAMRセンサ素子を有する。回転磁界発生器が設けられる。これを、センサ10の外側に配置し又はセンサ10内に集積し、例えば、本実施の形態では磁気センサ素子15の側にそれぞれ配置された電流ワイヤ14a及びbとすることができる二つの導体と、ワイヤ用の電流発生器とを有することができる。磁気センサ素子15は、例えば、細長い(長くて狭い)ストリップの幾何学的配置を有する。回転磁界は、集積された電流ワイヤ14a及びbに流れる電流によって強磁性粒子又はラベル11に加えられる。好適には、電流ワイヤ14a及びbを、強磁性粒子11が存在する容量に磁界を発生するように配置することができる。図6に示すように電流Iy1及びIy2を正のy方向で電流ワイヤ14a,14bにそれぞれ供給することによって、矢印16によって示す結果的に得られた正のx方向の磁界を発生する。図7に示すように電流方向を反転することによって、結果的に得られる磁界は、図7に示すように矢印17で示す負のx方向に反転する。磁界を発生した領域の容量が、ナノ粒子11のラベルが存在する領域に良好に整合するとき、系は、最小のインダクタンスを有し、これは、高周波数かつ比較的大きい磁界の低電力動作に有用である。
【0062】
図6及び7において、参照番号18は、第1の電流ワイヤ14aによって発生した磁界を表す。第2の電流ワイヤ14bによって発生した磁界を、参照番号19によって表す。磁性ナノ粒子11に影響を及ぼす全磁界は、集積電流ワイヤ14a,14bによってそれぞれ発生した磁界18,19と、あらゆる遠隔の磁界発生素子、例えば、コイル、磁石の磁界と、地磁気に起因する小磁界と、他の装置からの浮遊磁界との和となる。遠隔の磁界発生素子は、近接する磁界発生素子が不均一な磁界を発生する間に均一な磁界を発生することができる。
【0063】
センサ装置10は、xy平面に配置された場合に磁気センサ素子15が所定の方向の磁界の成分、例えば、図6及び7において矢印20で示すような磁界のx成分のみを検出するような検知方向を有することができる。換言すれば、x方向はセンサ15の検知方向である。したがって、導体14a,14bをそれぞれ流れる電流によって生じた磁界は、センサ11の位置で主にz方向に向いているために磁性ナノ粒子11が存在しないセンサ15によってほとんど又は全く検出されない。
【0064】
磁性粒子11がセンサ10の表面に存在する場合、磁性粒子11はそれぞれ磁気モーメントmを現す。磁気モーメントmは、センサ10の位置に面内磁界成分21を有する双極子浮遊磁界を発生する(図6及び7)。
【0065】
磁気センサ素子15は、磁性粒子11の磁気モーメントの配向によって生じた磁界を測定する。モーメントの配向は、粒子11の物理的な配向に関連し、したがって、種々の回転動作又は種々の運動の自由度を有する粒子11の集団を、磁気センサ15によって区別することができる。
【0066】
磁性粒子11の回転動作又は運動の自由度は、局部粘性摩擦(local viscous friction)の強さ及びセンサ10の表面、本実施の形態では他の物体の表面に対する結合の存在に依存する。さらに、磁性粒子11の回転動作及び運動の自由度は、センサ表面又は他の物体の表面に生じる図2で一部を既に説明した結合の種類に依存する。したがって、種々の(生)化学環境を有する粒子の集団は、測定された回転スペクトルにおいて種々の形跡(例えば、B及びωの関数として測定した振幅及び位相)を有する。したがって、本発明の方法を用いることによって、種々のターゲット分子及びターゲット分子を含む種々の錯体を同時に検出することができる。
【0067】
回転又は運動の自由度の磁気的な検出による結合識別及び集団識別方法は、好適には、物理的な回転と磁気的な回転との間又は物理的な運動の自由度と磁気的な自由度の運動の自由度との間に明確な関係を必要とする。これは、強磁性粒子11に対して、好適には加えられた磁界が関心のある周波数範囲の粒子の抗電界より小さくすべきである。
【0068】
さらに、回転励起を、互いに相違する回転軸に沿って加えることができる。測定されたスペクトルを、例えば、磁性ナノ粒子環境の異方性を決定するために比較することができる。例えば、z軸の回り及びx軸の回りの回転の測定は、タイプ1及びタイプ3aの集団を区別することができる。また、回転異方性は、粒子11と表面との間の距離を明らかにすることができる。
【0069】
上記実施の形態で説明したセンサ10は、本発明を限定するものではない。他のセンサ形態も本発明とともに用いることができる。例えば、センサ10は、2を超える磁界発生器14a及びbを具えることができ、1を超える磁気センサ素子15を具えることができる。
【0070】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態の原理を、磁界発生手段として図8に示すような2次元ワイヤ構造を具えるセンサ10に拡張する。2次元ワイヤ構造は、y方向の電流ワイヤ14a,b及びx方向の電流ワイヤ22a,bを具えることができ、更なる説明において、yワイヤ14a,b及びxワイヤ22a,bとそれぞれ称する。xワイヤ22a,b及びyワイヤ14a,bにおいて矢印23a−dによって示した電流の方向に応じて、矢印24a−dによって示される正味の磁界は、xy平面で回転し、これによって、磁性粒子又はビーズ11を取り出す。このようにして、いわゆる4極「ビーズ」モータ(four-pole ‘bead’ motor)となる。しかしながら、この方法は、回転に限定されるものではない。粒子又はビーズ11が回転できないとき、これらを所定の方向に曲げ又は引き出し、その後に検出することもできる。このようにして、結合特性を、結合の強固さを測定することによって測定することができる。これを、電流ワイヤ14a,b及び22a,bによって誘導された磁気力に応答した所定の方向への動きを測定することによって行うことができる。簡単な例として、単一のオンチップ電流ワイヤの周辺に生じた磁界勾配は、
に等しくなる。この場合、Iを、電流ワイヤ14a,bを流れる電流とし、rを、電流ワイヤ14a,bからの距離とする。例えば、5μmの距離における10mAの電流は、80T/mの磁界勾配を発生する。1mPa.sの粘性を有する環境において100nmの距離及び10−13A.m2の磁気モーメントを有するビーズ11を仮定する。この場合、磁界勾配に起因する並進速度は、0.8mm/sに等しくなる。振動周期が100μsであるとき、ビーズの長手方向の偏移は約80nmであり、これを検出することができる。
【0071】
さらに、回転粒子11の存在は、その存在の情報を与え、したがって、粒子11の検出も行うことができる。この第2の実施の形態による方法は、磁性粒子又はラベル11の検出及び回転/移動の十分な3次元空間分解能を提供する。
【0072】
本発明によるセンサ10において、2次元ワイヤ構造は、種々の形態を有するとともに種々の方法で適用されることができる。これを図9〜12に示す。図9において、x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a,bを互いに分離し、互いに相違する二つの金属層から形成することができる。磁気センサ素子を、y電流ワイヤ14a,b間に配置することができる。適切なx電流ワイヤを選択することによって、特定のy位置におけるナノ粒子11を回転することができる。図9に示した形態は、単一の磁気センサ素子15を用いた局所的な検出及び磁性粒子11の回転を提供する。
【0073】
他のあり得る形態を図10及び11に示す。この形態において、x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a−dの両方を同一金属層から形成する。各磁気センサ素子15a−dを、二つのy電流ワイヤ14a−d間に配置することができる。x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a−dを流れる電流を個別に制御することができる。
【0074】
図12において、局所的なビーズ回転を行うことができる更に別の形態を示す。この形態において、2次元ワイヤ構造は、同一金属層から形成され、磁気センサ素子15の上に配置される。しかしながら、他の形態において、2次元ワイヤ構造を、磁気センサ15の下に配置することもできる。いずれの場合も、2次元ワイヤ構造及び磁気センサ素子15を互いに分離する必要がある。
【0075】
第2の実施の形態は、局所的なビーズ回転/移動を達成できるという利点を有する。局所的なビーズ回転/移動は、表面及び容積の結合特性に3次元空間分解能を提供する。また、局所的な励起を行うことによって、磁性ナノ粒子11の3次元検出が行われる。さらに、第2の実施の形態は、局所的な励起に起因する低電力消費の利点も有する。
【0076】
本発明による他の実施の形態において、本実施の形態では磁気センサ10の上下の電流シート25とすることができる電流ラインを設けることによって磁気センサ10に対する磁気的なクロストークを最小にすることができ、これによって、図13において矢印26によって示すようにセンサ10が配置された磁界のない容量を形成することができる。これを通じて、センサ10を飽和することなく強電流の高トルクを磁性粒子11に加えるのと同時に磁性粒子11の磁界を測定することができるようになる。結果的に得られる磁界は、距離がシート25のサイズに比べて小さい(図13)という制約の下では電流シート25までの距離に依存しない。Jを電流密度とする場合、磁界は、B=μ0.J/2によって与えられる。図13の場合のように二重の電流シートを用いる場合、電界のない容量26はシート25間に存在し、平行な電流シート25の間に同一電流を流すので、磁界が存在しない。本発明の本実施の形態による磁気センサ10が電流シート25を流れる電流を全く検知せず、磁性粒子11の存在に起因する磁界のみを感知するという利点がある。したがって、磁界センサ10をこの容量に配置することによって、センサ10が磁性粒子11からの磁界を測定する間に電流が存在する場合にセンサ10のあり得る飽和を回避する。
【0077】
電流シート25を、x及びy方向の時間変動する電流を同時に供給することによってxy平面の磁性粒子11を回転するのに用いることができる。これを、図13で与えた例に対して図14に示す。Ix=J0.y.cosωt及びIy=J0.x.sinωtの場合に、一定の振幅の回転磁界が得られる
【0078】
J0=2B/μ0によって、所望の電流密度となる。シートの各々で均一な電流を維持するために、例えばx方向に流れる電流がy方向に電流を流すリードに広がるのを抑制する必要がある。これを、電流リードの各々にいわゆる電流コム(current comb)を供給することによって良好に行うことができる。電流コム27を、電流の均一な流れしたがってセンサエリア28全体に亘る磁界の均一な分布を保証するために用いられる。電流コム27は、磁気センサ10のエリアに並列であるが外側を流れる電流を減少する1組の並列抵抗として有効に動作する。
【0079】
一連の例えば並列のワイヤに対する電流シート25の利点は、非常に高いパッケージ密度であるとしても、電流がセンサエリア28内で任意の方向に流れることができ、したがって、センサエリア28内で磁界の回転を行えるようにするために、余分な層となる交差ワイヤを必要としないことである。また、個別の電流ワイヤは、磁界内が不均一となり、粒子11とセンサ10の両方に悪影響を及ぼしうる。電流シート25を用いることによって、センサエリア28の全体を均一にすることができる。
【0080】
更に別の実施の形態において、(specific binding)特定結合の粒子11(例えば、図2のタイプ1)と(less specific binding)非特定結合の粒子11(例えば、図2のタイプ3b)との間の回転又は運動の自由度の差、したがって、センサの特性を、回転の自由度を操作することによって向上することができる。これを、例えば、単一の特定結合に含まれるときに回転が自由である磁性粒子ラベル11を用いるとともにラベルの回転の自由度を測定することによって行うことができる。
【0081】
ラベル11が所望の結合状態、例えば、図2のタイプ1にあるときにラベル11に対する回転の自由度を操作する種々の方法がある。ある方法は、回転の自由度を有する表面上に補足分子を設けることによるものである。他の方法は、回転の自由度を有するナノ粒子11上に補足分子を設けることによるものである。補足分子それ自体は、(例えば、一本鎖DNA又はRNAストランドの場合において)回転の自由度を有し、又は専用のリンカーを用いることができる。回転の自由度を向上するために、回転の自由度を有するリンカー部、例えば、自由な炭素−炭素結合を有する結合子分子、オリゴ−アルカン鎖又はオリゴ−エチレングリコール鎖を用いることができる。リンカー分子の例を、”Polymer Chemistry”, by Hiemenz, P.C. Dekker, New York, 1984から見つけることができる。回転の自由度のために、タイプ1の結合飽和の磁性粒子ラベル11は自由に回転し、それに対して、タイプ3及び4の結合のラベルの回転は強力に妨げられる。
【0082】
ラベル11の熱的な回転による緩和速度を、回転による拡散係数Dr(単位s−1)から見積もることができる。
この場合、ηを、粒子11の付近の流体の有効粘性とし、Rを、粒子半径とする。例えば水の場合(η=1mPa.s)、回転による拡散係数は、種々の値のRに対して表1に要約される。
【0083】
熱的な回転による緩和速度の測定を、種々のサイズのラベル11間の区別を行うのに用いることができる。また、熱的な回転の緩和速度の測定は、種々のタイプの結合間の区別を行う方法でもある。結合プロセス及び結合解放プロセスがセンサ10の表面で行われる間、互いに相違するタイプの結合間の区別を行うために磁性ナノ粒子ラベル11の回転の自由度が測定される。その方法の一つは、図15のグラフに示すように時間の関数として信号の緩和を測定することによるものである。光学的、電気的又は磁気的な励起パルスを印加することができ、信号を時間の関数として記録することができる。タイムスケールを、例えば、1nsから1sまでの範囲とすることができる。次に、緩和時間の分布を導き出し(図16参照)、これは、表面に対する種々のタイプの結合を表す。例えば、タイプ1の回転の自由度が高いために、タイプ1の結合は、タイプ3又はタイプ4の結合よりも短い緩和時間を有する。分布の幅を、ラベル11の多分散性のような磁性ナノ粒子ラベル11の特性によって決定される。
【0084】
結合タイプの他の分離を、例えばタイプ1とタイプ3aとの間の区別を行うために励起パルスを種々の方向に印加することによって確立することができる。
【0085】
タイプ1の結合が所定の遅延によってタイプ4の結合に進むことができる。運動の緩和スペクトルを規則的に記録する必要がある場合、タイプ1の結合の総数を導くことができる。
【0086】
回転の緩和を、種々の方法で、例えば、磁気的又は光学的に測定することができる。第1に、ラベルが、永続的又は導出可能な磁気モーメントを有するとき、回転の緩和を、磁界パルスを印加することによって測定することができる。ラベルは、好適には、長いニール緩和時間(Neel relaxation time)、すなわち、タイプ1の特定の結合の回転の緩和時間より長いニール緩和時間を有する。磁気ラベル11の緩和信号を、例えば、磁気抵抗センサ20、磁気誘導コイル又は超伝導磁束量子干渉計(SQUIDS)によって測定することができる[例えば、Chemla et al., PNA 97, 14268(2000)]。
【0087】
第2に、ルミネッセンス偏光(例えば、蛍光又は燐光)を、ラベル回転の測定に用いることができる。粒子11は磁気的であり、光学的な活性は、磁気的な配向軸に結合される。例えば、光学的なラベルを磁気的なナノ粒子11内又はその上に含めることができ、光学的なラベルがナノ粒子11の磁気異方性軸に対して配向されている。光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによって、ルミネッセンス偏光検出を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を検出の際に用いることもできる。互いに相違する二つの偏光軸による光学的な検出を用いることもでき、例えば、粒子11を、一方の偏光軸で照明することができ、検出を他方の偏光軸で行うことができる。ルミネッセンス寿命(蛍光、燐光)がラベルの回転時間に匹敵し又はそれより大きくなる必要がある。ルミネッセンス偏光において、偏光によりラベルから発生したルミネッセンススペクトルは、ラベルの結合状態、特に、その回転の自由度に依存する。
【0088】
本発明の第3の実施の形態において、回転の自由度は、強磁性粒子11に加えられる1次元(1方向)磁界を用いて測定される。運動の自由度は、流体、例えば、液体又は気体を通じた所定の方向の並進速度に関連することができる。時間tにおいて、全ての粒子11の磁気モーメントがφ=0となり、磁界Bが角度θで加えられると仮定すると、粒子11は、
に従って回転する。
【0089】
粒子は、種々のφp(t)の集団に分離し、その結果、角度φの種々の到達時間を有し、互いに相違する角スペース(angular spacing)を有する。
【0090】
好適には、周期的な信号、例えば、パルス列Bx+,Bx−,Bx+などを印加する。磁性粒子11は、種々の速度及び種々の発振周波数の集団に分離する。低周波数発振からロー信号を取得するために、例えば、センサストリップの長手方向の軸線に沿って全ての磁気モーメントを予め整列するのが有利である。このために、集積電流ワイヤ又は外部(電)磁石によって、予め整列した磁界を加えることができる。
【0091】
x軸に沿った正弦磁界Bx=B0sin(ωt)が加えられるとき、運動の式は、
となる。集団は、磁気モーメント、流体力学的な径(hydrodynamic diameter)及び(例えば、粘性摩擦及び局所的な生化学結合に起因する)局所的な摩擦特性の関数としての種々の角度対時間依存性を取得する。
【0092】
他の実施の形態において、応力をかけて生化学結合を行うとともに不所望な結合を破壊するために磁気トルクを用いることができる。非常に強力な結合の磁性粒子11及び十分な回転の自由度を有する粒子11のみが移動されない。
【0093】
静的な状態において、加えられたトルクに対抗するのに必要な力は、力が作用する位置に依存する。径dを有する粒子に対して、磁気トルク(m.B)に対抗するのに必要な最小の力は、
によって与えられる。
【0094】
m=10−16A.m2,B=10mT及びd=100nmの特定例において、20pN(ピコニュートン)の最小の力が要求される。この力は、非特定結合を破壊するのに十分大きい。このようにして、pNの力を、小さいビーズ及び小さい磁界を用いることによって加えることができる。並進ピンセット(translational tweezer)において、pNの力を得るために更に大きな磁界及び更に大きなビーズが要求される。
【0095】
1方向の回転応力を加えることによって、すなわち、同一方向で回転を行うことによって、結合の回転の自由度を更に検査することができる。時間対結合破壊(time-to-bond-breaking)は、結合の強さの測定を与える。
【0096】
例えばケミカルウォッシュステップから構成することができる従来の厳格な手順に対して、本発明による磁気的な方法の重要な利点は、それを結合プロセス中に実行できることであり、その結果、特定の信号を検査中に動的にモニタすることができる。これは、検査速度を向上するとともに、結果の信頼性を増大する。
【0097】
加えられたトルクは、一回の、断続的な又は連続的な強制力(stringency)として作用する。それは、応力が課される(生)化学的な相互作用の有効分解速度(koff)を増大する物理的な方法として知られている。
【0098】
それに対して、ラベル11の回転を、生化学アッセイの露出速度、すなわち、衝突−停止速度(hit-and-stick rate)又は有効結合速度(kon)を最適化するのに用いることができる。これを二つの方法で適用することができる。第1に、ラベル11が溶液中に存在するとき、これらラベル11の回転は、溶液中の生化学物質とラベル11との間の相互作用及び結合速度を増大する。これを、例えば、アッセイ中のフィッシングステップに適用し、この場合、ラベル11は、サンプル溶液中の特定の生化学物質に結合し及び/又はこの物質を抽出するのに用いられる。第2に、ラベルを、他のボディ、例えば、バイオチップの表面又は細胞の表面に対して回転するとき、ラベルと他のボディとの間の相互作用及び結合速度を増大することができる。結合速度の増大は、ラベルの表面領域がラベル上の関連の分子結合領域(例えば、パラトープ、エピトープ又はハイブリダイゼーション整合領域)のサイズに比べて大きいときに特に重要である。これは、例えば、低濃度アッセイにおいてフィッシングステップが表面上に関心のある生化学物質がほとんどないラベルを生じる場合である。参照のために、生体分子動力学の配向及び回転の役割の一部の計算を、K.S. Schmitz and J.M. Schurr, ‘The role of orientation constraints and rotation diffusion in biomolecular solution kinetics’, J.Phys.Chem. vol. 76, p.534(1972)で見つけることができる。
【0099】
理想的な回転速度は、所定のアッセイ時間で形成する必要がある生化学結合の許容できる結合解放速度(unbinding rate)(koff)における最適な結合速度(kon)によって与えられる。換言すれば、回転は、感度及び特性に対して最適化される。
【0100】
本発明の他の実施の形態において、上記回転測定を、種々の特性、例えば、種々の磁気モーメント及び/又は回転摩擦特性を有する磁性ナノ粒子11を区別するのに用いることができる。磁化寿命、磁化異方性又は磁化摩擦の差を用いることもできる。したがって、ビーズの多重化を行う、すなわち、種々の固有の特性を有するビーズを区別するために、回転分光を用いることができる。これを、ラベルを多重化したアッセイ、例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーションに用いることができる。これを、非特定吸収に起因する信号を減少して信号対バックグランド比を更に増大するのに用いることができる。種々のサイズ又は種々の磁化を有する粒子又は粒子クラスタを区別することもできる。一例は、厳格な目的に対する種々の粒子の使用である。溶液中及び/又は表面上の粒子クラスタ又は粒子チェーンを検出するために回転測定を用いることもできる。これは、クラスタアッセイ又は凝固アッセイに有用となりうる。また、粒子の一部が、制御されない不所望な凝固又はチェーン形態を示す場合、本発明による方法を、凝固した粒子に起因する信号から単一粒子11の信号を区別するのに用いることができ、これによって、生化学検査の定量化及び信頼性を増大する。
【0101】
これまで強磁性粒子を説明したが、他の磁性粒子11、例えば、超磁性粒子のような粒子11の向きと関連のタイムスケール(例えば、磁界変調の周期)上の磁気モーメントの向きとの間に可変の角度を有する粒子11を用いることができる。本発明の他の実施の形態において、回転磁界又はパルス一方向磁界を超磁性粒子に加えることができる。超磁性粒子は、零の抗電界及び低い磁気異方性Kを有し、したがって、φm≠φpとなる。粒子は、加えられた磁界においてのみ正味の磁気モーメントを取得する。この場合、式(3)に適用されるトルクは、τmagnとτviscousとの間で割り当てられる。これを2スリップ系(two-slip system)として観察することができる。その理由は、粒子に対する磁化スリップ及び環境に対する粒子スリップが存在するからである。したがって、角遅延φB−φmは、粘性摩擦の強さ及び表面に対する結合の存在に依存する。磁化の回転周波数は、一般に、スリッピングドライブで起こるように粒子それ自体の回転周波数に等しくない。周波数スペクトルの測定は、種々の磁気特性及び種々の結合状態を有する粒子11を区別することができる。一例を図17に示す。図面中、種々の粒子11並びに種々の環境及び種々の結合状態の粒子11の大きい又は小さい集団に起因しうる種々の形態を区別することができる。例えば、ピーク1は、例えば、他の物体に結合されずに急速に移動又は回転することができる非クラスタ化粒子に対応する。ピーク2は、例えば、図2のタイプ1の結合を通じて緩やかに他の物体に結合した粒子11によって発生する。他のピーク(例えば、ピーク3)は、他のビーズにクラスタ化した粒子11によって発生する。ピーク4を、例えば図2のタイプ2に対応する他のタイプの環境の粒子11によって発生する。形態5は、非常に強く妨害された運動の自由度の粒子11、例えば、複数の相互作用を通じて表面に結合した粒子11によって発生する。したがって、周波数スペクトルのピークの位置は、ビーズ11と他の物体の表面との間の結合のタイプに依存する。図17のスペクトルは、説明のためのみのものであり、本発明を制限するものではない。
【0102】
本発明の種々の実施の形態による方法は、バイオセンサ中の種々のビーズ集団を区別するために磁性ナノ粒子又はビーズの回転又は運動の自由度を用いる。本発明の方法を適用することによって、バイオセンサ表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行い、単一の特定結合を有する集団と複数の非特定結合を有する集団との間の識別を行うことができる。本発明の方法を適用することによって、信号対バックグランド比及びバイオセンサの検出範囲を向上する。
【0103】
本発明の方法を、種々の装置アーキテクチャに適用することもできる。装置を、例えば、単一のセンサ、バイオセンサのアレイ又はいわゆるバイオチップとすることができる。方法を、使い捨て装置に適用することもできる。例えば、装置を、流体チャネル、容器、試薬等を含むカートリッジ又は実験装置(lab-in-a-device)とすることができる。方法を、使い捨てピペットキャップ内又はアフィニティカラム内で用いることもできる。方法を、単一のウェル又は複数のウェル、例えば、ウェルプレート又はマイクロプレートで用いることもできる。
【0104】
本発明による方法の利点は、結合プロセス又は結合解放プロセスが表面上で生じる間に、種々のタイプの結合を区別するようラベルの運動の自由度を測定することである。
【0105】
本明細書中で説明した方法を、分子アッセイ及び微生物群、細胞、細胞片、組織抽出物等の検出にも用いることができる。
【0106】
回転力に加えて、磁界勾配を適用することもできる。これらは、例えば、生化学結合を伸ばすために並進力を発生する。
【0107】
上記ラベル回転法を利用することができる複数のアッセイがある。一つは、ラベル11が結合し又は結合を解放して回転特性を変更するアッセイであり、この場合、結合又は非結合は、サンプル中の特定の生体物質の存在に依存する。例示は、結合アッセイ、比較アッセイ、抑制アッセイ、置換アッセイ等である。
【0108】
他のタイプのアッセイは、磁性ピンセットと同様に作用し、この場合、磁性粒子11は、生物リンカーによって他のボディ(例えば、固体表面)に結合される。一例として、リンカーを、磁気的に加えられた伸縮力によって機械的に応力が課され又は溶媒からの酵素(例えば、制限酵素又はDNA修復酵素)と相互作用する核酸分子とすることができる。従来の磁性ピンセット器具において、磁性粒子11のxyz位置及び運動は、生物リンカーの状態及びそれがどのようにして周辺と相互作用するかを表す。本発明の方法によって、一つ以上の磁性粒子11のxyz位置及び回転をオンチップ磁気センサによって検出する磁性ピンセットを形成することができる。アッセイ中、並進及び回転磁気力を3次元で加えることができる。これを、一つ以上の磁性粒子11を磁気センサ10に結合する生体部(biological moiety)との相互作用によって溶媒からの物質を分析するアッセイに対してコンパクトかつ万能の器具で行うことができる。z力ピンセットに対する回転ピンセットの利点は、更に小さいビーズを用いることができるとともに更に高い周波数特性を測定できることである。
【0109】
粒子回転を用いることができるアッセイの他の分類は、最初に粒子の回転が妨げられるとともに他の物質の介在によって回転の自由度を増大するアッセイである。例えば、分子ビーコン(相補的核酸ストランドにハイブリダイズするときに開くヘアピン核酸)に接続した粒子11は、ビーコンの閉状態で回転を妨げるとともにビーコンの開状態で回転の自由度を増大することができる。また、プローブ分子は、ターゲット分子の結合の際に形状を変化することができ、これによって、付着した又は隣接する磁性粒子の回転の自由度を変更することができる。また、酵素は、リンカー分子の一部を切り取ることができ、これによって、粒子の回転の自由度を増大する。
【0110】
アッセイの他の分類において、粒子11の回転の自由度は、分子種との相互作用によって減少する。例えば、単一ストランドDNAによってボディにリンクした粒子は、リンカーが相補ストランドのハイブリダイゼーションによって二重ストランドDNAになるときに回転の自由度の一部を緩める。これは、二重ストランドDNAの機械的な強固さに起因する。また、ターゲット分子の結合に起因して、分子は、周辺の更に大きなボディ(例えば、表面)までの距離を変更することができ、これによって、摩擦及び回転の自由度を変更する。
【0111】
アッセイの他の分類において、回転は生物的な動作によって行われ、酵素及び酵素基板によって分子又は細胞種を回転する。回転酵素の一例を、例えば、ヘリケースとする。粒子11の回転を、磁気的に検査し及び検出することができる。
【0112】
アッセイの他の分類を利用する。磁性粒子11は、細胞表面に結合し又は細胞内に入り込み、これによって、回転特性を変更する。又は、既に存在する粒子11は、他の生物分子との相互作用に起因して回転特性を変更する。細胞をセンサ表面に取り付け、又は細胞が溶液中に存在することができる。
【0113】
上記方法を生体外診断及び生体内診断、例えば、細胞、組織、有機体及び生体の診断に適用することができる。例えば分子イメージングの形態で生体内診断に適用する場合、例えば、分子回転のための外部磁界及び回転を検出する光学系を用いることによって、又は、時間的に分離した起動及び検出(例えば、フィールド切替(switched-field)磁気共鳴)を用いることによって、磁気的な起動と磁気的な検出との間の干渉を回避するよう注意する必要がある。
【0114】
本発明による装置に対して、ここでは好適な実施の形態、特定の構造及び形態、並びに物質を説明したが、種々の変更又は変形を、本発明の範囲を逸脱することなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】ターゲット及びラベルを含む溶液中で第1の補足分子が結合されたバイオセンサ表面を示し、ラベルに第2の補足分子が結合されていることを示す。
【図2】ラベルをバイオセンサ表面に結合できる種々の方法を示す。
【図3】表面に組み込まれたターゲット、例えば、細胞膜上の受容体分子又は組織表面上のターゲット分子にラベルが結合できる方法を示す。
【図4】センサ表面上で回転自在かつ十分に固定されたナノ粒子間の差を示す。
【図5】磁界B及び粒子の磁気モーメントmのベクトル表示を示す。
【図6】本発明の一実施の形態による磁界発生電流ワイヤ及び磁気抵抗検出器ストリップに近接する磁性粒子を示す。
【図7】本発明の一実施の形態による磁界発生電流ワイヤ及び磁気抵抗検出器ストリップに近接する磁性粒子を示す。
【図8】本発明の実施の形態によるセンサの磁界発生手段として適用することができる2次元ワイヤ構造を示す。
【図9】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図10】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図11】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図12】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図13】本発明の実施の形態によるセンサ形態の断面図を示す。
【図14】図12のセンサ形態の上面を示す。
【図15】時間の関数としての信号緩和の概略図を示す。
【図16】互いに相違する2タイプの結合の緩和時間分布の概略図を示す。
【図17】周波数スペクトルを図示した例である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出又は診断、特に、生体内及び生体外アプリケーションの医療及び食物診断のような生体分子診断の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、液体又は液体媒体のようなサンプル流体、すなわち、生体内及び生体外のターゲット分子を検出するとともに、磁気ナノ分子と他の物体の表面との間で特定結合(specific binding)を非特定結合(less specific binding)から区別する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体検知の課題は、高濃度、例えば、mmol/Lのバックグランド物質(例えば、アルブミンのような蛋白質)を有する複雑な混合物(例えば、血液、培養細胞、組織)中の低濃度の特定ターゲット分子(例えば、pmol/L範囲又はそれ以下の腫瘍マーカ及び病原体誘導物質(pathogen-derived material)を検出することである。
【0003】
バイオセンサは、一般に、検出を容易にするために特定の補足分子2,3及びラベル4を有する表面1を用いる。これを、第1の補足分子2が結合されたバイオセンサ表面1を表す図1に示す。溶液5において、ターゲット6と、第2の補足分子3が結合されたラベル4とが存在する。ターゲット6及びラベル4をバイオセンサ表面1に結合することができる。図2において、バイオセンサ表面1に対するラベル4のあり得る結合の幾何学的配置の一部の例を示す。例えば、タイプ1は、所望の特定結合であり、更に詳しくは、ターゲット分子6がバイオセンサ表面1上の第1の補足分子2とラベル4上に存在する第2の補足分子3との間に挟まれている構造である。さらに、ラベル4は、特定されない方法でバイオセンサの表面1に付着することもでき、すなわち、特定のターゲット分子6の介在なく表面1に結合することができる。図2のタイプ2は、[ラベル4及び/又はラベル4に結合した第2の補足分子3]と[バイオセンサ表面1及び/又はバイオセンサ表面1に結合した第1の補足分子2]との間の単一の非特定結合(non-specific bond)を表す。タイプ2bは、交差反応とも称される。通常、タイプ2の種類の結合は、表面1に弱く結合され、洗浄や磁気力のような厳密な手順によって除去しうる。図2のタイプ3は、[ラベル4及び/又はラベル4に結合した第2の補足分子3]と[バイオセンサ表面1及び/又はバイオセンサ表面1に結合した第1の補足分子2]との間の広い領域に亘る複数の非特定結合を表す。タイプ3の種類の結合は、タイプ1の結合に比べて表面に強固に結合される。図2のタイプ4は、タイプ1の変性形態を示し、この場合、ラベル4は、特定結合及び非特定結合によってバイオセンサ表面1に結合される。
【0004】
図3は、表面7に嵌め込まれたターゲット6に結合したラベル4を有する生体検知を示す。ターゲット63を、例えば、細胞膜上の受容体分子、蛋白質又は組織中の他の生物分子とすることができる。この状況は、例えば、専用の(dedicated)造影剤を用いた分子イメージングで発生し、この場合も、生物的な特定結合が要求される。ラベル4の存在又は濃度は、ターゲット分子6の存在、濃度又は活動度に関連する。イメージングを、従来知られている複数の方法、例えば、励起領域(excitation field)の走査、位置に依存する励起の使用、検知システムの走査、調査下の物体の走査、センサアレイの使用等によって行うことができる。
【0005】
検出の制限及び補足に基づく生体検知の特定を向上するために、種々のラベル結合タイプの集団を区別することができる技術を開発することが重要である。非特定信号を減少する既知の解決は、厳格な手順を化学的(例えば、高塩分濃度の洗浄)又は物理的(例えば、温度、せん断流、磁気力)に適用することによるものである。厳格なステップは、特定結合(図2のタイプ1)が妨害されない状態である間に弱い結合ラベル(例えば、図2のタイプ2)を除去することである。このようにして、信号対バックグランド比を増大する。しかしながら、タイプ3及び4によるバイオセンサ表面1に結合したラベル4は、ラベル4がタイプ1による特定結合より強く表面1に結合されたときには表面1上に存在したままである。これは、非特定の相互作用に対して利用できる大きな表面領域を有するナノ粒子ラベル4には重要な事項である[‘High-fluorescence nano-particles’, Perrin et al., J. Immunological Methods 224,77 (1999)]。磁性ナノ粒子ラベル4の非特定結合(non-specific binding)は、GMRバイオセンサにおいて知られた問題でもある[Rife et al., Sens. Act. A107,209(2003)]。
【0006】
生物分子及び分子結合の機械的な特性を調べる既知の研究方法は、いわゆる磁気ピンセット(magnetic tweezer)である[例えば、Harada et al., Nature vol.409, p.113(2001); Assi et al., J. Appl. Phys. Vol.92, p.5584(2002)]。器具は、磁性粒子に磁気力及び磁気回転を加えることに基づき、この場合、生物分子が粒子の一端に付着するとともに静止表面が粒子の他端に付着する。典型的には、磁性粒子は、1〜5μmの径及び10−13A.m2のオーダの磁気モーメントを有する。磁界は、典型的には0.1〜1Tの領域の外部磁石及び103T/mまでの磁界勾配の機械的な制御によって加えられる。この場合、磁気ビーズ上の力Fは、
に等しくなり、この場合、mを、ビーズすなわち磁性ナノ粒子の磁気モーメントとし、Bを磁界とする。右側の近似は、例えば磁気飽和によって生じた一定の粒子モーメントに適用する。磁気ピンセットの実験は、一般に、pN及びnN範囲の力が加えられる単一分子を調べるのに用いられる。低周波数の分子の回転及び分子のねじれは、外部磁石を回転することによって調べられる。ビーズを光学的に検出することによって、ビーズの偏移を測定することができる。加えられる力を、ビーズの熱振動の光学的なイメージングによって決定することができる。
【0007】
しかしながら、この方法は、以下の制約を有する。第1に、実際の用途に対して器具をコンパクト、小型化かつ使用が容易なバイオセンサアレイにするのが困難なことである。第2に、用いられるビーズは、十分大きい磁気モーメントを有するとともに光学的な検出を容易にするために大きくなる。しかしながら、バイオセンサにおいて、ビーズの寸法は、高速な拡散、低い沈降、高い表面対容量比及びセンサの小さい立体障害に対して、好適には1μmより下、更に好適には500nmより下である。さらに、磁気ピンセット技術は、一般に、研究環境において単一の分子を調べるのに適用される。実用的なバイオセンサにおいて、多数のラベル、例えば、意味のある統計を有するために100を超えるラベルが100/mm2〜1000/μm2の密度で存在する。更なる不都合は、現在の磁気ピンセットにおいて、回転の研究が低周波数、典型的には1Hzに制約され、ビーズの回転状態を検出するのが非常に困難なことである。高周波測定は、比較的低速で不正確な光イメージングのために実行するのが困難である。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、高濃度のバックグランド物質を有する混合物のターゲット分子を、向上した信号対バックグランド比で検出する方法及び装置を提供することである。
【0009】
上記目的は、本発明による方法及び装置によって達成される。
【0010】
本発明の第1の態様は、少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するセンサ装置を提供する。センサ装置は、
偏光され又は偏光可能な、例えば、ナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記ナノ粒子ラベルと前記他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とする
【0011】
本発明の利点は、バイオセンサ表面のような他の物体の表面上の種々のタイプのラベル結合間又はビーズ、細胞、センサ表面、組織等の他の物体の表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行えることである。
【0012】
電界又は磁界発生手段は、回転磁界を発生することができる。他の例において、電界又は磁界発生手段は、一方向すなわち1次元磁界、例えば、パルス1方向磁界又は正弦変調磁界を発生することができる。この場合、運動の自由度を、流体、例えば、液体又は気体を通じて所定の方向の並進速度に関連させることができる。
【0013】
電界又は磁界発生手段を、センサ装置に配置することができ、例えば、電流ワイヤ又は2次元ワイヤ構造とすることができる。磁気センサ素子を、AMRセンサ素子、GMRセンサ素子、TMRセンサ素子の一つとすることができる。
【0014】
本発明の一例において、装置は、一つの磁気センサ素子のいずれかの側、すなわち、左右又は上下に配置された二つの電界又は磁界発生手段を具えることができる。
【0015】
他の例において、センサ装置は、二つの電流ライン間に配置される。このようにして、磁気センサに対する磁気的なクロストークを最小にすることができる。電流ラインを、例えば、平行な電流シートとすることができる。本発明の本例による磁気センサの利点は、電流シートを流れる電流を部分的に又は完全に検知せずに磁性粒子の存在に起因する磁界のみ感知することである。この容量に磁界センサを配置することによって、センサが磁性粒子からの磁界を測定する間に電流が存在する場合のセンサのあり得る飽和を回避する。
【0016】
本発明は、種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを前記単一のナノ粒子ラベルから区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置も含む。
【0017】
検出手段を、光学的、磁気的又は電気的にすることができる。方法及びセンサの利点は、物理的な分子ステップ又は例えば顕微鏡を通じた視覚的な観察に依存する必要なくビーズのような不所望なクラスタ又はナノ粒子を自動的に区別できることである。
【0018】
本発明の他の態様において、少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別する方法を設ける。この方法は、
少なくとも一つのナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記ナノ粒子ラベルと前記表面との間で特定結合を非特定結合と区別することを特徴とする。
【0019】
本発明の利点は、バイオセンサ表面のような他の物体の表面上の種々のタイプのラベル結合間又はビーズ、細胞、センサ表面、組織等の他の物体の表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行えることである。
【0020】
本発明の方法の他の利点は、特定結合を有する集団と非特定結合を有する集団との間及び/又は単一の特定結合を有する集団と複数の少ない特定結合を有する集団との間の区別を行うことである。
【0021】
磁性ナノ粒子ラベルは強磁性ナノ粒子を具えることができる。磁気モーメントと磁性粒子物質との間に存在するトルクは、内部磁界を発生する磁性粒子の磁気異方性及び内部摩擦を生じる粒子の磁気の荒さに起因する。強磁性粒子は、熱エネルギーよりも大きな磁気異方性エネルギーを有し、したがって、KV>kB.Tとなる。磁気異方性エネルギーは、加えられた磁界の磁気双極子エネルギーよりも大きく、すなわち、K.V>m.Bとなり、この場合、粒子の配向及びモーメントの配向が強固に結合される。
【0022】
本発明の他の例において、強磁性ナノ粒子以外の磁性粒子、例えば、超磁性粒子のように関連のタイムスケール(例えば、磁界変調の周期)で粒子の配向と磁気モーメントの配向との間の角度が可変の粒子を用いることができる。
【0023】
本発明によれば、加えられる電界又は磁界を、回転磁界とすることができる。ビーズの回転を、例えば、生化学アッセイの露出速度、すなわち、衝突及び粘着速度又は有効結合速度(kon)を最適化するのに用いることができる。ラベルを、他のボディ、例えば、バイオチップの表面又は細胞の表面に対して回転するとき、ラベルと他のボディとの間の相互作用を高めることができる。
【0024】
他の例において、加えられる電界又は磁界を、パルス一方向磁界のような一方向すなわち一次元磁界とすることができる。この場合、運動の自由度を、液体や気体のような流体を通じた所定の方向の並進速度に関連させることができる。
【0025】
本発明による、磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、好適には磁気的に行うことができる。光学的な検出を行うこともできるが、回転の光学的な検出は、磁気ナノ粒子内又はその付近に光学的なラベルを伴う必要があり、光学的なラベル又は光学的な励起がナノ粒子の磁気異方性軸に対して配向される。光学的な検出の場合、磁気力又は起電力によるラベルの機械的な励起は、表面に結合した生物の複合体(biological complex)中の光学的な素子からの信号を変調する。一例において、ラベルの回転は光信号を変化させる。その理由は、光学的な能動素子が偏光軸を有するからである。他の例において、光学素子の運動によって、光学的なエバネッセント場において変化率を有する内部結合(in-coupling)及び/又は光学的な外部結合(optical out-coupling)が生じる。更に別の例において、光学素子の運動によって、表面のように光学的に散乱する要素(optically perturbing element)、消失要素(quenching element)又はプラズマナノ粒子のような増強要素に対して種々の距離又は向きが生じる。光信号の変調の分析を、SNRを更に増大するのに用いることができる。その理由は、ラベルからの光学的な信号がラベルの動作に従って変調するからである。バックグランド信号を抑制することができる。その理由は、例えば、生物的な環境の自己発光がラベルの起動によって変調しないからである。光信号を化学発光又は電気化学発光によって発生することもでき、それに対して、光信号をラベルの起動によって変調することができる。検出を、例えば、酸化還元酵素を検出ラベルとして用いるときに電流又は電圧によって行うことができる。電気信号の変調をラベルの起動によって行うこともできる。さらに、光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによる発光偏光(luminescence polarization)検出を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を用いることもできる。さらに、磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、時間の関数としての信号緩和を測定することによって行う。
【0026】
本発明による方法は、回転の自由度を増大するために内部回転の自由度を有する結合部を持つ磁性ナノ粒子ラベル、例えば、自由な炭素−炭素結合、オリゴ−アルカン鎖又はオリゴ−エチレングリコール鎖を有するリンカー分子を具えることもできる。リンカー分子の他の例は、”Polymer Chemistry”, by Hiemenz, P.C. Dekker, New York, 1984で見つけることができる。回転の自由度に起因して、タイプ1の結合状態の磁性粒子ラベルは自由に回転し、それに対して、タイプ3及び4のラベルの回転は強力に妨げられる。このようにして、特定結合と非特定結合との間の区別を向上することができる。
【0027】
磁性粒子の回転動作又は回転の自由度は、局部粘性摩擦の強さ及び他の物体の表面に対する結合の存在に依存する。さらに、磁性粒子の回転動作又は回転の自由度は、結合の種類に依存する。本発明の方法を用いることによって、種々のターゲット分子及びターゲット分子を含む種々の錯体を同時に検出することができる。
【0028】
本発明による方法を、生体分子診断、すなわち、生体内又は生体外の生体分子診断で用いることができる。
【0029】
さらに、本発明による方法を、種々の特性、例えば、種々の磁気モーメント及び/又は回転摩擦特性を有する磁気粒子を区別するのに用いることができる。したがって、回転分光を、ビーズの多重化を行う、すなわち、種々の固有の特性を有するビーズすなわち磁性粒子を区別するのに用いることができる。
【0030】
本発明による方法をバイオセンサのアレイ、いわゆるバイオチップ又は3次元解像度を有するイメージングに適用することができる。
【0031】
本発明は、種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別する方法であって、
ナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別することを特徴とする方法も含む。検出手段を、光学的、磁気的又は電気的にすることができる。ナノ粒子の寸法を、1nm〜5μm、好適には5nm〜500nmとすることができる。
【0032】
本発明のこれら及び他の特徴、形態及び利点を、本発明の原理を例示によって示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかにする。この説明は、例示のためにのみ与えられ、本発明の範囲を制限するものではない。以下で引用する参照図は添付図面を言及する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図面中、同一参照番号は、同一又は同様の構成要素を表す。
本発明を、特定の実施の形態に対して所定の図面を参照して説明するが、本発明は、それに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。図示した図面は線形的なものであり、限定的なものではない。図面中、図示のために構成要素の一部の寸法を誇張しており、寸法通りではない。単数の名詞を参照する際に定義されていない又は定義された個数を用いる場合、特に言及しない場合には複数の個数を含む。
【0034】
さらに、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の用語「第1」、「第2」、「第3」等は、同様な構成要素間の区別を行うために用いられ、順序又は時系列を表す必要はない。そのように用いられる用語は、適切な状況下で入れ替えることができ、ここで説明する本発明の実施の形態を、ここで説明し又は図示した順序以外の順序で実施することができる。
【0035】
さらに、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の用語「上」、「下」等は、説明のために用いられ、相対的な位置を説明する必要はない。そのように用いられる用語は、適切な状況下で入れ替えることができ、ここで説明する本発明の実施の形態を、ここで説明し又は図示した向き以外の向きで実施することができる。
【0036】
特許請求の範囲の用語「具える」は、以降に挙げる手段を限定するものと解釈すべきでなく、他の構成要素又はステップを除外するものではない。したがって、表現「手段A及びBを具える装置」の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるものではない。それは、本発明に対して装置の関連する構成要素がA及びBのみであることを意味する。
【0037】
本発明は、バイオセンサアレイのようなセンサ10を提供し、この場合、ラベルは、例えば、導体(例えば、電流ワイヤ)を含む回転磁界発生手段又は電界発生手段とすることができる電界又は磁界発生手段によって発生する磁界によって影響が及ぼされるように配置され、センサ10は、例えば、GMR,TMR又はAMRセンサ素子とすることができる少なくとも一つの磁界センサ素子も具える。
【0038】
本発明の一態様において、ラベルにトルクが発生するように電界又は磁界を加える。このようにして、ラベルは、磁界又は電界を用いることによって他のボディ(例えば、他のビーズ、チップ、細胞、組織)に対して回転するように配置される。ラベルは磁性材料を含む。ラベルは、例えば、磁気ビーズ、磁性粒子、磁気ロッド、一連の磁性粒子又は合成粒子、例えば、非磁性マトリックス内に磁気的又は光学的な活性材料又は磁性材料を含む粒子とすることができる。更なる説明において、ラベルを、ラベル、磁性ナノ粒子又はビーズ及びナノ粒子と称する。結合状態におけるナノ粒子の回転又は運動の自由度に関するパラメータは、センサ素子によって検出される。本発明による方法によって、高周波数の運動の自由度又は回転の自由度の測定が可能になる。結合の強さを、ラベルの他のオブジェクトからの離脱力を測定する方法によって見つけることができるとしても、そのような方法は、壊さない結合が特定の結合であるか他のタイプの結合であるかを決定する必要がない。本発明の方法は、結合ラベルの運動又は回転の自由度に関する他の情報を提供し、これによって、特定の結合を更に正確に確認することができる。したがって、本発明は、バイオセンサの信号対バックグランド比を向上し、従って、バイオセンサの特定を向上する。
【0039】
本発明によるセンサ10は、センサ10において、他のビーズや、細胞や、センサ表面や、組織のような他の物体の表面に結合したナノ粒子又はラベルの検出と、センサ10の周辺の3次元のxyz空間の磁性粒子又はラベル11の結合の性質及び特性の決定とを組み合わる。回転自在のラベル12と十分に固定されたラベル13(図4)との間の区別を行うために、(x軸、y軸及び/又はz軸の周辺の)3次元回転ポテンシャルは、(後に説明するように)有用な方法である。
【0040】
本発明の方法及び装置を、センサ表面に結合したラベル又はナノ粒子11によって説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。既に説明したように、本発明の方法及び装置を、ラベル又はナノ粒子11が組織や細胞のような他の物体の表面に結合するときにも適用することができる。さらに、本発明の方法を、生体内及び生体外の生体分子診断に適用することができる。
【0041】
加えられる磁界を、粒子11の磁気モーメントの配向を生じる程度に十分大きくする必要がある。要求される磁界は、粒子11の寸法及びタイプ、例えば、超磁性、強磁性、球体又は非球体に依存する。例えば、100nmの径を有する超磁性粒子は、約10−16A.m2の飽和磁気モーメントmを有することができ、それに対して、1μmの径を有する超磁性粒子は、10−13A.m2の飽和磁気モーメントを有することができる。それに対して、100nmの径を有する高密度の磁性材料から構成された粒子は、10−15A.m2の飽和磁気モーメントを有することができる。
【0042】
回転磁界を加えることによって磁気モーメントmの磁性ナノ粒子又はビーズに加えられる磁気トルクτは、式2によって与えられる。[Reitz et al., ‘Foundations of electromagnetic theory’, chapter 8, Addison-Wesley, 3rd ed.(1979)参照]
【0043】
ビーズ又は磁性ナノ粒子の磁気モーメントのトルクは、ビーズ又は粒子のモーメントを、加えられた磁化に対して平行な向きに向ける。バイオセンサにおいて、加えられたトルクは、(i)粒子それ自体に対する磁気モーメントの回転、(ii)粒子が存在する粘性環境に対する粒子の回転、及び(iii)バイオセンサの表面に結合する粒子からの力に起因するトルクによって逆にされる。
【0044】
液体中の小粒子11に対して、慣性力を、一般に粘性力に対して無視することができる。これは、共振が減衰されるとともに粒子11の質量が運動の式において重要でないことを意味する。例えば、トルクを加えた後に安定状態に到達する時間は、ρR2/3ηによってほぼ与えられ、この場合、ρを、粒子の密度とし、Rを粒子半径とし、ηを流体の粘性とする。密度1.5.103kg/m3,R=50nm及びη=10−3Pa.sの粒子に対して、約1ナノ秒の時間安定状態を達成することができ、これは、(後に説明するように)一般に粒子11の回転周期より著しく短い。
【0045】
本発明をガス液体(gaseous fluid)とともに用いる場合、粘性力に対して慣性力を無視するのは正確でなく、更に完璧なアッセイが必要となることがある。
【0046】
磁界B及び粒子の磁気モーメントmが同一平面、例えば、xz平面にあると仮定すると、磁界Bのベクトルは、基準軸、例えば、図3に示すようなx軸に対して角度φBで整列してこの平面に配置され、mは、基準軸、例えば、図3に示すようなx軸に対して角度φmで整列してこの平面に配置される。この場合、加えられるトルクは、
となる。
【0047】
磁気モーメントと磁性粒子材料との間に存在するトルクは、内部磁界を発生する磁性粒子の磁気異方性及び内部摩擦を発生する粒子の磁気的な荒れ(magnetic roughness)に起因する。簡単のために、磁性粒子が基準軸、例えば、x軸に対して角度φpを成す異方軸を有する1軸対称の楕円形状を有すると仮定する。
この場合、Kを、磁気異方性(単位J/m3)とし、Vを、粒子の磁気容量(magnetic volume)とし、γを、磁気的な摩擦係数とする。
【0048】
粘性トルクは、環境の回転摩擦によって決定される。これが粘性ηの解によって支配される場合、粘性トルクは、
にほぼ等しくなり、dを、粒子の流体力学的な径とする。バイオセンサの場合のような粒子に近接する表面の存在によって、式(6)から幾分逸脱することがある。ラベルの表面への結合に起因するトルクは、ラベル−表面結合の種類に応じて著しく変化する。
【0049】
回転摩擦は、非常に小さい摩擦(例えば、後に説明するように回転可能なリンカーが存在するときに摩擦が溶媒中でなくなることができる図2のタイプ1)から非常に大きい摩擦又は完全に抑制された回転(例えば、図2のタイプ3b)まで変化することができる。以下、1μmの径で表面に強固に結合した(ほぼ共有結合(near-covalent bond))比較的大きな粒子の結合エネルギーを見積もる。二つの材料が共有結合するとき、単位領域ごとの結合エネルギーは、10−18J/nm=1N/mのオーダとなる。粒子11が例えば0.1μm2の広い領域に亘って結合すると仮定した場合、結合エネルギーは、1N/m×0.1μm2=10−13Jとなる。加えることができる磁気トルクを計算することができる。例えば、1Tの磁界が、10Tの磁界が10−13A.m2の磁気モーメントのμサイズの粒子に加えられると、加えられる磁気トルクが10−13Jに等しくなり、換言すれば、磁気回転によって、非常に強力な結合ラベルさえも動かすことができる。
【0050】
本発明を主に磁界及び磁界発生器を参照して例示するとしても、本発明は、起電力による、例えば、電界発生器からの電界による回転及び配向粒子も含む。起電力に起因する粒子のトルクは、
に等しくなる。この場合、pを、粒子の電気双極子モーメントとし、Eを、加えられた電界とする。磁気的な場合において、双極子モーメントを、永続的にも一時的にもすることができ、一様でない形状(例えば、ロッド状)の粒子、周辺の材料とは異なる電気的な分極率、用いられた材料の強誘電性、材料の(超)常誘電性等に起因することができる。
【0051】
電気トルクが熱的な確率化(thermal randomization)に反して粒子を配向できるか否かを知るために、電気的なエネルギーを計算する。
この場合、Φを、粒子の容量とし、εを、電気的な分極率とし、Eを、加えられる電界とする。例えば、100nmの径の粒子、10−11F/mのオーダの分極率及びE=106〜108V/mの範囲の電界に対して、10−21〜10−17Jの静電エネルギーとなる。換言すれば、電気的な配向エネルギーは、室温の熱エネルギー(kBT=4.10−21J)より著しく大きいオーダとなる。
【0052】
粒子を包囲する流体はしばしば、例えばイオン価、電気双極子、材料に導入された電気双極子等に起因して電気的に活性化する。この電気的な活性化は、加えられた電界から粒子を部分的に遮蔽することができる。さらに、加えられた電界によって、電気化学的な反応又は電気的な破壊が生じることがある。したがって、加えられた電界が時間変動する(AC)場合が好適である。
【0053】
以下の説明において、本発明による方法を、種々の実施の形態によって説明する。しかしながら、本発明は、本発明の例示に過ぎない説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0054】
本発明の第1の実施の形態において、強磁性粒子11を、生物的な流体材料、例えば、血液中の蛋白質や核酸のようなターゲット分子の検出の際にラベルとして用いられる。強磁性粒子11に、図1を参照して既に説明した第1の補足分子を設けることができる。
【0055】
強磁性粒子11は、熱エネルギーに比べて大きな磁気異方性エネルギーを有し、したがって、K.V>kB.Tとなる。磁気異方性エネルギーが、加えられた磁界の磁気双極子エネルギーより大きいとき、すなわち、K.V>m.Bのとき、粒子配向及びモーメント配向は強固に結合される。自由に回転できるとともに表面に対して強固でない又は部分的に結合した(τbinding=0)強磁性粒子11に対して、φm=φpであると仮定すると、運動の式は、
となる(式(3)〜(6)参照)。
【0056】
磁界が一定の大きさ及び変動する向きを有すると仮定すると、式(9)は、
に簡単化される。
【0057】
例えば、η=10−3Pa.s,d=100nm及びm=10−16A.m2である場合、α/Bは31.8MHz/Tに等しくなる。10mTの大きさの磁界が加えられると仮定すると、周波数αは、約300kHzのオーダに到達する。熱振動は、粒子に影響を及ぼすとともに理論的な角度と実際の角度との間に約kBT/mBの誤差が生じることがある。この場合、kBをボルツマン定数とし、Tを温度とする。T=300K,m=10−16A.m2及びB=10mTにおいて、約0.2度の角度の誤差しか存在しない。
【0058】
加えられる磁界が角周波数ωでxy平面(図5参照)において回転すると仮定すると、磁性粒子11は、
に従って磁界と磁気モーメントとの間の種々の角遅延Δ=φB−φpの集団に分離する。
【0059】
α>ωの強磁性粒子11は、一定の角遅延で磁界に従う。α<ωの強磁性粒子11は、磁界に従わず、最終的な向きが固定されない。
【0060】
回転磁界を、例えば、(回転又は非回転)磁気材料及び/又は電流ワイヤ14(図6及び7参照)のような導体とすることができる磁界発生手段によって強磁性粒子11に加えることができる。本実施の形態において、回転磁界を、好適には電流ワイヤ14a,bによって発生することができる。ナノ粒子回転の検出を、好適には磁気的に行う。光学的な検出を行うこともできるが、回転の光学的な検出は、光学的なラベルを磁気的なナノ粒子内又はその上に含むことを必要とし、光学的なラベル又は光学的な励起がナノ粒子11の磁気的な異方性軸に対して配向される。光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによるルミネッセンス偏光検出(luminescence polarization detection)を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を検出の際に用いることもできる。
【0061】
この第1の実施の形態において、磁気検出を、好適には集積磁気センサ10を用いることによって行うことができる。ホールセンサや、磁気インピーダンスや、SQUIDや、他の任意の適切な磁気センサのような種々のタイプのセンサを用いることができる。図6及び7は、磁気センサ素子15を具える集積磁性ナノ粒子センサ10を示し、磁気センサ素子15は、磁気抵抗素子、例えば、GMR,TMR又はAMRセンサ素子を有する。回転磁界発生器が設けられる。これを、センサ10の外側に配置し又はセンサ10内に集積し、例えば、本実施の形態では磁気センサ素子15の側にそれぞれ配置された電流ワイヤ14a及びbとすることができる二つの導体と、ワイヤ用の電流発生器とを有することができる。磁気センサ素子15は、例えば、細長い(長くて狭い)ストリップの幾何学的配置を有する。回転磁界は、集積された電流ワイヤ14a及びbに流れる電流によって強磁性粒子又はラベル11に加えられる。好適には、電流ワイヤ14a及びbを、強磁性粒子11が存在する容量に磁界を発生するように配置することができる。図6に示すように電流Iy1及びIy2を正のy方向で電流ワイヤ14a,14bにそれぞれ供給することによって、矢印16によって示す結果的に得られた正のx方向の磁界を発生する。図7に示すように電流方向を反転することによって、結果的に得られる磁界は、図7に示すように矢印17で示す負のx方向に反転する。磁界を発生した領域の容量が、ナノ粒子11のラベルが存在する領域に良好に整合するとき、系は、最小のインダクタンスを有し、これは、高周波数かつ比較的大きい磁界の低電力動作に有用である。
【0062】
図6及び7において、参照番号18は、第1の電流ワイヤ14aによって発生した磁界を表す。第2の電流ワイヤ14bによって発生した磁界を、参照番号19によって表す。磁性ナノ粒子11に影響を及ぼす全磁界は、集積電流ワイヤ14a,14bによってそれぞれ発生した磁界18,19と、あらゆる遠隔の磁界発生素子、例えば、コイル、磁石の磁界と、地磁気に起因する小磁界と、他の装置からの浮遊磁界との和となる。遠隔の磁界発生素子は、近接する磁界発生素子が不均一な磁界を発生する間に均一な磁界を発生することができる。
【0063】
センサ装置10は、xy平面に配置された場合に磁気センサ素子15が所定の方向の磁界の成分、例えば、図6及び7において矢印20で示すような磁界のx成分のみを検出するような検知方向を有することができる。換言すれば、x方向はセンサ15の検知方向である。したがって、導体14a,14bをそれぞれ流れる電流によって生じた磁界は、センサ11の位置で主にz方向に向いているために磁性ナノ粒子11が存在しないセンサ15によってほとんど又は全く検出されない。
【0064】
磁性粒子11がセンサ10の表面に存在する場合、磁性粒子11はそれぞれ磁気モーメントmを現す。磁気モーメントmは、センサ10の位置に面内磁界成分21を有する双極子浮遊磁界を発生する(図6及び7)。
【0065】
磁気センサ素子15は、磁性粒子11の磁気モーメントの配向によって生じた磁界を測定する。モーメントの配向は、粒子11の物理的な配向に関連し、したがって、種々の回転動作又は種々の運動の自由度を有する粒子11の集団を、磁気センサ15によって区別することができる。
【0066】
磁性粒子11の回転動作又は運動の自由度は、局部粘性摩擦(local viscous friction)の強さ及びセンサ10の表面、本実施の形態では他の物体の表面に対する結合の存在に依存する。さらに、磁性粒子11の回転動作及び運動の自由度は、センサ表面又は他の物体の表面に生じる図2で一部を既に説明した結合の種類に依存する。したがって、種々の(生)化学環境を有する粒子の集団は、測定された回転スペクトルにおいて種々の形跡(例えば、B及びωの関数として測定した振幅及び位相)を有する。したがって、本発明の方法を用いることによって、種々のターゲット分子及びターゲット分子を含む種々の錯体を同時に検出することができる。
【0067】
回転又は運動の自由度の磁気的な検出による結合識別及び集団識別方法は、好適には、物理的な回転と磁気的な回転との間又は物理的な運動の自由度と磁気的な自由度の運動の自由度との間に明確な関係を必要とする。これは、強磁性粒子11に対して、好適には加えられた磁界が関心のある周波数範囲の粒子の抗電界より小さくすべきである。
【0068】
さらに、回転励起を、互いに相違する回転軸に沿って加えることができる。測定されたスペクトルを、例えば、磁性ナノ粒子環境の異方性を決定するために比較することができる。例えば、z軸の回り及びx軸の回りの回転の測定は、タイプ1及びタイプ3aの集団を区別することができる。また、回転異方性は、粒子11と表面との間の距離を明らかにすることができる。
【0069】
上記実施の形態で説明したセンサ10は、本発明を限定するものではない。他のセンサ形態も本発明とともに用いることができる。例えば、センサ10は、2を超える磁界発生器14a及びbを具えることができ、1を超える磁気センサ素子15を具えることができる。
【0070】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態の原理を、磁界発生手段として図8に示すような2次元ワイヤ構造を具えるセンサ10に拡張する。2次元ワイヤ構造は、y方向の電流ワイヤ14a,b及びx方向の電流ワイヤ22a,bを具えることができ、更なる説明において、yワイヤ14a,b及びxワイヤ22a,bとそれぞれ称する。xワイヤ22a,b及びyワイヤ14a,bにおいて矢印23a−dによって示した電流の方向に応じて、矢印24a−dによって示される正味の磁界は、xy平面で回転し、これによって、磁性粒子又はビーズ11を取り出す。このようにして、いわゆる4極「ビーズ」モータ(four-pole ‘bead’ motor)となる。しかしながら、この方法は、回転に限定されるものではない。粒子又はビーズ11が回転できないとき、これらを所定の方向に曲げ又は引き出し、その後に検出することもできる。このようにして、結合特性を、結合の強固さを測定することによって測定することができる。これを、電流ワイヤ14a,b及び22a,bによって誘導された磁気力に応答した所定の方向への動きを測定することによって行うことができる。簡単な例として、単一のオンチップ電流ワイヤの周辺に生じた磁界勾配は、
に等しくなる。この場合、Iを、電流ワイヤ14a,bを流れる電流とし、rを、電流ワイヤ14a,bからの距離とする。例えば、5μmの距離における10mAの電流は、80T/mの磁界勾配を発生する。1mPa.sの粘性を有する環境において100nmの距離及び10−13A.m2の磁気モーメントを有するビーズ11を仮定する。この場合、磁界勾配に起因する並進速度は、0.8mm/sに等しくなる。振動周期が100μsであるとき、ビーズの長手方向の偏移は約80nmであり、これを検出することができる。
【0071】
さらに、回転粒子11の存在は、その存在の情報を与え、したがって、粒子11の検出も行うことができる。この第2の実施の形態による方法は、磁性粒子又はラベル11の検出及び回転/移動の十分な3次元空間分解能を提供する。
【0072】
本発明によるセンサ10において、2次元ワイヤ構造は、種々の形態を有するとともに種々の方法で適用されることができる。これを図9〜12に示す。図9において、x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a,bを互いに分離し、互いに相違する二つの金属層から形成することができる。磁気センサ素子を、y電流ワイヤ14a,b間に配置することができる。適切なx電流ワイヤを選択することによって、特定のy位置におけるナノ粒子11を回転することができる。図9に示した形態は、単一の磁気センサ素子15を用いた局所的な検出及び磁性粒子11の回転を提供する。
【0073】
他のあり得る形態を図10及び11に示す。この形態において、x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a−dの両方を同一金属層から形成する。各磁気センサ素子15a−dを、二つのy電流ワイヤ14a−d間に配置することができる。x電流ワイヤ22a−d及びy電流ワイヤ14a−dを流れる電流を個別に制御することができる。
【0074】
図12において、局所的なビーズ回転を行うことができる更に別の形態を示す。この形態において、2次元ワイヤ構造は、同一金属層から形成され、磁気センサ素子15の上に配置される。しかしながら、他の形態において、2次元ワイヤ構造を、磁気センサ15の下に配置することもできる。いずれの場合も、2次元ワイヤ構造及び磁気センサ素子15を互いに分離する必要がある。
【0075】
第2の実施の形態は、局所的なビーズ回転/移動を達成できるという利点を有する。局所的なビーズ回転/移動は、表面及び容積の結合特性に3次元空間分解能を提供する。また、局所的な励起を行うことによって、磁性ナノ粒子11の3次元検出が行われる。さらに、第2の実施の形態は、局所的な励起に起因する低電力消費の利点も有する。
【0076】
本発明による他の実施の形態において、本実施の形態では磁気センサ10の上下の電流シート25とすることができる電流ラインを設けることによって磁気センサ10に対する磁気的なクロストークを最小にすることができ、これによって、図13において矢印26によって示すようにセンサ10が配置された磁界のない容量を形成することができる。これを通じて、センサ10を飽和することなく強電流の高トルクを磁性粒子11に加えるのと同時に磁性粒子11の磁界を測定することができるようになる。結果的に得られる磁界は、距離がシート25のサイズに比べて小さい(図13)という制約の下では電流シート25までの距離に依存しない。Jを電流密度とする場合、磁界は、B=μ0.J/2によって与えられる。図13の場合のように二重の電流シートを用いる場合、電界のない容量26はシート25間に存在し、平行な電流シート25の間に同一電流を流すので、磁界が存在しない。本発明の本実施の形態による磁気センサ10が電流シート25を流れる電流を全く検知せず、磁性粒子11の存在に起因する磁界のみを感知するという利点がある。したがって、磁界センサ10をこの容量に配置することによって、センサ10が磁性粒子11からの磁界を測定する間に電流が存在する場合にセンサ10のあり得る飽和を回避する。
【0077】
電流シート25を、x及びy方向の時間変動する電流を同時に供給することによってxy平面の磁性粒子11を回転するのに用いることができる。これを、図13で与えた例に対して図14に示す。Ix=J0.y.cosωt及びIy=J0.x.sinωtの場合に、一定の振幅の回転磁界が得られる
【0078】
J0=2B/μ0によって、所望の電流密度となる。シートの各々で均一な電流を維持するために、例えばx方向に流れる電流がy方向に電流を流すリードに広がるのを抑制する必要がある。これを、電流リードの各々にいわゆる電流コム(current comb)を供給することによって良好に行うことができる。電流コム27を、電流の均一な流れしたがってセンサエリア28全体に亘る磁界の均一な分布を保証するために用いられる。電流コム27は、磁気センサ10のエリアに並列であるが外側を流れる電流を減少する1組の並列抵抗として有効に動作する。
【0079】
一連の例えば並列のワイヤに対する電流シート25の利点は、非常に高いパッケージ密度であるとしても、電流がセンサエリア28内で任意の方向に流れることができ、したがって、センサエリア28内で磁界の回転を行えるようにするために、余分な層となる交差ワイヤを必要としないことである。また、個別の電流ワイヤは、磁界内が不均一となり、粒子11とセンサ10の両方に悪影響を及ぼしうる。電流シート25を用いることによって、センサエリア28の全体を均一にすることができる。
【0080】
更に別の実施の形態において、(specific binding)特定結合の粒子11(例えば、図2のタイプ1)と(less specific binding)非特定結合の粒子11(例えば、図2のタイプ3b)との間の回転又は運動の自由度の差、したがって、センサの特性を、回転の自由度を操作することによって向上することができる。これを、例えば、単一の特定結合に含まれるときに回転が自由である磁性粒子ラベル11を用いるとともにラベルの回転の自由度を測定することによって行うことができる。
【0081】
ラベル11が所望の結合状態、例えば、図2のタイプ1にあるときにラベル11に対する回転の自由度を操作する種々の方法がある。ある方法は、回転の自由度を有する表面上に補足分子を設けることによるものである。他の方法は、回転の自由度を有するナノ粒子11上に補足分子を設けることによるものである。補足分子それ自体は、(例えば、一本鎖DNA又はRNAストランドの場合において)回転の自由度を有し、又は専用のリンカーを用いることができる。回転の自由度を向上するために、回転の自由度を有するリンカー部、例えば、自由な炭素−炭素結合を有する結合子分子、オリゴ−アルカン鎖又はオリゴ−エチレングリコール鎖を用いることができる。リンカー分子の例を、”Polymer Chemistry”, by Hiemenz, P.C. Dekker, New York, 1984から見つけることができる。回転の自由度のために、タイプ1の結合飽和の磁性粒子ラベル11は自由に回転し、それに対して、タイプ3及び4の結合のラベルの回転は強力に妨げられる。
【0082】
ラベル11の熱的な回転による緩和速度を、回転による拡散係数Dr(単位s−1)から見積もることができる。
この場合、ηを、粒子11の付近の流体の有効粘性とし、Rを、粒子半径とする。例えば水の場合(η=1mPa.s)、回転による拡散係数は、種々の値のRに対して表1に要約される。
【0083】
熱的な回転による緩和速度の測定を、種々のサイズのラベル11間の区別を行うのに用いることができる。また、熱的な回転の緩和速度の測定は、種々のタイプの結合間の区別を行う方法でもある。結合プロセス及び結合解放プロセスがセンサ10の表面で行われる間、互いに相違するタイプの結合間の区別を行うために磁性ナノ粒子ラベル11の回転の自由度が測定される。その方法の一つは、図15のグラフに示すように時間の関数として信号の緩和を測定することによるものである。光学的、電気的又は磁気的な励起パルスを印加することができ、信号を時間の関数として記録することができる。タイムスケールを、例えば、1nsから1sまでの範囲とすることができる。次に、緩和時間の分布を導き出し(図16参照)、これは、表面に対する種々のタイプの結合を表す。例えば、タイプ1の回転の自由度が高いために、タイプ1の結合は、タイプ3又はタイプ4の結合よりも短い緩和時間を有する。分布の幅を、ラベル11の多分散性のような磁性ナノ粒子ラベル11の特性によって決定される。
【0084】
結合タイプの他の分離を、例えばタイプ1とタイプ3aとの間の区別を行うために励起パルスを種々の方向に印加することによって確立することができる。
【0085】
タイプ1の結合が所定の遅延によってタイプ4の結合に進むことができる。運動の緩和スペクトルを規則的に記録する必要がある場合、タイプ1の結合の総数を導くことができる。
【0086】
回転の緩和を、種々の方法で、例えば、磁気的又は光学的に測定することができる。第1に、ラベルが、永続的又は導出可能な磁気モーメントを有するとき、回転の緩和を、磁界パルスを印加することによって測定することができる。ラベルは、好適には、長いニール緩和時間(Neel relaxation time)、すなわち、タイプ1の特定の結合の回転の緩和時間より長いニール緩和時間を有する。磁気ラベル11の緩和信号を、例えば、磁気抵抗センサ20、磁気誘導コイル又は超伝導磁束量子干渉計(SQUIDS)によって測定することができる[例えば、Chemla et al., PNA 97, 14268(2000)]。
【0087】
第2に、ルミネッセンス偏光(例えば、蛍光又は燐光)を、ラベル回転の測定に用いることができる。粒子11は磁気的であり、光学的な活性は、磁気的な配向軸に結合される。例えば、光学的なラベルを磁気的なナノ粒子11内又はその上に含めることができ、光学的なラベルがナノ粒子11の磁気異方性軸に対して配向されている。光学的に活性の希土類錯体のような長寿命のラベルによって、ルミネッセンス偏光検出を用いることができる。カー回転や円二色性のような磁気光学効果を検出の際に用いることもできる。互いに相違する二つの偏光軸による光学的な検出を用いることもでき、例えば、粒子11を、一方の偏光軸で照明することができ、検出を他方の偏光軸で行うことができる。ルミネッセンス寿命(蛍光、燐光)がラベルの回転時間に匹敵し又はそれより大きくなる必要がある。ルミネッセンス偏光において、偏光によりラベルから発生したルミネッセンススペクトルは、ラベルの結合状態、特に、その回転の自由度に依存する。
【0088】
本発明の第3の実施の形態において、回転の自由度は、強磁性粒子11に加えられる1次元(1方向)磁界を用いて測定される。運動の自由度は、流体、例えば、液体又は気体を通じた所定の方向の並進速度に関連することができる。時間tにおいて、全ての粒子11の磁気モーメントがφ=0となり、磁界Bが角度θで加えられると仮定すると、粒子11は、
に従って回転する。
【0089】
粒子は、種々のφp(t)の集団に分離し、その結果、角度φの種々の到達時間を有し、互いに相違する角スペース(angular spacing)を有する。
【0090】
好適には、周期的な信号、例えば、パルス列Bx+,Bx−,Bx+などを印加する。磁性粒子11は、種々の速度及び種々の発振周波数の集団に分離する。低周波数発振からロー信号を取得するために、例えば、センサストリップの長手方向の軸線に沿って全ての磁気モーメントを予め整列するのが有利である。このために、集積電流ワイヤ又は外部(電)磁石によって、予め整列した磁界を加えることができる。
【0091】
x軸に沿った正弦磁界Bx=B0sin(ωt)が加えられるとき、運動の式は、
となる。集団は、磁気モーメント、流体力学的な径(hydrodynamic diameter)及び(例えば、粘性摩擦及び局所的な生化学結合に起因する)局所的な摩擦特性の関数としての種々の角度対時間依存性を取得する。
【0092】
他の実施の形態において、応力をかけて生化学結合を行うとともに不所望な結合を破壊するために磁気トルクを用いることができる。非常に強力な結合の磁性粒子11及び十分な回転の自由度を有する粒子11のみが移動されない。
【0093】
静的な状態において、加えられたトルクに対抗するのに必要な力は、力が作用する位置に依存する。径dを有する粒子に対して、磁気トルク(m.B)に対抗するのに必要な最小の力は、
によって与えられる。
【0094】
m=10−16A.m2,B=10mT及びd=100nmの特定例において、20pN(ピコニュートン)の最小の力が要求される。この力は、非特定結合を破壊するのに十分大きい。このようにして、pNの力を、小さいビーズ及び小さい磁界を用いることによって加えることができる。並進ピンセット(translational tweezer)において、pNの力を得るために更に大きな磁界及び更に大きなビーズが要求される。
【0095】
1方向の回転応力を加えることによって、すなわち、同一方向で回転を行うことによって、結合の回転の自由度を更に検査することができる。時間対結合破壊(time-to-bond-breaking)は、結合の強さの測定を与える。
【0096】
例えばケミカルウォッシュステップから構成することができる従来の厳格な手順に対して、本発明による磁気的な方法の重要な利点は、それを結合プロセス中に実行できることであり、その結果、特定の信号を検査中に動的にモニタすることができる。これは、検査速度を向上するとともに、結果の信頼性を増大する。
【0097】
加えられたトルクは、一回の、断続的な又は連続的な強制力(stringency)として作用する。それは、応力が課される(生)化学的な相互作用の有効分解速度(koff)を増大する物理的な方法として知られている。
【0098】
それに対して、ラベル11の回転を、生化学アッセイの露出速度、すなわち、衝突−停止速度(hit-and-stick rate)又は有効結合速度(kon)を最適化するのに用いることができる。これを二つの方法で適用することができる。第1に、ラベル11が溶液中に存在するとき、これらラベル11の回転は、溶液中の生化学物質とラベル11との間の相互作用及び結合速度を増大する。これを、例えば、アッセイ中のフィッシングステップに適用し、この場合、ラベル11は、サンプル溶液中の特定の生化学物質に結合し及び/又はこの物質を抽出するのに用いられる。第2に、ラベルを、他のボディ、例えば、バイオチップの表面又は細胞の表面に対して回転するとき、ラベルと他のボディとの間の相互作用及び結合速度を増大することができる。結合速度の増大は、ラベルの表面領域がラベル上の関連の分子結合領域(例えば、パラトープ、エピトープ又はハイブリダイゼーション整合領域)のサイズに比べて大きいときに特に重要である。これは、例えば、低濃度アッセイにおいてフィッシングステップが表面上に関心のある生化学物質がほとんどないラベルを生じる場合である。参照のために、生体分子動力学の配向及び回転の役割の一部の計算を、K.S. Schmitz and J.M. Schurr, ‘The role of orientation constraints and rotation diffusion in biomolecular solution kinetics’, J.Phys.Chem. vol. 76, p.534(1972)で見つけることができる。
【0099】
理想的な回転速度は、所定のアッセイ時間で形成する必要がある生化学結合の許容できる結合解放速度(unbinding rate)(koff)における最適な結合速度(kon)によって与えられる。換言すれば、回転は、感度及び特性に対して最適化される。
【0100】
本発明の他の実施の形態において、上記回転測定を、種々の特性、例えば、種々の磁気モーメント及び/又は回転摩擦特性を有する磁性ナノ粒子11を区別するのに用いることができる。磁化寿命、磁化異方性又は磁化摩擦の差を用いることもできる。したがって、ビーズの多重化を行う、すなわち、種々の固有の特性を有するビーズを区別するために、回転分光を用いることができる。これを、ラベルを多重化したアッセイ、例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーションに用いることができる。これを、非特定吸収に起因する信号を減少して信号対バックグランド比を更に増大するのに用いることができる。種々のサイズ又は種々の磁化を有する粒子又は粒子クラスタを区別することもできる。一例は、厳格な目的に対する種々の粒子の使用である。溶液中及び/又は表面上の粒子クラスタ又は粒子チェーンを検出するために回転測定を用いることもできる。これは、クラスタアッセイ又は凝固アッセイに有用となりうる。また、粒子の一部が、制御されない不所望な凝固又はチェーン形態を示す場合、本発明による方法を、凝固した粒子に起因する信号から単一粒子11の信号を区別するのに用いることができ、これによって、生化学検査の定量化及び信頼性を増大する。
【0101】
これまで強磁性粒子を説明したが、他の磁性粒子11、例えば、超磁性粒子のような粒子11の向きと関連のタイムスケール(例えば、磁界変調の周期)上の磁気モーメントの向きとの間に可変の角度を有する粒子11を用いることができる。本発明の他の実施の形態において、回転磁界又はパルス一方向磁界を超磁性粒子に加えることができる。超磁性粒子は、零の抗電界及び低い磁気異方性Kを有し、したがって、φm≠φpとなる。粒子は、加えられた磁界においてのみ正味の磁気モーメントを取得する。この場合、式(3)に適用されるトルクは、τmagnとτviscousとの間で割り当てられる。これを2スリップ系(two-slip system)として観察することができる。その理由は、粒子に対する磁化スリップ及び環境に対する粒子スリップが存在するからである。したがって、角遅延φB−φmは、粘性摩擦の強さ及び表面に対する結合の存在に依存する。磁化の回転周波数は、一般に、スリッピングドライブで起こるように粒子それ自体の回転周波数に等しくない。周波数スペクトルの測定は、種々の磁気特性及び種々の結合状態を有する粒子11を区別することができる。一例を図17に示す。図面中、種々の粒子11並びに種々の環境及び種々の結合状態の粒子11の大きい又は小さい集団に起因しうる種々の形態を区別することができる。例えば、ピーク1は、例えば、他の物体に結合されずに急速に移動又は回転することができる非クラスタ化粒子に対応する。ピーク2は、例えば、図2のタイプ1の結合を通じて緩やかに他の物体に結合した粒子11によって発生する。他のピーク(例えば、ピーク3)は、他のビーズにクラスタ化した粒子11によって発生する。ピーク4を、例えば図2のタイプ2に対応する他のタイプの環境の粒子11によって発生する。形態5は、非常に強く妨害された運動の自由度の粒子11、例えば、複数の相互作用を通じて表面に結合した粒子11によって発生する。したがって、周波数スペクトルのピークの位置は、ビーズ11と他の物体の表面との間の結合のタイプに依存する。図17のスペクトルは、説明のためのみのものであり、本発明を制限するものではない。
【0102】
本発明の種々の実施の形態による方法は、バイオセンサ中の種々のビーズ集団を区別するために磁性ナノ粒子又はビーズの回転又は運動の自由度を用いる。本発明の方法を適用することによって、バイオセンサ表面上の種々のラベル結合集団間の区別を行い、単一の特定結合を有する集団と複数の非特定結合を有する集団との間の識別を行うことができる。本発明の方法を適用することによって、信号対バックグランド比及びバイオセンサの検出範囲を向上する。
【0103】
本発明の方法を、種々の装置アーキテクチャに適用することもできる。装置を、例えば、単一のセンサ、バイオセンサのアレイ又はいわゆるバイオチップとすることができる。方法を、使い捨て装置に適用することもできる。例えば、装置を、流体チャネル、容器、試薬等を含むカートリッジ又は実験装置(lab-in-a-device)とすることができる。方法を、使い捨てピペットキャップ内又はアフィニティカラム内で用いることもできる。方法を、単一のウェル又は複数のウェル、例えば、ウェルプレート又はマイクロプレートで用いることもできる。
【0104】
本発明による方法の利点は、結合プロセス又は結合解放プロセスが表面上で生じる間に、種々のタイプの結合を区別するようラベルの運動の自由度を測定することである。
【0105】
本明細書中で説明した方法を、分子アッセイ及び微生物群、細胞、細胞片、組織抽出物等の検出にも用いることができる。
【0106】
回転力に加えて、磁界勾配を適用することもできる。これらは、例えば、生化学結合を伸ばすために並進力を発生する。
【0107】
上記ラベル回転法を利用することができる複数のアッセイがある。一つは、ラベル11が結合し又は結合を解放して回転特性を変更するアッセイであり、この場合、結合又は非結合は、サンプル中の特定の生体物質の存在に依存する。例示は、結合アッセイ、比較アッセイ、抑制アッセイ、置換アッセイ等である。
【0108】
他のタイプのアッセイは、磁性ピンセットと同様に作用し、この場合、磁性粒子11は、生物リンカーによって他のボディ(例えば、固体表面)に結合される。一例として、リンカーを、磁気的に加えられた伸縮力によって機械的に応力が課され又は溶媒からの酵素(例えば、制限酵素又はDNA修復酵素)と相互作用する核酸分子とすることができる。従来の磁性ピンセット器具において、磁性粒子11のxyz位置及び運動は、生物リンカーの状態及びそれがどのようにして周辺と相互作用するかを表す。本発明の方法によって、一つ以上の磁性粒子11のxyz位置及び回転をオンチップ磁気センサによって検出する磁性ピンセットを形成することができる。アッセイ中、並進及び回転磁気力を3次元で加えることができる。これを、一つ以上の磁性粒子11を磁気センサ10に結合する生体部(biological moiety)との相互作用によって溶媒からの物質を分析するアッセイに対してコンパクトかつ万能の器具で行うことができる。z力ピンセットに対する回転ピンセットの利点は、更に小さいビーズを用いることができるとともに更に高い周波数特性を測定できることである。
【0109】
粒子回転を用いることができるアッセイの他の分類は、最初に粒子の回転が妨げられるとともに他の物質の介在によって回転の自由度を増大するアッセイである。例えば、分子ビーコン(相補的核酸ストランドにハイブリダイズするときに開くヘアピン核酸)に接続した粒子11は、ビーコンの閉状態で回転を妨げるとともにビーコンの開状態で回転の自由度を増大することができる。また、プローブ分子は、ターゲット分子の結合の際に形状を変化することができ、これによって、付着した又は隣接する磁性粒子の回転の自由度を変更することができる。また、酵素は、リンカー分子の一部を切り取ることができ、これによって、粒子の回転の自由度を増大する。
【0110】
アッセイの他の分類において、粒子11の回転の自由度は、分子種との相互作用によって減少する。例えば、単一ストランドDNAによってボディにリンクした粒子は、リンカーが相補ストランドのハイブリダイゼーションによって二重ストランドDNAになるときに回転の自由度の一部を緩める。これは、二重ストランドDNAの機械的な強固さに起因する。また、ターゲット分子の結合に起因して、分子は、周辺の更に大きなボディ(例えば、表面)までの距離を変更することができ、これによって、摩擦及び回転の自由度を変更する。
【0111】
アッセイの他の分類において、回転は生物的な動作によって行われ、酵素及び酵素基板によって分子又は細胞種を回転する。回転酵素の一例を、例えば、ヘリケースとする。粒子11の回転を、磁気的に検査し及び検出することができる。
【0112】
アッセイの他の分類を利用する。磁性粒子11は、細胞表面に結合し又は細胞内に入り込み、これによって、回転特性を変更する。又は、既に存在する粒子11は、他の生物分子との相互作用に起因して回転特性を変更する。細胞をセンサ表面に取り付け、又は細胞が溶液中に存在することができる。
【0113】
上記方法を生体外診断及び生体内診断、例えば、細胞、組織、有機体及び生体の診断に適用することができる。例えば分子イメージングの形態で生体内診断に適用する場合、例えば、分子回転のための外部磁界及び回転を検出する光学系を用いることによって、又は、時間的に分離した起動及び検出(例えば、フィールド切替(switched-field)磁気共鳴)を用いることによって、磁気的な起動と磁気的な検出との間の干渉を回避するよう注意する必要がある。
【0114】
本発明による装置に対して、ここでは好適な実施の形態、特定の構造及び形態、並びに物質を説明したが、種々の変更又は変形を、本発明の範囲を逸脱することなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】ターゲット及びラベルを含む溶液中で第1の補足分子が結合されたバイオセンサ表面を示し、ラベルに第2の補足分子が結合されていることを示す。
【図2】ラベルをバイオセンサ表面に結合できる種々の方法を示す。
【図3】表面に組み込まれたターゲット、例えば、細胞膜上の受容体分子又は組織表面上のターゲット分子にラベルが結合できる方法を示す。
【図4】センサ表面上で回転自在かつ十分に固定されたナノ粒子間の差を示す。
【図5】磁界B及び粒子の磁気モーメントmのベクトル表示を示す。
【図6】本発明の一実施の形態による磁界発生電流ワイヤ及び磁気抵抗検出器ストリップに近接する磁性粒子を示す。
【図7】本発明の一実施の形態による磁界発生電流ワイヤ及び磁気抵抗検出器ストリップに近接する磁性粒子を示す。
【図8】本発明の実施の形態によるセンサの磁界発生手段として適用することができる2次元ワイヤ構造を示す。
【図9】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図10】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図11】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図12】本発明の実施の形態による2次元ワイヤ構造を用いたあり得るセンサ形態を示す。
【図13】本発明の実施の形態によるセンサ形態の断面図を示す。
【図14】図12のセンサ形態の上面を示す。
【図15】時間の関数としての信号緩和の概略図を示す。
【図16】互いに相違する2タイプの結合の緩和時間分布の概略図を示す。
【図17】周波数スペクトルを図示した例である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記ナノ粒子ラベルと前記他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が回転磁界を発生することを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が一方向磁界を発生することを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が前記センサ装置上に配置されたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段を2次元ワイヤ構造としたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記磁気センサ素子をAMRセンサ素子、GMRセンサ素子、TMRセンサ素子のうちの一つとしたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1記載のセンサ装置において、
一つの磁気センサ素子のそれぞれの側に配置した二つの電界又は磁界発生手段を具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項8】
請求項1記載のセンサ装置において、
二つの電流ラインの間に配置されたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項9】
種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを前記単一のナノ粒子ラベルから区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項10】
少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別する方法であって、
少なくとも一つのナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記ナノ粒子ラベルと前記表面との間で特定結合を非特定結合と区別することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルを磁性ナノ粒子ラベルとすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが、少なくとも一つの強磁性ナノ粒子ラベルを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、
前記少なくとも一つの磁性ナノ粒子ラベルが、少なくとも一つの超磁性ナノ粒子ラベルを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法において、
回転磁界を加えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10記載の方法において、
一方向磁界を加えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法において、
前記磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を磁気的に行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルに、内部回転の自由度を有する結合部分を設けることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10記載の方法において、
前記磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、信号緩和を時間の関数として測定することによって行うことを特徴とする方法。
【請求項19】
種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別する方法であって、
ナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別することを特徴とする方法。
【請求項20】
生体分子診断における請求項10記載の方法の使用。
【請求項1】
少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記ナノ粒子ラベルと前記他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が回転磁界を発生することを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が一方向磁界を発生することを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段が前記センサ装置上に配置されたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記電界又は磁界発生手段を2次元ワイヤ構造としたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項6】
請求項1記載のセンサ装置において、
前記磁気センサ素子をAMRセンサ素子、GMRセンサ素子、TMRセンサ素子のうちの一つとしたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項7】
請求項1記載のセンサ装置において、
一つの磁気センサ素子のそれぞれの側に配置した二つの電界又は磁界発生手段を具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項8】
請求項1記載のセンサ装置において、
二つの電流ラインの間に配置されたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項9】
種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別するセンサ装置であって、
偏光され又は偏光可能なナノ粒子ラベルを含むサンプル流体に電界又は磁界を加える少なくとも一つの電界又は磁界発生手段と、
少なくとも一つの磁気センサ素子と、
前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを前記単一のナノ粒子ラベルから区別するために、前記ナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子回転又は運動の自由度に関連したパラメータを検出する手段とを具えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項10】
少なくとも一つの偏光可能な又は偏光されたナノ粒子ラベルと他の物体の表面との間で特定結合を非特定結合と区別する方法であって、
少なくとも一つのナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが前記表面に付着されている間、ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記ナノ粒子ラベルと前記表面との間で特定結合を非特定結合と区別することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルを磁性ナノ粒子ラベルとすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルが、少なくとも一つの強磁性ナノ粒子ラベルを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、
前記少なくとも一つの磁性ナノ粒子ラベルが、少なくとも一つの超磁性ナノ粒子ラベルを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法において、
回転磁界を加えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10記載の方法において、
一方向磁界を加えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法において、
前記磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を磁気的に行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10記載の方法において、
前記少なくとも一つのナノ粒子ラベルに、内部回転の自由度を有する結合部分を設けることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10記載の方法において、
前記磁性ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータの検出を、信号緩和を時間の関数として測定することによって行うことを特徴とする方法。
【請求項19】
種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又はナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別する方法であって、
ナノ粒子ラベルを設け、
電界又は磁界を加え、
ナノ粒子の回転又は運動の自由度に関連する物理的なパラメータを検出して、前記種々のタイプのナノ粒子ラベルを区別し又は前記ナノ粒子ラベルのクラスタを単一のナノ粒子ラベルから区別することを特徴とする方法。
【請求項20】
生体分子診断における請求項10記載の方法の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−538252(P2007−538252A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517550(P2007−517550)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051574
【国際公開番号】WO2005/111596
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051574
【国際公開番号】WO2005/111596
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]