説明

生体液から感染性海綿状脳症因子を除去するための直交性方法

ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;第一のろ液をナノろ過デバイスと接触させて、そして第二のろ液を生成し;第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして親水性相を単離する、ここで生体液は、約65kDa以下の関心対象の構成要素を含む工程を含む、方法。高分子量構成要素および少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;第一のろ液を親水性膜と接触させて、そして第二のろ液を生成し;第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして親水性相を単離する、ここで高分子量構成要素は、約65kDaより大きい分子量を有する工程を含む、方法。ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を、少なくとも2つのろ過工程に供し、そしてそれによって、生体液に会合した病原性因子の量を減少させる工程を含む、方法。ヘモグロビン溶液を、複数のろ過工程を含む直交性分離方法論に供することによって、ヒトおよび/または動物起源のヘモグロビン溶液中の感染性海綿状脳症因子を除去する工程を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、生体液および生体液を精製する方法に関する。より具体的には、本開示は、生体液から感染性海綿状脳症因子を直交性に除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]感染性海綿状脳症(TSE)はプリオン病としても知られ、脳に「海綿状」の外見を与える小さい穴によって特徴付けられる、まれな変性性脳障害群である。クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)はヒトTSEで最もよく知られるものである。該疾患は、毎年100万人に約1人が罹患するまれなタイプの認知症である。他のヒトTSEには、クールー、致死性家族性不眠症(FFI)、およびゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー病(GSS)が含まれる。クールーは、パプア、ニューギニアにおける孤立部族の人々で同定され、そして現在ほとんど消滅している。FFIおよびGSSは、非常にまれな遺伝性疾患であり、世界中で数家族にしか見られない。変異型CJD(vCJD)と呼ばれる新たなタイプのCJDが1996年に記載され、そして英国およびいくつかの他の欧州各国で発見されている。vCJDの最初の症状は、古典的CJDのものとは異なり、そして該障害は、典型的にはより若い患者で発生する。TSEの症状は多様であるが、これらには一般的に、性格の変化、抑鬱などの精神医学的問題、協調性のなさ、および/または不安定歩行が含まれる。患者はまた、ミオクローヌスと呼ばれる不随意痙動、異常感覚、不眠症、精神錯乱、または記憶障害も経験しうる。疾患のより遅い段階では、患者は、重度の精神的欠陥を有し、そして運動能力また発話能力も失う。TSEは、迅速に進行する傾向があり、そして通常、数ヶ月から数年の経過に渡って、最終的に死に至る。研究によって、vCJDは、「狂牛病」としても知られる、ウシ海綿状脳症(BSE)と呼ばれるTSE疾患に罹ったウシ由来の牛肉をヒトが消費することから生じた可能性があることが示唆されている。動物に見られる他のTSEには、ヒツジおよびヤギが罹患するスクレーピー;エルクおよびシカが罹患する慢性消耗病;ならびに感染性ミンク脳症が含まれる。いくつかのまれな症例では、TSEは動物園の動物などの他の哺乳動物で発生している。TSEが輸血で感染しうることを示唆する証拠もあるが、感染および症状の出現の間の時間は長期に渡りうる。例えば、ヒトは症状が出現する前に、5〜20年間感染している可能性もある。多くの国々で、TSE突発を予防する異なる手段が実行されている。米国食品医薬品局(FDA)は、反芻動物に動物タンパク質を給餌することを禁じ、そして1980年以降、フランス、ポルトガルおよび/またはアイルランドで10年より長く過ごした人々からの献血の禁止令を施行している。1980〜1996年に英国で6ヶ月より長く過ごした人々もまた、すでに、米国、カナダ、ニュージーランド、およびオーストラリアにおいて、献血を禁じられている。
【0003】
[0003]米国において、FDAはこの主題を扱うTSE諮問委員会を作った。さらに、FDAは、すでに、医薬品においてTSE因子の存在を規制する多くの文書を発行している。
【0004】
[0004]TSEなどのプリオン病には、プロテアーゼ耐性の病原性プリオンタンパク質であるアイソフォーム(PrPSc)への正常細胞性PrPの変換が付随する。PrPScは、TSEに関与すると考えられる因子である。TSEに罹患するリスクは、TSE因子への被験体の有効な曝露に基づく。有効な曝露は、3つの主な変数の関数である:汚染した物質中の感染性因子の量;曝露経路;および特定のバリア効果。例えば、曝露の非経口経路は、消化管を通じた曝露よりも、感染を確立するのにより効率的である。したがって、TSE因子除去としても知られるPrPSc除去のための現在のプロセスは、動物に由来し、そしてヒトで用いられる非経口薬剤に関して、より厳格である。ヒト組織に由来する薬剤に関してもまた、類似の評価基準が提唱されている。
【0005】
[0005]ヘモグロビンを含む血液製剤からのTSE因子除去に関する1つの課題は、ヘモグロビンが分解しやすいことである。ヘモグロビンは、精製プロセス中に損傷を受けやすい、ユニークでそして非常に不安定な分子である。この四量体ヘムタンパク質は、容易に解離して不安定な二量体になり、そして酸化され;したがって代用血液の主な目的である酸素輸送能を失う。無細胞ヘモグロビンの自発的自己酸化は、スーパーオキシドアニオンを生じる。この酸化の速度は、水素イオン(低いpH)によって増大する。スーパーオキシドアニオンは、触媒として作用し、そしてさらなるヘモグロビン自己酸化を促進し、そして自発的にまたは酵素的に不均化(dismutate)して、過酸化水素を形成する。過酸化水素は、第一鉄−または第二鉄−ヘモグロビンと反応して、フェリル−ヘモグロビンを生じる。フェリル−ヘモグロビンはラジカルとして作用し、そしてヒドロキシルラジカルと同じ度合いまで脂質過酸化を開始する。赤血球外部の環境は、機能する還元された第一鉄型でヘムを維持するのに必要な酵素的および非酵素的酸化防止系を含有しないため、赤血球外部のヘモグロビン酸化反応の制御は困難である。したがって、不可逆的ヘム酸化は、ヘモグロビンに基づく代用血液開発者には問題である。
【0006】
[0006]ウシおよびヒト起源のヘモグロビン溶液が有効な酸素運搬血漿増量剤であるためには、いくつかの必要条件を満たさなければならない。非毒性、非免疫原性、および非発熱性であり、長期の保存期限、満足できる酸素運搬能ならびにコロイド浸透圧および血漿と類似の粘性を有することに加えて;これらの製品は、TSEなどの病原体を含んではならない。ヘモグロビン溶液からの他の病原体(例えば微生物)の除去は、滅菌/限外ろ過後の示差培養などの技術を用いて有効に達成可能であるが、製造プロセスのTSEクリアランス能が検証されなければならない。
【0007】
[0007]プリオンタンパク質(例えばPrPSc)は、一般的な脱活性化法に非常に抵抗性である。これらは調理およびオートクレーブでさえも、ならびに高濃度の酸または塩基への曝露の後でも存続可能であり;これらの条件は、ヘモグロビンを含む流体の精製には攻撃的すぎる。例えば、ヘモグロビン含有溶液中のTSE因子を除去するための唯一の薬学的産業法は、カラムクロマトグラフィー技術に基づく。
【0008】
[0008]FDAによれば、血液製剤、特にヘモグロビン溶液から、5対数のTSE因子を除去可能であるプロセスが容認可能であるようである。しかし、こうしたプロセスにおいて、異なる工程による対数除去は、クリアランス工程が直交性である(すなわち独立機構によって因子を除去する)場合にのみ、付加的であると見なされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ヘモグロビン含有溶液から病原性プリオンタンパク質を減少させる直交性方法に関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0009]本明細書に開示するのは、ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;第一のろ液をナノろ過デバイスと接触させて、そして第二のろ液を生成し;第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして親水性相を単離する、ここで生体液は、約65kDa以下の関心対象の構成要素を含む工程を含む、方法である。やはり本明細書に開示するのは、高分子量構成要素および少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;第一のろ液を親水性膜と接触させて、そして第二のろ液を生成し;第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして親水性相を単離する、ここで高分子量構成要素は、約65kDaより大きい分子量を有する工程を含む、方法である。やはり本明細書に開示するのは、ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を、少なくとも2つのろ過工程に供し、そしてそれによって、生体液に会合した病原性因子の量を減少させる工程を含む、方法である。さらに本明細書に開示するのは、ヘモグロビン溶液を、複数のろ過工程を含む直交性分離方法論に供することによって、ヒトおよび/または動物起源のヘモグロビン溶液中の感染性海綿状脳症因子を除去する工程を含む方法である。
【0011】
[0010]本開示の態様を詳細に説明するため、ここで、付随する図に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0011]図1は、生体液中のTSE因子のレベルを減少させるための方法のフローチャートである。
【図2】[0012]図2は、ヘモグロビン溶液中のTSE因子の減少において、ナノろ過デバイス、イオン交換膜クロマトグラフィーおよび疎水性溶媒を含む、直交性多工程法の有効性のグラフ表示である。個々の精製法に関するLog10減少として、そして全多工程プロセスに関する累積Log10減少として、結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013]本明細書に開示するのは、生体液からの病原性因子の直交性除去、例えば以後、TSE因子と呼ばれる感染性海綿状脳症(TSE)の原因であると考えられる因子の除去のための方法である。本明細書において、生体液は、障害を治療するために生物に投与可能な、天然供給源、合成的に調製された構成要素、またはその組み合わせに由来する構成要素を有する任意の流体を指す。1つの態様において、生体液は、ヘモグロビンを含む組成物または溶液ともまた称されうる、ヘモグロビン含有溶液である。1つの態様において、TSE因子は、プリオン、あるいは病原性プリオン(PrPSc)である。プリオンは、タンパク質性感染性粒子の略であり、そして体の細胞で見られる無害なタンパク質である正常型、および疾患を引き起こす感染型の両方で存在しうる。1つの態様において、本明細書に開示する直交性方法論を用いて、ヘモグロビン含有溶液からTSE因子を除去可能であり、そして本明細書において、直交性という用語は、各工程が独立機構によって、構成要素(例えばTSE因子)の除去および/または脱活性化を生じる、2より多い工程を含む方法論を指す。例えば、本明細書記載の直交性方法論は、構成要素(例えばTSE因子)の異なる物理化学的特性を利用して、前記構成要素の除去または排除を達成する工程を含んでもよい。
【0014】
[0014]1つの態様において、方法論は、生体液からのTSE因子除去を達成するために、クロマトグラフィー技術、化学的処理、およびナノろ過を含む。例えば、直交性多工程法には、高アフィニティープリオン除去フィルター、ナノろ過デバイス、親水性膜、イオン交換膜クロマトグラフィーおよび疎水性溶媒が含まれてもよい。1つの態様において、TSE因子除去のための方法論は、使用者が所望する任意の順序で実行可能であり、あるいはTSE因子除去のための方法論は、本明細書に開示する順列で実行可能である。TSE因子除去(すなわちPrPSc除去)に供されて生じた生体液は、ヘモグロビン含有溶液などの生体液の投与が必要な哺乳動物障害の治療で使用するのに適している可能性もある。
【0015】
[0015]試料からのTSE因子除去のための方法の態様200を図1に示す。1つの態様において、試料は、ヘモグロビン含有溶液などの生体液を含む。ヘモグロビン含有溶液は、ヒトおよび動物(例えばウシなどの反芻動物)起源のヘモグロビンを含んでもよい。1つの態様において、ヘモグロビン含有溶液は、全血由来であり、そして無細胞ヘモグロビン含有溶液である。本明細書において以後用いるような無細胞ヘモグロビン含有溶液は、およそヘモグロビンのpI(等電点)であるpH、あるいは別に示さない限り、約6.6〜約7.2、あるいは約7.8〜約8.2であってもよい。本明細書に開示する方法論に供する前に、遊離ヘモグロビンを炭素一酸素型に変換するために、溶液を一酸化炭素と接触させてもよい。炭素一酸素型は、一酸化炭素に結合したヘモグロビンを指す。試料が一酸化炭素で飽和されるのに十分な期間、一酸化炭素と試料を接触させてもよい。一般の当業者に理解されるであろうように、一酸化炭素の飽和量を達成するのに必要な時間は、試料溶液の構成要素および一酸化炭素供給源などの多様な要因に応じるであろうし、そして使用者が所望する結果を達成するように調整してもよい。理論によって限定されることを望むのではないが、ヘモグロビンの炭素一酸素型は、デオキシヘモグロビン(すなわち酸素に結合していないヘモグロビン)またはオキシヘモグロビン(すなわち酸素に結合したヘモグロビン)に比較してより安定でありうる。1つの態様において、試料は、炭素一酸素ヘモグロビンを含む生体液である。こうした試料を、ブロック10、20、40および50に記載するような方法論に供してもよい。1つの態様において、開示する方法論に供した後に得られる最終組成物は、約65kDa未満の分子量を有する、関心対象の構成要素(すなわち使用者が所望する構成要素)を有する。
【0016】
[0016]図1を参照すると、方法200は、試料を高流量アフィニティープリオン減少フィルターに接触させる工程、ブロック10で始まりうる。こうした高流量アフィニティープリオン減少フィルターは、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマー材料で構成される不活性膜にカップリングされた、1以上の血小板減少性および/または白血球減少性剤で構成されてもよい。フィルターは、約25分間以下で、あるいは約20分間以下で、約500〜約1000mlの流体速度の、例えばそして限定なしに生体液などの、流体の迅速な流動(すなわち高流量)を可能にしうる。こうしたフィルターは、その全体が本明細書に援用される米国特許第6,945,411号に記載される。適切な高流量アフィニティープリオン減少フィルターの例は、Pall Corporation(Ann Arbor, MI 48103−9019, 米国)から商業的に入手可能な全血収集、ろ過および保存系である、PALL LEUKOTRAPアフィニティープリオン減少ろ過系である。
【0017】
[0017]理論によって限定されることを望むのではないが、高流量アフィニティープリオン減少フィルターは、PrPSc含有白血球を選択的に除去するよう機能しうる。したがって、ブロック10は、白血球と会合するTSE因子の減少を提供し、そしてフィルターは、こうした感染白血球を捕捉するよう適切にサイズ設定されてもよい。こうしたろ過は、ロイコフィルトレーション(leukofiltration)と称されうる。
【0018】
[0018]無細胞ヘモグロビンである出発物質を得るための、赤血球からのヘモグロビンの抽出は、典型的には、細胞構成要素を損傷する技術を用いて実行される。例えば、低浸透圧溶解によって、赤血球懸濁物からのヘモグロビンの抽出を行ってもよい。低浸透圧溶解は、PrPScを含有する白血球を破裂させ、そしてこうしてTSE因子(すなわちPrPSc)をヘモグロビン含有溶液内に放出することも可能である。ロイコフィルトレーション、またはろ過によって白血球を除去するプロセス(例えば高流量プリオンアフィニティーフィルターを用いる)は、白血球から遊離ヘモグロビン溶液にPrPScが移動する可能性を減少させる。
【0019】
[0019]試料を高流量アフィニティープリオン減少フィルターと接触させると、バイオアッセイおよびウェスタンブロットアッセイによって決定した際、試料(例えばヘモグロビン含有溶液)からTSE因子の約1対数以上の、あるいは約40〜約60%(0.4〜0.6対数減少)、あるいは約0.7〜約1.9対数、あるいは約2〜約3.7対数の除去が生じうる。高流量プリオンアフィニティー減少フィルターに供された後の試料(例えばヘモグロビン含有溶液)を、以後、ろ過試料と呼ぶ。ろ過試料は、ろ液、または高流量プリオンアフィニティー減少フィルターによって保持されなかった試料部分を含む。
【0020】
[0020]図1を再び参照すると、次いで、方法200は、ブロック20に進行してもよく、そしてろ過試料を第二のろ過デバイスと接触させてもよい。TSE除去の手段としてのろ過の潜在的有効性は、TSE因子(すなわちPrPSc)が、約1000kDaまでの分子量の異常な線維状形態の形で存在しうるという事実に基づく。第二のろ過デバイスは、多孔サイズ選択性膜を含む例えば中空繊維フィルターまたはディスクなどのナノろ過デバイスを含んでもよい。こうしたナノろ過デバイスは、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスルホン等のポリマー材料で構成されてもよい。フィルターは、1分間あたり約100ml〜約500mlの流体速度の、例えばそして限定なしに生体液などの、流体の迅速な流動を可能にしてもよい。1つの態様において、第二のろ過デバイスは、約64.5kDa、あるいは約65kDa、あるいは約75kDaの分子量カットオフ(明記する量以上の分子量を有する分子がフィルターによって捕捉され、そしてより小さい分子量を有する分子がフィルターによって保持されないことを意味する)を有する。1つの態様において、ヘモグロビンがフィルターによって保持されないが、TSE因子(例えば病原性プリオン)などのより大きい分子がフィルターによって捕捉されるように、フィルターは、ヘモグロビン分子よりわずかに大きいサイズカットオフ(例えば64.5kDa)を有する。適切なナノろ過デバイスの例には、限定なしに、Minntech Corporation, Minneapolis, MN 55447, 米国から商業的に入手可能なHEMOCOR高性能血液濃縮装置HPH 400、HPH 700、HPH 1000またはHPH 1400が含まれ;こうしたデバイスは、単一のろ過装置として、またはろ過面積を増加させるため、カップリング方式で、使用可能である。1つの態様において、これらのナノろ過デバイスは、約65kDa以上、あるいは約75kDa以上の分子量を持つTSE因子のさらなる減少を生じる。第二のろ過デバイスに供されたろ過試料は、ろ過試料に比較した際、TSE因子の量が約1対数以上、あるいは約1〜約3.2対数、あるいは約3.3〜約3.7対数、あるいは約3.8〜約4.5対数減少していてもよく、そしてサイズ設定されたろ過試料と呼ばれるかまたは称される。サイズ設定されたろ過試料は、ろ過デバイスによって保持されなかった、ろ過試料由来のろ液または物質を含む。
【0021】
[0021]1つの態様において、ろ過デバイスに供されている、本明細書に記載するものなどの試料を、元来の生体液に対して希釈してもよい。希釈試料は、多量の液体を含みうるため、取り扱いに好都合でない可能性もある。さらに、多くの生物学的構成要素(例えばヘモグロビン、タンパク質など)は、希釈溶液中で低濃度で維持した際、安定性の減少を示しうる。1つの態様において、本明細書に開示する方法論によって生成される溶液を、特定の技術にしたがって濃縮して、より濃縮された試料を生成してもよい。これらの試料を濃縮するのに適した技術が知られる。例えば、ろ過試料を濃縮するために、ナノろ過デバイスと接触させた後に、約10kDa、あるいは約40kDa、あるいは約50kDaの分子カットオフを有する透析装置に試料を導入して、試料を濃縮してもよい。あるいは開示する方法論の各工程後に生体液を濃縮してもよい。試料の出発濃度および最終濃度は、利用するデバイスのタイプに応じるであろう。その結果、当該技術分野の一般的な技術の1つによって、試料の最終濃度を使用者が所望する値に調整してもよい。
【0022】
[0022]図1を再び参照すると、試料中のTSE因子を減少させるための方法は、次いで、ブロック40に進行してもよく、そしてサイズ設定されたろ過試料を、クロマトグラフィー材料または膜、例えばイオン交換膜と接触させてもよい。1つの態様において、クロマトグラフィー膜は、試料中のTSE因子(例えばPrPSc)のレベルをさらに減少させるように機能する。1つの態様において、クロマトグラフィー膜は、強いアニオン交換体を含む。別の態様において、クロマトグラフィー材料は、アニオン交換ディスク、あるいはアニオン交換カプセル、あるいはアニオン交換モジュールを含む。本開示で使用するのに適したクロマトグラフィー材料の例には、限定なしに、ASTRODISCクロマトグラフィー装置、MUSTANG Q使い捨てカプセル、およびMUSTANG Qモジュールの形のMUSTANG Q強アニオン交換膜が含まれ;多孔性は約0.8μmであり、そして膜総容積は約0.18ml〜約1000mlであるか、あるいは約1000mlより大きい。MUSTANG Q膜は、Pall Corporation(Ann Arbor, MI 48103−9019, 米国)より商業的に入手可能である。MUSTANG Q強アニオン交換体を含む膜の使用は、望ましい低タンパク質結合特性、広い化学薬品および温度抵抗性、ならびに高流速の利点を提供可能である。例えば、修飾MUSTANG Q膜は、TSE因子レベルを減少させつつ、高い割合のタンパク質、例えばヘモグロビンの透過を可能にすることも可能である。クロマトグラフィー膜と接触させたサイズ設定ろ過試料は、ろ過試料と比較した際、TSE因子量が、約1対数以上、あるいは約3.8〜約4.3対数、あるいは約1〜約3.7対数、あるいは約4.3〜約5対数減少している可能性もあり、そして以後、クロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料と称される。クロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料は、組成物の溶出された分画を含み、したがって試料はアニオン交換体に接着しない物質を含む。
【0023】
[0023]再び図1を参照すると、次いで、方法はブロック50に進行してもよく、そしてクロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料を疎水性溶媒と接触させてもよい。疎水性溶媒と接触させる前に、試料のpHを約8.0、あるいは約7.8、あるいは約8.2に増加させてもよい。理論によって限定されることを望むのではないが、クロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料(すなわちヘモグロビンを含む)のpHを増加させると、ヘモグロビン分子が脱プロトン化されて、負に荷電された分子が生じ、そして親水性相内へのヘモグロビンの分配が促進されるであろう。1つの態様において、クロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料を疎水性溶媒と接触させ、攪拌し、そして続いて少なくとも2つの相(例えば疎水性および親水性相)の形成を可能にして、試料の少なくとも1つの構成要素が疎水性相と会合するようにし、そして試料の少なくとも1つの構成要素が親水性相と会合したままになるようにする。疎水性溶媒は、クロマトグラフィーされたプロセシング試料の構成要素と適合する任意の疎水性溶媒であってもよいし;あるいは、疎水性溶媒は、クロロホルム、トルエン、またはその組み合わせを含む。理論によって限定されることを望むのではないが、TSE因子(例えばPrPSc)の凝集型は、疎水性溶媒中の溶解度が増加し、そしてしたがって、優先的に疎水性溶媒内に分配されて、試料中に存在する量がさらに減少しうる。さらに、疎水性溶媒内へのTSE因子の分配は、TSE因子の分解を生じうる。したがって、生体液を疎水性溶媒と接触させると、TSE因子の存在および感染性が減少する。1つの態様において、ブロック50は、疎水性溶媒と接触させた、クロマトグラフィーされたプロセシング試料を、遠心分離、あるいは高速超遠心に供する工程をさらに含んでもよい。クロマトグラフィーされたプロセシング試料の疎水性および親水性相内への分配を促進するため、遠心分離を使用してもよい。遠心分離などの技術を用いて試料を分離するための方法および装置は、一般の当業者に知られる。1つの態様において、本明細書に開示する方法の続く工程で、次いで使用可能な、クロマトグラフィーされたサイズ設定ろ過試料の親水性相は、クロマトグラフィーされたプロセシング試料に比較した際、TSE因子の量が、約1対数以上、あるいは約0.8〜約1.2対数、あるいは約0.1〜約0.7対数、あるいは約1.3〜約3.5対数の減少を有することも可能であり、そして該試料は、プロセシングされた試料と呼ばれるかまたは称される。
【0024】
[0024]1つの態様において、次いで、方法は、プロセシングされた試料をさらにプロセシングして、該試料を生物への導入、例えば患者への投与などに適した条件に置くことを可能にしてもよい。あるいは、遊離ヘモグロビンに基づく代用血液製造において、試料(例えばヒトまたは動物起源のヘモグロビン)をさらにプロセシングして用いてもよい。
【0025】
[0025]別の態様において、生体液は血漿または血清を含む。血漿試料は、アルブミン、凝固因子、免疫グロブリンまたはその組み合わせなどの分画を含んでもよい。こうした試料をブロック10、30、40および50に記載するような方法論に供してもよい。1つの態様において、開示する方法論に血漿または血清を供した後に得られるはずの最終組成物は、約65kDaより大きく、そして約150kDa以下の分子量を有する関心対象の構成要素(すなわち使用者が所望する構成要素)を有する。
【0026】
[0026]図1を参照すると、試料中のTSE因子レベルを減少させる方法は、ブロック10で始まり、そして免疫グロブリン(150kDa)などの高分子量構成要素を有する生体液で使用するのに適した高流量アフィニティープリオン減少系を含んでもよい。本明細書において、高分子量は、約65kDaより大きい分子量を指し、そして前記高分子量構成要素を含むこうした生体液は、高分子量試料(HMWS)と称される。HMWSからのTSE因子の除去において使用するのに適した高流量プリオン減少フィルターの例には、限定なしに、Pall Corporationから商業的に入手可能なLEUKOTRAP SC RCろ過系が含まれる。これらのHMWSからの赤血球、血小板および白血球の単離は、PrPSc含有白血球に損傷を与える可能性もあり、そして試料内にTSE因子(すなわちPrPSc)を導入する可能性もある、遠心力などの侵襲性技術を必要としうる。HMWSは、本明細書に記載するタイプの高流量プリオン減少フィルターと接触させた際、溶液中に関心対象の構成要素を残すことも可能であり(例えばIgG)、一方、TSE因子はフィルターによって捕捉される。フィルターから除去される溶液は、関心対象の構成要素を含有し、これを続いてプロセシングしてもよく、そして該試料を以後、ろ過HMWSと称する。ろ過HMWSは、HMSWと比較した際、TSE因子量が、約1対数以上、あるいは約0.7〜約1.9対数、あるいは約2〜約3.7対数減少している可能性もある。図1を参照すると、方法は、次いで、ブロック30に進行してもよく、そしてろ過されたHMWSを親水性膜と接触させてもよい。
【0027】
[0027]親水性膜は、HMWS中のTSE因子(例えばPrPSc)レベルをさらに減少させるよう機能しうる。1つの態様において、膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいは修飾PVDFを含む。PVDFを含む膜の使用は、望ましい低タンパク質結合特性、広い化学薬品および温度抵抗性、ならびに高流速の利点を提供可能である。例えば、修飾PVDF膜は、TSE因子レベルを減少させつつ、高い割合のタンパク質、例えばヘモグロビンの透過を可能にすることも可能である。本開示で使用するのに適した親水性PVDF膜の例には、限定なしに、Pall Corporationから商業的に入手可能なULTIPOR DV50等級膜フィルターが含まれる。適切なPVDF膜の例は、本明細書にその全体が援用される、米国特許第5,736,051号に開示される。親水性膜と接触させた、ろ過HMWS試料は、以後、プロセシングされたHMWSと称され、該試料は、ろ過HMWSと比較した際、TSE因子量が、約1対数以上、あるいは約3.3〜約3.7対数、あるいは約1〜約3.2対数、あるいは約3.8〜約4.5対数減少している可能性もある。次いで、親水性膜由来のろ液を、本明細書に開示する方法の続く工程に使用してもよい(例えばブロック40および/または50)。
【0028】
[0028]1つの態様において、次いで、ヘモグロビン含有溶液に関して本明細書において先に記載するように、プロセシングされたHMSWをアニオン交換体と接触させ(例えばブロック40)、そして続いて疎水性溶媒と接触させる(例えばブロック50)。アニオン交換体とHMSWを接触させた(例えばブロック40)後、試料は、アニオン交換体に供されていないHMSWと比較した際、TSE因子量が、約1対数以上、あるいは約3.8〜約4.3対数、あるいは約1〜約3.7対数、あるいは約4.3〜約5対数減少している可能性もある。HMSWを疎水性溶媒と接触させた(例えばブロック50)後、試料は、疎水性溶媒に供されていないHMSWと比較した際、TSE因子量が、約1対数以上、あるいは約0.8〜約1.2対数、あるいは約0.1〜約0.7対数、あるいは約1.3〜約3.5対数減少している可能性もある。先に記載するように、該方法は、次いで、プロセシングされた試料をさらにプロセシングして、該試料を生物への導入、例えば患者への投与に適した条件に置くことを可能にしてもよい。あるいは、さらなるプロセシングを伴わずに、試料を用いてもよい。
【0029】
[0029]1つの態様において、方法は、開示する方法論に試料を供する前に、供する間に、または供した後に、試料中のTSE因子レベルを決定する工程をさらに含む。例えば、図1ブロック20でナノろ過デバイスと試料を接触させる前に、TSE因子(例えばPrPSc)の存在に関して、試料の少なくとも一部を分析してもよい。あるいは、図1ブロック40でアニオン交換膜と試料を接触させた後、TSE因子の存在に関して試料の少なくとも一部を分析してもよい。あるいは、図1ブロック50で疎水性溶媒と試料を接触させた後、TSE因子の存在に関して試料の少なくとも一部を分析してもよい。いくつかの態様において、方法は、開示する方法論において、各工程後にTSE因子の存在に関して試料の少なくとも一部を分析する工程をさらに含む。TSE因子の存在に関する分析は、定性的、定量的または両方であってもよい。こうした分析は、一般の当業者に知られ、そしてこれには例えば、ウェスタンブロット、ELISA、動物感染性アッセイまたはその組み合わせが含まれうる。1つの態様において、本明細書に開示するTSE因子除去プロセスに供された試料(例えば分配されクロマトグラフィーされたプロセシング試料)は、試料中に存在するTSE因子の約5対数以上、あるいは約6対数以上、あるいは約7対数以上の除去を有しうる。1つの態様において、本明細書に開示する方法論に供された試料は、検出不能なレベルのTSE因子を有することも可能であり、ここで検出法はELISA、動物感染性アッセイまたはその組み合わせを含む。1以上のTSE因子の感染性の量を含む試料は、本明細書に開示する方法論に供された際、存在するTSE因子量の十分な減少を有し、試料の感染性の喪失を生じることも可能である。
【0030】
[0030]本明細書に記載する方法は手動で実行可能であり、自動化可能であり、または手動および自動化プロセスの組み合わせであってもよい。1つの態様において、本明細書記載の方法論を実行するためのデバイスを手動で制御可能であり、自動化可能であり、またはその組み合わせであってもよい。1つの態様において、本明細書に開示するプロセスを実行可能なコンピュータ化装置によって方法を実行し、ここで本明細書記載の方法は、プロセッサ、ユーザ・インターフェース、マイクロプロセッサ、記憶装置、ならびに他の関連ハードウェアおよびオペレーティング・ソフトウェアを有する汎用コンピュータ上のソフトウェアまたは他のコンピュータ化構成要素において実行される。該方法を実行するソフトウェアは、有形的表現媒体中に保存されてもよいし、そして/または例えばコンピュータ上の記憶装置中に常駐していてもよい。同様に、入力および/またはソフトウェアからの出力、例えば構成要素量、比較、および結果は、有形的表現媒体、コンピュータ記憶装置、紙のプリントアウトなどのハードコピー、または他の保存デバイス中に保存されてもよい。
【0031】
[0031]本明細書に開示する方法論は、異なる物理的原理に依存し、そしてPrPScの典型的な特性に取り組む、個々の排除工程を含む、PrPScクリアランス・プラットホームである。本明細書に開示する方法論は、白血球の除去によるPrPSc減少;ナノフィルターでのPrPScろ過、アニオン膜吸収剤でのPrPSc吸収および疎水性溶媒でのPrPSc不活性化を含む。
【実施例】
【0032】
[0032]本態様は、一般的に記載されており、以下の実施例は、特定の態様として、そしてその実施および利点を示すために提供される。実施例は例示のために提供され、そしていかなる方式でも請求項の指定を限定するよう意図されないことが理解されるものとする。
【0033】
実施例1
ナノろ過によるウシ・ヘモグロビン溶液の精製、ならびにPrPSc抗原捕捉酵素イムノアッセイ(EIA)およびin vivoアッセイによるプリオン除去法の検証
[0033]本実施例で用いるスクレーピー因子は、TSE感染性に関する代理マーカーとしてよく特徴付けられ、そして広く認められているハムスター263K系統であった。用いたスクレーピー調製物は、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7で行ったスパイク処理実験前に、超音波処理され、10,000rpmで10分間遠心分離され、そして0.45および0.22μmの多孔性を持つフィルターのカスケードを通じてろ過された、10%ハムスター脳ホモジネートであった。
【0034】
[0034]米国FDA指針のもとで飼育された多数の健康なドナーからまたは個々の動物からウシ血液を得た。無菌条件下で、外頸静脈の穿孔によって血液を抜き取った。1頭の動物からおよそ2リットルの血液を得て、そして75mlのACD抗凝血剤(The Metrix Company, Dubuque, IA 52002, 米国)を含有する500mlの真空滅菌発熱物質不含ビン内に収集した。異なる動物由来の血液は混合しなかった。代用血液製造施設に輸送する際、ビンをゲル氷上に維持した。次いで、LEUKOTRAPによる白血球からの赤血球の分離に、そして遠心分離による血小板および血漿からの赤血球の分離に、血液を供した。この工程は、非ヘムタンパク質、およびヘモグロビンが最終的に精製される必要がある他の物質の負荷量を減少させた。すべての白血球を除去するとまた、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルスおよびその他のものなどの、これらの細胞と会合するいかなるウイルスも除去された。さらに白血球の完全な除去は、これらの細胞に存在する傾向があるTSE因子も排除した。
【0035】
[0035]PALL LEUKOTRAPアフィニティープリオン減少フィルター系(Pall Corporation, East Hills, NY 11548, 米国)を用いて、ウイルスおよびTSE因子を所持しうる白血球の除去を行った。製造者によると、PrPScに関するプリオン減少性能は2.9±0.7対数である。製造者の使用説明書にしたがって、供与8時間以内に全血に対して、あるいは4℃で一晩保持した血液に対して、フィルターあたり450mlの体積で、4〜22℃の範囲の血液温度で、精製を行った。
【0036】
[0036]次いで、無菌条件下で、標準的血液貯蔵法を用いて、無菌発熱物質不含プラスチック容器(Fenwal Laboratories, Deerfield, IL 60015, 米国)中、約170xg、15℃で20分間、そして等張生理食塩水溶液(赤血球:生理食塩水、1:4vol/vol;760xg、4℃で10分間周期)を用いて、一連の5回の洗浄および5回の遠心分離によって、血小板および血漿から赤血球を精製した。
【0037】
[0037]白血球および血小板の非存在を確認するため、コールター細胞カウンターを用いることによって、細胞カウントを行い、そして分光光度法などのルーチンの化学的方法によって、懸濁物中のタンパク質の非存在を検証した。
【0038】
[0038]0.45μmの多孔性の高流量ろ過モジュールを用いた低浸透圧透析−限外ろ過によって、赤血球からのヘモグロビンの抽出を行った。ヘモグロビン単離中のタンパク質分解を最小限にするため、わずかに低張な培地(240〜260mOsm kg)および10p.s.i.未満の膜間圧を用いて、方法を4℃で行った。Pall SSUPOR DCFカプセルフィルター(Pall Corporation)などの0.2μmフィルターを通じて、抽出したヘモグロビンをろ過し、一酸化炭素での飽和によって、炭素−一酸素型に変化させ、そしてFENWAL輸送パック中に4℃で保存した。
【0039】
[0039]本実施例において、10%ハムスター脳ホモジネートでスパイク処理したTRIS緩衝液、pH6.8±0.2中、1リットルあたり60±10グラムの濃度のウシ・ヘモグロビンおよそ500mlを、場合による管セットを含む、商業的に入手可能な高性能血液濃縮装置、HEMOCOR HPH 1400(Minntech Corporation)を用いたナノろ過に供した。このポリスルホンに基づく中空繊維透析膜は、20.9cmの有効繊維長、1.31mの膜ろ過面積、86mlのプライミング体積および65kDaの平均分子量カットオフを有する。流速300ml/分、30kPaの膜間圧でろ過を行い、そして2時間で完了した。
【0040】
[0040]場合による管セットを含む、商業的に入手可能なポリスルホンに基づく低流動透析装置、OPTIFLUX(Fresenius Medical Care, Lexington, MA 02420, 米国)を用いて、透析液を収集し、そしてほぼ元来のレベルである1リットルあたり55±8グラムのHbまで濃縮した。このデバイスは、1.5mの表面積、83mlのプライム体積および10kDaの平均分子量カットオフを有した。
【0041】
[0041]およそ1時間で方法は完了し、そして濃縮された産物を透析前試料と一緒に、製造者にしたがって、PrPScを認識するBSE−スクレーピー抗原試験EIAキット(IDEXX Laboratories, Inc., Westbrook, Maine 04092, 米国)によるプリオンタンパク質レベルの測定に供した。あるいは、プロテアーゼでの処理後、製造者の使用説明書にしたがって、感染ハムスター脳由来の変性スクレーピー関連原線維因子(SAF)の調製物に対して作製された2つの抗体を使用する、SPI−BIO EIAキット(Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI 48108, 米国)を用いて試料を実験した。
【0042】
[0042]すべての実験を3つ組で行い、そして式:RT=log 10(試料出発体積x最初のPrPSc濃度)/(ろ過後の試料体積x最終PrPSc濃度)を用いた、対数減少係数(RF)の計算によって、PrPScのクリアランスを表した。結果は、HEMOCOR HPH 1400が、1mあたり400mlの中空繊維表面積に対するヘモグロビンの比で、そして表1に示すように、2時間後にヘモグロビンの90%より多くをろ過したことを示し、ナノろ過は、PrPScレベルを平均3.47±0.14対数減少させることが可能であった。
表1
【0043】
【表1】

[0043]in vivoアッセイによってもまた評価したろ液は:(1)スクレーピー因子でスパイク処理し、そしてナノろ過プロセスに供していないウシ・ヘモグロビン溶液、および(2)PrPScでスパイク処理し、そしてナノろ過に供したウシ・ヘモグロビン溶液であり、両方の試料を以下の希釈で評価した:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7
【0044】
[0044]スクレーピー感染性に関するin vivoアッセイは、関心対象の溶液のアリコットでのハムスター(離乳したばかりの仔、およそ6〜8週齢)の脳内(i.c.)接種を伴った。5匹のハムスターを、スパイク処理した非精製およびスパイク処理した精製ヘモグロビン溶液の各希釈群に割り当てた(希釈あたり5匹の動物および力価決定あたり7つの希釈)。対照ハムスターにはヘモグロビンのみを接種した。動物を200日間毎日観察し、そしてスクレーピー感染の典型的な臨床徴候(運動失調、慢性疲労および円状徘徊などの神経学的特徴)および生存率に関して監視した。トランスジェニックマウスをウシ・プリオンに感染させると、およそ200日間のインキュベーション時間を示すという指摘に基づいて、200日の観察期間を選択した。したがって、200日後、麻酔過剰摂取によってすべての生存動物を屠殺し、そしてスクレーピー感染の特徴的な細管、スクレーピー関連原線維因子に関して、電子顕微鏡によって脳を調べた。死亡した動物およびスクレーピー感染の臨床的徴候のために殺した動物の脳もまた、SAFに関して電子顕微鏡によって調べた。生存およびSAF陽性率を表2に示す。
【0045】
[0045]結果は、スパイク処理した非精製ウシ・ヘモグロビン調製物がおよそ10/mlのスクレーピー感染力価を有することを示唆する。ナノろ過後、およそ103.5のスクレーピー感染性減少が達成された。これらの結果は、ELISA研究によって得た結果と一致する。したがって、ナノろ過は、単独では、PrPSc感染性を完全に排除することは不能であり、そして10および10−1の希釈では、何匹かの動物は生存できなかった。さらに、結果は、約65kDaの孔サイズの中空繊維を通じてさえ、スクレーピー感染性力価が約10/mlである場合、ナノろ過は、ヘモグロビン溶液からの完全なPrPScクリアランスのための独立な方法としては働きえないことを示す。
表2
【0046】
【表2】

実施例2
アニオン交換膜クロマトグラフィーによるウシ・ヘモグロビン溶液の精製、およびPrPSc抗原捕捉酵素イムノアッセイ(EIA)によるプリオン除去法の検証
[0046]本実施例で用いたスクレーピー因子もまた、ハムスター263K系統であった。用いたスクレーピー調製物は、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7で行ったスパイク処理実験前に、超音波処理され、10,000rpmで10分間遠心分離され、そして0.45および0.22μmの多孔性を持つフィルターのカスケードを通じてろ過された、10%ハムスター脳ホモジネートであった。
【0047】
[0047]本実施例では、10%ハムスター脳ホモジネートでスパイク処理したTRIS緩衝液、pH6.8±2中、1リットルあたり60±10グラムの濃度のウシ・ヘモグロビン溶液100mlを、MUSTANG Q膜を備えた商業的に入手可能なPall ACRODISC装置(Pall Corporation, Ann Arbor, MI 48103−9019, 米国)を用いたアニオン交換膜クロマトグラフィーに供した。
【0048】
[0048]0.8μm多孔性を持つMUSTANG Qポリエーテルスルホン膜は、プラスミドDNA、負荷電タンパク質、およびウイルス粒子に有効に結合する強アニオン交換体である。ヘモグロビン20mlあたり1つの使い捨てPall ACRODISC装置を用いて、クロマトグラフィーを行った。クロマトグラフィー前に、ACRODISC装置を4mlの1M NaOHで、その後、4mlの1M NaClでプレコンディショニングし、そして20mM TRIS緩衝液、pH6.8±0.2で平衡化した。スパイク処理した炭素−一酸素型のヘモグロビン溶液(pH6.8±0.2)を、4ml/分の流速で、クロマトグラフィー分離に供した。pH6.8ではヘモグロビンは電荷を持たない。ヘモグロビンの電荷除去はpH6.8±0.2の20mM TRIS緩衝液で平衡化されたこの強アニオン交換膜への結合を防止するよう意図される。このクロマトグラフィー法はまた、膜へのDNAおよびウイルス粒子の結合に影響を及ぼさないことも意図される。別個のACRODISC装置を用いてクロマトグラフィーを5回実行した後、収集した分画を一緒にプールし、そして最終体積を決定した。
【0049】
[0049]以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7のクロマトグラフィー前および後の試料を、製造者の使用説明書にしたがって、PrPScを認識するBSE−スクレーピー抗原試験EIAキット(IDEXX Laboratories, Inc., Westbrook, Maine 04092, 米国)によるプリオンタンパク質レベルの測定に供した。さらに、プロテアーゼでの処理後、製造者の使用説明書にしたがって、感染ハムスター脳由来の変性SAFの調製物に対して作製された2つの抗体を使用する、SPI−BIO EIAキット(Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI 48108, 米国)によって試料を実験した。
【0050】
[0050]すべての実験を3つ組で行った。式:RT=log 10(試料出発体積x最初のPrPSc濃度)/(ろ過後の試料体積x最終PrPSc濃度)を用いた、対数減少係数(RF)の計算によって、PrPScのクリアランスを表した。結果は、交換体膜表面積に対するヘモグロビンの比が1cmあたりおよそ5mlである場合、MUSTANG Q膜アニオン交換体と接触させた試料が、ヘモグロビンレベルの減少を示さないことを示した。しかし、表3に示すように、MUSTANG Qを用いたアニオン交換膜クロマトグラフィーは、PrPScレベルを4.01±0.24対数減少させることが可能であった。
表3
【0051】
【表3】

実施例3
疎水性溶媒によるウシ・ヘモグロビン溶液の精製、およびPrPSc抗原捕捉酵素イムノアッセイ(EIA)によるプリオン除去法の検証
[0051]本実施例で用いたスクレーピー因子もまた、ハムスター263K系統であった。用いたスクレーピー調製物は、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7で行ったスパイク処理実験前に、超音波処理され、10,000rpmで10分間遠心分離され、そして0.45および0.22μmの多孔性を持つフィルターのカスケードを通じてろ過された、10%ハムスター脳ホモジネートであった。
【0052】
[0052]本実施例では、実施例1におけるように調製した、10%ハムスター脳ホモジネートでスパイク処理したTRIS緩衝液、pH8.0±2中、1リットルあたり60±10グラムの濃度の炭素−一酸素型のウシ・ヘモグロビン溶液200mlを、クロロホルム(HPLC等級、Fisher Scientific)での疎水性溶媒処理に供した。
【0053】
[0053]Sorvall遠心分離装置(SS−34ローターを備えたモデルRC5C)を用いて、以下の方式で、クロロホルム後、遠心分離工程を用いる、一連の3回の処理を行った:(1)15対1(vol/vol)の比でクロロホルムと混合したヘモグロビンを15分間ボルテックスし、そして760xgおよび4℃で30分間遠心分離し;(2)上清を一連の第二の試験管に移し、16対1(vol/vol)の比でクロロホルムと混合し、10分間ボルテックスし、そして1,600xgおよび4℃で15分間、そして3,800xgで15分間遠心分離し;(3)上清を一連の第三の試験管に移し、そしてクロロホルムを含まずに、48,400xgおよび4℃で90分間遠心分離した。第三の遠心分離後、窒素ガスをフラッシュすることによって、残った微量のクロロホルムの除去にヘモグロビン溶液を供して、その後、一酸化炭素をフラッシュして炭素−一酸素型への完全な変換を確実にした。
【0054】
[0054]以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7のクロマトグラフィー処理前および後の試料を、製造者の使用説明書にしたがって、PrPScを認識するBSE−スクレーピー抗原試験EIAキット(IDEXX Laboratories, Inc., Westbrook, Maine 04092, 米国)によるプリオンタンパク質レベルの測定に供した。さらに、プロテアーゼでの処理後、製造者の使用説明書にしたがって、感染ハムスター脳由来の変性SAFの調製物に対して作製された2つの抗体を使用する、SPI−BIO EIAキット(Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI 48108, 米国)によって試料を実験した。
【0055】
[0055]すべての実験を3つ組で行った。式:RT=log 10(試料出発体積x最初のPrPSc濃度)/(ろ過後の試料体積x最終PrPSc濃度)を用いた、対数減少係数(RF)の計算によって、PrPScのクリアランスを表した。表4に示すように、クロロホルムでの処理は、PrPScレベルを1.15±0.14対数減少させた。このデータは、クロロホルム処理が、PrPScからのヘモグロビン溶液精製に関して、不活性化工程と見なされうることを示唆する。
表4
【0056】
【表4】

実施例4
ナノろ過、アニオン交換膜クロマトグラフィーおよび疎水性溶媒によるウシ・ヘモグロビン溶液の精製、ならびにin vivoアッセイによるプリオン除去法の検証
[0056]本実施例で用いたスクレーピー因子もまた、ハムスター263K系統であった。用いたスクレーピー調製物は、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7で行ったスパイク処理実験前に、超音波処理され、10,000rpmで10分間遠心分離され、そして0.45および0.22μmの多孔性を持つフィルターのカスケードを通じてろ過された、10%ハムスター脳ホモジネートであった。
【0057】
[0057]in vivoアッセイによって評価した溶液は:(1)スクレーピー因子でスパイク処理し、そしてプリオン精製プロセスに供していない、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7のウシ・ヘモグロビン溶液、ならびに(2)スクレーピー因子でスパイク処理し、そしてナノろ過、アニオン交換膜クロマトグラフィーおよび疎水性処理に基づくカスケードプリオン精製プロセスに供した、以下の希釈:10、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6および10−7のウシ・ヘモグロビン溶液であった。本実施例の出発物質は、炭素−一酸素型のウシ・ヘモグロビン溶液であり、そして実施例1におけるように調製され、そして先に記載するようにスパイク処理された。
【0058】
[0058]TSE精製プロセスは、それぞれ実施例1、2および3に記載されるような:(1)ナノろ過、(2)アニオン交換膜クロマトグラフィーおよび(3)クロロホルムでの疎水性溶媒処理を組み合わせた。ヘモグロビンのナノろ過およびアニオン膜交換デバイスへの低い吸収を維持するために、ヘモグロビンの電荷、そしてしたがってその静電相互作用を排除する緩衝系にヘモグロビンを溶解した。こうした緩衝系は実施例1および2に記載される。さらに、ヘムを酸化に対して保護するため、ヘム酸素を完全に一酸化炭素で置換して、酸化攻撃に対して非常に抵抗性である炭素−一酸素ヘモグロビンを形成した。ヘモグロビン濃度を概算することによって、試料体積中のいかなる変化も希釈に関して補正した。精製前の試料中の平均ヘモグロビン濃度は1リットルあたりおよそ60±10グラムであり、そして精製後は1リットルあたりおよそ55±8グラムであった。
【0059】
[0059]スクレーピー感染性に関するin vivoアッセイは、関心対象の溶液のアリコットでのハムスター(離乳したばかりの仔、およそ6〜8週齢)の脳内(i.c.)接種を伴った。5匹のハムスターを、スパイク処理した非精製およびスパイク処理した精製ヘモグロビン溶液の各希釈群に割り当てた(希釈あたり5匹の動物および力価決定あたり7つの希釈)。対照ハムスターにはヘモグロビンのみを接種した。動物を200日間毎日観察し、そしてスクレーピー感染の典型的な臨床徴候(運動失調、慢性疲労および円状徘徊などの神経学的特徴)および生存率に関して監視した。200日後、麻酔過剰摂取によってすべての生存動物を屠殺し、そしてスクレーピー感染の特徴的な細管(スクレーピー関連原線維因子−SAF)に関して、電子顕微鏡によって脳を調べた。死亡した動物およびスクレーピー感染の臨床的徴候のために殺した動物の脳もまた、SAFに関して電子顕微鏡によって調べた。生存およびSAF陽性率を表5に示す。
【0060】
[0060]結果は、スパイク処理した非精製ウシ・ヘモグロビン調製物がおよそ10/mlのスクレーピー感染力価を有することを示唆する。スクレーピーでスパイク処理したウシ・ヘモグロビン試料のこの多工程精製法後、スクレーピー感染性はまったく検出されなかった。動物にヘモグロビンのみを接種すると、いかなる臨床的および形態学的変化の観察も生じなかった。
【0061】
[0061]これらのデータは、ナノろ過、アニオン交換膜クロマトグラフィーおよび疎水性溶媒処理の連続段階的使用によって、TSE因子からのウシ・ヘモグロビン溶液の精製が、スクレーピー感染性を有効に排除可能であることを示唆する。
【0062】
[0062]PrPScからのウシ・ヘモグロビンのこの多工程精製法は、TSE因子の除去(ナノろ過およびアニオン交換膜クロマトグラフィー)ならびに不活性化(疎水性溶媒)の要素を含有するため、直交性と見なされうる。
表5
【0063】
【表5】

[0063]態様が示され、そして記載されているが、本発明の精神および解説から逸脱することなく、当業者がその修飾を行ってもよい。本明細書記載の態様は、例のみであり、そして限定するよう意図されない。多くの変動および修飾が可能であり、そして開示の範囲内である。数値範囲または制限が明確に述べられている場合、こうした表現範囲または制限は、明確に述べられている範囲または制限内に属する同様の大きさの反復範囲または制限を含むと理解されなければならない(例えば約1〜約10には、2、3、4などが含まれ;0.10より大きいには、0.11、0.12、0.13などが含まれる)。用語「場合による」の使用は、請求項の任意の要素に関して、対象の要素が必要であるかまたは必要でないことを意味するよう意図される。どちらの選択肢も請求項の範囲内であると意図される。含む、含まれる、有するなどの、より広い用語の使用は、からなる、から本質的になる、から実質的に構成されるなどの、より狭い用語の使用に対する補助を提供すると理解されるべきである。
【0064】
[0064]したがって、保護範囲は、上記説明によっては限定されず、続く請求項によってのみ限定され、範囲には、請求項の主題のすべての同等物が含まれる。あらゆる請求項が、本発明の態様として明細書に援用される。したがって、請求項はさらなる説明であり、そして本発明の態様への付加物である。本明細書の参考文献、特に本出願の優先日以後の公開日を有しうるいかなる参考文献の考察も、該文献が本発明に対する先行技術であることの容認ではない。本明細書に引用するすべての特許、特許出願、および刊行物の開示は、本明細書に示すものを補助する例示的、手技的または他の詳細を提供する度合いまで、本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;
第一のろ液をナノろ過デバイスと接触させて、そして第二のろ液を生成し;
第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;
溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして
親水性相を単離する、ここで生体液は、約65kDa以下の関心対象の構成要素を含む
工程を含む方法。
【請求項2】
第一のフィルターと接触させる前に、ヘモグロビンを含む生体液を一酸化炭素で飽和させる工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
生体液がヒト由来ヘモグロビン、動物由来ヘモグロビン、またはその組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
病原性因子がタンパク質性プリオン、感染性海綿状脳症因子、またはその組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
第一のフィルターが大流量アフィニティープリオン減少フィルターを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
フィルターが、約25分間以下で約500ml〜約1000mlの流速を有する、請求項5の方法。
【請求項7】
第一のろ液中の病原性因子の量が、生体液中の病原性因子の量に比較した際、約1対数以上減少している、請求項1の方法。
【請求項8】
ナノろ過デバイスが、中空繊維フィルターまたはディスクを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
ナノろ過デバイスが、約65kDaの分子量カットオフを有する、請求項8の方法。
【請求項10】
第二のろ液中の病原性因子の量が、第一のろ液中の病原性因子の量に比較した際、約1対数以上減少している、請求項1の方法。
【請求項11】
クロマトグラフィー材料が強いアニオン交換体を含む、請求項1の方法。
【請求項12】
溶出された分画中の病原性因子の量が、第二のろ液中の病原性因子の量に比較した際、約1対数以上減少している、請求項1の方法。
【請求項13】
疎水性溶媒が、クロロホルム、トルエン、またはその組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項14】
親水性相中の病原性因子の量が、生体液中の病原性因子の量に比較した際、約5対数以上減少している、請求項1の方法。
【請求項15】
親水性相が感染性でない、請求項1の方法。
【請求項16】
病原性因子の量を決定する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項17】
組成物中の病原性因子の量の決定が、ウェスタンブロット分析、ELISA、動物感染性アッセイ、またはその組み合わせによって実行される、請求項16の方法。
【請求項18】
高分子量構成要素および少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を第一のフィルターと接触させて、そして第一のろ液を生成し;
第一のろ液を親水性膜と接触させて、そして第二のろ液を生成し;
第二のろ液をクロマトグラフィー材料と接触させて、そして溶出した分画を単離し;
溶出した分画を疎水性溶媒と接触させて、そして疎水性および親水性相を生成し;そして
親水性相を単離する、ここで高分子量構成要素は、約65kDaより大きい分子量を有する
工程を含む方法。
【請求項19】
親水性膜がポリフッ化ビニリデンを含む、請求項18の方法。
【請求項20】
ヘモグロビンおよび少なくとも1つの病原性因子を含む生体液を、少なくとも2つのろ過工程に供し、そしてそれによって、生体液に会合した病原性因子の量を減少させる
工程を含む方法。
【請求項21】
病原性因子が感染性海綿状脳症因子を含み、そして該因子の量の減少が約5対数以上である、請求項20の方法。
【請求項22】
ヘモグロビン溶液を、複数のろ過工程を含む直交性分離方法論に供することによって、ヒトおよび/または動物起源のヘモグロビン溶液中の感染性海綿状脳症因子を除去する
工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−515068(P2010−515068A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544269(P2009−544269)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088976
【国際公開番号】WO2008/083236
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500480012)テキサス テック ユニバーシティー (3)
【Fターム(参考)】