生体物質及びその使用
本発明は、最小のカップリング比が3:1であり、担体分子が標的細胞に対して結合特異性を有する、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物を提供する。第1及び第2の非プロトン性溶媒の使用を含む接合の方法、並びに接合した化合物の使用も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常細胞に損傷を与えずに、悪性、異常、もしくは感染している細胞または感染体を選択的に破壊するための、光線力学療法(PDT)に関する。これによって、より有効な臨床治療をもたらしうる。
【背景技術】
【0002】
疾患の現在の治療は、大部分は非標的的である。薬物は全身的にまたは経口で投与され、それは病変の組織だけでなく多くの他の組織をも曝露する。癌治療において化学療法薬は、主にDNA複製を妨げる機構によって機能する時に、急速に増殖し分裂する細胞に対し特異的である[1](すべての参照文献の詳細については、下記の参考文献の章を参照されたい)。他の細胞が薬物を取り込み、骨髄幹細胞が急速に分裂し、免疫抑制及び病気という結果になるなどの中毒性を伴う可能性もある。感染症においては、抗菌剤が、(経口または注射によって)血液中に導入され、特定細菌の代謝経路を妨げる。他の組織の薬物への曝露は、副作用、及び薬物耐性の主な問題をもたらしうる。ウイルス感染細胞は、その代謝が感染していないヒト細胞と実際上同じであるので、治療が難しい。
【0003】
医学の進歩によって、薬物を疾患に合わせて作りうることについて広範に仮説が立てられている。これは、今日使用されている従来の薬物の大部分の非選択的で行き当たりばったりのアプローチよりはむしろ、正しい標的組織または器官に治療剤を送達することをとりわけ意味する。これにより、より低い投与量、副作用と毒性の低減、及び全体としてより良好な反応性をもたらすであろう。ある個人の乳癌が他の個人の乳癌と異なりうるため、ゲノミクスの進歩はいつの日か薬物を個人に合わせて作製できることを意味するであろう。
【0004】
正しい組織に一度集積すれば、異常細胞を破壊しまたは治療するのに非常に優れている、今日臨床的に使用されている多くの薬物がある。従って問題は、薬物の作用機序ではなく、特異的ターゲッティングにある。この例には、外部ビーム放射線療法に対立するものとして標的電離放射線[2]、遊離薬物[3]及び毒素[4]に対立するものとして標的化学療法剤(例えば、メソトレキセートまたはドキソルビシン)が挙げられる。PDTは多くの治療においてすでに十分に確立しているので、特に優れた例であるが、より良好な治療結果と、その結果もたらされた非常に拡大した臨床への適用は、細胞レベルでは正確ではない光源を標的にするのに加えて、正しい組織への感受性薬物をプレターゲッティングすることから生じるであろうことが明らかになりつつある[5、6]。
【0005】
薬物または他のエフェクターを、所望の細胞を標的として送り込むことは、十分に確立した領域である。ターゲッティングへの主なアプローチの1つは、抗体または細胞特異的リガンドを、多官能価分子の標的エレメントとして使用することである[7、8]。このような多官能価分子の良好な設計は、異常細胞に高度に特異的で、その機能を損なわずに多くの薬剤を高能力で運ぶことができ、元々冒されている細胞内コンパートメント内に薬物を蓄積させることができるであろう。
【0006】
抗体は、哺乳動物の免疫系において第一線の防御として作用するように元来進化してきた。それらは、優れた特異性及び多大な多様性を有した複雑な糖タンパク質である。この多様性はプログラム化された遺伝子シャッフリング及び標的突然変異誘発から生じ、それによって恐らく無数に異なる抗体配列がもたらされる[9]。この多様性は、抗体が通常天然でタンパク質である実質上任意の標的分子に結合できることを意味する。事実上任意の所望の標的に対して組換えヒト抗体を選択して、今や抗体選択及び産生をin vitroで模倣することができる[10]。
【0007】
この抗原選択性は、可変ドメインによって与えられ、定常ドメインとは無関係であり、すべてが1つまたは複数の可変ドメインを含有する抗体フラグメントの細菌発現を伴う実験からこのことが知られている。これらの分子には、Fab様分子(Betterら(1988)Science240、1041);Fv分子(Skerraら(1988)Science240、1038);VH及びVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結し、(Birdら(1988)Science242、423;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879)単一ドメイン抗体(dAb)が単離したVドメインを含む(Wardら(1989)Nature341、544)単鎖Fv(ScFv)分子が挙げられる。選択的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関する技術の一般的概説は、Holliger及びHudson、Nature Biotechnology(2005)23、1126〜36に見出される。
【0008】
開発されているかなりの数のバイオテクノロジー薬が、抗体標的に基づいている[7、11、12]。最も一般的なin vitroの選択技術は、ウイルスの表面上で抗体を提示し操作する抗体ファージディスプレイである[10]。
【0009】
ファージコートタンパク質の1つに融合しているバクテリオファージ(ファージ)の表面上のタンパク質及びポリペプチドの提示は、選択的リガンドの選択のための強力な手段を提供する。この「ファージディスプレイ」技術は、特定の抗原への高親和性を有するものを選択する目的でペプチドの大きなライブラリーを生じさせるために、Smith(1985(Science228、1315〜7))により最初に使用された。より最近では、所望の特性を有するリガンドを同定するため、ファージの表面上に抗体を提示するためにこの方法が用いられてきた(McCaffertyら、Nature、1990、552〜554)。
【0010】
生物学的に妥当な分子に結合するリガンドを単離するためのファージディスプレイの使用は、Feliciら(1995)Biotechnol.Annual Rev.1、149〜183、Katz(1997)Annual Rev.Biophys.Biomol.Struct.26、27〜45及びHoogenboom Nature Biotechnology(2005)23、1105〜16において概説されてきた。
【0011】
様々な疾患、主に、癌、自己免疫疾患、及び同種異系移植片拒絶の予防のために開発されている多くの治療用抗体がある。表1は、これらの主要な抗体のいくつかを一覧として示す。
【0012】
【表1】
【0013】
抗体は、適切な受容体を発現している標的細胞に高度な特異性で結合することができる。抗体の親和性は、抗体の標的(抗原)への結合度合いの尺度である。これは通常平衡解離定数(Kd)で表現される。内部に取り入れられる必要がある抗体にとって、抗体が細胞に取り入れられる場合は解離速度が適用できないため、会合速度がより重要である。所望の構造及び結合特性を有する抗体を選択し、操作するための種々の技術が存在する[13]。
【0014】
すべての生体分子のように、抗体の大きさは、in vivoでのその薬物動態に影響する[14、15]。大きな分子は、遅いクリアランスによって循環中で長く保持される(大きな糖タンパク質は、肝臓による特異的取込みにより除去される)。実験マウスモデル系において癌細胞抗原を認識する全抗体(分子量150KDa)の場合、30〜40%が腫瘍によって取り込まれうるが、それらは循環中でより長く保持されるため、1超の腫瘍:血液比に達するのに1〜2日かかる。通常の腫瘍:血液比は、約3日目には5〜10である[16]。in vitro技術及び組み換えDNA技術によって産生されてきた抗体のより小さなフラグメントでは、循環からのクリアランスはより速い(約50KDaより小さな分子は、腎臓を通って排泄される)。単鎖Fv(約30KDa)は、全抗体に由来する人工の結合分子であるが、抗原を認識するのに必要な最小限の部分を含有する[17]。またマウスモデル系において、scFvは、注入された用量の1〜2%を送達することができるが、腫瘍:血液比は20:1を超え、いくつかの腫瘍:臓器比はそれより多い[18]。scFvは、ここ10年間にわたり開発されてきただけであるので、後期臨床試験における例はあまりない[19]。全抗体の臨床試験から、腫瘍に実際に送達される量は、マウスモデルにおいて見られるものの約1%であるが、同様の腫瘍:臓器比を有する[20]。他の分子が抗体に接着している場合は、新たな大きさ及び物理化学特性が、変化した薬物動態を決定する。さらに、実効電荷及び親水性などの特性が、標的の動態をもたらす場合がある[21]。
【0015】
いくつかの細胞表面抗原は、抗体などのリガンドに結合した場合は、静的、すなわち非常にゆっくりと内部に取り入れられる。細胞シグナル伝達または金属及び脂質の取込みなどの内部移行を必要とする機能を有するものがいくつか存在する。このような抗原を介して細胞内に作用剤を送達するために、抗体を使用することができる。このような作用剤は、異常細胞を治療的に修復または破壊することができる。その例には、遺伝子送達[22]、毒素(例えば、シュードモナス外毒素[4])、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ[23]、デオキシリボヌクレアーゼ[24])及び薬物(例えば、メソトレキセート[3])の細胞内送達が挙げられる。これらの作用剤のいくつかは、その作用を及ぼすために特定の細胞内小器官へのターゲティングを必要とする[24]。細胞生物学の進歩は、細胞内タンパク質を特定の細胞内コンパートメントに方向付けるアミノ酸配列である細胞内のターゲティング「コード」を明らかにした。核、小胞体、ゴルジ、リソソーム及びミトコンドリアを標的として様々なタンパク質を送り込むことが見出された特異的配列がある([25]、表2)。これらは、治療タンパク質を標的コンパートメントに局在化させることにより薬物作用を改善するための追加的なものとして開発されている。
【0016】
【表2】
【0017】
新規なエフェクター機能が抗体または他のターゲティングリガンドに連結している標的可能な治療薬についての多くの研究がこれまでにある。これらのいくつかは、首尾よく毒剤を送達するために内部に取り入れられる必要がある。これらの多くは、動物モデルにおいてin vitro及びin vivoで良好な結果を示したが、診療所では期待はずれであった。免疫毒素は、免疫反応及び肝臓/腎臓毒性などの問題を示した[26]。リボヌクレアーゼ[23]及びデオキシリボヌクレアーゼ[24]などの酵素に基づいた新規な「ヒト化」免疫毒素の開発がなされてきた。潜在的により副作用が少ないこれらは、より許容できるが、それでもバイスタンダー殺滅効果を有さない。化学療法の薬剤は、タンパク質に連結した場合効率的に放出されないので、より活性が低くなる傾向があり、従って選択的に開裂することができる化学的リンカーを必要とする。放射免疫療法は、腫瘍に向かう途中で他の組織を照射し、骨髄及び肝臓毒性をもたらす傾向がある。細胞毒性要素は一重項酸素及びそれから生じる他の活性酸素種であり、PS薬自体ではないため、光増感(PS)薬は、タンパク質に連結する特に魅力的な作用剤である[5、6]。
【0018】
ターゲティングまたは検出のためのリガンドを考慮するにあたり、抗体は第1候補であるが、多くの代替のリガンドが存在し、それらのいくつかはファージ(または他の)ディスプレイ/選択技術によって利用されてきた。これらには、受容体の天然リガンド(例えば、インターロイキン-6(IL-6)[27])及び組織ネクローシス因子(TNF)[8]、ペプチド(例えば、ニューロペプチド[28])、免疫グロブリン様ドメイン(フィブロネクチン(fn3)ドメイン[29]、単一免疫グロブリンドメイン[30]など)、アンチカリン[31]、アンキリンリピート[32]などが挙げられる。これらの多くは、生物学的及び治療特性を改良するために、遺伝子操作をし、最適化することができる[33]。
【0019】
光線力学療法(PDT)は、異常細胞及び組織を除去する必要がある一連の状態のための最小限に侵襲性の治療である[6、34、35]。電離放射線とは異なり、同じ部位に繰り返し投与することができる。化学療法、放射線療法または手術などの従来のモダリティの使用は、PDTの使用を妨げず、逆の場合も同じであるので、癌治療におけるその使用は魅力的である。PDTはまた、(加齢性黄斑変性症(AMD[36])または癌における)血管、免疫障害[37]、心血管疾患[38]、及び微生物感染[39、40]の治療など、特定の細胞集団を破壊しなくてはいけない他への適用が見出されている。
【0020】
PDTは、静脈内注射、または皮膚癌では局所適用による、PS薬の投与から開始される2段階または二元的方法である。薬物の物理化学的な性質によって、癌細胞または他の標的細胞により優先的に取り込まれる[41]。好適な腫瘍(または他の標的):正常な臓器の比をひとたび得たら、第2の工程は、特定の波長の光の特定の線量によるPS薬の活性化である。基底状態または一重項状態の光感受性物質は、特定の波長で光の光子を吸収する。これは短寿命の励起一重項状態をもたらす。これは項間交差によってより長寿命の三重項状態に変換されうる。様々な細胞毒性作用が行われるのは、この形態の感受性物質である。
【0021】
反応の主な部類は、ラジカルによる光酸化(I型反応)、一重項酸素による光酸化(II型反応)、及び酸素を伴わない光化学反応(III型反応)である。感受性物質の三重項状態の形態は、細胞環境に見出される分子状酸素の、II型反応を介した活性酸素種(ROS)、主に一重項酸素(1O2)への変換をもたらす。活性化した光感受性物質が、細胞成分と相互に作用する場合、電子または陽子が取り除かれ、ヒドロキシルラジカル(OH・及びスーパーオキシド(O2-・)などのラジカルが形成されるI型反応が起こる。これらの分子種は、DNA、タンパク質及び脂質などの細胞成分に損傷を与える[42]。三重項状態の光感受性物質が遊離基と相互に作用し、細胞傷害をもたらすIII型の機序もまた、提案されてきた。細胞傷害の部位は、光感受性物質のタイプ、インキュベーションの長さ、細胞のタイプ、及び送達方法によって決まる。疎水性光感受性物質は、細胞膜を傷害する傾向にある[42]一方、カチオン性光感受性物質は、ミトコンドリアなどの膜小胞内に局在し、そこに損傷をもたらす[43]。
【0022】
ROSの光活性化は、非常に細胞毒性である。実は、免疫系におけるいくつかの自然作用では、不必要な細胞を破壊する方法としてROSを利用している。これらの種は、短寿命で(<0.04ms)、それらの発生点から短い半径(<0.04mm)内で作用する。細胞の破壊は、組織のネクローシス性領域をもたらし、やがては脱落しまたは再吸収される。残りの組織は、通常瘢痕を残さずに自然治癒する。組織加熱はなく、コラーゲン及びエラスチンなどの結合組織は影響されない。熱レーザー技術、手術または外部ビーム放射線療法と比較して、基底構造への危険性の低下がもたらされる。PDTはアポトーシス(非炎症性細胞死)を誘発し、結果として生じる見出されるネクローシス(炎症細胞溶解)は、免疫系によって除去されない死につつある細胞の塊に起因することがより詳細な研究により示されてきた[44]。ケイ素フタロシアニンを含めたいくつかのPS薬についての研究によって、PDTによりアポトーシス-プログラム細胞死がもたらされることが示された[45]。アポトーシスは、細胞が自らを膜に包まれた小片に切断することによって整然と自殺する、細胞死の高度に組織化され進化的に保存された形態である[46]。これらのアポトーシス小体は、免疫系による食作用により特徴付けられる。通常、少領域における過剰アポトーシスは、免疫系に「過負荷」となり、その領域はやがて炎症性の結果を伴うネクローシスとなる。
【0023】
PDTは、冷たい光化学反応、すなわち使用されるレーザー光が電離しておらず、低レベルの熱エネルギーを送達し、PS薬は非常に低い全身毒性を有する。PS薬及び光の組合せは、低い罹患率及び最小限の機能障害をもたらし、疾患治療において多くの利点を提供する。PDTの反応率及び効果の持続性は、標準の局所領域治療と同様またはそれより優れているという増加していく証拠がある[35、36]。
【0024】
一般にPS薬は、皮膚病変には局所適用もあるが、全身的に投与される。PS薬が、正常な周辺組織と比較して通常2〜5:1の比で標的組織に集積すると(比が50:1までに上がる場合がある脳を除いて)、特定の波長の低出力の光を腫瘍(またはAMD治療においては目[37])に向ける。ヒト組織は可視光スペクトルの赤領域において最も効果的に光を伝えることができるため、赤色光(630nm以上)を吸収することのできるPS薬は、約1cmの深さまでの活性化が可能である。治療後は、全身投与したPS薬が体から除去されるまで直射日光は避けなくてはいけない。そうしないと、皮膚光感作性を有し、皮膚の日焼けをもたらす場合がある。
【0025】
より新しい世代のPS薬は、より長い活性化波長を有し、従って赤色光によるより深い組織浸透、より高い量子収量、及び腫瘍選択性及び残留する皮膚光感作性に関するより良好な薬物動態を可能にする。PS薬のこれらのクラスには、フタロシアニン、クロリン、テキサフィリン及びプルプリンが挙げられる。合成クロリンであるFoscan(登録登録商標)は、652nmの活性化波長、0.43の量子収量及び約2週間の皮膚光感作性を有する非常に強力なPS薬である。種々の癌のための良好な結果を有する多くの臨床試験があった[35、36]。メタ-テトラヒドロフェニルバクテリオクロリン(m-THPBC)などの、これまでに開発され、治験中であり、>700nmで吸収できる他のPS薬がある。好都合な深紅での吸収特性(763nmの吸収ピーク)を有する前立腺癌の治療に効果を発揮するパラジウム-バクテリオフェオホルビド光感受性物質(TOOKAD)が開発された[47]。
【0026】
光の線量を分割することによってPDT効果が高まり、次回の活性化の前に酸素を系に補充することを可能にすることが前臨床試験によって示されてきた。これは、正所性乳癌モデルにおいてMiravant薬物MV6401で観察されてきた[48]。文献ではフリーラジカル経路を調整するために別々に投与されるビタミン類似体の使用[49]、それらの半減期を増加させるための光感受性物質(例えば、m-THPC)のポリエチレングリコール担体へのカップリング[50]、重合体ミセル担体の使用[51]及びPDT治療後の免疫応答を増強するためのアジュバントの使用[52]などの非標的のPDT効果を高める他の方法について記載している。
【0027】
表在性疾患を通常局所麻酔及び鎮静で治療することができるという点で、PDT治療計画は臨床医には魅力的である[35]。(皮膚光感作性の可能性を除いて)一般的に低い毒性は、他の薬物療法の必要性を抑える。局所的治療は、無菌状態を必要とせず、外来診療所で施すことができる。
【0028】
Photofrin(登録登録商標)(ポルフィマーナトリウム)、5-アミノレブリン酸(ALA)及びVisudyne(登録登録商標)(ベルテポルフィン、BPD-MAベンゾポルフィリン誘導体一酸)は、規制当局の許可を有する3種類のPS薬である。有望で強力な第2世代のPS薬であるFoscan(登録登録商標)(テモポルフィン;メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン)は、5-アミノレブリン酸メチルと同様に、ヨーロッパにおいて最近承認された。承認される第1のPS薬であるポルフィマーナトリウムは、膀胱、胃、食道、頸部及び肺癌における使用が許可されている。(630nmで活性化する)スペクトルの赤系統の色域における弱い光吸収特性のためにその性能は、穏やかであり、これは、組織に約5mmしか浸透できず、標的腫瘍組織への制限された選択性を意味する。それはまた体内に何週間も残り続け、皮膚光感作性をもたらす。しかし、膀胱、胃、食道、頸部及び肺癌の治療に有効であった[35、36]。ALAは、皮膚病変の治療に局所的に施用され、内因的にプロトポルフィリンIXという天然PS分子に変換される。これは多くの波長で活性化させることができ、その作用する深さは2mm未満である。ベルテポルフィンはまた、腫瘍への適用に見出される組織浸透の問題なしに加齢性黄斑変性症AMDにおいてよい性能を示す[37、53]。TAP及びVP臨床試験は、ベルテポルフィンによるPDTは、プラセボ対照と比較してAMDと関連する失明の回復により効果的であったことを示した[53]。
【0029】
PDTは、より低い罹患率、使用の簡単さ、改良された機能的及び美容的な結果を伴いながら従来の技術の同様の制御率を達成することができる。PDTは、従来のアプローチが失敗しまたは不適当な場合に主に使用されてきた。これらには、気道、消化器及び尿路(例えば、口腔、食道及び膀胱)の粘膜に通常見出される前癌性異形成病変及び非浸潤性癌が挙げられる。この段階の癌の現在の治療はあまり成功しておらず、ここでの良好な反応は、大きな固形腫瘍または転移性の拡散が起こることを防止するであろう。バレット食道の治療は通常食道切除を意味し、これは全身麻酔を必要とし、病的状態及び機能喪失及び外見を損なう危険を有する。PDTは、より少ない危険性で大きい領域を表面的に治療することができるため、魅力的な選択であると考えられている。Photofrin(登録登録商標)、ALA及びFoscan(登録登録商標)は、臨床試験においてこのようなタイプの癌で良好な反応を生じてきた(表3)。乳癌胸壁再発は、Foscan(登録商標)[54]及びPhotofrin(登録商標)によって成功裡に治療されてきた[55]。
【0030】
【表3】
【0031】
光の到達しやすさのために、皮膚癌などの皮膚疾患の治療によって、全身性及び局所的PS薬で良好な結果が得られた(表3)。頭部、首及び口腔病変もまた、良好な結果をもたらし、治療の良好な美容的結果のために適切である(表3)。レーザー及び光送達技術に進歩が見られるため、他の癌の治療も試験されている。内視鏡を食道及び気管支腔などの任意の管腔構造に活性化光線量を送達するために使用し、従って最小限の手術で治療範囲を胃腸及び肺癌に拡大することができる(表3)。放射線療法によっては十分に多い治癒量を与えることができないであろう胸膜及び腹膜などの広い領域を治療することができる。PDTは、腫瘍縮小手術と組み合わせたこれらの表面漿膜癌の治療に大いに有望である。中空の体腔を通ってこれらの大きい表面に短時間で光を送達することができる。重要な下にある臓器は残されるであろうため、活性の限られた深さは利点であろう(表3)。固形腫瘍が外科的に除去され、残りの腫瘍細胞が形成された体腔において1回のPDTによって破壊される場合、補助化学療法もまた、研究されている選択肢である。
【0032】
表層癌はPDTに最も適しうるが、PS薬を全身的にまたは腫瘍内注射によって投与し、次いで腫瘍に均等に広げた針を通ってレーザーファイバーを挿入する間質の治療を、固形腫瘍に対し行うことができるであろう。これによって非常に大きな腫瘍のネクローシスをもたらすことができる[56、57](表3)。
【0033】
従って、PDT治療にはいくつかの利点がある。それは、光による活性化により標的とされうる非浸襲性の低毒性治療を提供する。標的細胞は、細胞毒性種(ROS)に対する耐性を生じることができない。治療後に、ほとんど組織瘢痕は残らない。しかし、PS薬は、通常せいぜい一桁の標的:血液比であり、標的細胞に対してあまり選択的でない。例えば、食道癌[60、61]、膀胱癌[62]におけるPhotofrin(登録商標)[58、59]のように、多くの場合この選択性の欠如は、隣接する正常組織に対する容認できない損傷をもたらす。PS薬は血液タンパク質上で「ピギーバック方式で輸送」されるため、望まれるより長く循環中に留まり、最良の場合でも2週間、患者を光過敏症とさせる。
【0034】
細胞毒性効果は光による活性化から生じる副次的効果であるので、光増感薬は、標準の化学療法剤とは異なり、担体に接着している間もまだ活性があり、機能的であることができる。これによって、ターゲティング分子への接合を伴う特異的な薬物送達機序を受け入れられるようになる。現在、光増感薬を標的可能なエレメントに連結させる好ましいアプローチは、誘導体化された光増感薬の全モノクローナル抗体への直接接合である。全抗体は150KDaの分子量を有し、目的を達成するのに長い時間がかかることとなる乏しい腫瘍:臓器比(2:1)などの好適ではない薬物動態を有する、非常に大きな光-免疫接合体をもたらす[63、64]。モノクローナル抗体上の残基に連結している光増感薬は、乏しい光学的特性によって消光効果が起こり、互いに有害作用を及ぼす可能性があることを現在の文献は示唆している[65]。これに加えて、抗体が凝集し、または機能を失う前に、典型的には4:1の比の、光感受性物質の抗体への乏しく信頼できない添加が見られることが示された[63〜69]。
【0035】
光感受性物質のカップリングが、様々なモノクローナル抗体を用いた様々な戦略を使用して行われてきた。例えば、PPaが抗Her2モノクローナル抗体にカップリングされた。良好な感受性物質:抗体カップリング比(約10:1)を達成するために、抗体は、ポリエチレングリコール鎖を接着させることによってより可溶性に作製しなければならなかった[68]。このペグ化は、接合体の薬物動態に対し有害な作用を有し、より乏しい腫瘍:血液比をもたらすであろう。さらに、光感受性物質の抗体への非共有結合もここでは見られた。このような非共有結合は、抗体-光感受性物質の接合体を生成させる大部分の報告されている試みの特徴であり、特徴がはっきりした接合体を確実に生成する上での主な問題を表す。さらなる研究において、感受性物質であるポルフィリンを、イソチオシアネートカップリング法を用いてモノクローナル抗体17.1A、FSP77及び35A7と共に使用し、2.8:1と同様の感受性物質:抗体比がもたらされた[67]。他の例は、ベルテポルフィン(ベンゾポルフィリン誘導体、BPD)とモノクローナル抗体C225(抗EGFR)とであった。ここでは、11:1を超えるカップリング比が、乏しい免疫活性及び溶解度をもたらした[69]。最良の比は約7:1であった。これらの例は、高い光感受性物質:抗体比を有する、特徴がはっきりした接合体を生成する問題を例示する役目を果たし、全抗体より3分の1から6分の1小さいフラグメントの使用は、より大きなタンパク質種で見られる溶解度及び添加の問題を考慮すると、より成功しないであろうことを示唆する。
【0036】
モノクローナル抗体に接着したPS薬に対する研究によって、多すぎるPS分子が個々のモノクローナル抗体に接着した場合、疎水性が影響を受ける場合があり、薬物動態への悪影響が生じうることが示された。全モノクローナル抗体の問題を考慮すると、小さなフラグメント(scFv(30KDa)など)は、あまり好適ではないカップリング効率を有し、1個または2個の光感受性物質のカップリングのみをもたらすであろうということで大方の見方が一致する。Birchlerら[70]は、効率的なScFv-光感受性物質接合体を生成しようと試みたが、単一の光感受性物質を、部位特異的システイン残基を介してscFvにカップリングさせることができただけであった。
【0037】
他のグループは、PS薬を、分枝炭水化物[71]またはポリエチレングリコール鎖[72]及びポリリジン[73]鎖などの指定した「担体」に連結させる試みによって、これらの問題を回避しようとしてきた。これらのアプローチはすべて、リガンド-担体は完全に組換えで作製することができないため、さらなる接合工程を必要とする。このようなポリマーを使用することはまた、in vivoでのタンパク質分解不安定性などの問題も有しうる。光感受性物質がこのように接着している場合は、その光物理的性質を破壊しながら自己消光し、活性の光感受性物質となれる前に「脱消光」するリゾチームによる分解に依存することが知られている[71]。従って、10:1までのより高いカップリング比を達成することが可能であるが、遊離の光感受性物質よりも低い光毒性及び低い一重項酸素収率のみを有する。Roderらによる研究[71]は、フェオホルビドの光感作作用は、デンドリマーの末端部に多数が共有結合している場合、劇的に減少したことを示した。これは、エネルギー移動プロセス、主として色素から色素へのForster型エネルギー移動の結果である。Forster型移動は、距離依存性であり、距離とともに急速に低下する。色素分子の相互作用によって、吸収スペクトル、蛍光寿命の減少、及び一重項酸素の量子収量の変化をもたらす。抗体フラグメントとタンパク質担体分子と組み合わせた融合タンパク質についてもまた、本発明者らのグループによって記載された[74]。
【0038】
Glickmanら[75、76]は、眼疾患のためのVEGF脈管構造標的に対するモノクローナル抗体標的PDTについて記載している。これは、抗体:光増感剤比の記載なしに、標準的なカップリング条件を使用する。しかし、Hasanら[77]は、光感受性物質:抗体カップリング比を改良するために2種類の溶媒系を開示している。ここでは、水性緩衝液と混合した非常に高濃度の有機溶媒(通常40〜60%)を使用して、11:1までの比が報告されてきた。しかし、使用される高濃度の溶媒が、すべての抗体によって許容される可能性は低い。フラグメントの使用についての記載はないが、有機溶媒へのより大きな感受性を考慮すると、それらは、この方法では生存可能であることが期待されないであろう。またHasanら[77]においては、多くのカップリング光感受性物質は自己消光性であり、従ってこの系は、光毒性分子を放出するのに内部移行及びリソソーム分解に依存する。細胞表面に結合した光-免疫接合体は、細胞内リソソーム中に見出されるような分解酵素に曝されることが期待されない。これはCEA及びマトリックス/間質性抗原などの低/非内部移行抗原のターゲッティングを除外するであろう。
【0039】
新規なまたは従来のPS薬を、小さな標的可能な担体タンパク質に連結することによって、その後光によって活性化することができるPS薬の高度に特異的な用量を標的組織に送達することが可能である。20:1以上の組織対血液/正常臓器の比を有し、より短い時間間隔で標的組織中でより大量のPS薬を集積することができるという点で、これらの担体-PS薬接合体は、既存の標的及び非標的PDTアプローチよりも利点がある。さらに、これらの作用剤は、免疫原性がほとんどまたはまったくなく、副作用がより低く、他の標的可能な戦略よりも利点がある可能性がある。より小さなリガンドは、インスリン[78]、トランスフェリン[79、80]、アルブミン[81]、アネキシン[82]、トキシン[83]、エストロゲン[84]、ローダミン誘導体[85]、葉酸[86]などの光感受性物質、並びにEGF[87]及びVEGF[88]などの増殖因子を送達するために使用されてきた。このようなリガンドは、それに接着した光感受性物質を改良し増強するために、タンパク質進化または合理的な突然変異誘発によって操作することができることを、現在の文献におけるこれらの例または他のどれもが提案していない。
【特許文献1】WO2004/046151
【特許文献2】WO2004/076461
【非特許文献1】Betterら(1988)Science240、1041
【非特許文献2】Skerraら(1988)Science240、1038
【非特許文献3】Birdら(1988)Science242、423
【非特許文献4】Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879
【非特許文献5】Wardら(1989)Nature341、544
【非特許文献6】Holliger及びHudson、Nature Biotechnology(2005)23、1126〜36
【非特許文献7】Smith(1985(Science228、1315〜7))
【非特許文献8】McCaffertyら、Nature、1990、552〜554
【非特許文献9】Feliciら(1995)Biotechnol.Annual Rev.1、149〜183
【非特許文献10】Katz(1997)Annual Rev.Biophys.Biomol.Struct.26、27〜45
【非特許文献11】Hoogenboom Nature Biotechnology(2005)23、1105〜16
【非特許文献12】Harlowら(Eds)、Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Chapter6
【非特許文献13】Lipschultzら「Experimental Design For Analysis of Complex Kinetics Using Surface Plasmon Resonance」Methods(2000)20、3180
【非特許文献14】Scherrerら(1986)J.Org.Chem.51:1094〜1100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明は、担体が機能的及び可溶性であり続けることを確実にするために、これまで知られていない最適化されたカップリング条件を使用して、光感受性物質を、抗体フラグメント(例えば、scFv)などの生物学的ターゲティングタンパク質にカップリングする方法を提供する。接合体は、非共有結合がなく、一貫した高いモル比の共有結合している光感受性物質を有することが好ましい。本発明はまた、最適な光物理的及び光力学的特性を有する操作された組換え抗体-光感受性物質接合体、及びそれらを生成する方法も提供する。さらに本発明は、接合体全体の光物理的及び光力学的特性を高める他の「非光感作性」分子のカップリングの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明者らは、光感作性分子及び他の調節分子と化学的にカップリングした小さな組換え抗体フラグメントをベースとした、非常に効果的で、強力な標的光線力学療法接合体を生成する方法によって作製された化合物について説明する。このような調節分子の使用は、活性酸素種産生の機序を変化させ、これによってII型ROSよりもよりI型種(遊離基及びスーパーオキシド)をもたらすことができる。マトリックスタンパク質などの非または低内部移行抗原を標的とする場合、光感受性物質が内部移行することはまったくまたはほとんどなく、これは表面の細胞膜により効果的に損傷を与えうる種は、II型の一重項酸素生成源より強力であることを意味するため、これはPDTにとって重要な意味がある。さらに、非内部移行抗原を標的とすることは、ある場合、特に癌細胞が、例えば、ROS除去酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ)の上方制御において、活性酸素種に対してある種の薬物耐性を発達させる場合は好ましい場合がある。
【0042】
抗体の生物学的性質によって、機能及び完全性を保持するために、それらを概ね水性緩衝液中に保つ必要がある。しかし、光感受性物質は本質的に疎水性の傾向があり、抗体のために通常使用される緩衝液条件下では難溶性である。水性条件下での光感受性物質の抗体へのカップリングは、乏しい光感受性物質:抗体比をもたらし、溶媒中では損傷を受けた抗体タンパク質をもたらすであろう。本発明者らは、低濃度の有機溶媒の組合せを利用する方法を説明する。
【0043】
本発明者らは、非共有結合を最小限にする一方で、多くの光感受性物質を抗体フラグメントに効率的にカップリングさせることのできる、頑強な接合プロトコルを開発した。
【0044】
大部分の光感受性物質の疎水性及び高度に吸着性の性質、並びに抗体及び他の生体分子の水溶性の性質によって、接合の化学反応は困難となり、より重要なことには、接合されていない光感受性物質の不純物をこのような接合体から除去することがほとんど不可能となる。これらの問題は、驚いたことに(a)抗体と光感受性物質との比較的小さなカップリング比の使用を可能とする極めて純粋な単官能の光感受性物質を使用し、及び(b)2種類の非プロトン性溶媒と、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または当技術分野において公知の任意の他のほぼ中性の緩衝液である場合がある水性成分との組合せを使用することによって克服された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の第1の態様において、
(i)光増感剤を提供する工程と、
(ii)担体分子を提供する工程と、
(iii)第1及び第2の極性非プロトン性溶媒並びに水性緩衝液の存在下で、光増感剤及び担体分子を接合する工程と
を含む、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物を作製する方法を提供する。
【0046】
好ましくは、この化合物は、少なくとも3:1の光増感剤と担体分子の比率を含む。さらに好ましくは、光増感剤及び担体分子の機能特性及び物理的特性は、カップリング後に実質的に変化しない。
【0047】
第1及び第2の極性非プロトン性溶媒が選択される適切な極性非プロトン性溶媒は、(これらだけに限らないが)ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、HMPA、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、二硫化炭素、グリム及びジグリム、2-ブタノン(MEK)、スルホラン、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、ピリジン、及びアセトンからなる群から選択される。使用しうる他の極性非プロトン性溶媒は、当業者には周知である。水性混合物に対する両方の極性非プロトン性溶媒の総量は、約50容量%であるべきである。2種類の極性非プロトン性溶媒の相対量は、互いに1〜49%:49〜1%に変化させることができる。
【0048】
第1及び第2の非プロトン性溶媒は、DMSO、DMF、及びアセトニトリルからなる群から選択されることが好ましい。第1及び第2の非プロトン性溶媒は、DMF及びアセトニトリルであることがさらに好ましい。
【0049】
水性緩衝液と第1の非プロトン性溶媒と第2の非プロトン性溶媒との比は、約50%:1〜49%:49〜1%であることがよりさらに好ましい。
【0050】
よりさらに好ましくは、非プロトン性溶媒混合物は、92%PBS:2%DMSO:6%アセトニトリルであり、光増感剤及び担体分子を接合する工程は、0℃〜5℃の温度で行われる。溶媒の組合せによって、特にこのような低い温度において全反応を均一に維持し、約30分間のみカップリングを行うことによって、高いカップリング比及び非常に低い非共有結合の割合を達成することができる。
【0051】
本発明は、担体分子が抗体フラグメント及び/またはその誘導体である方法をさらに提供する。好ましくは、抗体フラグメント及び/または誘導体は単鎖抗体であり、ScFvであることが好都合でありうる。担体分子は好ましくは、ヒト化またはヒト分子である。
【0052】
上記のプロトコルを使用して、活性エステルを形成するように誘導体化されたカルボン酸基を有する光感受性物質は、効率的に高いモル比で表面的に接触可能なリジン残基を介して抗体フラグメントにカップリングしうる。ピロフェオホルビドa(PPA)は、天然物由来の光感受性物質であり、それを理想的な光感受性物質としている光物理的性質とは別に、単一のプロピオン酸側鎖を有している。PPAプロピオン酸官能基は、対応するN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)または「活性エステル」に容易に変換され、接合できる状態になっている極めて純粋な誘導体をうるためにクロマトグラフィー及び再結晶の組合せにより精製され、その後効率的に抗体フラグメントにカップリングすることができる。
【0053】
好ましくは、光増感剤は単官能の光感受性物質である。さらに好ましくは、光感作性基は、(これらだけに限らないが)、ヘマトポルフィリン、Photofrin(登録商標)、天然ポルフィリン、クロリン及びバクテリオクロリン、ピロフェオホルビドaなどのフェオホルビド及びフォトクロル(Photochlor)などのその誘導体、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、TOOKAD(Pd-バクテリオフェオホルビド)などの天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan)及びバクテリオクロリンなどの合成クロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィンなどのモノベンゾポルフィリン誘導体、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及び誘導体、プルプリン-18などのプルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、無金属及びメタル化の両方であるメソ-トリエチニルポルフィリン(WO2004/046151)などのクロリン及びバクテリオクロリン、コア修飾ポルフィリン(WO2004/076461)、モテキサフィンルテチウム及びモテキサフィンガドリニウムなどの拡張ポルフィリン(テキサフィリン)からなる群から選択される、少なくとも1種類である。
【0054】
非ポルフィリン系化合物もまた、光感受性物質として使用することができ、それだけに限らないが、メチレンブルーなどのフェノチアジニウム誘導体、トルイジンブルー、メロシアニン-540などのシアニン、アクリジン色素、BODIPY色素及びアザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン(squarine)色素、エオシンなどのハロゲン化キサンテン色素、及びローズベンガルが挙げられる。
【0055】
抗体フラグメントへの接合のための他の適切な光感受性物質は、当業者であれば容易に想定しうるであろう。しかし、光感受性物質上の多数の反応性に富んだ官能基の存在は、いくつかの問題をもたらす場合がある。接合反応の化学量論組成を制御するために十分に純粋な材料をうるのが困難であり、その結果過剰な反応性に富んだ光感受性物質を使用して反応が行われ、非共有結合の増加をもたらす。分子内抗体架橋もまた接合の間に起こり、低いカップリング収率及び凝集体形成の増加がもたらされる可能性がある。
【0056】
本発明者らの抗体フラグメントに関する研究によって、接合の間の光感受性物質の化学量論組成を制御し、リジン残基を幾何的に十分に離間することによって、高い光感受性物質の添加及び優れたPDT活性を有する光-免疫接合体をもたらすことができることが示された。
【0057】
好都合なことには、この方法は、工程(iii)の後に行われる下記の
(iv)光増感剤の機能を調節することのできる調節剤を担体分子にカップリングする工程をさらに含む。
【0058】
光感受性物質をリガンドにカップリングするのと同様に、同様のカップリングの化学反応を使用して、光-免疫接合体全体の光物理的または光力学的特性を調節するような方法で、他の分子をリガンドにカップリングすることも可能である。これらの代替の分子は、光感受性物質と同じ残基タイプに化学量論比でカップリングすることができ(すなわち、光感受性物質カップリングの前または後)、両方のタイプの分子を、カップリング/受け入れることを可能にし、または異なる残基タイプにカップリングすることができる(例えば、光感受性物質がリジンにカップリングし、続いて修飾化学物質がアスパラギン酸/グルタミン酸残基にカップリングする)。
【0059】
光力学的調節物質は、光感受性物質の光照射により生じる活性酸素種のタイプ及び量を変化させる役割を果たしうる。例えば、II型反応(すなわち一重項酸素)をより生じさせる光感受性物質は、高濃度のスーパーオキシド及び水酸化物ラジカルを伴うI型反応をより生じるように調節することができる。これはPDTの効力または治療成績に対して重大な意味を持ちうる。例えば、非内部移行の腫瘍抗原を標的とする光-免疫接合体は、細胞表面で主にI型反応を生じさせ、膜損傷をもたらし、(細胞内で生じる)スーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化反応に対して影響されにくい場合、より強力でありうる。
【0060】
好ましくは、調節剤は、安息香酸;4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸などのアジド基を含有する安息香酸誘導体;並びにアジド部分(N3)を含有する、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン(napthaquinone)、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン及びクマリンを含めた他の芳香族基またはヘテロ芳香族基からなる群から選択される。芳香族及びヘテロ芳香族スルフェナートは、上記の芳香族/ヘテロ芳香族基から得た。他の特定の調節剤には、トロロックスなどのビタミンE類似体、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸(ursadeoxycholic acid)が挙げられる。光増感剤と共にリガンドにカップリングすることができる化学修飾剤の一例は、安息香酸(BA)のスクシンイミジルエステルである。
【0061】
PPaと共に抗CEA scFvに共カップリングした場合、PPaのみとカップリングしたscFvと比較して、in vitroでより強力なPDT細胞殺滅をもたらすことが示された。
【0062】
好ましくは、この方法は、工程(iii)または(iv)の後に行う下記の
(v)化合物を医薬として許容される担体と混合して製剤を形成する工程をさらに含む。
【0063】
本発明の方法はまた、視覚化剤を接合体とカップリングさせる任意選択の工程も含む。あるいは、接合体の一部を形成する光増感剤はまた、視覚化剤としても使用しうる。
【0064】
免疫アッセイまたは診断法における組換え抗体の使用は、よく研究された領域である。抗体及び抗体フラグメントの優れた特異性、高親和性及び多用途性によって、それらは検出系の一部として理想的な結合分子となっている。例えば、医療用イメージングにおいて、抗体は蛍光色素などの光学活性化合物に連結され、前癌性及び癌性病変の検出、治療反応の測定、及び再発の早期発見[95]に使用されてきており、in vitroでは伝達性海綿状脳症(プリオン病)が蛍光標識された抗体で検出されてきた[96]。
【0065】
臨床的に有用な腫瘍イメージングは、小さな病変の検出を要求する。早期の行動によって検出の利点を続いて実現することができる。従来のイメージング技術と関連する問題の1つは、腫瘍と背景とのコントラストが乏しいことである。腫瘍におけるターゲティング分子の局在化を高め、正常組織によるそれらの取込みを減少させ、従って腫瘍:組織比を改善するために様々な戦略が開発されてきた。これらのアプローチには、好適な薬物動態を有する小さな腫瘍特異的ペプチド分子の開発[97]、改良された標識技術[98]、プレターゲティング戦略の使用、腫瘍送達の調節、及び腫瘍マーカー発現の上方制御が挙げられる。さらに、いくつかの新たな色素が開発された[99]。in vivoでのイメージングのために望ましい多くの特性を有する近赤外蛍光色素が合成されてきた。近赤外蛍光色素は、血液及び組織が比較的透過性である波長で吸収及び放射し、高い量子収量を有し、蛍光色素と抗体のより高いモル比においてさえも良好な溶解度を有する。単鎖Fvフラグメントなどの小さな抗体種は、良好なコントラスト比をもたらすことができる薬物動態を有するが、標的組織中のレポーター基の低い絶対レベルを迅速にもたらす。より高い蛍光収率は、このより低い沈着を償い、検出感度を増加させることができる。
【0066】
イメージングの他の用途には、研究道具の開発が含まれる。色素で標識した抗体は、受容体輸送などの細胞の生物過程の可視化において極めて貴重であった[100]。蛍光収率の増加によって、低い存在量の分子の検出及びモニターが可能になるであろう。標識細胞の可視化のための通常の方法は、異なった非オーバーラップの蛍光発光スペクトルを有する一連の特異的抗体を使用して、多重標識分子を同時にモニターすることができる免疫蛍光顕微鏡観察である。
【0067】
上記のように、本発明者らの新規なカップリング条件を使用した、色素分子の抗体フラグメントまたは他の適切なリガンドへのカップリングは、より高い添加比をもたらす。これによって光物理的性質の増加に直接つなげることができる。改善されたPDTのための一重項酸素生成の増加はもとより、優れた光物理的性質は、蛍光の増加として表すことができる。適切な色素分子を有する抗体フラグメントの光-免疫接合体は、その好適な薬物動態及び蛍光の増大によって、より有効な診断薬となることができる。迅速なクリアランス及び低い非特異的組織結合は、極めて高いコントラスト比をもたらすであろうし、高い蛍光は、出力信号のより高感度な検出を可能にするであろう。上記のように、カップリングのために好適に離間した官能基(例えば、リジンアミノ基)を含有するように作成され、選択され、または操作された抗体フラグメントの使用は、消光及び誤った相互作用の減少によって、より好適な蛍光収率を有する色素をもたらしうる。これは主に医療用イメージングにおける用途を有するであろうが、診断キットまたは細胞イメージングのための感度がよりよい試薬を作製するために使用することもでき、蛍光色素及び光感受性物質を、同じ抗体フラグメントにカップリングすることによって、二官能性作用剤を生成し、腫瘍イメージング及び光線療法の両方を可能にすることができる。
【0068】
本発明の第2の態様において、本発明の方法によってうることができる、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物を提供する。
【0069】
本発明の第3の態様において、最小カップリング比が3:1の担体分子にカップリングした光増感剤を含み、担体分子が選択的に標的細胞に結合する、化合物を提供する。
【0070】
好ましくは、担体分子は、光感受性物質と比較した場合、3:1の最大寸法、通常3OkDaの最大寸法を有する。このような担体の例はScFvである。
【0071】
有利なことには、光増感剤及び担体分子の機能特性及び物理的特性は、カップリングした形態で、非カップリング形態の場合の特性と比較して実質的に変化しない。
【0072】
好ましくは、担体分子は、抗体フラグメント及び/もしくはその誘導体、または非免疫原性ペプチドリガンドからなる群から選択される。
【0073】
好都合なことには、抗体フラグメント及び/またはその誘導体は、単鎖抗体フラグメント、特にScFvである。
【0074】
あるいは、担体分子は、ヒト化またはヒト分子である。
【0075】
好都合なことには、光増感剤は単官能の光感受性物質である。好ましくは、光増感剤は、ヘマトポルフィリン、Photofrin(登録商標)、天然ポルフィリン、クロリン及びバクテリオクロリン、ピロフェオホルビドaなどのフェオホルビド及びフォトクロルなどのその誘導体、クロリン(例えば、クロリンe6)、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、TOOKAD(Pd-バクテリオフェオホルビド)などの天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan)及びバクテリオクロリンなどの合成クロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィンなどのモノベンゾポルフィリン誘導体、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及び誘導体、プルプリン-18などのプルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、無金属及びメタル化メソ-トリエチニルポルフィリンなどのクロリン及びバクテリオクロリン、コア修飾ポルフィリン、モテキサフィンルテチウム及びモテキサフィンガドリニウムなどの拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、並びに非ポルフィリン系化合物(メチレンブルーなどのフェノチアジニウム誘導体、トルイジンブルー、メロシアニン-540などのシアニン、アクリジン色素、BODIPY色素及びアザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、エオシンなどのハロゲン化キサンテン色素及びローズベンガルなど)からなる群から選択される少なくとも1種類である。
【0076】
好都合なことには、光増感剤は、担体分子上のアミノ酸残基または糖分子で担体分子にカップリングしている。
【0077】
好ましくは、アミノ酸残基は、リジン、システイン、チロシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類である。あるいは、糖分子は、ヒドロキシル基を含む糖、アルデヒド基を含む糖、アミノ基を含む糖、及びカルボン酸基を含む糖からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0078】
光感受性物質のリジン残基へのカップリングは一般に直接的であり、上記の接合の方法はまた、他のアミノ酸残基、あるいは光感受性物質部分上の異なる官能基を使用したN-またはO-結合型グリコシル化によるタンパク質に接着した糖分子を介した、光感受性物質の抗体フラグメントへのカップリングにも適用することができる。表4は、これらの残基、及びこのカップリング法で使用することができる他の可能性のあるカップリングの化学反応を一覧表示する。
【0079】
【表4】
【0080】
抗体フラグメントは、アミノ酸配列及び光感受性物質をカップリングする官能基の数及びスペーシングが異なる。接合に最も一般的で使用頻度の高い官能基は、上記のようにN末端及びリジン残基上で見出される第一級アミンである。特定の光感受性物質-抗体フラグメント接合体の有効性の主な決定要因は、光感受性物質の分子が接着している残基の空間的隔離であることを、本発明者らは驚いたことに見出した。これらの残基は、効果的なカップリングと得られた接合体の最適な光物理的性質のために、抗体表面上で別個であり、形態的に分離していなければならない。
【0081】
一般に、タンパク質は折り畳まれ、分子の中央で疎水性コアが形成され、親水性表面は生理的溶媒中で溶解性となることができる。リジン及びアルギニンなどの塩基性残基、グルタミン酸及びアスパラギン酸などの酸性残基、セリン(及び場合によってチロシン)、システイン、グルタミン及びアスパラギンなどの極性残基は、タンパク質表面に一般に見出される。多くの例において、これらの残基は、そのタンパク質の構造及び機能の維持に関与している。
【0082】
単鎖Fvなどの抗体フラグメントの例において、各ドメインは、可変重(VH)及び可変軽(VL)ドメインで構成されている。これらは、VH及びVLドメインの任意のファミリーの1つでありうる。VH及びVL遺伝子のファミリーのアラインメント(図1)は、多くの残基を任意の位置で一般に許容することができることを示す。抗原結合性ループ(相補性決定領域-CDR)の場合、これらの配列は、その同族抗原を認識する抗体の能力に特異的である。これらは抗体の特異性または親和性を変化させるように操作することができるが、単にこれだけの理由である。ドメイン配列の主たる部分は、フレームワーク領域である。図1は、どの領域が抗体の表面にある傾向があり、どの領域がコアの一部として内部にある傾向があるかを示す。抗体間の構造及び配列の高度な相同性を考慮すると、これらの領域は、すべての抗体配列に一般に適用することができる。表面のフレームワーク領域は、均等に離間している荷電残基または極性残基を含有する傾向がある(すなわち、任意の特定の位置で、特定の必要条件がない)。
【0083】
リジン残基を一例として挙げる。これらは通常抗体ドメインの表面に見出される。生殖系列ヒトVH1ファミリーのメンバーの場合、5〜6個のリジン残基があり、これらの1個または2個のみが互いに近接している。残基が他に近接しているという記述は、一次配列において隣接している、従って三次元構造において隣接しているものでありうる。あるいは、残基が一次配列では分離しているが、抗体ドメインの折り畳み構造による空間中で隣接している場合がある。直接的に隣接している残基は、空間において3〜4オングストローム離れていると定義することができる。
【0084】
本発明者らは、光感受性物質の直接的に隣接しているリジン残基へのカップリングは、光物理的消光及びより乏しい光力学的作用(光-免疫接合体の凝集の増加及びより乏しい溶解度など)がもたらされるであろうことを見出した。リジン残基がさらに分離している、好ましくは、2個のアミノ酸だけ隔たって(3.5〜7.5オングストローム)、さらに好ましくは、3個のアミノ酸だけ隔たって(9〜12オングストローム)、さらに好ましくは、4個のアミノ酸だけ隔たって(10〜15nm)、よりさらに好ましくは、5個のアミノ酸だけ隔たって(15〜20nm)、またよりさらに好ましくは、6個のアミノ酸だけ隔たって(20〜25nm)いる場合は、カップリングがより有効である。抗体は、これらの特性を有するように選別し、選択し、または操作すべきである。より最適に分離しているリジン残基を抗体がより多く有するほど、その抗体は、最適な光物理的及び光力学的作用を有する効率的で強力な光-免疫接合体をより形成するようになるであろう。
【0085】
光感受性物質カップリングのためのアミノ酸残基が互いに近接または隣接しているかを決定する方法は、当技術分野で周知である。(http://www.ebi.ac.uk/clustalw/European bioinformatics Instituteなどのウェブ資源を使用した)クラスター配列アラインメントは、一次アミノ酸配列の比較のための確立した手段である。さらに、抗体フラグメントの完全な三次元構造データの非存在下で、既知の構造(例えば、マウスのscFvの構造[89])を使用したホモロジーモデリングなどの確立した技術を使用して、抗体フラグメントの可能性のある構造を推定し、従ってカップリングのための残基が空間で近接または隣接しているかどうかを同定することが可能である。高度な相同性が抗体及び抗体フラグメントによって示されるということは、これらの技術を高度の信頼性を持って適用することができることを意味する。ホモロジーモデリングのためのウェブ資源は、無料のデスクトップのモデリングプログラムSwissPDB Viewerも提供しているSwiss Institute of Bioinformatics(http://us.expasy.org)のExpert Bioinformatics Analysis Systemなどが利用可能である。
【0086】
scFv上のリジン残基のこのような好適な分布の例を、図2において示す(ヒトVH1-VK3由来のscFv)。リジン残基の分布が、接合及び最適な光物理的性質のためにより好適でない場合、部位特異的突然変異誘発などの標準的な分子生物学的技術を使用して、不十分に離間した(密接して配置された)残基を除去し、または十分に離間した残基を導入して抗体フラグメントを変化させうる。
【0087】
上記の概念はまた、リジン以外の他のアミノ酸残基への、またはN-もしくはO-結合型グリコシル化によりタンパク質に接着した糖分子へのスペーシング及びカップリングに適用することもできる。表4では、このような残基及び使用できる可能なカップリングの化学反応を一覧表示する。
【0088】
上記の概念はまた、非抗体をベースとしたリガンドに適用することもできる。アミノ酸スペーシングにも影響されうる光感受性物質を標的とするために使用することのできるリガンドの例を、表5に一覧表示する。
【0089】
【表5】
【0090】
これによって、カップリングした光感受性物質が、光物理的性質、従って良好な光線力学療法機能を保持することをもたらすであろう。リジン残基の多くが一次配列または三次元空間中に隣接している抗体の多くの例がある。分子モデリング及び部位特異的突然変異誘発によって、少なすぎる場合は追加の残基を加え、隣接した残基を除去し、または他の残基との間の距離を増すことによって、これらのリジン残基の位置を操作することができる。
【0091】
これによって、より高い添加(光増感剤:抗体比の増加)及びより強力なPDT効果を達成することができる、光増感剤カップリングをより受け入れやすい抗体フラグメントをもたらす。光物理的性質の増加の1つの間接的測定は蛍光増加である。
【0092】
有利なことには、この化合物は、担体分子にカップリングした光増感剤の機能を調節することができる調節剤をさらに含む。好ましくは、調節剤は、安息香酸;4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸などのアジド基を含有する安息香酸誘導体;並びにアジド部分(N3)を含有する、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン及びクマリンを含めた他の芳香族基またはヘテロ芳香族基の群から選択される。芳香族及びヘテロ芳香族スルフェナートは、上記の芳香族/ヘテロ芳香族基から得た。他の特定の調節剤には、トロロックスなどのビタミンE類似体、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸が挙げられる。
【0093】
好都合なことには、化合物は、視覚化剤、例えば蛍光色素または発光色素をさらに含む(上記を参照されたい)。
【0094】
接合体の好ましい例は、
(a)担体分子がScFvで、光増感剤がピロフェオホルビドaである。
(b)担体分子がScFvで、光増感剤がベンゾポルフィリン誘導体一酸(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))である。
(c)担体分子がScFvで、光増感剤がパラジウム-バクテリオフェオホルビド(TOOKAD(登録商標))である。
(d)担体分子がScFvで、光増感剤がクロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体である。
(e)担体分子がScFvで、光増感剤がメタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan(登録商標))である。
(f)担体分子がScFvで、光増感剤がスズエチオプルプリン(ロスタポルフィン)である。
【0095】
本発明の第4の態様において、標的細胞の破壊を必要としている疾患の治療及び/または予防におけるこの化合物の使用を提供する。
【0096】
標的細胞の破壊を必要としている疾患の診断、治療及び/または予防のための医薬の製造における、この化合物の使用も提供する。
【0097】
好ましくは、治療される疾患は、癌;加齢性黄斑変性症;免疫障害;心血管疾患;及びウイルス、細菌または真菌性感染を含めた微生物感染;BSEなどのプリオン病及び歯肉炎などの口腔/歯の疾患からなる群から選択される。
【0098】
最も好ましくは、治療される疾患は、大腸、肺、乳房、頭頸部、前立腺、皮膚、胃/胃腸、膀胱の癌、及びバレット食道などの前癌性病変である。
【0099】
好都合なことには、疾患の診断は、光増感剤、または蛍光もしくは発光色素などの任意選択の可視化剤の可視化によって行われる。
【0100】
有利なことには、化合物または組成物は、露光の前に患者に投与される。
【0101】
本発明の第5の態様において、本発明の化合物及び医薬として許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0102】
[使用する用語の意味]
「抗体フラグメント」という用語は、抗体、抗体フラグメント、または抗体誘導体の任意の1つを意味すると解釈するものとする。野生型抗体(すなわち、4本のポリペプチド鎖を含む分子);合成抗体;組換え抗体;あるいはこれらに限定されないが免疫グロブリン軽鎖及び/もしくは重鎖可変領域並びに/または定常領域のファージディスプレイにより産生された単鎖修飾抗体分子、あるいは当業者には公知である免疫アッセイフォーマットにおいて抗原に結合することができる他の免疫相互作用分子などの抗体ハイブリッドを包含することを意図している。
【0103】
「抗体誘導体」という用語は、抗体フラグメント(例えば、FabまたはFvフラグメント);あるいは抗体の他のペプチドまたはポリペプチドへの、大きな担体タンパク質への、または固体支持体(例えば、アミノ酸であるチロシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン及びその誘導体、とりわけ、NH2-アセチル基またはCOOH-末端アミド基)へのカップリングを容易にするために、1種もしくは複数のアミノ酸または他の分子を加えることによって修飾された修飾抗体分子などの、当業者には公知である免疫アッセイフォーマットにおいて抗原に結合することができる任意の修飾された抗体分子を意味する。
【0104】
「ScFv分子」という用語は、VH及びVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結している任意の分子を意味する。
【0105】
「ヌクレオチド配列」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチドのヘテロポリマーまたはこれらのヌクレオチドの配列を意味する。これらの語句はまた、一本鎖または二本鎖でもよく、ペプチド核酸(PNA)または任意のDNA様もしくはRNA様物質に対するセンス鎖またはアンチセンス鎖を表してもよい、ゲノムもしくは合成由来のDNAまたはRNAも意味する。本明細書における配列において、Aはアデニン、Cはシトシン、Tはチミン、Gはグアニン、NはA、C、GまたはT(U)である。ポリヌクレオチドがRNAである場合、本明細書において示されている配列中のT(チミン)はU(ウラシル)で置き換えられることが意図されている。一般に、本発明により提供される核酸セグメントは、ゲノム及び短いオリゴヌクレオチドリンカーのフラグメントから、または一連のオリゴヌクレオチドから、または個々のヌクレオチドから構築されてもよく、微生物もしくはウイルスオペロン、または真核生物遺伝子由来の調節エレメントを含む組換え転写ユニット中で発現することができる合成核酸を提供する。
【0106】
「ポリペプチド」または「ペプチド」または「アミノ酸配列」という用語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列またはそのフラグメント、及び天然に存在する分子または合成分子を意味する。ポリペプチド「フラグメント」、「部分」、または「セグメント」とは、少なくとも約5個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも約7個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも約9個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約17個以上のアミノ酸の、1本のアミノ酸残基である。活性であるためには、任意のポリペプチドは、生物学的及び/または免疫学的活性を示すために十分な長さを有さなければならない。
【0107】
「精製した」または「実質的に精製した」という用語は、本明細書で使用する場合、他の生体高分子、例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質などが実質的に存在しない中で、示した核酸またはポリペプチドが存在することを示す。一実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、示した存在する生体高分子の少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%を構成するように精製される(しかし、水、緩衝液、及び他の小分子、特に1000ダルトン未満の分子量を有する分子は存在することができる)。
【0108】
「単離した」という用語は、本明細書で使用する場合、自然源中で核酸またはポリペプチドと共に存在する少なくとも1種類の他の成分(例えば、核酸またはポリペプチド)から分離している核酸またはポリペプチドを意味する。一実施形態では、核酸またはポリペプチドは、(もしある場合は)溶媒、緩衝液、イオン、または同様の溶液中に通常存在する他の成分のみの存在下で見出される。「単離した」及び「精製した」という用語は、その自然源中に存在する核酸またはポリペプチドを包含しない。
【0109】
「組換え」という用語は、ポリペプチドまたはタンパク質について言及するために本明細書において使用される場合、ポリペプチドまたはタンパク質が組換え(例えば、微生物、昆虫、または哺乳動物)発現系に由来することを意味する。「微生物」とは、細菌または真菌(例えば、酵母)発現系中で作製される組換えポリペプチドまたはタンパク質を意味する。産生物として、「組換え微生物」は、本質的に天然内在性物質がなく、関連する天然グリコシル化を伴わないポリペプチドまたはタンパク質と定義される。大部分の細菌培養物、例えば大腸菌で発現したポリペプチドまたはタンパク質は、グリコシル化修飾がないであろうし、酵母で発現したポリペプチドまたはタンパク質は、一般に哺乳動物細胞で発現したものと異なるグリコシル化パターンを有するであろう。
【0110】
「発現ベクター」という用語は、DNA(RNA)配列からポリペプチドを発現するための、プラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターを意味する。発現ビヒクルは、(1)遺伝因子または遺伝子発現において規制的役割を有する因子、例えば、プロモーター及び多くの場合エンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造またはコード配列、並びに(3)適切な転写及び翻訳の開始及び終止配列、のアセンブリーを含む転写ユニットを含むことができる。酵母または真核生物の発現系での使用されるための構造ユニットには好ましくは、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。あるいは、組み換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現している場合は、アミノ末端メチオニン残基を含みうる。この残基は引き続いて、発現した組み換えタンパク質から切断されまたは切断されず、最終産生物を提供しうる。
【0111】
「選択的結合」及び「結合選択性」という用語は、本発明の抗体の可変領域が、もっぱら本発明のポリペプチドを認識し、結合する(すなわち、ポリペプチドのファミリーに見出される配列同一性、相同性、または類似性にもかかわらず、本発明のポリペプチドを、他の同様のポリペプチドと見分けることができる)が、抗体の可変領域外、特に分子の定常領域内の配列との相互作用によって、他のタンパク質(例えば、ELISA技術における黄色ブドウ球菌タンパク質Aまたは他の抗体)とも相互に作用しうることを示す。本発明の抗体の結合選択性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当技術分野で日常的に行われている。このようなアッセイの網羅的な議論のためには、Harlowら(Eds)、Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Chapter6を参照されたい。抗体が何よりもまず、上記で定義したように、本発明の完全長ポリペプチドに選択的であるという条件で、本発明のポリペプチドのフラグメントを認識し結合する抗体もまた意図されている。本発明の完全長ポリペプチドに選択的な抗体と同様に、フラグメントを認識する本発明の抗体は、タンパク質のファミリーに見出される固有の配列同一性、相同性、または類似性にもかかわらず、ポリペプチドを同じファミリーのポリペプチドから見分けることができる抗体である。
【0112】
「結合親和力」という用語は、抗体分子と抗原との間の結合力の意味を含む。
【0113】
「カップリング比」という用語は、1つの担体分子にカップリングした光増感剤の分子数を意味する。
【0114】
「担体分子」という用語は、光増感剤がカップリングする任意の作用剤の意味を含む。特に、担体分子は、それだけに限らないが、抗体フラグメント及び非免疫原性ペプチドが挙げられる小さな化合物でよい。
【0115】
「単官能の光感受性物質」または「単官能の光増感剤」という用語は、活性化され及びカップリングすることができる単一のプロピオン酸側鎖を含有するPPaなどの光感受性物質を意味し、あるいは感受性物質は、当技術分野において公知の化学反応を使用することによって、活性化/カップリングされうる基を有するための保護/脱保護の化学反応によって修飾することができる。
【0116】
「非プロトン性溶媒」という用語は、OH基を有さず、従って水素結合を供与できない溶媒を意味する。
【0117】
[好ましい実施形態]
本発明の特定の好ましい態様を実施する実施例を、下記の図に関連してこれから説明する。
【0118】
[材料]
すべての化学物質は、記述がない限りSigma-Aldrich UKから購入した。PPaはFrontier Scientific、UKからのもの、C6.5 scFvはProf.Marks(University of California、San Francisco、USA)から譲渡され、MFE-23scFvはDr Chester(Royal Free Hospital、University College London、UK)から譲渡され、HuBC-1 scFvはAntisoma Research Ltd(London、UK)から譲渡された。分子生物学試薬及び細菌はStratageneからのもの、ヒト細胞系はECACC、UKから、クロマトグラフィー充填剤はAmersham Biosciences、UKから、マウスはHarlan、UKから、光源はPhototherapeutics、UK及びHigh Powered Devices、New Jersey、USAからであった。
【実施例】
【0119】
<実施例1:抗Her2scFvの調製>
1.選択され特徴がはっきりした、抗癌scFv、例えばc6.5(抗Her2)をPCR増幅し、NcoI/NotIフラグメントとして細菌発現ベクター(例えば、pET20b、Novagen)にクローニングし、pETC6.5 scFvを作製した(図3)。
2.塩化カルシウム法により、ベクターpETc6.5 scFvを大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換し(Sambrookら、1990)、アンピシリン100mg/mlを含有する2TY寒天プレート上に播いた(Sambrookら、1990)。単一のコロニー形質転換体を採取し、アンピシリンを含有する新鮮な2TY寒天プレート上に再び筋状に並べた。
3.単一のコロニーを採取し、振盪培養器(250rpm)中でアンピシリン100mg/mlを含有する2TY培地5ml中、8〜16時間30℃で増殖させた。次いでこの培養物を使用して、アンピシリン100mg/mlを含有する2TY培地500mlの培養物を接種し、さらに3〜16時間同様の条件下で増殖させた。
4.培養上清を収集し、30KDaカットオフ膜を有するAmicon限外濾過攪拌セルを使用して、10mlの最終容量に濃縮した。あるいは、細菌ペリプラズムを、10mlの容量でスクロース浸透圧ショック法を使用して調製することができる。
5.濃縮上清またはペリプラズム抽出物を、0.5MのNaCl及び2mMのMgCl2を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5Lに対し16時間透析した。次いでこれを銅(II)またはニッケル(IΙ)を充填したキレートセファロースカラム(Amersham-Pharmacia Biotech)に加え、例えば[14]に記載されているように、金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。組み換えタンパク質は、40〜150mMのイミダゾールでイミダゾール勾配によって溶出した(図4)。
6.溶出した融合タンパク質を、PBS中で平衡化したsuperdex-75カラム(Amersham-Pharmacia Biotech)で、ゲル濾過によりさらに精製する。得られたタンパク質を、c6.5 scFvと称する。
【0120】
<実施例2:PPaスクシンイミジルエステルの調製(図5)>
1.乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビドa(50mg、0.094mmol)の光から保護された溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
2.12時間攪拌した後、沈降したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上で精製した(Rf0.66)。
3.単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステル(1)を70%の収率で得た。MS(FAB+)631(M+、100%)。
4.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
【0121】
<実施例3:c6.5 scFvのPPaへの接合-溶媒系1>
1.次いで、100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
2.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図6)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
3.例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000159g/mlの場合、0.0000159g/ml中のPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のC6の分子数は、2×1015であった。従って、PPa:C6.5の比は8:1であった。
【0122】
<実施例4:MFE-23(抗CEA)scFvのPPaへの接合-溶媒系2>
1.MFE-23のストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで、ピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、DMSO 1.58mMのストック溶液からMFE-23に、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対し一晩透析した。
3.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図7)。410nmの吸光度値を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000129g/mlの場合、0.0000129g/mlのPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のMFEの分子数は2×1015であった。従ってPPa:MFE-23の比は6:1であった。
【0123】
<実施例5:PB1スクシンイミジルエステルの調製(図8)>
1.光から保護されたPB1の安息香酸誘導体(20mg、0.01136mmol)の無水THF溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(2mg、0.017mmol)、次いでジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.5mg、0.017mmol)を加えた。12時間攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによってTHF(Rf0.79)で溶出するシリカゲル上で精製し、所望の化合物(2)を濃緑色の固体として65%の収率で得た。MS(FAB+)1860(M+2、80%)。
【0124】
<実施例6:c6.5 scFvのPB1への接合-溶媒系1>
1.C6.5ストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで100%DMSO中で作製したPB1([94]を参照されたい)を、1.58mMのストック溶液からC6.5に、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPB1を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
3.接合体の分析。接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。460nmの吸光度値を測定し、PB1の検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
【0125】
<実施例7:BA調節物質のscFvまたはscFv-PPa接合体へのカップリング>
1.MFE-23ストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 690.8μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。
2.溶液を攪拌し、DMSOに溶解したベンゾイルスクシンイミジルエステル(安息香酸をN-ヒドロキシスクシンイミド及びDCCと乾燥ジクロロメタン中で反応させることにより調製)0.491μMの溶液15.2μlを加えた(16当量の安息香酸を得た)。溶液を室温で30分間攪拌し、次いで連続して攪拌しながらフラスコを氷上で冷却した。
3.次いで、1.58mMのストック溶液から100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
4.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図7)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000129g/mlの場合、0.0000129g/ml中のPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のMFEの分子数は2×1015であった。従ってPPa:MFE-23の比は6:1であった。
【0126】
<実施例8:HuBC-1 scFvのPPaへの接合(PDTのための乏しいscFv)>
1.乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビドa(50mg、0.094mmol)の光から保護された溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、次いでジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
2.12時間攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した(Rf0.66)。
3.単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステル(1)を70%の収率で得た。MS(FAB+)631(M+、100%)。
4.HuBC-1 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
5.次いで、100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からHuBC-1 scFvに、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
6.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図9)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
7.410nmの低い吸光度ピークは、PPAカップリングの程度を決定することが可能でなかったことを意味する。
【0127】
<実施例9:C6.5 scFvのクロリン(e6)への接合>
1.光から保護されたクロリンe6(0.00184mmol)の無水DMF溶液に、等モル量のN-ヒドロキシスクシンイミド及びジシクロヘキシルカルボジイミドの両方を加え、混合物を12時間アルゴン下で攪拌した。
2.得られた混合物を氷水中で短時間冷却し、次いで濾過し、ジシクロヘキシル尿素副生成物を除去し、乾燥するまで蒸発させて、クロリンe6スクシンイミジルエステルを濃緑色の固体として得た。
3.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
4.次いで100%DMSO中で作製したクロリンe6スクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のCe6を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
5.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図10)。410nmの吸光度を測定し、Ce6の検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
6.例えば、カップリング反応中に見出されるCe6の濃度が0.000034g/mlである場合は、0.000034g/ml中のCe6の分子数は3.43×1016であった。100μg/mlのC6の分子数は2×1015であった。従ってCe6:C6.5の比は9:1であった。
【0128】
<実施例10:C6.5 scFvのPPaヒドラジン誘導体への接合>
1.PPaのヒドラジド誘導体の調製。ピロフェオホルビドaのプロピオン酸側鎖を、標準文献による手順によって塩化アシルに変換した(DCM中の塩化オキサリル)。酸クロリドを粘着性の緑色の残渣として得て、さらなる精製をせずに使用した。
2.酸クロリドの無水DCM溶液を、無水DCM中の過剰の98%ヒドラジンに1滴ずつ加え、反応をTLCによりモニターし、1時間未満で終了した。過剰な溶媒及び試薬を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィーにより精製した。次いで、PPaヒドラジドのストック溶液をDMSO中で作製した。
3.scFv、例えばC6.5を、下記のように糖鎖を持つように操作した。部位特異的突然変異誘発を使用して、scFvの表面にわたってN-結合型グリコシル化部位を、リジン残基スペーシングですでに説明した概念に従って、すべて十分に離間した位置で組み込んだ。このクローンを、グリコシル化を行うことのできる宿主細胞のために適切な発現ベクター(例えば、ピキアパストリス酵母中で発現するためのpPICベクター)中に入れた。
4.scFvを発現させ、メーカーの指示に従ってNTA-ニッケルクロマトグラフィーを使用して精製した。
5.誘導体化されたPPaを、グリコシル化scfv上のアルデヒド残基にカップリングさせた。アルデヒド残基へのカップリングは、ヒドラゾン結合の形成と共に緩衝化した環境において迅速に進行する。
【0129】
<実施例11:scFV-PPa接合体の光物理的特性決定>
1.接合体の段階希釈(半減濃度)をPBS中で行い、蛍光を410nmの励起波長及び680nmの放射波長で測定した。
2.これらをPBS中の遊離PPaと比較した。c6.5 scFv-PPa(図11)及びMFE scFv-PPA(+/-安息香酸)の例を示す(図12)。
【0130】
<実施例12:scFV-PPa及びscFv-PPa/BA接合体の生化学的特性決定>
1.抗CEA scFv-PPa分子のin vitroでの結合特性を、ELISA(Lane、1990)により、または開示された方法Lipschultzら「Experimental Design For Analysis of Complex Kinetics Using Surface Plasmon Resonance」Methods(2000)20、3180を使用してBIACore表面プラズモン共鳴により行い、非修飾scFvと比較した。scFv-PPa/BAの細胞結合もまた、共焦点蛍光顕微鏡検査法であるFluorescently Activated Cell Sorting(FACS)によって決定することができる非修飾タンパク質と比較することができる。
2.一例として、96ウェルELISAプレートを、PBS中の癌胎児性抗原(CEA)1μg/mlでコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートをPBS-0.1%tween中で3回、及びPBSで3回洗浄した。
3.次いで、ELISAプレートを、ブロッキング緩衝液(PBS-0.1%tween中の10%Marvel(登録商標))中で60分間37℃にてインキュベートした。
4.ブロッキング緩衝液をウェルから除去し、100〜1.9×104μg/mlからのMFEの半減希釈を得るようにブロッキング緩衝液中で希釈した50μlの接合体または非接合体化MFEを、各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし、ウェルを上記のように洗浄した。
5.一次抗体(50μl、ウサギ抗MFE、1:40000にブロッキング緩衝液中で希釈)を、各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし洗浄した。
6.二次抗体(50μl、抗ウサギ・ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合体、1:10000にブロッキング緩衝液中で希釈)を各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし洗浄した。BMブルー(50μl)を各ウェルに加え、青色が発色するまで暗中室温でインキュベートした。
7.0.5Mの塩酸50μlを加えることにより反応を止めた。次いで、試料を460nmで読み取った(図13)。
【0131】
<実施例13:c6.5 scFv-PPa接合体のin vitro細胞毒性>
1.in vitro細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例では、LoVo及びLS17T)を、75cm2フラスコ中で、37℃、5%CO2、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中に保持した。SkoV3細胞には、使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したMcCoy5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で、15分間、または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブ中に入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシン不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、室温で10分間1800g収集し、DMEMまたはマッコイ培地1ml中でペレットを穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、DMEMまたはマッコイ培地のさらなる19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で結果的に希釈し、2×106細胞/mlとした。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいC6.5濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが光に曝さないウェル、及び接合体を加えず光にも曝さないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変化しない限り「光のみ」の対照は含めない。
5.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
6.PBSを各ウェルから除去し、DMEMまたはマッコイ培地100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
7.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを使用して(Promegaプロトコルに従って)行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、37℃で暗中60分間インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で490nmにて測定した。
8.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図14)。
【0132】
<実施例14:MFE scFv scFv-PPa/BA接合体のin vitroでの細胞毒性>
1.in vitroでの細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例において、LoVo、LS17TまたはSkov3)を、75cm2フラスコ中、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中で、37℃、5%CO2に維持した。SkoV3細胞のために使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したマッコイ5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で15分間または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブに入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシンを不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、10分間室温で1800g収集し、ペレットをDMEMまたはマッコイ培地1ml中で穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、さらにDMEMまたはマッコイ培地19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で希釈し、結果的に2×106細胞/mlを得た。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいMFE濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが光に曝さないウェル、及び接合体を加えず光にも曝さないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変化しない限り「光のみ」の対照は含めない。
5.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
6.PBSを各ウェルから除去し、DMEM100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
7.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを(Promegaプロトコルに従って)使用して行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、60分間37℃で暗中インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で490nmにて測定した。
8.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図15)。
【0133】
<実施例15:scFv-PPa接合体のin vivoターゲティング>
1.in vivoでの腫瘍根絶を下記のように決定することができる。約1×107SKOV-3細胞を、ヌードBALB/Cマウスの側腹部にs.c.注射し、腫瘍を4〜6週間定着させた。
2.10〜50μgの125-ヨウ素放射性標識した(Iodogen法、Pierce Chemical Co.を使用)scFv-PPaを、腫瘍担持マウスの尾静脈にi.v.注射し、1〜48時間にわたり腫瘍に集積させた。
3.分析した各時点からの3匹以上のマウスの群を終末麻酔の下で処分し、解剖し、腫瘍、血液及び様々な臓器をscFv-PPa取込みについて分析した。PPa単独及びscFvでの対照実験を行う。
4.一例として、c6.5-PPaの腫瘍ターゲティングを、scFv及びPPa単独と比較して図16に示す。親水性scFvに接着した後は、疎水性光感受性物質の血液循環時間は減少が見られた(図17)。
【0134】
<実施例16:scFv-PPa接合体のin vivo光線力学療法>
1.in vivo腫瘍根絶を下記のように示すことができる。約1×107SKOV-3細胞を、ヌードBALB/Cマウスの側腹部にs.c.注射し、腫瘍を4〜6週間定着させる。
2.50〜200μgのscFv-PPaを、腫瘍担持マウスの尾静脈にi.v.注射し、12〜24時間にわたり腫瘍に集積させる。
3.腫瘍:正常臓器比が高い時(5:1以上、例えば16時間)に、光を2.4W/cm2で腫瘍に照射する。
4.カリパーを使用して腫瘍の大きさを測定し、生理食塩水のみで処置したマウスと比較する。腫瘍をPDT誘発ネクローシスについて観察した(図18)。
【0135】
<実施例17:光感受性物質カップリングのために最適化された官能基を有するためのscFv(例えば、HuBC-1)の操作>
1.実際には非常に乏しい光物理的性質(蛍光、一重項酸素生成及びin vitroの光細胞毒性など)を示すことが示されてきたscFvを、一次構造及び三次構造レベルで分析する。これは、光感受性物質へのカップリングまたは三次元構造の検査のために良好なものであると知られているscFvへのアミノ酸アラインメントによって行うことができる。
2.活性化した光感受性物質とのカップリングに使用される残基、例えばリジン残基を同定する。
3.一次配列において、または三次元モデル(または実際の構造)から位相的に互いに隣接したものを、部位特異的突然変異誘発によって操作する。変更は、最適に離間したリジン残基の導入、他に近すぎるリジンの除去、または不用なリジンと他の同様ではあるが(アルギニンまたはグルタミンなどの)接合が可能でない残基との置換の場合がある。
4.この実施例において、抗フィブロネクチンscFv HuBC-1をc6.5に整列させ、リジン位置を同定した。リジン位置がむしろc6.5に見出されるものに近いものに変更された(図19)、6つの変化が同定された(図10)。
5.同定された各々の可能性のある変更(この実施例では全部で6)は、抗体遺伝子中の単一の変異として抗体フラグメントにおいて生じる。Stratagene Quick Change(登録商標)システムを使用して突然変異誘発を行った。
6.抗体特性のいずれかが突然変異誘発によって変化または破壊されているかどうかを確かめるために、(4)からの各変異抗体を試験する。宿主細胞(例えば、大腸菌)中の抗体タンパク質の発現、精製、(ELISA及びBIACore表面プラズモン共鳴による)抗原結合性、(ELISA、FACS及び免疫顕微鏡観察による)細胞結合、安定性アッセイ(温度、尿素が誘発するアンフォールディング及び血清安定性)をすべて行う。
7.抗体の安定性及び機能を有意に変化させない変異を保持し、有害な変異を捨てる。
8.すべての変異を、1つの抗体遺伝子に組み合わせ最適化した光感受性物質カップリングのための新たに配置されたリジン残基を有するタンパク質を形成する。
9.この抗体を実施例1〜11におけるように使用して、抗体-光感受性物質接合体を作製する。
【0136】
<実施例18:scFv-光感受性物質接合体による抗微生物ターゲティング>
1.特徴がはっきりした抗微生物抗体を、実施例1(上記)で記載したものと同じ技術を使用してクローニングし、発現させ、精製する。
2.実施例2〜5(上記)に記載したように、光感受性物質を接着させる。
3.抗菌の細胞殺滅。初めに、多数の細菌種に対する多数の光感受性物質接合体を選別する迅速な方法を行った。細菌の一晩培養物を遠心分離により収集し、PBS中に再懸濁させた。細菌培養物(1ml)を寒天プレートに広げ、30分間乾燥させた。
4.この後、光感受性物質5μlを広げた細菌の上に置き、レーザーダイオードからの光に2分間曝した(35mW、675nm)(エネルギー密度=1.4J/cm2)。プレートを一晩37℃でインキュベートした。
5.翌日、光感受性物質接合体及び光を施用した場所以外は、プレート上に細菌の菌叢が増殖しているはずである。細菌増殖がここで起こっていることが見出された場合は、対応する光感受性物質接合体はさらに調査しなかった。成功したことが見出されたそれらの光感受性物質接合体/細菌の組合せを、下記のようにさらに分析した([93、94]からの改良した方法)。
6.細菌の一晩培養物を収集し、PBS中で再懸濁させた。細菌の一定分量(100μl)を採取し、24ウェルプレートのウェルに加えた。次いで、連続希釈した光感受性物質接合体l00μlを、3通り各ウェルに加えた。特定の時間(通常1〜30分間)懸濁液を攪拌し、その後細菌を遠心分離により収集し、PBSまたは0.15MのNaClで4回洗浄した。細菌ペレットをPBSまたは0.15MのNaCl中で再懸濁させ、24ウェルプレートに入れた。次いで、ウェルをレーザーダイオードからの光に曝した(エネルギー密度=1.4J/cm2)。すべての懸濁液を各ウェルから取り出し、2TYブロス中で連続希釈した。一定分量(25μl)を各希釈物から取り出し、寒天プレートの半分に置いた。次いで、懸濁液を寒天プレートの半分に広げて、プレートを一晩37℃でインキュベートした。
7.翌日、プレート上にあるコロニーの数を数えた(すなわち、20〜200コロニーを有するプレート)。次いで、光感受性物質がないまたは光による処理をしない懸濁液からのコロニーと比較して、細菌の細胞生存を計算した。
【0137】
<実施例19:C6.5 scFv-PPaを有するSKOV3細胞の細胞イメージング>
1.円形のカバーガラスをエタノール中で洗浄し、PBS中でそそいだ。次いで、カバーガラスを12ウェル組織培養プレート中に置いた。
2.SKOV3細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄した。細胞ペレットをマッコイ培地中で再懸濁させ、細胞をカバーガラス上に2×105細胞/mlで播いた。細胞を、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
3.接着細胞が付いたカバーガラスを、PBS中で注意深くそそぎ、C6-PPaまたはPBSをウェルに加えた。細胞を、37℃及び5%CO2で30分間インキュベートし、その後それらをPBSで注意深くそそいだ。
4.細胞を、4%パラホルムアルデヒド2ml中で60分間室温にてインキュベートすることによって、カバーガラス上に付けた。この後、カバーガラスをPBSで洗浄し、セルを横にしてスライドガラス上に反転させた。次いで、マニキュア液を使用してカバーガラスの端を密封した。
5.次いで、Leicaレーザー走査共焦点顕微鏡を使用して、励起光源としてAr+レーザー(418nm)を使用して蛍光イメージングを行った。画像を図20及び24に、放出スペクトルを、図21及び24に示す。
【0138】
図24a及び24eは各々、図24b及び24fにおける対応する各々の発光スペクトルを有する遊離PPaと同じ量でインキュベートしたHER-2陰性及びHER-2陽性細胞系を示す。画像及び発光スペクトルは、KB細胞はSKOV3細胞より2倍超PPaを取り込むことを示す。図24c及び24gは、C6-PPa(図24a、b、e、fと同量のPPa)と共にインキュベートしたHER2陰性及び陽性細胞系を示し、対応する発光スペクトルを図24d及び24hに示す。
【0139】
C6.5 scFvは、KB細胞で観察されるPPaの放射波長と関連しない非常に弱い蛍光を有するPPaターゲティングに明瞭に影響を与えた。しかし、強力なPPaをベースとした蛍光がSKOV3細胞系に見られる。透過重層(図24i及び24j)は、PPaが点状のエンドソーム様染色と共に細胞の至るところに広がっていることを、より明確に示す。
【0140】
<実施例20:C6.5と比較したFl、GP6及びD1.3抗体接合体>
Fl及びGP6(抗ヒト胎盤アルカリホスファターゼ)及びD1.3(31)を、pHEN2で発現させた。すべてのscFvの発現及び精製は、C6.5のための上記と同様であった。
【0141】
ピロフェオホルビド-a光感受性物質のscFvへのカップリング
ピロフェオホルビド-aスクシンイミジルエステルを、下記のようにscFvへのカップリングのために合成した。光から保護した乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビド-a(50mg、0.094mmol)の溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
【0142】
12時間(室温で)攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した(Rf0.66)。単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なスクシンイミジルエステルを70%の収率で得た。
【0143】
ピロフェオホルビド-aスクシンイミジルエステルを、100%DMSO中で再懸濁させ、6%アセトニトリルを含有するPBS中で52.8mM〜3.3mMの濃度でMFE-23、C6.5またはHuBClを40℃で30分間連続攪拌しながら加えた。次いで光-免疫接合体(PIC)を、1つの緩衝液を変更したPBSに対して透析した。
【0144】
C6.5、Fl、GP6及びDl.3の比較のために、すべてのscFvの中で最も乏しい発現をしたGP6と同じになるようにすべてのscFvの濃度を調節した。scFvを0.3mMの濃度でPPaにカップリングさせた。カップリング前にタンパク質の沈殿はなく、scFv-PPa接合体は、0.5mg/ml以下の濃度で可溶性を保持した。
【0145】
上記でC6.5のために説明したようにSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色した。非染色ゲルを、セミドライブロッティング装置(Biorad)を使用して、ニトロセルロース上に移し、穏やかに乾燥させた。
【0146】
短波長UV-トランスイルミネーターのブロット上でPPaを励起させることにより蛍光を可視化した。Ppa:scFv比を決定するための計算の一例として、PPa65mg/mlの吸光度は、670nmで1AUである。従って、0.2AUは、PPa13mg/mlと等しく、これは2.4×10-5MのPPa(MW=535)と等しい。これは、1.7×10-6M(MW=30,000)と等しい50mg/mlの濃度でscFvにカップリングしていることが見出された(図1Bを参照されたい)。比は、14.1:1ということになり、これは30%非共有結合を補正した後は9.9:1となる。
【0147】
[結果]
100%DMSO及びPBS/1.9%DMSO中の遊離PPaの吸光度プロファイルを図22Aに示す。両方とも、400nm付近で特徴的なピーク(Soretピーク)、500〜630nmでより小さいピーク、及び670nmでQ帯を示す。図22Bは、PPaにカップリングしたC6.5 scFvのプロファイルを示す。ピークは鋭さを残し、遊離PPaのピークと同様である。PPaの濃度を決定するために670nmでの吸光度を使用して、PPa:scFv比を計算するために使用し、これは11.92±1(5つの別個のカップリング反応の平均)であった。これによって、少量(30%)の非共有結合を補正した後、効率的な比である約8:1が出る。MFE scFvに接着した場合のPPaのプロファイルを図22Cに示す。
【0148】
良好なカップリング比を得るのに重要なそれらの要素を理解するために、4つの他のscFvをPPaにカップリングした(図22D)。D1.3scFv-PPaは、C6.5 scFvによって例示される「理想的な」吸光度パターンに近く、F1 scFv-PPaは、やや効率的ではない。
【0149】
しかし、GP6 scFv-PPa及びHuBC-1 scFv-PPaは、広がったピークを有する乏しいプロファイルを示し、これは凝集の可能性を示す。すべてのscFvカップリング試験のPPa:scFv比を表6に示す。
【0150】
【表6】
【0151】
この研究において使用されたscFv配列アラインメント(図26)によって、再現性のあるカップリング及び良好な一重項酸素収率を実現するC6.5は、より乏しいPIC(HuBC-1、GP6及びFl)となるscFvと比較して、空間的に分離していることが予測されるリジンをより有することが明らかになった。
【0152】
<実施例21:ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルの調製(図27)>
Scherrerら(1986)J.Org.Chem.51:1094〜1100に記載されているように、ベルテポルフィンを得た。
1.ベルテポルフィンスクシンイミジルエステル(図27、化合物「b」)を、PPaで説明したように調製した。光から保護されたベルテポルフィン(6mg)の乾燥THF(5ml)溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(3mg)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、6mg)を加えた。
2.反応混合物を12時間室温で窒素下攪拌し、この時点ですべての出発物質が消費された。
3.溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製し、DCM中の溶液として充填し、酢酸エチル(Rf0.74)で溶出し、75%の収率で純粋なベルテポルフィンスクシンイミジルエステルを得た。MS(FAB+)832(M+)。
4.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
【0153】
<実施例22:c6.5 scFvのベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))への接合-溶媒系1>
1.次いで、100%DMSO中で作製したベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
2.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。410nmの吸光度を測定し、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の検量線と比較することによって、PSの濃度(g/ml)を決定した。
【0154】
<実施例23:MFE-23(抗CEA)scFvのベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))への接合-溶媒系2>
1.MFE-23のストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルを、DMSO 1.58mMのストック溶液からMFE-23へ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、PBS 5Lに対して4℃で暗中一晩透析した。
3.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。410nmの吸光度を測定し、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の検量線と比較することによって、PSの濃度(g/ml)を決定した。従ってベルテポルフィン(Visudyne(登録商標)):MFE-23の比は、8:1〜10:1であった。
【0155】
<実施例24:scFV-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体の光物理的特性決定(図28)>
1.接合体の段階希釈(半減濃度)を、PBS中で行い、吸光度を690nmの励起波長及び680nmの放射波長で測定した。
2.これらをPBS中の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))と比較した(図28)。
【0156】
<実施例25:c6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体のin vitro細胞毒性(図29)>
1.in vitroでの細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例において、SKOV3細胞を抗原陽性細胞として使用し、KB細胞を抗原陰性細胞として使用した)を、75cm2フラスコ中、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中で、37℃、5%CO2に維持した。SKOV3細胞のために使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したマッコイ5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で15分間または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブに入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシンを不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、10分間室温で1800g収集し、ペレットをDMEMまたはマッコイ培地1ml中で穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、さらにDMEMまたはマッコイ培地19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で希釈し、結果的に2×106細胞/mlを得た。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいC6.5濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが、光に曝していないウェル、及び接合体を加えず、光にも曝していないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変わらない限りは「光のみ」の対照は含めない。
6.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
7.PBSを各ウェルから除去し、DMEMまたはマッコイ培地100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
8.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを使用して(Promegaプロトコルに従って)行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、37℃で暗中60分間インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で690nmにて測定した。
9.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図29)。
【0157】
結果:IC50は下記の通りである。
SKOV3細胞上のC6.5-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体=2.2μM
KB細胞上のC6.5-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体=28.1μM
SKOV3細胞上のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))=15.3μM
KB細胞上のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))=10μM
【0158】
従って、C6.5 scFvを使用して標的されると、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))は、7倍強力となり、13倍特異的となる。
【0159】
<実施例26:製剤及び投与>
本発明のさらなる態様は、医薬もしくは動物用医薬として許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、本発明の第1の態様による化合物を含む製剤を提供する。
【0160】
製剤は、活性成分の1日用量もしくはユニット、1日の部分用量、またはその適切な画分を含有する単位用量であることが好ましい。
【0161】
本発明の化合物は、任意選択で無毒性の有機もしくは無機の酸、または塩基、付加塩の形態で、医薬として許容される剤形の、活性成分を含む製剤の形態で、経口または任意の非経口経路によって通常投与されるであろう。治療される疾患及び患者、並びに投与経路によって、組成物は様々な用量で投与されうる。
【0162】
ヒトの治療において、本発明の化合物は、単独で投与することができるが、意図する投与経路及び標準的な薬務によって選択された適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して一般に投与されるであろう。
【0163】
例えば、本発明の化合物は、即時、遅延または制御放出用途のために、香味剤または着色剤を含有してもよい、錠剤、カプセル剤、腔坐剤、エリキシル剤、溶剤または懸濁剤の形態で、経口、口腔または舌下に投与することができる。本発明の化合物はまた、海綿静脈洞内注入によっても投与しうる。
【0164】
このような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリジンなどの賦形剤;デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤;並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアなどの顆粒化結合剤を含有しうる。
【0165】
さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクなどの潤滑剤が含まれうる。
【0166】
同様のタイプの固体組成物もまた、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用しうる。これに関しては好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液及び/またはエリキシル剤には、本発明の化合物を、様々な甘味剤または香味剤、着色剤または色素、乳化剤及び/または懸濁化剤、並びに水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンなどの希釈剤、並びにこれらの組合せと混合しうる。
【0167】
本発明の化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいは注入技術によって投与しうる。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有しうる滅菌水溶液の形態の使用に最も適している。水溶液は、必要に応じて適切に緩衝化(好ましくは、3〜9のpHに)されるべきである。無菌状態下での適切な非経口製剤の調製は、当業者には周知の標準的な製薬技術によって容易に行われる。
【0168】
非経口投与に適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤及び意図したレシピエントの血液と等張である製剤とする溶質を含有しうる水性及び非水性の滅菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプル及びバイアル中にあってもよく、使用直前に注射のために、滅菌液体担体、例えば水を加えることだけが必要なフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保存してもよい。即時調合注射液及び懸濁液を、上記で説明した種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製しうる。
【0169】
ヒト患者への経口及び非経口投与のために、本発明の化合物の1日投与量レベルは、通常1mg/kg〜30mg/kgであろう。従って、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、投与のために必要に応じて1回につき単独または2種類以上の活性化合物の用量を含有しうる。医師であれば、いずれにしても任意の個々の患者に最も適切であり、特定の患者の年齢、体重及び反応によって変化するであろう実際の投与量を決定するであろう。上記の投与量は、平均のケースの例示である。当然ながら、より高いまたはより低い投与量が値する個々の例がある場合があり、これも本発明の範囲内である。
【0170】
本発明の化合物はまた、鼻腔内または吸入により投与することもでき、好都合なことには、ドライパウダー吸入器またはエアゾールスプレー形の形態で、加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器から、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン;1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134A3)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA3)などのヒドロフルオロアルカン;二酸化炭素または他の適切なガスを使用して送達される。加圧エアロゾルの場合、計量した量を送達するための弁を設けることによって投与単位を決定しうる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば、エタノール及び噴射剤の混合物を溶媒として使用した活性化合物の溶液または懸濁液を含有しうるが、これには滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含有しうる。吸入器または注入器で使用するための(例えば、ゼラチンから作製した)カプセル及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末混合物、及びラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含有するように製剤しうる。
【0171】
アエロゾルまたは乾燥粉末製剤は好ましくは、患者に送達するために、各計量した用量または「ひと吹き」が、本発明の化合物の適切な用量を送達するように用意される。アエロゾルによる全体的な1日用量は患者毎に変化し、1日を通して、単回用量で、またはより通常には分割用量で投与しうることを理解されたい。
【0172】
あるいは、本発明の化合物は、坐薬またはペッサリーの形態で投与することができ、またはローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏または散布剤の形態で局所的に施用しうる。本発明の化合物はまた、例えば、皮膚パッチの使用によって経皮的に投与しうる。それらはまた、特に目の疾患の治療のために眼の経路によっても投与しうる。
【0173】
眼への使用には、本発明の化合物は、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存料と任意選択で組み合わせて、等張のpH調節した滅菌生理食塩水中の超微粉砕した懸濁液として、または好ましくは、等張のpH調節した滅菌生理食塩水中の溶液として製剤することができる。あるいは、それらはペトロラタムなどの軟膏として製剤しうる。
【0174】
皮膚への局所的施用のために、本発明の化合物は、例えば下記の1種または複数の混合物中に懸濁した、または溶解した活性化合物を含有する適切な軟膏として製剤することができる。鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水。あるいはそれらは、例えば下記の1種または複数の混合物中に懸濁した、または溶解した適切なローション剤またはクリーム剤として製剤することができる。鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水。
【0175】
口腔内への局所投与に適した製剤には、香味を付けた基剤、通常スクロース及びアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシアなどの不活性な基剤中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0176】
一般に、ヒトでは、本発明の化合物の経口または局所投与は、最も便利であり好ましい経路である。レシピエントが、嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の障害を患っている状況では、薬物は非経口的に、例えば舌下にまたは口腔内に投与しうる。
【0177】
獣医学の使用のために、本発明の化合物は、通常の獣医学診療に従って適切に許容できる製剤として投与され、獣医であれば特定の動物に最も適切であろう投与計画及び投与経路を決定するであろう。
【0178】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】リジン残基をボールド体で強調したヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子のアラインメント。ヒトVH-1などの特定のファミリーは、それらに由来するscFv(または他の抗体フォーマット)を、光感受性物質カップリングに対してより効果的にする、より分離し、好適に分離したリジン残基を含有する。FR=フレームワーク、CDR=相補性決定領域、Locus=遺伝子座。
【図2】天然リジン残基を黒で強調した、ヒトVH1-VK3ファミリーからのscFvの構造の表示。リジン残基は、効率的な光増感剤カップリング及び良好な光物理的性質のために都合よく配置されている。
【図3】scFvのpET発現系へのクローニング。
【図4】塩化ニッケル装填樹脂を使用した金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によるC6.5の精製。C6.5を250mMのイミダゾールを使用してカラムから溶出した。レーン4は、カラムから溶出され、スピンカラムを使用して5倍に濃縮したC6を示す。
【図5】PPaスクシンイミジルエステルの調製。
【図6】PBS緩衝液中のPPaに接合したC6.5 scFv(太線)及び遊離PPa(細線)の吸光度プロファイル。実施例で説明したように、PPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。
【図7】PBS緩衝液中のPPa及びPPa/安息香酸(Ba)及び遊離PPaに接合したMFE-23scFvの吸光度プロファイル。実施例に記載しているようにPPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。
【図8】PB1スクシンイミジルエステルの調製。
【図9】PPaに接合したHuBC-1 scFvの吸光度プロファイル。実施例に記載しているようにPPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。HuBC-1の乏しい構造によって、C6.5 scFvと比較してscFv-PPa接合体の乏しい吸光度特性がもたらされる。
【図10】ピロフェオホルビド-a及びクロリンe6光感受性物質にカップリングしたC6.5 scFvの吸光度プロファイル。
【図11】PBS緩衝液中で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-PPa接合体及び遊離PPaの蛍光プロファイル。遊離PPAは、水性緩衝液中で有意に蛍光発光しないが、scFvと接合すると良好な光物理的性質を保つ。
【図12】PBS緩衝液で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-PPa、MFE-23scFv-PPA及びNFE-23scFv-PPa/Ba(安息香酸)接合体の蛍光プロファイル。遊離PPAは、水性緩衝液中で有意に蛍光発光しない(図7)が、scFvと接合すると良好な光物理的性質を保つ。C6.5 scFvは、MFE-23scFvよりも、蛍光(従って、一重項酸素生成を含めた光物理)を保持するのに優れている。
【図13】MFE-23scFv、MFE-23scFv-PPa及びMFE-23scFv-PPa/BaのCEA抗原ELISA。カップリングにあたり結合親和力のわずかな減少が観察される。
【図14】抗原陽性細胞(SKOV-3)及び抗原陰性細胞(LS174T)上のC6.5 scFv-PPaのin vitroでのPDT細胞殺滅。
【図15】抗原陽性細胞(LS174T)及び抗原陰性細胞(SKOV-3)上のC6.5 scFv-PPaのin vitroでのPDT細胞殺滅。
【図16】SKOV-3ヒト腫瘍異種移植モデル中の、24時間後のC6.5-PPa接合体と比較したC6.5 scFvのin vivoでの腫瘍:血液比(上)、及び24時間後の腫瘍取込み率(下)。
【図17】ヌードマウスにおけるscFv及びscFv-Ppa接合体のin vivoでの薬物動態(血液クリアランスプロファイル)。
【図18】腫瘍担持ヌードマウスのin vivoでのPDT治療は、ヒトSKOV-3異種移植腫瘍のネクローシスをもたらす。左パネル:C6.5単独+光、右パネル:C6.5-PPa+光。
【図19】HuBC-1を有するC6.5(VH1-VK3scFv)などの最適な「PDT」scFvのアラインメントは、突然変異誘発によって生じさせることができる変化を示す。より好適な光感受性物質カップリング特性を有するHuBC-1 scFv(BC-l-mut)をもたらすことのできるこれらの6つの変化が生じる。これらの変化は、K13Q、Q43K、T87K、R152K、R180K及びG210Kである。
【図20】C6.5 scFv-PPaで標識したSKOV3細胞は、効率的に内部移行されることが見出されるHer-2受容体の高感度の可視化を可能にする。
【図21】SKOV-3細胞からのPPaの放出スペクトル。
【図22】PPa及びscFv-PPa光-免疫接合体の吸光度スペクトル。(A)PBS/1.9%DMSO[1]及び100%DMSO[2]中のPPa(14mg/ml)。(B)50mg/mlのC6.5-PPa。(C)冷凍材料[1]及び未加工材料[2]からの各10mg/mlのMFE-PPa。(D)すべてl0mg/mlの代替scFv-PPa光-免疫接合体のパネル、D1.3[1]、F1[2]、GP6[3]、及びHuBC-1[4]。
【図23】C6.5-PPa及びMFE-PPa光-免疫接合体のin vitroでの細胞毒性。(A)遊離PPaに曝されたLoVo(黒い丸)、SKOV3(白い丸)。(B)SKOV3細胞(黒い丸)及びLoVo細胞(白い丸)に曝されたC6.5-PPa。(C)LoVo細胞(黒い丸)に曝されたMFE scFv(未加工材料)-PPa、LoVo細胞(白い丸)に曝されたMFE scFv(冷凍材料)-PPa、SKOV3細胞(黒い三角)に曝されたMFE scFv(未加工材料)-PPa。
【図24】C6.5-PPa光-免疫接合体の免疫蛍光顕微鏡観察。抗原陰性KB細胞(A〜D)または抗原陽性SKOV3細胞(E〜J)を、遊離PPaまたはC6.5-PPa光-免疫接合体と1時間インキュベートした。画像及び発光スペクトルを記録した。
【図25】C6.5-PPa PICのin vivo分析。(A)血液薬物動態-血液中に残る画分を、抗体、PPa及び光-免疫接合体について、24時間にわたって測定した。全IgG(白い丸)、遊離PPa(黒い丸)、C6.5-PPa(白い三角)、MFE-PPa(黒い三角)、遊離C6.5 scFv(白い四角)、遊離MFE scFv(黒い四角)。(B)時間(黒い棒)及び24時間(灰色の棒)の腫瘍担持ヌードマウスにおけるC6.5 scFv-PPa PICの体内分布。治療研究を行うための良好な値として24時間の腫瘍:血液比を選択した。(C)2組のSKOV3腫瘍担持ヌードマウスを、PBS-生理食塩水(黒い丸)及びC6.5-PPa光-免疫接合体(白い丸)40mgで処置し、続いてレーザー照射した。腫瘍増殖の進行を続く25日間で記録した。有意な増殖の遅れが見られた(p=0.0075)。
【図26】scFvのアミノ酸アラインメントを示す図である。可変重-リンカー-可変軽ドメインを、PDTカップリング効率及び光-免疫接合体の効力に影響を与えうる数及び位置における変動性を例示するために、ボールド体で強調したリジン残基と共に示す。
【図27】ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルの調製を示す図である。
【図28】PBS緩衝液中で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体及び遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の吸光度プロファイルを示すグラフである。
【図29】抗原陰性細胞(KB)及び抗原陽性細胞(SKOV-3)上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体及び遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))のin vitroでのPDT細胞殺滅である。細胞生存率(%)を、 −SKOV3細胞上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体(黒い丸); −SKOV3細胞上の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))(白い丸); −KB細胞上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体(黒い三角); −KB細胞上の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))(白い三角);について決定したことを示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常細胞に損傷を与えずに、悪性、異常、もしくは感染している細胞または感染体を選択的に破壊するための、光線力学療法(PDT)に関する。これによって、より有効な臨床治療をもたらしうる。
【背景技術】
【0002】
疾患の現在の治療は、大部分は非標的的である。薬物は全身的にまたは経口で投与され、それは病変の組織だけでなく多くの他の組織をも曝露する。癌治療において化学療法薬は、主にDNA複製を妨げる機構によって機能する時に、急速に増殖し分裂する細胞に対し特異的である[1](すべての参照文献の詳細については、下記の参考文献の章を参照されたい)。他の細胞が薬物を取り込み、骨髄幹細胞が急速に分裂し、免疫抑制及び病気という結果になるなどの中毒性を伴う可能性もある。感染症においては、抗菌剤が、(経口または注射によって)血液中に導入され、特定細菌の代謝経路を妨げる。他の組織の薬物への曝露は、副作用、及び薬物耐性の主な問題をもたらしうる。ウイルス感染細胞は、その代謝が感染していないヒト細胞と実際上同じであるので、治療が難しい。
【0003】
医学の進歩によって、薬物を疾患に合わせて作りうることについて広範に仮説が立てられている。これは、今日使用されている従来の薬物の大部分の非選択的で行き当たりばったりのアプローチよりはむしろ、正しい標的組織または器官に治療剤を送達することをとりわけ意味する。これにより、より低い投与量、副作用と毒性の低減、及び全体としてより良好な反応性をもたらすであろう。ある個人の乳癌が他の個人の乳癌と異なりうるため、ゲノミクスの進歩はいつの日か薬物を個人に合わせて作製できることを意味するであろう。
【0004】
正しい組織に一度集積すれば、異常細胞を破壊しまたは治療するのに非常に優れている、今日臨床的に使用されている多くの薬物がある。従って問題は、薬物の作用機序ではなく、特異的ターゲッティングにある。この例には、外部ビーム放射線療法に対立するものとして標的電離放射線[2]、遊離薬物[3]及び毒素[4]に対立するものとして標的化学療法剤(例えば、メソトレキセートまたはドキソルビシン)が挙げられる。PDTは多くの治療においてすでに十分に確立しているので、特に優れた例であるが、より良好な治療結果と、その結果もたらされた非常に拡大した臨床への適用は、細胞レベルでは正確ではない光源を標的にするのに加えて、正しい組織への感受性薬物をプレターゲッティングすることから生じるであろうことが明らかになりつつある[5、6]。
【0005】
薬物または他のエフェクターを、所望の細胞を標的として送り込むことは、十分に確立した領域である。ターゲッティングへの主なアプローチの1つは、抗体または細胞特異的リガンドを、多官能価分子の標的エレメントとして使用することである[7、8]。このような多官能価分子の良好な設計は、異常細胞に高度に特異的で、その機能を損なわずに多くの薬剤を高能力で運ぶことができ、元々冒されている細胞内コンパートメント内に薬物を蓄積させることができるであろう。
【0006】
抗体は、哺乳動物の免疫系において第一線の防御として作用するように元来進化してきた。それらは、優れた特異性及び多大な多様性を有した複雑な糖タンパク質である。この多様性はプログラム化された遺伝子シャッフリング及び標的突然変異誘発から生じ、それによって恐らく無数に異なる抗体配列がもたらされる[9]。この多様性は、抗体が通常天然でタンパク質である実質上任意の標的分子に結合できることを意味する。事実上任意の所望の標的に対して組換えヒト抗体を選択して、今や抗体選択及び産生をin vitroで模倣することができる[10]。
【0007】
この抗原選択性は、可変ドメインによって与えられ、定常ドメインとは無関係であり、すべてが1つまたは複数の可変ドメインを含有する抗体フラグメントの細菌発現を伴う実験からこのことが知られている。これらの分子には、Fab様分子(Betterら(1988)Science240、1041);Fv分子(Skerraら(1988)Science240、1038);VH及びVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結し、(Birdら(1988)Science242、423;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879)単一ドメイン抗体(dAb)が単離したVドメインを含む(Wardら(1989)Nature341、544)単鎖Fv(ScFv)分子が挙げられる。選択的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関する技術の一般的概説は、Holliger及びHudson、Nature Biotechnology(2005)23、1126〜36に見出される。
【0008】
開発されているかなりの数のバイオテクノロジー薬が、抗体標的に基づいている[7、11、12]。最も一般的なin vitroの選択技術は、ウイルスの表面上で抗体を提示し操作する抗体ファージディスプレイである[10]。
【0009】
ファージコートタンパク質の1つに融合しているバクテリオファージ(ファージ)の表面上のタンパク質及びポリペプチドの提示は、選択的リガンドの選択のための強力な手段を提供する。この「ファージディスプレイ」技術は、特定の抗原への高親和性を有するものを選択する目的でペプチドの大きなライブラリーを生じさせるために、Smith(1985(Science228、1315〜7))により最初に使用された。より最近では、所望の特性を有するリガンドを同定するため、ファージの表面上に抗体を提示するためにこの方法が用いられてきた(McCaffertyら、Nature、1990、552〜554)。
【0010】
生物学的に妥当な分子に結合するリガンドを単離するためのファージディスプレイの使用は、Feliciら(1995)Biotechnol.Annual Rev.1、149〜183、Katz(1997)Annual Rev.Biophys.Biomol.Struct.26、27〜45及びHoogenboom Nature Biotechnology(2005)23、1105〜16において概説されてきた。
【0011】
様々な疾患、主に、癌、自己免疫疾患、及び同種異系移植片拒絶の予防のために開発されている多くの治療用抗体がある。表1は、これらの主要な抗体のいくつかを一覧として示す。
【0012】
【表1】
【0013】
抗体は、適切な受容体を発現している標的細胞に高度な特異性で結合することができる。抗体の親和性は、抗体の標的(抗原)への結合度合いの尺度である。これは通常平衡解離定数(Kd)で表現される。内部に取り入れられる必要がある抗体にとって、抗体が細胞に取り入れられる場合は解離速度が適用できないため、会合速度がより重要である。所望の構造及び結合特性を有する抗体を選択し、操作するための種々の技術が存在する[13]。
【0014】
すべての生体分子のように、抗体の大きさは、in vivoでのその薬物動態に影響する[14、15]。大きな分子は、遅いクリアランスによって循環中で長く保持される(大きな糖タンパク質は、肝臓による特異的取込みにより除去される)。実験マウスモデル系において癌細胞抗原を認識する全抗体(分子量150KDa)の場合、30〜40%が腫瘍によって取り込まれうるが、それらは循環中でより長く保持されるため、1超の腫瘍:血液比に達するのに1〜2日かかる。通常の腫瘍:血液比は、約3日目には5〜10である[16]。in vitro技術及び組み換えDNA技術によって産生されてきた抗体のより小さなフラグメントでは、循環からのクリアランスはより速い(約50KDaより小さな分子は、腎臓を通って排泄される)。単鎖Fv(約30KDa)は、全抗体に由来する人工の結合分子であるが、抗原を認識するのに必要な最小限の部分を含有する[17]。またマウスモデル系において、scFvは、注入された用量の1〜2%を送達することができるが、腫瘍:血液比は20:1を超え、いくつかの腫瘍:臓器比はそれより多い[18]。scFvは、ここ10年間にわたり開発されてきただけであるので、後期臨床試験における例はあまりない[19]。全抗体の臨床試験から、腫瘍に実際に送達される量は、マウスモデルにおいて見られるものの約1%であるが、同様の腫瘍:臓器比を有する[20]。他の分子が抗体に接着している場合は、新たな大きさ及び物理化学特性が、変化した薬物動態を決定する。さらに、実効電荷及び親水性などの特性が、標的の動態をもたらす場合がある[21]。
【0015】
いくつかの細胞表面抗原は、抗体などのリガンドに結合した場合は、静的、すなわち非常にゆっくりと内部に取り入れられる。細胞シグナル伝達または金属及び脂質の取込みなどの内部移行を必要とする機能を有するものがいくつか存在する。このような抗原を介して細胞内に作用剤を送達するために、抗体を使用することができる。このような作用剤は、異常細胞を治療的に修復または破壊することができる。その例には、遺伝子送達[22]、毒素(例えば、シュードモナス外毒素[4])、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ[23]、デオキシリボヌクレアーゼ[24])及び薬物(例えば、メソトレキセート[3])の細胞内送達が挙げられる。これらの作用剤のいくつかは、その作用を及ぼすために特定の細胞内小器官へのターゲティングを必要とする[24]。細胞生物学の進歩は、細胞内タンパク質を特定の細胞内コンパートメントに方向付けるアミノ酸配列である細胞内のターゲティング「コード」を明らかにした。核、小胞体、ゴルジ、リソソーム及びミトコンドリアを標的として様々なタンパク質を送り込むことが見出された特異的配列がある([25]、表2)。これらは、治療タンパク質を標的コンパートメントに局在化させることにより薬物作用を改善するための追加的なものとして開発されている。
【0016】
【表2】
【0017】
新規なエフェクター機能が抗体または他のターゲティングリガンドに連結している標的可能な治療薬についての多くの研究がこれまでにある。これらのいくつかは、首尾よく毒剤を送達するために内部に取り入れられる必要がある。これらの多くは、動物モデルにおいてin vitro及びin vivoで良好な結果を示したが、診療所では期待はずれであった。免疫毒素は、免疫反応及び肝臓/腎臓毒性などの問題を示した[26]。リボヌクレアーゼ[23]及びデオキシリボヌクレアーゼ[24]などの酵素に基づいた新規な「ヒト化」免疫毒素の開発がなされてきた。潜在的により副作用が少ないこれらは、より許容できるが、それでもバイスタンダー殺滅効果を有さない。化学療法の薬剤は、タンパク質に連結した場合効率的に放出されないので、より活性が低くなる傾向があり、従って選択的に開裂することができる化学的リンカーを必要とする。放射免疫療法は、腫瘍に向かう途中で他の組織を照射し、骨髄及び肝臓毒性をもたらす傾向がある。細胞毒性要素は一重項酸素及びそれから生じる他の活性酸素種であり、PS薬自体ではないため、光増感(PS)薬は、タンパク質に連結する特に魅力的な作用剤である[5、6]。
【0018】
ターゲティングまたは検出のためのリガンドを考慮するにあたり、抗体は第1候補であるが、多くの代替のリガンドが存在し、それらのいくつかはファージ(または他の)ディスプレイ/選択技術によって利用されてきた。これらには、受容体の天然リガンド(例えば、インターロイキン-6(IL-6)[27])及び組織ネクローシス因子(TNF)[8]、ペプチド(例えば、ニューロペプチド[28])、免疫グロブリン様ドメイン(フィブロネクチン(fn3)ドメイン[29]、単一免疫グロブリンドメイン[30]など)、アンチカリン[31]、アンキリンリピート[32]などが挙げられる。これらの多くは、生物学的及び治療特性を改良するために、遺伝子操作をし、最適化することができる[33]。
【0019】
光線力学療法(PDT)は、異常細胞及び組織を除去する必要がある一連の状態のための最小限に侵襲性の治療である[6、34、35]。電離放射線とは異なり、同じ部位に繰り返し投与することができる。化学療法、放射線療法または手術などの従来のモダリティの使用は、PDTの使用を妨げず、逆の場合も同じであるので、癌治療におけるその使用は魅力的である。PDTはまた、(加齢性黄斑変性症(AMD[36])または癌における)血管、免疫障害[37]、心血管疾患[38]、及び微生物感染[39、40]の治療など、特定の細胞集団を破壊しなくてはいけない他への適用が見出されている。
【0020】
PDTは、静脈内注射、または皮膚癌では局所適用による、PS薬の投与から開始される2段階または二元的方法である。薬物の物理化学的な性質によって、癌細胞または他の標的細胞により優先的に取り込まれる[41]。好適な腫瘍(または他の標的):正常な臓器の比をひとたび得たら、第2の工程は、特定の波長の光の特定の線量によるPS薬の活性化である。基底状態または一重項状態の光感受性物質は、特定の波長で光の光子を吸収する。これは短寿命の励起一重項状態をもたらす。これは項間交差によってより長寿命の三重項状態に変換されうる。様々な細胞毒性作用が行われるのは、この形態の感受性物質である。
【0021】
反応の主な部類は、ラジカルによる光酸化(I型反応)、一重項酸素による光酸化(II型反応)、及び酸素を伴わない光化学反応(III型反応)である。感受性物質の三重項状態の形態は、細胞環境に見出される分子状酸素の、II型反応を介した活性酸素種(ROS)、主に一重項酸素(1O2)への変換をもたらす。活性化した光感受性物質が、細胞成分と相互に作用する場合、電子または陽子が取り除かれ、ヒドロキシルラジカル(OH・及びスーパーオキシド(O2-・)などのラジカルが形成されるI型反応が起こる。これらの分子種は、DNA、タンパク質及び脂質などの細胞成分に損傷を与える[42]。三重項状態の光感受性物質が遊離基と相互に作用し、細胞傷害をもたらすIII型の機序もまた、提案されてきた。細胞傷害の部位は、光感受性物質のタイプ、インキュベーションの長さ、細胞のタイプ、及び送達方法によって決まる。疎水性光感受性物質は、細胞膜を傷害する傾向にある[42]一方、カチオン性光感受性物質は、ミトコンドリアなどの膜小胞内に局在し、そこに損傷をもたらす[43]。
【0022】
ROSの光活性化は、非常に細胞毒性である。実は、免疫系におけるいくつかの自然作用では、不必要な細胞を破壊する方法としてROSを利用している。これらの種は、短寿命で(<0.04ms)、それらの発生点から短い半径(<0.04mm)内で作用する。細胞の破壊は、組織のネクローシス性領域をもたらし、やがては脱落しまたは再吸収される。残りの組織は、通常瘢痕を残さずに自然治癒する。組織加熱はなく、コラーゲン及びエラスチンなどの結合組織は影響されない。熱レーザー技術、手術または外部ビーム放射線療法と比較して、基底構造への危険性の低下がもたらされる。PDTはアポトーシス(非炎症性細胞死)を誘発し、結果として生じる見出されるネクローシス(炎症細胞溶解)は、免疫系によって除去されない死につつある細胞の塊に起因することがより詳細な研究により示されてきた[44]。ケイ素フタロシアニンを含めたいくつかのPS薬についての研究によって、PDTによりアポトーシス-プログラム細胞死がもたらされることが示された[45]。アポトーシスは、細胞が自らを膜に包まれた小片に切断することによって整然と自殺する、細胞死の高度に組織化され進化的に保存された形態である[46]。これらのアポトーシス小体は、免疫系による食作用により特徴付けられる。通常、少領域における過剰アポトーシスは、免疫系に「過負荷」となり、その領域はやがて炎症性の結果を伴うネクローシスとなる。
【0023】
PDTは、冷たい光化学反応、すなわち使用されるレーザー光が電離しておらず、低レベルの熱エネルギーを送達し、PS薬は非常に低い全身毒性を有する。PS薬及び光の組合せは、低い罹患率及び最小限の機能障害をもたらし、疾患治療において多くの利点を提供する。PDTの反応率及び効果の持続性は、標準の局所領域治療と同様またはそれより優れているという増加していく証拠がある[35、36]。
【0024】
一般にPS薬は、皮膚病変には局所適用もあるが、全身的に投与される。PS薬が、正常な周辺組織と比較して通常2〜5:1の比で標的組織に集積すると(比が50:1までに上がる場合がある脳を除いて)、特定の波長の低出力の光を腫瘍(またはAMD治療においては目[37])に向ける。ヒト組織は可視光スペクトルの赤領域において最も効果的に光を伝えることができるため、赤色光(630nm以上)を吸収することのできるPS薬は、約1cmの深さまでの活性化が可能である。治療後は、全身投与したPS薬が体から除去されるまで直射日光は避けなくてはいけない。そうしないと、皮膚光感作性を有し、皮膚の日焼けをもたらす場合がある。
【0025】
より新しい世代のPS薬は、より長い活性化波長を有し、従って赤色光によるより深い組織浸透、より高い量子収量、及び腫瘍選択性及び残留する皮膚光感作性に関するより良好な薬物動態を可能にする。PS薬のこれらのクラスには、フタロシアニン、クロリン、テキサフィリン及びプルプリンが挙げられる。合成クロリンであるFoscan(登録登録商標)は、652nmの活性化波長、0.43の量子収量及び約2週間の皮膚光感作性を有する非常に強力なPS薬である。種々の癌のための良好な結果を有する多くの臨床試験があった[35、36]。メタ-テトラヒドロフェニルバクテリオクロリン(m-THPBC)などの、これまでに開発され、治験中であり、>700nmで吸収できる他のPS薬がある。好都合な深紅での吸収特性(763nmの吸収ピーク)を有する前立腺癌の治療に効果を発揮するパラジウム-バクテリオフェオホルビド光感受性物質(TOOKAD)が開発された[47]。
【0026】
光の線量を分割することによってPDT効果が高まり、次回の活性化の前に酸素を系に補充することを可能にすることが前臨床試験によって示されてきた。これは、正所性乳癌モデルにおいてMiravant薬物MV6401で観察されてきた[48]。文献ではフリーラジカル経路を調整するために別々に投与されるビタミン類似体の使用[49]、それらの半減期を増加させるための光感受性物質(例えば、m-THPC)のポリエチレングリコール担体へのカップリング[50]、重合体ミセル担体の使用[51]及びPDT治療後の免疫応答を増強するためのアジュバントの使用[52]などの非標的のPDT効果を高める他の方法について記載している。
【0027】
表在性疾患を通常局所麻酔及び鎮静で治療することができるという点で、PDT治療計画は臨床医には魅力的である[35]。(皮膚光感作性の可能性を除いて)一般的に低い毒性は、他の薬物療法の必要性を抑える。局所的治療は、無菌状態を必要とせず、外来診療所で施すことができる。
【0028】
Photofrin(登録登録商標)(ポルフィマーナトリウム)、5-アミノレブリン酸(ALA)及びVisudyne(登録登録商標)(ベルテポルフィン、BPD-MAベンゾポルフィリン誘導体一酸)は、規制当局の許可を有する3種類のPS薬である。有望で強力な第2世代のPS薬であるFoscan(登録登録商標)(テモポルフィン;メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン)は、5-アミノレブリン酸メチルと同様に、ヨーロッパにおいて最近承認された。承認される第1のPS薬であるポルフィマーナトリウムは、膀胱、胃、食道、頸部及び肺癌における使用が許可されている。(630nmで活性化する)スペクトルの赤系統の色域における弱い光吸収特性のためにその性能は、穏やかであり、これは、組織に約5mmしか浸透できず、標的腫瘍組織への制限された選択性を意味する。それはまた体内に何週間も残り続け、皮膚光感作性をもたらす。しかし、膀胱、胃、食道、頸部及び肺癌の治療に有効であった[35、36]。ALAは、皮膚病変の治療に局所的に施用され、内因的にプロトポルフィリンIXという天然PS分子に変換される。これは多くの波長で活性化させることができ、その作用する深さは2mm未満である。ベルテポルフィンはまた、腫瘍への適用に見出される組織浸透の問題なしに加齢性黄斑変性症AMDにおいてよい性能を示す[37、53]。TAP及びVP臨床試験は、ベルテポルフィンによるPDTは、プラセボ対照と比較してAMDと関連する失明の回復により効果的であったことを示した[53]。
【0029】
PDTは、より低い罹患率、使用の簡単さ、改良された機能的及び美容的な結果を伴いながら従来の技術の同様の制御率を達成することができる。PDTは、従来のアプローチが失敗しまたは不適当な場合に主に使用されてきた。これらには、気道、消化器及び尿路(例えば、口腔、食道及び膀胱)の粘膜に通常見出される前癌性異形成病変及び非浸潤性癌が挙げられる。この段階の癌の現在の治療はあまり成功しておらず、ここでの良好な反応は、大きな固形腫瘍または転移性の拡散が起こることを防止するであろう。バレット食道の治療は通常食道切除を意味し、これは全身麻酔を必要とし、病的状態及び機能喪失及び外見を損なう危険を有する。PDTは、より少ない危険性で大きい領域を表面的に治療することができるため、魅力的な選択であると考えられている。Photofrin(登録登録商標)、ALA及びFoscan(登録登録商標)は、臨床試験においてこのようなタイプの癌で良好な反応を生じてきた(表3)。乳癌胸壁再発は、Foscan(登録商標)[54]及びPhotofrin(登録商標)によって成功裡に治療されてきた[55]。
【0030】
【表3】
【0031】
光の到達しやすさのために、皮膚癌などの皮膚疾患の治療によって、全身性及び局所的PS薬で良好な結果が得られた(表3)。頭部、首及び口腔病変もまた、良好な結果をもたらし、治療の良好な美容的結果のために適切である(表3)。レーザー及び光送達技術に進歩が見られるため、他の癌の治療も試験されている。内視鏡を食道及び気管支腔などの任意の管腔構造に活性化光線量を送達するために使用し、従って最小限の手術で治療範囲を胃腸及び肺癌に拡大することができる(表3)。放射線療法によっては十分に多い治癒量を与えることができないであろう胸膜及び腹膜などの広い領域を治療することができる。PDTは、腫瘍縮小手術と組み合わせたこれらの表面漿膜癌の治療に大いに有望である。中空の体腔を通ってこれらの大きい表面に短時間で光を送達することができる。重要な下にある臓器は残されるであろうため、活性の限られた深さは利点であろう(表3)。固形腫瘍が外科的に除去され、残りの腫瘍細胞が形成された体腔において1回のPDTによって破壊される場合、補助化学療法もまた、研究されている選択肢である。
【0032】
表層癌はPDTに最も適しうるが、PS薬を全身的にまたは腫瘍内注射によって投与し、次いで腫瘍に均等に広げた針を通ってレーザーファイバーを挿入する間質の治療を、固形腫瘍に対し行うことができるであろう。これによって非常に大きな腫瘍のネクローシスをもたらすことができる[56、57](表3)。
【0033】
従って、PDT治療にはいくつかの利点がある。それは、光による活性化により標的とされうる非浸襲性の低毒性治療を提供する。標的細胞は、細胞毒性種(ROS)に対する耐性を生じることができない。治療後に、ほとんど組織瘢痕は残らない。しかし、PS薬は、通常せいぜい一桁の標的:血液比であり、標的細胞に対してあまり選択的でない。例えば、食道癌[60、61]、膀胱癌[62]におけるPhotofrin(登録商標)[58、59]のように、多くの場合この選択性の欠如は、隣接する正常組織に対する容認できない損傷をもたらす。PS薬は血液タンパク質上で「ピギーバック方式で輸送」されるため、望まれるより長く循環中に留まり、最良の場合でも2週間、患者を光過敏症とさせる。
【0034】
細胞毒性効果は光による活性化から生じる副次的効果であるので、光増感薬は、標準の化学療法剤とは異なり、担体に接着している間もまだ活性があり、機能的であることができる。これによって、ターゲティング分子への接合を伴う特異的な薬物送達機序を受け入れられるようになる。現在、光増感薬を標的可能なエレメントに連結させる好ましいアプローチは、誘導体化された光増感薬の全モノクローナル抗体への直接接合である。全抗体は150KDaの分子量を有し、目的を達成するのに長い時間がかかることとなる乏しい腫瘍:臓器比(2:1)などの好適ではない薬物動態を有する、非常に大きな光-免疫接合体をもたらす[63、64]。モノクローナル抗体上の残基に連結している光増感薬は、乏しい光学的特性によって消光効果が起こり、互いに有害作用を及ぼす可能性があることを現在の文献は示唆している[65]。これに加えて、抗体が凝集し、または機能を失う前に、典型的には4:1の比の、光感受性物質の抗体への乏しく信頼できない添加が見られることが示された[63〜69]。
【0035】
光感受性物質のカップリングが、様々なモノクローナル抗体を用いた様々な戦略を使用して行われてきた。例えば、PPaが抗Her2モノクローナル抗体にカップリングされた。良好な感受性物質:抗体カップリング比(約10:1)を達成するために、抗体は、ポリエチレングリコール鎖を接着させることによってより可溶性に作製しなければならなかった[68]。このペグ化は、接合体の薬物動態に対し有害な作用を有し、より乏しい腫瘍:血液比をもたらすであろう。さらに、光感受性物質の抗体への非共有結合もここでは見られた。このような非共有結合は、抗体-光感受性物質の接合体を生成させる大部分の報告されている試みの特徴であり、特徴がはっきりした接合体を確実に生成する上での主な問題を表す。さらなる研究において、感受性物質であるポルフィリンを、イソチオシアネートカップリング法を用いてモノクローナル抗体17.1A、FSP77及び35A7と共に使用し、2.8:1と同様の感受性物質:抗体比がもたらされた[67]。他の例は、ベルテポルフィン(ベンゾポルフィリン誘導体、BPD)とモノクローナル抗体C225(抗EGFR)とであった。ここでは、11:1を超えるカップリング比が、乏しい免疫活性及び溶解度をもたらした[69]。最良の比は約7:1であった。これらの例は、高い光感受性物質:抗体比を有する、特徴がはっきりした接合体を生成する問題を例示する役目を果たし、全抗体より3分の1から6分の1小さいフラグメントの使用は、より大きなタンパク質種で見られる溶解度及び添加の問題を考慮すると、より成功しないであろうことを示唆する。
【0036】
モノクローナル抗体に接着したPS薬に対する研究によって、多すぎるPS分子が個々のモノクローナル抗体に接着した場合、疎水性が影響を受ける場合があり、薬物動態への悪影響が生じうることが示された。全モノクローナル抗体の問題を考慮すると、小さなフラグメント(scFv(30KDa)など)は、あまり好適ではないカップリング効率を有し、1個または2個の光感受性物質のカップリングのみをもたらすであろうということで大方の見方が一致する。Birchlerら[70]は、効率的なScFv-光感受性物質接合体を生成しようと試みたが、単一の光感受性物質を、部位特異的システイン残基を介してscFvにカップリングさせることができただけであった。
【0037】
他のグループは、PS薬を、分枝炭水化物[71]またはポリエチレングリコール鎖[72]及びポリリジン[73]鎖などの指定した「担体」に連結させる試みによって、これらの問題を回避しようとしてきた。これらのアプローチはすべて、リガンド-担体は完全に組換えで作製することができないため、さらなる接合工程を必要とする。このようなポリマーを使用することはまた、in vivoでのタンパク質分解不安定性などの問題も有しうる。光感受性物質がこのように接着している場合は、その光物理的性質を破壊しながら自己消光し、活性の光感受性物質となれる前に「脱消光」するリゾチームによる分解に依存することが知られている[71]。従って、10:1までのより高いカップリング比を達成することが可能であるが、遊離の光感受性物質よりも低い光毒性及び低い一重項酸素収率のみを有する。Roderらによる研究[71]は、フェオホルビドの光感作作用は、デンドリマーの末端部に多数が共有結合している場合、劇的に減少したことを示した。これは、エネルギー移動プロセス、主として色素から色素へのForster型エネルギー移動の結果である。Forster型移動は、距離依存性であり、距離とともに急速に低下する。色素分子の相互作用によって、吸収スペクトル、蛍光寿命の減少、及び一重項酸素の量子収量の変化をもたらす。抗体フラグメントとタンパク質担体分子と組み合わせた融合タンパク質についてもまた、本発明者らのグループによって記載された[74]。
【0038】
Glickmanら[75、76]は、眼疾患のためのVEGF脈管構造標的に対するモノクローナル抗体標的PDTについて記載している。これは、抗体:光増感剤比の記載なしに、標準的なカップリング条件を使用する。しかし、Hasanら[77]は、光感受性物質:抗体カップリング比を改良するために2種類の溶媒系を開示している。ここでは、水性緩衝液と混合した非常に高濃度の有機溶媒(通常40〜60%)を使用して、11:1までの比が報告されてきた。しかし、使用される高濃度の溶媒が、すべての抗体によって許容される可能性は低い。フラグメントの使用についての記載はないが、有機溶媒へのより大きな感受性を考慮すると、それらは、この方法では生存可能であることが期待されないであろう。またHasanら[77]においては、多くのカップリング光感受性物質は自己消光性であり、従ってこの系は、光毒性分子を放出するのに内部移行及びリソソーム分解に依存する。細胞表面に結合した光-免疫接合体は、細胞内リソソーム中に見出されるような分解酵素に曝されることが期待されない。これはCEA及びマトリックス/間質性抗原などの低/非内部移行抗原のターゲッティングを除外するであろう。
【0039】
新規なまたは従来のPS薬を、小さな標的可能な担体タンパク質に連結することによって、その後光によって活性化することができるPS薬の高度に特異的な用量を標的組織に送達することが可能である。20:1以上の組織対血液/正常臓器の比を有し、より短い時間間隔で標的組織中でより大量のPS薬を集積することができるという点で、これらの担体-PS薬接合体は、既存の標的及び非標的PDTアプローチよりも利点がある。さらに、これらの作用剤は、免疫原性がほとんどまたはまったくなく、副作用がより低く、他の標的可能な戦略よりも利点がある可能性がある。より小さなリガンドは、インスリン[78]、トランスフェリン[79、80]、アルブミン[81]、アネキシン[82]、トキシン[83]、エストロゲン[84]、ローダミン誘導体[85]、葉酸[86]などの光感受性物質、並びにEGF[87]及びVEGF[88]などの増殖因子を送達するために使用されてきた。このようなリガンドは、それに接着した光感受性物質を改良し増強するために、タンパク質進化または合理的な突然変異誘発によって操作することができることを、現在の文献におけるこれらの例または他のどれもが提案していない。
【特許文献1】WO2004/046151
【特許文献2】WO2004/076461
【非特許文献1】Betterら(1988)Science240、1041
【非特許文献2】Skerraら(1988)Science240、1038
【非特許文献3】Birdら(1988)Science242、423
【非特許文献4】Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、5879
【非特許文献5】Wardら(1989)Nature341、544
【非特許文献6】Holliger及びHudson、Nature Biotechnology(2005)23、1126〜36
【非特許文献7】Smith(1985(Science228、1315〜7))
【非特許文献8】McCaffertyら、Nature、1990、552〜554
【非特許文献9】Feliciら(1995)Biotechnol.Annual Rev.1、149〜183
【非特許文献10】Katz(1997)Annual Rev.Biophys.Biomol.Struct.26、27〜45
【非特許文献11】Hoogenboom Nature Biotechnology(2005)23、1105〜16
【非特許文献12】Harlowら(Eds)、Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Chapter6
【非特許文献13】Lipschultzら「Experimental Design For Analysis of Complex Kinetics Using Surface Plasmon Resonance」Methods(2000)20、3180
【非特許文献14】Scherrerら(1986)J.Org.Chem.51:1094〜1100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
本発明は、担体が機能的及び可溶性であり続けることを確実にするために、これまで知られていない最適化されたカップリング条件を使用して、光感受性物質を、抗体フラグメント(例えば、scFv)などの生物学的ターゲティングタンパク質にカップリングする方法を提供する。接合体は、非共有結合がなく、一貫した高いモル比の共有結合している光感受性物質を有することが好ましい。本発明はまた、最適な光物理的及び光力学的特性を有する操作された組換え抗体-光感受性物質接合体、及びそれらを生成する方法も提供する。さらに本発明は、接合体全体の光物理的及び光力学的特性を高める他の「非光感作性」分子のカップリングの方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明者らは、光感作性分子及び他の調節分子と化学的にカップリングした小さな組換え抗体フラグメントをベースとした、非常に効果的で、強力な標的光線力学療法接合体を生成する方法によって作製された化合物について説明する。このような調節分子の使用は、活性酸素種産生の機序を変化させ、これによってII型ROSよりもよりI型種(遊離基及びスーパーオキシド)をもたらすことができる。マトリックスタンパク質などの非または低内部移行抗原を標的とする場合、光感受性物質が内部移行することはまったくまたはほとんどなく、これは表面の細胞膜により効果的に損傷を与えうる種は、II型の一重項酸素生成源より強力であることを意味するため、これはPDTにとって重要な意味がある。さらに、非内部移行抗原を標的とすることは、ある場合、特に癌細胞が、例えば、ROS除去酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ)の上方制御において、活性酸素種に対してある種の薬物耐性を発達させる場合は好ましい場合がある。
【0042】
抗体の生物学的性質によって、機能及び完全性を保持するために、それらを概ね水性緩衝液中に保つ必要がある。しかし、光感受性物質は本質的に疎水性の傾向があり、抗体のために通常使用される緩衝液条件下では難溶性である。水性条件下での光感受性物質の抗体へのカップリングは、乏しい光感受性物質:抗体比をもたらし、溶媒中では損傷を受けた抗体タンパク質をもたらすであろう。本発明者らは、低濃度の有機溶媒の組合せを利用する方法を説明する。
【0043】
本発明者らは、非共有結合を最小限にする一方で、多くの光感受性物質を抗体フラグメントに効率的にカップリングさせることのできる、頑強な接合プロトコルを開発した。
【0044】
大部分の光感受性物質の疎水性及び高度に吸着性の性質、並びに抗体及び他の生体分子の水溶性の性質によって、接合の化学反応は困難となり、より重要なことには、接合されていない光感受性物質の不純物をこのような接合体から除去することがほとんど不可能となる。これらの問題は、驚いたことに(a)抗体と光感受性物質との比較的小さなカップリング比の使用を可能とする極めて純粋な単官能の光感受性物質を使用し、及び(b)2種類の非プロトン性溶媒と、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または当技術分野において公知の任意の他のほぼ中性の緩衝液である場合がある水性成分との組合せを使用することによって克服された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の第1の態様において、
(i)光増感剤を提供する工程と、
(ii)担体分子を提供する工程と、
(iii)第1及び第2の極性非プロトン性溶媒並びに水性緩衝液の存在下で、光増感剤及び担体分子を接合する工程と
を含む、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物を作製する方法を提供する。
【0046】
好ましくは、この化合物は、少なくとも3:1の光増感剤と担体分子の比率を含む。さらに好ましくは、光増感剤及び担体分子の機能特性及び物理的特性は、カップリング後に実質的に変化しない。
【0047】
第1及び第2の極性非プロトン性溶媒が選択される適切な極性非プロトン性溶媒は、(これらだけに限らないが)ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、HMPA、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、二硫化炭素、グリム及びジグリム、2-ブタノン(MEK)、スルホラン、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、ピリジン、及びアセトンからなる群から選択される。使用しうる他の極性非プロトン性溶媒は、当業者には周知である。水性混合物に対する両方の極性非プロトン性溶媒の総量は、約50容量%であるべきである。2種類の極性非プロトン性溶媒の相対量は、互いに1〜49%:49〜1%に変化させることができる。
【0048】
第1及び第2の非プロトン性溶媒は、DMSO、DMF、及びアセトニトリルからなる群から選択されることが好ましい。第1及び第2の非プロトン性溶媒は、DMF及びアセトニトリルであることがさらに好ましい。
【0049】
水性緩衝液と第1の非プロトン性溶媒と第2の非プロトン性溶媒との比は、約50%:1〜49%:49〜1%であることがよりさらに好ましい。
【0050】
よりさらに好ましくは、非プロトン性溶媒混合物は、92%PBS:2%DMSO:6%アセトニトリルであり、光増感剤及び担体分子を接合する工程は、0℃〜5℃の温度で行われる。溶媒の組合せによって、特にこのような低い温度において全反応を均一に維持し、約30分間のみカップリングを行うことによって、高いカップリング比及び非常に低い非共有結合の割合を達成することができる。
【0051】
本発明は、担体分子が抗体フラグメント及び/またはその誘導体である方法をさらに提供する。好ましくは、抗体フラグメント及び/または誘導体は単鎖抗体であり、ScFvであることが好都合でありうる。担体分子は好ましくは、ヒト化またはヒト分子である。
【0052】
上記のプロトコルを使用して、活性エステルを形成するように誘導体化されたカルボン酸基を有する光感受性物質は、効率的に高いモル比で表面的に接触可能なリジン残基を介して抗体フラグメントにカップリングしうる。ピロフェオホルビドa(PPA)は、天然物由来の光感受性物質であり、それを理想的な光感受性物質としている光物理的性質とは別に、単一のプロピオン酸側鎖を有している。PPAプロピオン酸官能基は、対応するN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)または「活性エステル」に容易に変換され、接合できる状態になっている極めて純粋な誘導体をうるためにクロマトグラフィー及び再結晶の組合せにより精製され、その後効率的に抗体フラグメントにカップリングすることができる。
【0053】
好ましくは、光増感剤は単官能の光感受性物質である。さらに好ましくは、光感作性基は、(これらだけに限らないが)、ヘマトポルフィリン、Photofrin(登録商標)、天然ポルフィリン、クロリン及びバクテリオクロリン、ピロフェオホルビドaなどのフェオホルビド及びフォトクロル(Photochlor)などのその誘導体、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、TOOKAD(Pd-バクテリオフェオホルビド)などの天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan)及びバクテリオクロリンなどの合成クロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィンなどのモノベンゾポルフィリン誘導体、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及び誘導体、プルプリン-18などのプルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、無金属及びメタル化の両方であるメソ-トリエチニルポルフィリン(WO2004/046151)などのクロリン及びバクテリオクロリン、コア修飾ポルフィリン(WO2004/076461)、モテキサフィンルテチウム及びモテキサフィンガドリニウムなどの拡張ポルフィリン(テキサフィリン)からなる群から選択される、少なくとも1種類である。
【0054】
非ポルフィリン系化合物もまた、光感受性物質として使用することができ、それだけに限らないが、メチレンブルーなどのフェノチアジニウム誘導体、トルイジンブルー、メロシアニン-540などのシアニン、アクリジン色素、BODIPY色素及びアザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン(squarine)色素、エオシンなどのハロゲン化キサンテン色素、及びローズベンガルが挙げられる。
【0055】
抗体フラグメントへの接合のための他の適切な光感受性物質は、当業者であれば容易に想定しうるであろう。しかし、光感受性物質上の多数の反応性に富んだ官能基の存在は、いくつかの問題をもたらす場合がある。接合反応の化学量論組成を制御するために十分に純粋な材料をうるのが困難であり、その結果過剰な反応性に富んだ光感受性物質を使用して反応が行われ、非共有結合の増加をもたらす。分子内抗体架橋もまた接合の間に起こり、低いカップリング収率及び凝集体形成の増加がもたらされる可能性がある。
【0056】
本発明者らの抗体フラグメントに関する研究によって、接合の間の光感受性物質の化学量論組成を制御し、リジン残基を幾何的に十分に離間することによって、高い光感受性物質の添加及び優れたPDT活性を有する光-免疫接合体をもたらすことができることが示された。
【0057】
好都合なことには、この方法は、工程(iii)の後に行われる下記の
(iv)光増感剤の機能を調節することのできる調節剤を担体分子にカップリングする工程をさらに含む。
【0058】
光感受性物質をリガンドにカップリングするのと同様に、同様のカップリングの化学反応を使用して、光-免疫接合体全体の光物理的または光力学的特性を調節するような方法で、他の分子をリガンドにカップリングすることも可能である。これらの代替の分子は、光感受性物質と同じ残基タイプに化学量論比でカップリングすることができ(すなわち、光感受性物質カップリングの前または後)、両方のタイプの分子を、カップリング/受け入れることを可能にし、または異なる残基タイプにカップリングすることができる(例えば、光感受性物質がリジンにカップリングし、続いて修飾化学物質がアスパラギン酸/グルタミン酸残基にカップリングする)。
【0059】
光力学的調節物質は、光感受性物質の光照射により生じる活性酸素種のタイプ及び量を変化させる役割を果たしうる。例えば、II型反応(すなわち一重項酸素)をより生じさせる光感受性物質は、高濃度のスーパーオキシド及び水酸化物ラジカルを伴うI型反応をより生じるように調節することができる。これはPDTの効力または治療成績に対して重大な意味を持ちうる。例えば、非内部移行の腫瘍抗原を標的とする光-免疫接合体は、細胞表面で主にI型反応を生じさせ、膜損傷をもたらし、(細胞内で生じる)スーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化反応に対して影響されにくい場合、より強力でありうる。
【0060】
好ましくは、調節剤は、安息香酸;4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸などのアジド基を含有する安息香酸誘導体;並びにアジド部分(N3)を含有する、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン(napthaquinone)、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン及びクマリンを含めた他の芳香族基またはヘテロ芳香族基からなる群から選択される。芳香族及びヘテロ芳香族スルフェナートは、上記の芳香族/ヘテロ芳香族基から得た。他の特定の調節剤には、トロロックスなどのビタミンE類似体、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸(ursadeoxycholic acid)が挙げられる。光増感剤と共にリガンドにカップリングすることができる化学修飾剤の一例は、安息香酸(BA)のスクシンイミジルエステルである。
【0061】
PPaと共に抗CEA scFvに共カップリングした場合、PPaのみとカップリングしたscFvと比較して、in vitroでより強力なPDT細胞殺滅をもたらすことが示された。
【0062】
好ましくは、この方法は、工程(iii)または(iv)の後に行う下記の
(v)化合物を医薬として許容される担体と混合して製剤を形成する工程をさらに含む。
【0063】
本発明の方法はまた、視覚化剤を接合体とカップリングさせる任意選択の工程も含む。あるいは、接合体の一部を形成する光増感剤はまた、視覚化剤としても使用しうる。
【0064】
免疫アッセイまたは診断法における組換え抗体の使用は、よく研究された領域である。抗体及び抗体フラグメントの優れた特異性、高親和性及び多用途性によって、それらは検出系の一部として理想的な結合分子となっている。例えば、医療用イメージングにおいて、抗体は蛍光色素などの光学活性化合物に連結され、前癌性及び癌性病変の検出、治療反応の測定、及び再発の早期発見[95]に使用されてきており、in vitroでは伝達性海綿状脳症(プリオン病)が蛍光標識された抗体で検出されてきた[96]。
【0065】
臨床的に有用な腫瘍イメージングは、小さな病変の検出を要求する。早期の行動によって検出の利点を続いて実現することができる。従来のイメージング技術と関連する問題の1つは、腫瘍と背景とのコントラストが乏しいことである。腫瘍におけるターゲティング分子の局在化を高め、正常組織によるそれらの取込みを減少させ、従って腫瘍:組織比を改善するために様々な戦略が開発されてきた。これらのアプローチには、好適な薬物動態を有する小さな腫瘍特異的ペプチド分子の開発[97]、改良された標識技術[98]、プレターゲティング戦略の使用、腫瘍送達の調節、及び腫瘍マーカー発現の上方制御が挙げられる。さらに、いくつかの新たな色素が開発された[99]。in vivoでのイメージングのために望ましい多くの特性を有する近赤外蛍光色素が合成されてきた。近赤外蛍光色素は、血液及び組織が比較的透過性である波長で吸収及び放射し、高い量子収量を有し、蛍光色素と抗体のより高いモル比においてさえも良好な溶解度を有する。単鎖Fvフラグメントなどの小さな抗体種は、良好なコントラスト比をもたらすことができる薬物動態を有するが、標的組織中のレポーター基の低い絶対レベルを迅速にもたらす。より高い蛍光収率は、このより低い沈着を償い、検出感度を増加させることができる。
【0066】
イメージングの他の用途には、研究道具の開発が含まれる。色素で標識した抗体は、受容体輸送などの細胞の生物過程の可視化において極めて貴重であった[100]。蛍光収率の増加によって、低い存在量の分子の検出及びモニターが可能になるであろう。標識細胞の可視化のための通常の方法は、異なった非オーバーラップの蛍光発光スペクトルを有する一連の特異的抗体を使用して、多重標識分子を同時にモニターすることができる免疫蛍光顕微鏡観察である。
【0067】
上記のように、本発明者らの新規なカップリング条件を使用した、色素分子の抗体フラグメントまたは他の適切なリガンドへのカップリングは、より高い添加比をもたらす。これによって光物理的性質の増加に直接つなげることができる。改善されたPDTのための一重項酸素生成の増加はもとより、優れた光物理的性質は、蛍光の増加として表すことができる。適切な色素分子を有する抗体フラグメントの光-免疫接合体は、その好適な薬物動態及び蛍光の増大によって、より有効な診断薬となることができる。迅速なクリアランス及び低い非特異的組織結合は、極めて高いコントラスト比をもたらすであろうし、高い蛍光は、出力信号のより高感度な検出を可能にするであろう。上記のように、カップリングのために好適に離間した官能基(例えば、リジンアミノ基)を含有するように作成され、選択され、または操作された抗体フラグメントの使用は、消光及び誤った相互作用の減少によって、より好適な蛍光収率を有する色素をもたらしうる。これは主に医療用イメージングにおける用途を有するであろうが、診断キットまたは細胞イメージングのための感度がよりよい試薬を作製するために使用することもでき、蛍光色素及び光感受性物質を、同じ抗体フラグメントにカップリングすることによって、二官能性作用剤を生成し、腫瘍イメージング及び光線療法の両方を可能にすることができる。
【0068】
本発明の第2の態様において、本発明の方法によってうることができる、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物を提供する。
【0069】
本発明の第3の態様において、最小カップリング比が3:1の担体分子にカップリングした光増感剤を含み、担体分子が選択的に標的細胞に結合する、化合物を提供する。
【0070】
好ましくは、担体分子は、光感受性物質と比較した場合、3:1の最大寸法、通常3OkDaの最大寸法を有する。このような担体の例はScFvである。
【0071】
有利なことには、光増感剤及び担体分子の機能特性及び物理的特性は、カップリングした形態で、非カップリング形態の場合の特性と比較して実質的に変化しない。
【0072】
好ましくは、担体分子は、抗体フラグメント及び/もしくはその誘導体、または非免疫原性ペプチドリガンドからなる群から選択される。
【0073】
好都合なことには、抗体フラグメント及び/またはその誘導体は、単鎖抗体フラグメント、特にScFvである。
【0074】
あるいは、担体分子は、ヒト化またはヒト分子である。
【0075】
好都合なことには、光増感剤は単官能の光感受性物質である。好ましくは、光増感剤は、ヘマトポルフィリン、Photofrin(登録商標)、天然ポルフィリン、クロリン及びバクテリオクロリン、ピロフェオホルビドaなどのフェオホルビド及びフォトクロルなどのその誘導体、クロリン(例えば、クロリンe6)、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、TOOKAD(Pd-バクテリオフェオホルビド)などの天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan)及びバクテリオクロリンなどの合成クロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィンなどのモノベンゾポルフィリン誘導体、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及び誘導体、プルプリン-18などのプルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、無金属及びメタル化メソ-トリエチニルポルフィリンなどのクロリン及びバクテリオクロリン、コア修飾ポルフィリン、モテキサフィンルテチウム及びモテキサフィンガドリニウムなどの拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、並びに非ポルフィリン系化合物(メチレンブルーなどのフェノチアジニウム誘導体、トルイジンブルー、メロシアニン-540などのシアニン、アクリジン色素、BODIPY色素及びアザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、エオシンなどのハロゲン化キサンテン色素及びローズベンガルなど)からなる群から選択される少なくとも1種類である。
【0076】
好都合なことには、光増感剤は、担体分子上のアミノ酸残基または糖分子で担体分子にカップリングしている。
【0077】
好ましくは、アミノ酸残基は、リジン、システイン、チロシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類である。あるいは、糖分子は、ヒドロキシル基を含む糖、アルデヒド基を含む糖、アミノ基を含む糖、及びカルボン酸基を含む糖からなる群の少なくとも1つから選択される。
【0078】
光感受性物質のリジン残基へのカップリングは一般に直接的であり、上記の接合の方法はまた、他のアミノ酸残基、あるいは光感受性物質部分上の異なる官能基を使用したN-またはO-結合型グリコシル化によるタンパク質に接着した糖分子を介した、光感受性物質の抗体フラグメントへのカップリングにも適用することができる。表4は、これらの残基、及びこのカップリング法で使用することができる他の可能性のあるカップリングの化学反応を一覧表示する。
【0079】
【表4】
【0080】
抗体フラグメントは、アミノ酸配列及び光感受性物質をカップリングする官能基の数及びスペーシングが異なる。接合に最も一般的で使用頻度の高い官能基は、上記のようにN末端及びリジン残基上で見出される第一級アミンである。特定の光感受性物質-抗体フラグメント接合体の有効性の主な決定要因は、光感受性物質の分子が接着している残基の空間的隔離であることを、本発明者らは驚いたことに見出した。これらの残基は、効果的なカップリングと得られた接合体の最適な光物理的性質のために、抗体表面上で別個であり、形態的に分離していなければならない。
【0081】
一般に、タンパク質は折り畳まれ、分子の中央で疎水性コアが形成され、親水性表面は生理的溶媒中で溶解性となることができる。リジン及びアルギニンなどの塩基性残基、グルタミン酸及びアスパラギン酸などの酸性残基、セリン(及び場合によってチロシン)、システイン、グルタミン及びアスパラギンなどの極性残基は、タンパク質表面に一般に見出される。多くの例において、これらの残基は、そのタンパク質の構造及び機能の維持に関与している。
【0082】
単鎖Fvなどの抗体フラグメントの例において、各ドメインは、可変重(VH)及び可変軽(VL)ドメインで構成されている。これらは、VH及びVLドメインの任意のファミリーの1つでありうる。VH及びVL遺伝子のファミリーのアラインメント(図1)は、多くの残基を任意の位置で一般に許容することができることを示す。抗原結合性ループ(相補性決定領域-CDR)の場合、これらの配列は、その同族抗原を認識する抗体の能力に特異的である。これらは抗体の特異性または親和性を変化させるように操作することができるが、単にこれだけの理由である。ドメイン配列の主たる部分は、フレームワーク領域である。図1は、どの領域が抗体の表面にある傾向があり、どの領域がコアの一部として内部にある傾向があるかを示す。抗体間の構造及び配列の高度な相同性を考慮すると、これらの領域は、すべての抗体配列に一般に適用することができる。表面のフレームワーク領域は、均等に離間している荷電残基または極性残基を含有する傾向がある(すなわち、任意の特定の位置で、特定の必要条件がない)。
【0083】
リジン残基を一例として挙げる。これらは通常抗体ドメインの表面に見出される。生殖系列ヒトVH1ファミリーのメンバーの場合、5〜6個のリジン残基があり、これらの1個または2個のみが互いに近接している。残基が他に近接しているという記述は、一次配列において隣接している、従って三次元構造において隣接しているものでありうる。あるいは、残基が一次配列では分離しているが、抗体ドメインの折り畳み構造による空間中で隣接している場合がある。直接的に隣接している残基は、空間において3〜4オングストローム離れていると定義することができる。
【0084】
本発明者らは、光感受性物質の直接的に隣接しているリジン残基へのカップリングは、光物理的消光及びより乏しい光力学的作用(光-免疫接合体の凝集の増加及びより乏しい溶解度など)がもたらされるであろうことを見出した。リジン残基がさらに分離している、好ましくは、2個のアミノ酸だけ隔たって(3.5〜7.5オングストローム)、さらに好ましくは、3個のアミノ酸だけ隔たって(9〜12オングストローム)、さらに好ましくは、4個のアミノ酸だけ隔たって(10〜15nm)、よりさらに好ましくは、5個のアミノ酸だけ隔たって(15〜20nm)、またよりさらに好ましくは、6個のアミノ酸だけ隔たって(20〜25nm)いる場合は、カップリングがより有効である。抗体は、これらの特性を有するように選別し、選択し、または操作すべきである。より最適に分離しているリジン残基を抗体がより多く有するほど、その抗体は、最適な光物理的及び光力学的作用を有する効率的で強力な光-免疫接合体をより形成するようになるであろう。
【0085】
光感受性物質カップリングのためのアミノ酸残基が互いに近接または隣接しているかを決定する方法は、当技術分野で周知である。(http://www.ebi.ac.uk/clustalw/European bioinformatics Instituteなどのウェブ資源を使用した)クラスター配列アラインメントは、一次アミノ酸配列の比較のための確立した手段である。さらに、抗体フラグメントの完全な三次元構造データの非存在下で、既知の構造(例えば、マウスのscFvの構造[89])を使用したホモロジーモデリングなどの確立した技術を使用して、抗体フラグメントの可能性のある構造を推定し、従ってカップリングのための残基が空間で近接または隣接しているかどうかを同定することが可能である。高度な相同性が抗体及び抗体フラグメントによって示されるということは、これらの技術を高度の信頼性を持って適用することができることを意味する。ホモロジーモデリングのためのウェブ資源は、無料のデスクトップのモデリングプログラムSwissPDB Viewerも提供しているSwiss Institute of Bioinformatics(http://us.expasy.org)のExpert Bioinformatics Analysis Systemなどが利用可能である。
【0086】
scFv上のリジン残基のこのような好適な分布の例を、図2において示す(ヒトVH1-VK3由来のscFv)。リジン残基の分布が、接合及び最適な光物理的性質のためにより好適でない場合、部位特異的突然変異誘発などの標準的な分子生物学的技術を使用して、不十分に離間した(密接して配置された)残基を除去し、または十分に離間した残基を導入して抗体フラグメントを変化させうる。
【0087】
上記の概念はまた、リジン以外の他のアミノ酸残基への、またはN-もしくはO-結合型グリコシル化によりタンパク質に接着した糖分子へのスペーシング及びカップリングに適用することもできる。表4では、このような残基及び使用できる可能なカップリングの化学反応を一覧表示する。
【0088】
上記の概念はまた、非抗体をベースとしたリガンドに適用することもできる。アミノ酸スペーシングにも影響されうる光感受性物質を標的とするために使用することのできるリガンドの例を、表5に一覧表示する。
【0089】
【表5】
【0090】
これによって、カップリングした光感受性物質が、光物理的性質、従って良好な光線力学療法機能を保持することをもたらすであろう。リジン残基の多くが一次配列または三次元空間中に隣接している抗体の多くの例がある。分子モデリング及び部位特異的突然変異誘発によって、少なすぎる場合は追加の残基を加え、隣接した残基を除去し、または他の残基との間の距離を増すことによって、これらのリジン残基の位置を操作することができる。
【0091】
これによって、より高い添加(光増感剤:抗体比の増加)及びより強力なPDT効果を達成することができる、光増感剤カップリングをより受け入れやすい抗体フラグメントをもたらす。光物理的性質の増加の1つの間接的測定は蛍光増加である。
【0092】
有利なことには、この化合物は、担体分子にカップリングした光増感剤の機能を調節することができる調節剤をさらに含む。好ましくは、調節剤は、安息香酸;4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸などのアジド基を含有する安息香酸誘導体;並びにアジド部分(N3)を含有する、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン及びクマリンを含めた他の芳香族基またはヘテロ芳香族基の群から選択される。芳香族及びヘテロ芳香族スルフェナートは、上記の芳香族/ヘテロ芳香族基から得た。他の特定の調節剤には、トロロックスなどのビタミンE類似体、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸及びウルソデオキシコール酸が挙げられる。
【0093】
好都合なことには、化合物は、視覚化剤、例えば蛍光色素または発光色素をさらに含む(上記を参照されたい)。
【0094】
接合体の好ましい例は、
(a)担体分子がScFvで、光増感剤がピロフェオホルビドaである。
(b)担体分子がScFvで、光増感剤がベンゾポルフィリン誘導体一酸(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))である。
(c)担体分子がScFvで、光増感剤がパラジウム-バクテリオフェオホルビド(TOOKAD(登録商標))である。
(d)担体分子がScFvで、光増感剤がクロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体である。
(e)担体分子がScFvで、光増感剤がメタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(Foscan(登録商標))である。
(f)担体分子がScFvで、光増感剤がスズエチオプルプリン(ロスタポルフィン)である。
【0095】
本発明の第4の態様において、標的細胞の破壊を必要としている疾患の治療及び/または予防におけるこの化合物の使用を提供する。
【0096】
標的細胞の破壊を必要としている疾患の診断、治療及び/または予防のための医薬の製造における、この化合物の使用も提供する。
【0097】
好ましくは、治療される疾患は、癌;加齢性黄斑変性症;免疫障害;心血管疾患;及びウイルス、細菌または真菌性感染を含めた微生物感染;BSEなどのプリオン病及び歯肉炎などの口腔/歯の疾患からなる群から選択される。
【0098】
最も好ましくは、治療される疾患は、大腸、肺、乳房、頭頸部、前立腺、皮膚、胃/胃腸、膀胱の癌、及びバレット食道などの前癌性病変である。
【0099】
好都合なことには、疾患の診断は、光増感剤、または蛍光もしくは発光色素などの任意選択の可視化剤の可視化によって行われる。
【0100】
有利なことには、化合物または組成物は、露光の前に患者に投与される。
【0101】
本発明の第5の態様において、本発明の化合物及び医薬として許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0102】
[使用する用語の意味]
「抗体フラグメント」という用語は、抗体、抗体フラグメント、または抗体誘導体の任意の1つを意味すると解釈するものとする。野生型抗体(すなわち、4本のポリペプチド鎖を含む分子);合成抗体;組換え抗体;あるいはこれらに限定されないが免疫グロブリン軽鎖及び/もしくは重鎖可変領域並びに/または定常領域のファージディスプレイにより産生された単鎖修飾抗体分子、あるいは当業者には公知である免疫アッセイフォーマットにおいて抗原に結合することができる他の免疫相互作用分子などの抗体ハイブリッドを包含することを意図している。
【0103】
「抗体誘導体」という用語は、抗体フラグメント(例えば、FabまたはFvフラグメント);あるいは抗体の他のペプチドまたはポリペプチドへの、大きな担体タンパク質への、または固体支持体(例えば、アミノ酸であるチロシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン及びその誘導体、とりわけ、NH2-アセチル基またはCOOH-末端アミド基)へのカップリングを容易にするために、1種もしくは複数のアミノ酸または他の分子を加えることによって修飾された修飾抗体分子などの、当業者には公知である免疫アッセイフォーマットにおいて抗原に結合することができる任意の修飾された抗体分子を意味する。
【0104】
「ScFv分子」という用語は、VH及びVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結している任意の分子を意味する。
【0105】
「ヌクレオチド配列」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチドのヘテロポリマーまたはこれらのヌクレオチドの配列を意味する。これらの語句はまた、一本鎖または二本鎖でもよく、ペプチド核酸(PNA)または任意のDNA様もしくはRNA様物質に対するセンス鎖またはアンチセンス鎖を表してもよい、ゲノムもしくは合成由来のDNAまたはRNAも意味する。本明細書における配列において、Aはアデニン、Cはシトシン、Tはチミン、Gはグアニン、NはA、C、GまたはT(U)である。ポリヌクレオチドがRNAである場合、本明細書において示されている配列中のT(チミン)はU(ウラシル)で置き換えられることが意図されている。一般に、本発明により提供される核酸セグメントは、ゲノム及び短いオリゴヌクレオチドリンカーのフラグメントから、または一連のオリゴヌクレオチドから、または個々のヌクレオチドから構築されてもよく、微生物もしくはウイルスオペロン、または真核生物遺伝子由来の調節エレメントを含む組換え転写ユニット中で発現することができる合成核酸を提供する。
【0106】
「ポリペプチド」または「ペプチド」または「アミノ酸配列」という用語は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列またはそのフラグメント、及び天然に存在する分子または合成分子を意味する。ポリペプチド「フラグメント」、「部分」、または「セグメント」とは、少なくとも約5個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも約7個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも約9個のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約17個以上のアミノ酸の、1本のアミノ酸残基である。活性であるためには、任意のポリペプチドは、生物学的及び/または免疫学的活性を示すために十分な長さを有さなければならない。
【0107】
「精製した」または「実質的に精製した」という用語は、本明細書で使用する場合、他の生体高分子、例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質などが実質的に存在しない中で、示した核酸またはポリペプチドが存在することを示す。一実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、示した存在する生体高分子の少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%を構成するように精製される(しかし、水、緩衝液、及び他の小分子、特に1000ダルトン未満の分子量を有する分子は存在することができる)。
【0108】
「単離した」という用語は、本明細書で使用する場合、自然源中で核酸またはポリペプチドと共に存在する少なくとも1種類の他の成分(例えば、核酸またはポリペプチド)から分離している核酸またはポリペプチドを意味する。一実施形態では、核酸またはポリペプチドは、(もしある場合は)溶媒、緩衝液、イオン、または同様の溶液中に通常存在する他の成分のみの存在下で見出される。「単離した」及び「精製した」という用語は、その自然源中に存在する核酸またはポリペプチドを包含しない。
【0109】
「組換え」という用語は、ポリペプチドまたはタンパク質について言及するために本明細書において使用される場合、ポリペプチドまたはタンパク質が組換え(例えば、微生物、昆虫、または哺乳動物)発現系に由来することを意味する。「微生物」とは、細菌または真菌(例えば、酵母)発現系中で作製される組換えポリペプチドまたはタンパク質を意味する。産生物として、「組換え微生物」は、本質的に天然内在性物質がなく、関連する天然グリコシル化を伴わないポリペプチドまたはタンパク質と定義される。大部分の細菌培養物、例えば大腸菌で発現したポリペプチドまたはタンパク質は、グリコシル化修飾がないであろうし、酵母で発現したポリペプチドまたはタンパク質は、一般に哺乳動物細胞で発現したものと異なるグリコシル化パターンを有するであろう。
【0110】
「発現ベクター」という用語は、DNA(RNA)配列からポリペプチドを発現するための、プラスミドまたはファージまたはウイルスまたはベクターを意味する。発現ビヒクルは、(1)遺伝因子または遺伝子発現において規制的役割を有する因子、例えば、プロモーター及び多くの場合エンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造またはコード配列、並びに(3)適切な転写及び翻訳の開始及び終止配列、のアセンブリーを含む転写ユニットを含むことができる。酵母または真核生物の発現系での使用されるための構造ユニットには好ましくは、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。あるいは、組み換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現している場合は、アミノ末端メチオニン残基を含みうる。この残基は引き続いて、発現した組み換えタンパク質から切断されまたは切断されず、最終産生物を提供しうる。
【0111】
「選択的結合」及び「結合選択性」という用語は、本発明の抗体の可変領域が、もっぱら本発明のポリペプチドを認識し、結合する(すなわち、ポリペプチドのファミリーに見出される配列同一性、相同性、または類似性にもかかわらず、本発明のポリペプチドを、他の同様のポリペプチドと見分けることができる)が、抗体の可変領域外、特に分子の定常領域内の配列との相互作用によって、他のタンパク質(例えば、ELISA技術における黄色ブドウ球菌タンパク質Aまたは他の抗体)とも相互に作用しうることを示す。本発明の抗体の結合選択性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、当技術分野で日常的に行われている。このようなアッセイの網羅的な議論のためには、Harlowら(Eds)、Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、N.Y.(1988)、Chapter6を参照されたい。抗体が何よりもまず、上記で定義したように、本発明の完全長ポリペプチドに選択的であるという条件で、本発明のポリペプチドのフラグメントを認識し結合する抗体もまた意図されている。本発明の完全長ポリペプチドに選択的な抗体と同様に、フラグメントを認識する本発明の抗体は、タンパク質のファミリーに見出される固有の配列同一性、相同性、または類似性にもかかわらず、ポリペプチドを同じファミリーのポリペプチドから見分けることができる抗体である。
【0112】
「結合親和力」という用語は、抗体分子と抗原との間の結合力の意味を含む。
【0113】
「カップリング比」という用語は、1つの担体分子にカップリングした光増感剤の分子数を意味する。
【0114】
「担体分子」という用語は、光増感剤がカップリングする任意の作用剤の意味を含む。特に、担体分子は、それだけに限らないが、抗体フラグメント及び非免疫原性ペプチドが挙げられる小さな化合物でよい。
【0115】
「単官能の光感受性物質」または「単官能の光増感剤」という用語は、活性化され及びカップリングすることができる単一のプロピオン酸側鎖を含有するPPaなどの光感受性物質を意味し、あるいは感受性物質は、当技術分野において公知の化学反応を使用することによって、活性化/カップリングされうる基を有するための保護/脱保護の化学反応によって修飾することができる。
【0116】
「非プロトン性溶媒」という用語は、OH基を有さず、従って水素結合を供与できない溶媒を意味する。
【0117】
[好ましい実施形態]
本発明の特定の好ましい態様を実施する実施例を、下記の図に関連してこれから説明する。
【0118】
[材料]
すべての化学物質は、記述がない限りSigma-Aldrich UKから購入した。PPaはFrontier Scientific、UKからのもの、C6.5 scFvはProf.Marks(University of California、San Francisco、USA)から譲渡され、MFE-23scFvはDr Chester(Royal Free Hospital、University College London、UK)から譲渡され、HuBC-1 scFvはAntisoma Research Ltd(London、UK)から譲渡された。分子生物学試薬及び細菌はStratageneからのもの、ヒト細胞系はECACC、UKから、クロマトグラフィー充填剤はAmersham Biosciences、UKから、マウスはHarlan、UKから、光源はPhototherapeutics、UK及びHigh Powered Devices、New Jersey、USAからであった。
【実施例】
【0119】
<実施例1:抗Her2scFvの調製>
1.選択され特徴がはっきりした、抗癌scFv、例えばc6.5(抗Her2)をPCR増幅し、NcoI/NotIフラグメントとして細菌発現ベクター(例えば、pET20b、Novagen)にクローニングし、pETC6.5 scFvを作製した(図3)。
2.塩化カルシウム法により、ベクターpETc6.5 scFvを大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換し(Sambrookら、1990)、アンピシリン100mg/mlを含有する2TY寒天プレート上に播いた(Sambrookら、1990)。単一のコロニー形質転換体を採取し、アンピシリンを含有する新鮮な2TY寒天プレート上に再び筋状に並べた。
3.単一のコロニーを採取し、振盪培養器(250rpm)中でアンピシリン100mg/mlを含有する2TY培地5ml中、8〜16時間30℃で増殖させた。次いでこの培養物を使用して、アンピシリン100mg/mlを含有する2TY培地500mlの培養物を接種し、さらに3〜16時間同様の条件下で増殖させた。
4.培養上清を収集し、30KDaカットオフ膜を有するAmicon限外濾過攪拌セルを使用して、10mlの最終容量に濃縮した。あるいは、細菌ペリプラズムを、10mlの容量でスクロース浸透圧ショック法を使用して調製することができる。
5.濃縮上清またはペリプラズム抽出物を、0.5MのNaCl及び2mMのMgCl2を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5Lに対し16時間透析した。次いでこれを銅(II)またはニッケル(IΙ)を充填したキレートセファロースカラム(Amersham-Pharmacia Biotech)に加え、例えば[14]に記載されているように、金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製した。組み換えタンパク質は、40〜150mMのイミダゾールでイミダゾール勾配によって溶出した(図4)。
6.溶出した融合タンパク質を、PBS中で平衡化したsuperdex-75カラム(Amersham-Pharmacia Biotech)で、ゲル濾過によりさらに精製する。得られたタンパク質を、c6.5 scFvと称する。
【0120】
<実施例2:PPaスクシンイミジルエステルの調製(図5)>
1.乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビドa(50mg、0.094mmol)の光から保護された溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
2.12時間攪拌した後、沈降したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上で精製した(Rf0.66)。
3.単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステル(1)を70%の収率で得た。MS(FAB+)631(M+、100%)。
4.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
【0121】
<実施例3:c6.5 scFvのPPaへの接合-溶媒系1>
1.次いで、100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
2.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図6)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
3.例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000159g/mlの場合、0.0000159g/ml中のPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のC6の分子数は、2×1015であった。従って、PPa:C6.5の比は8:1であった。
【0122】
<実施例4:MFE-23(抗CEA)scFvのPPaへの接合-溶媒系2>
1.MFE-23のストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで、ピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、DMSO 1.58mMのストック溶液からMFE-23に、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対し一晩透析した。
3.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図7)。410nmの吸光度値を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000129g/mlの場合、0.0000129g/mlのPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のMFEの分子数は2×1015であった。従ってPPa:MFE-23の比は6:1であった。
【0123】
<実施例5:PB1スクシンイミジルエステルの調製(図8)>
1.光から保護されたPB1の安息香酸誘導体(20mg、0.01136mmol)の無水THF溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(2mg、0.017mmol)、次いでジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.5mg、0.017mmol)を加えた。12時間攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによってTHF(Rf0.79)で溶出するシリカゲル上で精製し、所望の化合物(2)を濃緑色の固体として65%の収率で得た。MS(FAB+)1860(M+2、80%)。
【0124】
<実施例6:c6.5 scFvのPB1への接合-溶媒系1>
1.C6.5ストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで100%DMSO中で作製したPB1([94]を参照されたい)を、1.58mMのストック溶液からC6.5に、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPB1を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
3.接合体の分析。接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。460nmの吸光度値を測定し、PB1の検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
【0125】
<実施例7:BA調節物質のscFvまたはscFv-PPa接合体へのカップリング>
1.MFE-23ストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 690.8μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。
2.溶液を攪拌し、DMSOに溶解したベンゾイルスクシンイミジルエステル(安息香酸をN-ヒドロキシスクシンイミド及びDCCと乾燥ジクロロメタン中で反応させることにより調製)0.491μMの溶液15.2μlを加えた(16当量の安息香酸を得た)。溶液を室温で30分間攪拌し、次いで連続して攪拌しながらフラスコを氷上で冷却した。
3.次いで、1.58mMのストック溶液から100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
4.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図7)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。例えば、カップリング反応中に見出されるPPaの濃度が0.0000129g/mlの場合、0.0000129g/ml中のPPaの分子数は1.4×1016であった。100μg/ml中のMFEの分子数は2×1015であった。従ってPPa:MFE-23の比は6:1であった。
【0126】
<実施例8:HuBC-1 scFvのPPaへの接合(PDTのための乏しいscFv)>
1.乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビドa(50mg、0.094mmol)の光から保護された溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、次いでジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
2.12時間攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した(Rf0.66)。
3.単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステル(1)を70%の収率で得た。MS(FAB+)631(M+、100%)。
4.HuBC-1 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
5.次いで、100%DMSO中で作製したピロフェオホルビドaスクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からHuBC-1 scFvに、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のPPaを得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
6.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図9)。410nmでの吸光度を測定し、PPaの検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
7.410nmの低い吸光度ピークは、PPAカップリングの程度を決定することが可能でなかったことを意味する。
【0127】
<実施例9:C6.5 scFvのクロリン(e6)への接合>
1.光から保護されたクロリンe6(0.00184mmol)の無水DMF溶液に、等モル量のN-ヒドロキシスクシンイミド及びジシクロヘキシルカルボジイミドの両方を加え、混合物を12時間アルゴン下で攪拌した。
2.得られた混合物を氷水中で短時間冷却し、次いで濾過し、ジシクロヘキシル尿素副生成物を除去し、乾燥するまで蒸発させて、クロリンe6スクシンイミジルエステルを濃緑色の固体として得た。
3.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
4.次いで100%DMSO中で作製したクロリンe6スクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のCe6を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
5.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った(図10)。410nmの吸光度を測定し、Ce6の検量線と比較することによってPSの濃度(g/ml)を決定した。
6.例えば、カップリング反応中に見出されるCe6の濃度が0.000034g/mlである場合は、0.000034g/ml中のCe6の分子数は3.43×1016であった。100μg/mlのC6の分子数は2×1015であった。従ってCe6:C6.5の比は9:1であった。
【0128】
<実施例10:C6.5 scFvのPPaヒドラジン誘導体への接合>
1.PPaのヒドラジド誘導体の調製。ピロフェオホルビドaのプロピオン酸側鎖を、標準文献による手順によって塩化アシルに変換した(DCM中の塩化オキサリル)。酸クロリドを粘着性の緑色の残渣として得て、さらなる精製をせずに使用した。
2.酸クロリドの無水DCM溶液を、無水DCM中の過剰の98%ヒドラジンに1滴ずつ加え、反応をTLCによりモニターし、1時間未満で終了した。過剰な溶媒及び試薬を蒸発させ、残渣をクロマトグラフィーにより精製した。次いで、PPaヒドラジドのストック溶液をDMSO中で作製した。
3.scFv、例えばC6.5を、下記のように糖鎖を持つように操作した。部位特異的突然変異誘発を使用して、scFvの表面にわたってN-結合型グリコシル化部位を、リジン残基スペーシングですでに説明した概念に従って、すべて十分に離間した位置で組み込んだ。このクローンを、グリコシル化を行うことのできる宿主細胞のために適切な発現ベクター(例えば、ピキアパストリス酵母中で発現するためのpPICベクター)中に入れた。
4.scFvを発現させ、メーカーの指示に従ってNTA-ニッケルクロマトグラフィーを使用して精製した。
5.誘導体化されたPPaを、グリコシル化scfv上のアルデヒド残基にカップリングさせた。アルデヒド残基へのカップリングは、ヒドラゾン結合の形成と共に緩衝化した環境において迅速に進行する。
【0129】
<実施例11:scFV-PPa接合体の光物理的特性決定>
1.接合体の段階希釈(半減濃度)をPBS中で行い、蛍光を410nmの励起波長及び680nmの放射波長で測定した。
2.これらをPBS中の遊離PPaと比較した。c6.5 scFv-PPa(図11)及びMFE scFv-PPA(+/-安息香酸)の例を示す(図12)。
【0130】
<実施例12:scFV-PPa及びscFv-PPa/BA接合体の生化学的特性決定>
1.抗CEA scFv-PPa分子のin vitroでの結合特性を、ELISA(Lane、1990)により、または開示された方法Lipschultzら「Experimental Design For Analysis of Complex Kinetics Using Surface Plasmon Resonance」Methods(2000)20、3180を使用してBIACore表面プラズモン共鳴により行い、非修飾scFvと比較した。scFv-PPa/BAの細胞結合もまた、共焦点蛍光顕微鏡検査法であるFluorescently Activated Cell Sorting(FACS)によって決定することができる非修飾タンパク質と比較することができる。
2.一例として、96ウェルELISAプレートを、PBS中の癌胎児性抗原(CEA)1μg/mlでコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートをPBS-0.1%tween中で3回、及びPBSで3回洗浄した。
3.次いで、ELISAプレートを、ブロッキング緩衝液(PBS-0.1%tween中の10%Marvel(登録商標))中で60分間37℃にてインキュベートした。
4.ブロッキング緩衝液をウェルから除去し、100〜1.9×104μg/mlからのMFEの半減希釈を得るようにブロッキング緩衝液中で希釈した50μlの接合体または非接合体化MFEを、各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし、ウェルを上記のように洗浄した。
5.一次抗体(50μl、ウサギ抗MFE、1:40000にブロッキング緩衝液中で希釈)を、各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし洗浄した。
6.二次抗体(50μl、抗ウサギ・ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合体、1:10000にブロッキング緩衝液中で希釈)を各ウェルに加えた。プレートを上記のようにインキュベートし洗浄した。BMブルー(50μl)を各ウェルに加え、青色が発色するまで暗中室温でインキュベートした。
7.0.5Mの塩酸50μlを加えることにより反応を止めた。次いで、試料を460nmで読み取った(図13)。
【0131】
<実施例13:c6.5 scFv-PPa接合体のin vitro細胞毒性>
1.in vitro細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例では、LoVo及びLS17T)を、75cm2フラスコ中で、37℃、5%CO2、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中に保持した。SkoV3細胞には、使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したMcCoy5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で、15分間、または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブ中に入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシン不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、室温で10分間1800g収集し、DMEMまたはマッコイ培地1ml中でペレットを穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、DMEMまたはマッコイ培地のさらなる19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で結果的に希釈し、2×106細胞/mlとした。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいC6.5濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが光に曝さないウェル、及び接合体を加えず光にも曝さないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変化しない限り「光のみ」の対照は含めない。
5.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
6.PBSを各ウェルから除去し、DMEMまたはマッコイ培地100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
7.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを使用して(Promegaプロトコルに従って)行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、37℃で暗中60分間インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で490nmにて測定した。
8.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図14)。
【0132】
<実施例14:MFE scFv scFv-PPa/BA接合体のin vitroでの細胞毒性>
1.in vitroでの細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例において、LoVo、LS17TまたはSkov3)を、75cm2フラスコ中、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中で、37℃、5%CO2に維持した。SkoV3細胞のために使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したマッコイ5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で15分間または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブに入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシンを不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、10分間室温で1800g収集し、ペレットをDMEMまたはマッコイ培地1ml中で穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、さらにDMEMまたはマッコイ培地19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で希釈し、結果的に2×106細胞/mlを得た。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいMFE濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが光に曝さないウェル、及び接合体を加えず光にも曝さないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変化しない限り「光のみ」の対照は含めない。
5.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
6.PBSを各ウェルから除去し、DMEM100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
7.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを(Promegaプロトコルに従って)使用して行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、60分間37℃で暗中インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で490nmにて測定した。
8.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図15)。
【0133】
<実施例15:scFv-PPa接合体のin vivoターゲティング>
1.in vivoでの腫瘍根絶を下記のように決定することができる。約1×107SKOV-3細胞を、ヌードBALB/Cマウスの側腹部にs.c.注射し、腫瘍を4〜6週間定着させた。
2.10〜50μgの125-ヨウ素放射性標識した(Iodogen法、Pierce Chemical Co.を使用)scFv-PPaを、腫瘍担持マウスの尾静脈にi.v.注射し、1〜48時間にわたり腫瘍に集積させた。
3.分析した各時点からの3匹以上のマウスの群を終末麻酔の下で処分し、解剖し、腫瘍、血液及び様々な臓器をscFv-PPa取込みについて分析した。PPa単独及びscFvでの対照実験を行う。
4.一例として、c6.5-PPaの腫瘍ターゲティングを、scFv及びPPa単独と比較して図16に示す。親水性scFvに接着した後は、疎水性光感受性物質の血液循環時間は減少が見られた(図17)。
【0134】
<実施例16:scFv-PPa接合体のin vivo光線力学療法>
1.in vivo腫瘍根絶を下記のように示すことができる。約1×107SKOV-3細胞を、ヌードBALB/Cマウスの側腹部にs.c.注射し、腫瘍を4〜6週間定着させる。
2.50〜200μgのscFv-PPaを、腫瘍担持マウスの尾静脈にi.v.注射し、12〜24時間にわたり腫瘍に集積させる。
3.腫瘍:正常臓器比が高い時(5:1以上、例えば16時間)に、光を2.4W/cm2で腫瘍に照射する。
4.カリパーを使用して腫瘍の大きさを測定し、生理食塩水のみで処置したマウスと比較する。腫瘍をPDT誘発ネクローシスについて観察した(図18)。
【0135】
<実施例17:光感受性物質カップリングのために最適化された官能基を有するためのscFv(例えば、HuBC-1)の操作>
1.実際には非常に乏しい光物理的性質(蛍光、一重項酸素生成及びin vitroの光細胞毒性など)を示すことが示されてきたscFvを、一次構造及び三次構造レベルで分析する。これは、光感受性物質へのカップリングまたは三次元構造の検査のために良好なものであると知られているscFvへのアミノ酸アラインメントによって行うことができる。
2.活性化した光感受性物質とのカップリングに使用される残基、例えばリジン残基を同定する。
3.一次配列において、または三次元モデル(または実際の構造)から位相的に互いに隣接したものを、部位特異的突然変異誘発によって操作する。変更は、最適に離間したリジン残基の導入、他に近すぎるリジンの除去、または不用なリジンと他の同様ではあるが(アルギニンまたはグルタミンなどの)接合が可能でない残基との置換の場合がある。
4.この実施例において、抗フィブロネクチンscFv HuBC-1をc6.5に整列させ、リジン位置を同定した。リジン位置がむしろc6.5に見出されるものに近いものに変更された(図19)、6つの変化が同定された(図10)。
5.同定された各々の可能性のある変更(この実施例では全部で6)は、抗体遺伝子中の単一の変異として抗体フラグメントにおいて生じる。Stratagene Quick Change(登録商標)システムを使用して突然変異誘発を行った。
6.抗体特性のいずれかが突然変異誘発によって変化または破壊されているかどうかを確かめるために、(4)からの各変異抗体を試験する。宿主細胞(例えば、大腸菌)中の抗体タンパク質の発現、精製、(ELISA及びBIACore表面プラズモン共鳴による)抗原結合性、(ELISA、FACS及び免疫顕微鏡観察による)細胞結合、安定性アッセイ(温度、尿素が誘発するアンフォールディング及び血清安定性)をすべて行う。
7.抗体の安定性及び機能を有意に変化させない変異を保持し、有害な変異を捨てる。
8.すべての変異を、1つの抗体遺伝子に組み合わせ最適化した光感受性物質カップリングのための新たに配置されたリジン残基を有するタンパク質を形成する。
9.この抗体を実施例1〜11におけるように使用して、抗体-光感受性物質接合体を作製する。
【0136】
<実施例18:scFv-光感受性物質接合体による抗微生物ターゲティング>
1.特徴がはっきりした抗微生物抗体を、実施例1(上記)で記載したものと同じ技術を使用してクローニングし、発現させ、精製する。
2.実施例2〜5(上記)に記載したように、光感受性物質を接着させる。
3.抗菌の細胞殺滅。初めに、多数の細菌種に対する多数の光感受性物質接合体を選別する迅速な方法を行った。細菌の一晩培養物を遠心分離により収集し、PBS中に再懸濁させた。細菌培養物(1ml)を寒天プレートに広げ、30分間乾燥させた。
4.この後、光感受性物質5μlを広げた細菌の上に置き、レーザーダイオードからの光に2分間曝した(35mW、675nm)(エネルギー密度=1.4J/cm2)。プレートを一晩37℃でインキュベートした。
5.翌日、光感受性物質接合体及び光を施用した場所以外は、プレート上に細菌の菌叢が増殖しているはずである。細菌増殖がここで起こっていることが見出された場合は、対応する光感受性物質接合体はさらに調査しなかった。成功したことが見出されたそれらの光感受性物質接合体/細菌の組合せを、下記のようにさらに分析した([93、94]からの改良した方法)。
6.細菌の一晩培養物を収集し、PBS中で再懸濁させた。細菌の一定分量(100μl)を採取し、24ウェルプレートのウェルに加えた。次いで、連続希釈した光感受性物質接合体l00μlを、3通り各ウェルに加えた。特定の時間(通常1〜30分間)懸濁液を攪拌し、その後細菌を遠心分離により収集し、PBSまたは0.15MのNaClで4回洗浄した。細菌ペレットをPBSまたは0.15MのNaCl中で再懸濁させ、24ウェルプレートに入れた。次いで、ウェルをレーザーダイオードからの光に曝した(エネルギー密度=1.4J/cm2)。すべての懸濁液を各ウェルから取り出し、2TYブロス中で連続希釈した。一定分量(25μl)を各希釈物から取り出し、寒天プレートの半分に置いた。次いで、懸濁液を寒天プレートの半分に広げて、プレートを一晩37℃でインキュベートした。
7.翌日、プレート上にあるコロニーの数を数えた(すなわち、20〜200コロニーを有するプレート)。次いで、光感受性物質がないまたは光による処理をしない懸濁液からのコロニーと比較して、細菌の細胞生存を計算した。
【0137】
<実施例19:C6.5 scFv-PPaを有するSKOV3細胞の細胞イメージング>
1.円形のカバーガラスをエタノール中で洗浄し、PBS中でそそいだ。次いで、カバーガラスを12ウェル組織培養プレート中に置いた。
2.SKOV3細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄した。細胞ペレットをマッコイ培地中で再懸濁させ、細胞をカバーガラス上に2×105細胞/mlで播いた。細胞を、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
3.接着細胞が付いたカバーガラスを、PBS中で注意深くそそぎ、C6-PPaまたはPBSをウェルに加えた。細胞を、37℃及び5%CO2で30分間インキュベートし、その後それらをPBSで注意深くそそいだ。
4.細胞を、4%パラホルムアルデヒド2ml中で60分間室温にてインキュベートすることによって、カバーガラス上に付けた。この後、カバーガラスをPBSで洗浄し、セルを横にしてスライドガラス上に反転させた。次いで、マニキュア液を使用してカバーガラスの端を密封した。
5.次いで、Leicaレーザー走査共焦点顕微鏡を使用して、励起光源としてAr+レーザー(418nm)を使用して蛍光イメージングを行った。画像を図20及び24に、放出スペクトルを、図21及び24に示す。
【0138】
図24a及び24eは各々、図24b及び24fにおける対応する各々の発光スペクトルを有する遊離PPaと同じ量でインキュベートしたHER-2陰性及びHER-2陽性細胞系を示す。画像及び発光スペクトルは、KB細胞はSKOV3細胞より2倍超PPaを取り込むことを示す。図24c及び24gは、C6-PPa(図24a、b、e、fと同量のPPa)と共にインキュベートしたHER2陰性及び陽性細胞系を示し、対応する発光スペクトルを図24d及び24hに示す。
【0139】
C6.5 scFvは、KB細胞で観察されるPPaの放射波長と関連しない非常に弱い蛍光を有するPPaターゲティングに明瞭に影響を与えた。しかし、強力なPPaをベースとした蛍光がSKOV3細胞系に見られる。透過重層(図24i及び24j)は、PPaが点状のエンドソーム様染色と共に細胞の至るところに広がっていることを、より明確に示す。
【0140】
<実施例20:C6.5と比較したFl、GP6及びD1.3抗体接合体>
Fl及びGP6(抗ヒト胎盤アルカリホスファターゼ)及びD1.3(31)を、pHEN2で発現させた。すべてのscFvの発現及び精製は、C6.5のための上記と同様であった。
【0141】
ピロフェオホルビド-a光感受性物質のscFvへのカップリング
ピロフェオホルビド-aスクシンイミジルエステルを、下記のようにscFvへのカップリングのために合成した。光から保護した乾燥DCM/THF(9:1)の混合物中のピロフェオホルビド-a(50mg、0.094mmol)の溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(12.9mg、0.11mmol)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.2mg、0.11mmol)を加えた。
【0142】
12時間(室温で)攪拌した後、沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過し、溶媒を除去した。粗生成物を、少量のクロロホルム中に入れ、ヘキサンを加えることにより沈殿させた。沈澱物を回収し、ヘキサンでよく洗浄し、得られた粗生成物を、酢酸エチル中の2%ヘキサンで溶出するシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した(Rf0.66)。単離した生成物をDCM/ヘキサンから再結晶させ、純粋なスクシンイミジルエステルを70%の収率で得た。
【0143】
ピロフェオホルビド-aスクシンイミジルエステルを、100%DMSO中で再懸濁させ、6%アセトニトリルを含有するPBS中で52.8mM〜3.3mMの濃度でMFE-23、C6.5またはHuBClを40℃で30分間連続攪拌しながら加えた。次いで光-免疫接合体(PIC)を、1つの緩衝液を変更したPBSに対して透析した。
【0144】
C6.5、Fl、GP6及びDl.3の比較のために、すべてのscFvの中で最も乏しい発現をしたGP6と同じになるようにすべてのscFvの濃度を調節した。scFvを0.3mMの濃度でPPaにカップリングさせた。カップリング前にタンパク質の沈殿はなく、scFv-PPa接合体は、0.5mg/ml以下の濃度で可溶性を保持した。
【0145】
上記でC6.5のために説明したようにSDS-PAGEを行い、クマシーブルーで染色した。非染色ゲルを、セミドライブロッティング装置(Biorad)を使用して、ニトロセルロース上に移し、穏やかに乾燥させた。
【0146】
短波長UV-トランスイルミネーターのブロット上でPPaを励起させることにより蛍光を可視化した。Ppa:scFv比を決定するための計算の一例として、PPa65mg/mlの吸光度は、670nmで1AUである。従って、0.2AUは、PPa13mg/mlと等しく、これは2.4×10-5MのPPa(MW=535)と等しい。これは、1.7×10-6M(MW=30,000)と等しい50mg/mlの濃度でscFvにカップリングしていることが見出された(図1Bを参照されたい)。比は、14.1:1ということになり、これは30%非共有結合を補正した後は9.9:1となる。
【0147】
[結果]
100%DMSO及びPBS/1.9%DMSO中の遊離PPaの吸光度プロファイルを図22Aに示す。両方とも、400nm付近で特徴的なピーク(Soretピーク)、500〜630nmでより小さいピーク、及び670nmでQ帯を示す。図22Bは、PPaにカップリングしたC6.5 scFvのプロファイルを示す。ピークは鋭さを残し、遊離PPaのピークと同様である。PPaの濃度を決定するために670nmでの吸光度を使用して、PPa:scFv比を計算するために使用し、これは11.92±1(5つの別個のカップリング反応の平均)であった。これによって、少量(30%)の非共有結合を補正した後、効率的な比である約8:1が出る。MFE scFvに接着した場合のPPaのプロファイルを図22Cに示す。
【0148】
良好なカップリング比を得るのに重要なそれらの要素を理解するために、4つの他のscFvをPPaにカップリングした(図22D)。D1.3scFv-PPaは、C6.5 scFvによって例示される「理想的な」吸光度パターンに近く、F1 scFv-PPaは、やや効率的ではない。
【0149】
しかし、GP6 scFv-PPa及びHuBC-1 scFv-PPaは、広がったピークを有する乏しいプロファイルを示し、これは凝集の可能性を示す。すべてのscFvカップリング試験のPPa:scFv比を表6に示す。
【0150】
【表6】
【0151】
この研究において使用されたscFv配列アラインメント(図26)によって、再現性のあるカップリング及び良好な一重項酸素収率を実現するC6.5は、より乏しいPIC(HuBC-1、GP6及びFl)となるscFvと比較して、空間的に分離していることが予測されるリジンをより有することが明らかになった。
【0152】
<実施例21:ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルの調製(図27)>
Scherrerら(1986)J.Org.Chem.51:1094〜1100に記載されているように、ベルテポルフィンを得た。
1.ベルテポルフィンスクシンイミジルエステル(図27、化合物「b」)を、PPaで説明したように調製した。光から保護されたベルテポルフィン(6mg)の乾燥THF(5ml)溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(3mg)、続いてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、6mg)を加えた。
2.反応混合物を12時間室温で窒素下攪拌し、この時点ですべての出発物質が消費された。
3.溶媒を蒸発させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーによってシリカゲル上で精製し、DCM中の溶液として充填し、酢酸エチル(Rf0.74)で溶出し、75%の収率で純粋なベルテポルフィンスクシンイミジルエステルを得た。MS(FAB+)832(M+)。
4.C6.5 scFvのストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。この溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
【0153】
<実施例22:c6.5 scFvのベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))への接合-溶媒系1>
1.次いで、100%DMSO中で作製したベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルを、1.58mMのストック溶液からC6.5 scFvへ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、暗中4℃でPBS 5Lに対して一晩透析した。
2.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。410nmの吸光度を測定し、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の検量線と比較することによって、PSの濃度(g/ml)を決定した。
【0154】
<実施例23:MFE-23(抗CEA)scFvのベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))への接合-溶媒系2>
1.MFE-23のストック溶液(500μg/ml)を室温で解凍し、200μlをPBS 706μlに加えた。アセトニトリル(60μl)を溶液に加えた。溶液を冷却するまで氷上で攪拌した。
2.次いで、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルを、DMSO 1.58mMのストック溶液からMFE-23へ、連続して攪拌しながら加えた(34μl)(16当量のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))を得た)。30分攪拌しながら、混合物を暗中、氷上に置き、その後溶液を透析管中に入れ、PBS 5Lに対して4℃で暗中一晩透析した。
3.接合体の各試料を石英キュベット中に入れ、PBSを含有するブランクに対して吸光度プロファイルを行った。410nmの吸光度を測定し、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の検量線と比較することによって、PSの濃度(g/ml)を決定した。従ってベルテポルフィン(Visudyne(登録商標)):MFE-23の比は、8:1〜10:1であった。
【0155】
<実施例24:scFV-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体の光物理的特性決定(図28)>
1.接合体の段階希釈(半減濃度)を、PBS中で行い、吸光度を690nmの励起波長及び680nmの放射波長で測定した。
2.これらをPBS中の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))と比較した(図28)。
【0156】
<実施例25:c6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体のin vitro細胞毒性(図29)>
1.in vitroでの細胞毒性を下記のように測定した。標的細胞(この実施例において、SKOV3細胞を抗原陽性細胞として使用し、KB細胞を抗原陰性細胞として使用した)を、75cm2フラスコ中、10%ウシ胎児血清及び5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加した培地(DMEM)中で、37℃、5%CO2に維持した。SKOV3細胞のために使用した培地は、15%FBS、5mMのペニシリン/ストレプトマイシンを添加したマッコイ5A培地であった。
2.70〜80%集密的となると、細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン5mlを加えた。フラスコを、37℃、5%CO2で15分間または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。次いで、細胞を50mlのFalconチューブに入れ、DMEMまたはマッコイ培地15mlを加えることによってトリプシンを不活性化した。
3.細胞(20μl)をチューブから取り出し、計数のために血球計算器に入れた。残りの細胞を、10分間室温で1800g収集し、ペレットをDMEMまたはマッコイ培地1ml中で穏やかに再懸濁させた。細胞を完全に再懸濁させ、さらにDMEMまたはマッコイ培地19mlを加えた。細胞をDMEMまたはマッコイ培地中で希釈し、結果的に2×106細胞/mlを得た。次いで、細胞(50μl)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、一晩37℃及び5%CO2でインキュベートした。
4.下記の手順を抑えた照明下で行った。翌日、接合体をPBS中で希釈し、100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.25μg/ml、3.125μg/ml、1.56μg/ml及び0.78μg/mlと等しいC6.5濃度を得た。細胞を一度PBSで洗浄し、接合体50μlを4通りウェルに加えた。対照ウェル(接合体を加えたが、光に曝していないウェル、及び接合体を加えず、光にも曝していないウェル)もまた含めた。レーザー光のみでは細胞生存率に影響を及ぼさないことが従前の実験から確認されたため、光源、または光のエネルギー線量が変わらない限りは「光のみ」の対照は含めない。
6.細胞を、接合体または遊離PS(濃度は様々である)中で30分間37℃、5%CO2でインキュベートし、次いでPBSで3回洗浄した。PBS(50μl)を各ウェルに加え、4通り作製したウェルをレーザー光に2分間曝した(エネルギー線量=4.2J、エネルギー密度=1.4J/cm2)。
7.PBSを各ウェルから除去し、DMEMまたはマッコイ培地100μlを加えた。プレートを箔で緩く包んだが、周辺光が入らないように適切に覆った。次いで、プレートを上記のように48時間インキュベートし、その後細胞殺滅アッセイを行った。
8.細胞殺滅アッセイを、Cytotox-96キットを使用して(Promegaプロトコルに従って)行った。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞溶解剤50μlを加えた。プレートを、37℃で暗中60分間インキュベートした。この後、基質溶液50μlを加えた(これは細胞中の乳酸デヒドロゲナーゼの量を示す)。これを室温で30分間インキュベートし、次いで停止液(0.5Mの酢酸)50μlを加えた。細胞懸濁液をウェルから除去し、未使用のマイクロタイタープレート中に置いた。次いで、吸光度をマイクロタイタープレートリーダー中で690nmにて測定した。
9.細胞殺滅を決定し、対照に対する割合で表した(図29)。
【0157】
結果:IC50は下記の通りである。
SKOV3細胞上のC6.5-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体=2.2μM
KB細胞上のC6.5-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体=28.1μM
SKOV3細胞上のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))=15.3μM
KB細胞上のベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))=10μM
【0158】
従って、C6.5 scFvを使用して標的されると、ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))は、7倍強力となり、13倍特異的となる。
【0159】
<実施例26:製剤及び投与>
本発明のさらなる態様は、医薬もしくは動物用医薬として許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、本発明の第1の態様による化合物を含む製剤を提供する。
【0160】
製剤は、活性成分の1日用量もしくはユニット、1日の部分用量、またはその適切な画分を含有する単位用量であることが好ましい。
【0161】
本発明の化合物は、任意選択で無毒性の有機もしくは無機の酸、または塩基、付加塩の形態で、医薬として許容される剤形の、活性成分を含む製剤の形態で、経口または任意の非経口経路によって通常投与されるであろう。治療される疾患及び患者、並びに投与経路によって、組成物は様々な用量で投与されうる。
【0162】
ヒトの治療において、本発明の化合物は、単独で投与することができるが、意図する投与経路及び標準的な薬務によって選択された適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して一般に投与されるであろう。
【0163】
例えば、本発明の化合物は、即時、遅延または制御放出用途のために、香味剤または着色剤を含有してもよい、錠剤、カプセル剤、腔坐剤、エリキシル剤、溶剤または懸濁剤の形態で、経口、口腔または舌下に投与することができる。本発明の化合物はまた、海綿静脈洞内注入によっても投与しうる。
【0164】
このような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及びグリジンなどの賦形剤;デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤;並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアなどの顆粒化結合剤を含有しうる。
【0165】
さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクなどの潤滑剤が含まれうる。
【0166】
同様のタイプの固体組成物もまた、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用しうる。これに関しては好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液及び/またはエリキシル剤には、本発明の化合物を、様々な甘味剤または香味剤、着色剤または色素、乳化剤及び/または懸濁化剤、並びに水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンなどの希釈剤、並びにこれらの組合せと混合しうる。
【0167】
本発明の化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいは注入技術によって投与しうる。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有しうる滅菌水溶液の形態の使用に最も適している。水溶液は、必要に応じて適切に緩衝化(好ましくは、3〜9のpHに)されるべきである。無菌状態下での適切な非経口製剤の調製は、当業者には周知の標準的な製薬技術によって容易に行われる。
【0168】
非経口投与に適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤及び意図したレシピエントの血液と等張である製剤とする溶質を含有しうる水性及び非水性の滅菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプル及びバイアル中にあってもよく、使用直前に注射のために、滅菌液体担体、例えば水を加えることだけが必要なフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保存してもよい。即時調合注射液及び懸濁液を、上記で説明した種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製しうる。
【0169】
ヒト患者への経口及び非経口投与のために、本発明の化合物の1日投与量レベルは、通常1mg/kg〜30mg/kgであろう。従って、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、投与のために必要に応じて1回につき単独または2種類以上の活性化合物の用量を含有しうる。医師であれば、いずれにしても任意の個々の患者に最も適切であり、特定の患者の年齢、体重及び反応によって変化するであろう実際の投与量を決定するであろう。上記の投与量は、平均のケースの例示である。当然ながら、より高いまたはより低い投与量が値する個々の例がある場合があり、これも本発明の範囲内である。
【0170】
本発明の化合物はまた、鼻腔内または吸入により投与することもでき、好都合なことには、ドライパウダー吸入器またはエアゾールスプレー形の形態で、加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器から、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン;1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134A3)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA3)などのヒドロフルオロアルカン;二酸化炭素または他の適切なガスを使用して送達される。加圧エアロゾルの場合、計量した量を送達するための弁を設けることによって投与単位を決定しうる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば、エタノール及び噴射剤の混合物を溶媒として使用した活性化合物の溶液または懸濁液を含有しうるが、これには滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンをさらに含有しうる。吸入器または注入器で使用するための(例えば、ゼラチンから作製した)カプセル及びカートリッジは、本発明の化合物の粉末混合物、及びラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含有するように製剤しうる。
【0171】
アエロゾルまたは乾燥粉末製剤は好ましくは、患者に送達するために、各計量した用量または「ひと吹き」が、本発明の化合物の適切な用量を送達するように用意される。アエロゾルによる全体的な1日用量は患者毎に変化し、1日を通して、単回用量で、またはより通常には分割用量で投与しうることを理解されたい。
【0172】
あるいは、本発明の化合物は、坐薬またはペッサリーの形態で投与することができ、またはローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏または散布剤の形態で局所的に施用しうる。本発明の化合物はまた、例えば、皮膚パッチの使用によって経皮的に投与しうる。それらはまた、特に目の疾患の治療のために眼の経路によっても投与しうる。
【0173】
眼への使用には、本発明の化合物は、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存料と任意選択で組み合わせて、等張のpH調節した滅菌生理食塩水中の超微粉砕した懸濁液として、または好ましくは、等張のpH調節した滅菌生理食塩水中の溶液として製剤することができる。あるいは、それらはペトロラタムなどの軟膏として製剤しうる。
【0174】
皮膚への局所的施用のために、本発明の化合物は、例えば下記の1種または複数の混合物中に懸濁した、または溶解した活性化合物を含有する適切な軟膏として製剤することができる。鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水。あるいはそれらは、例えば下記の1種または複数の混合物中に懸濁した、または溶解した適切なローション剤またはクリーム剤として製剤することができる。鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水。
【0175】
口腔内への局所投与に適した製剤には、香味を付けた基剤、通常スクロース及びアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシアなどの不活性な基剤中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0176】
一般に、ヒトでは、本発明の化合物の経口または局所投与は、最も便利であり好ましい経路である。レシピエントが、嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の障害を患っている状況では、薬物は非経口的に、例えば舌下にまたは口腔内に投与しうる。
【0177】
獣医学の使用のために、本発明の化合物は、通常の獣医学診療に従って適切に許容できる製剤として投与され、獣医であれば特定の動物に最も適切であろう投与計画及び投与経路を決定するであろう。
【0178】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】リジン残基をボールド体で強調したヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子のアラインメント。ヒトVH-1などの特定のファミリーは、それらに由来するscFv(または他の抗体フォーマット)を、光感受性物質カップリングに対してより効果的にする、より分離し、好適に分離したリジン残基を含有する。FR=フレームワーク、CDR=相補性決定領域、Locus=遺伝子座。
【図2】天然リジン残基を黒で強調した、ヒトVH1-VK3ファミリーからのscFvの構造の表示。リジン残基は、効率的な光増感剤カップリング及び良好な光物理的性質のために都合よく配置されている。
【図3】scFvのpET発現系へのクローニング。
【図4】塩化ニッケル装填樹脂を使用した金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によるC6.5の精製。C6.5を250mMのイミダゾールを使用してカラムから溶出した。レーン4は、カラムから溶出され、スピンカラムを使用して5倍に濃縮したC6を示す。
【図5】PPaスクシンイミジルエステルの調製。
【図6】PBS緩衝液中のPPaに接合したC6.5 scFv(太線)及び遊離PPa(細線)の吸光度プロファイル。実施例で説明したように、PPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。
【図7】PBS緩衝液中のPPa及びPPa/安息香酸(Ba)及び遊離PPaに接合したMFE-23scFvの吸光度プロファイル。実施例に記載しているようにPPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。
【図8】PB1スクシンイミジルエステルの調製。
【図9】PPaに接合したHuBC-1 scFvの吸光度プロファイル。実施例に記載しているようにPPa:scFv比を決定するために吸光度ピークを使用する。HuBC-1の乏しい構造によって、C6.5 scFvと比較してscFv-PPa接合体の乏しい吸光度特性がもたらされる。
【図10】ピロフェオホルビド-a及びクロリンe6光感受性物質にカップリングしたC6.5 scFvの吸光度プロファイル。
【図11】PBS緩衝液中で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-PPa接合体及び遊離PPaの蛍光プロファイル。遊離PPAは、水性緩衝液中で有意に蛍光発光しないが、scFvと接合すると良好な光物理的性質を保つ。
【図12】PBS緩衝液で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-PPa、MFE-23scFv-PPA及びNFE-23scFv-PPa/Ba(安息香酸)接合体の蛍光プロファイル。遊離PPAは、水性緩衝液中で有意に蛍光発光しない(図7)が、scFvと接合すると良好な光物理的性質を保つ。C6.5 scFvは、MFE-23scFvよりも、蛍光(従って、一重項酸素生成を含めた光物理)を保持するのに優れている。
【図13】MFE-23scFv、MFE-23scFv-PPa及びMFE-23scFv-PPa/BaのCEA抗原ELISA。カップリングにあたり結合親和力のわずかな減少が観察される。
【図14】抗原陽性細胞(SKOV-3)及び抗原陰性細胞(LS174T)上のC6.5 scFv-PPaのin vitroでのPDT細胞殺滅。
【図15】抗原陽性細胞(LS174T)及び抗原陰性細胞(SKOV-3)上のC6.5 scFv-PPaのin vitroでのPDT細胞殺滅。
【図16】SKOV-3ヒト腫瘍異種移植モデル中の、24時間後のC6.5-PPa接合体と比較したC6.5 scFvのin vivoでの腫瘍:血液比(上)、及び24時間後の腫瘍取込み率(下)。
【図17】ヌードマウスにおけるscFv及びscFv-Ppa接合体のin vivoでの薬物動態(血液クリアランスプロファイル)。
【図18】腫瘍担持ヌードマウスのin vivoでのPDT治療は、ヒトSKOV-3異種移植腫瘍のネクローシスをもたらす。左パネル:C6.5単独+光、右パネル:C6.5-PPa+光。
【図19】HuBC-1を有するC6.5(VH1-VK3scFv)などの最適な「PDT」scFvのアラインメントは、突然変異誘発によって生じさせることができる変化を示す。より好適な光感受性物質カップリング特性を有するHuBC-1 scFv(BC-l-mut)をもたらすことのできるこれらの6つの変化が生じる。これらの変化は、K13Q、Q43K、T87K、R152K、R180K及びG210Kである。
【図20】C6.5 scFv-PPaで標識したSKOV3細胞は、効率的に内部移行されることが見出されるHer-2受容体の高感度の可視化を可能にする。
【図21】SKOV-3細胞からのPPaの放出スペクトル。
【図22】PPa及びscFv-PPa光-免疫接合体の吸光度スペクトル。(A)PBS/1.9%DMSO[1]及び100%DMSO[2]中のPPa(14mg/ml)。(B)50mg/mlのC6.5-PPa。(C)冷凍材料[1]及び未加工材料[2]からの各10mg/mlのMFE-PPa。(D)すべてl0mg/mlの代替scFv-PPa光-免疫接合体のパネル、D1.3[1]、F1[2]、GP6[3]、及びHuBC-1[4]。
【図23】C6.5-PPa及びMFE-PPa光-免疫接合体のin vitroでの細胞毒性。(A)遊離PPaに曝されたLoVo(黒い丸)、SKOV3(白い丸)。(B)SKOV3細胞(黒い丸)及びLoVo細胞(白い丸)に曝されたC6.5-PPa。(C)LoVo細胞(黒い丸)に曝されたMFE scFv(未加工材料)-PPa、LoVo細胞(白い丸)に曝されたMFE scFv(冷凍材料)-PPa、SKOV3細胞(黒い三角)に曝されたMFE scFv(未加工材料)-PPa。
【図24】C6.5-PPa光-免疫接合体の免疫蛍光顕微鏡観察。抗原陰性KB細胞(A〜D)または抗原陽性SKOV3細胞(E〜J)を、遊離PPaまたはC6.5-PPa光-免疫接合体と1時間インキュベートした。画像及び発光スペクトルを記録した。
【図25】C6.5-PPa PICのin vivo分析。(A)血液薬物動態-血液中に残る画分を、抗体、PPa及び光-免疫接合体について、24時間にわたって測定した。全IgG(白い丸)、遊離PPa(黒い丸)、C6.5-PPa(白い三角)、MFE-PPa(黒い三角)、遊離C6.5 scFv(白い四角)、遊離MFE scFv(黒い四角)。(B)時間(黒い棒)及び24時間(灰色の棒)の腫瘍担持ヌードマウスにおけるC6.5 scFv-PPa PICの体内分布。治療研究を行うための良好な値として24時間の腫瘍:血液比を選択した。(C)2組のSKOV3腫瘍担持ヌードマウスを、PBS-生理食塩水(黒い丸)及びC6.5-PPa光-免疫接合体(白い丸)40mgで処置し、続いてレーザー照射した。腫瘍増殖の進行を続く25日間で記録した。有意な増殖の遅れが見られた(p=0.0075)。
【図26】scFvのアミノ酸アラインメントを示す図である。可変重-リンカー-可変軽ドメインを、PDTカップリング効率及び光-免疫接合体の効力に影響を与えうる数及び位置における変動性を例示するために、ボールド体で強調したリジン残基と共に示す。
【図27】ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))スクシンイミジルエステルの調製を示す図である。
【図28】PBS緩衝液中で測定した様々な濃度のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体及び遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))の吸光度プロファイルを示すグラフである。
【図29】抗原陰性細胞(KB)及び抗原陽性細胞(SKOV-3)上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体及び遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))のin vitroでのPDT細胞殺滅である。細胞生存率(%)を、 −SKOV3細胞上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体(黒い丸); −SKOV3細胞上の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))(白い丸); −KB細胞上のC6.5 scFv-ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))接合体(黒い三角); −KB細胞上の遊離ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))(白い三角);について決定したことを示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)光増感剤を提供する工程と、
(ii)担体分子を提供する工程と、
(iii)第1及び第2の極性非プロトン性溶媒、並びに水性緩衝液の存在下で、前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程と
を含む、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物の作製方法。
【請求項2】
前記化合物が少なくとも3:1の比率の光増感剤と担体分子とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光増感剤及び前記担体分子の機能特性及び物理的特性がカップリング後に実質的に変化しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、HMPA、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、二硫化炭素、グリム及びジグリム、2-ブタノン(MEK)、スルホラン、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、ピリジン、並びにアセトンからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の非プロトン性溶媒がDMSO、DMF、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の非プロトン性溶媒がDMF及びアセトニトリルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水性緩衝液と第1の非プロトン性溶媒と第2の非プロトン性溶媒との比が約50%:1〜49%:49〜1%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記比が92%PBS:2%DMSO:6%アセトニトリルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程が0℃〜5℃の温度で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程が約30分間行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体分子が抗体フラグメント及び/またはその誘導体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体フラグメント及び/または誘導体が単鎖抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単鎖抗体がScFvである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記担体分子がヒト化されているまたはヒトのものである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記光増感剤が単官能の光感受性物質である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光増感剤が、ヘマトポルフィリン、天然ポルフィリン、天然クロリン、天然バクテリオクロリン、フェオホルビド、ピロフェオホルビドa及びその誘導体、フォトクロル、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、パラジウム-バクテリオフェオホルビドのパラジウム誘導体、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、モノベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィン、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及びその誘導体、プルプリン、プルプリン-18、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、無金属メソ-トリエチニルポルフィリン、メタル化メソ-トリエチニルポルフィリン、コア修飾ポルフィリン、拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、モテキサフィンルテチウム、モテキサフィンガドリニウム、非ポルフィリン系化合物、フェノチアジニウム誘導体、メチレンブルー、トルイジンブルー、シアニン、メロシアニン-540、アクリジン色素、BODIPY色素、アザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、ハロゲン化キサンテン色素、エオシン、ローズベンガルからなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)の後に行われる、
(iv)前記光増感剤の機能を調節することのできる調節剤を前記担体分子にカップリングする工程をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記調節剤が、安息香酸、アジド基を含有する安息香酸、4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸、アジド部分を有する芳香族基を含有する安息香酸、アジド部分を有するヘテロ芳香族基を含有する安息香酸、ビタミンE類似体、トロロックス、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記芳香族基またはヘテロ芳香族基が、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン、クマリン、並びにそれらのスルフェナートからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(iii)または(iv)の後に行われる、
(v)前記化合物を医薬として許容される担体と混合して製剤を形成する工程をさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が3.5オングストローム〜25nmである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が20〜25nmである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(v)の前に、
(vi)視覚化剤を前記担体分子、光増感剤、またはそれらの接合体とカップリングする工程をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記視覚化剤が蛍光色素または発光色素である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって得られる、担体分子にカップリングしている光増感剤を含む化合物。
【請求項26】
3:1の最小カップリング比で担体分子にカップリングした光増感剤を含み、前記担体分子が選択的に標的細胞に結合する化合物。
【請求項27】
非カップリング形態である場合の特性と比較して、カップリング形態では前記光増感剤及び前記担体分子の機能特性及び物理的特性が実質的に変化しない、請求項25または26に記載の化合物。
【請求項28】
前記担体分子が、抗体フラグメント及び/もしくはその誘導体、または非免疫原性ペプチドリガンドからなる群から選択される、請求項25から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
前記抗体フラグメント及び/またはその誘導体が単鎖抗体フラグメントである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記単鎖抗体がScFvである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記担体分子がヒト化されているまたはヒトのものである、請求項25から30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記光増感剤が単官能の光感受性物質である、請求項25から31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
前記光増感剤が、ヘマトポルフィリン、天然ポルフィリン、天然クロリン、天然バクテリオクロリン、フェオホルビド、ピロフェオホルビドa及びその誘導体、フォトクロル、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、パラジウム-バクテリオフェオホルビドのパラジウム誘導体、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、モノベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィン、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及びその誘導体、プルプリン、プルプリン-18、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、無金属メソ-トリエチニルポルフィリン、メタル化メソ-トリエチニルポルフィリン、コア修飾ポルフィリン、拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、モテキサフィンルテチウム、モテキサフィンガドリニウム、非ポルフィリン系化合物、フェノチアジニウム誘導体、メチレンブルー、トルイジンブルー、シアニン、メロシアニン-540、アクリジン色素、BODIPY色素、アザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、ハロゲン化キサンテン色素、エオシン、ローズベンガルからなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
前記光増感剤が、前記担体分子上のアミノ酸残基または糖分子で前記担体分子にカップリングしている、請求項25から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
前記アミノ酸残基が、リジン、システイン、チロシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルギニンからなる群から選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
前記糖分子が、ヒドロキシル基を含む糖、アルデヒド基を含む糖、アミノ基を含む糖、及びカルボン酸基を含む糖からなる群から選択される、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が3.5オングストローム〜25nmである、請求項25から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が20〜25nmである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記光増感剤の機能を調節することができる調節剤をさらに含む、請求項25から38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
前記調節剤が、安息香酸、アジド基を含有する安息香酸、4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸、アジド部分を有する芳香族基を含有する安息香酸、アジド部分を有するヘテロ芳香族基を含有する安息香酸、ビタミンE類似体、トロロックス、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸からなる群から選択される、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
前記芳香族基またはヘテロ芳香族基が、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン、クマリン、並びにそれらのスルフェナートからなる群から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
視覚化剤をさらに含む、請求項25から41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
前記視覚化剤が蛍光色素または発光色素である、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がピロフェオホルビドaである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がベンゾポルフィリン誘導体一酸(ベルテポルフィン)である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がパラジウム-バクテリオフェオホルビドである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がクロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がメタ-テトラヒドロキシフェニルクロリンである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がスズエチオプルプリン(ロスタポルフィン)である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項50】
標的細胞の破壊を必要とする疾患の診断及び/または治療及び/または予防における、請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項51】
標的細胞の破壊を必要とする疾患の治療及び/または予防のための医薬の製造における、請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項52】
治療される前記疾患が、癌、加齢性黄斑変性症、免疫障害、心血管疾患、並びにウイルス、細菌または真菌性感染を含めた微生物感染、BSEなどのプリオン病、及び歯肉炎などの口腔/歯の疾患からなる群から選択される、請求項50または51に記載の使用。
【請求項53】
治療される前記疾患が、大腸、肺、乳房、頭頸部、前立腺、皮膚、胃/胃腸、膀胱の癌、及びバレット食道などの前癌性病変である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
疾患の診断が、前記光増感剤または任意選択の可視化剤のいずれかの可視化によって行われる、請求項50から53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
前記化合物が露光前に患者に投与される、請求項50から54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物、及び医薬として許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項1】
(i)光増感剤を提供する工程と、
(ii)担体分子を提供する工程と、
(iii)第1及び第2の極性非プロトン性溶媒、並びに水性緩衝液の存在下で、前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程と
を含む、担体分子にカップリングした光増感剤を含む化合物の作製方法。
【請求項2】
前記化合物が少なくとも3:1の比率の光増感剤と担体分子とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光増感剤及び前記担体分子の機能特性及び物理的特性がカップリング後に実質的に変化しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、HMPA、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、二硫化炭素、グリム及びジグリム、2-ブタノン(MEK)、スルホラン、ニトロメタン、N-メチルピロリドン、ピリジン、並びにアセトンからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の非プロトン性溶媒がDMSO、DMF、及びアセトニトリルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の非プロトン性溶媒がDMF及びアセトニトリルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水性緩衝液と第1の非プロトン性溶媒と第2の非プロトン性溶媒との比が約50%:1〜49%:49〜1%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記比が92%PBS:2%DMSO:6%アセトニトリルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程が0℃〜5℃の温度で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光増感剤と前記担体分子とを接合する工程が約30分間行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体分子が抗体フラグメント及び/またはその誘導体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体フラグメント及び/または誘導体が単鎖抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単鎖抗体がScFvである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記担体分子がヒト化されているまたはヒトのものである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記光増感剤が単官能の光感受性物質である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光増感剤が、ヘマトポルフィリン、天然ポルフィリン、天然クロリン、天然バクテリオクロリン、フェオホルビド、ピロフェオホルビドa及びその誘導体、フォトクロル、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、パラジウム-バクテリオフェオホルビドのパラジウム誘導体、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、モノベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィン、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及びその誘導体、プルプリン、プルプリン-18、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、無金属メソ-トリエチニルポルフィリン、メタル化メソ-トリエチニルポルフィリン、コア修飾ポルフィリン、拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、モテキサフィンルテチウム、モテキサフィンガドリニウム、非ポルフィリン系化合物、フェノチアジニウム誘導体、メチレンブルー、トルイジンブルー、シアニン、メロシアニン-540、アクリジン色素、BODIPY色素、アザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、ハロゲン化キサンテン色素、エオシン、ローズベンガルからなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)の後に行われる、
(iv)前記光増感剤の機能を調節することのできる調節剤を前記担体分子にカップリングする工程をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記調節剤が、安息香酸、アジド基を含有する安息香酸、4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸、アジド部分を有する芳香族基を含有する安息香酸、アジド部分を有するヘテロ芳香族基を含有する安息香酸、ビタミンE類似体、トロロックス、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記芳香族基またはヘテロ芳香族基が、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン、クマリン、並びにそれらのスルフェナートからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(iii)または(iv)の後に行われる、
(v)前記化合物を医薬として許容される担体と混合して製剤を形成する工程をさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が3.5オングストローム〜25nmである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が20〜25nmである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(v)の前に、
(vi)視覚化剤を前記担体分子、光増感剤、またはそれらの接合体とカップリングする工程をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記視覚化剤が蛍光色素または発光色素である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって得られる、担体分子にカップリングしている光増感剤を含む化合物。
【請求項26】
3:1の最小カップリング比で担体分子にカップリングした光増感剤を含み、前記担体分子が選択的に標的細胞に結合する化合物。
【請求項27】
非カップリング形態である場合の特性と比較して、カップリング形態では前記光増感剤及び前記担体分子の機能特性及び物理的特性が実質的に変化しない、請求項25または26に記載の化合物。
【請求項28】
前記担体分子が、抗体フラグメント及び/もしくはその誘導体、または非免疫原性ペプチドリガンドからなる群から選択される、請求項25から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
前記抗体フラグメント及び/またはその誘導体が単鎖抗体フラグメントである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記単鎖抗体がScFvである、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
前記担体分子がヒト化されているまたはヒトのものである、請求項25から30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記光増感剤が単官能の光感受性物質である、請求項25から31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
前記光増感剤が、ヘマトポルフィリン、天然ポルフィリン、天然クロリン、天然バクテリオクロリン、フェオホルビド、ピロフェオホルビドa及びその誘導体、フォトクロル、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-l-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、天然バクテリオクロロフィルのパラジウム誘導体、パラジウム-バクテリオフェオホルビドのパラジウム誘導体、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、メタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン及びバクテリオクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、モノベンゾポルフィリン誘導体、ベルテポルフィン、フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン(ジスルホン化及びテトラスルホン化)、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン及びその誘導体、プルプリン、プルプリン-18、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、スズエチオプルプリン、ベルジン、ポルフィセン、合成ポルフィリン、合成クロリン、合成バクテリオクロリン、無金属メソ-トリエチニルポルフィリン、メタル化メソ-トリエチニルポルフィリン、コア修飾ポルフィリン、拡張ポルフィリン(テキサフィリン)、モテキサフィンルテチウム、モテキサフィンガドリニウム、非ポルフィリン系化合物、フェノチアジニウム誘導体、メチレンブルー、トルイジンブルー、シアニン、メロシアニン-540、アクリジン色素、BODIPY色素、アザ-BODIPY誘導体、ヒペリジン、ハロゲン化スクアライン色素、ハロゲン化キサンテン色素、エオシン、ローズベンガルからなる群から選択される少なくとも1種類である、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
前記光増感剤が、前記担体分子上のアミノ酸残基または糖分子で前記担体分子にカップリングしている、請求項25から33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
前記アミノ酸残基が、リジン、システイン、チロシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルギニンからなる群から選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
前記糖分子が、ヒドロキシル基を含む糖、アルデヒド基を含む糖、アミノ基を含む糖、及びカルボン酸基を含む糖からなる群から選択される、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が3.5オングストローム〜25nmである、請求項25から36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
前記担体分子にカップリングしている光増感剤の間の距離が20〜25nmである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記光増感剤の機能を調節することができる調節剤をさらに含む、請求項25から38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
前記調節剤が、安息香酸、アジド基を含有する安息香酸、4-アジドテトラフルオロフェニル安息香酸、アジド部分を有する芳香族基を含有する安息香酸、アジド部分を有するヘテロ芳香族基を含有する安息香酸、ビタミンE類似体、トロロックス、ブチルヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、デオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸からなる群から選択される、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
前記芳香族基またはヘテロ芳香族基が、ポリフルオロベンゼン、ナフタリン、ナフトキノン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、ナフタセンジオン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、及びフェナントリジン、キサンチン、キサントン、フラボン、クマリン、並びにそれらのスルフェナートからなる群から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
視覚化剤をさらに含む、請求項25から41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
前記視覚化剤が蛍光色素または発光色素である、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がピロフェオホルビドaである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項45】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がベンゾポルフィリン誘導体一酸(ベルテポルフィン)である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がパラジウム-バクテリオフェオホルビドである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がクロリンe6のモノ-l-アスパルチル誘導体である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がメタ-テトラヒドロキシフェニルクロリンである、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
前記担体分子がScFvであり、前記光増感剤がスズエチオプルプリン(ロスタポルフィン)である、請求項25から43のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項50】
標的細胞の破壊を必要とする疾患の診断及び/または治療及び/または予防における、請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項51】
標的細胞の破壊を必要とする疾患の治療及び/または予防のための医薬の製造における、請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項52】
治療される前記疾患が、癌、加齢性黄斑変性症、免疫障害、心血管疾患、並びにウイルス、細菌または真菌性感染を含めた微生物感染、BSEなどのプリオン病、及び歯肉炎などの口腔/歯の疾患からなる群から選択される、請求項50または51に記載の使用。
【請求項53】
治療される前記疾患が、大腸、肺、乳房、頭頸部、前立腺、皮膚、胃/胃腸、膀胱の癌、及びバレット食道などの前癌性病変である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
疾患の診断が、前記光増感剤または任意選択の可視化剤のいずれかの可視化によって行われる、請求項50から53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
前記化合物が露光前に患者に投与される、請求項50から54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
請求項25から49のいずれか一項に記載の化合物、及び医薬として許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物。
【図1】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【図1−9】
【図1−10】
【図1−11】
【図1−12】
【図1−13】
【図1−14】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図4】
【図24】
【図1−2】
【図1−3】
【図1−4】
【図1−5】
【図1−6】
【図1−7】
【図1−8】
【図1−9】
【図1−10】
【図1−11】
【図1−12】
【図1−13】
【図1−14】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図4】
【図24】
【公表番号】特表2009−511456(P2009−511456A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534076(P2008−534076)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003733
【国際公開番号】WO2007/042775
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508104053)フォトバイオティクス・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003733
【国際公開番号】WO2007/042775
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508104053)フォトバイオティクス・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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