説明

生体由来の溶媒を用いてポリエステルラテックスを製造するプロセス

【課題】生体由来の溶媒を用いてポリエステルラテックスを製造するプロセスを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのポリエステル樹脂と生体由来の溶媒とを接触させて樹脂混合物を作成すること、この樹脂混合物に中和剤および脱イオン水を加えること、生成したラテックスから溶媒を除去すること、エマルションを回収すること、を含むトナー組成物で使用するのに適したラテックスエマルションを製造するプロセス。生成したラテックスから除去した溶媒を再利用してもよく、これにより、このプロセスが非常に環境に優しいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナーを製造するのに有用な樹脂エマルションを製造するためのプロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
いくつかの実施形態では、本開示は、トナーを作成する際に有用であり得るポリエステルラテックスを作成するための、溶媒系プロセスを提供する。本開示によれば、再生可能な生体由来の溶媒は、EA ULMトナー用途のためのポリエステルラテックスを調製する際に用いられる。
【0003】
いくつかの実施形態では、ポリエステル樹脂に少なくとも2種類の溶媒を加えることによって、溶媒プロセス中でポリエステル樹脂を乳化させることができる。鎖末端の必要な再配置を安定化させ、界面活性剤なしに安定なラテックスを生じさせる粒子を形成するために、溶媒を加える。
【0004】
約66ミクロン〜約200ミクロンの粒径を有する粒子を含むアモルファスポリエステルラテックスは、樹脂の分子量および/またはガラス転移点(Tg)を感知できるほど変化させることなく、これらの生体由来の溶媒を用いて調製されてもよい。
【0005】
提案されているアプローチは、従来の石油系溶媒を、再生可能な生体由来の溶媒に置き換えるものであり、これによって、化石燃料源に対する依存を最低限にしつつ、印刷品質が高く、低エネルギーで材料の使用量が少ないEAトナーを製造し、これらのトナーを調製する際に環境に及ぼす影響を最低限にする。
【0006】
本開示のラテックスエマルションを作成する際に、任意の樹脂を利用してもよい。いくつかの実施形態では、樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。さらなる実施形態では、樹脂は、ポリエステル樹脂であってもよい。さらに、適切な樹脂は、アモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との混合物を含んでいてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、樹脂は、任意要素の触媒が存在する状態で、ジオールと二酸とを反応させることによって作成されるポリエステル樹脂であってもよい。結晶性ポリエステルを作成する場合、適切な有機ジオールとしては、炭素原子が約2〜約36個の脂肪族ジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられ、これらの構造異性体を含む。脂肪族ジオールは、樹脂の約40〜約60モル%、約42〜約55モル%、または約45〜約53モル%の量で選択されてもよく、第2のジオールは、樹脂の約0〜約10モル%、または約1〜約4モル%の量で選択されてもよい。
【0008】
結晶性樹脂の調製のために選択される有機二酸またはジエステル(ビニル二酸またはビニルジエステルを含む)の例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、cis,1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸、これらのジエステルまたは無水物が挙げられる。有機二酸は、樹脂の約40〜約60モル%、約42〜約52モル%、または約45〜約50モル%の量で選択されてもよく、第2の二酸は、樹脂の約0〜約10モル%の量で選択することができる。
【0009】
結晶性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、これらの混合物などが挙げられる。特定の結晶性樹脂は、ポリエステルに由来するものであってもよく、例えば、ポリ(エチレン−アジペート)、ポリ(プロピレン−アジペート)、ポリ(ブチレン−アジペート)、ポリ(ペンチレン−アジペート)、ポリ(ヘキシレン−アジペート)、ポリ(オクチレン−アジペート)、ポリ(エチレン−スクシネート)、ポリ(プロピレン−スクシネート)、ポリ(ブチレン−スクシネート)、ポリ(ペンチレン−スクシネート)、ポリ(ヘキシレン−スクシネート)、ポリ(オクチレン−スクシネート)、ポリ(エチレン−セバケート)、ポリ(プロピレン−セバケート)、ポリ(ブチレン−セバケート)、ポリ(ペンチレン−セバケート)、ポリ(ヘキシレン−セバケート)、ポリ(オクチレン−セバケート)、ポリ(デシレン−セバケート)、ポリ(デシレン−デカノエート)、ポリ(エチレン−デカノエート)、ポリ(エチレンドデカノエート)、ポリ(ノニレン−セバケート)、ポリ(ノニレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−セバケート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−デカノエート)、コポリ(エチレン−フマレート)−コポリ(エチレン−ドデカノエート)、コポリ(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール−デカノエート)−コポリ(ノニレン−デカノエート)、ポリ(オクチレン−アジペート)であってもよい。ポリアミドの例としては、ポリ(エチレン−アジポアミド)、ポリ(プロピレン−アジポアミド)、ポリ(ブチレン−アジポアミド)、ポリ(ペンチレン−アジポアミド)、ポリ(ヘキシレン−アジポアミド)、ポリ(オクチレン−アジポアミド)、ポリ(エチレン−スクシンイミド)、ポリ(プロピレン−セバカミド)が挙げられる。ポリイミドの例としては、ポリ(エチレン−アジピミド)、ポリ(プロピレン−アジピミド)、ポリ(ブチレン−アジピミド)、ポリ(ペンチレン−アジピミド)、ポリ(ヘキシレン−アジピミド)、ポリ(オクチレン−アジピミド)、ポリ(エチレン−スクシンイミド)、ポリ(プロピレン−スクシンイミド)、ポリ(ブチレン−スクシンイミド)が挙げられる。
【0010】
結晶性樹脂は、トナー成分の約1〜約85重量%、または約5〜約50重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、種々の融点を有していてもよく、例えば、約30℃〜約120℃、または約50℃〜約90℃の融点を有していてもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(Mn)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する場合、例えば、約1,000〜約50,000、または約2,000〜約25,000であってもよい。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準によってGPCで測定する場合、例えば、約2,000〜約100,000、または約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、約2〜約6、または約3〜約4であってもよい。
【0011】
結晶性ポリエステルまたはアモルファスポリエステルのいずれかを作成する際に利用可能な重縮合触媒としては、チタン酸テトラアルキル、ジアルキルスズオキシド(例えば、ジブチルスズオキシド)、テトラアルキルスズ(例えば、ジブチルスズジラウレート)、ジアルキルスズオキシド水酸化物(例えば、ブチルスズオキシド水酸化物)、アルミニウムアルコキシド、アルキル亜鉛、ジアルキル亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一スズ、またはこれらの混合物が挙げられ、触媒は、ポリエステル樹脂を作成するために用いられる出発物質の二酸またはジエステルを基準として、約0.01モル%〜約5モル%の量で利用されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、上述のように、不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。不飽和アモルファスポリエステル樹脂の例としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレンフマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレンマレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレンイタコネート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、適切なアモルファス樹脂としては、アルコキシル化ビスフェノールAフマレート/テレフタレート系ポリエステルおよびコポリエステル樹脂を挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なアモルファスポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有するコポリ(プロポキシル化ビスフェノールAコ−フマレート)−コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA コ−テレフタレート)樹脂であってもよく、
【化1】

式中、Rは、水素またはメチル基であってもよく、mおよびnは、コポリマーのランダムな単位をあらわし、mは、約2〜10であってもよく、nは、約2〜10であってもよい。
【0014】
ラテックス樹脂として利用可能な直鎖プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の例は、商品名SPARIIでResana S/A Industrias Quimicas(サンパウロ、ブラジル)から入手可能である。利用可能であり、市販されている他のプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、花王株式会社(日本)製のGTUFおよびFPESL−2、Reichhold(リサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ)製のEM181635などが挙げられる。
【0015】
反応のために選択される直鎖または分枝鎖の不飽和ポリエステルは、飽和および不飽和の二酸(または無水物)と、二価アルコール(グリコールまたはジオール)の両方を含む。得られた不飽和ポリエステルは、以下の2つの面:(i)ポリエステル鎖に沿った不飽和部(二重結合)と、(ii)酸−塩基反応で変換することが可能な官能基、例えば、カルボキシル、ヒドロキシなどの基に対して反応性(例えば、架橋可能)である。典型的な不飽和ポリエステル樹脂は、二酸および/または無水物とジオールとを用い、溶融縮重合または他の重合プロセスによって調製されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示のトナーで利用される適切なアモルファス樹脂は、重量平均分子量(Mw)が約500グラム/モル〜約10,000グラム/モル、または約1000グラム/モル〜約5000グラム/モル、または約1500グラム/モル〜約4000グラム/モルである低分子量アモルファス樹脂であってもよい。
【0017】
この低分子量アモルファス樹脂は、ガラス転移点(Tg)が、約50℃〜約70℃、および/または約57℃〜約63℃であってもよく、軟化点が、約105℃〜約120℃、または約110℃〜約118℃であってもよい。
【0018】
この低分子量アモルファスポリエステル樹脂は、酸価が、約8〜約20mg KOH/g、約9〜約16mg KOH/g、または約11〜約15mg KOH/gであってもよい。この酸を含有する樹脂をテトラヒドロフラン溶液に溶解してもよい。
【0019】
他の実施形態では、本開示のトナーを作成する際に利用されるアモルファス樹脂は、高分子量アモルファス樹脂であってもよい。高分子量アモルファスポリエステル樹脂は、数平均分子量(M)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する場合、例えば、約1,000グラム/モル〜約10,000グラム/モル、約2,000グラム/モル〜約9,000グラム/モル、約3,000グラム/モル〜約8,000グラム/モル、または約6,000グラム/モル〜約7,000グラム/モルであってもよい。この樹脂の重量平均分子量(M)は、ポリスチレン標準によってGPCで測定する場合、45,000グラム/モルより大きく、例えば、約45,000グラム/モル〜約150,000グラム/モル、約50,000グラム/モル〜約100,000グラム/モル、約63,000グラム/モル〜約94,000グラム/モル、または約68,000グラム/モル〜約85,000グラム/モルである。多分散指数(PD)は、標準的なポリスチレンリファレンス樹脂に対し、GPCによって測定した場合、約4より大きく、例えば、約4より大きいか、約4〜約20、約5〜約10、または約6〜約8である。
【0020】
高分子量アモルファスポリエステル樹脂は、酸価が、約8〜約18mg KOH/g、約10〜約16mg KOH/g、または約11〜約14mg KOH/gであってもよく、軟化点が、例えば、約105℃〜約140℃、約110℃〜約130℃、または約118℃〜約128℃であってもよく、ガラス転移点が、約53℃〜約59℃、または約54.5℃〜約57℃であってもよい。
【0021】
アモルファス樹脂は、一般的に、トナー組成物中に、種々の適切な量で、例えば、トナー粒子の約60〜約95重量%、または約65〜約70重量%の量で存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、高分子量アモルファス樹脂と低分子量アモルファス樹脂の組み合わせを用い、本開示のトナーを作成してもよい。高分子量アモルファス樹脂と低分子量アモルファス樹脂との比率は、約0:100〜約100:0、または約30:70〜約50:50であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、ラテックス中で利用されるアモルファス樹脂、またはアモルファス樹脂の組み合わせは、ガラス転移点が、約30℃〜約80℃、または約35℃〜約70℃であってもよい。さらなる実施形態では、ラテックス中で利用される樹脂の組み合わせは、約130℃での溶融粘度が約10〜約1,000,000Pa*S、または約50〜約100,000Pa*Sであってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、適切な結晶性樹脂は、エチレングリコールと、以下の式を有するドデンカン二酸およびフマル酸コモノマーの混合物とから作られる樹脂を含んでいてもよく、
【化2】

式中、bは、約5〜約2000であり、dは、約5〜約2000である。
【0025】
いくつかの実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂は、酸価が約1mg KOH/g ポリマー〜約200mg KOH/g ポリマー、または約5mg KOH/g ポリマー〜約50mg KOH/g ポリマーの酸基を有していてもよい。結晶性樹脂は、トナー粒子の約1重量%〜約85重量%、または約10重量%〜約65重量%の量で存在していてもよい。
【0026】
1種類、2種類またはそれ以上の樹脂を用いてもよい。いくつかの実施形態では、2種類以上の樹脂を用いる場合、樹脂は、任意の適切な比率(例えば、重量比)、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)〜約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)、または約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)〜約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)であってもよい。
【0027】
上述のように、生体由来の溶媒を用い、ラテックスを作成してもよい。これらの生体由来の溶媒を、従来から利用されている石油化学由来の溶媒と置きかえてもよく、生体由来の溶媒は、持続可能であること、化石燃料に依存しないこと、炭素排出量を減らすことという点で望ましい場合がある。また、生体由来の溶媒は、蒸留によって簡単に再生利用することができる。
【0028】
適切な生体由来の溶媒としては、樹脂の約1重量%〜約200重量%、約10重量%〜約110重量%、または約50重量%〜約100重量%の量の、2−メチル−テトラヒドロフラン、エタノール、1,2−プロパン−ジオール、1,3−プロパン−ジオール、1,4−ブタン−ジオール、フルフリルアルコール、2−ブチルフラン、ジフリルプロパン、エチルフルフリルエーテル、2−ブロモフラン、2−ブチリルフラン、20−エチルフラン、2−フルアルデヒド、2−フルフリルアルコール、2−メチルフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、2,5 ジメチルフラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、適切な生体由来の溶媒、または転相剤としては、2−メチル−テトラヒドロフラン(Me−THF)、生体由来のエタノール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。Me−THFは、2−フルアルデヒド(フルフラールとしても知られる)から誘導され、トウモロコシの穂軸またはバガス(サトウキビ)のような農業廃棄物中の天然に存在するペントースから2工程の水素化プロセスで製造される。したがって、その原材料の費用は、油から誘導される化学物質の費用が増え続けているのに対し、少なくなる。
【0030】
Me−THFの全体的な性質は、メチルエチルケトン(MEK)と似ており、水溶性および共沸蒸留に関しては、わずかに優れている。同様に、イソプロパノールは、共溶媒として安価なエタノールと置き換えることができ、共沸性能はわずかに優れている。
【0031】
いくつかの実施形態では、生体由来の溶媒は、樹脂の約1重量%〜約25重量%、約2重量%〜約20重量%、または約3重量%〜約15重量%の量で利用されてもよい。生体由来の溶媒は、水に混和しない場合があり、沸点は、約70℃〜約90℃であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示にしたがって作成されるエマルションは、樹脂が溶融するか、または軟化する温度、例えば、約20℃〜約120℃、または約30℃〜約110℃の温度で、水、いくつかの実施形態では、脱イオン水(DIW)を、約30%〜約95%、または約35%〜約60%の量で含んでいてもよい。
【0033】
エマルションの粒径は、約50nm〜約300nm、または約100nm〜約220nmであってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、樹脂を、弱塩基または中和剤と混合してもよい。いくつかの実施形態では、樹脂中の酸基を中和するために、中和剤を用いてもよい。任意の適切な塩基性中和試薬を、本開示にしたがって用いてもよい。いくつかの実施形態では、適切な塩基性中和剤は、無機塩基性薬剤と有機塩基性薬剤の両方を含んでいてもよい。
【0035】
塩基性薬剤を、樹脂の約0.001重量%〜50重量%、約0.01重量%〜約25重量%、または約0.1重量%〜5重量%の量で利用してもよい。いくつかの実施形態では、中和剤を、水溶液の形態で加えてもよい。他の実施形態では、中和剤を固体の形態で加えてもよい。
【0036】
上述の塩基性中和剤を、酸基を有する樹脂と組み合わせて利用し、約25%〜約500%、または約50%〜約300%の中和比を達成してもよい。いくつかの実施形態では、中和比は、樹脂中に存在する酸基に対する、塩基性中和剤を用いて与えられる塩基性基のモル比に100を掛けることによって算出されてもよい。
【0037】
塩基性中和剤を、酸基を有する樹脂に加えてもよい。したがって、塩基性中和剤を加え、酸基を有する樹脂を含むエマルションのpHを約8〜約14、または約9〜約11に上げてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、界面活性剤を樹脂および溶媒に加え、エマルションを作成してもよい。
【0039】
利用される場合、樹脂エマルションは、1種類、2種類、またはそれ以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤を固体として、または約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)、または約10重量%〜約95重量%の濃度の溶液として加えてもよい。いくつかの実施形態では、樹脂の約0.01重量%〜約20重量%、約0.1重量%〜約16重量%、または約1重量%〜約14重量%の量で存在するように、界面活性剤を利用してもよい。
【0040】
本プロセスは、少なくとも1つのポリエステル樹脂と、生体由来の溶媒と、場合により、界面活性剤と、中和剤とを含む混合物を、高温で溶融混合し、ラテックスエマルションを作成することを含む。いくつかの実施形態では、樹脂は、溶融混合の前にあらかじめブレンドされていてもよい。
【0041】
ラテックスを作成する際に、2種類以上の樹脂を利用してもよい。上述のように、樹脂は、結晶性樹脂であってもよい。いくつかの実施形態では、樹脂は、結晶性樹脂であってもよく、高温は、結晶性樹脂の結晶化温度よりも高い温度であってもよい。さらなる実施形態では、樹脂は、アモルファス樹脂、またはアモルファス樹脂と結晶性樹脂との混合物であってもよく、温度は、混合物のガラス転移点よりも高い温度であってもよい。
【0042】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、少なくとも1つの樹脂と生体由来の溶媒とを接触させて樹脂混合物を作成することと、この樹脂混合物を高温まで加熱することと、この混合物を撹拌することと、中和剤を加え、樹脂の酸基を中和することと、転相が起こるまで混合物に水を滴下し、転相したラテックスエマルションを作成することと、このラテックスを蒸留し、蒸留物中の水/溶媒混合物を除去することと、高品質ラテックスを製造することと、蒸留物中の水から溶媒を分離することとを含んでいてもよい。したがって、蒸留物から分離した溶媒を、いくつかの実施形態では、再利用してもよく、本開示のプロセスは、非常に環境に優しいものとなる。
【0043】
転相プロセスにおいて、ポリエステル樹脂を、溶媒中の樹脂の濃度が約1重量%〜約85重量%、または約5重量%〜約60重量%になるように上述の生体由来の溶媒に溶解してもよい。
【0044】
次いで、この樹脂混合物を、約25℃〜約90℃、または約30℃〜約85℃の温度まで加熱する。
【0045】
本開示によれば、結晶性ポリエステルラテックスおよび/またはアモルファスポリエステルラテックスを、分散工程および溶媒ストリッピング工程を必要とする二溶媒系PIEプロセスを用いて得てもよい。このプロセスでは、ポリエステル樹脂を、2種類の生体由来の溶媒の組み合わせ(例えば、Me−THFおよびエタノール)に溶解し、均一相を得てもよい。
【0046】
次いで、この有機相に一定量の塩基溶液(例えば、水酸化アンモニウム)を加え、ポリエステル鎖の酸末端基を中和し、その後、脱イオン水(DIW)を加え、転相を経て、ポリエステル粒子が水に均一に分散したものを作成してもよい。生体由来の溶媒は、この段階で、ポリエステル粒子および水相の両方に残留する。減圧蒸留を経て、溶媒が留出する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスで利用可能な中和剤または塩基溶液としては、本明細書で上に記載した薬剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、利用される任意要素の界面活性剤は、樹脂を適切に中和し、粗粒子の含有量が低い高品質ラテックスを生じるような、本明細書で上に記載された任意の界面活性剤であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、溶融混合する前、溶融混合している間、または溶融混合した後に、樹脂組成物の1つ以上の成分に界面活性剤を加えてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤を、中和剤を加える前、加えている間、または加えた後に加えてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤を、中和剤を加える前に加えてもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤を、溶融混合する前に、あらかじめブレンドした混合物に加えてもよい。
【0049】
溶融混合する温度は、約25℃〜約200℃、約40℃〜約90℃、または約50℃〜約80℃であってもよい。
【0050】
樹脂、中和剤、任意要素の界面活性剤を溶融混合したら、次いで、混合物を水と接触させ、ラテックスエマルションを作成してもよい。固体含有量が約5%〜約50%、または約10%〜約45%のラテックスを作成するために、水を加えてもよい。水温をもっと高くすると、溶解プロセスが促進される場合があるが、ラテックスは、室温程度の低い温度で作成することができる。他の実施形態では、水温は、約40℃〜約110℃、または約50℃〜約100℃であってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、連続的に転相したエマルションを作成してもよい。転相は、アルカリ水溶液または塩基性薬剤と、任意要素の界面活性剤および/または水の組成物を加え続け、樹脂組成物の溶融成分を含む液滴を含む分散相と、界面活性剤および/または水の組成物を含む連続相とを含む転相したエマルションを作ることによって達成されてもよい。
【0052】
溶融混合は、当業者の範囲内にある任意の手段を利用して行なわれてもよい。
【0053】
撹拌は必須ではないが、ラテックスの形成を促進するために利用してもよい。任意の適切な撹拌デバイスを利用してもよい。
【0054】
転相点は、エマルションの成分、加熱温度、撹拌速度などに依存して変わってもよいが、転相は、得られる樹脂がエマルションの約5重量%〜約70重量%、約20重量%〜約65重量%、または約30重量%〜約60重量%の量で存在するように塩基性中和剤、任意要素の界面活性剤、および/または水を加えたときに起こってもよい。
【0055】
転相した後、転相したエマルションを希釈するために、さらなる界面活性剤、水、および/またはアルカリ水溶液を場合により加えてもよいが、必須ではない。転相した後、転相したエマルションを、約20℃〜約25℃の室温まで冷却してもよい。
【0056】
次いで、本開示のラテックスエマルションを利用し、乳化凝集超低融点プロセスに適した粒子を製造してもよい。
【0057】
水性媒体中の乳化した樹脂粒子は、ミクロン未満の大きさであってもよく、例えば、約1μm以下、約500nm以下、約10nm〜約500nm、約50nm〜約400nm、約100nm〜約300nm、または約200nmの大きさであってもよい。粒径の調整は、水と樹脂との比率、中和比、溶媒濃度、溶媒組成を変えることによって行われてもよい。
【0058】
本開示のラテックスの粗粒子含有量は、約0.01重量%〜約5重量%、または約0.1重量%〜約3重量%であってもよい。本開示のラテックスの固体含有量は,約5重量%〜約50重量%、または約20重量%〜約40重量%であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示の樹脂エマルション粒子の分子量は、約18,000グラム/モル〜約26,000グラム/モル、約21,500グラム/モル〜約25,000グラム/モル、または約23,000グラム/モル〜約24,000グラム/モルであってもよい。
【0060】
樹脂混合物を水と接触させてエマルションを作成し、この混合物から上述のように溶媒を除去したら、次いで、得られたラテックスを利用し、当業者の範囲内にある任意の方法によってトナーを作成してもよい。ラテックスエマルションを、着色剤(場合により分散物の形態で)と、他の添加剤と接触させ、適切なプロセスで、いくつかの実施形態では、乳化凝集および融着プロセスで、超低融点トナーを作成してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、着色剤、ワックス、他の添加剤を含む、トナー組成物の任意要素のさらなる成分を、樹脂を溶融混合する前、溶融混合している間、溶融混合した後に加え、本開示のラテックスエマルションを作成してもよい。ラテックスエマルションを作成する前、作成している間、または作成した後に、さらなる成分を加えてもよい。
【0062】
加えられる着色剤として、種々の既知の適切な着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)がトナーに含まれてもよい。着色剤を、トナーの約0.1〜約35重量%、約1〜約15重量%、または約3〜約10重量%の量で加えてもよい。
【0063】
場合により、トナー粒子を作成する際に、ワックスを樹脂および着色剤と合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の形態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいてもよく、2種類以上の異なるワックスを含んでいてもよい。例えば、特定のトナーの特性(例えば、トナー粒子の形状、トナー粒子表面にワックスが存在すること、およびトナー粒子表面のワックスの量、帯電特性および/または融合特性、光沢、ストリッピング、オフセットの特性など)を高めるために、1種類のワックスをトナー配合物に加えてもよい。ワックスの組み合わせを加えてもよい。
【0064】
含まれる場合、ワックスは、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%、または約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0065】
ワックス分散物を用いる場合、ワックス分散物は、乳化凝集トナー組成物で従来から用いられている種々の任意のワックスを含んでいてもよい。選択されてもよいワックスとしては、平均分子量が約500〜約20,000、または約1,000〜約10,000のワックスが挙げられる。いくつかの実施形態では、ワックスは、結晶性であってもよく、非結晶性であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、ワックスを、1つ以上の水系エマルションの形態または固形ワックスを水に分散した形態でトナーに組み込んでもよく、ここで、固形ワックスの粒径は、約100nm〜約300nmであってもよい。
【0067】
トナー粒子は、当業者の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、トナー組成物は、乳化凝集プロセス(例えば、任意要素の着色剤と、任意要素のワックスと、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤との混合物を、上述の樹脂を含むエマルションと、場合により、界面活性剤中で凝集させることと、この凝集混合物を融着させることとを含むプロセス)によって調製されてもよい。混合物は、着色剤と、場合によりワックスまたは他の材料(場合により、界面活性剤を含む分散剤であってもよい)とをエマルションに加えることによって調製されてもよく、樹脂を含む2つ以上のエマルションの混合物であってもよい。得られた混合物のpHを酸によって調節してもよい。いくつかの実施形態では、混合物のpHを約2〜約5に調節してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、混合物は均一であってもよい。
【0069】
上述の混合物を調製した後、凝集剤を混合物に加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用し、トナーを作成してもよい。適切な凝集剤としては、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。いくつかの実施形態では、凝集剤を、樹脂のガラス転移点(Tg)よりも低い温度で混合物に加えてもよい。
【0070】
凝集剤を、トナーを作成するために利用される混合物に、混合物中の樹脂の約0〜約10重量%、約0.2〜約8重量%、または約0.5〜約5重量%の量で加えてもよい。
【0071】
粒子を、所定の望ましい粒径が得られるまで凝集させてもよい。所定の望ましい粒径は、作成する前に決定して得られる望ましい粒径を指し、粒径はこのような粒径に到達するまで成長プロセス中でモニタリングされる。したがって、撹拌を維持しつつ、高温に維持することによって、または、例えば、約40℃〜約100℃の温度までゆっくりと上げ、混合物をこの温度に約0.5時間〜約6時間、または約1時間〜約5時間維持することによって、凝集を進めて、凝集した粒子を得てもよい。所定の望ましい粒径に到達したら、成長プロセスを止める。
【0072】
凝集剤を加えた後に、粒子の成長および成形は、任意の適切な条件下で行われてもよい。例えば、成長および成形は、凝集が融着とは別に起こるような条件で行われてもよい。別個の凝集段階および融着段階では、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃、または約45℃〜約80℃で行われてもよく、この温度は、上述の樹脂のガラス転移点よりも低い温度であってもよい。
【0073】
トナー粒子の望ましい最終粒径に到達したら、塩基を用いて混合物のpHを約3〜約10、または約5〜約9の値になるまで調節してもよい。pHを調節することによって、トナーの成長を凍結させるか、または止めてもよい。トナーの成長を止めるために利用される塩基としては、任意の適切な塩基を挙げることができる。いくつかの実施形態では、pHを上述の望ましい値に調節しやすくするために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、トナー粒子の最終粒径は、約2μm〜約12μm、または約3μm〜約10μmであってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、凝集した後で融着する前に、樹脂コーティングを凝集粒子に塗布し、粒子の上にシェルを作成してもよい。いくつかの実施形態では、したがって、コアは、上述の結晶性樹脂を含んでいてもよい。上述の任意の樹脂をシェルとして利用してもよい。いくつかの実施形態では、上述のようなポリエステルアモルファス樹脂ラテックスが、シェルに含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、上述のポリエステルアモルファス樹脂ラテックスを異なる樹脂と合わせてもよく、次いで、樹脂コーティングとして粒子に加え、シェルを作成してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、シェルを作成するために利用可能な樹脂としては、限定されないが、上述のアモルファス樹脂が挙げられる。複数の樹脂を任意の適切な量で利用してもよい。いくつかの実施形態では、第1のアモルファスポリエステル樹脂、例えば、上の式Iのアモルファス樹脂は、シェル樹脂の合計量の約20重量%〜約100重量%、または約30重量%〜約90重量%の量で存在してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、第2の樹脂は、シェル樹脂中に、シェル樹脂の約0重量%〜約80重量%、または約10重量%〜約70重量%の量で存在してもよい。
【0077】
シェル樹脂を当業者の範囲内にある任意の方法によって凝集粒子に塗布してもよい。いくつかの実施形態では、シェルを作成するために利用される樹脂は、上述の任意の界面活性剤を含むエマルション中にあってもよい。樹脂を含むエマルションを、シェルが凝集粒子の上に形成されるように、上述の凝集粒子と合わせてもよい。
【0078】
凝集粒子の上にシェルを形成することは、約30℃〜約80℃、または約35℃〜約70℃の温度まで加熱しながら行ってもよい。シェルの形成は、約5分間〜約10時間、または約10分間〜約5時間行われてもよい。
【0079】
シェルは、トナー成分の約1重量%〜約80重量%、約10重量%〜約40重量%、または約20重量%〜約35重量%の量で存在していてもよい。
【0080】
望ましい粒径になるまで凝集させ、任意要素の任意のシェルを塗布した後、次いで、粒子を望ましい最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、混合物を、約45℃〜約100℃、または約55℃〜約99℃の温度(この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移点であってもよく、ガラス転移点より高い温度であってもよい)まで加熱し、および/または撹拌を例えば約1000rpm〜約100rpm、または約800rpm〜約200rpmまで遅くすることによって達成されてもよい。融着は、約0.01〜約9時間、または約0.1〜約4時間行われてもよい。
【0081】
凝集および/または融着の後、混合物を、室温(例えば、約20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。冷却は、所望な場合、すばやく行ってもよいし、ゆっくり行ってもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、トナー粒子は、所望な場合、または必要な場合、他の任意要素の添加剤も含んでいてもよい。例えば、トナーは、正電荷または負電荷の制御剤を、例えば、トナーの約0.1〜約10重量%、例えば、約1〜約3重量%の量で含んでいてもよい。
【0083】
また、配合の後に、トナー粒子に流動補助添加剤を含む外部添加剤粒子をブレンドしてもよく、この場合、添加剤は、トナー粒子表面に存在していてもよい。
【実施例】
【0084】
転相乳化(PIE)の一般的な手順。2セットのエマルションを調製した。実施例1〜5は、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸コモノマーを含むアルコキシル化ビスフェノールAを含む低分子量アモルファス樹脂のエマルションであり、実施例6〜9は、テレフタル酸、トリメリット酸、ドデセニルコハク酸コモノマーを含むアルコキシル化ビスフェノールAを含む高分子量アモルファス樹脂のエマルションであった。
【0085】
2−メチルテトラヒドロフラン(Me−THF)と、イソプロパノールまたはエチルアルコールのいずれかとを別個に秤量し(実施例1〜9それぞれについて、樹脂および溶媒の量については、以下の表1および2を参照)、ビーカー内で一緒に混合した。
【0086】
それぞれの樹脂を表1に記載されるように反応器に入れた(バッチサイズ)。次いで、混合した溶媒をこの反応器に入れた。反応器の加熱器を約42℃に設定した(反応器の温度を約40℃に維持するため)。アジテーター(アンカーブレードインペラ)のスイッチを入れ、毎分約100回転(rpm)で回転させた。約1.5時間後、すべての樹脂が溶解したら、ゴムストッパーを介した使い捨てピペットを用い、この混合物に約10% NHOHを約2分間かけて滴下した。この混合物を約10分間放置した。
【0087】
次いで、アジテーターの速度を約200rpmに調節し、この反応器に、過剰量の脱イオン水(DIW)を、反応器の上部に接続したパイプを介したポンプによって、約2.2グラム/分の速度で加えた。アジテーターの速度を約150rpmまで下げ、撹拌を約30分間続けた。
【0088】
次いで、この混合物をガラス皿に取り出し、約80℃〜約85℃の温度で、残留溶媒が約200パーツパーミリオン(ppm)未満になるまで、溶媒を蒸留によって除去した。
【0089】
エバポレーションの前に、樹脂エマルションのサンプルを取り出し、粒径を決定した。次いで、最終生成物について、粒径、固体含有量、pHを得た。ガスクロマトグラフィー(GC)のためにサンプルを抜き取り、残留溶媒(Me−THFおよびエチルアルコール)を分析した。以下の表1は、実施例1〜5のエマルションについて、樹脂、溶媒系、粒径をまとめたものであり、表2は、実施例6〜9のエマルションについて、樹脂、溶媒系、粒径をまとめたものである。
【表1】

【表2】

【0090】
実施例4および9のラテックスを、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で特性決定し、検知可能な変性が起こっていないことを確認した。低分子量アモルファス樹脂を用いてコントロールを調製し(実施例4と比較するために、コントロール1)、高分子量アモルファス樹脂を用いてコントロールを調製した(実施例9と比較するために、コントロール2)。コントロール1を実施例4と同じプロセスにしたがって調製し、コントロール2を実施例9と同じプロセスにしたがって調製したが、コントロールサンプルは、Me−THF/IPAの代わりに、メチルエチルケトン/イソプロパノール溶媒(MEK/IPA)を用いて製造された。
【0091】
上述のラテックスについて、Mw、Mn、多分散性(Pd、Mw/Mnである)を決定した。結果を以下の表3にまとめており、実施例4の樹脂の分子量が、コントロール1と似ており、実施例9の樹脂の分子量が、コントロール2と似ていることが示されている。
【表3】

【0092】
実施例4および実施例9のラテックスを組み合わせ、以下のプロセスを用いてシアンEA ULMトナーを調製した。
【0093】
2リットルビーカーに、実施例4の低分子量アモルファスポリエステル樹脂エマルション約194グラムと、実施例9の高分子量アモルファスポリエステル樹脂エマルション約194グラムとを加えた。次いで、これに、以下の式を有する結晶性樹脂エマルション約30グラムを加えた。
【化3】

【0094】
これに、約2パーツパーハンドレッド(pph)のDOWFAX(商標) 2A1、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(Dow Chemical Companyから市販されている)と、約46グラムのポリエチレンワックス(IGI製)と、約53グラムのシアン顔料(分散物のPigmemt Blue 15:3)を加えた。
【0095】
次いで、0.3M硝酸を用い、pHを約4.2に調節した。次いで、毎分約3000〜約4000回転(rpm)で、凝集剤、約2.69グラムの硫酸アルミニウムを、約36グラムの脱イオン水と混合したものを加えつつスラリーを約5分かけて均一にした。次いで、スラリーを2リットルのBuchi反応器に写し、約460rpmで混合した。次いで、スラリーを約41℃のバッチ温度で凝集させた。
【0096】
凝集中、上述の同じアモルファスエマルションを含むシェルを加え、次いで、このバッチをさらに約41℃まで加熱し、目的とする粒径を達成した。
【0097】
目的とする粒径になったら、水酸化ナトリウム(NaOH)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いてpHを調節し、次いで、再び水酸化ナトリウムを用い、凝集を凍結させた(すなわち、止めた)。このプロセスを、反応温度(Tr)を約70℃まで上げつつ進めた。所望の温度になったら、pHを、酢酸ナトリウムバッファーを用いて約7.1に調節し、この時点で粒子が融着し始めた。約3時間半後、粒子は、真円度が>0.962であり、反応器温度を下げることによって冷却した。
【0098】
得られたトナーは、粒径が約6.3ミクロンであり、体積平均幾何粒度分布(GSDv)が約1.25であり、数平均幾何粒度分布(GSDn)が約1.27であり、真円度は約0.975であった。
【0099】
実施例10のトナー粒子の帯電/ブロッキングおよび融合を評価した。帯電およびブロッキングは、コントロールトナー(XEROX Corp.から市販されているDOCUCOLOR 700シアントナー)と似ていることがわかった。
【0100】
初期の融合評価は、XEROX DOCUCOLOR 700融合部品を用いて行った。標準的な操作手順に従い、実施例10のトナーの融合してない画像、コントロールトナー(XEROX Corp.から市販されているDOCUCOLOR 700シアントナー)を、DCX+ 90gsm紙およびDCEG 120gsm紙(両方ともXEROX Corp.から市販されている)の両方で現像した。融合していない画像について、単位面積あたりのトナーの重量は、約0.5mg/cmであった。コントロールトナーと試験トナーを、両方ともさまざまな範囲の温度で融合させた。冷温でのオフセット、光沢、折り目の固定、書類のオフセット性能を測定した。
【0101】
実施例10のトナーは、光沢、折り目、熱オフセット、書類のオフセット性能を含む印刷特性が、コントロールトナーと同様であった。
【0102】
このように、シアントナーは、凝集/融着挙動には顕著な差はなく、従来の石油系溶媒を用いたトナーと等価の融合特性および帯電特性を有しつつ、首尾よく調製された。
【0103】
また、これらの生体由来の溶媒から作られたエマルションは、樹脂が変性していないことが示されており、EA ULMトナーは、石油系溶媒で製造されたトナーと比較して、同様の粒径、幾何粒度分布(GSD)、形態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリエステル樹脂と少なくとも1つの生体由来の溶媒とを接触させて樹脂混合物を作成することと;
前記樹脂混合物を混合することと;
前記混合物と中和剤とを接触させ、中和した混合物を作成することと;
前記中和した混合物と脱イオン水とを接触させ、エマルションを作成することと;
前記エマルションを回収することとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの生体由来の溶媒が、2−メチル−テトラヒドロフラン、エタノール、1,2−プロパン−ジオール、1,3−プロパン−ジオール、1,4−ブタン−ジオール、フルフリルアルコール、2−ブチルフラン、ジフリルプロパン、エチルフルフリルエーテル、2−ブロモフラン、2−ブチリルフラン、20−エチルフラン、2−フルアルデヒド、2−フルフリルアルコール、2−メチルフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、2,5 ジメチルフラン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記生体由来の溶媒が、前記樹脂の約1重量%〜約200重量%の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記生体由来の溶媒が、2−メチル−テトラヒドロフランとエタノールとを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記中和した混合物が、約8〜約14のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ラテックスが、約5%〜約50%の固体含有量を有し、約10nm〜約500nmの粒径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記樹脂混合物を、約40℃〜約90℃の温度まで加熱することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記エマルションを回収することが、前記エマルションから水/溶媒蒸留物を除去することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水/溶媒蒸留物から前記溶媒を分離することと、前記溶媒を再利用することとをさらに含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
少なくとも1つのアモルファスポリエステル樹脂および任意要素の結晶性樹脂と少なくとも1つの生体由来の溶媒とを接触させて樹脂混合物を作成することと;
前記樹脂混合物を約40℃〜約90℃の温度まで加熱することと;
前記樹脂混合物を撹拌することと;
前記混合物と中和剤とを接触させ、中和した混合物を作成することと;
前記中和した混合物と脱イオン水とを接触させ、エマルションを作成することと;
前記エマルションから水/溶媒蒸留物を留去することと;
前記エマルションを回収することとを含む、プロセス。
【請求項10】
前記アモルファスポリエステル樹脂が、前記トナー粒子の約60重量%〜約95重量%の量で存在するアルコキシル化ビスフェノールAフマレート/テレフタレート系ポリエステルおよびコポリエステル樹脂を含む、請求項9に記載のプロセス。

【公開番号】特開2012−117061(P2012−117061A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250176(P2011−250176)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】